• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1357969
審判番号 不服2018-2110  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-12-18 
事件の表示 特願2016-512182「無線ネットワーク情報管理方法及びネットワーク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/179938、平成28年 6月20日国内公表、特表2016-518082〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2013年(平成25年)5月8日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年1月18日 :手続補正書の提出
平成28年12月27日付け :拒絶理由通知書
平成29年4月10日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年10月10日付け :拒絶査定
平成30年2月15日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
平成31年3月15日付け :拒絶理由通知書(当審)
平成31年4月23日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
平成31年4月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には,以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
無線ネットワーク情報管理方法であって、当該方法は、
ネットワーク装置が、第1のセルと前記第1のセルの少なくとも1つの近傍セルとのUEから取得した信号強度が、前記第1のセルを分割することによって取得されたエリアをカバーする第1のモビリティ管理ユニットに対応する信号強度範囲内にあると判断した場合、前記UEが前記第1のモビリティ管理ユニットに存在すると決定するステップと、
前記ネットワーク装置が、前記第1のモビリティ管理ユニット内に存在するUEから取得した信号強度及び第2のセルを分割することによって取得されたエリアをカバーする第2のモビリティ管理ユニット内に存在するUEから取得した信号強度に従い前記第1のモビリティ管理ユニットが前記第2のモビリティ管理ユニットを含むと決定するステップであって、前記第1のセルと前記第2のセルとは異なるシステムに属するセルである、ステップと、
前記ネットワーク装置が、前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成するステップと、
前記ネットワーク装置が、前記合成した無線ネットワーク情報を用いて、前記第1のセル又は前記少なくとも1つの近傍セルにおけるUEのアクセス又はハンドオーバを完了させるステップと、
を含み、
前記第1又は第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、それぞれ以下の情報の少なくとも1つのタイプ、前記第1又は第2のモビリティ管理ユニットにおける前記第1のセルの信号強度情報、前記第1又は第2のモビリティ管理ユニットにおける前記第1のセルの近傍セルの信号強度情報、又は前記第1又は第2のモビリティ管理ユニットにおけるキー・パフォーマンス・インジケータ(KPI)の統計値を有し、前記第1及び第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は少なくとも部分的に異なるタイプの情報を含む、方法。」

第3 拒絶の理由
平成31年3月15日付けで当審が通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



1.?4.(略)

5.発明の詳細な説明を見ても、請求項1の「前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成する」とは具体的にいかなることか不明確である。
合成に関しては表1及び段落【0077】が記載箇所と解されるが、当該記載のみでは、第1のモビリティ管理ユニット及び第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報の生成当初から,第1のモビリティ管理ユニット及び第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報の合成及び更新が時系列としてどの様に行われ、表1の状態を作り出され,更新されていくのか不明である。
したがって、(中略)この出願の発明の詳細な説明は、請求項1-8に係る発明について、当業者が各請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。(実施可能要件)

6.発明の詳細な説明を見ても、請求項1の「UEの測定統計情報」の定義が不明確であり、請求項1の「前記第1のモビリティ管理ユニットと前記第2のモビリティ管理ユニットとにおける前記UEの測定統計情報」の技術的範囲が特定できない。このため、「前記第1のモビリティ管理ユニットと前記第2のモビリティ管理ユニットとにおける前記UEの測定統計情報に従って前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを決定するステップ」を技術的に特定することができない。また、当該「・・・決定するステップ」は、図4及びその説明とも対応していない。
したがって、(中略)この出願の発明の詳細な説明は、請求項1-8に係る発明について、当業者が各請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。(実施可能要件)

7.(略)

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。

「【0046】
第1のモビリティ管理ユニットは第1のセルを分割することにより取得されるエリアであり、ここで、第1のセルは、例えば、GSMシステム、UMTSシステム又はLTEシステムなどの何れかの規格の通信システムにおけるセルであってもよい。第1のモビリティ管理ユニットのカバレッジエリアは、第1のセルのものより小さいか、又は等しく、第1のセルにおける細分化されたエリアに従ってUEに対して差別的モビリティ管理を実行するのに利用されてもよい。
(中略)
【0057】
ステップ102:第1のモビリティ管理ユニットにおけるUEのものであって、ステップ101において決定された測定統計情報に従って第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を決定し、ここで、無線ネットワーク情報は、以下の情報の少なくとも1つのタイプ、第1のモビリティ管理ユニットにおける第1のセルの信号強度情報、第1のモビリティ管理ユニットにおける第1のセルの少なくとも1つの近傍セルの信号強度情報、又は第1のモビリティ管理ユニットにおける少なくとも1つのキー・パフォーマンス・インジケータKPIの統計値を有してもよい。
(中略)
【0061】
他の具体例について、第1のモビリティ管理ユニットにおける各種タイプのKPIが、統計時間内に第1のモビリティ管理ユニットにおけるUEについて統計量を収集することによって取得されてもよく、ここで、KPIは以下の少なくとも1つ、例えば、コールドロップ率、チャネル利用率、ハンドオーバ成功率又はアクセス成功率であってもよい。
【0062】
例えば、表1はUMTSセルCell 1における第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を示し、ここで、当該情報は、UMTSセルCell 1及びCell 1の複数の近傍セルの信号強度情報と、3つのタイプのKPIとを有する。例えば、UMTSセルCell 1からCell 8までのうち、Cell 2からCell 8は、周波数内近傍セル又は周波数間近傍セルであってもよいCell 1のRAT内近傍セルであり、信号強度RSCP1はCell 1の信号強度であり、RSCP 2はCell 2の信号強度であり、同様に、RSCP8はCell 8の信号強度である。GSMセルCell 9からCell 11はCell 1の第1のRAT間近傍セルであり、RxLev 1はCell 9の信号強度であり、RxLev 2はCell 10の信号強度であり、同様に、RxLev 3はCell 11の信号強度である。LTEセルCell 12からCell 15はCell 1の第2のRAT間近傍セルであり、RSRQ 1はCell 12の信号強度であり、RSRQ 2はCell 13の信号強度であり、同様に、RSRQ 4はCell 15の信号強度である。各規格のものであって、無線ネットワーク情報に含まれる必要がある近傍セルが必要に応じて決定されてもよいことが留意されるべきである。異なる規格のセルの信号強度は他の方式で表されてもよい。例えば、UMTSセルについて、RSCP、Ec/No又はRSCP及びEC/Noが利用されてもよく、LTEセルについて、RSRP、RSRQ、又はRSRP及びRSRQが利用されてもよく、ここでは単なる例示であり、本発明の本実施例はこれに限定されない。3つのタイプのKPIは、コールドロップ率、チャネル利用率及びハンドオーバ成功率を含む。
【0063】
表1は第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報である




本発明の上記の実施例において列記されたものは単なる例示であり、本発明はこれに限定されないことが留意されるべきである。表1もまた単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
(中略)
【0067】
ステップ103:第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定し、ここで、第2のモビリティ管理ユニットは第2のセルを分割することにより取得されるエリアであり、第2のセル及び第1のセルは、同一のシステムに属するセル、又は異なるシステムに属するセルであってもよい。例えば、第1のセルはGSMセル1であり、第2のセルはUMTSセル1であるか、又は、第1のセルはLTEセル1であり、第2のセルはLTEセル2である。
(中略)
【0070】
例えば、第1のモビリティ管理ユニットは、第1のセルの地理的位置情報に従って第1のセルを分割することにより取得され、第2のモビリティ管理ユニットは、第2のセルの地理的位置情報に従って第2のセルを分割することにより取得される。第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲が第2のモビリティ管理ユニットの地理的範囲を含む場合、第1のモビリティ管理ユニットは第2のモビリティ管理ユニットを含むと決定される。例えば、第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲が、経度サブ区間(116.12345°?116.12545°)及び緯度サブ区間(90.12346°?90.12846°)であり、第2のモビリティ管理ユニットの地理的範囲が、経度サブ区間(116.12345°?116.12545°)及び緯度サブ区間(90.12346°?90.12846°)である。すなわち、第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲における経度サブ区間は、第2のモビリティ管理ユニットの経度サブ区間より大きいか、又は等しく、第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲における緯度サブ区間は、第2のモビリティ管理ユニットの緯度サブ区間より大きいか、又は等しい。従って、第1のモビリティ管理ユニットは第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定されてもよい。
【0071】
他の具体例について、第1のモビリティ管理ユニットは、第1のセルセットにおけるセルの信号強度特性に従って第1のセルを分割することによって取得されるエリアである。第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有することは、第2のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度情報に従って決定されてもよく、ここで、第2のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度情報は、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報から取得されてもよい。
【0072】
例えば、第1のセルはUMTSセル1であり、第1のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度特性は、(UMTSセル1,RSCP:-100dBm?-90dBm),(UMTSセル2,RSCP:-105dBm?-98dBm),(UMTSセル3,RSCP:-107dBm?-92dBm)である。第2のセルはUMTSセル5であり、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報内にあるセルの信号強度情報は、(UMTSセル1,RSCP=-95dBm),(UMTSセル2,RSCP=-100dBm),(UMTSセル3,RSCP=-105dBm)である。第2のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度情報が第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報から取得されてもよく、セルの信号強度情報は全て第1のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおける対応するセルの信号強度範囲内であることが知ることができる。従って、第1のモビリティ管理ユニットは第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定されてもよい。
(中略)
【0074】
ステップ104:第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成する。
(中略)
【0076】
第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、複数の方式で第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と合成されてもよい。例えば、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報に追加されてもよい。第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報との双方が同一のセルの信号強度情報を有する場合であって、且つセルの信号強度情報が測定統計値である場合、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度情報と第2のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度情報とは、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの合成された信号強度情報を取得するためフィルタリングされてもよい。フィルタリング処理は平均フィルタリング処理及びαフィルタリング処理を含むものであってもよいことが留意されるべきである。当業者は、フィルタリング処理が従来技術におけるものと整合することを理解してもよく、本発明において詳細は再紹介されない。セルの信号強度情報が信号強度範囲である場合、合成された信号強度範囲は、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度範囲と、第2のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度範囲との和集合を利用することによって取得されてもよい。
【0077】
例えば、第1のセルであるUMTSセル1における第1のモビリティ管理ユニットは、第2のセルであるUMTSセル2における第2のモビリティ管理ユニットを含む。第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、(GSMセル1,RxLev=45),(UMTSセル3,RSCP=-97dBm)及び(UMTSセル1,コールドロップ率=0.05%)を有する。第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、(GSMセル2,RxLev=25),(LTEセル1,RSRP=-100dBm),(UMTSセル2,コールドロップ率=0.01%)及び(UMTSセル2,ハンドオーバ成功率=99.8%)を有する。従って、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成することによって取得される第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、(GSMセル1,RxLev=45),(GSMセル2,RxLev=25),(UMTSセル3,RSCP=-97dBm),(LTEセル1,RSRP=-100dBm),(UMTSセル1,コールドロップ率=0.05%),(UMTSセル2,コールドロップ率=0.01%)及び(UMTSセル2,ハンドオーバ成功率=99.8%)である。上記は単なる例示であり、本発明の本実施例はこれに限定されないことが留意されるべきである。」

第5 判断

1 当審拒絶理由の「5.」について検討する。

(1)段落【0046】、【0063】によれば、「モビリティ管理ユニット」は、その無線ネットワーク情報によりセルを分割することにより取得されるエリアを表すものといえ、図1、2、4及びその説明(段落【0057】-【0074】)によれば、(i)「合成の手順は、第1のモビリティ管理ユニットにおけるUEの測定統計情報に従って第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を決定し」、(ii)「第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定し」、(iii)「第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成する」ものである。
ここで、(ii)「第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定し」については、「第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲における経度サブ区間は、第2のモビリティ管理ユニットの経度サブ区間より大きいか、又は等しく、第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲における緯度サブ区間は、第2のモビリティ管理ユニットの緯度サブ区間より大きいか、又は等しい」場合(段落【0070】)、「第2のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度情報が、全て第1のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおける対応するセルの信号強度範囲内である」場合(段落【0072】)が例示されている。
また、(iii)「第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成する」については、「第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報に追加されてもよい。第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報との双方が同一のセルの信号強度情報を有する場合であって、且つセルの信号強度情報が測定統計値である場合、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度情報と第2のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度情報とは、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの合成された信号強度情報を取得するためフィルタリングされてもよい。(中略)セルの信号強度情報が信号強度範囲である場合、合成された信号強度範囲は、第1のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度範囲と、第2のモビリティ管理ユニットにおけるセルの信号強度範囲との和集合を利用することによって取得されてもよい。」(段落【0076】)が例示され、「同一のエリアについて決定された無線ネットワーク情報が、統一された管理のための1つのモビリティ管理ユニットに合成され」(段落【0078】)と記載されている。
そして、段落【0077】の「従って、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成することによって取得される第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報」との記載からも明らかなとおり、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報となるものである。

(2)しかしながら、(ii)「第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定し」についての段落【0070】に記載された具体例では、合成前の第1のモビリティ管理ユニットと第2のモビリティ管理ユニットは、地理的範囲(経度サブ区間及び緯度サブ区間)が全く同一であるから、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成することによって取得される第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報が、具体的にどのような無線ネットワーク情報として合成されるのか不明である。
また、第1のモビリティ管理ユニットの経度サブ区間及び緯度サブ区間が、第2のモビリティ管理ユニットの経度サブ区間及び緯度サブ区間よりも大きい場合、段落【0076】の記載によれば合成がフィルタリング処理や和集合を利用することによって取得されることになるが、段落【0076】の記載では具体的にどのような合成がなされ、合成後の第1のモビリティ管理ユニットがどの様な無線ネットワーク情報を有することになるのか不明である。また、合成前には識別可能であった第2のモビリティ管理ユニットに対応するより小さいカバレッジエリアを、合成後にはどの様にして識別し得るのかも不明である。

(3)段落【0072】に記載された具体例は、第2のモビリティ管理ユニットは第2のセルを分割することによって取得されたエリアをカバーするものであり、第2のセルはUMTSセル5であるところ、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報内にあるセルの信号強度情報には、UMTSセル5に関する情報は存在しないから、UMTSセル1?UMTSセル3の信号強度が第1のモビリティ管理ユニットの信号強度範囲内であるからといって、必ずしも第1のセルであるUMTSセル1と第2のセルであるUMTSセル5との関係は不明であるはずである。したがって、該具体例は上記(ii)の例とはいえない。
また、該具体例は、第1のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるUMTSセルの信号強度特性(範囲内)に、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報内のUMTSの信号強度情報が含まれていることを前提としているが、第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報が表1に示された情報であって第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報にGSMやLTEの信号強度特性が含まれる場合、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を合成することによってとUMTSセル1の近傍セルであるGSMやLTEの信号強度に関する無線ネットワーク情報が、具体的にどのような無線ネットワーク情報として合成されるのか不明である。

(4)更に、段落【0077】に記載された例は、合成について、第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報に追加するものであると解されるが、当該各無線ネットワーク情報では、上記(ii)「第1のモビリティ管理ユニットが第2のモビリティ管理ユニットを有すると決定し」の条件が満たされていることが確認できない。すなわち「第1のモビリティ管理ユニットの地理的範囲における経度サブ区間及び緯度サブ区間は、第2のモビリティ管理ユニットの経度サブ区間及び緯度サブ区間より大きいか、又は等しい」こと、若しくは「第2のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおけるセルの信号強度情報が、全て第1のモビリティ管理ユニットの第1のセルセットにおける対応するセルの信号強度範囲内である」ことが第1及び第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報から確認できないから、合成手順が不明であるといわざるを得ない。
そして、第1のモビリティ管理ユニットの(GSMセル1,RxLev=45),(UMTSセル3,RSCP=-97dBm)及び(UMTSセル1,コールドロップ率=0.05%)なる無線ネットワーク情報と、第2のモビリティ管理ユニットの(GSMセル2,RxLev=25),(LTEセル1,RSRP=-100dBm),(UMTSセル2,コールドロップ率=0.01%)及び(UMTSセル2,ハンドオーバ成功率=99.8%)なる無線ネットワーク情報との関係が不明であるため、新たな第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報は、(GSMセル1,RxLev=45),(GSMセル2,RxLev=25),(UMTSセル3,RSCP=-97dBm),(LTEセル1,RSRP=-100dBm),(UMTSセル1,コールドロップ率=0.05%),(UMTSセル2,コールドロップ率=0.01%)及び(UMTSセル2,ハンドオーバ成功率=99.8%)とすることの意味が不明である。

(5)以上のとおりであるから、発明の詳細な説明を見ても、合成に係る説明が整合しておらず、請求項1の「前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成する」具体的な手順が不明確であり、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

そして請求人は,平成31年4月23日に提出した意見書において,当審拒絶理由の「5.」における実施可能要件について反論又は釈明をしていないから、当該意見書によっても拒絶理由5は解消されない。

したがって,上記補正に係る請求項1-8に係る発明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 当審拒絶理由の「6.」について検討する。

請求項1に係る発明は「前記ネットワーク装置が、前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成するステップ」なる構成要件を有するところ、発明の詳細な説明には当該ステップの前提として「第1のモビリティ管理ユニットにおけるUEの測定統計情報に従って第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を決定」するものが開示されるのみであって、当該前提を有さないものは開示されていない。そして、発明の詳細な説明を見ても、「UEの測定統計情報」の定義が不明確であり、「第1のモビリティ管理ユニットにおけるUEの測定統計情報に従って第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報を決定」する動作が不明確である。してみると、補正前の「前記第1のモビリティ管理ユニットと前記第2のモビリティ管理ユニットとにおける前記UEの測定統計情報」なる記載を削除したところで拒絶理由6は解消されず、「前記ネットワーク装置が、前記第1のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報と前記第2のモビリティ管理ユニットの無線ネットワーク情報とを合成するステップ」なる構成を有する請求項1に係る発明を実施することができない。

そして請求人は,平成31年4月23日に提出した意見書において,「補正後の請求項1は「測定統計情報」という語を含みません。」との主張するのみで,当審拒絶理由の「6.」における実施可能要件について反論はない。

よって,補正後の請求項1に記載される「前記第1のモビリティ管理ユニット内に存在するUEから取得した信号強度及び第2のセルを分割することによって取得されたエリアをカバーする第2のモビリティ管理ユニット内に存在するUEから取得した信号強度に従い前記第1のモビリティ管理ユニットが前記第2のモビリティ管理ユニットを含むと決定する」ことは,発明の詳細な説明に記載されておらず,発明の詳細な説明は当業者が請求項1に係る発明を実施しうる程度に記載されているとはいえない。

したがって,上記補正に係る請求項1-8に係る発明は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-17 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-07 
出願番号 特願2016-512182(P2016-512182)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉本 敦史廣川 浩  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 長谷川 篤男
本郷 彰
発明の名称 無線ネットワーク情報管理方法及びネットワーク装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ