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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1357972
審判番号 不服2018-7048  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-23 
確定日 2019-12-18 
事件の表示 特願2015-147303「二次セル群内の複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日出願公開、特開2015-188266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年(平成24年)7月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年8月12日 中国)を国際出願日とする特願2014-525504号の一部を、平成27年7月27日に新たな特許出願としたものであって、平成28年10月18日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月2日付けで拒絶理由が通知され、同年8月9日に意見書が提出され、平成30年1月16日付けで拒絶査定されたところ、同年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年1月24日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「 キャリア・アグリゲーション伝送ベースの無線通信ネットワークの基地局において、二次セルの一群内の複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御する方法であって、前記ユーザ機器は、一次セル群と、少なくとも1つの二次セル群とを用いて構成されており、前記二次セルの一群は、前記少なくとも1つの二次セル群に属しており、また前記一次セル群と、前記少なくとも1つの二次セル群とは、おのおのタイム・アラインメント・タイマーを用いて構成されており、前記方法は、
a’.前記一次セル群の前記タイム・アラインメント・タイマーが期限切れになるときに、第1のMAC CEメッセージを前記ユーザ機器に対して送信するステップを含み、該第1のMAC CEメッセージは、前記二次セルの一群の中の少なくとも1つのアクティブにされた二次セルを非アクティブにするために使用される、方法。」


第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に係る発明に対して、以下の引用例が引用されている。
<引用文献等一覧>
1:Panasonic,Time Alignment in case of multiple TA[online], 3GPP TSG-RAN WG2#74 R2-112819,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_74/Docs/R2-112819.zip>,2011年 5月13日
2:国際公開第2011/063244号

第4 引用発明及び周知技術

1 引用例の記載事項及び引用発明

原査定の拒絶理由に引用された、Panasonic,Time Alignment in case of multiple TA[online], 3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #74 R2-112819,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_74/Docs/R2-112819.zip>,2011年 5月13日(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「In the last RAN2 meeting, discussion on Multiple Timing Advance started as part of the Work Item on Carrier Aggregation Enhancements for Rel-11.
This contribution discusses some of the properties of multiple TA as TA timer handling and TA grouping that need to be decided in RAN2. 」(1ページ8?11行)
(当審訳: 前回のRAN2会議で、マルチ・タイミング・アドバンスに関する議論は、Rel-11のキャリア・アグリゲーション機能強化に関する作業項目の一部として始まった。
この寄稿は、TAタイマー処理を行う上での複数のTAとRAN2で決定される必要があるTAグループ化の特性のいくつかを論じる。)

イ.図1として以下の図面が記載され、「Figure 1 - Example of UE aggregating four UL carriers grouped within two TA groups」(当審訳: 2つのTAグループにグループ化された4つのULキャリアを集約したUEの例)と付記されている。(1ページ)

ウ.「In order to support such scenarios it is necessary to support more than one timing advance.
However, deployment scenarios will consist mostly of co-located cells. It is a realistic assumption that in the case that an UE aggregates the maximum number of uplink cells, the number of locations these uplink cells are received at will be lower. Therefore, it is not necessary to support a separate timing advance for each UL of an aggregated cell in the UE. Since cells in the same frequency band which are received at the same location experience the same propagation delay, such cells, when aggregated in a UE, can be grouped together and share a timing advance. While the concept of TA groups will require the indication of the UL carrier - TA group relations, we propose to adopt such concept for the simplicity and robustness in the UE and eNB since this concept reduces the number of timing advances that need to be handled simultaneously. This also allows the synchronization to the cell with difficult condition of the timing synchronization purely from individual cell because of HetNet usage.
Proposal 1: More than one UL cell can share the same timing advance by forming TA groups」(1ページ19行?2ページ7行)
(当審訳: このようなシナリオをサポートするためには、複数のタイミング・アドバンスをサポートする必要がある。
ただし、展開シナリオは、同じ場所に配置されたセルでほとんど構成される。UEが最大数のアップリンクセルを集約する場合、これらのアップリンクセルが受信されるロケーションの数が少なくなることは現実的な仮定である。したがって、UE内の集約セルの各ULについて別々のタイミングアドバンスをサポートする必要はない。同じ場所で受信される同じ周波数帯域内のセルは同じ伝播遅延を経験するので、そのようなセルは、UE内で集約されるとき、一緒にグループ化され、タイミング・アドバンスを共有することができる。TAグループの概念はULキャリアとTAグループとの関係の表示を必要とするが、この概念は同時に処理される必要のあるタイミング・アドバンスの数を減少させるので、UE及びeNBにおける単純さ及びロバストネスのためそのような概念を採用することを提案する。これはまた、HetNetの使用のために純粋に個々のセルからタイミング同期の困難な状態を伴うセルへの同期を可能にする。
提案1:TAグループを形成することによって、複数のULセルが同じタイミング・アドバンスを共有することができる)

エ.「Alternative 1: TAT runs for each TA group
In this alternative, for each reception of Timing Advance Command MAC CE, TAT starts and runs individually for each TA group. This also covers the case that there is TAT for each CC.
・・・・
When TAT expires, we envisage that the following behaviour would be carried out similar to Rel-10.
- flush all HARQ buffers;
- notify RRC to release PUCCH/SRS;
- clear any configured downlink assignments and uplink grants
・・・・
Considering the above we think that alternative 1, i.e. a TAT runs for each TA group is the better alternative.
Proposal 2: TAT runs for each TA group.」(2ページ12?37行)
(当審訳: 選択肢1:TATは各TAグループに対して実行される
この選択肢では、タイミング・アドバンス・コマンドMAC CEの各受信に対して、TATは各TAグループに対して個別に開始され実行される。これはまた、各CCにTATがある場合もカバーする。
・・・・
TATが期限切れになると、Rel-10と同様に以下の動作が実行されることを想定している。
- 全てのHARQバッファをフラッシュする。
- PUCCH / SRSを解放するようにRRCに通知する。
- 設定されているダウンリンク割り当て及びアップリンク許可をクリアする。
・・・・
上記を考慮して、我々は選択肢1、すなわち各TAグループ毎にTATが実行されることがより良い選択肢であると考える。
提案2:TATはTAグループ毎に実行される。)

オ.「As in Rel-10/11 the maximum number of aggregated cells is 5, limiting the maximum number of TA groups below 5 makes sense considering that the case of one TA per CC when 5 CCs are aggregated is not needed.」(3ページ3?4行)
(当審訳: Rel-10/11と同様に、集約セルの最大数は5である。TAグループの最大数を5より小さく制限することは、5個のCCが集約される場合、CCあたり1つのTAとなる状態は不要であることを考えると意味がある。)

カ.「TAT runs for each TA group could trigger the condition that TAT containing PCell expires but the remaining TAT (containing only SCells) do not expire. ・・・・ In order to assure that further UL transmission on SCells is not possible anymore after TAT containing PCell expires, we propose that after TAT containing PCell expires, the other TATs (those not containing PCell) should immediately expire as well, even though TA is still ok for those groups.
Proposal 4: If TAT containing PCell expires, the other TATs not containing PCell simultaneously expire as well.」(3ページ8?16行)
(当審訳: 各TAグループについてのTAT実行は、PCellを含むTATが期限切れになるが、(SCellのみを含む)残りのTATは期限切れにならないという状況を引き起こす可能性がある。 ・・・・ PCellを含むTATが期限切れになった後にSCellでのさらなるUL送信がもはや不可能であることを保証するために、TAがそれらのグループにとってまだOKであっても、PCellを含むTATが期限切れになった後に他のTAT(それらはPCellを含んでいない)も直ちに同様に期限切れにすべきであることを提案する。
提案4:PCellを含むTATが期限切れになると、PCellを含まない他のTATも同時に同様に期限切れになる。)

上記記載事項及び当業者の技術常識を考慮すると、引用例には次の技術的事項が記載されている。

a 上記ア.によれば、引用例はキャリア・アグリゲーションに係るものであり、また、上記イ.の図1に、UL信号をUEからeNBへ送信することが記載されているから、引用例には、キャリア・アグリゲーションを行う無線通信ネットワークにおいて、UL信号をUEからeNBへ送信する通信方法が記載されているといえる。

b 上記ウ.によれば、同じタイミング・アドバンスを共有する複数のULセルはTAグループを形成し、また、上記カ.によれば引用例にはPCellを含むTAグループとSCellのみを含むTAグループが存在する。そして、技術常識に照らせばPCellは1つ、上記オ.によればTAグループの最大数は5未満であり、TAグループの数が複数の場合も想定されているから、PCellを含む1つのTAグループと、SCellのみを含む少なくとも一つのTAグループが存在するといえる。

c 上記エ.によれば、TATはTAグループ毎に実行されるから、PCellを含む1つのTAグループとSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループが各々TATを有しているといえる。

d 上記カ.には、PCellを含むTATが期限切れになった後に他のTATも直ちに期限切れとすることが記載されているから、PCellを含む1つのTAグループのTATが期限切れになった後に、他のTATであるSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループのTATも直ちに期限切れとすることが記載されているといえる。
そして、上記エ.によれば、TATが期限切れになると、HARQバッファのフラッシュ、PUCCH/SRSの解放、ダウンリンク割り当て及びアップリンク許可のクリアが行われるといえる。

以上を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 キャリア・アグリゲーションを行う無線通信ネットワークにおいて、UL信号をUEからeNBへ送信する通信方法であって、
PCellを含む1つのTAグループとSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループが存在し、
PCellを含む1つのTAグループとSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループが各々TATを有しており、
PCellを含む1つのTAグループのTATが期限切れになった後に、SCellのみを含む少なくとも1つのTAグループのTATも直ちに期限切れとし、HARQバッファのフラッシュ、PUCCH/SRSの解放、ダウンリンク割り当て及びアップリンク許可のクリアを行う、方法。」


2 周知例の記載事項及び周知技術

原査定の拒絶理由に引用された国際公開第2011/063244号(2011年5月26日国際公開)には以下の事項が記載されている。

キ.「[0057] A WTRU may be configured with at least one DL CC on which signaling for SCell activation (alternatively deactivation) may be received using: L1 signaling (e.g., physical downlink control channel (PDCCH) format carrying a component carrier indicator field (CCIF) which corresponds to the CC to which the activation/deactivation command applies; L2 signaling (e.g., medium access control (MAC) control element (MAC CE); or L3 signaling (e.g., radio resource control (RRC) information element (RRC IE)). Each of the signaling methods may be used by the WTRU to determine to which CC(s) (e.g. SCell) the received signaling applies. As an example this signaling may be received on a transmission on the PCell DL, or alternatively also on a transmission for an activated SCell DL. 」(16?17ページ)(注:「L1 signaling (e.g.,・・・(略)・・・ command applies; L2 signaling ・・・」は「L1 signaling (e.g.,・・・(略)・・・ command applies); L2 signaling ・・・」の誤記と認める。)
(当審訳:[0057]WTRUは、SCellアクティブ化(あるいは、非アクティブ化)に対するシグナリングを受信することができる少なくとも1つのDL CCと共に構成することができ、この受信には、L1シグナリング(例えば、アクティブ化/非アクティブ化コマンドが適用されるCCに対応するコンポーネントキャリアインジケータフィールド(CCIF)を伝送する物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)フォーマット)、L2シグナリング(例えば、媒体アクセス制御(MAC)制御要素(MAC CE))、又はL3シグナリング(例えば、無線リソース制御(RRC)情報要素(RRC IE))を使用する。シグナリングの方法のそれぞれは、受信されたシグナリングがどのCC(複数可)(例えば、SCell)に適用されるかを決定するためにWTRUによって使用されうる。例えば、このシグナリングは、PCell DL上の送信で、あるいはアクティブ化されたSCell DLに対する送信でも、受信されうる。

3GPPの規格である「3GPP TS 36.321 V10.0.0(2010-12)、3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA); Medium Access Control(MAC) protocol specification(Release10)、2010年12月21日アップデート」には以下の記載がある。

ク.「5.13 Activation/Deactivation of SCells
If the UE is configured with one or more SCells, the network may activate and deactivate the configured SCells. The PCell is always activated. ・・・(略)・・・The network activates and deactivates the SCell(s) by sending the Activation/Deactivation MAC control element described in 6.1.3.8. 」(32ページ)
(当審訳:5.13 SCellのアクティブ化/非アクティブ化
UEが1つまたは複数のSCellで構成されている場合、ネットワークは構成されているSCellをアクティブ化及び非アクティブ化することができる。PCellは常にアクティブとなっている。・・・(略)・・・ネットワークは、6.1.3.8に記述されているアクティブ化/非アクティブ化MAC制御要素を送信することによってSCellをアクティブ化及び非アクティブ化する。)

ケ.「6.1.3.8 Activation/Deactivation MAC Control Element
The Activation/Deactivation MAC control element is identified by a MAC PDU subheader with LCID as specified in table 6.2.1-1. It has a fixed size and consists of a single octet containing seven C-fields and one R-field. The Activation/deactivation MAC control element is defined as follows (figure 6.1.3.8-1).
-Ci: this field indicates the activation/deactivation status of the SCell with Cell Index i as specified in [8]. The Ci field is set to "1" to indicate that the SCell with Cell Index i shall be activated. The Ci field is set to "0" to indicate that the SCell with Cell Index i shall be deactivated;
-R: Reserved bit, set to “0”.」(40ページ)
(当審訳:6.1.3.8 アクティブ化/非アクティブ化MAC制御要素
アクティブ化/非アクティブ化MAC制御要素は、表6.2.1-1に規定されるようにLCIDを有するMAC PDUサブヘッダによって識別される。それは固定サイズを有し、7つのCフィールドと1つのRフィールドを含む単一のオクテットから構成される。アクティブ化/非アクティブ化MAC制御要素は次のように定義される(図6.1.3.8-1)。
- Ci:このフィールドは、[8]で規定されているセルインデックスiを持つSCellのアクティブ化/非アクティブ化ステータスを示す。Ciフィールドは、セルインデックスiを有するSCellがアクティブ化されることを示すために「1」に設定される。Ciフィールドは、セルインデックスiを有するSCellが非アクティブ化されることを示すために「0」に設定される。
- R:予約ビット。“0”に設定する。)

「MAC CE」は「MAC Control Element」(MAC制御要素)の略号であるから、上記キ.ク.ケ.によれば、以下の事項は周知技術であると認める。

「MAC CEにより、セルの非アクティブ化を行う。」


第5 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、

a 引用発明の「UE」「eNB」「SCell」は、それぞれ本願発明の「ユーザ機器」「基地局」「二次セル」に相当する。そして、引用発明では、UEにおいて「SCellのみを含む少なくとも1つのTAグループのTATも直ちに期限切れ」とし、UL信号を制御しているといえ、また、TAグループを構成しているからSCellが複数あることも明らかであるから、引用発明の「キャリア・アグリゲーションを行う無線通信ネットワークにおいて、UL信号をUEからeNBへ送信する通信方法」と本願発明とは、「キャリア・アグリゲーション伝送ベースの無線通信ネットワークにおいて、複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御する方法」といえる点で共通する。

b 引用発明の「PCellを含む1つのTAグループ」はPCellを含む1つ以上のセルから構成されたセルの群であり、本願明細書【0004】では一次セルを含むセル群を「一次セル群」と称していることに照らせば、本願発明の「一次セル群」に相当する。また、引用発明の「SCellのみを含む少なくとも1つのTAグループ」は、本願明細書【0004】では全く一次セルを含まないセル群を「二次セル群」と称していることから、本願発明の「少なくとも1つの二次セル群」に相当する。そして、引用発明では、PCellを含む1つのTAグループとSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループによりUEが通信を行っていることは明らかであるから、ユーザ機器はこれらのTAグループに含まれるセル群を用いて構成されているといえる。
そうしてみると、本願発明と引用発明とは、「ユーザ機器は、一次セル群と、少なくとも1つの二次セル群とを用いて構成され」る点で共通する。

c 引用発明の「TAT」は、本願発明の「タイム・アライメント・タイマー」に相当する。そして、引用発明ではPCellを含む1つのTAグループとSCellのみを含む少なくとも1つのTAグループが、各々TATを有しているから、本願発明と引用発明とは「一次セル群と、少なくとも1つの二次セル群とは、おのおのタイム・アラインメント・タイマーを用いて構成されて」いる点で共通する。

d 引用発明は、「SCellのみを含む少なくとも1つのTAグループのTATも直ちに期限切れとし、HARQバッファのフラッシュ、PUCCH/SRSの解放、ダウンリンク割り当て及びアップリンク割り当て許可のクリア」を行っており、TATの期限切れによりアップリンク伝送が行われなくなるから、本願発明と引用発明とは、「前記一次セル群の前記タイム・アラインメント・タイマーが期限切れになるときに、少なくとも1つの二次セルのアップリンク伝送を中止するために使用される方法」であるといえる点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 キャリア・アグリゲーション伝送ベースの無線通信ネットワークにおける、複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御する方法であって、前記ユーザ機器は、一次セル群と、少なくとも1つの二次セル群とを用いて構成されており、また前記一次セル群と、前記少なくとも1つの二次セル群とは、おのおのタイム・アラインメント・タイマーを用いて構成されており、前記方法は、
a’.前記一次セル群の前記タイム・アラインメント・タイマーが期限切れになるときに、少なくとも1つの二次セルのアップリンク伝送を中止するために使用される、方法。」

(相違点1)
「複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御する方法」に関して、本願発明では無線通信ネットワークの基地局において、少なくとも1つの二次セル群に属する一群内の複数の二次セル上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御する方法であるのに対して、引用発明では当該事項について特定されていない点。

(相違点2)
本願発明では「第1のMAC CEメッセージを前記ユーザ機器に対して送信するステップを含み」、「該第1のMAC CEメッセージ」が少なくとも1つの二次セル群に属する「二次セルの一群の中の少なくともアクティブにされた二次セルを非アクティブにするために使用される」のに対して、引用発明では当該事項について特定されていない点。

事案に鑑み、相違点2について先に検討する。
引用発明は「PCellを含む1つのTAグループのTATが期限切れになった後」に、「HARQバッファのフラッシュ、PUCCH/SRSの解放、ダウンリンク割り当て及びアップリンク許可のクリア」することによりSCellのアップリンク伝送を止めている。SCellのアップリンク伝送を止めるためには、UEがアップリンク伝送を止める他に、eNBからのMAC CEによりUEがセルの非アクティブ化をすることも前記第4 2より周知である。そうしてみると、引用発明においてPCellを含む1つのTAグループのTATが期限切れとなった際に、SCellのみを含む少なくとも1つのTAグループのアップリンク伝送を止めるために、MAC CEを用いてセルを非アクティブ化をするように構成することは、当業者が必要に応じて容易に想到できた事項であり、本願発明のように、「第1のMAC CEメッセージを前記ユーザ機器に対して送信するステップを含み、該第1のMAC CEメッセージは、前記二次セルの一群の中の少なくとも1つのアクティブにされた二次セルを非アクティブにするために使用される」ように構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。

次に相違点1について検討する。
相違点2について検討したMAC CEを用いてSCellを非アクティブに制御する構成は、基地局から送信したMAC CEメッセージによる制御であるから、引用発明を基地局における制御とすることは当業者が容易になし得た事項である。

そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明及び周知技術から容易に予想できる範囲のものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-23 
結審通知日 2019-07-25 
審決日 2019-08-07 
出願番号 特願2015-147303(P2015-147303)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 長谷川 篤男
山本 章裕
発明の名称 二次セル群内の複数の二次セルの上でユーザ機器のアップリンク伝送を制御するための方法および装置  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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