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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K |
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管理番号 | 1357975 |
審判番号 | 不服2018-13123 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-02 |
確定日 | 2019-12-18 |
事件の表示 | 特願2015-550130「1,1-ジフルオロエタン及び3,3,3-トリフルオロプロペンを含有する組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 3日国際公開、WO2014/102476、平成28年 2月25日国内公表、特表2016-505684〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月26日 (FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月12日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月24日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求され、平成30年10月23日に手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成30年1月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 化合物1,1-ジフルオロエタンと3,3,3-トリフルオロプロペンを含み、かつ1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有する、共沸又は共沸様組成物。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由は、平成29年10月12日付け拒絶理由通知書に記載された理由2及び3であって、要するに、上記本願発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1又は刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、また、本願発明は、当該刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 記 刊行物1:.特表2008-531836号公報(原査定の引用文献1。) 刊行物2:.国際公開第2009/047535号(原査定の引用文献2。) 第4 当審の判断 当審は、平成30年10月2日付けの審判請求書を斟酌しても、上記した原査定の拒絶の理由が依然として妥当すると判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 刊行物及びその記載事項 (1)刊行物1:特表2008-531836号公報(原査定の引用文献1) 原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物1には、次の記載がある。 (1a)「【請求項5】 HFC-1243zfと HFC-32、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFC-236ea、HFC-236fa、HFC-245fa、HFC-365mfc、プロパン、n-ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、n-ペンタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、CF_(3)SCF_(3)、CO_(2)およびCF_(3)I からなる群から選択された少なくとも1つの化合物とを含むことを特徴とする組成物。 ・・・ 【請求項25】 請求項5に記載の組成物であって、 ・・・ 約1重量パーセント?約99重量パーセントのHFC-1243zfおよび約99重量パーセント?約1重量パーセントのHFC-152a; ・・・ からなる群から選択された共沸または擬共沸組成物を含むことを特徴とする請求項5に記載の組成物。」 (1b)「 【0024】 【表1】 ![]() 」 (1c)「【0039】 特定の温度での本発明の共沸組成物は表3に示される。 【0040】 【表8】 ![]() ・・・ ![]() ・・・ 」 (2)刊行物2:国際公開第2009/047535号(原査定の引用文献2。) 原査定で引用された本願優先日前に頒布された刊行物2には、次の記載がある。 なお、摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。 (2a)「The performance of the refrigerant compositions of the invention was assessed under conditions representative of air conditioning as described in standard textbooks such as chapter 3 of R. C. Downing, Fluorocarbon Refrigerants Handbook, Prentice-Hall (1988). For this comparison, the mean evaporator temperature was set at 5°C with 7°C of useful superheat above the refrigerant dew point at the evaporation pressure. The mean condenser temperature was set at 50°C with 5°C of liquid sub-cooling below the refrigerant bubble point at the condensation pressure. The refrigerant performance, characterised by the coefficient of performance (COP) and the refrigeration capacity relative to the refrigerant to be replaced, is presented in Figures 1 to 80. The COP is generally recognised as a measure of the efficiency of the refrigerant under the conditions of test. For a compressor of given volumetric displacement, a refrigerant having higher capacity will deliver a greater cooling effect.」(第20ページ第6?19行) 本発明の冷媒組成物の性能は、R.C.Downing、Fluorocarbon Refrigerants Handbook、Prentice-Hall(1988)の第3章のような標準的な教科書に記載されているような空調を代表する条件下で評価した。 この比較では、平均蒸発器温度は、蒸発圧力での冷媒露点より上の7℃の有用な過熱で5℃に設定された。 凝縮器の平均温度を50℃に設定し、凝縮圧力の冷媒泡立ち点より下で5℃の液体過冷却とした。 交換される冷媒に対する成績係数(COP)と冷凍能力によって特徴付けられる冷媒の性能は、図1から図80に示されている。 COPは一般に、試験条件下での冷媒の効率の尺度として認識されている。 所与の容積容量の圧縮機に対して、より高い容量を有する冷媒はより大きな冷却効果をもたらすであろう。 (2b)「 ![]() 」(図3/80) 2 刊行物に記載された発明について 刊行物1には、次の二つの発明が開示されているといえる。 刊行物1には請求項25に記載の発明として「約1重量パーセント?約99重量パーセントのHFC-1243zfおよび約99重量パーセント?約1重量パーセントのHFC-152aからなる共沸または擬共沸組成物」(摘記(1a))の発明(以下「引用発明1A」という。)が開示されているといえる。 また、特定の温度での共沸組成物が記載されている表3の記載からみて、「40.7重量パーセントのHFC-1243zfおよび59.3重量パーセントのHFC-152Aを含み、かつ104kPaの圧力で-25℃の沸点を有する、共沸組成物。」(摘記(1c))の発明(以下「引用発明1B」という。)が開示されているといえる。 刊行物2には、冷媒の性能を示した図3の記載からみて、次の発明が開示されているといえる。 「R1243zfとR152aを含み、かつ3.16?3.27barの蒸発器圧力で蒸発器温度グライドが0.0を有する、組成物。」(摘記(2a)(2b))の発明(以下「引用発明2」という。)。 3 対比・判断 (1)引用発明1Bとの対比・判断 本願発明と引用発明1Bとを対比する。 引用発明1Bの「HFC-1243zf」、「HFC-152A」は、摘記(1b)の表1からみて、本願発明の「化合物3,3,3-トリフルオロプロペン」、「化合物1,1-ジフルオロエタン」にそれぞれ相当する。 引用発明1Bの104kPaの圧力は1.04barであるから、引用発明1Bの「104kPaの圧力で-25℃の沸点を有する」は、本願発明の「1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有する」に相当する。 引用発明1Bの「共沸組成物」は、本願発明の「共沸又は共沸様組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1Bとは、「化合物1,1-ジフルオロエタンと3,3,3-トリフルオロプロペンを含み、かつ1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有する、共沸又は共沸様組成物。」である点で一致し、両者は相違しない。 (2)引用発明2との対比・判断 ア 本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「R1243zf」、「R152a」は、本願明細書の【0006】の記載からみて、本願発明の「化合物3,3,3-トリフルオロプロペン」、「化合物1,1-ジフルオロエタン」にそれぞれ相当する。 引用発明2の「蒸発器温度グライドが0.0を有する組成物」とは本願発明の「共沸又は共沸様組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明2とは、「化合物1,1-ジフルオロエタンと3,3,3-トリフルオロプロペンを含む共沸又は共沸様組成物。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点1) 本願発明は1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有するのに対し、引用発明2はそのような特定がされていない点。 イ 相違点1について検討する。 刊行物2の図3/80(摘記(2b))の評価結果は、蒸発器温度を5℃に設定して行われたものであるから(摘記(2a))、引用発明2は3.16?3.27barの圧力で5℃の沸点を有するものであり、本願発明のように1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有するものと解するのが相当である。 そうすると、本願発明と引用発明2は、当該相違点において実質的に相違するものではない。 (3)引用発明1Aとの対比・判断 ア 本願発明と引用発明1Aとを対比する。 引用発明1Aの「HFC-1243zf」、「HFC-152a」は、摘記(1b)の表1からみて、本願発明の「化合物3,3,3-トリフルオロプロペン」、「化合物1,1-ジフルオロエタン」にそれぞれ相当する。 引用発明1Aの「共沸または擬共沸組成物」は、本願発明の「共沸又は共沸様組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1Aとは、「化合物1,1-ジフルオロエタンと3,3,3-トリフルオロプロペンを含む共沸又は共沸様組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 本願発明は1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有するのに対し、引用発明1Aはそのような特定がされていない点。 イ 相違点2について検討する 上記(1)のとおり、引用発明1B(40.7重量パーセントのHFC-1243zfおよび59.3重量パーセントのHFC-152aを含み、かつ104kPaの圧力で-25℃の沸点を有する、共沸組成物)は、本願発明の1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有するという規定を満たすものであるところ、当該引用発明1Bは引用発明1Aの具体例の一つと解されるから、引用発明1Bを包含する引用発明1Aにおいて、当該引用発明1Bか、これに類似するものを採用し、本願発明のように1から6barの圧力で-25℃から25℃の沸点を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 4 審判請求人の主張 (1) 審判請求人は、審判請求書において、次の点を主張している。 ア 引用文献1は、実質的に、共沸組成物について記載も示唆もしない。 引用文献1に係る発明は、本願発明と異なるものであり、また、当業者は、引用文献1に係る発明から、本願発明に容易に想到しないものと思料する。 イ 審査官は、原査定において、引用文献2について、「表中にR-1243zf/R-152a=0/100?100/0の組成物が10%刻みで割合変更された組成例が記載されている」と主張する。しかしながら、当該表は、80ページにも及びものであり、更に、当該表における組成は、0:100?100:0まで10%刻みで、すなわち機械的に、変更されるものである。引用文献2の表は、極めて網羅的なものであり、実質的に、特定の組成の特定の組成物を開示するものではないと思料する。 引用文献2に係る発明、本願発明と異なるものであり、また、当業者は、引用文献2の開示内容から、本願発明に容易に想到しないものと思料する。 (2)しかし、上記のとおり、引用文献1(刊行物1)に記載された引用発明1A、1Bは、いずれも共沸又は共沸様組成物に関するものであり、本願発明は、引用発明1Bであるか、引用発明1Aから容易に想到し得るものである。 また、引用文献2(刊行物2)には、上記引用発明2が具体例として実質的に記載されており、当該引用発明2と本願発明との間に実質的な相違点は見当たらない、 (3)したがって、審判請求人のこれらの主張を採用することはできない。 5 小括 以上検討のとおり、本願発明は、刊行物1又は刊行物2に記載された発明であるか、あるいは、引用発明1Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1又は刊行物2に記載された発明であるか、あるいは、引用発明1Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-07-11 |
結審通知日 | 2019-07-16 |
審決日 | 2019-08-01 |
出願番号 | 特願2015-550130(P2015-550130) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09K)
P 1 8・ 113- Z (C09K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 邦久、磯貝 香苗 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 瀬下 浩一 |
発明の名称 | 1,1-ジフルオロエタン及び3,3,3-トリフルオロプロペンを含有する組成物 |
代理人 | 園田・小林特許業務法人 |