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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
管理番号 1358024
審判番号 不服2019-7182  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-31 
確定日 2020-01-09 
事件の表示 特願2015-93598号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月15日出願公開、特開2016-209139号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月30日の出願であって、平成30年2月27日に手続補正書が提出され、同年6月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成31年2月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年2月20日付け(送達日:同年3月5日)で、同年2月5日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原審における補正の却下の決定の当否について
審判請求人は、審判請求書の請求の趣旨において、「特願2015-093598について、平成31年 2月20日になされた補正却下の決定並びに原査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」としているので、平成31年2月20日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。

[補正の却下の決定の当否の結論]
平成31年2月20日付け補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 平成31年2月20日付け補正の却下の決定の概略

結論

平成31年 2月 5日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、次の理由によって却下します。

理由

請求項1-2についての補正は限定的減縮を目的としている。この場合、補正後の請求項1-2に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、補正後の請求項1-2に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討すると、本願の補正後の請求項1及び2に係る発明は、それぞれ同日出願4の請求項1及び2に係る発明と同一であるから、特許法第39条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により上記結論のとおり決定する。

<引用文献等一覧>
4.特願2015-093597号(特開2016-209138号)


2 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
平成31年2月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である)。

「【請求項1】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており、
さらに、前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられており、
前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、
所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており、
さらに、前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられており、
前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる
ことを特徴とする遊技機。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年9月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体的に設け、
前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており、
さらに、前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられており、
前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、
所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体的に設け、
前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており、
さらに、前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられており、
前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる
ことを特徴とする遊技機。」

3 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1及び2それぞれに記載した発明を特定するために必要な事項である「前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体的に設け」ることに関して、「前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け」と限定することを含むものである。
そして、本件補正後の請求項1及び2それぞれに係る発明は、本件補正前の請求項1及び2それぞれに係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1及び2についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

そこで、本件補正後の請求項1及び2に記載された発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」及び「本件補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明1
本件補正発明1は、上記2(1)に示した、次のとおりのものである(A-Pは、本件補正発明1を分説するため当審にて付与した)。

「【請求項1】
A 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
B 前記遊技盤が装着される本体枠と、
C 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
D 前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
E 前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
F 前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
G 所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
H 前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
I 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
J 前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
K 前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
L 前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
M 前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており、
N さらに、前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられており、
O 前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる
P ことを特徴とする遊技機。」

(2)同日発明1
平成31年2月20日付けの補正の却下の決定の理由で引用された、本願の出願日と同じ日に出願された出願である特願2015-93597号(以下、「同日出願」という。)の、前記補正の却下の決定で本件補正発明1と同一であると判断された、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、次の発明(以下、「同日発明1」という。)が記載されている(a-qは、本件補正発明1に対応して同日発明1を分説するため当審にて付与した)。

「【請求項1】
a 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
b 前記遊技盤が装着される本体枠と、
c 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
d 前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
e 前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
f 前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
g 所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
h 前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
i 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
j 前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
k 前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
l 前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
q 前記カバー手段は、前記下皿における遊技媒体貯留領域の外側に形成されたカバー取付部に取り付けられる
p ことを特徴とする遊技機。」

(3)本件補正発明1と同日発明1との対比
本件補正発明1と同日発明1とを対比する。
同日発明1の構成a乃至l及びpは、本件補正発明1の構成A乃至L及びPと文言が一致しており、それぞれの構成は互いに相当関係にある。
したがって、本件補正発明1と同日発明1は、

「A 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
B 前記遊技盤が装着される本体枠と、
C 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
D 前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
E 前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
F 前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
G 所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
H 前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
I 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
J 前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
K 前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
L 前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしている
P 遊技機。」

である点で一致し、以下の4点で相違する。

相違点1 (構成M)本件補正発明1では「前記内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられて」いるのに対し、同日発明1では当該構成を備えることについて明記されていない点。

相違点2 (構成N)本件補正発明1では「前記内部空間を境として前記下皿が設けられる側の反対側には、遊技媒体を発射するためのハンドル部が設けられて」いるのに対し、同日発明1では当該構成を備えることについて明記されていない点。

相違点3 (構成O)本件補正発明1では「前記膨出部は、前記ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けられる」のに対し、同日発明1では当該特定を有していない点。

相違点4 (構成q)同日発明1では「前記カバー手段は、前記下皿における遊技媒体貯留領域の外側に形成されたカバー取付部に取り付けられる」のに対し、本件補正発明1ではカバー手段をどのように設けるのか明記されていない点。

(4)本件補正発明1についての判断
以下、相違点1-4について検討する。

ア 相違点1について
同日発明1における「内部空間」とは、「遊技者が操作可能な操作装置」を「収容」するためのものであり(構成f)、「下皿」を「設け」る「空間」を、「膨出部における内部空間と左右方向に並設される空間」と規定するものであり(構成h)、「カバー手段」が「備え」る「境界壁」を、「第2下皿部における底壁部の上方空間と内部空間との境界となる境界壁」と規定するものであり(構成k)、「境界壁」の機能について「第2下皿部から第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、第2下皿部から内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにして」いるものである(構成l)。このような内部空間に対し、その後方を閉鎖することについて検討するに、「内部空間と左右方向に並設される空間」に「設けられ」る「下皿」(構成h)及び「第2下皿部における底壁部の上方空間と内部空間との境界となる境界壁」が設けられる「カバー手段」(構成k)については、その後方が閉鎖されていないと、下皿及びカバー手段の後方から、遊技媒体が流出することとなるから、下皿及びカバー手段の後方を閉鎖する部材を設けることは自明であるといえる。しかし、内部空間は、遊技者が操作可能な操作装置を収容するためのものであり、このような内部空間について、その後方を閉鎖した上で、その閉鎖部を扉枠に設けることに必然性はなく、自明であるとはいえない。また、内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部を扉枠に設けることが周知技術であるともいえない。
そして、内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が扉枠に設けられていると、「本体枠に対して扉枠が開けられた状態でも、カバー手段によって下皿から内部空間へ遊技媒体が侵入することを防止するだけでなく、扉枠後方からも内部空間へ遊技媒体等が侵入することを防止でき、内部空間に収容されている操作装置や演出装置の保護機能が向上する」という効果(請求人の審判請求書における主張)を奏するものである。
ここで、平成31年2月20日付け補正の却下の決定の理由では、「[一応の相違点1]
前者が、『内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられており』という構成を具備するのに対して、後者では、そのような特定がされていない点。
(判断)
[一応の相違点1]について
出願人は『内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が扉枠に設けられていない態様』は、同日出願4の明細書には記載されていないことを自認しているし、かつ、このような態様が記載はなくとも自明な態様であるとの疎明すらしていない(同日出願4において出願人が平成31年2月5日に差し出した意見書参照)。
そうすると、『内部空間の後方を閉鎖する閉鎖部が前記扉枠に設けられて』いることについては同願発明において黙示の事項であると理解するのが相当であって、このような黙示の事項の明示的特定の有無を以て実質的な相違点が存在すると評価することはできない。」としている。しかし、上述の通り、相違点1について、実質的な相違点でないとすることはできない。
そうすると、相違点1についての、平成31年2月20日付け補正の却下の決定の上記理由を採用することはできない。
そして、相違点1において、同日発明1を、本件補正発明1と同一とすることはできない。

イ 相違点2について
遊技機において、内部空間を境として下皿が設けられる側の反対側に、遊技媒体を発射するためのハンドル部を設けることは、特開2013-116169号公報(【0022】-【0023】、【0044】、【図1】及び【図7】に記載された、皿ユニット7に演出ボタン装置9を組み込むために形成された装置収容孔7dの、左側に下皿8bが、右下側に発射ハンドル11が設けられること参照)及び特開2014-33692号公報(【0032】-【0033】、【0037】及び【図1】に記載された、遊技装置100を覆うカバーユニット150の、左側に下皿15が、右下部に操作ハンドル14が設けられること参照)それぞれに記載されるように、周知技術である。同日発明1において、内部空間を境として下皿が設けられる側の反対側に、遊技媒体を発射するためのハンドル部を設けることは、単に上記周知技術を付加したものであり、周知技術そのものが奏する効果を超える新たな効果を生じさせるものではない。
また、本件補正発明1から、上記周知技術の構成を削除することで、相違点2に係る同日発明1となり、そのことで新たな効果を生じさせるものではない。
そうすると、相違点2に関して、本件補正発明1と同日発明1は実質同一である。

ウ 相違点3について
遊技機において、膨出部を、ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けることは、特開2013-116169号公報(【図7】に記載された、皿ユニット7が発射ハンドル11の最前部分よりも遊技機の前方に突出していること参照)及び特開2014-33692号公報(【図31】に記載された、カバーユニット150が操作ハンドル14の最前部分よりも遊技機の前方に突出していること参照)それぞれに記載されるように、周知技術である。
同日発明1において、膨出部を、ハンドル部の最前部分よりも遊技機の前方に突出するように設けることは、単に上記周知技術を付加したものであり、周知技術そのものが奏する効果を超える新たな効果を生じさせるものではない。
また、本件補正発明1から、上記周知技術の構成を削除することで、相違点2に係る同日発明1となり、そのことで新たな効果を生じさせるものではない。
そうすると、相違点3に関して、本件補正発明1と同日発明1は実質同一である。

エ 相違点4について
本件補正発明1において、「カバー手段」は、「下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、扉枠の開閉状態にかかわらず下皿本体と一体化するように下皿本体に組み付け」られるものである(構成J)ことからすると、カバー手段は、何らかの手段により、下皿本体と一体化するように下皿本体に組み付けられるものである。また、「下皿」は、「下皿本体を有」するものであり、「遊技媒体が流入可能」である(構成G)ことからすると、上記何らかの手段は、下皿に流入する遊技媒体を邪魔せずに、カバー手段を下皿本体と一体化するように下皿本体に組み付ける必要があり、下皿の遊技媒体が流入する領域の外側でカバー手段を取り付けるようなものとなることは、当業者にとって自明である。そして、下皿の遊技媒体が流入する領域は遊技媒体貯留領域と、該領域の外側で取り付けを行う部分をカバー取付部ということができる。さらに、そのようにカバー手段を設けることにより、新たな効果を生じさせるものではない。
また、同日発明1から、上記自明の構成を削除することで、相違点4に係る本件補正発明1となり、そのことで新たな効果を生じさせるものではない。
そうすると、相違点4に関して、本件補正発明1と同日発明1は実質同一である。

オ 小括
以上のとおり、本件補正発明1と同日発明1は同一の発明ではない。

(5)本件補正発明2
本件補正発明2は、上記2(1)に示したとおりのものであり、本件補正発明1において、(構成F)「前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置」とあったのを、「前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置」としたものである。

(6)同日発明2
同日出願の、前記補正の却下の決定で本件補正発明2と同一であると判断された、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2には、次の発明(以下、「同日発明2」という。)が記載されている。

「【請求項2】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
前記扉枠に設けられ、正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、
所定形状の底壁部と所定高さの立壁部を設けた下皿本体を有して前記扉枠に設けられ、所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を覆うカバー手段を前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け、
前記カバー手段は、前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え、
前記境界壁が、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するとともに、前記第2下皿部から前記内部空間へ遊技媒体が侵入しないようにしており、
前記カバー手段は、前記下皿における遊技媒体貯留領域の外側に形成されたカバー取付部に取り付けられる
ことを特徴とする遊技機。」

この同日発明2は、同日発明1において、(構成f)「前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置」とあったのを、「前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置」としたものである。

(7)本件補正発明2と同日発明2との対比、判断
本件補正発明2と同日発明2とを対比する。
同日発明2の「前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置」は、本件補正発明2の「前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置」に相当する。
また、その余の構成については、上記「(3)本件補正発明1と同日発明1との対比」で示したのと同様であり、本件補正発明2と同日発明2とは、上記相違点1-4で相違する。
そして、上記「(4)本件補正発明1についての判断」で示したことと同様に、相違点3において、本件補正発明2は、同日発明2と同一であるとはいえず、本件補正発明2と同日発明2は同一の発明ではない。

(8)まとめ
したがって、本件補正発明1及び2は、特許法第39条第2項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではなく、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。
よって、本件補正発明1及び2は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

4 原審における補正の却下の決定の当否についてのむすび
以上のとおりであるので、平成31年2月20日付けの補正の却下の決定は取り消す。

第3 原査定について
1 本願発明
上記「第2 原審における補正の却下の決定の当否について」で検討したとおり、平成31年2月20日付けの補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1-2に係る発明は、上記「第2 2(1)」に示した、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概略


2.(先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願日前の下記の出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

3.(同日出願)この出願の下記の請求項に係る発明は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由2(先願)について
・請求項 1-2
・先願 3

●理由3(同日出願)について
・請求項 1-2
・同日出願 4

<引用文献等一覧>
3.特願2014-239555号(特許第6198247号公報)
4.特願2015-093597号(特開2016-209138号)


3 原査定の拒絶の理由についての判断
(1)先願について
原査定の拒絶の理由2における先願3は、本願の出願前に出願され、その後設定の登録がされた出願である特願2014-239555号(以下、「先願」という。)であり、その特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1及び2には、次の発明(以下、「先願発明1」及び「先願発明2」という。)が記載されている。

先願発明1
「【請求項1】
所定の遊技が行われる遊技領域と、
正面視において該遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
所定高さの周壁を有し、前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿は、正面側に露出する第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられ、正面側に露出しない第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を前記第1下皿部の周壁の高さよりも高い位置で覆うカバー手段を設け、
前記カバー手段によって、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止し、前記内部空間へ遊技媒体が流出しないようにした
ことを特徴とする遊技機。」

先願発明2
「【請求項2】
所定の遊技が行われる遊技領域と、
正面視において該遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、
所定高さの周壁を有し、前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿が設けられ、
前記下皿は、正面側に露出する第1下皿部と、該第1下皿部に一体的に設けられ、正面側に露出しない第2下皿部とを含み、
前記第2下皿部の上方を前記第1下皿部の周壁の高さよりも高い位置で覆うカバー手段を設け、
前記カバー手段によって、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止し、前記内部空間へ遊技媒体が流出しないようにした
ことを特徴とする遊技機。」

そして、本願の請求項1に係る発明と、先願発明1とは、少なくとも以下の2点で相違しており、本願の請求項1に係る発明と先願発明1は同一の発明ではない。

相違点1:カバー手段について、本願の請求項1に係る発明では、カバー手段を「前記下皿本体と分離可能な別部材で構成したうえで、前記扉枠の開閉状態にかかわらず前記下皿本体と一体化するように前記下皿本体に組み付け」と特定しているのに対し、先願発明1では「第1下皿部の周壁の高さよりも高い位置で覆う」カバー手段と特定している点。

相違点2:本願の請求項1に係る発明では、カバー手段は、「前記第2下皿部における前記底壁部の上方空間と前記内部空間との境界となる境界壁を備え」、「前記境界壁が」、前記第2下皿部から前記第1下皿部側以外の下皿外部へ遊技媒体が流出することを阻止するのに対し、先願発明1ではカバー手段が境界壁を備えるとの特定を有していない点。

また、本願の請求項2に係る発明と先願発明2も同様に、少なくとも上記2点で相違しており、同一の発明ではない。

したがって、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許法第39条第1項の規定によって特許を受けることができないとすることはできない。

(2)同日出願について
原査定の拒絶の理由3における同日出願4(以下、「同日出願」という。)は、本願と同日に出願されたものであり、平成31年2月20日付け(送達日:同年3月5日)で、同年2月5日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当該審判(不服2019-7181号)について審理がなされ、平成31年2月20日付け補正の却下の決定が取り消されると共に、「原査定を取り消す。本願の発明は、特許すべきものとする。」と、本審決と同時に審決されるものである。
該審決によれば、同日出願の請求項1及び2に係る発明は、平成31年2月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された、上記「第2 3(2)」及び「第2 3(6)」で示したとおりのものである。
そうすると、上記「第2 3 本件補正の適否」で示したとおり、本願の請求項1及び2に係る発明と、同日出願の請求項1及び2に係る発明は、同一の発明ではない。
したがって、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許法第39条第2項の規定によって特許を受けることができないとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-2に係る発明について、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審決日 2019-12-25 
出願番号 特願2015-93598(P2015-93598)
審決分類 P 1 8・ 4- WYA (A63F)
P 1 8・ 575- WYA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 木村 隆一
田邉 英治
発明の名称 遊技機  

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