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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61M
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 A61M
管理番号 1358048
審判番号 不服2018-13356  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-05 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 特願2014- 99220「医療用シース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-213682、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月13日の特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年11月 8日付け:拒絶理由通知
平成29年12月21日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 2月 1日付け:拒絶理由通知<最後>
平成30年 4月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 4月17日付け:拒絶理由通知<最後>
平成30年 6月22日 :意見書の提出
平成30年 7月 3日付け:拒絶査定
平成30年10月 5日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 平成30年10月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所を分かりやすくするため、当審が付与したものである。)
「中空のシースチューブと、
前記シースチューブの基端側に接続されたシースハブとを備え、
前記シースハブは、ハブ本体と、前記ハブ本体の両側に拡がる2つの把持部とを有し、
2つの前記把持部はそれぞれ、先端側の面、基端側の面及び外端面を有し、前記先端側の面が基端側に凸な曲面であり、前記基端側の面が先端側に凸な曲面であり、前記外端面が外端部において前記先端側の面と前記基端側の面との間に設けられた、指を掛けることができる前記ハブ本体側に傾斜した面であり、
前記把持部の最も薄い部分と前記シースハブの中心との距離は、前記把持部の最も薄い部分と前記把持部の前記基端側の面の外端部との距離よりも短い、医療用シース。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年4月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「中空のシースチューブと、
前記シースチューブの基端側に接続されたシースハブとを備え、
前記シースハブは、ハブ本体と、前記ハブ本体の両側に拡がる2つの把持部とを有し、
2つの前記把持部はそれぞれ、先端側の面が基端側に凸な曲面であり、基端側の面が先端側に凸な曲面であり、
前記把持部の最も薄い部分と前記シースハブの中心との距離は、前記把持部の最も薄い部分と前記把持部の前記基端側の面の外端部との距離よりも短く、
前記先端側の面の外端部は、前記基端側の面の外端部よりも、前記ハブ本体から離れた位置にある、医療用シース。」

2 補正の適否について
(1)本件補正の概要
本件補正は、本件補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「把持部」について「先端側の面、基端側の面及び外端面を有し」及び「前記外端面が外端部において前記先端側の面と前記基端側の面との間に設けられた、指を掛けることができる前記ハブ本体側に傾斜した面であり」との限定を付与する(以下「補正事項1」という。)とともに、「前記先端側の面の外端部は、前記基端側の面の外端部よりも、前記ハブ本体から離れた位置にある」との発明特定事項を削除したもの(以下「補正事項2」という。)である。

(2)目的要件
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
事案に鑑み、まず補正事項2について検討する。補正事項2は、発明特定事項を削除するものであるところ、これにより先端側の面及び基端側の面の外端部のハブ本体からみた位置関係について、基端側の面の外端部は、先端側の面の外端部よりも、ハブ本体から離れた位置にある事項も含むものとなり、特許請求の範囲を拡張するものであるといえることから、補正事項1について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成30年4月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載されたとおりのものであり、また、その請求項2及び3に係る発明(以下それぞれ「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項2】
前記把持部の前記先端側の面は、前記把持部の前記基端側の面よりも曲率半径が小さい、請求項1に記載の医療用シース。
【請求項3】
前記先端側の面は、外端部において前記ハブ本体側よりも曲率半径が小さい、請求項1又は2に記載の医療用シース。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明1?3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2009/0105652号明細書
引用文献2:特表2005-537060号公報

3 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(日本語訳は当審で付与した。)。
「[0022] The locking nut 34 is threaded so as to threadingly engage a portion of a handle 42 disposed at a proximal end 20A of the sheath assembly 20.」
([0022]ロックナット34は、シースアセンブリ20の近位端20Aに配置されたハンドル42の一部とかみ合うように螺合される。)
「[0024] Reference is now made to FIGS. 2A-3 in describing further details regarding the sheath assembly 20. As mentioned, the sheath assembly includes the sheath body 44, which defines a substantially cylindrical bore extending between the proximal end 20A and distal end 20B thereof. The handle 42 at the proximal end 20A of the sheath assembly 20 is attached to the sheath body 44 and is splittable such that the sheath assembly can be separated into two along a dividing plane 48 corresponding to the longitudinal length of the sheath body. This enables the sheath assembly 20 to be split apart during removal of the sheath from the vein.」
([0024]ここで、シース組立体20についてより詳細に示している図2A?3を参照する。上述のように、シース組立体は、その近位端20Aと遠位端20Bとの間に延びる実質的に円筒形の孔を画定するシース本体44を含む。シース組立体20の近位端20Aのハンドル42は、シース本体44に取り付けられ、シース本体の長手方向の長さに対応する分割面48に沿って2つに分割することができるようになっている。これにより、シースを静脈から除去する際に、シースアセンブリ20を分割することを可能にする。)
「図1A


「図1B


「図2A


「図2B



(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 段落[0024]の「シース組立体20の近位端20Aのハンドル42は、シース本体44に取り付けられ、シース組立体は、シース本体の長手方向の長さに対応する分割面48に沿って2つに分割することができるようになっている。」との記載から、シース組立体の分割に際して、ハンドル42を用いることが記載されているといえることから、ハンドル42は把持部を有する、といえる。
b 段落[0022]の「ロックナット34は、シースアセンブリ20の近位端20Aに配置されたハンドル42の一部とかみ合うように螺合される。」との記載から、ハンドル42の近位端20Aにはロックナット34が螺合されるといえ、図1Aには、ハンドル42はシース本体44とハンドル42の把持部とを接続する円筒形の部材が記載されているといえる。
c 図1A、図1B、図2A、2Bには、ハンドル42の近位端20A側の面が遠位端20B側に凸な曲面が図示されているといえる。
d 図1A、図2Aには、ハンドル42の遠位端20B側の面が近位端20A側に凸な曲面を有する、といえる。
e 図2Bの記載から、分割面48が円筒形の部材の中心と同軸である、といえる。
f 図2Aの記載から、ハンドル42の遠位端20B側の外端部は、近位端20A側の外端部よりも、分割面48から離れた位置にある、といえる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「円筒形のシース本体44と、
前記シース本体44の近位端20A側に接続されたハンドル42とを備え、
前記ハンドル42は、シース本体44とハンドル42の把持部とを接続する円筒形の部材と、前記円筒形の部材の両側に拡がる2つの把持部とを有し、
2つの前記把持部はそれぞれ、遠位端20B側の面が、近位端20A側に凸な曲面であり、近位端20A側の面が、遠位端20B側に凸な曲面であり、
前記遠位端20B側の外端部は、前記近位端20A側の外端部よりも、前記分割面48から離れた位置にある、シース組立体20。」

(2)引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
「【0022】
図2及び3を参照すると、二つの正反対に対向するリビール48が鞘ハブ40上に配置されている。好ましくは、各リビール48を鞘14の裂き継ぎ目58の一つと整列させて、それらリビール48と裂き継ぎ目58とが同一平面上にあるようにする鞘ハブ40は、鞘14の手元端52に、例えば接着、超音波溶接、インサート成形又は当該技術に熟達した者に知られた他の方法により、固定的に接続されている。前後軸『L』は、鞘14及び鞘ハブ40を通じて延びている。鞘ハブ40は、第一及び第二の正反対に対向する翼付きのタブ42を含む;第一及び第二のタブ42は、それぞれ鞘14の前後軸『L』に垂直な直角部分44と斜めの部分46を含む。翼付きのタブ42は、鞘ハブ40の正反対に対向するリビール48及び鞘14の裂き継ぎ目58を含む面から離れて広がっている。図3に示すように、角『β』は、翼42の各々の直角部分44と斜めの部分46との間に広がっている。角『A』は約90°から約179°までの範囲にある。角『β』は、好ましくは約130°と約140°との間にあるが、当該技術に熟達した者は、角『β』が他の範囲でもあり得ることに気付くだろう。翼付きタブ42の斜めの部分(複数)46は、のタブ46を掴むことを助けるために、それらの手元面上に盛り上った畦47を含む。その代わりとして、バンプス又はクロスハッチド・パターン(図示せず)のような他のタブ42上の盛り上った特徴でも、翼付きのタブ42を掴むことを助けることができる」
「【0036】
図7を参照すると、鞘14は、二つの翼付きタブ42を掴み、この翼付きタブ42の各々の斜めの部分46の手元又は頂部表面に、下向き又は末端方向の力(ディスタル・フォース)Fd1、Fd2を加え、且つそのことをを、翼付きタブ42の各々の末端表面の各翼付きタブ42の下向きの力が加えられている点よりも鞘14の前後軸『L』に近い各タブ上の場所に、手元方向の力(プロキシマル・フォース)Fp1、Fp2を加えながら行うことにより、裂かれる。好ましくは、挿入する医師は、翼付きタブ(複数)42を、自分の親指を各翼付きタブ42の傾斜した部分46の頂部に置き、且つ自分の人指し指を各タブ42の下に滑らせることにより、掴む。末端方向の力Fd1、Fd2は、挿入する医師の親指により加えられ、手元方向の力Fp1、Fp2は、挿入する医師の人指し指により加えられる。この相反する力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2の戦略的な位置における印加は、挿入する医師が鞘ハブ40及び鞘14を分割するのを助ける本発明の翼付きタブ42のデザインを利用するカップルを作り出す。挿入する医師は、末端方向及び手元方向の力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2の印加点の間に直接位置している二つの点の周りに、モーメントを作り出し、その結果、翼付きタブ42の線R1及びR2に沿う回転が生じ、それが、鞘ハブ40を、鞘ハブ40の対向するリビール48及び鞘14の裂き継ぎ目58を含む面に沿って分割するように強いる。本質的に、鞘ハブ40の翼付きタブ42は、鞘ハブ40の中心上で、上向きに(手元方向に)引き離す『てこ』として使われる。これは、手元方向の力Fp1、Fp2が各翼付きタブ42の底部に加えられている点を支点として利用し、末端方向の力Fd1、Fd2を各翼付きタブ42の斜めの部分46の手元表面上の点に加えることにより達成される。各翼付きタブ42には二つの相反する力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2が加えられているので、鞘ハブ40の自然な反応は、鞘40の対向するリビール48及び鞘14の裂き継ぎ目58を含む面『P』に沿って割れることである。この鞘14及び鞘ハブ40の割れは、翼付きタブ(複数)42がそれぞれ、相反する末端方向及び手元方向の力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2により作り出され、力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2の印加点間に置かれた、概ねA1、A2にある軸を中心に回転することを可能とする。おおよその回転方向は、図7にR1及びR2で示す。このデザインは、挿入する医師に、末端方向の力Fd1、Fd2を翼付きタブ(複数)42の各々の外側に、及び手元方向の力Fp1、Fp2を鞘14の前後軸『L』により近い点に加えさせることで、結果的に、手元方向で外向きの力Fp01、Fp02を鞘ハブ40の中心に加えることを可能にしている。
【0037】
翼付きタブ42の各々の傾斜したデザインは、挿入する医師が鞘14と共に作業している間に有する『てこ』の力を大幅に向上させる。翼付きタブ42の各々の斜めの部分46は、挿入する医師が所望の位置に鞘14を持って行く操作を助ける。翼付きタブ42の斜めの部分46は又、挿入する医師が、鞘14が患者の体に完全に挿入される時、自分の指をタブ42の各々の下まで伸ばすことを可能にし、それにより、挿入する医師に少なくとも一つの指を各タブ42の下に置き、カテーテルをその場に残しながら鞘14を引き抜くために、鞘14を前後方向に割る労力でより大きな『てこ』の力を得ることを可能にする。」
「図3


「図5



(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
段落【0036】の「挿入する医師は、翼付きタブ(複数)42を、自分の親指を各翼付きタブ42の傾斜した部分46の頂部に置き、且つ自分の人指し指を各タブ42の下に滑らせることにより、掴む。末端方向の力Fd1、Fd2は、挿入する医師の親指により加えられ、手元方向の力Fp1、Fp2は、挿入する医師の人指し指により加えられる。この相反する力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2の戦略的な位置における印加は、挿入する医師が鞘ハブ40及び鞘14を分割するのを助ける本発明の翼付きタブ42のデザインを利用するカップルを作り出す。」との記載、段落【0022】の「翼付きタブ42の斜めの部分(複数)46は、のタブ46を掴むことを助けるために、それらの手元面上に盛り上った畦47を含む。」との記載、及び、図3から翼付きタブ42の傾斜した部分46の手元面及び末端面に畦47が設けられた点が見て取れることから、医師は各翼付きタブ42の傾斜した部分46の頂部に親指を置くとともに、傾斜した部分の末端面側に人差し指を置き、相反する力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2を加えることにより、鞘ハブ40及び鞘14の分割を行う、といえる。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されていると認められる。
「鞘ハブ40及び鞘14の分割は、医師が各翼付きタブ42の傾斜した部分46の頂部に親指を置くとともに、傾斜した部分の末端面側に人差し指を置き、相反する力Fd1、Fd2及びFp1、Fp2を加えることにより行う技術」

4 対比・判断
(1)本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「シース本体44」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明1の「シースチューブ」に相当する。以下同様に、「円筒形」は「中空」に、「近位端20A」は「基端」に、「ハンドル42」は「シースハブ」に、「遠位端20B」は「先端」にそれぞれ相当する。
イ 引用発明の「円筒形の部材」は、シース本体44とハンドル42とを接続する部材であるから、本願発明1の「ハブ本体」に相当する。
ウ 引用発明の「遠位端20B側の面は、近位端20A側に凸な曲面であ」る態様は、本願発明1の「先端側の面が先端側に凸な曲面であ」る態様に相当する。
エ 引用発明の「近位端20A側の面は、遠位端20B側に凸な曲面であ」る態様は、本願発明1の「基端側の面が先端側に凸な曲面であ」る態様に相当する。
オ 引用発明の「前記遠位端20B側の外端部は、前記近位端20A側の外端部よりも、前記分割面48から離れた位置にある」は、図2Bから分割面48が円筒形の部材の中心と同軸であることから、本願発明1の「前記先端側の外端部は、前記基端側の面の外端部よりも、前記ハブ本体から離れた位置にある」に相当する。

(2) 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「中空のシースチューブと、
前記シースチューブの基端側に接続されたシースハブとを備え、
前記シースハブは、ハブ本体と、前記ハブ本体の両側に拡がる2つの把持部とを有し、
2つの前記把持部はそれぞれ、先端側の面が先端側に凸な曲面であり、基端側の面が先端側に凸な曲面であり、
前記先端側の外端部は、前記基端側の面の外端部よりも、前記ハブ本体から離れた位置にある、医療用シース。」

【相違点】
本願発明における把持部の最も薄い部分とシースハブの中心との距離は、把持部の最も薄い部分と把持部の基端側の面の外端部との距離よりも短いのに対して、引用発明の把持部ではそのように構成されているか明らかでない点。

(3)判断
上記相違点について検討すると、引用文献2技術は、上記相違点に係る本願発明1の構成に相当するものとはいえず、引用文献2には「把持部の最も薄い部分とシースハブの中心との距離は、把持部の最も薄い部分と把持部の基端側の面の外端部との距離よりも短い」点について記載も示唆もされていないし、この点を公知の技術又は周知の技術であるとする証拠もない。
そして、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項により、「てこの支点となる人差し指が、作用点となるハブ本体のスリットの部分に近い位置になり、力点となる親指が作用点から遠い位置となる結果、ハブ本体のスリットの部分に効率良く大きな力を加え、シースを容易に引き裂くことが可能となる」という格別の効果を奏するものである。
してみると、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明であるとはいえず、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるところ、本願発明2、3は本願発明1の構成を全て含むものであり、少なくとも上記相違点で相違することから、上記(3)で示した理由と同じ理由により、本願発明2、3は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5 小括
以上の検討から、本願発明1?3は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1?3はいずれも、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-23 
出願番号 特願2014-99220(P2014-99220)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61M)
P 1 8・ 57- WY (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 将彦  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 沖田 孝裕
芦原 康裕
発明の名称 医療用シース  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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