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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1358087
審判番号 不服2018-14616  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-02 
確定日 2020-01-07 
事件の表示 特願2015-541142「拡張可能なステントを封止するためのステント弁送達システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日国際公開、WO2014/072439、平成27年11月26日国内公表、特表2015-533596、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年11月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月8日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成29年8月24日付けで拒絶理由が通知がされ、平成30年1月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年6月27日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-14に記載の発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-534509号公報
2.国際公開第2006/028821号
3.特開2000-37403号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-14に記載の発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年1月29日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ステント弁送達システムであって、
ステント弁が装填された送達カテーテルを含み、ステント弁は、液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含み、送達カテーテルは、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲む封じ込めシースを含み、封じ込めシースは少なくとも部分的に液体で充填されており、膨潤性材料は少なくとも部分的に液体に露出されており、封じ込めシースはシールの外向きの膨潤を妨げる、ステント弁送達システム。」

本願発明2、4、6-14は、本願発明1を減縮した発明である。

「【請求項3】
患者の体外にあるステント弁送達システムであって、
ステント弁が装填された送達カテーテルを含み、ステント弁は、液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含み、膨潤性材料は、液体との接触によって少なくとも部分的に水和された状態にあり、送達カテーテルは、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲む封じ込めシースを含み、封じ込めシースは、少なくとも部分的に水和された膨潤性材料の外向きの膨潤を妨げる、ステント弁送達システム。」

「【請求項5】
ステント弁送達システムであって、
液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含むステント弁と、
送達カテーテルとを含み、送達カテーテルは、
封じ込めシースを含み、封じ込めシースは、少なくともシースが閉鎖位置にある場合、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲み、送達カテーテルはさらに、
封じ込めシースへの液体の導入用のポートを含み、
使用時、ステント弁が送達カテーテルに一旦装填されると、膨潤性材料は、ポートを通って封じ込めシース内に導入された液体に露出され、膨潤性材料の外向きの膨潤が封じ込めシースによって妨げられる、ステント弁送達システム。」

第4 引用文献及び引用発明
(1)引用文献1について
(1-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
ア.記載事項
「【0001】
本発明は血管系における装置、システム、及び使用方法に関する。本発明は特に自然な弁の交換及び増強のうち少なくともいずれか一方のための装置、システム、及び方法に関する。」
「【0051】
図8A及び8Bは本発明の実施例におけるシステム866を示す断面図である。ここで開示されるように、システム866は長尺状搬送カテーテル868に対して連結される循環弁800を備える。システム866は後退可能なシース870を更に備える。循環弁800はシース870及び搬送カテーテル868の間に解放自在に位置される。例えば、図8Aは実施例において弁800を非配備状態に解放自在に保持すべく後退可能なシース870が搬送カテーテル868の少なくとも一部の周囲に位置されることを示す。図8Bは実施例においてシース870が搬送カテーテル868に対して後退され、これにより弁800が部分的に配備された状態に延びることができることを示す。」
「【0061】
付加的な実施例において、循環弁800は弁フレーム802の周囲に位置されるシール材料801を更に備える。一実施例において、移植されると、組織、シール材料801は液体により膨張し、弁フレーム802と、弁800が移植される組織との間の容積を占め、これにより循環弁800の外側の周囲の液体の漏れを防止する。」

イ.図示事項
図8Aより、シース870が循環弁800を全体的に取り囲む点が看取される。

(1-2)上記記載及び図示から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、血管系における弁の増強のためのシステムに関するものである(【0001】)。
b 血管系における弁の増強のためのシステムは、長尺状搬送カテーテル868、循環弁800及びシース870を備えるシステム866からなるものであり、循環弁800が連結される長尺状搬送カテーテル868を備えるシステム866を含む(【0001】、【0051】、図8A)。すなわち、該増強のためのシステムは、循環弁800が連結されたシステム866を含む。また、システム866は、シース870を備える(【0051】)。
c シース870は、循環弁800を全体的に取り囲んでいる(図8A)。
d 循環弁800は、弁フレーム802を有し、該弁フレーム802の周囲に、液体により膨潤するシール材料801が位置している(【0061】)。すなわち、循環弁800は、液体により膨潤するシール材料を含む。また、シース870は、シール材料801が位置する循環弁800を全体的に取り囲んでいる(【0061】、図8A)。そして、循環弁800が血管内に移植されると、シール材料801が液体により膨張する(【0061】)。

(1-3)上記(1-1)、(1-2)を踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「血管系における弁の増強のためのシステムであって、
該増強のためのシステムは、循環弁800が連結されたシステム866を含み、
循環弁800は、液体により膨潤するシール材料を含み、
システム866は、シール材料801が位置する循環弁800を全体的に取り囲むシース870を備え、
循環弁800が血管内に移植されると、シール材料801が液体により膨張する
血管系における弁の増強のためのシステム。」

(2)引用文献2について
(2-1)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献2には、図面とともに次の記載がある。なお、括弧内の日本語は、対応する特表2008-511410号公報に基づくものである。
「[0002] The present invention relates to medical devices. More particularly, the invention relates to a delivery system for implantation of an intraluminal medical device in a body vessel.」(本発明は、医療器具に関し、より詳しくは、体管腔内に管腔内医療装置を移植するデリバリシステム(送り出し装置)に関する。)
「[0003] Minimally invasive techniques and instruments for placement of intraluminal medical devices have been developed over recent years and are frequently used to deliver and deploy an intraluminal medical device at a desired point of treatment. In these techniques, a delivery system is used to carry the intraluminal medical device through a body vessel to the point of treatment. Once the point of treatment is reached, the intraluminal medical device is deployed from the delivery system. The delivery system is subsequently withdrawn from the point of treatment and, ultimately, the body vessel. A wide variety of treatment devices that utilize minimally invasive technology has been developed and includes stents, stent grafts, occlusion devices, infusion catheters, prosthetic valves, and the like.」(近年、管腔内医療装置の配置を行う低侵襲技術および器具が開発されており、所望治療部位に管腔内医療装置を送達しかつ配置するのに頻繁に使用されている。これらの技術では、管腔内医療装置を、体管腔を通して治療部位に運搬するためにデリバリシステムが使用されている。治療部位に到達したならば、デリバリシステムから分離して管腔内医療装置が配置される。次に、デリバリシステムが治療部位から引出され、最終的には体管腔から引出される。低侵襲技術を使用する多種多様な治療装置が開発されており、これらの治療装置として、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等がある。)
「[0047] Figure 1 illustrates a delivery system 10. The delivery system 10 includes an elongate sheath or tubular member 12 having a distal end 14 which is insertable in a body vessel and a proximal end 16 that can be coupled to a connector 18 such as a Touhy Borst adapter, for example. The tubular member 12 is formed of a flexible material, such as polyurethane or other suitable polymeric material, for example.」(図1には、デリバリシステム10が示されている。デリバリシステム10は細長いシースすなわち管状部材12を有し、管状部材12は、体管腔内に挿入できる遠位端14と、例えば、トーイ・ボースト(Touhy Borst)アダプタのようなコネクタ18に連結できる近位端16とを備えている。管状部材12は、例えばポリウレタンまたは他の適当なポリマー材料のような可撓性材料で形成される。)
「[0050] Figure 3 shows the distal end 122 of the delivery system 110 illustrated in Figure 1 according to an exemplary embodiment of the invention. Repeated structure is represented by the same two digit reference numerals from Figure 1 preceded by a 1. For example, the delivery system is designated by the reference numeral 110. In the embodiment shown, the dilator 120 is formed to create a space or hydration channel 140 between the dilator 120 and an inner wall 141 of the tubular member 112.」(図3には、図1に示したデリバリシステムの、本発明の一例示実施形態によるデリバリシステム110の遠位端122が示されている。ここで、図1に示した構造物と同じ構造物は、図1に使用した2桁の参照番号の前に1を付した参照番号で示されている。例えば、デリバリシステムは、参照番号110で示されている。図示の実施形態では、拡張器120は、拡張器120と管状部材112の内壁141との間に1つのスペースすなわち水和チャネル140を形成するように構成されている。)
「[0074] The hydration can occur prior to insertion or delivery of the intraluminal medical devices 128, 228, 328, 428, 528, 628, 728, 828, 928, 1028, during insertion, or during delivery, as desired.」(水和は、所望により、管腔内医療装置128、228、328、428、528、628、728、828、928、1028の挿入前または送達前または挿入中または送達中に行うことができる。)
「[0075] For the embodiment illustrated in Figures 3 and 4, hydration is accomplished by the following steps. The steps are represented by the flow diagram 170 in Figure 21. The delivery system 110 is provided having the structure shown and described in Figures 3 and 4, illustrated by 172. A hydrating fluid (not shown) is introduced into the hydration channel 140 at the proximal end 124 of the dilator 120, illustrated by 174. The hydrating fluid can be introduced into the hydration channel 140 by any conventional means such as using a syringe connected to the connector 118, for example. Various hydrating fluids can be used, as described above, such as a saline solution and blood, for example. The hydrating fluid is caused to flow through the hydrating channel 140 to the device chamber 130, illustrated by 176. Once in the device chamber 130, the hydrating fluid communicates with the intraluminal medical device 128 to provide hydration thereof, illustrated by 178. The hydrating fluid can then be removed or left to remain in the hydration channel 140 and the device chamber 130 as desired.」(図3および図4に示す実施形態では、水和は下記段階で行われる。この段階は、図21のフローチャート170により示されている。参照番号172で示す段階では、図3および図4に示し、かつ、説明した構造を有するデリバリシステム110が用意される。参照番号174で示す段階では、水和流体(図示せず)が、拡張器120の近位端124の水和チャネル140内に導入される。水和流体は、例えば、コネクタ118に連結されるシリンジを使用する任意の従来手段により水和チャネル140内に導入できる。前述のように、例えば、食塩水、および、血液等の種々の水和流体を使用できる。参照番号176で示す段階では、水和流体は、水和チャネル140を通って装置チャンバ130に導かれる。装置チャンバ130内に到達したならば、参照番号178で示す段階で、水和流体は管腔内医療装置128に連通し、この管腔内医療装置128を水和する。次に、水和流体は、所望により、取出されるか、水和チャネル140、および、装置チャンバ130内に残される。)

(2-2)上記記載から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献2に記載された技術は、体管腔内に管腔内医療装置を移植するデリバリシステム(送り出し装置)に関する([0002])。
b ステント、プロテーゼ弁等の管腔内医療装置を体管腔を通して治療部位に運搬するためのデリバリシステムである([0003])。
c デリバリシステム110は、シース112を有し、シース112の内壁141と拡張器120との間、すなわち、内壁141の内側に水和チャネル140が形成される。([0047]、[0050])。
d 管腔内医療装置128をその送達前または送達中に水和するものであり、水和流体が、水和チャネル140内に導入され、管腔内医療装置128を水和する([0074]-[0075])。

(2-3)上記(2-1)、(2-2)を踏まえると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。

「ステント、プロテーゼ弁等の管腔内医療装置を体管腔を通して治療部位に運搬するためのデリバリシステムであって、
シース112を有し、シース112の内壁141の内側に水和チャネル140を形成し、
管腔内医療装置128をその送達前または送達中に水和するものであり、
水和流体が、水和チャネル140内に導入され、管腔内医療装置128を水和する
デリバリシステム。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「血管系における弁の増強のためのシステム」は、本願発明1の「ステント弁送達システム」に相当する。また、引用発明の「循環弁」及び「シース」は、その機能または構造からみて、それぞれ本願発明1の「ステント弁」及び「封じ込めシース」に相当する。
引用発明の「長尺状搬送カテーテル868、循環弁800及びシース870を備えるシステム866」は、その機能または構造からみて、本願発明1の「送達カテーテル」に相当する。したがって、引用発明の「循環弁800が連結されたシステム866」は、本願発明1の「ステント弁が装填された送達カテーテル」に相当する。また、引用発明の「システム866は、シール材料801が位置する循環弁800を全体的に取り囲むシース870を備え」との構成は、本願発明1の「送達カテーテルは、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲む封じ込めシースを含み」との構成に相当する。
引用発明の「液体により膨潤するシール材料」は、本願発明1の「液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシール」に相当することから、引用発明の「循環弁800は、液体により膨潤するシール材料を含み」との構成は、本願発明1の「ステント弁は、液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含み」との構成に相当する。

そうすると、両者は、
「ステント弁送達システムであって、
ステント弁が装填された送達カテーテルを含み、ステント弁は、液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含み、送達カテーテルは、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲む封じ込めシースを含む、
ステント弁送達システム」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、封じ込めシースは少なくとも部分的に液体で充填されており、膨潤性材料は少なくとも部分的に液体に露出されており、封じ込めシースはシールの外向きの膨潤を妨げるのに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(2)相違点1についての検討
引用文献2記載事項の「ステント、プロテーゼ弁等の管腔内医療装置」、「シース」、「デリバリシステム」は、その構造または機能からみて、それぞれ、本願発明1の「ステント弁」、「封じ込めシース」、「ステント弁送達システム」に対応する構成であるといえる。
また、引用文献2記載事項の、「シースの内壁の内側に水和チャネルが形成され」、「水和流体が、水和チャネル内に導入され」る構成は、シース内に液体を導入する構成であるといえるから、「封じ込めシースは少なくとも部分的に液体で充填されて」いる構成であるといえる。そして、管腔内医療装置を水和するタイミングは、管腔内医療装置の「送達前または送達中」である。
引用発明は、「循環弁800が血管内に移植されると、シール材料801が液体により膨張する血管系における弁の増強のためのシステム」であるから、循環弁800を血管内に移植した後に、液体によりシール材料の膨張を行わせるものといえる。一方、引用文献2記載事項によれば、引用文献2に記載されたデリバリシステムは、「ステント、プロテーゼ弁等の管腔内医療装置」を「その送達前または送達中に水和する」ものであり、管腔内医療装置を水和するタイミングが引用発明のものとは異なっている。
そして、引用文献1には、液体によるシール材料の膨張を循環弁の移植後に行うシステムのみが開示されており、引用発明において、シール材料の液体による膨張のタイミングを循環弁の移植前や移植中に変更することは、予定されていないといえることから、引用発明に引用文献2記載事項を適用する動機付けはないというべきである。
また、原査定の拒絶の理由において示された引用文献3にも、そのような動機付けはもちろんのこと、本願発明1を拒絶すべき理由を構成し得る技術的事項等は示されていない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、原査定の拒絶の理由に引用された引用発明及び引用文献2-3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2、4、6-14について
本願発明2、4、6-14は、請求項1を引用する発明であり、引用発明との間に上記相違点1を含む相違点を有するものであるところ、上記1.(2)で検討した理由と同じ理由により、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
(1)対比
本願発明3と引用発明とを対比すると、両者は、
「患者の体外にあるステント弁送達システムであって、
ステント弁が装填された送達カテーテルを含み、ステント弁は、液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含み、送達カテーテルは、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲む封じ込めシースを含む、
ステント弁送達システム」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
本願発明3では、膨潤性材料は、液体との接触によって少なくとも部分的に水和された状態にあり、封じ込めシースは、少なくとも部分的に水和された膨潤性材料の外向きの膨潤を妨げるのに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(2)相違点2についての検討
上記相違点2は、上記相違点1と実質的に同じものであるといえることから、上記1.(2)で検討した理由と同じ理由により、本願発明3も、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明とを対比すると、両者は、
「ステント弁送達システムであって、
液体が接触すると膨潤する膨潤性材料を含むシールを含むステント弁と、
送達カテーテルとを含み、送達カテーテルは、
封じ込めシースを含み、封じ込めシースは、少なくともシースが閉鎖位置にある場合、シールが位置するステント弁の少なくとも一部を取り囲み、送達カテーテルはさらに、
封じ込めシースへの液体の導入用のポートを含み、
使用時、ステント弁が送達カテーテルに一旦装填されると、膨潤性材料は、ポートを通って封じ込めシース内に導入された液体に露出され、膨潤性材料の外向きの膨潤が封じ込めシースによって妨げられる、
ステント弁送達システム」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
本願発明5では、送達カテーテルはさらに、封じ込めシースへの液体の導入用のポートを含み、使用時、ステント弁が送達カテーテルに一旦装填されると、膨潤性材料は、ポートを通って封じ込めシース内に導入された液体に露出され、膨潤性材料の外向きの膨潤が封じ込めシースによって妨げられるのに対し、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(2)相違点3についての検討
上記相違点3は、上記相違点1と実質的に同じものであるといえることから、上記1.(2)で検討した理由と同じ理由により、本願発明5も、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-14は、当業者が引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-541142(P2015-541142)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 白川 敬寛  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 栗山 卓也
関谷 一夫
発明の名称 拡張可能なステントを封止するためのステント弁送達システム  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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