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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1358139
審判番号 不服2018-5453  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-20 
確定日 2019-12-16 
事件の表示 特願2015-546889「複屈折RMレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日国際公開、WO2014/090379、平成28年 2月 1日国内公表、特表2016-503185〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月14日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年12月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し平成30年4月20日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成31年3月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年6月17日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。


2 本件発明
本願の請求項1?14に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
- 1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含む重合性液晶成分(A)、および
- 全媒体の多くとも12重量%の非メソゲン成分(B)
からなる、重合性液晶媒体から得ることができる、複屈折RMレンズであって、
前記成分(A)が、式I
P-Sp-(A^(1)-Z^(1))_(m1)-A^(2)-C≡C-A^(3)-(Z^(1)-A^(1))_(m2)-R I
式中
Pは、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセトキシまたはスチレン基であり、
Spは、-(CH_(2))_(p1)-、-O-(CH_(2))_(p1)-、-OCO-(CH_(2))_(p1)-もしくは-OCOO-(CH_(2))_(p1)-(p1は1?12の整数)、または単結合であり、
A^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、炭素環式、複素環式、芳香族または複素芳香族基から選択され、
A^(2)およびA^(3)は、互いに独立して1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイル、ここで1つまたは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、およびそれは任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、から選択され、
Z^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合から選択され、
Lは、複数回出現の場合においては互いに独立して、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個のC原子を有し、任意に置換されている、シリル、アリールまたはヘテロアリール、および1?12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1個または2個以上のH原子は任意にFまたはClによって置き換えられており、ここでXはハロゲンである、から選択され
Rは、H、1?20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、これは任意にフッ素化されている、であり、またはY^(0)であり、
Y^(0)は、F、Cl、CN、NO_(2)、OCH_(3)、OCN、SCN、1?4個のC原子を有し、任意にフッ素化されている、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または1?4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化もしくは多フッ素化された、アルキルもしくはアルコキシであり、
Y^(1)およびY^(2)は、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示し、
R^(0)およびR^(00)は、互いに独立してHまたは1?12個のC原子を有するアルキルであり、
m1およびm2は、互いに独立して0、1、2、3または4である、
で表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含み、
1種または2種以上の式Iで表される化合物が全媒体の3?50重量%の範囲内の合計濃度で含まれる、前記複屈折RMレンズ。」


3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、本件出願の請求項1?14に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2011-510915号公報
引用文献2:特開2012-137616号公報(周知技術)
引用文献3:特開2008-195762号公報(周知技術)
引用文献4:特表2006-512712号公報(周知技術)
引用文献5:特表2006-520919号公報(周知技術)


4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成23年4月7日に頒布された刊行物である引用文献1(特表2011-510915号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下の文献においても同様である。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
A^(1)は、複数出現する場合は互いに独立に、1個以上の基Lにより置換されていてもよい炭素環式、ヘテロ環式、芳香族またはヘテロ芳香族基より選択され、
A^(2)およびA^(3)は、それぞれ互いに独立に、1個以上のCH基がNにより置き換えられていてもよく、1個以上の基Lにより置換されていてもよい1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイルより選択され、
Z^(1)は、複数出現する場合は互いに独立に、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合より選択され、
Lは、複数出現する場合は互いに独立に、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個、好ましくは1?6個のC原子を有し置換されていてもよいシリル、アリールまたはヘテロアリール、1?12個、好ましくは1?6個のC原子を有し直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、Xはハロゲンであり、
R^(0)およびR^(00)は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1?12個のC原子のアルキルであり、
mは、0、1、2、3または4であり、
ただし、mが0の場合、A2およびA3の一方または両方は、Lにより少なくとも一置換されている1,4-フェニレン、または、置換されていてもよいナフタレン-2,6-ジイルを表す。)

(中略)

【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物を含み、および、重合性および/またはメソゲンまたは液晶である1種類以上の更なる化合物を含んでいてもよい重合性LC材料。

(中略)

【請求項15】
電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、化粧品、診断用材料、非線形光学、光学的情報記憶、電子装置、有機半導体、電界効果トランジスタ(FET)、集積回路(IC)の部品、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、照明装置、光起電装置、センサー装置、電極材料、光導電体、電子写真記録、レーザー材料または装置における請求項1?14のいずれか一項に記載の化合物、材料またはポリマーの使用。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性メソゲン化合物(RM)、それらを含む重合性液晶(LC)混合物、それから得られるポリマーフィルム、および該化合物、混合物およびポリマーフィルムの使用であって、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における、または装飾、セキュリティーまたは化粧用途における使用に関し、特に高い光学的分散を有するポリマーフィルムにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
その場重合のプロセスを介して、例えば、LCディスプレイなどの光学的または電気光学的装置の部品として使用するために、コンペンセーション、リターデーションまたは偏光フィルムなどの光学的フィルムを作製するためにRMを使用できる。フィルムの光学的特性は、混合物の調合または基板の特性などの多くの異なる要因によって制御できる。また、フィルムの光学的特性は、混合物の複屈折を変化させることでも制御できる。これより、特定の角度において与えられたリターデーションに対して、ならびに複屈折分散を制御するために必要な厚みが決定される。また、高複屈折材料は高い複屈折分散を与え、一方、低複屈折材料は低い複屈折分散を与える。
【0003】
今日までに文献において開示されている通りのRM材料および混合物で達成されるよりも高い光学的分散を有する異方性ポリマーフィルムを調製する要求がある。特に、格別に高い複屈折分散も有することができる「負のC」フィルムの光学的特性を有する異方性ポリマーフィルムに対する要求がある。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、商業的に入手可能なRM材料において一般的に見出されるものよりも高いn_(e)を有するよう設計され、現在において入手可能なRM混合物より製造されるフィルムと比較して更に高いリターデーション分散を有する光学的異方性ポリマーフィルム、特に、負のCフィルムに加工できる重合性材料、特に、それのRMおよび混合物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、専門家が入手可能なRM材料の蓄積を広げることである。他の目的は、以下の記載より専門家には直ちに明らかである。
【0008】
本発明において特許請求される反応性メソゲン化合物および混合物を提供することで、これらの目的を達成できることが見出された。
【0009】
特に、トラン基および末端-NCS基を有するRMを使用することで、高い光学的分散を有する重合性LC混合物およびポリマーフィルムを提供可能であることが見出された。

(中略)

【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式Iの化合物(イソチオシアネートRM)に関する。

(中略)

【0013】
本発明は、更に、式Iの1種類以上の化合物を含むLC材料に関する。
【0014】
本発明は、更に、式Iの1種類の化合物を含み、および任意に、好ましくは重合性および/またはメソゲンまたは液晶である1種類以上の更なる化合物を含んでいてもよい重合性材料、好ましくは、重合性LC材料に関する。
【0015】
本発明は、更に、式Iの化合物または上記の通りの重合性LC材料を、好ましくは、それの配向状態において薄膜の形態で重合して得られる異方性ポリマーに関する。
【0016】
本発明は、更に、高い光学的分散を有する光学的フィルムにおける上記および下記の通りの化合物、材料およびポリマーの使用に関する。
【0017】
本発明は、更に、電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、化粧品、非線形光学、光学的情報記憶、電子装置、有機半導体、電界効果トランジスタ(FET)、集積回路(IC)の部品、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、照明装置、光起電装置、センサー装置、電極材料、光導電体、電子写真記録、レーザー材料または装置における上記および下記の通りの化合物、材料およびポリマーの使用に関する。」

ウ 「【0043】
本発明のもう一つの態様は、式Iの1種類以上の化合物を含む重合性LC材料である。好ましくは、LC材料は、1種類以上の追加のRMを含む混合物であり、好ましくは、RMは一反応性および二反応性のRMより選択される。
【0044】
特に好ましくは、重合性LC混合物は、
A)式Iの1種類以上の化合物と、
B)式II:
【0045】
【化5】

(式中、
A^(4)およびA^(5)は、それぞれ互いに独立に、置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族基より選択され、好ましくは、1個以上のCH基がNにより置き換えられていてもよく、1個以上の基Lにより置換されていてもよい1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイルより選択され、
Rは、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個、好ましくは1?6個のC原子を有し置換されていてもよいシリル、アリールまたはヘテロアリール、1?12個、好ましくは1?6個のC原子を有し直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上H原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、Xはハロゲンであり、
m1およびm2は、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4であり、ただし、m1+m2<5であり、および
P、Sp、A^(1)、Z^(1)、L、R^(0)およびR^(00)は、式Iにおいて与えられる意味を有する。)
の1種類以上の化合物と、
C)任意成分として、成分A)、B)またはD)の化合物から、または、追加の化合物から選択できる、2個以上の重合性基を有する1種類以上の重合性メソゲン化合物と、
D)任意成分として、成分A)、B)またはC)の化合物から、または、追加の化合物から選択できる、1種類以上のキラル化合物と、
E)任意成分として、1種類以上の重合開始剤と、
F)任意成分として、1種類以上の界面活性剤と
を含む。
【0046】
重合性LC材料における式Iまたは成分A)の化合物の濃度は、好ましくは、1%?60%である。」

エ 「【0047】
成分B)および式IIの化合物は、好ましくは高い複屈折、非常に好ましくはΔn>0.2の複屈折を有するRMより選択される。特に好ましい化合物は、式IIにおいて、
-A^(4)が、それぞれ1個以上の基Lによって置換されていてもよい1,4-フェニレンまたはナフタレン2,6-ジイルである化合物、
-A^(5)が、それぞれ1個以上の基Lによって置換されていてもよい1,4-フェニレンまたはナフタレン2,6-ジイルである化合物、
-A^(1)が、それぞれ1個以上の基Lによって置換されていてもよい1,4-フェニレンまたはナフタレン2,6-ジイルである化合物、
-Z^(1)が、-COO-、-OCO-、-C≡C-または単結合、非常に好ましくは、-COO-または-C≡C-である化合物、
-m1が0である化合物、
-m1が1である化合物、
-m2が0である化合物、
-Rが、CN、OCH_(3)およびSCH_(3)より選択される化合物、
-Rが、上で定義される通りのP-Sp-を表す化合物
である。

(中略)

【0051】
重合性LC混合物における式IIおよび/または成分B)の化合物の濃度は、好ましくは、10%?70%である。」

オ 「【0052】
好ましくは、混合物は、2個以上の重合性基を含む成分C)の1種類以上の化合物(二反応性または多反応性化合物)を含む。成分C)の化合物は、好ましくは、式IIIより選択される。
【0053】
【化8】

式中、PおよびSpは、それぞれの出現において互いに独立に、式Iにおいて与えられる意味を有し、MGはキラルでもよい棒状メソゲン基である。

(中略)

【0061】
重合性LC混合物における式IIIおよび/または成分C)の化合物の濃度は、好ましくは、5%?70%である。」

カ 「【0063】
成分D)は、1個以上のキラル基を有する1種類以上の重合性または非重合性キラル化合物を含んでもよい。

(中略)

【0067】
重合性LC混合物におけるキラル化合物および/または成分D)の濃度は、好ましくは、5?25重量%である。」

キ 「【0074】
重合性LC材料の重合は、好ましくは、化学線照射の波長で吸収のある開始剤の存在下で行われる。この目的のためには、重合性LC材料は、好ましくは、成分E)の1種類以上の開始剤を含む。例えば、UV光を利用する重合の場合、UV照射下で分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用できる。アクリレートまたはメタクリレート基の重合には、好ましくは、ラジカル光開始剤が使用される。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基の重合には、好ましくは、カチオン性の光開始剤が使用される。また、加熱されると分解して重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル性光開始剤は、例えば、Irgacure651、Irgacure907またはIrgacure369などの、例えば、商業的に入手可能なIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba社)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI6974(Union Carbide社)である。

(中略)

【0078】
重合性LC混合物における重合開始剤または成分E)の濃度は、好ましくは、0.01?10%、非常に好ましくは、0.05?6重量%である。」

ク 「【0079】
LC分子の特定の表面配向を促進する1種類以上の成分F)の界面活性剤を含む重合性材料が更に好ましい。適切な界面活性剤は、例えば、J.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、78巻、補足1、1?77頁(1981年)に記載されている。平面配向のための好ましい配向剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、好ましくは、商業的に入手可能なFluorad FC-171(登録商標)(3M社製)またはZonyl FSN(登録商標)(デュポン社製)などのフッ化炭素界面活性剤、英国特許第2 383 040号明細書に記載される通りのマルチブロック界面活性剤または欧州特許出願公開第1 256 617号公報に記載される通りの重合性界面活性剤である。
【0080】
重合性LC混合物における界面活性剤または成分F)の濃度は、好ましくは、0.1?1.5重量%である。」

ケ 「【0148】
以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。また、以下に記載される方法、構造および特性を、本発明において特許請求されているが、先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも適用または転用できる。
【0149】
上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。全ての温度は摂氏度で与えられる。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点を表し、Tgはガラス転移温度を表す。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Chはコレステリック相、Sはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは転移温度を℃で表す。Δnは589nmおよび20℃において測定される光学異方性(Δn=n_(e)-n_(o)、ただし、n_(o)は分子の長軸に平行な屈折率を表し、n_(e)はそれに垂直な屈折率を表す)を表す。他に明記しない限り、光学的特性は20℃で測定される。

(中略)

【実施例】
【0153】
<例1>
化合物(A1)を以下の通り調製する。

(中略)

【0165】
<化合物A1の調製>
【0166】
【化28】


(中略)

【0173】
【化33】


(中略)

【0174】
【化34】


(中略)

【0197】
【化38】

化合物C3は、Broerら、Makromol.Chem.190巻、2255ffおよび3201ff(1991年)に記載される方法またはそれに類似して調製できる。化合物G1は、米国特許第6,344,154号明細書に記載されている。化合物G2は、米国特許第6,491,990号明細書に記載されている。

(中略)

【0201】
<例7>
成分A)?C)およびF)の以下の化合物を含む重合性LC混合物を調合する。
【0202】
【表6】

【0203】
【化39】

化合物B6およびB7は、米国特許第6,514,578号明細書または米国特許出願公開第2008/0143943号公報に記載される方法に類似して調製できる。
【0204】
混合物は、次のLC相シーケンスを示す:N157.4I。
【0205】
混合物をトルエン中の40%溶液に変換し、0.2ミクロンで濾過する。ラビングされたポリイミド被覆ガラス上に溶液を4000rpmで30秒スピンコートし、次いで、250?450nmバンドパスフィルターが装着されたEFOSランプ下において、1分間、窒素雰囲気中、室温で、170mW/cm^(2)の硬化パワーを使用して硬化する。結果として生じるポリマーフィルムは、正の光学的リターデーションおよび正のAプレートの光学的特性を有する。リターデーションプロファイルを図7に示す。
【0206】
以下の通り、R_(450)/R_(550)の値を+40°および-40°の角度で測定する:
1.200(+40°)
1.200(-40°)
当該正のAフィルムは、高い正のリターデーション分散を有する。

(中略)

【0214】
<例9>
成分A)?G)の以下の化合物を含む重合性LC混合物を調合する。
【0215】
【表8】

混合物は、次のLC相シーケンスを示す:Ch82.1I。
【0216】
混合物をトルエン中の40%溶液に変換し、0.2ミクロンで濾過する。ラビングされたポリイミド被覆ガラス上に溶液を2000rpmで30秒スピンコートする。未硬化のフィルムを80℃で1分アニールし、次いで、365nmバンドパスフィルターが装着されたEFOSランプ下において、UV直線偏光子を通し、1分間、窒素雰囲気中、60℃で、40mW/cm^(2)の硬化パワーを使用して硬化する。結果として生じるポリマーフィルムは、二軸性の負のCプレートの光学的特性を有する。リターデーションプロファイルを図10に示す。」

(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用発明1
引用文献1の記載事項ケの特に段落【0201】?【0206】の記載に基づけば、引用文献1には、<例7>として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、以下、○囲みの「R」を「(R)」と記載する。
「成分A)?C)およびF)の以下の化合物を含む重合性LC混合物を硬化して生じる、正の光学的リターデーションおよび正のAプレートの光学的特性を有するポリマーフィルム。
(A1) 5.00%

(B2) 9.86%

(B3) 6.10%

(B6) 18.84%

(B7) 28.68%

(C1) 29.44%

(F1) 1.00%

Irganox(R)651 1.00%
Irganox(R)1076 0.08%」

イ 引用発明2
引用文献1の記載事項ケの特に段落【0214】?【0216】の記載に基づけば、引用文献1には、<例9>として、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「成分A)?G)の以下の化合物を含む重合性LC混合物を硬化して生じる、二軸性の負のCプレートの光学的特性を有するポリマーフィルム。
(A1) 5.00%

(B7) 31.92%

(C1) 15.00%

(D1) 16.00%

(E1) 3.00%

(E2) 3.00%

(F1) 1.00%

(G1) 25.00%

Irganox(R)1076 0.08%」

(3)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前の平成24年7月19日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2012-137616号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物、及び、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する非液晶化合物を含有することを特徴とする立体画像表示用複屈折レンズ材料。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像表示用に使用される複屈折レンズ材料、及び、立体画像表示用複屈折レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像表示は、人間の右目、左目に対して個別のほぼ平坦な像を送り込み、脳で融合させ、立体的に認識させることによって、奥行きの感覚を与える。そのため、予め視差を発生させるための像を個別に形成し、それぞれの目に像が送られる際に補正をするか、平坦な像を右目認識用、左目認識用に分離しなければならない。
【0003】
平坦な像を分離する方法は、像補正用の偏光メガネ等をかける必要がなく、裸眼で立体画像を認識することができる。平坦な像を分離する方法としては、レンチキュラレンズを用いる方法、パララックスバリア方式等がある。レンチキュラレンズとは、レンズによる屈折で片目が同じ画像を認識できる幅を決定することにより、二つの画像を分離するものであり、視差を発生させるためにかまぼこ状の複屈折レンズが用いられる。
【0004】
レンチキュラレンズに要求される特性として、幅広い環境で使用するために屈折率の温度変化が小さいことが求められており、この要求に対応するために、硬化した液晶高分子を複屈折レンズ材料として用いる技術が提案されている(特許文献1、非特許文献1参照。)。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、光学特性、耐久性、生産性、特に生産性に優れた立体画像表示用に用いられる複屈折レンズ材料及び立体画像表示用複屈折レンズを提供し、併せて、生産性に優れた立体画像表示用複屈折レンズの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、複屈折レンズに使用する種々のモノマーを鋭意検討した結果、液晶モノマーに非液晶モノマーを添加した複屈折レンズ材料によって、材料の複屈折特性を変化させることができ、かつ、十分な耐久性が得られること、また、室温での硬化が可能になることを見出し本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物、及び、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する非液晶化合物を含有することを特徴とする立体画像表示用複屈折レンズ材料、当該レンズ材料の硬化により形成されたことを特徴とする立体画像表示用複屈折レンズを提供し、併せて当該レンズ材料を、一軸方向に配向処理された配向膜上に塗布し、紫外線で硬化させてレンズ状に成形することを特徴とする立体画像表示用複屈折レンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の立体画像表示用複屈折レンズ材料及び当該レンズ材料を用いた立体画像表示用複屈折レンズは、特定の非液晶モノマーを類かすることで光学特性、耐久性に優れており、かつ、生産性に優れている。
また、前記材料を用いた立体画像表示用複屈折レンズ材料の製造方法は、液晶モノマーの配向欠陥の発生を抑制することができ、生産性に優れている。」

ウ 「【0126】
(立体画像表示用複屈折レンズの製造方法)
(基材)
本発明の立体画像表示用複屈折レンズに用いられる基材は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学部品や光学フィルムに通常使用する基材であって、本発明の立体画像表示用複屈折レンズ材料を塗布後、あるいは、液晶デバイス製造時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等が挙げられる。特に基材が有機材料の場合、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン、ポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネートが好ましい。
【0127】
また、上記基材には、本発明の立体画像表示用複屈折レンズ材料を塗布した際に立体画像表示用複屈折レンズ材料が配向するように、通常配向処理が施されている、あるいは配向膜が設けられていても良い。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理、等が挙げられる。配向膜を用いる場合、配向膜は公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
【0128】
(塗布)
本発明の立体画像表示用複屈折レンズを得るための塗布法としては、アプリケーター法、バーコーティング法、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。溶剤で希釈した立体画像表示用複屈折レンズ材料を塗布する場合は、塗布後は乾燥させることになる。
【0129】
(レンズ成型工程)
本発明の立体画像表示用複屈折レンズの成型は、フォトマスクを用いて立体画像表示用複屈折レンズ材料の重合をレンズ状にすることで行う。あるいは、立体画像表示用複屈折レンズ材料の塗布膜をレンズ状樹脂金型で覆うことで行う。フォトマスクを用いる場合は、立体画像表示用複屈折レンズ材料が重合したときに所望のレンズ状になるようにフォトマスクが設計されている。樹脂金型を用いる場合は、立体画像表示用複屈折レンズ材料の塗布膜を本発明の立体画像表示用複屈折レンズ材料の常光屈折率(no)と等しい屈折率を有する凹レンズ状樹脂金型で覆い、覆った状態のままで重合を行う。また、一旦樹脂金型を取り外した場合は、樹脂金型に用いられる樹脂を樹脂金型を取り外した立体画像表示用複屈折レンズ材料の塗布膜に塗布した後に重合を行う。」

(4)引用文献3の記載事項
当審拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前の平成20年8月28日に頒布された刊行物である引用文献3(特開2008-195762号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、末端にニトリル基を有する特定の単官能の(メタ)アクリレート化合物及び側方置換基を有する特定の二官能(メタ)アクリレート化合物を含有する重合性組成物に関し、詳細には、(メタ)アクリル基を光重合して硬化膜とした際に、均一な膜状態と優れた光学特性を有する重合膜が得られる重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶物質はTN型やSTN型に代表されるディスプレイ表示等の液晶分子の可逆的運動を利用した表示媒体への応用以外にも、その配向性と屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性を利用して、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光フィルター等の光学異方体への応用が検討されている。
【0003】
上記光学異方体は、例えば、重合性官能基を有する液晶性化合物又はこの液晶化合物を含有する組成物を液晶状態で均一に配向させた後、液晶状態を保持したまま紫外線等のエネルギー線を照射することによって光重合させて、均一な配向状態を半永久的に固定化して重合膜を得る方法が採られている。
【0004】
この重合膜に用いられる組成物において、液晶相発現温度が高い場合、エネルギー線による光重合だけでなく意図しない熱重合も誘起され、液晶分子の均一な配向状態が失われ所望する配向の固定が困難である。従って、硬化時の温度管理を容易にするために、室温付近で液晶相を示す重合性組成物が求められる。
【0005】
また、重合膜は重合性組成物を基板に塗布して重合することによって得られるが、非重合性化合物が含まれると得られる重合膜の強度が不足したり、膜内に応力歪みが残存したりする欠点がある。また非重合性化合物を溶媒などで取り除くと、膜の均質性が保てずムラが生じたりする問題がある。従って、膜厚が均一な重合膜を得るためには重合性組成物を溶剤に溶かしたものを塗工する方法が好ましく用いられ、液晶化合物又はそれを含む組成物は溶媒溶解性が良好であることが必要とされる。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、室温付近で液晶相を示し、溶媒溶解性に優れる組成物であって、かかる組成物を硬化して得られる重合膜に対し、重合膜を薄膜化しても充分な光学特性が得られ、均一な膜状態を維持し、耐熱性や配向制御及び光学特性に優れる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表される二官能(メタ)アクリレート化合物と、下記一般式(2)で表される末端にニトリル基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物とからなり、それらの質量比率(前者/後者)が90/10?40/60である重合性組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。

(中略)

【発明の効果】
【0019】
本発明の重合性組成物は、室温付近において安定な液晶相を発現し、かつ、高い光学(屈折率)異方性(Δn)を有し、薄膜でも充分な光学特性が得られる。また、該組成物を光重合させることにより作製される本発明の重合膜は、配向均一性が高く、光学特性に優れた液晶物質として有用である。」

イ 「【0060】
本発明の重合膜は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体の用途としては、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板など)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学補償に用いることができる。その他にも、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、PDLC型電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。」

(5)引用文献4の記載事項
当審拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前の平成18年4月13日に頒布された刊行物である引用文献4(特表2006-512712号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折光コンポーネント、そのようなコンポーネントを含む装置、及びそのようなコンポーネントの製造方法に関する。コンポーネントは、特にこれに限定されないが、光走査装置における可変焦点レンズとして使用される。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態の目的は、先行技術の1以上の課題を扱う改良された光コンポーネントを提供するものである。
【0010】
本発明の特別な実施形態の目的は、そのようなコンポーネントの製造方法と同様に、2つの複屈折物質、即ち、調節可能なコンポーネントの光学機能を有する光コンポーネントを提供することである。特別な実施形態は、予め定められた範囲を越えて制御可能に変化する焦点ポイントを有する光レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の面では、本発明は、形状づけられたインターフェイス(206)によって第2の複屈折層(170)に接続している第1の複屈折層(203)を有する光コンポーネント(181)を提供する。光軸(19)は第1及び第2の層を通過する。少なくとも第2の複屈折層(170)は、光軸に呼応して第1及び第2の配向間を移動可能な分子を有する。第2の複屈折層(170)の屈折率は、分子の配向に依拠する。
【0012】
そのような2つの物質を有する光コンポーネントを提供することによって、インターフェイスによって定められる光機能は、分子の配向を変化することによって変化され得る。例えば、形状づけられたインターフェイスが曲がっている場合、当該インターフェイスによって提供されたレンズ容量は、分子の配向を変えることによって変えられ得る。」

イ 「【0024】
図1は、本発明の望ましい実施形態の光コンポーネント181を示す。光コンポーネント181は、レンズとして形状づけられた複屈折物質203の第1の層を有する。特にこの実施形態では、複屈折物質203は平凸レンズとして形づけられ、レンズの凸部分は曲面206によって定められる。レンズは、固体、即ち、重合液晶として形成される。」
なお、図1は、以下のとおりのものである。


(6)引用文献5の記載事項
当審拒絶理由に周知技術を示す文献として引用され、本願優先権主張の日前の平成18年9月14日に頒布された刊行物である引用文献5(特表2006-520919号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する装置に関する。
【0002】
こうした装置は、自動立体(autostereoscopic)3次元ディスプレイ、切り替え可能な2次元(2D)/3次元(3D)自動立体ディスプレイ、または、切り替え可能な高輝度表示システムにおいて用いることができる。こうしたシステムは、コンピュータのモニタ、遠隔通信用ハンドセット、デジタルカメラ、ラップトップおよびデスクトップコンピュータ、ゲーム装置、自動車および他のモバイル表示用途、ならびに遠隔通信切り替え用途において用いることができる。
【0003】
機能を向上させるために微小光学部品を使用する表示システムは、液晶ディスプレイ(LCD)プロジェクタ、自動立体3Dディスプレイ、および輝度向上反射型ディスプレイを含む。
【0004】
各システムにおいて、マイクロレンズアレイなどの微小光学部品は、空間光変調器の部品の少なくとも1つの画素とアライメントを取られる。可能なシステムは図1の平面図に示される。バックライト2は、LCD入力偏光子6の照明4を生成する。光は、薄膜トランジスタ(TFT)基板8を通過し、個々に制御可能な位相変調画素12?26を備える画素層10上に入射する。画素は、行と列で配列され、画素開口28および分離ブラックマスク30を備える。光は、その後、LCD対向基板32、および、複屈折マイクロレンズアレイ38がその上に形成されるレンズキャリア基板36を通過する。複屈折マイクロレンズアレイ38は、等方性レンズ微細構造40および光軸方向42を有する配向した複屈折材料を備える。複屈折レンズの出力は、その後、レンズ基板44および偏光修正デバイス46を通過する。
【0005】
レンズアレイの各複屈折レンズは円柱状であり、レンズアレイ38はレンチキュラースクリーンであり、レンズの幾何学的軸は紙面に対して垂直である。この例では、レンズのピッチは、2ビュー自動立体ディスプレイが生成されるように、ディスプレイの画素のピッチのほぼ2倍であるように構成される。」
なお、図1は以下のとおりのものである。


イ 「【0051】
図2は、本発明の第1の実施形態を示す。画素50のアレイは、空間光変調器を構成する表示基板48上に形成される。基板48は、画素のそれぞれが電気信号によって独立してアドレス指定されるように、アドレス指定用の薄膜トランジスタおよび電極のアレイを備えていてもよい。薄膜トランジスタは、無機であってもよく、または、有機材料で具現されてもよい。別法として、画素は、アドレス指定用トランジスタが画素に存在する必要がない受動アドレス指定方式によってアドレス指定されてもよい。

(中略)

【0057】
任意選択の基板56が、偏光子54に取り付けられ、基板56上に複屈折マイクロレンズが形成される。複屈折マイクロレンズは、レンチキュラー凸表面構造などの凸表面構造を組み込む。凸表面構造は、複屈折材料と等方性材料の界面で形成されてもよい。複屈折マイクロレンズは、配向方向42を有する複屈折材料および等方性材料40を組み込む。複屈折マイクロレンズは、たとえば、基板56上のホモジニアス配向膜と、等方性材料の表面上のホモジニアス配向膜との間に挟まれた、ネマチック液晶などの、配向液晶材料を備える。ホメオトロピック配向膜もまた用いられてもよい。複屈折材料は、反応性メソゲン液晶などのUV硬化液晶材料であってもよい。複屈折レンズの2つの表面上の液晶材料の相対的な配向は、平行、反平行であってもよく、または、入射偏光が、凸表面構造に当たる前に複屈折レンズ内で回転するように、2つの表面間でねじれが存在してもよい。等方性材料の屈折率および分散は、複屈折材料の屈折率および分散のうちの一方とほぼ同じであってよい。本発明に適用可能である複屈折マイクロレンズの実施形態は、参照により本明細書に援用されるWO-03/015,424に記載されている。」
なお、図2は以下のとおりのものである。


ウ 「【0074】
図6は、非偏光ディスプレイを有する輝度向上表示装置を断面で示す。

(中略)

【0080】
輝度向上モードにおけるディスプレイの観察自由度、または、3Dモードにおける公称視距離は、画素とレンズ面の分離によって決まる。これらの2つの表面の間に付加される層の厚みを最小にすることが望ましい。4分の1波長板84は、コーティングされ、配向した硬化可能な液晶層などの薄い波長板である可能性がある。こうした材料の一例は、Merck Ltd.から入手可能なRM257であり、適した配向膜上での配向の後にUV硬化されることができる。この層について、典型的な厚みは2ミクロン未満であろう。複数の層は、当該技術分野で知られるように、4分の1波長板のスペクトル効率を増加させる可能性がある。」
なお、図6は以下のとおりのものである。


5 対比
(1)引用発明1
本件発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」、「(B7)」及び「(C1)」は、その化学構造からみて、重合性液晶成分であるといえる。したがって、引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」、「(B7)」及び「(C1)」は、本件発明の「1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含む重合性液晶成分(A)」に相当する。

イ 引用発明1の「(F1)」、「Irganox(R)651」及び「Irganox(R)1076」は、技術的にみて、本件発明の「非メソゲン成分(B)」に相当する。また、「(F1)」、「Irganox(R)651」及び「Irganox(R)1076」の合計重量%は2.08重量%(合議体注:1.00(F1)+1.00(Irg 651)+0.08(Irg 1076)=2.08)であるから、引用発明1は、非メソゲン成分(B)について、本件発明の「全媒体の多くとも12重量%」とする要件を満たしている。

ウ 引用発明1の「重合性LC混合物を硬化して生じる、正の光学的リターデーションおよび正のAプレートの光学的特性を有するポリマーフィルム」と本件発明の「重合性液晶媒体から得ることができる、複屈折RMレンズ」とは、「重合性液晶媒体から得ることができる、光学的部材」である点で共通する。

エ 引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」の化学構造と、本件発明の「式I」とを比較すると、引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」における「CH_(2)=CHCOO-」は、「アクリロキシ」基であるから、本件特許の式Iの「P」に該当する。また、引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」における「-(CH_(2))_(3)O-」及び「(B7)」における「-(CH_(2))_(6)O-」は、「-O-(CH_(2))_(p1)-」であって「p1は1?12の整数」であるから、本件特許の式Iの「Sp」に該当する。さらに、引用発明1の「(A1)」及び「(B3)」は、本件特許の式Iにおける「m1」が「0」である場合に該当し、引用発明1の「(B2)」及び「(B7)」は、「m1」が「1」で、「A^(1)」が「芳香族」、「Z^(1)」が「-COO-」である場合に該当し、引用発明1の「(B6)」は、「m1」が「1」で、「A^(1)」が「芳香族」、「Z^(1)」が「-C≡C-」である場合に該当する。そして、引用発明1の「(A1)」は、本件特許の式Iにおける「A^(2)」が「ナフタレン-2,6-ジイル」である場合に該当し、引用発明1の「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」は、本件特許の式Iにおける「A^(2)」が「1,4-フェニレン」である場合に該当し、「(B6)」は、さらに「基L」として、1個のC原子を有するアルキル基を有している。さらに、引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」は、本件特許の式Iにおける「A^(3)」が「1,4-フェニレン」であり、「m2」が「0」である場合に該当する。そして、引用発明1の「(A1)」は、「R」が「H」であり「A^(3)」が「基L」として「-NCS」を有するものに該当し、引用発明1の「(B2)」、「(B6)」及び「(B7)」は、「R」が「アルコキシ」である場合に該当し、引用発明1の「(B3)」は、「R」が「チオアルキル」である場合に該当する。そうすると、引用発明1の「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」は、本件発明の式Iの要件を満たしているといえる。
したがって、引用発明1は、「前記成分(A)が、式I
P-Sp-(A^(1)-Z^(1))_(m1)-A^(2)-C≡C-A^(3)-(Z^(1)-A^(1))_(m2)-R I
式中
Pは、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセトキシまたはスチレン基であり、
Spは、-(CH_(2))_(p1)-、-O-(CH_(2))_(p1)-、-OCO-(CH_(2))_(p1)-もしくは-OCOO-(CH_(2))_(p1)-(p1は1?12の整数)、または単結合であり、A^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、炭素環式、複素環式、芳香族または複素芳香族基から選択され、
A^(2)およびA^(3)は、互いに独立して1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイル、ここで1つまたは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、およびそれは任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、から選択され、
Z^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合から選択され、
Lは、複数回出現の場合においては互いに独立して、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個のC原子を有し、任意に置換されている、シリル、アリールまたはヘテロアリール、および1?12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1個または2個以上のH原子は任意にFまたはClによって置き換えられており、ここでXはハロゲンである、から選択され
Rは、H、1?20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、これは任意にフッ素化されている、であり、またはY^(0)であり、
Y^(0)は、F、Cl、CN、NO_(2)、OCH_(3)、OCN、SCN、1?4個のC原子を有し、任意にフッ素化されている、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または1?4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化もしくは多フッ素化された、アルキルもしくはアルコキシであり、
Y^(1)およびY^(2)は、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示し、
R^(0)およびR^(00)は、互いに独立してHまたは1?12個のC原子を有するアルキルであり、
m1およびm2は、互いに独立して0、1、2、3または4である、
で表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含」むという要件を満たしているといえる。

オ 以上より、本件発明と引用発明1とは、
「- 1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含む重合性液晶成分(A)、および
- 全媒体の多くとも12重量%の非メソゲン成分(B)
からなる、重合性液晶媒体から得ることができる、光学的部材であって、
前記成分(A)が、式I
P-Sp-(A^(1)-Z^(1))_(m1)-A^(2)-C≡C-A^(3)-(Z^(1)-A^(1))_(m2)-R I
式中
Pは、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセトキシまたはスチレン基であり、
Spは、-(CH_(2))_(p1)-、-O-(CH_(2))_(p1)-、-OCO-(CH_(2))_(p1)-もしくは-OCOO-(CH_(2))_(p1)-(p1は1?12の整数)、または単結合であり、A^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、炭素環式、複素環式、芳香族または複素芳香族基から選択され、
A^(2)およびA^(3)は、互いに独立して1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイル、ここで1つまたは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、およびそれは任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、から選択され、
Z^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合から選択され、
Lは、複数回出現の場合においては互いに独立して、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個のC原子を有し、任意に置換されている、シリル、アリールまたはヘテロアリール、および1?12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1個または2個以上のH原子は任意にFまたはClによって置き換えられており、ここでXはハロゲンである、から選択され
Rは、H、1?20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、これは任意にフッ素化されている、であり、またはY^(0)であり、
Y^(0)は、F、Cl、CN、NO_(2)、OCH_(3)、OCN、SCN、1?4個のC原子を有し、任意にフッ素化されている、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または1?4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化もしくは多フッ素化された、アルキルもしくはアルコキシであり、
Y^(1)およびY^(2)は、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示し、
R^(0)およびR^(00)は、互いに独立してHまたは1?12個のC原子を有するアルキルであり、
m1およびm2は、互いに独立して0、1、2、3または4である、
で表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含む光学的部材。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]本件発明は、複屈折RMレンズであるのに対し、引用発明1は、ポリマーフィルムである点。
[相違点1-2]式Iで表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物が、本件発明は、全媒体の3?50重量%の範囲内の合計濃度で含まれるのに対し、引用発明1は、式Iで表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物にあたる「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」が、全媒体の68.48重量%で含まれる点。
(合議体注:5.00(A1)+9.86(B2)+6.10(B3)+18.84(B6)+28.68(B7)=68.48)

(2)引用発明2
本件発明と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2の「(A1)」、「(B7)」、「(C1)」及び「(G1)」は、その化学構造からみて、重合性液晶成分であるといえる。したがって、引用発明2の「(A1)」、「(B7)」、「(C1)」及び「(G1)」は、本件発明の「1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含む重合性液晶成分(A)」に相当する。

イ 引用発明2の「(E1)」、「(E2)」、「(F1)」及び「Irganox(R)1076」は、技術的にみて、本件発明の「非メソゲン成分(B)」に相当する。

ウ 引用発明2の「重合性LC混合物を硬化して生じる、二軸性の負のCプレートの光学的特性を有するポリマーフィルム」と本件発明の「重合性液晶媒体から得ることができる、複屈折RMレンズ」とは、「重合性液晶媒体から得ることができる、光学的部材」である点で共通する。

エ 引用発明2の「(A1)」及び「(B7)」の化学構造と、本件発明の「式I」とを比較すると、前記(1)エに記載したとおり、引用発明2の「(A1)」及び「(B7)」は、本件発明の式Iの要件を満たしているといえる。
そして、引用発明2の重合性LC混合物における、「(A1)」及び「(B7)」の含有割合は、全媒体の36.92重量%(合議体注:5.00(A1)+31.92(B7)=36.92)であるから、「全媒体の3?50重量%の範囲内の合計濃度で含まれる」とする要件を満たしている。
そうすると、引用発明2は、「前記成分(A)が、式I
P-Sp-(A^(1)-Z^(1))_(m1)-A^(2)-C≡C-A^(3)-(Z^(1)-A^(1))_(m2)-R I
式中
Pは、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセトキシまたはスチレン基であり、
Spは、-(CH_(2))_(p1)-、-O-(CH_(2))_(p1)-、-OCO-(CH_(2))_(p1)-もしくは-OCOO-(CH_(2))_(p1)-(p1は1?12の整数)、または単結合であり、A^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、炭素環式、複素環式、芳香族または複素芳香族基から選択され、
A^(2)およびA^(3)は、互いに独立して1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイル、ここで1つまたは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、およびそれは任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、から選択され、
Z^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合から選択され、
Lは、複数回出現の場合においては互いに独立して、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個のC原子を有し、任意に置換されている、シリル、アリールまたはヘテロアリール、および1?12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1個または2個以上のH原子は任意にFまたはClによって置き換えられており、ここでXはハロゲンである、から選択され
Rは、H、1?20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、これは任意にフッ素化されている、であり、またはY^(0)であり、
Y^(0)は、F、Cl、CN、NO_(2)、OCH_(3)、OCN、SCN、1?4個のC原子を有し、任意にフッ素化されている、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または1?4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化もしくは多フッ素化された、アルキルもしくはアルコキシであり、
Y^(1)およびY^(2)は、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示し、
R^(0)およびR^(00)は、互いに独立してHまたは1?12個のC原子を有するアルキルであり、
m1およびm2は、互いに独立して0、1、2、3または4である、
で表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含み、1種または2種以上の式Iで表される化合物が全媒体の3?50重量%の範囲内の合計濃度で含まれる」という要件を満たしているといえる。

オ 以上より本件発明と引用発明2とは、
「- 1種または2種以上の重合性メソゲン化合物を含む重合性液晶成分(A)、および
- 非メソゲン成分(B)
からなる、重合性液晶媒体から得ることができる、光学的部材であって、
前記成分(A)が、式I
P-Sp-(A^(1)-Z^(1))_(m1)-A^(2)-C≡C-A^(3)-(Z^(1)-A^(1))_(m2)-R I
式中
Pは、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテル、エポキシ、オキセトキシまたはスチレン基であり、
Spは、-(CH_(2))_(p1)-、-O-(CH_(2))_(p1)-、-OCO-(CH_(2))_(p1)-もしくは-OCOO-(CH_(2))_(p1)-(p1は1?12の整数)、または単結合であり、A^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、炭素環式、複素環式、芳香族または複素芳香族基から選択され、
A^(2)およびA^(3)は、互いに独立して1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイル、ここで1つまたは2つ以上のCH基はNによって置き換えられていてもよく、およびそれは任意に1つまたは2つ以上の基Lによって置換されている、から選択され、
Z^(1)は、複数回出現の場合においては互いに独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR^(0)-、-NR^(0)-CO-、-NR^(0)-CO-NR^(0)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-SCH_(2)-、-CH_(2)S-、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-、-CF_(2)S-、-SCF_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-(CH_(2))_(3)-、-(CH_(2))_(4)-、-CF_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CF_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-CH=CH-、-CY^(1)=CY^(2)-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR^(0)-、-C≡C-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、CR^(0)R^(00)または単結合から選択され、
Lは、複数回出現の場合においては互いに独立して、P-Sp-、F、Cl、Br、I、-CN、-NO_(2)、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR^(0)R^(00)、-C(=O)X、-C(=O)OR^(0)、-C(=O)R^(0)、-NR^(0)R^(00)、-OH、-SF_(5)、1?12個のC原子を有し、任意に置換されている、シリル、アリールまたはヘテロアリール、および1?12個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1個または2個以上のH原子は任意にFまたはClによって置き換えられており、ここでXはハロゲンである、から選択され
Rは、H、1?20個のC原子を有する、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、これは任意にフッ素化されている、であり、またはY^(0)であり、
Y^(0)は、F、Cl、CN、NO_(2)、OCH_(3)、OCN、SCN、1?4個のC原子を有し、任意にフッ素化されている、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ、または1?4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化もしくは多フッ素化された、アルキルもしくはアルコキシであり、
Y^(1)およびY^(2)は、互いに独立してH、F、ClまたはCNを示し、
R^(0)およびR^(00)は、互いに独立してHまたは1?12個のC原子を有するアルキルであり、
m1およびm2は、互いに独立して0、1、2、3または4である、
で表される少なくとも1種の重合性メソゲン化合物を含み、1種または2種以上の式Iで表される化合物が全媒体の3?50重量%の範囲内の合計濃度で含まれる、光学的部材。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-1]本件発明は、複屈折RMレンズであるのに対し、引用発明2は、ポリマーフィルムである点。
[相違点2-2]本件発明は、非メソゲン成分(B)を全媒体の多くとも12重量%含むのに対し、引用発明2は、「(D1)」が、「重合性液晶成分(A)」と「非メソゲン成分(B)」の何れに該当するのかが不明であるため、非メソゲン成分(B)を全媒体の多くとも12重量%含むかどうかが明らかでない点。


6 判断
(1)[相違点1-1]及び[相違点2-1]について
ア 引用文献1の記載事項アの【請求項15】や記載事項イの段落【0017】に列挙されるように、引用文献1に記載された重合性LC混合物は、様々な用途に用いることができるものである。さらに、記載事項ケの段落【0148】に、「以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。また、以下に記載される方法、構造および特性を、本発明において特許請求されているが、先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも適用または転用できる。」と記載されていることから、引用発明1又は引用発明2における重合性LC混合物も、ポリマーフィルムに限らず、様々な用途に用いることができることが理解できる。
そして、例えば、引用文献2の記載事項アには「少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する液晶化合物、及び、少なくとも1つ以上の重合性官能基を有する非液晶化合物を含有することを特徴とする立体画像表示用複屈折レンズ材料。」と記載されており、引用文献2の記載事項イの段落【0009】には「液晶モノマーに非液晶モノマーを添加した複屈折レンズ材料によって、材料の複屈折特性を変化させることができ」ると記載されている。また、引用文献3の記載事項イには、「本発明の重合膜は、光学異方性を有する成形体として利用することができる。この成形体の用途としては、例えば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板など)、偏光素子、二色性偏光板、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜等の光学補償に用いることができる。その他にも、液晶レンズ、マイクロレンズ等の光学レンズ、PDLC型電子ペーパー、デジタルペーパー等の情報記録材料にも利用することができる。」と記載されている。さらに、引用文献4の記載事項イには「光コンポーネント181は、レンズとして形状づけられた複屈折物質203の第1の層を有する。特にこの実施形態では、複屈折物質203は平凸レンズとして形づけられ、レンズの凸部分は曲面206によって定められる。レンズは、固体、即ち、重合液晶として形成される。」と記載されており、引用文献5の記載事項イにも「複屈折マイクロレンズは、レンチキュラー凸表面構造などの凸表面構造を組み込む。・・・複屈折材料は、反応性メソゲン液晶などのUV硬化液晶材料であってもよい。」と記載されている。以上に記載されるように、反応性メソゲンを含む混合物は、フィルムを得るためのみならず、複屈折レンズを得るためにも用いられることは、周知技術であるといえる。
そうすると、引用発明1又は引用発明2における重合性LC混合物を用いてポリマーフィルムを得る代わりに、周知の複屈折レンズを得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 審判請求人は、令和元年6月17日に提出した意見書において、「引用文献1の段落0017および請求項15に記載された用途は、「本発明は、新規な反応性メソゲン化合物(RM)、それらを含む重合性液晶(LC)混合物、それから得られるポリマーフィルム、および該化合物、混合物およびポリマーフィルムの使用であって、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における、または装飾、セキュリティーまたは化粧用途における使用に関し、特に高い光学的分散を有するポリマーフィルムにおける使用に関する」(段落0001)との技術分野の前提のもとに提示される用途と解釈すべきということができます。」とし、「一般的に、レンズとフィルムとは、その厚みにおいて態様が異なるものであり、実際に、引用文献1の「ポリマーフィルム」は、好ましくは0.3?5ミクロン程度の厚みが想定されています(段落0139)。このことからも、かかる一般的なフィルムの態様から逸脱して、引用発明1または引用発明2における重合性LC材料を複屈折レンズに供するための動機づけが当業者には存在し得ないと思料します。」と主張している。
しかしながら、上記引用文献2?5に示されるとおり、反応性メソゲンを含む混合物は、ポリマーフィルムだけでなく、複屈折レンズにも用いられることは周知技術である。そうすると、上記周知技術を理解した当業者であれば、引用発明1又は引用発明2における重合性LC混合物を用いて複屈折レンズを得ようと試みることは自明であるといえる。
また、複屈折レンズは、引用文献2の記載事項ウに記載されるように、配向処理した基材に材料を塗布し乾燥して形成した塗布膜を、フォトマスク又は金型を用いて成形して得られるものである。そうすると、複屈折レンズは、塗布膜(フィルム)を、光学的部材用途に使用することにおける一形態であるともいえる。
なお、審判請求人は、令和元年6月17日に提出した意見書において、「引用文献1の段落0148の記載は、同文献の例として開示される態様が、これに限定されず、「請求項に含まれる他の「用途」にも適用または転用できる」ことではなく、「請求項に含まれる他の「重合性LC材料」にも適用または転用できる」こと、を意味すると解釈するのが相当ということができます。言い換えれば、引用文献1の段落0148の記載が、重合性LC材料の用途について何ら示唆するものではない、と解釈するのが相当ということができます。」と主張している。
しかしながら、引用文献1の記載事項ケの段落【0148】には、「以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。また、以下に記載される方法、構造および特性を、本発明において特許請求されているが、先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも適用または転用できる。」と記載されている。そして、【請求項15】には、「電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、化粧品、診断用材料、非線形光学、光学的情報記憶、電子装置、有機半導体、電界効果トランジスタ(FET)、集積回路(IC)の部品、薄膜トランジスタ(TFT)、無線識別(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、照明装置、光起電装置、センサー装置、電極材料、光導電体、電子写真記録、レーザー材料または装置における請求項1?14のいずれか一項に記載の化合物、材料またはポリマーの使用。」と記載されており、記載事項イの段落【0017】にも同様の記載がある。両記載に基づけば、引用発明1又は引用発明2の「重合性LC混合物」は、請求項15において列記される「電気光学的ディスプレイ・・・における材料」に「適用または転用できる」ものであることは明らかであり、また、列記された物と機能面等において類似するものであって明記されていない物の材料としても、適用または転用できると理解するべきである。
なお、引用発明1又は引用発明2の「重合性LC混合物」の作用、機能は、周知技術の「複屈折レンズ」の材料に求められる作用、機能と共通するものである。したがって、引用文献1に例示された物の中に、「複屈折レンズ」の明記がないとしても、当業者であれば、上記作用、機能の共通性を動機付けとして、引用発明1又は引用発明2の「重合性LC混合物」を、周知の「複屈折レンズ」の材料として採用することに思い至ることは明らかである。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

(2)[相違点1-2]について
引用文献1の「成分A)」の式I及び記載事項イの段落【0009】の「特に、トラン基および末端-NCS基を有するRMを使用することで、高い光学的分散を有する重合性LC混合物およびポリマーフィルムを提供可能であることが見出された。」との記載に基づけば、引用発明1の「(A1)」は、重合性LC混合物について、高い光学的分散を有するものとするために加えるものといえる。また、引用文献1の記載事項エの段落【0047】の「成分B)および式IIの化合物は、好ましくは高い複屈折、非常に好ましくはΔn>0.2の複屈折を有するRMより選択される。」との記載に基づけば、引用発明1の「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」は、重合性LC混合物について、高い複屈折を与えるために加えるものといえる。そして、引用文献1には、記載事項ウの段落【0046】に「重合性LC材料における式Iまたは成分A)の化合物の濃度は、好ましくは、1%?60%である。」と記載されており、記載事項エの段落【0051】に「重合性LC混合物における式IIおよび/または成分B)の化合物の濃度は、好ましくは、10%?70%である。」と記載されていることから、引用発明1における「成分A)」及び「成分B)」の各含有量は、必要とされる光学的分散性及び複屈折に応じて適宜最適化し得るものである。そして、引用文献1には、<例9>のように、「成分A)」及び「成分B)」の合計含有量が全媒体の3?50重量%の範囲内である、36.92重量%とした実施例も記載されている。
そうすると、引用発明1において、「(A1)」、「(B2)」、「(B3)」、「(B6)」及び「(B7)」の含有量について、その合計濃度を、全媒体の3?50重量%の範囲内に含まれる何れかの値とすることは、当業者が適宜なし得ることである。また、そのような数値範囲に含まれる値としたことにより、格別な効果の差異が生じるとすることもできない。

(3)[相違点2-2]について
引用文献1の記載事項カの段落【0063】の「成分D)は、1個以上のキラル基を有する1種類以上の重合性または非重合性キラル化合物を含んでもよい。」との記載及び「(D1)」の化学構造からみて、引用発明2の「(D1)」は、少なくとも重合性キラル化合物であるといえる。そして、複数の芳香環からなる平板状構造を有することから、液晶性を有しないと言い切ることもできない。

ア そこで、引用発明2の「(D1)」が、重合性キラル化合物であり、且つ、液晶性を有すると仮定すると、「(D1)」は、「重合性液晶成分(A)」に含まれることになる。そうすると、引用発明2の重合性LC混合物における「非メソゲン成分(B)」の全媒体における重量%は、7.08重量%(合議体注:3.00(E1)+3.00(E2)+1.00(F1)+0.08(Irg 1076)=7.08重量%)となるから、本件発明の「全媒体の多くとも12重量%」とする要件を満たすこととなる。
したがって、引用発明2の「(D1)」が、重合性キラル化合物であり、且つ、液晶性を有すると仮定すると、上記[相違点2-2]は、実質的な相違点であるとはいえない。

イ 引用発明2の「(D1)」が液晶性を有しないと仮定すると、「(D1)」は、「非メソゲン成分(B)」に含まれることになる。そうすると、重合性LC混合物における「非メソゲン成分(B)」の全媒体における重量%は、本件発明では多くとも12重量%であるのに対し、引用発明2では23.08重量%(合議体注:16.00(D1)+3.00(E1)+3.00(E2)+1.00(F1)+0.08(Irg 1076)=23.08重量%)となる。
そこで、引用発明2における「非メソゲン成分(B)」の全媒体における含有量を、多くとも12重量%の範囲とすることが当業者にとって容易になし得たことであるかについて検討すると、引用文献1の記載事項カの段落【0067】には、「重合性LC混合物におけるキラル化合物および/または成分D)の濃度は、好ましくは、5?25重量%である。」と記載されている。また、記載事項キの段落【0078】には、「重合性LC混合物における重合開始剤または成分E)の濃度は、好ましくは、0.01?10%、非常に好ましくは、0.05?6重量%である。」と記載されている。さらに、記載事項クの段落【0080】には、「重合性LC混合物における界面活性剤または成分F)の濃度は、好ましくは、0.1?1.5重量%である。」と記載されている。そうすると、引用発明2における「(D1)」、「(E1)」、「(E2)」及び「(F1)」の含有量は、得られる光学的部材において、所望の光学特性等を有するように適宜調製することができるものであるから、それらの範囲を好ましいとされた範囲のうち、比較的少ない範囲とし、「非メソゲン成分(B)」の全媒体における含有量を、多くとも12重量%の範囲とすることは、当業者が適宜なし得たことである。また、そのような数値範囲に含まれる値としたことにより、格別な効果の差異が生じたということもできない。

(4)効果について
ア 本件特許の明細書の段落【0013】?【0016】の記載に基づけば、本件発明は、「複屈折についての好適な高い値」とともに、以下の要件を満たそうとするものである。
- 重合前の結晶化に対する、良好な室温安定性、
- 全体のレンズにわたる、均質な平面状配列、
- 高い透明点、
- 好適な低い黄色度指数、
- 熱的ストレス、例えば熱または低温に対する、良好な安定性、
- UV光に対する、良好な安定性、
- それを外部に露出する環境における、良好な耐久性、
- VIS光についての、良好な透過率、および
- その製造方法は、費用効率的かつ、大量生産プロセスに好適でなければならない。
そして、段落【0211】の記載に基づけば、本件発明の構成を具備することにより、複屈折に関する高い値、黄色度指数に関する低い値および透過に関する高い値、均一な平面状配列を示すと考えられる。
一方、引用発明1及び引用発明2は、「好ましくは高い複屈折、非常に好ましくはΔn>0.2の複屈折を有するRMより選択される」(記載事項エの段落【0047】)「成分B)」を含む重合性LC混合物から得られる光学的部材であるから、得られた光学的部材も、当然好適な高い値を示すものといえる。そして、引用発明1における重合性LC混合物は、記載事項ケの段落【0204】の記載に基づけば、N157.4IのLC相シーケンス(合議体注:Nはネマチック相を意味する(記載事項ケの段落【0149】)。)を示すものであり、得られた光学的部材は、正のAプレートの光学的特性を有するものである。また、引用発明2における重合性LC混合物も、記載事項ケの段落【0215】の記載に基づけば、Ch82.1I(合議体注:Chはコレステリック相を意味する(記載事項ケの段落【0149】)。)を示し、得られた光学的部材は、二軸性の負のCプレートの光学特性を有するものである。したがって、何れも、各液晶成分が均質な平面状配列を示しているといえる。さらに、引用発明の黄色度指数及び透過に関する値は明らかにされていないものの、何れも、無色透明性が求められる光学フィルムに用いることができるものであるから、黄色度指数に関する低い値及び透過に関する高い値を示すものと考えられる。そして、引用発明1及び引用発明2における重合性LC混合物は、スピンコートに用いることができる(記載事項ケの段落【0205】、【0216】)ものであるから、重合前の結晶化に対する、良好な室温安定性等の要件も満たすものといえる。
したがって、本件発明の効果は、いずれも、引用文献1の記載に基づいて当業者が予測し得たものであるから、格別なものということができない。

イ 審判請求人は、令和元年6月17日に提出した意見書において、「引用文献1に記載された重合性LC材料はフィルムへの用途(好ましくは0.3?5ミクロン程度の厚み(引用文献1の段落0139))を予定しているところ、これよりもかなり厚みがあるといえる複屈折RMレンズ(本願の実施例では20ミクロンの厚み)においても、当該特性について同等の効果が得られたかどうかは、引用文献1の記載から当業者が決して予測することができないと思料します。」と主張している。
しかしながら、媒体を透過する光の吸光度が媒体の厚さによってどのように変化するかは、ランベルト・ベールの法則として広く知られていることである。したがって、厚さが異なった場合にどのような効果を奏するかは、当業者にとって予測可能である。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

(5)小括
以上のとおり、上記[相違点1-1]、[相違点1-2]、[相違点2-1]及び[相違点2-2]は、何れも当業者が適宜なし得たものであるから、本件発明は、引用発明1又は引用発明2、引用文献1の記載事項及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-17 
結審通知日 2019-07-18 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2015-546889(P2015-546889)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
高松 大
発明の名称 複屈折RMレンズ  
代理人 葛和 清司  
代理人 木村 伸也  

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