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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D
管理番号 1358147
審判番号 不服2018-10041  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-23 
確定日 2019-12-16 
事件の表示 特願2016-555336「洗濯単位用量物品」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/148455、平成29年 4月13日国内公表、特表2017-510676〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)3月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月24日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は、概略以下のとおりのものである。

平成29年 8月 3日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月 8日 :意見書・手続補正書
平成29年11月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月28日 :意見書・手続補正書
平成30年 4月 2日付け:拒絶査定
平成30年 7月23日 :審判請求書・手続補正書
平成30年 8月24日付け:前置報告
平成31年 4月11日付け:当審における拒絶理由通知書
令和 1年 7月 3日 :意見書・手続補正書


第2 本願発明

本願の請求項1?7に係る発明は、令和1年7月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
水溶性フィルム及び液体洗濯洗剤組成物を含む、多区画水溶性単位用量物品であって、
前記単位用量物品の少なくとも1つの区画は前記液体洗濯洗剤組成物を含み、前記単位用量物品は、高さ、幅、及び長さを有し、
-最大長さは、2?5cmであり、
-最大幅は、2?5cmであり、
-最大高さは、3?5cmであり、
前記水溶性単位用量内の前記液体洗濯洗剤組成物の体積は、10?20mLであり、
前記単位用量物品は、10g?25gの重量を有し、
前記単位用量物品は、下部区画と、少なくとも第1上部区画と第2上部区画とを含み、
前記上部区画は、前記下部区画上に重ねられており、
上部区画全体の表面積-体積の比率と下部区画の表面積-体積の比率との比率は、1:1.25?1:2.25であり、
長さと高さとの比率は、3:1?1:1であり、
幅と高さとの比率は、3:1?1:1であり、
前記単位用量物品は、1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に前記単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、前記水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌され、
前記単位用量物品はガスを含み、前記ガスの体積と前記液体洗濯洗剤組成物の体積との比率は、1:4?1:20であり、かつ
前記単位用量物品は、実質的に、正方形、長方形、卵形、楕円形、超楕円形、又は円形の形状を有する、
多区画水溶性単位用量物品。」


第3 当審における拒絶理由の概要

当審において、平成31年4月11日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)のうち、理由2および理由4の概要は、それぞれ、以下のとおりである。

「<理由2>この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」

「<理由4>この出願の請求項1、3?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・・(中略)・・・
2.引用刊行物
1.特表2011-523975号公報
2.特表2010-503586号公報(拒絶査定における引用文献1)
3.特開2006-218306号公報」


第4 当審拒絶理由の理由2(サポート要件)の妥当性についての判断

1.サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が優先日当時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるか否かを検討して判断すべきものである。
このような観点に立って、以下検討する。

2.特許請求の範囲の記載
本願特許請求の範囲の請求項1の記載は上記第2のとおりである。

3.発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には以下の事項が記載されている。

摘記ア:段落0001
「【技術分野】
【0001】
洗濯単位用量物品に関する。」

摘記イ:段落0006?0007
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当該技術分野において、自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低い単位用量物品に対する必要性は依然として存在する。
【0007】
発明者らは、驚くべきことに、本発明による単位用量物品は、自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低いことを見出した。」

摘記ウ:段落0017?0019、0021?0022、0030、0032
「【0017】
理論に束縛されるものではないが、発明者らは、単位用量物品の長さ、幅及び高さを注意深く調節することで、単位用量物品が自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低くなることを見出した。
【0018】
単位用量物品内の液体洗濯洗剤組成物の体積は、10?27mL、好ましくは10?23mL、好ましくは10?20mLである。理論に束縛されるものではないが、体積を注意深く調節することで、単位用量物品が自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低くなることを見出した。
【0019】
単位用量物品は、30g未満、又は更には10g?28g、又は更には10g?25gの重量を有し得る。理論に束縛されるものではないが、単位用量物品の重量を注意深く調節することで、単位用量物品が自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低くなることを見出した。
・・・(中略)・・・
【0021】
単位用量物品はガスを含んでよく、当該ガスの体積と液体洗濯洗剤組成物の体積との比率は、1:4?1:20、又は更には1:5?1:15、又は更には1:5?1:9である。理論に束縛されるものではないが、ガスの体積:液体の体積を注意深く調節することで、フィルムの溶解度及び洗液中の液体洗濯洗剤組成物の分散度が最大化され得る。単位用量物品中に存在する高度に濃縮された界面活性剤組成物は、水と接触する際にゲル化する傾向がある。このゲル化効果によって、洗液中の有効水分に関して、内部洗濯洗剤組成物とフィルムとの間に競合が生じる。この競合によって、単位用量物品のフィルムの溶解度は減少し得る。フィルムにおいて洗剤界面ではなく空気界面を提供することで、有効水分に関して競合が少なくなり、フィルムの溶解率が上昇する。
【0022】
理論に束縛されるものではないが、驚くべきことに、発明者らは、水溶性単位用量物品のエンベロープ密度を注意深く調節することは、技術的な問題を解決するのに貢献することを見出した。エンベロープ密度は、単位用量物品の重量及び単位用量物品の体積の関数である。内部液体体積(及び重量):単位用量物品の全寸法及び体積を注意深く調節することで、単位用量物品が浮く可能性が低くなることが分かった。これは、単位用量物品が、洗濯機のドラム中の布地ウォッシュロード内に巻き込まれるため、そのために機械的外乱要素に曝される可能性が高いことを意味する。これによって、単位用量物品がシールと接触して、巻き込まれる事例が減少することになる。
・・・(中略)・・・
【0030】
合わせた上部区画の表面積-体積の比率と、下部区画の表面積-体積の比率との比率は、1:1.25?1:2.25、又は更には1:1.5?1:2である。このような状況において、表面積は、外部環境のみと接触するものであって、隣接区画と接触するものではない。理論に束縛されるものではないが、上部区画と下部区画との表面積と体積とを特定の比率にすることで、単位用量物品が入り込む事例を減少させるのに役立つことが分かった。
・・・(中略)・・・
【0032】
好ましくは、単位用量物品は、1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、ここで水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌される。崩壊するということは、本明細書中、フィルムが視覚的に破壊されるか又は分解されるように見えることを意味する。フィルムが破壊又は分解した直後、内部液体洗剤組成物は、単位用量物品から出て周りの水に入るように見えるであろう。」

摘記エ:段落0105?0112
「【実施例】
【0105】
図1は、本発明による多区画単位用量物品(1)を示す。単位用量物品(1)は、下部区画(2)、第1上部区画(3)、及び第2上部区画(4)を含む。単位用量物品は、フランジ(5)もまた含む。
【0106】
単位用量物品(1)は、3枚のフィルムを含む。上部区画(3,4)は、一緒に封止される第1フィルム及び第2フィルムから形成される。次に、封止された上部区画を使用して、第3のフィルムから形成される下部(2)を閉鎖する。封止された上部区画は、下部区画のフィルムと封止される。シール、ヒートシール又はその両方を含む任意の好適な封止手段が使用され得る。
【0107】
図2は、単位用量物品(1)の側面図である。最大高さ(6)は、単位用量物品の対向面上の2点間の最大距離である。最大高さ(6)は、2cm?5cm、又は更には2cm?4cm、又は更には2cm?3cmである。
【0108】
図3は、単位用量物品(1)の上面図である。最大幅(7)は、単位用量物品の対向面上の2点間の最大距離であり、最大長さ(8)は、単位用量物品の対向面上の2点間の最大距離である。最大幅は2cm?5cmであり、最大長さは2cm?5cmである。
【0109】
単位用量物品(1)は、長さ:高さの比率が3:1?1:1、幅:高さの比率が3:1?1:1、又は更には2.5:1?1:1、長さ:高さの比率が3:1?1:1を有する。
【0110】
図4は、ドラム(20)、ドア(30)及びシール(40)を含む、本発明による自動洗濯機(10)を示す。ドラム(20)は、上部(50)、下部(60)及び開口部(70)を含む。ドア(30)は、前部(80)、後部(90)及び側壁(100)、側壁を備え、ドアの後部はドラム(20)中に突出部(110)を有している。シール(40)はドラム(70)の開口部とドア(30)との間に設置されている。シール(30)はベロー(120)を含み、ベロー(120)は開口部(130)を含む。
【0111】
図5は、図1の自動洗濯機(10)の拡大図である。ドラム(60)の下部からシール(40)までの高さ(140)は7?15cmである。水平面(150)からドア(10
0)の側部までの角度(160)は、5°?30°である。水平面(150)からシール(40)までの角度(170)は、0°?25°である。ベローの開口部(130)の幅(180)は、2cm未満である。突出部(110)は、0?6cmである。
【0112】
単位用量物品(1)は、10?27mLであり、30g未満の重量である。」

4.本願発明の解決すべき課題について
本願発明の課題は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落0006?0007(摘記イ)の記載からみて、「自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低い単位用量物品を提供すること」(以下、「本願発明の課題」という)であると認められる。

5.本願発明の課題を解決するための手段
本願明細書の発明の詳細な説明の段落0017?0019、0022、0030(摘記ウ)の記載からみて、本願発明は、その課題を解決するための手段として、物品が「最大長さは、2?5cmであり、最大幅は、2?5cmであり、最大高さは、3?5cmであり、前記水溶性単位用量内の前記液体洗濯洗剤組成物の体積は、10?20mLであり、前記物品は、10g?25gの重量を有し」、「上部区画全体の表面積-体積の比率と下部区画の表面積-体積の比率との比率は、1:1.25?1:2.25であり、長さと高さとの比率は、3:1?1:1であり、かつ幅と高さとの比率は、3:1?1:1である」との規定(以下、「本願発明の規定」という。)を備えているものと認められる。

6.サポート要件に適合するか否かの検討
しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の規定について、段落0017?0019、0022、0030(摘記ウ)に、「単位用量物品の長さ、幅及び高さ」、「単位用量物品内の液体洗濯洗剤組成物の体積」、「単位用量物品の重量」、「内部液体体積(及び重量):単位用量物品の全寸法及び体積」、「上部区画と下部区画との表面積と体積」を「注意深く調節することで、単位用量物品が自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低くなることを見出した」と記載されているものの、それらを調節することによってどのような原理によって本願発明の課題を解決することになるのかといった作用機序が記載されていない。また、「見出した」と記載されているものの、その根拠が何ら示されていない上に、本願明細書の発明の詳細な説明の実施例を含め、本願発明の規定を満たす物品を用いて洗濯を行った例は記載されていないため、本願発明の規定を備える物品であれば、本願発明の課題が解決できることを把握できるともいえない。さらに、本願発明の規定を満たす物品であれば本願発明の課題が解決できることが、本願の出願日時点の技術常識からみて自明なものともいえない。
してみれば、本願の発明の詳細な説明に接した当業者が、本願発明が、本願発明の課題を解決できると認識することは不可能というべきであるし、また、本願出願日当時の技術常識を参酌しても本願発明の課題を解決できると認識することは不可能というべきである。よって、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するということはできない。

7.請求人の主張の検討
請求人は、令和1年7月3日提出の意見書において、本願発明の課題を解決するために貢献する「原理」として、本願明細書[0017]記載の「寸法(つまり、長さ、幅及び高さ)」、本願明細書[0018]記載の「体積」、本願明細書[0019]記載の「重量」、本願明細書[0021]記載の「液体の体積に対するガスの体積の比率」、本願明細書[0022]記載の「密度」を挙げ、「以上より、少なくとも4つの原理が課題を解決するために貢献することが示されているのです。課題を解決するのは1つの原理のみではありません」と主張する。また、「審判官殿は、実施例において本願発明の規定を満たす例を提供していない旨、ご指摘されていますが、本願明細書の実施例に例が挙げられています(本願明細書[0105]?[0112])。」と主張し、「したがって、本願発明は本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであると本出願人は思料いたします」と主張する。
しかし、請求人の挙げる「原理」のうち、本願明細書[0021]記載の「液体の体積に対するガスの体積の比率」については、同段落に「理論に束縛されるものではないが、ガスの体積:液体の体積を注意深く調節することで、フィルムの溶解度及び洗液中の液体洗濯洗剤組成物の分散度が最大化され得る。単位用量物品中に存在する高度に濃縮された界面活性剤組成物は、水と接触する際にゲル化する傾向がある。このゲル化効果によって、洗液中の有効水分に関して、内部洗濯洗剤組成物とフィルムとの間に競合が生じる。この競合によって、単位用量物品のフィルムの溶解度は減少し得る。フィルムにおいて洗剤界面ではなく空気界面を提供することで、有効水分に関して競合が少なくなり、フィルムの溶解率が上昇する。」と記載されているように、「フィルムの溶解度及び洗液中の液体洗濯洗剤組成物の分散度」に関与することが記載されているのみであり、本願発明の課題を解決することに貢献することは記載されていない。
また、その他の「原理」については、上記6.で述べたとおりであるし、本願明細書の発明の詳細な説明の「実施例」(段落0105?0112、摘記エ)には、本願発明の規定を満たす物品を用いて洗濯を行って、「自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低い単位用量物品を提供」できることを具体的に示した例は記載されていないため、本願発明の課題が解決できたことは把握できない。
よって、出願人の主張は採用できない。

8.まとめ
以上検討のとおり、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。


第5 当審拒絶理由の理由4(進歩性)の妥当性についての判断

1.本願発明
本願発明は、上記第2のとおりである。

2.引用刊行物
引用例1:特表2011-523975号公報
引用例2:特表2010-503586号公報

3.引用刊行物の記載
引用例1、2には、それぞれ、次の記載がある。
(1)引用例1
摘記1a:請求項1、段落0011?0012、0023、0036?0037
「【請求項1】
水溶性フィルムを含み、かつ少なくとも第1の及び第2の区画を有する洗濯用途で使用するのに好適な多区画パウチであって、各区画が組成物を含み、前記第2の区画が少なくとも5の色相効率と約30%?約95%の範囲の洗浄除去値とを示す増白剤を含むことを特徴とする、多区画パウチ。
・・・(中略)・・・
【0011】
本発明の多区画パウチの区画は、別個であることができるが、好ましくは任意の好適な様式で結合される。最も好ましくは、第2の及び所望により第3の又はそれに続く区画は、第1の区画上に重ね合わせられる。一実施形態では、…。別の方法としては、第2の及び第3の、並びに所望によりそれに続く区画を、全て第1の区画上に重ね合わせることもできる。…。区画の大きさ及び形状は、この構成を達成できるように選択される。…
【0012】
区画の形状は同じでも異なっていても良い。好ましい実施形態においては、第2の及び所望により第3の、又はそれに続く区画は、第1の区画に対して異なる形状及び外形を有する。この実施形態において、第2の及び所望により第3の区画は第1の区画上のデザイン中に配置される。…。好ましい実施形態においては、第1の区画は、周囲が封止された2つの大きな面を有する最も大きな区画である。第2の区画は、第1の区画の1つの面の表面積の75%未満、より好ましくは50%未満をより小さく覆う。第3の区画が存在する実施形態においては、上記の構成は同様であるが、第2の及び第3の区画は、第1の区画の1つの面の表面積の60%未満、より好ましくは50未満%、更により好ましくは45未満%を覆う。
・・・(中略)・・・
【0023】
パウチを作製する型は、必要とされるパウチ寸法に応じる任意の外形、長さ、幅及び深さであってよい。型はまた、所望するならば大きさ及び外形が互いに異なっていてもよい。例えば、最終パウチの容積が、5mL?300mL、又は更には10mL?150mL、又は更には20mL?100mLであり、型の寸法がそれに応じて調節されることが好ましい場合がある。
・・・(中略)・・・
【0036】
本発明の多区画パウチの特に好ましい実施形態は、第1の液体組成物を含む第1の区画、第2の液体組成物を含む第2の区画、及び第3の液体組成物を含む第3の区画を含む。好ましくは第1の区画が最も大きく、主要な洗浄洗剤組成物を含む。好ましくはかかる主要な洗浄洗剤は、界面活性剤と、他の成分と一緒になった溶媒とを含む。特定の実施形態においては、好ましくはかかる第1の組成物は漂白系を含む。第2の組成物は増白剤を含む。増白剤に加えて、好ましくは第2の区画は界面活性剤を含み、最も好ましくはアニオン性界面活性剤及び/又は溶媒を含む。存在する場合には、第3の組成物は好ましくは以下に記載のような他の適合性のない成分を含む。あるいは第3の組成物は界面活性剤並びに/又は水及び非基材、洗剤着色剤、染料を含む。
【0037】
第1の及び第2の液体組成物の重量比は、好ましくは1:1?20:1、より好ましくは1:1?10:1である。第2の組成物対第3の組成物の重量比は、1:5?5:1、より好ましくは1:2?2である。最も好ましくは、第2の組成物対第3の組成物の重量比は1:1である。」

摘記1b:段落0013?0014
「【0013】
多区画パウチは、好ましくは水に可溶性であるか又は分散性であるフィルム材から作製され、20マイクロメートルの最大孔径を有するガラスフィルターの使用後に、本明細書で提示された方法により測定されたときに、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、又は更には少なくとも95%の水溶解度を有する。
【0014】
50グラム±0.1グラムのパウチ材料が、予め秤量された400mLビーカー中に添加され、245mL±1mLの蒸留水が加えられる。これは、600rpmに設定された磁性攪拌器上で、30分間激しく攪拌される。その後、混合物を、上記で定義した孔径(最大20ミクロン)の折り重ねた定性的な焼結ガラスフィルターで濾過する。回収した濾液からいずれかの従来法によって水を乾燥させ、残った材料の重量を測定する(これが溶解又は分散画分である)。その後、溶解度%又は分散度%を計算することができる。

摘記1c:段落0021
「【0021】
変形性のために、パウチ又はパウチ区画は、好ましくは区画の容積空間の約50%まで、好ましくは約40%まで、より好ましくは約30%まで、より好ましくは約20%まで、より好ましくは約10%までの容積を有する気泡を含有するであろう液体である、構成成分を含む。

(2)引用例2
摘記2a:段落0013、0016
「【0013】
洗浄パウチとして洗剤組成物、即ち、洗濯、手動及び自動食器洗いなどを含む洗浄に使用するために、使用時に溶解する水溶性フィルムの中に充填した洗剤又は添加組成物、即ち、洗剤組成物を使用するためにフィルムが除去される必要がないもの、が考えられる。用語「パウチ」とは、本明細書で使用する時、小袋、カプセル及び包装された部分を包含する。パウチは通常、約40?約10mL、好ましくは約30?約20mLの体積を有する。寸法はパウチの幾何学的形状によって変化してよく、…。注目される形状は、卵形、楕円、円形、正方形、矩形、まくら形状パウチ及びそれらの組み合わせである。パウチは、好ましくは約2?10cm、より好ましくは3?8cmの範囲の最大直径を有する。パウチは、約0.4?7cm、より好ましくは1.5?5cmの範囲の最大高さを有する。
・・・(中略)・・・
【0016】
洗浄パウチは単区画又は多区画パウチであることができる。多区画パウチの場合には、液体組成物は、洗浄組成物(即ち、ビルダー等などの洗浄活性成分を含有する)又は純粋に香料、染料等を含有する審美的組成物のどちらかであることができる。」

4.引用例1に記載された発明
引用例1には、摘記1aの「水溶性フィルムを含み、かつ少なくとも第1の及び第2の区画を有する洗濯用途で使用するのに好適な多区画パウチであって、各区画が組成物を含み、…、多区画パウチ」との記載(請求項1)、「第2の及び第3の、並びに所望によりそれに続く区画を、全て第1の区画上に重ね合わせることもできる」との記載(段落0011)からみて、「水溶性フィルムを含み、第1の区画上に重ね合わせた第2の及び第3の区画を有する、洗濯用途で使用される多区画パウチであって、各区画が組成物を含む多区画パウチ」に係る発明が記載されている。
また、各区画が含む「組成物」は、摘記1aの「好ましくは第1の区画が最も大きく、主要な洗浄洗剤組成物を含む。好ましくはかかる主要な洗浄洗剤は、界面活性剤と、他の成分と一緒になった溶媒とを含む。…。第2の組成物は増白剤を含む。増白剤に加えて、好ましくは第2の区画は界面活性剤を含み、最も好ましくはアニオン性界面活性剤及び/又は溶媒を含む。存在する場合には、第3の組成物は…界面活性剤並びに/又は水及び非基材、洗剤着色剤、染料を含む」との記載(段落0036)からみて、界面活性剤と他の成分と一緒になった溶媒とを含む洗浄洗剤組成物といえる。さらに、摘記1cの「パウチ区画は、…区画の容積空間の…好ましくは約20%まで…の容積を有する気泡を含有するであろう液体である、構成成分を含む」との記載(段落0021)からみて、パウチ区画には、液体と共に、区画の容積空間の約20%までの容積を有する気泡が存在することが記載されている。
そうすると、引用例1には、
「水溶性フィルムを含み、洗浄洗剤組成物として界面活性剤と他の成分と一緒になった溶媒とを含む、洗濯用途で使用される多区画パウチであって、多区画パウチは第1の区画上に重ね合わせた第2の及び第3の区画を有し、パウチ区画には、液体と共に区画の容積空間の約20%までの容積を有する気泡が存在する、多区画パウチ」についての発明(以下、この発明を「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・判断
本願発明と引用例1発明とを比較する。
引用例1発明の界面活性剤と溶媒とを含む「洗浄洗剤組成物」は、液体であると認められるし、洗濯用途で使用されるものであるから、本願発明の「液体洗濯洗剤組成物」に相当する。
引用例1発明の「多区画パウチ」が高さ、幅、及び長さを有していることは自明であるし、フィルムが水溶性であるから多区画パウチも水溶性と認められる。そうすると、引用例1発明の「多区画パウチ」は本願発明の多区画水溶性単位容量物品」に相当する。
引用例1発明の「第1の区画」及びその上に重ね合わされた「第2の及び第3の区画」は、本願発明の「下部区画」及び前記下部区画上に重ねられた「少なくとも第1上部区画と第2上部区画」に相当する。
引用例1発明のパウチ区画に存在する「気泡」は、本願発明の単位容量物品が含む「ガス」に相当する。
してみると、本願発明と引用例1発明とは、
「水溶性フィルム及び液体洗濯洗剤組成物を含む、多区画水溶性単位用量物品であって、前記単位用量物品の少なくとも1つの区画は前記液体洗濯洗剤組成物を含み、前記単位用量は、高さ、幅、及び長さを有し、前記物品は、下部区画と、少なくとも第1上部区画と第2上部区画とを含み、前記上部区画は、前記下部区画上に重ねられており、前記単位用量物品はガスを含む、多区画水溶性単位容量物品」
である点において一致し、以下の点において相違していると認められる。

(相違点1)
物品の高さ、幅、及び長さに関し、本願発明は「最大長さは、2?5cmであり、最大幅は、2?5cmであり、最大高さは、3?5cmであり」、「長さと高さとの比率は、3:1?1:1であり、かつ幅と高さとの比率は、3:1?1:1であ」るのに対し、引用例1発明は、物品の最大長さ、最大幅、最大高さ、長さと高さとの比率、及び幅と高さの比率が不明である点。
(相違点2)
本願発明は「水溶性単位用量内の前記液体洗濯洗剤組成物の体積は、10?20mLであり」、「物品は、10g?25gの重量を有」するのに対し、引用例1発明は、水溶性単位用量内の液体洗濯洗剤組成物の体積及び物品の重量が不明である点。
(相違点3)
本願発明は「上部区画全体の表面積-体積の比率と下部区画の表面積-体積の比率との比率は、1:1.25?1:2.25であ」るのに対し、引用例1発明は、上部区画全体の表面積-体積の比率と下部区画の表面積-体積の比率との比率が不明である点。
(相違点4)
本願発明は「単位用量物品は、1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に前記単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、前記水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌され」という規定を満たすのに対し、引用例1発明の多区画パウチは、当該規定を満たすか否か不明である点。
(相違点5)
本願発明は「ガスの体積と前記液体洗濯洗剤組成物の体積との比率は、1:4?1:20」であるのに対し、引用例1発明は、ガスの体積(区画の20%まで。すなわち0?20%)と洗浄洗剤組成物の体積(残部。すなわち80?100%)との比率が0:100?20:80である点。
(相違点6)
本願発明は「単位用量物品は、実質的に、正方形、長方形、卵形、楕円形、超楕円形、又は円形の形状を有する」のに対し、引用例1発明の多区画パウチは、その形状が不明である点。

そこでまず、相違点1、2、6について検討する。引用例1の段落0023(摘記1a)には、多区画パウチの総容積を10mL?150mLとすること、及びパウチを製造する型の寸法は当該容積に応じて調節されることが記載され、これはすなわちパウチの容積に応じてパウチの寸法を調節することを意味していると認められる。そして、引用例2の段落0013、0016(摘記2a)に記載されているように、洗濯に使用するための多区画パウチとして約40?約10mLの容量を有し、卵形、楕円、円形、正方形、矩形、まくら形状等の形状を有し、約3?8cmの範囲の最大直径と約1.5?5cmの高さを有するものは公知である。また、多区画パウチの容量は封入する洗濯洗剤組成物の量に応じて調節されるされることは自明であるし、多区画パウチの重量はその容量に依存するものと認められる。してみれば、引用例1発明において、所望の目的を達成するためにこの範囲内で、用いる洗浄洗剤組成物の体積を設定し、多区画パウチをそれに応じた容量及び重量とし、また多区画パウチの容量に応じた形状及び寸法(高さと、直径、又は長さ及び幅)を引用例2の記載も参考にしながら適宜設定し、本願発明において特定される「水溶性単位用量内の前記液体洗濯洗剤組成物の体積は、10?20mLであり」、「物品は、10g?25gの重量を有」し、「最大長さは、2?5cmであり、最大幅は、2?5cmであり、最大高さは、3?5cmであり」、「長さと高さとの比率は、3:1?1:1であり、かつ幅と高さとの比率は、3:1?1:1であり」と同程度の範囲に定め、「実質的に、正方形、長方形、卵形、楕円形、超楕円形、又は円形の形状」とすることは、当業者ならば容易になし得ることである。
次に、相違点3について検討する。引用例1の段落0012(摘記1a)には、第1の区画上の第2の及び第3の区画について、第1の区画の1つの面の表面積の60%未満を覆うように配置することが記載され、段落0036?0037(摘記1a)には、 第1の区画の液体組成物及び第2の区画の液体組成物の重量比を1:1?20:1とし、第2の区画の液体組成物対第3の区画の液体組成物の重量比を1:5?5:1とすることが記載されている。してみれば、引用例1発明において、所望の目的を達成するためにこの範囲内で第1?第3の区画の寸法を調節し、本願発明において特定される「上部区画全体の表面積-体積の比率と下部区画の表面積-体積の比率との比率は、1:1.25?1:2.25」と同程度の範囲に定めることは、当業者ならば容易になし得ることである。
続いて、相違点4について検討する。引用例1の段落0013?0014(摘記1b)には、「多区画パウチ」は「水に可溶性であるか又は分散性であるフィルム材から作製され」、「50グラム±0.1グラムのパウチ材料が、予め秤量された400mLビーカー中に添加され、245mL±1mLの蒸留水が加えられる。これは、600rpmに設定された磁性攪拌器上で、30分間激しく攪拌される。その後、混合物を、上記で定義した孔径(最大20ミクロン)の折り重ねた定性的な焼結ガラスフィルターで濾過する。回収した濾液からいずれかの従来法によって水を乾燥させ、残った材料の重量を測定する(これが溶解又は分散画分である)。その後、溶解度%又は分散度%を計算する」方法により測定されたときに「少なくとも95%の水溶解度を有する」ことが記載されている。これに対し、本願明細書の段落0033には、本願発明の「単位容量物品のフィルム」は、「水に可溶性であるか、又は分散性であり」、「予め秤量した400mLビーカーに、50グラム±0.1グラムのフィルム材料を加え、245mL±1mLの蒸留水を加える。これを、600rpmに設定した磁気撹拌機上で30分間激しく撹拌する。その後、混合物を、上記で定義した孔径(最大20マイクロメートル)の折り畳んだ定性分析用焼結ガラス濾紙で濾過する。回収した濾液から任意の従来の方法によって水を乾燥させ、残った材料の重量を測定する(これが溶解又は分散画分である)。その後、溶解度(%)又は分散度(%)を計算する」方法により測定する場合に「少なくとも95%の水溶性を有する」ことが記載されている。すなわち、引用例1発明の多区画パウチのフィルムの水溶性は本願発明の単位容量物品のフィルムの水溶性と同一である。そうすると、当該水溶性を有するフィルムで構成された引用例1発明の多区画パウチは、本願発明と同様に、「1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に前記単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、前記水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌され」との規定を満たすと認められる。すなわち、相違点4は実質的な相違点ではない。また、仮に実質的な相違点だとしても、引用例1発明の多区画パウチは、洗濯において、水溶性フィルムが溶解することにより区画が含む洗浄洗剤組成物を放出するものであるから、フィルムの水溶性を調節することで、引用例1発明の多区画パウチを「1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に前記単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、前記水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌され」との規定を満たす程度のものとすることは、当業者ならば容易になし得ることである。
そして、相違点5について検討する。引用例1発明において、パウチ区画内の気泡の容積は、「変形性のために、パウチ又はパウチ区画は、好ましくは区画の容積空間の約50%まで、…、より好ましくは約20%まで」とされているところ(段落0021)、その最適化を図り、本願発明において特定される「前記ガスの体積と前記液体洗濯洗剤組成物の体積との比率は、1:4?1:20であり」と同程度の範囲とすることは、当業者ならば容易になし得ることである。
さらに、本願発明の効果について検討する。本願明細書の段落0017?0019、0022、0030には、「単位用量物品の長さ、幅及び高さ」、「単位用量物品内の液体洗濯洗剤組成物の体積」、「単位用量物品の重量」、「内部液体体積(及び重量):単位用量物品の全寸法及び体積」、「上部区画と下部区画との表面積と体積」を注意深く調節することで、単位用量物品が自動洗濯機のドアとシールとの間、又はシール自体内に入り込む可能性が低くなることを見出した旨が記載されているものの、本願明細書の発明の詳細な説明では当該効果について十分に確認されていない(上記第4参照)。また、本願明細書の段落0021には「ガスの体積:液体の体積を注意深く調節することで、フィルムの溶解度及び洗液中の液体洗濯洗剤組成物の分散度が最大化され得る。単位用量物品中に存在する高度に濃縮された界面活性剤組成物は、水と接触する際にゲル化する傾向がある。このゲル化効果によって、洗液中の有効水分に関して、内部洗濯洗剤組成物とフィルムとの間に競合が生じる。この競合によって、単位用量物品のフィルムの溶解度は減少し得る。フィルムにおいて洗剤界面ではなく空気界面を提供することで、有効水分に関して競合が少なくなり、フィルムの溶解率が上昇する。」と記載されているものの、本願明細書には、実施例等において「ガスの体積:液体の体積」が本願発明の規定を満たす物品を用いて洗濯を行った例が記載されていないため、実際に当該効果が奏されることは把握できない。さらに、「ガスの体積:液体の体積」が本願発明の規定を満たす物品であれば実際に当該効果が奏されることが、本願の優先日時点の技術常識からみて自明なものともいえない。
そうすると、本願発明が、引用例1、2に記載された発明から予測外の格別の作用効果を奏しているものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.請求人の主張の検討
請求人は、令和1年7月3日提出の意見書において
「このような課題については、どの引用文献も、示唆も開示もしていません。そのような引用文献からスタートしても、当業者は本願発明に想到しえないでしょう。どの引用文献も本願で気付いた解決すべき課題について認識されていない状況においては、当業者は、引用文献に記載の水溶性単位用量物品の寸法を変更しようとする動機づけはありません。」
「さらに、今回補正されたところの本願発明は、請求項6の要旨が導入されています。つまり、単位用量物品が、1Lビーカー中、20?21℃で950mLの脱イオン水に単位用量物品が付加されると、10秒?5分で崩壊し、水は、5cmの磁気撹拌棒で350rpmで撹拌される、ことに限定されています。審判官殿は、「(5)本願発明6について」で、「引用例1の段落0013?0014には、多区画パウチが所定の撹拌かで水に溶解することが記載されているから、引用例1発明の多区画パウチは本願発明6の規定を満たすと推認される」とご指摘されています。しかしながら、引用例1の0014には、600rpmに設定された撹拌器上で、30分間激しく撹拌されることを開示しているのみであり、それよりも溶解が困難となる条件である、回転数が約半分の350rpmでの撹拌で10秒?5分で崩壊することを満たすことは自明ではないと思料いたします。」
「さらに、今回補正されたところの本願発明は、請求項8の要旨も導入されています。つまり、単位用量物品が、ガスを含み、ガスの体積と液体洗濯洗剤組成物の体積との比率は、1:4?1:20であることに限定されています。本願明細書[0021]に開示されるように、液体の体積に対するガスの体積の比率を限定することで、フィルムにおいて洗剤界面ではなく空気界面を提供し、有効水分に関して競合が少なくなり、フィルムの溶解率が上昇するのです。審判官殿は、「(7)本願発明8について」で、このようなことは、引用例1の段落0021の記載から、当業者であれば容易になし得ることであるとご指摘されています。しかしながら、引用例1は変形性のために、気泡の含有する容積を限定していると開示されるのみです。一方、本願は、ガスと体積の比率を特定の範囲とし、フィルムの溶解率を上昇させるものなのです。よって、当業者であれば容易になし得ることではないと思料いたします。
「以上より、本願発明は、引用例から容易に想到できるものではないと本出願人は思料いたします。」
と主張する。
しかし、当審の拒絶理由は、引用例1および引用例2には、多区画パウチの寸法等について記載されているから、その範囲内で寸法等を調節し所定の範囲に定めることは当業者ならば容易になし得ると判断したのであって、当該判断は、本願明細書記載の課題と引用例記載の課題の相違とは関係がないから、主張は釈明になっていない。
また、上記5.に記載したように、本願明細書の段落0033の記載も参酌すれば、引用例1の段落0013?0014の記載からみて、引用例1発明の多区画パウチは所定の規定を満たすと認められるし、引用例1発明の多区画パウチの溶解性を所定の規定を満たすようにすることは、当業者ならば容易になし得ることである。
そして、上記5.に記載したように、引用例1発明において、液体洗濯洗剤組成物と共に導入する気泡の体積を記載された範囲内で調節し所定の範囲に定めることは当業者ならば容易になし得る事項であるし、本願発明が本願明細書の段落0021記載の効果を実際に有することは確認できない。
よって、請求人の主張は採用できない。

7.まとめ
以上検討のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおり、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、その余のことを検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-07-24 
結審通知日 2019-07-26 
審決日 2019-08-06 
出願番号 特願2016-555336(P2016-555336)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C11D)
P 1 8・ 537- WZ (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 建二  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 蔵野 雅昭
牟田 博一
発明の名称 洗濯単位用量物品  
代理人 出口 智也  
代理人 前川 英明  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 小島 一真  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 永井 浩之  

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