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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 前置又は当審の拒絶理由により拒絶すべきものである A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 補正却下を取り消す 前置又は当審の拒絶理由により拒絶すべきものである A63F
管理番号 1358154
審判番号 不服2018-15362  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2019-12-12 
事件の表示 特願2016- 36703号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 7日出願公開、特開2017-153508号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月29日の出願であって、平成29年12月20日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年3月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月13日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月20日付け(送達日:同年8月28日)で、同年8月1日になされた手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされた。
本件は、この拒絶査定を不服として平成30年11月20日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、同時に、上記補正の却下の決定について不服が申し立てられ、当審において、令和1年5月29日付けで上記補正の却下の決定を取り消すことを前提として、拒絶の理由を通知したところ、同年8月2日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 平成30年8月20日付けの補正の却下の決定について
1 補正の却下の決定の対象
平成30年8月20日付けの補正の却下の決定は、同年8月1日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)について却下の決定を行ったものである。

2 補正の却下の決定の理由と当否の判断について
(1)平成30年8月20日付け補正の却下の決定の理由
原審における平成30年8月20日付け補正の却下の決定の理由は、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないことは明らかであり、特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないから、同法第53条第1項の規定により却下する、というものである。
補正の却下の決定は、本件補正により特定された「前記特定演出において、前記経過演出の終了後に実行される演出は、前記経過演出中に実行可能な所定演出と比べて前記有利状態に制御される期待度が同じ又は高く」という事項を対象に検討されたものである。
そして、補正の却下の決定の具体的な理由として、「補正前の請求項1-2において元々特定されていた「経過演出の終了後」に実行される「演出」についての期待度を単に特定するのであれば、ともかく、補正前の請求項1-2においては何ら特定のされていなかった「経過演出中に実行可能な所定演出」を持ち出すことが限定的減縮に当たらないことは明らかである」ことを挙げている。
(2)平成30年8月20日付け補正の却下の決定の当否の判断
本件補正後の請求項1-2において特定された「経過演出中に実行可能な所定演出」は、補正前の請求項1-2において特定されていた「経過演出の終了後」に実行される「演出」についての期待度を特定するための比較対象であるから、本件補正は、補正前の請求項1-2において特定されていた「経過演出の終了後」に実行される「演出」についての期待度を比較対象を用いて特定して限定したものと認められる。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
よって、原審における平成30年8月20日付け補正の却下の決定は不適法なものであるから、取り消す。

第3 本願発明1について
1 本願発明1
平成30年8月20日付けの補正の却下の決定は上記第2のとおり取り消された。本件補正を取り消すことを前提として、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-2に対し、当審において令和1年5月29日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年8月2日付けで意見書及び手続補正書が提出された。
したがって、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、令和1年8月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項によって特定されるとおりのものであって、そのうち、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである(A?Gは、本願発明1を分説するため当審で付した。)。
「【請求項1】
A 変動表示を行なう遊技機であって、
B 未だ開始されていない変動表示について、特定態様を含む複数種類の表示態様のうちのいずれかの表示態様で保留表示として表示する保留表示手段と、
C 所定期間の終了タイミングを示唆可能な計時時間を変動表示の経過とともに変化させる経過演出を該所定期間に亘って実行し、該所定期間が終了した後に複数種類の演出のうちいずれかの演出を実行することにより、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否かを予告する特定演出を実行する特定演出実行手段と、を備え、
D 前記特定演出実行手段は、
D-1 変動表示を実行するときに、当該変動表示に対応する前記保留表示が前記特定態様となっていたか否かに応じて、異なる割合で前記特定演出を実行し、
D-2 前記特定演出において、前記経過演出の終了後に、前記複数種類の演出の中から当該経過演出の計時時間に応じた演出を実行し、
E 前記特定演出において、前記経過演出の終了後に実行される演出は、前記経過演出中に実行可能な所定演出と比べて前記有利状態に制御される期待度が同じ又は高く、
C-1 前記経過演出は複数種類あり、同一の前記計時時間を変化させる前記経過演出は、第1所定期間に亘って実行する第1経過演出と該第1所定期間とは異なる第2所定期間に亘って実行する第2経過演出とを含み、
F 基準時点からの経過時間に基づいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、
前記特別演出実行手段は、特定の電力供給が開始されたときを前記基準時点とし、前記特定の電力供給以外の電力供給が開始されたときを基準時点としない、
G 遊技機。」

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、本願発明1は、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明、以下の引用文献2、5に記載の技術事項、周知の技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-140号公報
引用文献2:特開2002-35269号公報
引用文献5:特開2016-22051号公報
(当審拒絶理由では、周知の技術の例示として、
引用文献3:特開2013-9899号公報
引用文献4:特開2013-31476号公報
を例示している。)

3 引用文献に記載された事項
(1)引用文献1
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(1-a)「【0055】
第1特別図柄作動記憶ランプ34aは、上記の上始動入賞口26に遊技球が流入するごとに、入賞が発生したことを記憶する意味で1個ずつ増加後の表示態様へと変化していき(最大4個まで)、その入賞を契機として特別図柄の変動が開始されるごとに1個ずつ減少後の表示態様へと変化していく。また第2特別図柄作動記憶ランプ35aは、上記の可変始動入賞装置28(下始動入賞口)に遊技球が流入するごとに、入賞が発生したことを記憶する意味で1個ずつ増加後の表示態様へと変化し(最大4個まで)、その入賞を契機として特別図柄の変動が開始されるごとに1個ずつ減少後の表示態様へと変化する。なお本実施形態では、第1特別図柄作動記憶ランプ34aが未点灯(記憶数が0個)の場合、第1特別図柄が既に変動開始可能な状態(停止表示時)で上始動入賞口26に遊技球が流入しても表示態様は変化しない。また第2特別図柄作動記憶ランプ35aが未点灯(記憶数が0個)の場合、第2特別図柄が既に変動開始可能な状態(停止表示時)で可変始動入賞装置28(下始動入賞口)に遊技球が流入しても表示態様は変化しない。すなわち、各特別図柄作動記憶ランプ34a,35aの表示態様により表される記憶数(最大4個)は、その時点で未だ第1特別図柄又は第2特別図柄の変動が開始されていない入賞の回数を表している。」

(1-b)「【0353】
〔演出画像の例〕
次に、パチンコ機1において実際に液晶表示器42に表示される演出画像について、いくつかの例を挙げて説明する。以上のように、パチンコ機1において大当りの内部抽選が行われると、主制御CPU72による制御の下で変動パターン(変動時間)を決定し、第1特別図柄や第2特別図柄による変動表示が行われる(図柄表示手段)。ただし、上記のように第1特別図柄や第2特別図柄そのものは7セグメントLEDによる点灯・点滅表示であるため、見た目上の訴求力に乏しい。そこでパチンコ機1では、上記のように演出図柄を用いた変動表示演出が行われている。」

(1-c)「【0357】
また液晶表示器42の画面下部には、第1特別図柄及び第2特別図柄それぞれの作動記憶数を表すマーカ(図中に参照符号M1,M2を付す)が表示されるものとなっている。これらマーカM1,M2は、それぞれの表示個数が対応する第1特別図柄、第2特別図柄の作動記憶数(第1特別図柄作動記憶ランプ34a、第2特別図柄作動記憶ランプ35aの表示数)を表しており、遊技中の作動記憶数の変化に連動して表示個数も増減する。またマーカM1,M2は、視覚的な判別を容易にするため第1特別図柄に対応するマーカM1が例えば円(○)の図形で表示され、第2特別図柄に対応するマーカM2が例えばハートの図形で表示されている。なお図27中(A)の例では、マーカM1が4つとも点灯表示されることで第1特別図柄の作動記憶数が4個であることを表し、マーカM2が全て非表示(破線で示す)になることで第2特別図柄の作動記憶数が0個であることを表している(記憶数表示演出実行手段)。」

(1-d)「【0386】
〔予告発生タイミング教示演出(通常モード)〕
図29及び図39は、通常モードにて実行される予告発生タイミング教示演出の演出例を部分的に示す連続図である。ここで、予告発生タイミング教示演出とは、遊技者に対して特定の予告演出の発生タイミングを教示(報知、告知)する演出である。」

(1-e)「【0409】
また図示の例では、一番右端のマーカM2は、特殊表示M2a(例えばハテナの図形を模したマーク)によって表示されている。なお、ここでは特殊表示M2aに対応する抽選要素が大当りに該当するものと事前に判定されていたものとする。
ここで、「特殊表示」とは、その後に予告発生タイミング教示演出が実行される可能性があることを示唆する表示である。図示の例では、「特殊表示M2a」による表示が行われているので、「特殊表示M2aが消費されると何か起こるかもしれない」ということを遊技者に伝達することができる。
【0410】
図33中(C):次の第2特別図柄の変動に伴って、演出図柄の変動表示演出が行われる。そして、記憶順で先頭にあった作動記憶が消費されて第2特別図柄の作動記憶の残りが3個になったため、画面上に残った3つのマーカM2(特殊表示M2aを含む)がそれぞれ1個分ずつ一方向(ここでは左方向)へずれていく演出が行われている。また、液晶表示器42の画面下部では第4図柄Z2が変動表示されている。
・・・
【0419】
図35中(I):次の第2特別図柄の変動に伴って、演出図柄の変動表示演出が行われる。そして、記憶順で先頭にあった作動記憶が消費されて第2特別図柄の作動記憶の残りがなくなっため、画面上のマーカM2がすべて消去される演出が行われる。また、液晶表示器42の画面下部では第4図柄Z2が変動表示されている。
ここで、いよいよ特殊表示M2aに対応する作動記憶(抽選要素)が消費されて第2特別図柄の変動が開始されている。タイマTの表示画面には、「4秒」という文字情報が表示されている。」

(1-f)「【0443】
ステップS710:演出制御CPU126は、表示態様変化演出選択処理を実行する。この処理では、演出制御CPU126は、第1特別図柄又は第2特別図柄の作動記憶数を表すマーカの表示態様を変化させる処理を行う。具体的には、花火モードにおいて予告発生タイミング教示演出を実行する場合、対象となるマーカM2を「特殊表示M2a(ハテナのマーク)」に変化させる演出パターン(図33中(B)等)を選択する処理を実行する。
以上の手順を終えると、演出制御CPU126は、演出制御処理(図37)に復帰する。」

(1-g)「【0448】
ステップS804:演出制御CPU126は、演出パターン先判定処理(ステップS802)で先判定した演出パターンの中に特定の予告演出が含まれているか否かを確認する。特定の予告演出としては、例えば役物落下演出や群予告演出等が挙げられる。」

(1-h)「【0455】
ステップS814:演出制御CPU126は、待ち時間算出処理を実行する(待ち時間算出手段)。この待ち時間算出処理を実行することにより、対象となる特定の予告演出までの待ち時間を算出することができる。なお、待ち時間算出処理の内容については、別の図面を参照しながらさらに後述する。
【0456】
ステップS816:演出制御CPU126は、待ち時間カウントダウン処理を実行する(カウントダウン実行手段)。具体的には、待ち時間の算出処理(ステップS814)で算出された待ち時間の値が、待ち時間の算出処理(ステップS814)において待ち時間タイマにセットされているため、演出制御CPU126は、その待ち時間タイマのカウントダウンを実行する。なお、カウント値が「0」に到達した場合、上記の予告発生タイミング教示演出実行フラグや、後述するタイマ作動フラグをOFFに設定する。」

(1-i)「【0469】
ステップS860:演出制御CPU126は、予告演出先判定処理を実行する。この処理では、演出制御CPU126は、先判定の対象となる抽選要素が実際に消費されて変動表示される際の変動表示演出中に実行するべき予告演出の内容を抽選によって選択する。予告演出の内容は、例えば内部抽選の結果(当選又は非当選)や現在の内部状態(通常状態、高確率状態、時間短縮状態)に基づいて決定される。上記のように予告演出は、変動表示演出中にリーチ状態が発生する可能性を遊技者に予告したり、最終的に大当りになる可能性があることを予告したりするものである。したがって、非当選時には予告演出の選択比率は低く設定されているが、当選時には遊技者の期待感を高めるため、予告演出の選択比率は比較的高く設定されている。
この処理により、演出制御CPU126は、「小当り時」、「大当り時」又は「はずれ時」の変動中に選択される予告演出パターンを先判定することができる。」

(1-j)「【0487】
図43中(C):可変始動入賞装置28が開放している状態で、可変始動入賞装置28(始動入賞口28a)への遊技球の入賞が発生すると、これを契機として第2特別図柄が変動を開始する(時刻t1)。
時刻t1から開始された第2特別図柄の変動は、時間短縮機能がONとなっている状態での変動であるため、短縮された変動時間に設定されている(例えば、3.0秒程度)。時刻t1から時刻t2までの時間T1は、第2特別図柄の変動時間である。そして、時刻t2で第2特別図柄の変動が終了すると、時刻t2から時刻t3までの時間T2にわたって第2特別図柄が停止表示される。時刻t2から時刻t3までの時間T2は、第2特別図柄の停止表示時間である(例えば、0.5秒程度)。
【0488】
以下同様に、第2特別図柄の変動表示及び停止表示が繰り返される。すなわち、時刻t3から時刻t4までの時間T3で第2特別図柄が変動表示され、時刻t4から時刻t5までの時間T4で第2特別図柄が停止表示される。時刻t5から時刻t6までの時間T5で第2特別図柄が変動表示され、時刻t6から時刻t7までの時間T6で第2特別図柄が停止表示される。
【0489】
そして、時刻t7から開始される第2特別図柄の変動は、大当り又はスーパーリーチ後にはずれとなる比較的長い変動時間が確保された変動であるものとする。ただし、この場合も同様に、時刻t7から時刻t13までの時間T7で第2特別図柄が変動表示され、時刻t13から時刻t14までの時間T8で第2特別図柄が停止表示される。
【0490】
図43中(D):そして、第2特別図柄の変動時間T1,T3,T5においては、非リーチ演出(演出図柄のバラケ目停止演出)が実行され、第2特別図柄の停止表示時間T2,T4,T6においては停止表示演出(演出図柄の確定表示演出)が実行される。
また、第2特別図柄の変動時間T7においては、時刻t7で演出図柄のスクロール演出が開始され、時刻t8から時刻t9までの時間を利用して第1予告演出(例えばステップアップ予告演出)が実行され、時刻t10にてリーチ状態が発生し、時刻t11から時刻t12までの時間を利用して第2予告演出(例えば群予告演出)が実行される。
【0491】
このような演出パターンのスケジュールについても、特別図柄の変動開始時あるいは先判定時にすでに明確となっている。
本実施形態では、花火モードにおいては、予告発生タイミング教示演出を複数の変動をまたいで実行することとしている。また、花火モードにおいては、予告発生タイミング教示演出の対象として「第2予告演出(群予告演出)」を対象としている。
【0492】
ここで、仮に時刻taにて、時刻t7から開始されるリーチ変動に該当する第2図柄の抽選要素が新たに記憶されたものとする。この場合、最初の非リーチ演出は既に実行中であり、次とその次の非リーチ演出やその後のリーチ演出は未だ実行されていない状況である。この場合、時刻t7から時刻t11までの時間Tx1に、合計変動時間(時刻taから時刻t3までの残り変動時間Tyと、時刻t3から時刻t7までの変動時間等Tzとを加えた時間)を加えた時間が、最終的な待ち時間Txとなる。
そして、演出制御CPU126は、時刻taで「タイマ登場演出」を実行可能であれば、「タイマ登場演出」を実行し、それと同時に「待ち時間情報表示演出」を行い、合わせて「カウントダウン演出」も開始する。ただし、時刻taで「タイマ登場演出」を実行できなければ、内部で「Tx」の値をカウントダウンしつつ、時刻t3において「タイマ登場演出」、「待ち時間情報表示演出」及び「カウントダウン演出」を実行する。いずれにしても、最終的には、時刻t11で「第2予告演出(群予告演出)」が実行されることとなる。」

(1-k)認定事項
図43

段落【0487】には、「時刻t1から時刻t2までの時間T1は、第2特別図柄の変動時間である。」と記載されており、段落【0488】には、「時刻t3から時刻t4までの時間T3で第2特別図柄が変動表示され、・・・時刻t5から時刻t6までの時間T5で第2特別図柄が変動表示され、」と記載されており、段落【0489】には、「時刻t7から時刻t13までの時間T7で第2特別図柄が変動表示され、」と記載されており、段落【0490】には、「時刻t8から時刻t9までの時間を利用して第1予告演出が実行され」と記載されており、段落【0492】には、「演出制御CPU126は、時刻taで・・・「カウントダウン演出」も開始する。」と記載されており、図43には、「カウントダウン演出」が実行される時刻taから時刻t11までの時間帯は、第2特別図柄の変動表示が実行される時刻t1から時刻t13までの時間帯の範囲内であること、「第1予告演出」が実行され時刻t8から時刻t9までの時間帯は、「カウントダウン演出」が実行される時刻taから時刻t11までの時間帯の範囲内であることが開示されている。
してみると、引用文献1には、「カウントダウン演出」は、第2特別図柄の変動表示の経過とともに実行されること、「カウントダウン演出」の実行中に第1予告演出が実行されることが記載されていると認められる。

上記(1-a)?(1-j)の記載事項、及び上記(1-k)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(段落頭の記号は、本願発明1の分説と対応させて当審で付した。)。
「a 第1特別図柄や第2特別図柄による変動表示が行われるパチンコ機1であって(【0353】)、
b 未だ第1特別図柄又は第2特別図柄の変動が開始されていない入賞の回数を表している作動記憶数であるマーカM1,M2(特殊表示M2aを含む)を表示する記憶数表示演出実行手段と(【0055】、【0357】、【0409】、【0410】)、
c 時刻taから第2予告演出が実行される時刻t11までの待ち時間Txを第2特別図柄の変動表示とともにカウントダウンするカウントダウン演出を実行し、演出パターン先判定処理で、リーチ状態が発生する可能性を遊技者に予告したり、最終的に大当りになる可能性があることを予告したりする予告演出の内容を抽選によって選択し、先判定した演出パターンの中に役物落下演出や群予告演出等の特定の予告演出が含まれている場合、待ち時間Txが終了した時刻t11から第2予告演出を実行する演出制御CPU126と、を備え(【0448】、【0455】、【0456】、【0469】、【0492】、認定事項(1-k))、
d 演出制御CPU126は、
d-1 第2予告演出の発生タイミングを教示する演出である予告発生タイミング教示演出が実行される可能性があることを示唆する表示である特殊表示M2aに対応する作動記憶が消費されることで、第2特別図柄の変動が開始され、第2予告演出を実行し(【0386】、【0419】、【0491】)、
d-2 カウントダウン演出を時刻t11まで実行し、該時刻t11から第2予告演出を実行し(【0492】)、
e 時刻t11から第2予告演出を実行し、カウントダウン演出の実行中に第1予告演出を実行する(【0492】、認定事項(1-k))
g パチンコ機1(【0353】)。」

(2)引用文献2
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献2には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(2-a)「【0024】〔第2実施の形態〕次に、第2実施の形態は、第1実施の形態と同様に本発明を第1種パチンコ機(1ライン機)に適用したものであって、図8?図14を参照しながら説明する。ここで、図8は画面20aの表示態様を示すタイミングチャートである。また、図9?図13は、いずれも画面20aに表示される表示態様を示している。また、図9?図13において、図4?図7に示す要素と同一の要素には同一の符号を付している。なお、パチンコ機10の主な構成や処理手順等は第1実施の形態と同様であるので、第2実施の形態では第1実施の形態と異なる画面20aの表示態様についてのみ説明する。
【0025】第1実施の形態と同様に第1種始動口30にパチンコ球が入賞すると、図8に示すように、特別図柄表示器20の画面20aの3つの図柄表示列110,130,150は、順変動方向(図2中の矢印10方向)にほぼ一斉に変動(例えば、図柄が認識できない程度の高速で)を開始する。そして、その後、まず左図柄表示列110が変動を停止する。図9に示すように、例えば、左図柄表示列110に図柄「8」が表示される。そして、予め読み込まれた乱数に基づいて、リーチ状態を形成しリーチ演出が開始され、その後大当たり図柄配列(本発明の所定の表示態様に対応している)が形成されることを予告する場合は、図柄表示列130,150が変動を停止して図柄が確定するまでに、リーチ演出のカウントダウン、リーチ演出等を行う。
【0026】リーチ演出のカウントダウンは、画面20aにリーチ演出が表示されるタイミングを報知するものであり、具体的には、図10に示すように、例えば画面20aの右下位置にカウントダウン用図柄90(本発明の報知手段に対応している)を表示し、この時点からカウントダウン用図柄90によるカウントダウンが開始される。第2実施の形態では、報知開始時に最初に表示されるカウントダウン用図柄90は「3」であり、この値がリーチ状態を形成しリーチ演出が開始されるまでの所要時間となる。この場合は、時間経過に伴って、「3」→「2」→「1」…の順でカウントダウン用図柄90の値が減少していき、カウントダウン用図柄90が「0」になるまでカウントダウンは継続される。また、このカウントダウン用図柄90のカウントダウンに合わせてカウントダウン演出が行われる。
【0027】このカウントダウン演出では、例えば、画面20aにカウントダウンを演出するキャラクター92(第2実施の形態では車の図柄)が表示される。図14に示すように、キャラクター92は、例えば飛行機、船、車の3種類の図柄があり、この中から選択され表示されるキャラクター92の種類は、カウントダウン開始時のカウントダウン用図柄90の種類に対応している。第2実施の形態では、カウントダウン開始時のカウントダウン用図柄90は「3」であり、したがってこれに対応した車の図柄が、カウントダウン演出用のキャラクター92となる。そして、カウントダウン用図柄90のカウントダウンが終了するまで、このキャラクター92の動画が画面20aに表示される。例えば、図10および図11に示すように、カウントダウン継続中に車の図柄が画面20の右側から左側へ移動する動画が表示される。そして、図11に示すように、カウントダウン用図柄90が「0」になりカウントダウンおよびカウントダウン演出が終了すると、これに合わせて右図柄表示列150が変動を停止して、予め読み込まれた乱数に基づいてリーチ図柄配列(リーチ状態)が形成される。そして、リーチ図柄配列が形成されると、引き続きリーチ演出用図柄94によるリーチ演出が開始される。なお、このリーチ演出用図柄94によるリーチ演出が本発明の予告手段(大当たり図柄配列が形成されることを予告する手段)に対応している。
・・・
【0029】このリーチ演出用図柄94は、図14に示すように、例えば空、海、陸の3種類の背景があり、どの背景がリーチ演出用図柄94として表示されるかは、キャラクター92の種類に対応して決められる。第2実施の形態では、キャラクター92が車の図柄であり、したがってこれに対応した陸の背景がリーチ演出用図柄94となる。なお、リーチ演出中は、画面20aに陸を背景とした車の動画が表示される。また、リーチ状態においては、例えば、図11および図12に示すように、左図柄表示列110および右図柄表示列130に図柄「8」が停止してリーチラインL2が形成される。そして、最後に中図柄表示列130が変動を停止することで図柄が確定する。例えば、図13に示すように、中図柄表示列130に図柄「8」を表示すると、リーチラインL2上に大当たり図柄配列「8,8,8」が形成される。」

(2-b)認定事項
図14

段落【0026】の記載「報知開始時に最初に表示されるカウントダウン用図柄90は「3」であり、この値がリーチ状態を形成しリーチ演出が開始されるまでの所要時間となる。」、段落【0029】の記載「リーチ演出用図柄94は、図14に示すように、例えば空、海、陸の3種類の背景があり」、及び図14の開示内容である、カウントダウン用図柄90の「7」、「5」、「3」とリーチ演出用図柄94の「空の背景」、「海の背景」、「陸の背景」との対応関係を参酌すると、リーチ演出が開始されるまでの所要時間「7」、「5」、「3」に応じて、それぞれ、リーチ演出用図柄94を「空の背景」、「海の背景」、「陸の背景」とするリーチ演出が行われるものと認められる。

上記(2-a)の記載事項、及び上記認定事項(2-b)を総合すれば、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(段落頭の記号は、本願発明1の分説と対応させて当審で付した。)。
「a 3つの図柄表示列110,130,150が変動するパチンコ機10であって(【0024】、【0025】)、
d-2 リーチ演出が開始されるまでの所要時間「7」、「5」、「3」に応じて、それぞれ、リーチ演出用図柄94を「空の背景」、「海の背景」、「陸の背景」とするリーチ演出が行われる(【0026】、【0027】、【0029】、認定事項(2-b))、
g パチンコ機10(【0024】)

(3)引用文献5
当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献5には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(5-a)「【0014】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取り付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取り付けられる機構板(図示せず)と、それらに取り付けられる種々の部品(後述する遊技盤6を除く)とを含む構造体である。
・・・
【0016】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9の表示画面には、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示に同期した演出図柄の可変表示を行う演出図柄表示領域がある。よって、演出表示装置9は、演出図柄の可変表示を行う可変表示装置に相当する。演出図柄表示領域には、例えば「左」、「中」、「右」の3つの装飾用(演出用)の演出図柄を可変表示する図柄表示エリアがある。図柄表示エリアには「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリアがあるが、図柄表示エリアの位置は、演出表示装置9の表示画面において固定的でなくてもよいし、図柄表示エリアの3つ領域が離れてもよい。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。」

(5-b)「【0256】
次に、演出制御手段の動作を説明する。最初に、一斉演出について説明する。この実施の形態では、所定条件が成立したことにもとづいて所定期間にわたって一斉演出が実行される。一斉演出は、所定条件が成立したタイミングで遊技店に設置される複数台の遊技機において一斉に実行される。具体的には、電源投入時または前回一斉演出開始時から60分経過したことにもとづいて所定条件が成立し、所定期間(例えば5分間)にわたって所定の動画再生を一斉に開始するような態様の演出が一斉演出として実行される。つまり、電源投入時から60分経過ごとに一斉演出が実行される。なお、複数台の遊技機で一斉に演出が実行されると表現するが、具体的には、個々の遊技機が同じタイミングで同じ演出をそれぞれ実行しており、複数台の遊技機が並んでいるときの現象として一斉に演出が実行されているように見えることである。例えば、各遊技機がリアルタイムクロック108から時刻情報を取得して計時を行い、計時結果が所定条件を満たしたとき(電源投入時または前回一斉演出開始時から60分経過したとき)に、一斉演出を開始することによって、複数の遊技機で同じタイミングで演出を開始させることができる。
・・・
【0261】
演出制御処理において、演出制御用CPU101は、まず、時間計測タイマを設定済みであるか否かを確認する(ステップS703a)。時間計測タイマを設定済みでない場合には、演出制御用CPU101は、リアルタイムクロック108からフルセットの時刻情報(日・時・分・秒)を読み出す(ステップS703b)。また、ステップS703bでは、読み出した時刻情報を、基準時刻情報として記憶する。次いで、演出制御用CPU101は、一斉演出設定データにもとづいて時間計測タイマをセットする(ステップS703c)。その後、ステップS702に移行する。
【0262】
時間計測タイマは、演出制御用CPU101によって実現され、一斉演出を開始するタイミングを計時するために用いられる。この実施の形態では、ステップS703cにおいて、一斉演出設定データに定められたタイミング(初期値は、電源投入時または前回一斉演出開始時から60分経過したタイミング)で時間計測タイマがタイムアウトするように時間計測タイマに値がセットされる。例えば、リアルタイムクロック108から読み出した時刻情報が6月11日・9時・30分・0秒であった場合には、ステップS703cにおいて、10時30分までの60分間に相当する値が時間計測タイマにセットされる。具体的には、時間計測タイマは、ステップS703cにおいて、60分間に相当する値として180000がセットされ、20ms毎に実行される時間計測処理(詳細については後述する)のステップS750bにおいて、値が1減算される。そして、時間計測タイマの値が0になると、すなわち時間計測タイマがタイムアウトすると、60分(20ms×180000)が経過したことを示しているため、計時結果が所定条件を満たしたとして、一斉演出が開始される。なお、この実施の形態では、電源投入時から一斉演出設定データに示された期間(初期値は60分)が経過するごとに一斉演出が実行されるため、ステップS703bで電源投入時に読み出した時刻情報と、一斉演出設定データに示された期間とにもとづいて、一斉演出を開始する各タイミング(時・分・秒)を記憶するようにしてもよい。例えば、ステップS703bで読み出した時刻情報が、6月11日・9時・30分・0秒である場合には、10時・30分・0秒、11時・30分・0秒、12時・30分・0秒、・・・23時・30分・0秒というように、一斉演出を開始する各タイミング(時・分・秒)を記憶するようにしてもよい。」

(5-c)「【0292】
この実施の形態では、一斉演出設定データは、演出制御用マイクロコンピュータ100のバックアップRAM領域に記憶されており、電源投入指定コマンド(初期化指定コマンド)を受信した場合に初期化され(初期値として電源投入時または前回一斉演出開始時から60分経過したときに一斉演出が開始されるように設定される)、停電復旧指定コマンドを受信した場合には初期化されない。したがって、一斉演出の開始タイミングは、遊技機をコールドスタートした場合に初期化され、ホットスタートした場合にはバックアップされた設定が引き継がれる。」

上記(5-a)?(5-c)の記載事項を総合すれば、引用文献5には、以下の事項(以下、「引用文献5に記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる(段落頭の記号は、本願発明1の分説と対応させて当審で付した。)。
「a 第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示、及び演出図柄の可変表示を行うパチンコ遊技機1であって(【0014】、【0016】)、
f 電源投入時から60分経過したことにもとづいて、一斉演出が実行される演出制御手段を備え(【0256】、【0261】、【0262】)、停電復旧指定コマンドを受信した場合には一斉演出設定データが初期化されない(【0292】)
g パチンコ遊技機1(【0014】)。 」

4 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する(見出し(a)?(g)は、本願発明1の特定事項A?Gに対応する。)。
(a)引用発明1の構成aにおける「第1特別図柄や第2特別図柄による変動表示」、「パチンコ機1」は、それぞれ、本願発明1の構成Aの「変動表示」、「遊技機」に相当する。
してみると、引用発明1の構成aは、本願発明1の構成Aに相当する。

(b)引用発明1の構成bの「未だ第1特別図柄又は第2特別図柄の変動が開始されていない入賞の回数を表している作動記憶数であるマーカM1,M2(特殊表示M2aを含む)」、「記憶数表示演出実行手段」は、それぞれ、本願発明1の構成Bの「未だ開始されていない変動表示について、特定態様を含む複数種類の表示態様のうちのいずれかの表示態様」で「表示」する「保留表示」、「保留表示手段」に相当する。
してみると、引用発明1の構成bは、本願発明1の構成Bに相当する。

(c)引用発明1の構成cにおける「時刻taから第2予告演出が実行される時刻t11までの待ち時間Tx」、「第2特別図柄の変動表示の経過とともにカウントダウンする」こと、「カウントダウン演出」は、それぞれ、本願発明1の構成Cにおける「所定期間の終了タイミングを示唆可能な計時時間」、「変動表示の経過とともに変化させる」こと、「経過演出」に相当する。
また、引用発明1の構成cにおける、「待ち時間Txが終了した時刻t11から」、「リーチ状態が発生する可能性を遊技者に予告したり、最終的に大当りになる可能性があることを予告したりする予告演出の内容を抽選によって選択し、」「第2予告演出を実行する」こと、「演出制御CPU126」は、それぞれ、本願発明1の構成Cの「該所定期間が終了した後に」、「複数種類の演出のうちいずれかの演出を実行することにより、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否かを予告する特定演出を実行する」こと、「特定演出実行手段」に相当する。
してみると、引用発明1の構成cは、本願発明1の構成Cに相当する。

(d)、(d-1)、(d-2)引用発明1における「演出制御CPU126」が、本願発明1の「特定演出実行手段」に相当することは上記(c)にて説示のとおりである。
また、引用発明1の構成d-1において、 「特殊表示M2aに対応する作動記憶が消費されることで、第2特別図柄の変動が開始され、第2予告演出を実行」するということは、特殊表示M2aではないマーカM1,M2に対応する作動記憶が消費される場合、第2特別図柄の変動が開始されるものの、第2予告演出は実行されないことを意味するのであるから、当該構成d-1は、本願発明1の構成D-1の「変動表示を実行するときに、当該変動表示に対応する保留表示が特殊態様となっていたか否かに応じて、異なる割合で特定演出を実行」することに相当する。
さらに、引用発明1の構成d-2における「時刻t11から第2予告演出を実行」することは、本願発明1の構成D-2の「経過演出の終了後に、複数種類の演出の中」の「演出を実行」することに相当する。
してみると、引用発明1の構成d、d-1、d-2は、本願発明1の構成D、D-1、D-2と、「特定演出実行手段は、変動表示を実行するときに、当該変動表示に対応する保留表示が特定態様となっていたか否かに応じて、異なる割合で特定演出を実行し、前記特定演出において、経過演出の終了後に、複数種類の演出の中の演出を実行」する点で共通する。

(e)引用発明1の構成eにおける「時刻t11から」「実行」される「第2予告演出」、「カウントダウン演出の実行中」に「実行」される「第1予告演出」は、それぞれ、本願発明1の構成Eの「経過演出の終了後に実行される演出」、「経過演出中に実行可能な所定演出」に相当する。
してみると、引用発明1の構成eは、本願発明1の構成Eと、「特定演出において、」「経過演出の終了後に実行される演出」と「経過演出中に実行可能な所定演出」を備える点で共通する。

(g)引用発明1における「遊技機」が、本願発明1の「遊技機」に相当することは上記(a)にて説示のとおりである。
してみると、引用発明1の構成gは、本願発明1の構成Gに相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「A 変動表示を行なう遊技機であって、
B 未だ開始されていない変動表示について、特定態様を含む複数種類の表示態様のうちのいずれかの表示態様で保留表示として表示する保留表示手段と、
C 所定期間の終了タイミングを示唆可能な計時時間を変動表示の経過とともに変化させる経過演出を該所定期間に亘って実行し、該所定期間が終了した後に複数種類の演出のうちいずれかの演出を実行することにより、遊技者にとって有利な有利状態に制御されるか否かを予告する特定演出を実行する特定演出実行手段と、を備え、
D 前記特定演出実行手段は、
D-1 変動表示を実行するときに、当該変動表示に対応する前記保留表示が前記特定態様となっていたか否かに応じて、異なる割合で前記特定演出を実行し、
D-2’ 前記特定演出において、前記経過演出の終了後に、前記複数種類の演出の中の演出を実行し、
E’ 前記特定演出において、前記経過演出の終了後に実行される演出と前記経過演出中に実行可能な所定演出を備える、
G 遊技機。」

(相違点1)(構成D-2)
構成D-2の「特定演出において、経過演出の終了後に、複数種類の演出の中から演出を実行」するにあたり、本願発明1は、「経過演出の計時時間に応じた」演出を実行するのに対し、引用発明1は、そのような特定を備えていない点。

(相違点2)(構成E)
構成Eの「経過演出の終了後に実行される演出」と「経過演出中に実行可能な所定演出」について、本願発明1は、前者は後者「と比べて有利状態に制御される期待度が同じ又は高くなる」のに対し、引用発明1は、前者と後者を備えるものの、前者と後者における期待度の大小関係が不明な点。

(相違点3)(構成C-1)
本願発明1は、「経過演出は複数種類あり、同一の計時時間を変化させる経過演出は、第1所定期間に亘って実行する第1経過演出と該第1所定期間とは異なる第2所定期間に亘って実行する第2経過演出とを含」むという構成C-1を備えるのに対し、引用発明1は、当該構成を備えていない点。

(相違点4)(構成F)
本願発明1は、「基準時点からの経過時間に基づいて特別演出を実行する特別演出実行手段をさらに備え、前記特別演出実行手段は、特定の電力供給が開始されたときを前記基準時点とし、前記特定の電力供給以外の電力供給が開始されたときを基準時点としない」という構成Fを備えるのに対し、引用発明1は、当該構成を備えていない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用文献2に記載の技術事項は、上記「第3 3(2)」に示したとおりのものである。
上記引用文献2に記載の技術事項の「リーチ演出が開始されるまでの所要時間「7」、「5」、「3」」、「リーチ演出用図柄94を「空の背景」、「海の背景」、「陸の背景」とするリーチ演出」は、それぞれ、本願発明1の構成D-2の「経過演出の計時時間」、「経過演出の計時時間に応じた演出」に対応する。
そして、引用発明1と引用文献2に記載の技術事項とは、複数種類の予告演出を実行する遊技機である点で共通し、カウントダウン演出により遊技者に演出のタイミングを伝達して注目すべきポイントを意識させるという作用・機能を有する点で共通するから、引用発明1において、引用文献2に記載の技術事項を適用して、経過演出の終了後に、複数種類の演出の中から当該経過演出の計時時間に応じた演出を実行するように構成し、相違点1に係る本願発明1の構成に想到することは、当業者にとって容易である。

(相違点2について)
遊技機の技術分野において、有利状態に制御される可能性を示唆する複数の予告演出を実行するにあたり、後の演出は前の演出と比べて有利状態に制御される期待度が同じ又は高くすることは、周知の技術である。(例えば、当審拒絶理由で周知の技術として例示した上記引用文献3の、予告演出パターンYP2が前に決定された場合には、それよりも大当り期待度の低い予告演出パターンYP1が決定されることはなく、予告演出パターンYP3が前に決定された場合には、それよりも大当り期待度の低い予告演出パターンYP1,YP2が決定されることはないように規定することで、後の予告演出パターンは、前の予告演出パターンと比べて大当り期待度が同じ又は高くなる技術(【0108】)、同じく当審拒絶理由で周知の技術として例示した上記引用文献4の、2回目以降に行う予告演出のランクは、1回前(直前)に表示させた予告演出のランクに応じて、そのランクよりも期待度の低いランクが選ばれないように設定することで、後の予告演出は、前の予告演出と比べて大当り期待度が同じ又は高くなる技術(【0733】)を参照のこと。)
そして、引用発明1と上記周知の技術とは、複数の予告演出を実行することにより大当りの期待感を高め、遊技に対する興趣の向上を図る遊技機である点で共通するものである。
してみると、上記周知の技術を勘案すれば、引用発明1において、経過演出の終了後に実行される演出を、経過演出中に実行可能な所定演出と比べて有利状態に制御される期待度が同じ又は高くして、上記相違点2に係る本願発明1の構成に想到することは、当業者にとって容易である。

(相違点3について)
カウントダウン演出を行う遊技機において、経過演出は複数種類あり、同一の計時時間を変化させる経過演出は、第1所定期間に亘って実行する第1経過演出と該第1所定期間とは異なる第2所定期間に亘って実行する第2経過演出とを含むことは、周知の技術である。(例えば、特開2016-16280号(【0130】、【0134】、図28、29)の、予告対象演出が開始されるタイミングを示唆するタイマ予告演出において、タイマ画像tの領域rに表示されている残り時間の増加演出が実行されない「通常予告」と、残り時間の増加演出が実行される「特殊予告」と、が設定される技術(該技術における「残り時間の増加演出が実行されない」状態で経過した「残り時間」、「通常予告」、「残り時間の増加演出が実行され」た状態で経過した「残り時間」、「特殊予告」は、それぞれ、本願発明1の「第1所定期間」、「第1経過演出」、「第2所定期間」、「第2経過演出」に相当。)、特開2013-22100号(【0220】-【0223】)の、ミッション演出において、タイマ表示部40bに表示される残り時間のカウントダウンをそのままのペースで継続する技術と、カウントダウンのペースを落として演出終了を示すタイミングを遅延させる技術(該技術における「カウントダウンをそのままのペースで継続」した状態で経過した「残り時間」、該「残り時間」を「表示」すること、「カウントダウンのペースを落とし」た状態で経過した「残り時間」、該「残り時間」を「表示」することは、それぞれ、本願発明1の「第1所定期間」、「第1経過演出」、「第2所定期間」、「第2経過演出」に相当。)を参照のこと。)
そして、引用発明1と上記周知の技術とは、所定期間の終了タイミングを表示する経過演出を行い演出効果を高めることで、遊技興趣の向上を図る遊技機である点で共通するものである。
してみると、上記周知の技術を勘案すれば、引用発明1において、経過演出を複数種類として、同一の計時時間を変化させる経過演出を第1所定期間に亘って実行する第1経過演出と該第1所定期間とは異なる第2所定期間に亘って実行する第2経過演出とを含む構成として、上記相違点3に係る本願発明1の構成に想到することは、当業者にとって容易である。

(相違点4について)
引用文献5に記載の技術事項は、上記「第3 3(3)」に示したとおりのものである。
ここで、引用文献5に記載の技術事項の「電源投入時」、「60分経過したことにもとづいて」、「一斉演出」、「演出制御手段」、「停電復旧指定コマンドを受信した場合には一斉演出設定データが初期化されない」ことは、それぞれ、本願発明1の構成Fの「特定の電力供給が開始されたとき」である「基準時点」、「基準時点からの経過時間に基づいて」、「特別演出」、「特別演出実行手段」、「特定の電力供給以外の電力供給が開始されたときを基準時点としない」ことに相当する。
そして、遊技機の技術分野において、遊技興趣を高めることは自明の課題であって、そのために各種演出を組み合わせることは技術常識であるから、引用発明1において、引用文献5に記載の技術事項である、基準時点からの経過時間に基づいて特別演出を実行する特別演出実行手段を備え、前記特別演出実行手段は、特定の電力供給が開始されたときを前記基準時点とし、前記特定の電力供給以外の電力供給が開始されたときを基準時点としないという事項を適用して、相違点4に係る本願発明1の構成に想到することは、当業者にとって容易である。

また、本願発明1が奏する作用効果について検討してみても、本願発明1が奏する作用効果は、当業者が、引用発明1、引用文献2、5に記載の技術事項、上記周知の技術から予測し得るものであって、格別のものということはできない。

したがって、本願発明1は、引用発明1、引用文献2、5に記載の技術事項、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 請求人の主張について
審判請求人は、意見書において、以下のとおり主張している。
「引用文献1-6は、上記した本願発明の特徴のうち少なくとも特徴E(「経過演出は複数種類あり、同一の計時時間を変化させる経過演出は、第1所定期間に亘って実行する第1経過演出と該第1所定期間とは異なる第2所定期間(例えば、計時の途中で計時動作が所定期間停止した後に再開することで第1所定期間よりも長い期間)に亘って実行する第2経過演出とを含む」という特徴)について開示及び示唆するものではありません。
具体的には、引用文献1、2は、カウントダウン予告について開示すると思われますが、カウントダウンが途中で止まる等について開示するものではないため、カウント値が同じであるにもかかわらずカウントダウンに要する時間(所定期間)が異なるという着想を開示するものではありません。
また、引用文献3、4(周知技術)は、演出の期待度にいわゆる成り下がりがないことについて開示するに過ぎず、引用文献5、6は、本願発明の他の特徴の引例として挙げられたものであり、経過演出や経過演出の終了後の演出について開示するものではありません。
したがって、引用文献1-6を組み合わせても上記特徴Eが想到されるものではありません。」
しかしながら、意見書で主張する上記特徴Eの着想は、「第3 5(相違点3について)」で判断したとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。

7 むすび
本願発明1は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献例2、5に記載の技術事項、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-10 
結審通知日 2019-10-15 
審決日 2019-10-29 
出願番号 特願2016-36703(P2016-36703)
審決分類 P 1 8・ 121- WZA (A63F)
P 1 8・ 572- WZA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄藤脇 沙絵  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 大谷 純
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  

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