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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1358203 |
審判番号 | 不服2018-16529 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-11 |
確定日 | 2020-01-14 |
事件の表示 | 特願2017-178733「情報処理装置、制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開,特開2017-216020,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年10月24日に出願した特願2012-234579号の一部を平成29年9月19日に新たな特許出願としたものであって,平成29年9月19日付けで審査請求がなされ,平成30年6月7日付けで拒絶理由通知(同年6月19日発送)がなされ,同年8月10日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,平成30年8月30日付けで拒絶査定(同年9月11日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成30年12月11日付けで本件審判請求がなされた。 そして,令和元年8月9日付けで当審により拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)(同年8月20日発送)がなされ,同年10月16日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年8月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし4,6ないし9に係る発明は,以下の引用文献A,Bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.池田 利夫,パソコン超活用入門 無線でガッテン!LANの基礎 ファイル共有,アスキー.PC,株式会社アスキー,2004年 2月 1日,第7巻,pp.86-88 B.特開2011-70514号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1)本件出願の請求項1ないし9に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2003-333559号公報(当審で新たに引用した文献) 2)本件出願の請求項7に係る発明は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願発明 ア 本願請求項1ないし本願請求項8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は,令和元年10月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「ファイルに関連づけたアイコンを表示部に表示し、該アイコンが選択されることにより関連づけられたファイルを起動する情報処理装置において、 端末装置と通信接続を行う通信部と、 ファイルのリンク先を示す起動情報に関連づけてアイコンを管理する管理部と、 制御部と、を備え、 前記制御部は、 前記通信部を介して前記端末装置から前記端末装置において指定された起動情報を受信し、 受信した起動情報に関連づけられたアイコンを前記表示部に表示し、 前記端末装置から接続の切断指示を受信した場合、当該端末装置との通信を切断し、併せて、前記起動情報を削除し、当該起動情報に関連づけられたアイコンの表示を削除する ことを特徴とする情報処理装置。」 イ なお,本願発明2ないし本願発明8の概要は以下のとおりである。 (ア)本願発明2ないし6は,本願発明1を直接・間接に引用して減縮した発明である。 (イ)本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 (ウ)本願発明8は,本願発明1に対応するプログラムの発明であり,本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。 第5 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 ア 本願の原出願の出願日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,当審拒絶理由通知において引用された刊行物である,特開2003-333559号公報(平成15年11月21日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0028】(第1実施形態)本発明は、図1に示す従来の会議システムに適用することができる。同図に示す会議システムにおいて、会議室には、ネットワークに接続された複数の端末を用いて会議室内で行われる会議を管理する専用のホストPC107が設置されている。ホストPC107には、ネットワークに接続されたノートPCを用いて行われる会議を管理するためのホストコンピュータである。このホストPC107は、端末間で情報を多重化して送信するためのマルチメディア会議用のプログラムや、会議に使用されるプレゼンテーション用のアプリケーションプログラムが実装されている。また、このホストPC107は、当該PC上でマルチメディア会議用のプログラムを実行する際に参照される情報として、会議に使用することを許可したノートPC101に関する情報(例えば、IP・コンピュータ名等)を内部の記憶装置に記憶している。」 B 「【0047】図5は、本実施形態に係る会議システムにおけるホストPC107の制御を示すフローチャートである。ホストPC107の資源がノートPC101によって占有される(S1301)。ホストPC107は、ホストPC107を占有しているノートPC101のIP、コンピュータ名、ノートPC101においてファイルまたはフォルダが指定された場合はそのファイルまたはフォルダの絶対アドレス等を記憶する。このようにノートPC101に関する情報を記憶することにより、ホストPC107は、記憶された情報を参照し、ネットワーク106を介して容易に占有に係るノートPC101のプレゼンテーションファイル等にアクセス可能となる。 【0048】占有に係るノートPC101からプレゼンテーションファイルの指定があった場合(即ち、ノートPC101において、プレゼンテーションファイルがプレゼンテーション開始のアイコンへドラッグされた場合)(S1302)は、プレゼンテーションファイルに関連付けられたアイコンをホストPC107のデスクトップ上に表示する。ここで、「関連付けられた」とは、そのアイコンをクリックすることにより、所定のファイルを実行し、あるいは所定のフォルダの内容を示すウインドウを表示するように設定されていることをいう。このような処理は、具体的にはステップS1301において記憶されたファイルまたはフォルダの絶対アドレスとアイコンとを関連付けることにより行われる。 ・・・(中略)・・・ 【0050】ノートPC101からのファイル指定、フォルダ指定が無い場合は、ノートPC101に関連付けられたアイコンをデスクトップ上に表示する(S1308)。そして、プレゼンテーションが終了し、ノートPC101による資源の占有が解除された場合(S1304)は、ホストPC107のデスクトップ上のアイコンを自動的に削除する(S1305)。」 イ 上記A及びBの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ネットワークに接続された複数のノートPCを用いて会議を管理するホストPCにおいて, ノートPCからプレゼンテーションファイルの指定があった場合,プレゼンテーションファイルに関連付けられたアイコンをホストPCのデスクトップ上に表示し,当該アイコンをクリックすることにより,所定のファイルを実行し,プレゼンテーションが終了し,ノートPCによる資源の占有が解除された場合は,ホストPCのデスクトップ上のアイコンを自動的に削除する, ことを特徴とするホストPC。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「ノートPC」,「ホストPC」,及び「プレゼンテーションファイル」は,それぞれ,本願発明1の「端末装置」,「情報処理装置」,及び「ファイル」に相当する。そして,引用発明の「当該アイコンをクリックすることにより,所定のファイルを実行」することとは,当該アイコンを選択して実行することにより,所定のファイルを起動することに他ならない。 してみると,引用発明の「プレゼンテーションファイルに関連付けられたアイコンをホストPCのデスクトップ上に表示し,当該アイコンをクリックすることにより,所定のファイルを実行」する「ホストPC」と,本願発明1の「ファイルに関連づけたアイコンを表示部に表示し、該アイコンが選択されることにより関連づけられたファイルを起動する情報処理装置」とは,“ファイルに関連づけたアイコンを表示部に表示し,該アイコンが選択されることにより関連づけられたファイルを起動する情報処理装置”である点で一致する。 (イ)引用発明の「ホストPC」は,複数のノートPCとネットワークで接続されているものであることから,実質的にノートPCと通信接続を行う“通信部”に相当するものを備えているものと認められる。 してみると,引用発明と本願発明1とは,“端末装置と通信接続を行う通信部”を備える点で一致する。 (ウ)引用発明の「ホストPC」は,アイコンの表示や削除を行うものであることから,デスクトップ上に表示されるアイコンを管理するための“管理手段”を備えているものと認められる。 してみると,引用発明と本願発明1とは,“アイコンを管理する管理部”を備える点で一致する。 (エ)引用発明の「ホストPC」が,当該ホストPC上でファイル等を実行するための“制御部”を備えていることは,当業者に自明な事項である。 してみると,引用発明と本願発明1とは,“制御部”を備える点で一致する。 (オ)引用発明の「ノートPCからプレゼンテーションファイルの指定があった場合,プレゼンテーションファイルに関連付けられたアイコンをホストPCのデスクトップ上に表示」するとの記載からすると,引用発明は,ノートPCからアイコンをデスクトップ上に表示するための情報を受信した場合,受信した当該情報に関連付けられたアイコンをホストPCのデスクトップ上に表示するものであるといえる。また,本願発明1は,「前記通信部を介して前記端末装置から前記端末装置において指定された起動情報を受信」するものであるところ,「受信した起動情報に関連づけられたアイコンを前記表示部に表示」することから,“前記通信部を介して前記端末装置からアイコンを表示部に表示するための情報を受信”し,“受信した当該情報に関連付けられたアイコンを前記表示部に表示”するものであるといえる。 してみると,引用発明の「ノートPCからプレゼンテーションファイルの指定があった場合,プレゼンテーションファイルに関連付けられたアイコンをホストPCのデスクトップ上に表示」することと,本願発明1の「前記通信部を介して前記端末装置から前記端末装置において指定された起動情報を受信し,受信した起動情報に関連づけられたアイコンを前記表示部に表示」することとは,“前記通信部を介して前記端末装置からアイコンを表示部に表示するための情報を受信し,受信した当該情報に関連付けられたアイコンを前記表示部に表示”する点で共通するといえる。 (カ)引用発明の「プレゼンテーションが終了し,ノートPCによる資源の占有が解除された場合」とは,ノートPCが当該資源への接続ができなくなることであることから,“通信が切断された場合”といえるものである。 してみると,引用発明の「プレゼンテーションが終了し,ノートPCによる資源の占有が解除された場合は,ホストPCのデスクトップ上のアイコンを自動的に削除する」ことと,本願発明1の「前記端末装置から接続の切断指示を受信した場合、当該端末装置との通信を切断し、併せて、前記起動情報を削除し、当該起動情報に関連づけられたアイコンの表示を削除する」こととは,後記する点で相違するものの,“前記端末装置との通信が切断された場合,併せて,アイコンの表示を削除する”点で共通するといえる。 イ 以上(ア)ないし(カ)から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) ファイルに関連づけたアイコンを表示部に表示し,該アイコンが選択されることにより関連づけられたファイルを起動する情報処理装置において, 端末装置と通信接続を行う通信部と, アイコンを管理する管理部と, 制御部と,を備え, 前記制御部は, 前記通信部を介して前記端末装置からアイコンを表示部に表示するための情報を受信し, 受信した当該情報に関連付けられたアイコンを前記表示部に表示し, 前記端末装置との通信が切断された場合,併せて,アイコンの表示を削除する ことを特徴とする情報処理装置。 (相違点1) 本願発明1の「情報処理装置」が,「ファイルのリンク先を示す起動情報に関連づけてアイコンを管理する」ものであり,当該「起動情報」を端末装置から「受信」するものであるのに対し,引用発明の「ホストPC」は,当該起動情報に相当するものをノートPCから受信しておらず,当該情報に関連付けてアイコンを管理するものではない点。 (相違点2) アイコンを表示部に表示するための情報に関し,本願発明1ではファイルのリンク先を示す「起動情報」であるのに対し,引用発明は「プレゼンテーションファイルの指定」についての情報である点。 (相違点3) 切断時の処理に関し,本願発明1では,「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて前記起動情報を削除」するものであるのに対し,引用発明では,ノートPCから切断指示を受信することについて明記されておらず,併せてアイコンを表示部に表示するための情報を削除するものではない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,先に相違点1及び相違点3について検討する。 上記相違点1に係る本願発明1の「ファイルのリンク先を示す起動情報」「を受信」する構成,「起動情報に関連づけてアイコンを管理する」構成,上記相違点3に係る本願発明1の「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて,前記起動情報を削除」する構成は,いずれも上記引用文献1には記載されておらず,本願の原出願の出願日前において周知技術であるともいえない。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし本願発明6について 本願発明2ないし本願発明6も,本願発明1の「ファイルのリンク先を示す起動情報」「を受信」する構成,「起動情報に関連づけてアイコンを管理する」構成,「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて,前記起動情報を削除」する構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明7について 本願発明7は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「ファイルのリンク先を示す起動情報」「を受信」する構成,「起動情報に関連づけてアイコンを管理する」構成,「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて,前記起動情報を削除」する構成に対応するステップを備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明8について 本願発明8は,本願発明1に対応するプログラムの発明であり,本願発明1の「ファイルのリンク先を示す起動情報」「を受信」する構成,「起動情報に関連づけてアイコンを管理する」構成,「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて,前記起動情報を削除」する構成に対応する構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 当審拒絶理由について 1 特許法第29条第2項について 上記「第6 対比・判断」で検討したとおり,本願発明1ないし本願発明8は,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえないから,この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第36条第6項第2号について 当審では,請求項7の「端末装置において指定された起動情報」における「指定された起動情報」が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年10月16日付けの補正において,当該請求項は削除された結果,この拒絶の理由は解消した。 第8 原査定についての判断 令和元年10月16日付けの補正により,補正後の請求項1は,とりわけ,「端末装置から切断指示を受信した場合,」「併せて,前記起動情報を削除」する構成となった。 当該「端末装置から切断指示を受信」した際に,併せて「起動情報を削除」する構成は,原査定における引用文献A,Bには記載されておらず,本願の原出願の出願前における周知技術でもないので,本願発明1ないし本願発明8は,当業者であっても,引用文献A,Bに記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定を維持することはできない。 第9 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-12-23 |
出願番号 | 特願2017-178733(P2017-178733) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塚田 肇 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 松平 英 |
発明の名称 | 情報処理装置、制御方法及びプログラム |
代理人 | 神田 正義 |
代理人 | 馬場 信幸 |
代理人 | 藤本 英介 |
代理人 | 宮尾 明茂 |