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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1358225
審判番号 不服2018-14333  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-30 
確定日 2019-12-19 
事件の表示 特願2014-158210「回路基板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 35969〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月1日の出願であって、平成29年12月28日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年1月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月30日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成30年10月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
導体層と該導体層を覆う絶縁層とを備え、該絶縁層から前記導体層の一部分を露出させるビアホールを備える回路基板であって、
前記導体層の表面の算術平均粗さが、350nm以下であり、
前記ビアホールの深さが、25μm未満であり、
前記ビアホールのトップ径(Z)が、50μm以下であり、
前記ビアホールのトップ径(Z)と前記ビアホールの最小径(Y)と前記ビアホールの底部径(X)との関係が、Y/Z=0.7?0.99及びY/X=0.7?1(Z>Y)を満たしている、回路基板。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の下記の請求項に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用文献1.特開2009-188146号公報
引用文献2.特開2006-28225号公報
引用文献3.特開2012-67156号公報
引用文献4.特開2013-77590号公報

・請求項1ないし3について引用文献1及び2
・請求項4ないし15について引用文献1ないし3
・請求項16ないし19について引用文献1ないし4

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

ア.「【0010】
ビアランドには、後述するレーザーを乱反射させるための乱反射加工が施されている。このような乱反射加工としては、例えばビアランドを樹脂層に向かって凸形状としてもよい。その場合には、レーザーがビアホールの底部周辺に向かって反射しやすくなり、拡径しやすくなる。さらに、ビアランドを球面状とすれば、さらに乱反射の方向が分散され、拡径部の偏りを無くすことができるとともに、乱反射によって切削されたビアホール底部の口径が緩やかに変化するため、導電ペーストの充填性が向上する。乱反射加工として、ビアランドを凸形状とする場合だけでなく、ビアランドの表面に微小な凹凸を形成してもよい。例えばビアランドを導電性ペーストを焼成した焼結金属で構成した場合には、焼結に伴って導電ペースト内の樹脂成分が消失するため、ビアランドの表面に凹凸が形成される。このような凹凸は、レーザー光の波長より十分に大きいので、乱反射させることが可能である。」

イ.「【0018】
図1は本発明にかかる配線基板の第1実施例の構造を示す断面図である。本実施例の配線基板Aは、基材であるコア基板1と、回路部品7を内蔵した樹脂層10との2層構造となっている。
【0019】
コア基板1の表面には配線パターンを構成する複数のランド2a,2bと配線2cとが形成され、実装用ランド2aの上に回路部品7が実装されている。この例では、回路部品7は実装用ランド2aにはんだ付けされた表面実装部品であるが、ランド2aにバンプを介してフェースダウン実装された集積回路素子のような多端子電子部品であってもよい。ランド2bはビアランドであり、後述するビアホール内に充填される導電材料12と接続されている。ビアランド2bの表面には、レーザーを乱反射させるための乱反射面2b1が形成されている。乱反射面2b1は、例えば微小な凹凸面で構成されている。コア基板1の裏面にも配線パターン3a,3bが形成されている。コア基板1の内層には電極4が設けられており、内層電極4と表裏の配線パターンとを接続するビア5が形成されている。表裏面の配線パターン2a?2c、3a,3bはめっき法により形成された電極であってもよいし、銅箔をパターン形成したものでもよい。すなわち、コア基板1としてプリント配線板(ガラス布に熱硬化性樹脂を含浸させ、両面に銅箔を接合したもの)を使用してもよい。
【0020】
コア基板1として例えばLTCC(低温焼結セラミック)よりなるセラミック多層基板1を用いた場合には、その表裏面の配線パターン2a?2c、3a,3b及び内層電極4、ビア5として導電性ペーストを用い、これをセラミック多層基板1と一体焼成してなる焼結金属(厚膜電極)で構成することができる。このような焼結金属の場合、導電ペースト中の樹脂成分が消失することにより、ビアホール2bの表面には微小な凹凸2b1が形成される。そのため、格別な加工を施さなくてもレーザーを乱反射させることが可能になる。なお、ビアランド2bがめっき膜や銅箔で構成されている場合でも、その表面を粗面加工することにより、レーザーを乱反射させることができる。
・・・(中略)・・・
【0023】
樹脂層10のビアランド2bと対応する位置には、表裏方向に貫通するビアホール11が形成されている。ビアホール11はレーザー加工により形成され、その入射側の口径が底部側(ビアランド側)の口径より大きなテーパ形状となるが、レーザーがビアランド2bの乱反射面2b1で乱反射することにより、ビアホール11の底部内壁が切削されるため、ビアホール11の底部には口径が拡大した拡径部11aが形成されている。この拡径部11aを含むビアホール11内には導電材料12が充填されている。そのため、導電材料12とビアランド2bとは電気的に接続されており、その接続面積がビアホール11のレーザー加工時における底部面積より大きい。導電材料12としては、導電性ペーストをビアホール11内に充填、硬化させたものを使用することができる。上述のようにビアホール11をレーザー加工した場合、その底部口径は入射側の口径より小さくなり、例えばアスペクト比が5のビアホールの場合、その底部口径は入射側の口径の約60%になる。そのため、拡径部11aの口径は、接続信頼性を確保するため入射側の口径に対して80?120%の大きさであることが好ましい。小型化および接続信頼性の観点から、90?100%の範囲であることがさらに好ましい。」

ウ.「【0031】
次の表は、ビア径とアスペクト比が異なるサンプルを作成し、ビアとビアランドとの接続信頼性(OPEN/SHORT)を検証したもので、◎は不良発生なし、△はPPM不良発生、×は接続不良多発を示す。表1はビアホール11の底部に拡径部11aを設けた場合(本発明)、表2はビアホール11の底部に拡径部11を設けない場合(従来)である。なお、表1において拡径部11aの口径はビアホール11の口径(レーザー入射側のビア口径)に対して80?120%の大きさとした。
【0032】
【表1】



・段落【0018】によれば、引用文献1には、基材であるコア基板1と樹脂層10との2層構造となっている配線基板Aが記載されている。

・段落【0019】によれば、コア基板1の表面にはビアランド2bを含む配線パターンが形成されている。

・段落【0023】によれば、樹脂層10のビアランド2bと対応する位置には、レーザー加工により、表裏方向に貫通するビアホール11が形成されている。

・段落【0019】によれば、ビアランド2bの表面には、レーザーを乱反射させるための微小な凹凸面が形成されている。また、段落【0010】によれば、このような凹凸は、レーザー光の波長より十分に大きいので乱反射させることが可能である。
したがって、引用文献1には、ビアランド2bの表面に、レーザー光の波長より十分に大きい微小な凹凸面が形成されることが記載されている。

・段落【0019】によれば、ビアランド2bは、ビアホール内に充填される導電材料12と接続されている。

・段落【0032】の表1には、ビア径50μmでアスペクト比が0.5であるサンプルが示されている。ここで、「ビア径」は、ビアホールの口径を意味することが明らかである。そして、表1の説明として段落【0031】には「ビアホール11の口径(レーザー入射側のビア口径)」とあることから、「ビア径」とは、「レーザー入射側のビア口径」である。
したがって、上記表1には、レーザー入射側のビア口径が50μmであり、アスペクト比が0.5、すなわち、深さが25μmのビアホールが示されている。

・段落【0023】によれば、ビアホール11は、レーザー入射側の口径が底部側(ビアランド側)の口径より大きなテーパ形状となるが、ビアホール11の底部には口径が拡大した拡径部11aが形成される。ここで、「テーパー」とは、「円錐状に直径が次第に減少している状態。また、その勾配。尖錐。」([株式会社岩波書店 広辞苑第六版])であるから、ビアホール11は円錐状に直径が次第に減少するものである。また、このようにビアホールの口径が次第に小さくなる様子は、引用文献1の図1や図8にも示されている。そして、このとき、ビアホール11のテーパーを有する部分は、直径に沿った断面が台形になる。
また、同段落【0023】によれば、ビアホール11をレーザー加工した場合、その底部口径は入射側の口径より小さくなり、例えばアスペクト比が5のビアホールの場合、その底部口径は入射側の口径の約60%になるため、拡径部11aの口径は、小型化および接続信頼性の観点から、入射側の口径に対して90?100%の範囲とされる。
したがって、引用文献1には、ビアホール11は、レーザー入射側から底部側(ビアランド側)に向けて円錐状に直径が次第に減少して、直径に沿った断面が台形になり、ビアホールのアスペクト比が5であれば底部口径が入射側のビア口径の約60%になるテーパ形状となるが、ビアホール11の底部には口径が拡大して入射側のビア口径に対して90?100%の口径をもつ拡径部11aが形成されることが記載されている。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基材であるコア基板1と樹脂層10との2層構造となっている配線基板Aであって、
前記コア基板1の表面にはビアランド2bを含む配線パターンが形成され、
前記樹脂層10の前記ビアランド2bと対応する位置には、レーザー加工により、表裏方向に貫通するビアホール11が形成され、
前記ビアランド2bの表面には前記レーザーの波長より十分に大きい微小な凹凸面が形成され、
前記ビアランド2bは、ビアホール内に充填される導電材料12と接続され、
前記ビアホール11の深さが25μmであり、
前記ビアホール11のレーザー入射側のビア口径が50μmであり、
前記ビアホール11は、レーザー入射側から底部側(ビアランド側)に向けて円錐状に直径が次第に減少して、直径に沿った断面が台形になり、ビアホールのアスペクト比が5であれば底部口径が入射側のビア口径の約60%になるテーパ形状となるが、ビアホール11の底部には口径が拡大して入射側のビア口径に対して90?100%の口径をもつ拡径部11aが形成される、配線基板A」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

「【0049】
表面に導体層を有する基板上に、本発明の電気絶縁膜からなる電気絶縁層を形成することにより、本発明の積層体を得ることができる。
表面に導体層を有する基板は、電気絶縁性基板の表面に導体層を有するものである。
電気絶縁性基板は、公知の電気絶縁材料(例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニルエーテル、ガラス等)を含有する硬化性樹脂組成物を硬化して形成されたものである。
導体層は、特に限定されないが、通常、導電性金属等の導電体により形成された配線を含む層であって、更に各種の回路を含んでいてもよい。配線や回路の構成、厚み等は、特に限定されない。
表面に導体層を有する基板の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェーハ基板等を挙げることができる。
表面に導体層を有する基板の厚みは、通常、10μm?10mm、好ましくは20μm?5mm、より好ましくは30μm?2mmである。
【0050】
本発明に用いる表面に導体層を有する基板は、その導体層の表面粗さRaが0.1?400nm、好ましくは0.2?300nm、より好ましくは0.4?250nmに調整されていることが好ましい。Raをこの範囲内とすることにより、高周波特性が良好なものとなる。ここで、Raは、表面粗さを示す値であり、JIS B0601-1994で定義される値である。
本発明に用いる表面に導体層を有する基板の導体層の表面粗さRaを所定の値にするには、その表面を硫酸や塩酸等の酸を主成分とする酸性水溶液と接触させる等の方法によればよい。」

段落【0049】及び【0050】によれば、引用文献2には、「表面に導体層を有するプリント配線基板において、導体層の表面粗さRaが0.1?400nm、好ましくは0.2?300nmに調整されることにより、高周波特性が良好なものとなるようにする」技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「配線パターン」が「導体」であることは自明であるから、当該「配線パターン」は、本願発明の「導体層」に相当する。

2.引用発明の「樹脂層10」は、導電材料12が充填されるビアホール11が形成されることからして、絶縁性の材料であることは明らかである。
また、引用発明の「樹脂層10」は、表面に配線パターンが形成されたコア基板1と2層構造をなしているところ、配線パターンを構成するビアランド2bに接続される導電材料12が充填されるビアホール11が形成されているのだから、「樹脂層10」はビアホール11以外で配線パターン(「導体層」)を覆っているのは自明である。
したがって、引用発明の「樹脂層10」は、本願発明の「該導体層を覆う絶縁層」に相当する。

3.引用発明の「ビアホール11」は、配線パターン(「導体層」)の一部であるビアランド2bを露出させるものであるから、本願発明の「該絶縁層から前記導体層の一部分を露出させるビアホール」に相当する。

4.引用発明の「配線基板A」は、配線パターンが形成されているから回路基板といえる。そして、引用発明の「配線基板A」は、コア基板1と樹脂層10(「該導体層を覆う絶縁層」)との2層構造となっていて、コア基板1には配線パターン(「導体層」)が形成され、樹脂層10には、ビアホール11(「該絶縁層から前記導体層の一部分を露出させるビアホール」)が形成されているから、本願発明の「導体層と該導体層を覆う絶縁層とを備え、該絶縁層から前記導体層の一部分を露出させるビアホールを備える回路基板」に相当する。

5.引用発明の「レーザー入射側のビア口径」は、本願発明の「ビアホールのトップ径(Z)」に相当する。そして、引用発明では「レーザー入射側のビア口径」は50μmであるから、引用発明は、本願発明の「ビアホールのトップ径(Z)が、50μm以下」である点に含まれる。

6.引用発明の「ビアホール11」において、テーパ形状を有する部分の最下部であって拡径部11aに接続される部分(以下、「接続部」という。)でビアホール11の径が最小になる(以下、「接続部径」という。接続部径は本願発明の「Y」に対応する。)。
また、引用発明の「ビアホール11」において、最も下の部分(以下、「最下部」という。)は拡径部11aの一部であるから、最下部における径(以下、「最下部径」という。最下部径は本願発明の「X」に対応する。)は、接続部径(Y)よりも口径が拡大している(Y/X<1であることに対応)。
ここで、接続部径(Y)の入射側のビア口径(「Z」に対応する。上記5を参照)に対する比について検討する。
引用発明の「ビアホール11」において、拡径部11aの最下部までテーパが延びているとすると、最下部の口径は入射側のビア口径(Z)の0.96倍になる(以下の参考図1参照。また、この値は、ビアホールの直径を通る断面がテーパ形状を有する部分において台形になること、テーパの角度は、アスペクト比が5の場合で台形の上底に対する下底の比が0.6になることから、参考図2に示すように求められる。)。
そして、接続部の位置は拡径部11aの高さの分だけ最下部よりも上側にあるから、接続部径(Y)の入射側のビア口径(Z)に対する比は0.96よりも大きくなる(Y/Z>0.96に対応)。
また、引用発明の「拡径部11a」は、ビアホール11の「底部」に設けられるものであるから、接続部の位置は入射側よりも最下部に近いと認められる。すなわち、接続部は入射側と最下部の中間よりも下側に位置する。ここで、中間位置における口径を算出すると、入射側の口径に対して0.98倍となる(参考図1を参照。この値は参考図2に示す手法と同様にして求められる。)。したがって、接続部径(Y)は、入射側のビア口径に対して0.98倍より小さくなる(Y/Z<0.98に対応)。
さらに、引用発明において最下部径(X)は入射側の口径に対して90?100%(X/Z=0.9?1)である。加えて、接続部径(Y)は上述のとおりレーザー入射側の口径の0.96倍より大きくなる(Y/Z>0.96)から、本願発明でいうY/X(=(Y/Z)/(X/Z)>0.96/(0.9?1))は最小で0.96である(Y/X>0.96に対応)。
したがって、引用発明は、本願発明の「前記ビアホールのトップ径(Z)と前記ビアホールの最小径(Y)と前記ビアホールの底部径(X)との関係が、Y/Z=0.7?0.99及びY/X=0.7?1(Z>Y)を満たしている」点に含まれる。


そうすると、本願発明と引用発明とは
「導体層と該導体層を覆う絶縁層とを備え、該絶縁層から前記導体層の一部分を露出させるビアホールを備える回路基板であって、
前記ビアホールのトップ径(Z)が、50μm以下であり、
前記ビアホールのトップ径(Z)と前記ビアホールの最小径(Y)と前記ビアホールの底部径(X)との関係が、Y/Z=0.7?0.99及びY/X=0.7?1(Z>Y)を満たしている、回路基板。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
導体層(配線パターン)の表面の算術平均粗さについて、本願発明では、350nm以下である旨特定されているのに対し、引用発明ではその旨特定されていない点。

[相違点2]
ビアホールの深さについて、本願発明では25μm未満であるのに対し、引用発明では25μmである点。

第6 当審の判断
1.相違点1について
前記「第4 2.」に記載のとおり、上記引用文献2には、表面に導体層を有するプリント配線基板において、導体層の表面粗さRaが0.1?400nm、好ましくは0.2?300nmに調整されることが記載されている。
そして、引用発明の導体層に、引用文献2に記載された技術的事項を採用し、相違点1の構成にすることは当業者が容易に想到できたことである。

この点について、審判請求人は審判請求書において、従来、導体層の表面粗さRaは500nm?700nm程度(本願明細書の段落【0161】)であるところ、引用文献1に記載の発明は、ビアランドの表面の粗度をあえてより大きくするという構成を採用するものであるから、ビアランドの表面粗さRaを従来の値500nm?700nmよりも大きくしようとするはずであり、引用文献2のように導体層の表面の粗度がより小さい350nm以下となる方向に調整しようと試みることはない旨主張している。
しかし、ビアホールを形成するためのレーザーは多種あるところ、そのうちエキシマレーザー(波長193nm、248nm)を用いることは、例えば特開昭60-261685号公報(多層構造の基板に貫通接触孔をあけるために波長248nmのエキシマレーザーを用いる点。第1ページ右欄第9行?第11行及び第2ページ左下欄第10行?右下欄第9行を参照。)や特表2013-532390号公報(KrFエキシマレーザー(クリプトンフッ素、中心は町248nm)またはArFエキシマレーザー(アルゴンフッ素、中心波長193nm)を照射してビアホールを形成する点。段落【0059】ないし【0061】参照。)に記載されているように、周知の技術的事項である。しかるところ、引用文献1の段落【0010】によれば、引用発明のビアランド2bの凹凸面は、ビアホール11を形成するレーザー光を乱反射させるのにレーザー光の波長より十分に大きければよいことから、周知の技術的事項(エキシマレーザーを用いてビアホールを形成すること)を採用すると、ビアランド2bの表面粗さRaは350nm以下とすることは可能である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

2.相違点2について
ビアホールの深さについて、引用発明では25μmであることが特定されてはいるものの、厳格に寸法通り形成することは現実には困難であるし、また、引用文献1に記載された技術内容からみて、ビアホールの深さを厳格に設計寸法通りとしなければならない理由もないことから、引用発明における「25μm」という数値は、その前後の値を含む概念であるといえる。したがって、引用発明には、25μmの近傍で25μm未満とすることは記載されているに等しい。
また、本願発明における「25μm未満」という数値範囲は、平成30年1月25日付け提出の意見書に説明されているとおり、本願の出願当初明細書の段落【0019】及び請求項4に記載された「25μm以下」という数値範囲を根拠にして補正によって追加されたものであるという経緯に鑑みても、上記相違点2は優位な差ではない。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

3.小括
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明および引用文献2に記載された技術的事項から当業者が予測できる範囲のものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-21 
結審通知日 2019-10-23 
審決日 2019-11-06 
出願番号 特願2014-158210(P2014-158210)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 石坂 博明
山澤 宏
発明の名称 回路基板及びその製造方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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