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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1358366
審判番号 不服2019-1055  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-28 
確定日 2020-01-21 
事件の表示 特願2016-138115「パワー半導体装置及びそれを用いた電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-182037、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成22年6月21日を出願日とする出願である特願2010-140723号の一部を,新たな特許出願として平成25年9月30日に出願された特願2013-205250号のさらに一部を,新たな特許出願として平成27年4月27日に出願された特願2015-89935号のさらに一部を,新たな特許出願として平成28年7月13日に出願された特許出願であって,平成29年2月15日に手続補正がされ,平成29年5月2日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年7月7日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成29年12月26日付けで最後の拒絶理由通知がされ,平成30年4月25日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものの,平成30年10月22日付けで前記平成30年4月25日付けの手続補正を却下する旨の補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成31年1月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成31年4月5日に前置報告がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成30年10月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし15に係る発明は,以下の引用文献1または2または3,4,及び,aないしcに基づいて,その原出願の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2010-119300号公報
2.特開2009-219270号公報
3.特開2008-259267号公報
4.特開2004-208411号公報
a.特開2010-110065号公報
b.特開2010-41838号公報
c.特開2007-59737号公報


第3 本願発明

本願請求項1ないし15に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は,平成31年1月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第1のパワー半導体素子と、
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第2のパワー半導体素子と、
前記第1のパワー半導体素子の表面側に配置される第1の導体板と、
前記第1のパワー半導体素子の裏面側に配置される第2の導体板と、
前記第2のパワー半導体素子の表面側に配置される第3の導体板と、
前記第2のパワー半導体素子の裏面側に配置される第4の導体板と、を備えたパワー半導体装置において、
前記第2の導体板には、前記第3の導体板に向かって延設された接続部が当該第2の導体板と一体構造として設けられ、
前記接続部は、前記第2の導体板から前記第3の導体板に向かって屈曲する屈曲部を有するとともに、前記屈曲部より先端側において前記第3の導体板と接続され、
前記第1のパワー半導体素子、前記第2のパワー半導体素子、前記第1の導体板、前記第2の導体板、前記第3の導体板、及び前記第4の導体板は、トランスファーモールドによって一体的に樹脂封止されているパワー半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1のパワー半導体素子は、金属接合材を介して前記第2の導体板に接続され、
前記第2の導体板は、前記第1のパワー半導体素子が接続される領域における当該第2の導体板の厚さよりも前記接続部の厚さの方が小さくなるように、形成されるパワー半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1の導体板、前記第2の導体板、前記第3の導体板、及び前記第4の導体板を固定する封止部を備え、
前記第2の導体板は、前記第1のパワー半導体素子が配置される側の面とは反対側の面が前記封止部から露出し、
前記第4の導体板は、前記第2のパワー半導体素子が配置される側の面とは反対側の面が前記封止部から露出するパワー半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載のパワー半導体装置であって、
前記第2の導体板の露出面と前記第4の導体板の露出面とは、同一面上に配置されるパワー半導体装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1の導体板は、前記第1のパワー半導体素子が配置される側の面とは反対側の面が前記封止部から露出し、
前記第3の導体板は、前記第2のパワー半導体素子が配置される側の面とは反対側の面が前記封止部から露出するパワー半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1の導体板の露出面と前記第3の導体板の露出面とは、同一面上に配置されるパワー半導体装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のパワー半導体装置であって、
前記第1のパワー半導体素子は、前記第1の導体板の露出面と前記第2の導体板の露出面との間に挟まれる空間に配置され、
前記第2のパワー半導体素子は、前記第3の導体板の露出面と前記第4の導体板の露出面との間に挟まれる空間に配置されるパワー半導体装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
前記接続部は、前記第2の導体板の露出部と前記第4の導体板の露出部との間の領域において、前記封止部の内部に埋設されるパワー半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
前記接続部は、前記第1のパワー半導体素子と前記第2のパワー半導体素子とに挟まれる空間に配置されるパワー半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
前記第3の導体板には、当該第3の導体板の厚さ方向に屈曲することなく前記第1の導体板に向かって突出する突出部が当該第3の導体板と一体構造として設けられ、当該突出部が前記第2の導体板の前記接続部と接続されているパワー半導体装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のパワー半導体装置であって、
絶縁部材を挟んで前記第2の導体板及び前記第4の導体板と対向する位置に第1の放熱部材が配置されるパワー半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパワー半導体装置であって、
絶縁部材を挟んで前記第1の導体板及び前記第3の導体板と対向する位置に第2の放熱部材が配置され、
前記第1の放熱部材および前記第2の放熱部材は、前記パワー半導体装置に向かって加圧されるパワー半導体装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のパワー半導体装置と、
前記第1の放熱部材の外面に冷媒を流すための流路を形成する流路形成体と、を備えた電力変換装置。
【請求項14】
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第1のパワー半導体素子と、
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第2のパワー半導体素子と、
前記第1のパワー半導体素子の表面側に配置される第1の導体板と、
前記第1のパワー半導体素子の裏面側に配置される第2の導体板と、
前記第2のパワー半導体素子の表面側に配置される第3の導体板と、
前記第2のパワー半導体素子の裏面側に配置される第4の導体板と、を備えたパワー半導体装置の製造方法であって、
前記第2の導体板の厚さ方向に屈曲する屈曲部を当該第2の導体板と一体に形成する工程と、
前記第1のパワー半導体素子を前記第1の導体板と前記第2の導体板に金属接合材を介して接続する工程と、
前記第2のパワー半導体素子を前記第3の導体板と前記第4の導体板に金属接合材を介して接続する工程と、
前記第2の導体板の前記屈曲部の先端と前記第3の導体板とを金属接合材を介して接続する工程と、
前記第1のパワー半導体素子、前記第2のパワー半導体素子、前記第1の導体板、前記第2の導体板、前記第3の導体板、及び前記第4の導体板を含む部分を金型内に配置してトランスファーモールドにより封止する工程と、を含むパワー半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のパワー半導体装置の製造方法において、
前記第1の導体板及び前記第3の導体板と一体的に接続されたタイバーを切断する工程を含むパワー半導体装置の製造方法。」


第4 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について

本願の原出願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2010-119300号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A.「【0092】
図17は本実施形態に関する半導体モジュールにおける上下アーム直列回路の内部配置の構造を示す分解図である。図17において、本実施形態に関する半導体モジュールは、放熱金属の板、例えばフィン構造を備えた金属板である放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562を基礎素材としてそれぞれの内側に絶縁シート(A側)546と絶縁シート(B側)596を真空熱圧着で固着する。そして、絶縁シート(A側)546に、正極側の導体板534と上下アーム接続用導体板535を固着する(図19を参照)。
【0093】
さらに、絶縁シート(B側)596に、負極側の導体板574と交流端子側の導体板584を固着するとともに、負極側の導体板574に下アーム用信号用端子556を接続し、交流端子側の導体板584に上アーム用信号用端子552を接続する(図20を参照)。
【0094】
絶縁シート(A側)546と絶縁シート(B側)596は、インバータ回路の上下アーム直列回路を構成する半導体チップや導体と放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562とを電気的に絶縁する絶縁部材として機能すると共に、半導体チップなどからの発生熱を放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562に伝導する熱伝導路を形成する働きをする。絶縁部材としては、樹脂製の絶縁シートまたは絶縁板であっても良いし、セラミック基板であっても良い。例えばセラミック基板の場合で絶縁部材の厚さは350μメータ以下、絶縁シートの場合は更に薄く50μメータから200μメータであることが望ましい。ただ、インダクタンス低減の観点では、絶縁部材は薄い方が効果的であり、セラミック基板より樹脂製の絶縁シートの方が特性的に優れている。
【0095】
次に、放熱フィン(A側)522の正極側の導体板534には、上アーム用IGBTチップ537と上アーム用ダイオードチップ539が上下方向に配列されてはんだ付け固定される。同様に、放熱フィン(A側)522の上下アーム接続用導体板535には、下アーム用IGBTチップ541と下アーム用ダイオードチップ543が上下方向に配列されてはんだ付け固定される。ここで、IGBTチップとダイオードチップの上下方向のサイズを比べると、そのサイズはIGBTチップの方が可成り大きい。そうすると、放熱フィン522を通る冷却水に対して、IGBTチップとダイオードチップが占める水路占有率を考えると、上アーム用IGBTチップ537が占有する水路占有率は、上アーム用ダイオードチップ539のそれよりも可成り大きくなる。ダイオードチップよりも放熱量がより多いIGBTチップの放熱が促進されることになり、半導体モジュール全体の放熱効率は向上する。このような放熱効率は、上アーム用のチップと同様に、下アーム用のチップ541,543についても向上が図れる。
【0096】
さらに、図18?図20の説明で詳しく後述するが、上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する上下アーム接続用はんだ接合部555が、下アームのチップ541,543と同様に、放熱フィン(A側)522の導体板535に形成され(図18と図19を参照)、接合部555がはんだ層544及び導体板584を介して交流端子582(図3の交流端子59に相当)接続され、上下アーム直列回路の中間電極69(図2を参照)を構成する。また、放熱フィン(A側)522の導体板の上にはんだ付けされた上アームのIGBT537のゲート電極とゲート端子(上アーム用)553の信号用導体との間、及び下アームのIGBT541のゲート電極とゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体との間が、それぞれワイヤボンディング593,596で接続される構造である。
【0097】
一方、放熱フィン(B側)562の絶縁シート(B側)596には、図17及び図20に示すように、負極端子572の負極側の導体板574、交流端子582の交流端子側導体板584、及び信号用端子(上アーム用)552と信号用端子(下アーム用)556のそれぞれの導体板が固着されている。負極側の導体板574には、下アームIGBTチップ541のエミッタ側が接続されるはんだ接合部757と下アームのダイオードチップ543のアノード側が接続されるはんだ接合部759が設けられ、交流端子側の導体板584には、上アームIGBTチップ537のエミッタ側が接続されるはんだ接合部756と上アームのダイオードチップ543のアノード側が接続されるはんだ接合部758が配設される。 負極端子572(図2に示す負極端子58に相当)は、下アームのIGBTチップ541及び下アームのダイオードチップ543に対して、導体板574、はんだ接合部757及び759、はんだ層540及び542を介して接続結合される。また、正極端子,は、上アームのIGBTチップ537及び上アームのダイオードチップ543に対して、導体板534、はんだ接合部751及び752、はんだ層547及び548を介して接続結合される。また、交流端子582は、導体板584、上アームIGBTチップのエミッタ側に連結している上下アーム接続用はんだ接合部560、はんだ層544、上下アーム接続用はんだ接合部555、導体板535を介して下アーム用IGBTチップ541に接続結合される。上アーム用信号用端子552(図2に示す信号用端子55に相当)と下アーム用信号用端子556(図2に示す信号用端子65に相当)のそれぞれの導体板は、上アームIGBTチップ537と下アームIGBTチップ541のそれぞれのエミッタ側に結合されている。上述した半導体モジュールの配置構造によって図2に示す上下アーム直列回路50の回路構成が形成される。
【0098】
図17に示すとおり、放熱フィンの一方である、放熱フィン(A側)522に上アームと下アームを構成する両方の半導体チップを上下方向に配置固定し、さらに、上アーム用ゲート端子553と下アーム用デート端子557を放熱フィン(A側)522に設けてワイヤボンディングなどの接続作業を一方の放熱フィン(A側)522で実施できるので、製造工程の中で集中でき、生産性と信頼性の向上となる。また、自動車用の如く振動の大きい環境で使用する場合、配線すべき対象の半導体チップと端子とが同一の放熱フィンに固定されているので、耐振性が向上する。
【0099】
上述したように、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562とを図17に示すように対向させて、放熱フィン(A側)522のIGBTチップ537,541とダイオードチップ539,543との電極が、図2に示す回路構成のとおりに連結するように、放熱フィン(B側)562の負極端子572、交流端子582、上アーム用信号用端子552及び下アーム用信号用端子556にそれぞれ繋がる導体板と対面させて、はんだ付けする。さらに、図15に示すように、ボトムケース516、トップケース512及びサイドケース508が、一体的構造となった放熱フィン(A側)522及び放熱フィン(B側)562に対して、接着剤で接着される。さらに、トップケースの孔513(図15を参照)からモールド樹脂を内部に充填させて半導体モジュール500を形成する。」

以上A.の記載から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「上下アーム直列回路を備える半導体モジュールであって、
フィン構造を備えた金属板である放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562を基礎素材としてそれぞれの内側に絶縁シート(A側)546と絶縁シート(B側)596を真空熱圧着で固着し、そして、上記絶縁シート(A側)546に、正極側の導体板534と上下アーム接続用導体板535を固着し、さらに、上記絶縁シート(B側)596に、負極側の導体板574と交流端子側の導体板584を固着するとともに、負極側の導体板574に下アーム用信号用端子556を接続し、交流端子側の導体板584に上アーム用信号用端子552を接続し、
上記放熱フィン(A側)522の正極側の導体板534には、上アーム用IGBTチップ537と上アーム用ダイオードチップ539が上下方向に配列されてはんだ付け固定され、同様に、放熱フィン(A側)522の上下アーム接続用導体板535には、下アーム用IGBTチップ541と下アーム用ダイオードチップ543が上下方向に配列されてはんだ付け固定され、さらに、上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する上下アーム接続用はんだ接合部555が、下アームのチップ541,543と同様に、放熱フィン(A側)522の導体板535に形成され、接合部555がはんだ層544及び導体板584を介して交流端子582接続され、上下アーム直列回路の中間電極69を構成し、
一方、放熱フィン(B側)562の絶縁シート(B側)596には、負極端子572の負極側の導体板574、交流端子582の交流端子側導体板584、及び信号用端子(上アーム用)552と信号用端子(下アーム用)556のそれぞれの導体板が固着されており、上記負極側の導体板574には、下アームIGBTチップ541のエミッタ側が接続されるはんだ接合部757と下アームのダイオードチップ543のアノード側が接続されるはんだ接合部759が設けられ、上記交流端子側の導体板584には、上アームIGBTチップ537のエミッタ側が接続されるはんだ接合部756と上アームのダイオードチップ543のアノード側が接続されるはんだ接合部758が配設され、上記負極端子572は、下アームのIGBTチップ541及び下アームのダイオードチップ543に対して、導体板574、はんだ接合部757及び759、はんだ層540及び542を介して接続結合され、
また、正極端子532は、上アームのIGBTチップ537及び上アームのダイオードチップ543に対して、導体板534、はんだ接合部751及び752、はんだ層547及び548を介して接続結合され、
また、上記交流端子582は、導体板584、上アームIGBTチップのエミッタ側に連結している上下アーム接続用はんだ接合部560、はんだ層544、上下アーム接続用はんだ接合部555、導体板535を介して下アーム用IGBTチップ541に接続結合され、
ボトムケース516、トップケース512及びサイドケース508が、一体的構造となった放熱フィン(A側)522及び放熱フィン(B側)562に対して、接着剤で接着され、さらに、トップケースの孔513からモールド樹脂を内部に充填させて形成した、
半導体モジュール。」

2.引用文献2について

本願の原出願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2009-219270号公報(以下,これを「引用文献2」という。)の段落【0086】?【0092】には,上記1.で引用した引用文献1の段落【0092】?【0099】と同様の記載があることから,当該記載から,上記引用文献2には引用発明1と同様の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

3.引用文献3について

本願の原出願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2008-259267号公報(以下,これを「引用文献3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

B.「【0076】
また、図22は本実施形態に係る半導体モジュールの一方の側の放熱フィン(A側)と他方の側の放熱フィン(B側)を展開して内部構造を斜視的に示す図である。図23は半導体モジュールの放熱フィン(A側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す図である。図24は半導体モジュールの放熱フィン(B側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す斜視図である。図25は半導体モジュールの放熱フィン(A側)の内側に固着される上下アーム直列回路の構造を示す斜視図である。図26は図25の正面図である。図27は半導体モジュールの放熱フィンの内側に真空熱圧着される導体板の構造とワイヤボンディング状態を示す斜視図である。図28は半導体モジュールの放熱フィンに絶縁シートを介して導体板を真空熱圧着する説明図である。
【0077】
図18?図21において、本実施形態に係る半導体モジュール500は、一方の側である放熱フィン(A側)522(なお、放熱フィンとは凹凸のあるフィン形状部分のみを称するのではなくて、放熱金属の全体を云う)、他方の側である放熱フィン(B側)562、両放熱フィン522,562に挟み込まれた上下アーム直列回路50、上下アーム直列回路の正極端子532や負極端子572や交流端子582を含めた各種端子、トップケース512やボトムケース516やサイドケース508、を備えている。図19と図20に示すように、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に絶縁シートを介してそれぞれ固着された導体板上の上下アーム直列回路(その製造方法は後述する)が放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に挟み込まれた状態において、ボトムケース516、トップケース512、サイドケース508を取り付け、両放熱フィン522,562の間にトップケース512側からモールド樹脂を充填して一体化構造として半導体モジュール500を形成する。」

C.「【0088】
本実施形態に係る半導体モジュールの製造方法の基本的なプロセスを順に示す。放熱金属の板、例えば本実施形態ではフィン構造を備えた金属板である放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562を基礎素材としてそれぞれの内側に絶縁シート(A側)524と絶縁シート(B側)564を真空熱圧着で固着し(図28を参照)、絶縁シート524(A側)に正極側の導体板534及び第1の導体板544を真空熱圧着で固着し、絶縁シート564(B側)に負極側の導体板574と交流用の導体板(第2の導体板)584を固着する。放熱フィン(A側)522及び絶縁シート(A側)524への導体板534,544の固着は図25と図26に示し、放熱フィン(B側)562及び絶縁シート(B側)564への導体板574,584の固着は図24に示す。
【0089】
さらに合わせて、絶縁シート524(A側)に、信号用端子(上アーム用)552の信号用導体554やゲート端子(上アーム用)553のゲート用導体555、信号用端子(下アーム用)556の信号用導体558やゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体559を固着する。これらの配置関係は図23に示すとおりである。
【0090】
絶縁シート(A側)524と絶縁シート(B側)564とは、以下に説明する、インバータ回路の上下アームの直列回路を構成する半導体チップや導体と放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562とを電気的に絶縁する絶縁部材として機能すると共に、半導体チップなどからの発生熱を放熱フィン(A側)522や放熱フィン(B側)562に伝導する熱伝導路を形成する働きをする。絶縁部材としては、樹脂製の絶縁シートまたは絶縁板であっても良いし、セラミック基板であっても良い。例えばセラミック基板の場合で絶縁部材の厚さは350μメータ以下、絶縁シートの場合は更に薄く50μメータから200μメータであることが望ましい。ただ、後述するインダクタンス低減においては絶縁部材は薄い方が効果が大きく、セラミック基板より樹脂製の絶縁シートの方が特性的に優れている。
【0091】
次に、放熱フィン(A側)522の導体板534,544に設けた凸部536,540,545,548に半田層537,541,546,549を介在させてIGBTチップ538,547及びダイオードチップ542,550をはんだ付けする(図23を参照)。この際、正極側の導体板534と第1の導体板544が互いに絶縁状態で設けられ、それぞれの導体板534,544にIGBTチップ及びダイオードチップをはんだ付けする。さらに、図2に示すように、上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する接続板594がチップ547,550と同様にして第1の導体板544にはんだ付けされ、接続板594が交流用の導体板(第2の導体板)584との当接接続によって、上下アームの中間電極69(図2を参照)を構成する。
【0092】
次に、放熱フィン(A側)522の導体板534の上にはんだ付けされた上アームのIGBT538の信号用エミッタ電極661と信号用端子(上アーム用)552の信号用導体554との間、及び上アームのIGBT538のゲート電極662とゲート端子(上アーム用)553のゲート用導体555との間をワイヤボンディングで接続する(図27を参照)。同様にして放熱フィン(A側)522の第1の導体板544の上にはんだ付けされた下アームのIGBT547の信号用エミッタ電極と信号用端子(下アーム用)556の信号用導体558との間、及び下アームのIGBT547のゲート電極とゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体559との間をワイヤボンディングで接続する(図27を参照)。
【0093】
図23に示すとおり、放熱フィンの一方である、放熱フィン(A側)522に上アームと下アームを構成する両方の半導体チップを固定し、これら半導体チップに信号を制御するための信号用導体554,558とゲート用導体555,559を設けている。このように一方の絶縁部材に上下アーム用の半導体チップとその制御線を固定しているので、ワイヤボンディングなどの信号線と半導体チップとの接続作業を製造工程の中で集中でき、生産性と信頼性の向上となる。
【0094】
また、自動車用の如く振動の大きい環境で使用する場合、配線すべき一方の半導体チップと他方の制御線との両方が同じ部材である一方の放熱フィンに固定されているので、耐振性が向上する。
【0095】
図23に示す構造では上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを同じ向きに、すなわちそれぞれのコレクタ面が絶縁部材である絶縁シート524に固着されている。このように半導体チップの方向を合わせることで作業性が向上する。このことはダイオードチップに対しても同じである。
【0096】
図23の構造では上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを端子の引き出し方向において奥側と手前側に分けて配置している。この端子の引き出し方向は、後述するとおり、水路への挿入方向と一致している。水路への挿入方向において奥側と手前側に分けて上アーム用の半導体チップと下アーム用の半導体チップとを分けて配置している。このような配置とすることで、半導体モジュール内の電気部品の配置が規則的となり、全体として小型化される。また、熱源が規則的に分かれるので(発熱源である複数のIGBTの内の各IGBTのオンオフが規則的に変化して動作するので)熱の分散に優れ、また放熱面が規則的に分かれるので、半導体モジュールが比較的小型化されても放熱面が有効的に作用し冷却効果が向上する。
【0097】
次に、放熱フィン(B側)562について説明する。放熱フィン(B側)562に絶縁部材である絶縁シート564を介して真空熱圧着された導体板が固着されている。図24に示すように、交流端子582を引き出す交流用の導体板584と負極端子572を引き出す負極側の導体板574が互いに絶縁部材である絶縁シート564の上に絶縁状態で配設され、それぞれの導体板574,584上には図示するように凸部576,578,586,588を設ける。凸部576,586はIGBTチップに接続され、凸部578,588はダイオードチップに接続される。
【0098】
図24において、部分拡大図S1に示すように、D1とD2は凸部の厚さを表し、D1>D2であるのは、ダイオードチップがIGBTチップより厚いためである。放熱フィン(A側)522の内側においては、図23に示すように、上アームのエミッタ電極とダイオードのアノード電極が正極端子532を有する正極側の導体板534上に突き出た形状を表出しており、また、導体板544には下アームのエミッタ電極とダイオードのアノード電極が突き出た形状で表出され且つ中間電極69を構成する接続板594が突き出た形状で表出されている。
【0099】
続いて、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562とを図22に示すように対向させて、放熱フィン(A側)522のIGBTチップ538,547とダイオードチップ542,550との電極が連結するように、放熱フィン(B側)562の導体板574,584上の凸部586,588,576,578を対面させてはんだ付けする。また、放熱フィン(A側)522の第1の導体板544に設けた接続板594は、放熱フィン(B側)562に設けた交流用の導体板584に対面するように配置されておりはんだ付けされる。次に、ボトムケース516、トップケース512及びサイドケース508が、一体的構造となった放熱フィン(A側)522及び放熱フィン(B側)562に対して、接着剤で接着される(図20を参照)。さらに、トップケースの孔513からモールド樹脂を内部に充填させて半導体モジュール500を形成する。」

以上B.及びC.の記載から,上記引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「上下アーム直列回路が内側に固着された半導体モジュールであって、
一方の側である放熱フィン(A側)522、他方の側である放熱フィン(B側)562、両放熱フィン522,562に挟み込まれた上下アーム直列回路50、上下アーム直列回路の正極端子532や負極端子572や交流端子582を含めた各種端子、トップケース512やボトムケース516やサイドケース508、を備えており、放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に絶縁シートを介してそれぞれ固着された導体板上の上下アーム直列回路が放熱フィン(A側)522と放熱フィン(B側)562に挟み込まれた状態において、ボトムケース516、トップケース512、サイドケース508を取り付け、両放熱フィン522,562の間にトップケース512側からモールド樹脂を充填して一体化構造として当該半導体モジュールを形成しており、
上記放熱フィン(A側)522と上記放熱フィン(B側)562を基礎素材としてそれぞれの内側に絶縁シート(A側)524と絶縁シート(B側)564を真空熱圧着で固着し、絶縁シート524(A側)に正極側の導体板534及び第1の導体板544を真空熱圧着で固着し、絶縁シート564(B側)に負極側の導体板574と交流用の導体板(第2の導体板)584を固着し、
上記放熱フィン(A側)522の導体板534,544に設けた凸部536,540,545,548に半田層537,541,546,549を介在させてIGBTチップ538,547及びダイオードチップ542,550をはんだ付けし、この際、正極側の導体板534と第1の導体板544が互いに絶縁状態で設けられ、それぞれの導体板534,544にIGBTチップ及びダイオードチップをはんだ付けし、さらに、上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する接続板594がチップ547,550と同様にして第1の導体板544にはんだ付けされ、接続板594が交流用の導体板(第2の導体板)584との当接接続によって、上下アームの中間電極69を構成し、
上記放熱フィン(A側)522の導体板534の上にはんだ付けされた上アームのIGBT538の信号用エミッタ電極661と信号用端子(上アーム用)552の信号用導体554との間、及び上アームのIGBT538のゲート電極662とゲート端子(上アーム用)553のゲート用導体555との間をワイヤボンディングで接続し、同様にして放熱フィン(A側)522の第1の導体板544の上にはんだ付けされた下アームのIGBT547の信号用エミッタ電極と信号用端子(下アーム用)556の信号用導体558との間、及び下アームのIGBT547のゲート電極とゲート端子(下アーム用)557のゲート用導体559との間をワイヤボンディングで接続し、
上記放熱フィン(A側)522と上記放熱フィン(B側)562とを対向させて、放熱フィン(A側)522のIGBTチップ538,547とダイオードチップ542,550との電極が連結するように、放熱フィン(B側)562の導体板574,584上の凸部586,588,576,578を対面させてはんだ付けし、また、放熱フィン(A側)522の第1の導体板544に設けた接続板594は、放熱フィン(B側)562に設けた交流用の導体板584に対面するように配置されておりはんだ付けし、次に、ボトムケース516、トップケース512及びサイドケース508が、一体的構造となった放熱フィン(A側)522及び放熱フィン(B側)562に対して、接着剤で接着され、さらに、トップケースの孔513からモールド樹脂を内部に充填させて形成する、
半導体モジュール。」

4.引用文献4について

本願の原出願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2004-208411号公報(以下,これを「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

D.「【0036】
図6に示すように、ハイサイド板1の側端からハイサイド端子11が、ローサイド板2から側端からローサイド端子12が、ミドルサイド板3の側端からミドルサイド端子13がミドルサイド端子13の短辺方向へ突出している。これらハイサイド端子11、ローサイド端子12及びミドルサイド端子13の幅は、ハイサイド板1、ローサイド板2及びミドルサイド板3の長辺の長さよりも格段に短くされている。ローサイド端子12は、図3に示すように、厚さ方向に曲げられて樹脂モールド部20の厚さ方向中央部から突出している。ハイサイド端子11、ミドルサイド端子13、小電流端子14、15も同じである。」

5.引用文献aないしcについて

本願の原出願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2010-110065号公報(以下,これを「引用文献a」という。),特開2010-41838号公報(以下,これを「引用文献b」という。),特開2007-59737号公報(以下,これを「引用文献c」という。)にはそれぞれ,図面とともに次の事項が記載されている。

E.「【0081】
パワーモジュール300、特に金属ベース304は、温度サイクルによって膨張及び収縮する。この膨張及び収縮によって、接続端314K,316Kと回路配線パターン334Kの接続部は、亀裂又は破断するおそれが生じる。そこで、本実施形態に係るパワーモジュール300では、図9に示すように、直流正極端子314と直流負極端子316が積層されることにより形成される積層平面部319が、絶縁基板334を搭載した側の金属ベース304の平面に対して、略平行となるように構成されている、これにより、積層平面部319は、前述の膨張及び収縮により発生する金属ベース304の反り返りに対応した反り返り動作が可能となる。そのため、積層平面部319に一体に形成された接続端314K,316Kの剛性は、金属ベース304の反り返りに対して、小さくすることができる。したがって、接続端314K,316Kと回路配線パターン334Kとの接合面の垂直方向に加わる応力を緩和することができ、この接合面の亀裂又は破断を防止することができる。」(引用文献a)

F.「【0114】
そこで、本実施形態に係るパワーモジュール300では、図7に示すように、直流正極端子314と直流負極端子316が積層されることにより形成される積層平面部319が、絶縁基板334を搭載した側の金属ベース304の平面に対して、略平行となるように構成されている、これにより、積層平面部319は、前述の膨張及び収縮により発生する金属ベース304の反り返りに対応した反り返り動作が可能となる。そのため、積層平面部319に一体に形成された接続端314K,316Kの剛性は、金属ベース304の反り返りに対して、小さくすることができる。したがって、接続端314K,316Kと回路配線パターン334Kとの接合面の垂直方向に加わる応力を緩和することができ、この接合面の亀裂又は破断を防止することができる。」(引用文献b)

G.「【0031】
また、正極側端子5a,出力端子6a,負極側端子7aとIGBT1,2,ダイオード3,4との接続は、薄板状の接続導体9,10,11,12により接続されている。この導体配置により、図21のインダクタンスの23と24,25と26,27と28が、2枚の平板上に往復電流を流した形でインダクタンスが低くなり、前述した主回路インダクタンスLが低減できる構成となっている。」(引用文献c)

上記E.ないしG.の記載から、2つの導体の接続部が屈曲部を有し、当該屈曲部の先端で2つの導体が接続されることは、本願の原出願の出願日前には周知の技術であったことが読み取れる。

6.引用文献αについて

本願の原出願の出願日前に頒布され,平成30年10月22日付けの補正の却下の決定に引用された,特開2007-35670号公報(以下,これを「引用文献α」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

H.「【0028】
そして、図1、図2に示されるように、両半導体パッケージ10、20においては、半導体素子1、2を挟み込んだ一対の金属体3、4が、モールド樹脂7にて封止されている。このモールド樹脂7はエポキシ系樹脂などからなり、型成形によって形成されたものである。
【0029】
また、図1(b)に示されるように、一対の金属体3、4のそれぞれにおいて、半導体素子1、2と対向する内面とは反対側の外面3a、4aが、モールド樹脂7から露出している。
【0030】
これにより、両半導体パッケージ10、20においては、第1および第2の半導体素子1、2の両面のそれぞれにて、第2の金属体4、ヒートシンクブロック6および第1の金属体3を介した放熱が行われる構成となっている。
【0031】
また、一対の金属板3、4は、導電性接合部材5やヒートシンクブロック6を介して、縦型パワー素子である両半導体素子1、2の各面の図示しない電極に電気的に接続されている。
【0032】
ここで、図1、図2に示されるように、第1の金属体3および第2の金属体4には、その端面からモールド樹脂7の外側に突出して露出する外部端子31、32、33、34、35が、設けられている。本例では、これら外部端子31?35は、プレス加工などにより金属体3、4に一体成形されている。
【0033】
第1の半導体パッケージ10において第1の金属体3に設けられている外部端子31は、本半導体装置100において上記モータに接続される出力端子31である。
【0034】
また、第1の半導体パッケージ10において第2の金属体4に設けられている外部端子32、および、第2の半導体パッケージ20において第2の金属体4に設けられている外部端子33は、本半導体装置100における電源端子32、33である。ここでは、第1の半導体パッケージ10側の電源端子32が高電圧側、第2の半導体パッケージ20側の電源端子33がGND側となる。
【0035】
ここで、出力端子31は、インバータ装置においては、いわゆるU,V,W端子のいずれか1つとなるものであり、高電圧側の電源端子32はいわゆるP端子、GND側の電源端子33はいわゆるN端子といわれるものである。
【0036】
また、図1において、第2の半導体パッケージ20において第1の金属体3に設けられている外部端子34は、同一の両半導体パッケージ10、20を用いた構成を採用したため存在するものであるが、実際の構成上は不要なものであり、図示のように、残してもよいが、カットして除去してもよい。
【0037】
また、対向する両半導体パッケージ10、20の間に存在する外部端子35は、これら両半導体パッケージ10、20を電気的に接続するため接続端子35である。そして、第1の半導体パッケージ10の接続端子35aと第2の半導体パッケージ20の接続端子35bとは、電気的に接続されている。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について
(1)引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1である「半導体モジュール」は,本願発明1である「パワー半導体装置」に対応するところ,引用発明1の「上アーム用IGBTチップ537」,「下アーム用IGBTチップ541」,上記「上アーム用IGBTチップ537」が「はんだ付け固定され」た「導体板534」,上記「上アームIGBTチップ537のエミッタ側が」「はんだ接合部756」を介して「接続され」た「導体板584」,上記「下アーム用IGBTチップ541」が「はんだ付け固定され」た「導体板535」,上記「下アームIGBTチップ541のエミッタ側が」「はんだ接合部759」を介して「接続され」た「導体板574」は,それぞれ本願発明1の「表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第1のパワー半導体素子」,「表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第2のパワー半導体素子」,「前記第1のパワー半導体素子の表面側に配置される第1の導体板」,「前記第1のパワー半導体素子の裏面側に配置される第2の導体板」,「前記第2のパワー半導体素子の表面側に配置される第3の導体板」,「前記第2のパワー半導体素子の裏面側に配置される第4の導体板」に相当する。

イ 引用発明1は「上アームのエミッタ電極と下アームのコレクタ電極を連結する上下アーム接続用はんだ接合部555が」,「放熱フィン(A側)522の導体板535に形成され,接合部555がはんだ層544及び導体板584を介して交流端子582接続され,上下アーム直列回路の中間電極69を構成し」ており,当該「接合部555」は,「導体板535」(本願発明1の「第3の導体板」に相当)と「導体板584」(本願発明1の「第2の導体板」に相当)を接続する接続部といえるから,本願発明1と引用発明1とは,“前記第2の導体板と前記第3の導体板との接続部が設けられ”ている点で共通するといえる。

以上ア及びイの対比から,本願発明1と引用発明1とは次の点で一致し,そして相違する。

(一致点)
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第1のパワー半導体素子と,
表面及び裏面のそれぞれに電極が形成された第2のパワー半導体素子と,
前記第1のパワー半導体素子の表面側に配置される第1の導体板と,
前記第1のパワー半導体素子の裏面側に配置される第2の導体板と,
前記第2のパワー半導体素子の表面側に配置される第3の導体板と,
前記第2のパワー半導体素子の裏面側に配置される第4の導体板と,を備えたパワー半導体装置において,
前記第2の導体板と前記第3の導体板との接続部が設けられている,
パワー半導体装置。

(相違点1)
接続部に関し,
本願発明1は,「前記第2の導体板には,前記第3の導体板に向かって延設された」接続部が「当該第2の導体板と一体構造として設けられ」ているのに対し,
引用発明1は,「接合部555」についてそのような特定はなされていない点。

(相違点2)
本願発明1は,「接続部は,前記第2の導体板から前記第3の導体板に向かって屈曲する屈曲部を有するとともに,前記屈曲部より先端側において前記第3の導体板と接続され」ているのに対し,
引用発明1は,そのような特定はなされていない点。

(相違点3)
本願発明1は,「第1のパワー半導体素子,前記第2のパワー半導体素子,前記第1の導体板,前記第2の導体板,前記第3の導体板,及び前記第4の導体板は,トランスファーモールドによって一体的に樹脂封止されている」のに対し,
引用発明1は,そのような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討する。

相違点2に係る本願発明1の構成である,「接続部は,前記第2の導体板から前記第3の導体板に向かって屈曲する屈曲部を有するとともに,前記屈曲部より先端側において前記第3の導体板と接続され」ている点について,引用発明1の「接合部555」は,「放熱フィン(A側)522の導体板535に形成され,接合部555がはんだ層544及び導体板584を介して交流端子582接続され」る構成をなしており,すなわち,「導体板535」と「導体板584」は「はんだ層544」を介して接合されるよう正対した位置にあるから,当該「導体板535」と当該「導体板584」とを接合するために直線的に接合部を設けるのが構造上自然であって,このような接合部を屈曲させるよう変更する動機づけは認められない。
そうすると,引用発明1に基づいて,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

したがって,本願発明1は,他の相違点を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1,及び,引用文献1ないし4,aないしc,αに記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)引用発明2に基づく判断
上記第4の2.で検討のとおり,引用文献2には引用発明1と同様の引用発明2が記載されており,そして,上記(2)で検討のとおり,本願発明1は,引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,同様の理由により,本願発明1は,引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)引用発明3に基づく判断
上記第4の3.で検討のとおり,引用文献3には引用発明3が記載されており,引用発明3は引用発明1と実質的に同様の構成からなる発明であるといえる。そして,上記(2)で検討のとおり,本願発明1は,引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから,同様の理由により,本願発明1は,引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本願発明1についてのまとめ
以上(1)ないし(4)の検討から,本願発明1は,当業者であっても引用発明1または引用発明2または引用発明3,及び,引用文献1ないし4,aないしc,αに記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし15について
本願発明2ないし15は,本願発明1を更に限定したものであるか,本願発明1を別のカテゴリーで表現するものであるので,同様に,当業者であっても引用発明1または引用発明2または引用発明3,及び,引用文献1ないし4,aないしc,αに記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-09 
出願番号 特願2016-138115(P2016-138115)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H02M)
P 1 8・ 121- WY (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 仲間 晃
白井 亮
発明の名称 パワー半導体装置及びそれを用いた電力変換装置  
代理人 戸田 裕二  

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