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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F |
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管理番号 | 1358371 |
審判番号 | 不服2018-14780 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-06 |
確定日 | 2020-01-21 |
事件の表示 | 特願2018- 7647「ゲームシステム及びそのコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 1日出願公開、特開2019-126361、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年1月19日の出願であって、同年5月15日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和1年10月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月28日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和1年11月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し、前記プレイ範囲のプレイが終了した場合には、前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可するプレイ範囲制御手段と、 前記プレイ範囲制御手段にて前記プレイの継続が許可されたことを条件として、前記継続が許可されたプレイヤに対して特典を発生させる特典制御手段と、 前記対価の支払いを受け付ける手段と、 を備え、 前記ゲームとして、複数のプレイヤが参加してプレイすることが可能な共通ゲームが提供され、 前記受け付ける手段は、電子通貨による前記対価の支払いを受け付けることができるように設けられ、 前記プレイ範囲制御手段は、前記対価の支払いに応じた前記プレイの継続をプレイヤごとに処理するように、かつ前記受け付ける手段が前記対価の支払いを受け付けた場合には、その支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく各プレイヤの前記プレイの継続を許可するように設けられ、 前記特典制御手段は、いずれかのプレイヤに関して前記プレイの継続が許可された場合、当該プレイヤに加えて、前記共通ゲームに参加している他のプレイヤのうち少なくとも一人のプレイヤに対しても特典を発生させるゲームシステム。 【請求項2】 前記共通ゲームに参加する複数のプレイヤを、前記共通ゲームのプレイを競うべき単位としての複数のグループに区分するグループ分け手段をさらに具備し、 前記特典制御手段は、いずれかのプレイヤに関して前記継続が許可された場合、当該プレイヤと同一のグループに区分されているプレイヤを前記他のプレイヤとして前記ゲームのプレイに関する特典を発生させる請求項1に記載のゲームシステム。 【請求項3】 前記プレイ範囲制御手段は、前記ゲームのプレイ開始時に前記プレイ範囲を定める指標値を各プレイヤに対して設定するとともに、各プレイヤのプレイに応じて前記指標値をプレイヤごとに区別して変化させ、前記指標値が所定値に達したプレイヤに関しては、当該プレイヤの前記プレイ範囲のプレイが終了したものと判断する請求項1又は2に記載のゲームシステム。 【請求項4】 ゲームシステムに設けられたコンピュータを、 プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し、前記プレイ範囲のプレイが終了した場合には、前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可するプレイ範囲制御手段、 前記対価の支払いを受け付ける手段、及び 前記プレイ範囲制御手段にて前記プレイの継続が許可されたことを条件として、前記継続が許可されたプレイヤに対して特典を発生させる特典制御手段、 として機能させ、 前記ゲームとして、複数のプレイヤが参加してプレイすることが可能な共通ゲームが提供され、 前記受け付ける手段は、電子通貨による前記対価の支払いを受け付けることができるように設けられ、 前記プレイ範囲制御手段は、前記対価の支払いに応じた前記プレイの継続をプレイヤごとに処理するように、かつ前記受け付ける手段が前記対価の支払いを受け付けた場合には、その支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく各プレイヤの前記プレイの継続を許可し、 前記特典制御手段は、いずれかのプレイヤに関して前記プレイの継続が許可された場合、当該プレイヤに加えて、前記共通ゲームに参加している他のプレイヤのうち少なくとも一人のプレイヤに対しても特典を発生させる、 ように構成されたゲームシステム用のコンピュータプログラム。」 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-206442号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。 (1) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、シングルプレイ及びマルチプレイの何れも可能なゲームを実行するゲームシステム等に関する。」 (2) 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、マルチプレイでは、あるプレーヤがゲームオーバーとなっても他のプレーヤによってゲームは継続される。つまり、全てのプレーヤがゲームオーバーとなるまでゲームは継続される。業務用ゲーム装置を設置する店舗等の運営側としては、より多くのプレーヤが同時にプレイしてほしいという希望がある。しかし、ゲームオーバーとなったときに、コンティニューの選択そのものに動機付けを与えるような構成は知られていなかった。また、多くのプレーヤが同時にプレイしてほしいという希望はいわゆるオンラインゲームなどのゲームシステムでも同様である。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、マルチプレイが可能なゲームシステムにおいて、コンティニューによる再度のプレイ参入を促進することを目的としている。」 (3) 「【0028】 以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、ガンシューティングゲームを実行する業務用ゲーム装置をゲームシステムの一例として説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。 【0029】 [外観] 図1は、本実施形態におけるゲーム装置1000の外観例である。このゲーム装置1000は、例えばゲームセンタやアミューズメント施設等に設置されるアーケード用(業務用)であり、2人のプレーヤが同時にプレイ可能に構成されている。ゲーム装置1000は、プレーヤの身長よりもやや高い程度の高さの筐体の正面に、ゲーム画面を表示するディスプレイ1002と、ゲーム音声を出力するスピーカ1004と、2人のプレーヤそれぞれ用に、ゲーム対価である硬貨等のコインを投入する2つのコイン投入口1006と、コイン投入口1006それぞれから投入されたコインを検知するコイン検知センサ1008と、ケーブル1012によって筐体に接続されてプレーヤがゲーム操作を入力する2つのガン型コントローラ1010とを備えて構成される。また、筐体内部には制御ユニット1020が内蔵されている。」 (4) 「【0035】 [ゲーム概要] 本実施形態のゲーム装置1000では、プレーヤキャラクタの視点(一人称視点)でゲーム世界を見ているかのようなゲーム画面を見ながらプレーヤキャラクタを操作し、銃などの武器で敵キャラクタを攻撃しながらゲームを進める、いわゆる「一人称シューティングゲーム」が実行される。また、本実施形態のガンシューティングゲームでは、プレーヤが一人でプレイする「シングルプレイ」と、二人のプレーヤが同時にプレイし、同一のゲーム空間において協同してゲームを進める「マルチプレイ」とが実行可能である。」 (5)「【0039】 プレーヤは、ゲーム画面に表示された敵キャラクタ2に照準6を合わせるようにガン型コントローラ1010の銃口の向きを変えて射撃方向を調整し、トリガを引いて射撃操作を行うことで、プレーヤキャラクタが装備する銃4から弾丸が発射されて当該敵キャラクタ20を射撃して攻撃することができる。本実施形態では、公知のガンシューティングゲームと同様に、プレーヤキャラクタが敵キャラクタ2の攻撃を受けるとプレーヤキャラクタのヒットポイントが減算される。このヒットポイントが「0」になる前に、所定のゴール地点に到達できればゲームクリアとなり、到達できなければゲームオーバーとなる。 【0040】 [特徴] 本実施形態のガンシューティングゲームでは、ゲームオーバーとなった後、所定時間内に所定枚数のコインを投入することで、ゲームオーバーとなった時点からゲームを再開できる、いわゆる「コンティニュー」が可能である。なお、マルチプレイでは、一方のプレーヤがゲームオーバーとなった場合、他方のプレーヤのみでゲーム進行が継続される。そして、本実施形態の特徴として、マルチプレイにおいて、一方のプレーヤがゲームオーバーとなった後、コンティニューによって再度ゲームに参入した場合、他方のプレーヤに「コンティニュー特典(ボーナス特典)」が付与される。」 (6) 「【0044】 [機能構成] 図7は、ゲーム装置1000の機能構成図である。図7によれば、ゲーム装置1000は、機能的には、操作入力部110と、コイン検知部120と、処理部200と、画像表示部130と、音声出力部140と、通信部150と、記憶部300とを備えて構成される。 【0045】 操作入力部110は、プレーヤによる操作入力を受け付け、操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。本実施形態では、2人のプレーヤそれぞれが独立して操作入力を行うための、第1プレーヤ用操作入力部112と、第2プレーヤ用操作入力部114とを含む。この機能は、例えばボタンスイッチやジョイスティック、タッチパッド、トラックボール、2軸以上の検出軸を有する多軸型加速度センサ、検出軸を違えて組み合わされた単方向型傾斜センサユニット、基準位置からのずれを撮影するビデオカメラ等によって実現される。図1では、ガン型コントローラ1010がこれに該当する。 【0046】 コイン検知部120は、ゲーム対価として投入されるコイン(硬貨)の数や種類を検知し、検知信号を処理部200に出力する。図1では、コイン検知センサ1008がこれに該当する。 【0047】 処理部200は、記憶部300から読み出したプログラムやデータ、操作入力部110から入力された操作信号等に基づいて、ゲーム装置1000の全体制御やゲーム進行、画像生成等の各種演算処理を行う。この機能は、例えばCPUやGPU等のマイクロプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、ICメモリ等によって実現される。図1では、制御ユニット1020がこれに該当する。また、処理部200は、ゲーム演算部210と、画像生成部230と、音声生成部240とを有する。 【0048】 ゲーム演算部210は、ゲームの進行にかかる処理を実行する。例えば、ステージデータ320に基づいて、三次元仮想空間に地表や床面、建物等のオブジェクト等を配置してゲーム空間を設定する処理や、このゲーム空間中にプレーヤキャラクタや敵キャラクタ2を配置する処理、キャラクタの移動や攻撃といった動作制御処理、攻撃等によるオブジェクト間(例えば、弾丸とキャラクタ間)のヒット判定処理、物理演算処理、ゲーム結果の算出処理といった各種の演算処理が含まれる。 【0049】 ステージデータ320は、仮想三次元空間にゲーム空間を形成するためのデータであり、ゲームステージ別に、プレーヤキャラクタや敵キャラクタ2が移動する地表や床面等のモデルデータや、地表や床面上に配置される各種オブジェクトのモデルデータやテクスチャデータ、位置や姿勢のデータ等を含んで構成されている。 【0050】 また、本実施形態では、ゲーム演算部210は、プレーヤキャラ制御部212と、特典付与部214とを有する。 【0051】 プレーヤキャラ制御部212は、プレーヤキャラクタの動作を制御する。具体的には、予め定められた所定のコースを所定のタイミングで移動するように移動制御するとともに、コースを移動中に所定のタイミングで敵キャラクタ2の襲撃方向を向くように視線方向を制御する。 【0052】 また、プレーヤによる射撃操作がなされた場合には、操作入力部110で指し示されている照準位置に向けて射撃をするように動作制御する。尚、本実施形態では、プレーヤキャラクタの移動は所定のコースを辿るように設定されているが、プレーヤが自在に移動可能な構成とする場合には、移動操作入力に応じてプレーヤキャラクタを移動させる制御も行うとすれば良い。ここで、プレーヤキャラクタについてのデータは、それぞれ、第1プレーヤキャラデータ342、及び、第2プレーヤキャラデータ344として記憶されている。 【0053】 特典付与部214は、ゲームオーバーとなったプレーヤがコンティニューによって再度ゲームに参入する際に、何れかのプレーヤに対するコンティニュー特典の付与を行う。具体的には、一方のプレーヤがゲームオーバーとなり、このプレーヤがコンティニューによって再度ゲームに参入する場合には、現在プレイ状態にある他方のプレーヤ(現プレーヤ)を、コンティニュー特典の「付与対象プレーヤ」とする。次いで、コンティニュー特典テーブル330の現プレーヤ用特典テーブル332に従って、この付与対象プレーヤである他方のプレーヤに付与するコンティニュー特典を決定する。」 (7) 「【0066】 [処理の流れ] 図9は、マルチプレイを行う場合のゲーム処理の流れを説明するフローチャートである。図9によれば、ゲーム演算部210は、先ず、ステージデータ320に基づいてゲーム空間を設定し、設定したゲーム空間に、各プレーヤのプレーヤキャラクタを初期位置に配置する(ステップA1)。その後、ゲームの進行を開始する(ステップA3)。 【0067】 ゲーム進行中、一方のプレーヤのヒットポイントがゼロとなってゲームオーバーとなり(ステップA5:YES)、該一方のプレーヤがコンティニューする場合には(ステップA7:YES)、特典付与部214が、他方のプレーヤをコンティニュー特典の付与対象プレーヤとする。次いで、現プレーヤ用特典テーブル332に従って、付与対象プレーヤに付与するコンティニュー特典を決定する(ステップA9)。そして、決定したコンティニュー特典を、付与対象プレーヤである他方のプレーヤに付与する(ステップA11)。また、ゲーム演算部210が、参入プレーヤである一方のプレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、該一方のプレーヤをゲームに参入させる(ステップA13)。 【0068】 また、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなり(ステップA15:YES)、両方のプレーヤがコンティニューする場合には(ステップA17:YES)、特典付与部214は、両方のプレーヤそれぞれについて、互いに他方のプレーヤをコンティニュー特典の付与対象プレーヤとする。次いで、参入プレーヤ用特典テーブル334に従って、両方のプレーヤそれぞれについて、付与対象プレーヤに付与するコンティニュー特典を決定する(ステップA19)。また、ゲーム演算部210は、両方のプレーヤそれぞれのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、該両方のプレーヤをゲームに参入させる(ステップA21)。その後、特典付与部214が、決定したコンティニュー特典それぞれを、付与対象プレーヤに付与する(ステップA23)。 【0069】 一方、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなったが(ステップA15:YES)、一方のプレーヤのみがコンティニューする場合には(ステップA25:YES)、特典付与部214が、該一方のプレーヤをコンティニュー特典の付与対象プレーヤとする。次いで、参入プレーヤ用特典テーブル334に従って、付与対象プレーヤに付与するコンティニュー特典を決定する(ステップA27)。また、ゲーム演算部210が、参入プレーヤである一方のプレーヤをゲームに参入させる(ステップA29)。その後、特典付与部214が、決定したコンティニュー特典を、付与対象プレーヤである該一方のプレーヤに付与する(ステップA31)。」 (8) 上記(6)より、コイン検知部120は、図1では、コイン検知センサ1008がこれに該当するところ、上記(3)より、図1におけるコイン検知センサ1008は、2人のプレーヤそれぞれ用に備えられるものである。したがって、上記(6)におけるコイン検知部120が2人のプレーヤそれぞれ用に設けられていることは明らかである。 したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「ガンシューティングゲームが実行されるゲーム装置1000であって、 前記ガンシューティングゲームは、二人のプレーヤが同時にプレイし、同一のゲーム空間において協同してゲームを進めるマルチプレイが可能であって、各プレーヤキャラクタのヒットポイントが0になる前に、所定のゴール地点に到達できればゲームクリアとなり、到達できなければゲームオーバーとなるものであり、ゲームオーバーとなった後、所定時間内に所定枚数のコインを投入することで、ゲームオーバーとなった時点からゲームを再開できる、いわゆるコンティニューが可能であり、 前記ゲーム装置1000は、 プレーヤのヒットポイントがゼロとなってゲームオーバーとなり、当該プレーヤがコンティニューする場合、当該プレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、当該プレーヤをゲームに参入させるゲーム演算部210と、 ゲームオーバーとなったプレーヤがコンティニューによって再度ゲームに参入する際に、何れかのプレーヤに対してコンティニュー特典の付与を行う特典付与部214と、 ゲーム対価として投入されるコイン(硬貨)の数や種類を検知するコイン検知部120と、 を備え、 前記コイン検知部120は、2人のプレーヤそれぞれ用に設けられており、 前記特典付与部214は、一方のプレーヤがゲームオーバーとなり、該一方のプレーヤがコンティニューする場合には、他方のプレーヤにコンティニュー特典を付与し、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなり、両方のプレーヤがコンティニューする場合には、両方のプレーヤそれぞれについて、互いに他方のプレーヤにコンティニュー特典を付与し、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなったが、一方のプレーヤのみがコンティニューする場合には、該一方のプレーヤにコンティニュー特典を付与する、ゲーム装置1000。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明2の「プレーヤ」、「コイン」、「ガンシューティングゲーム」、「ゲーム装置1000」は、それぞれ、本願発明1の「プレイヤ」、「対価」、「ゲーム」、「ゲームシステム」に相当する。 イ 本願発明1の「プレイ範囲制御手段」は、「プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し、前記プレイ範囲のプレイが終了した場合には、前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可する」ものであるところ、引用発明2の「ゲーム演算部210」は、「プレーヤのヒットポイントがゼロとなってゲームオーバーとなり、当該プレーヤがコンティニューする場合、当該プレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、当該プレーヤをゲームに参入させる」ものである。 ここで、引用発明2は、「プレーヤのヒットポイントがゼロ」となると「ゲームオーバー」となるものであって、ヒットポイントがゼロより大きい範囲において、プレーヤはゲームを継続可能であると認められるから、引用発明2の「ゲーム演算部210」は、「プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し」ているものといえる。そして、引用発明2の「プレーヤのヒットポイントがゼロとなってゲームオーバーと」なることは、本願発明1の「前記プレイ範囲のプレイが終了」することに相当する。 また、引用発明2の「コンティニュー」は、「所定時間内に所定枚数のコインを投入することで、ゲームオーバーとなった時点からゲームを再開できる」ものであって、「当該プレーヤがコンティニューする場合、当該プレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、当該プレーヤをゲームに参入させる」のであるから、当該「コンティニュー」は、本願発明1の「前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可する」ことに相当する。 したがって、引用発明2の「プレーヤのヒットポイントがゼロとなってゲームオーバーとなり、当該プレーヤがコンティニューする場合、当該プレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、当該プレーヤをゲームに参入させるゲーム演算部210」は、本願発明1の「プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し、前記プレイ範囲のプレイが終了した場合には、前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可するプレイ範囲制御手段」に相当する。 ウ 本願発明1の「特典制御手段」は、「前記プレイ範囲制御手段にて前記プレイの継続が許可されたことを条件として、前記継続が許可されたプレイヤに対して特典を発生させる」ものであるところ、引用発明2の「特典付与部214」は、「ゲームオーバーとなったプレーヤがコンティニューによって再度ゲームに参入する際に、何れかのプレーヤに対してコンティニュー特典の付与を行う」ものである。 ここで、上記イにて指摘したとおり、引用発明2において、「ゲームオーバーとなったプレーヤがコンティニューによって再度ゲームに参入する際」には、「ゲーム演算部210」が、当該プレーヤのプレーヤキャラクタをゲーム空間に再出現させて、当該プレーヤをゲームに参入させているから、引用発明2の「コンティニュー特典の付与」は、「ゲーム演算部210」が、「当該プレーヤをゲームに参入させる」ことを条件として行われているものといえる。 したがって、本願発明1と引用発明2とは、「前記プレイ範囲制御手段にて前記プレイの継続が許可されたことを条件として、所定のプレイヤに対して特典を発生させる特典制御手段」を備える点で共通する。 エ 引用発明2の「ゲーム対価として投入されるコイン(硬貨)の数や種類を検知するコイン検知部120」は、本願発明1の「対価の支払いを受け付ける手段」に相当する。 オ 本願発明1では、「前記ゲームとして、複数のプレイヤが参加してプレイすることが可能な共通ゲームが提供され」ているところ、引用発明2の「ガンシューティングゲーム」は、「二人のプレーヤが同時にプレイし、同一のゲーム空間において協同してゲームを進めるマルチプレイが可能である」ものである。よって、本願発明1と引用発明2とは、「前記ゲームとして、複数のプレイヤが参加してプレイすることが可能な共通ゲームが提供され」ている点で共通する。 カ 本願発明1の「プレイ範囲制御手段は、前記対価の支払いに応じた前記プレイの継続をプレイヤごとに処理」するように設けられているところ、引用発明2の「ゲーム演算部210」は、コンティニューに応じて、各プレーヤをゲームに参入させているものである。よって、本願発明1と引用発明2とは、「ゲーム演算部210」が、「対価の支払いに応じた前記プレイの継続をプレイヤごとに処理」している点で共通する。 キ したがって、本願発明1と引用発明2とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「プレイヤに所定のプレイ範囲でゲームのプレイを許可し、前記プレイ範囲のプレイが終了した場合には、前記プレイの継続に必要な対価の支払いを条件として前記プレイヤに前記プレイの継続を許可するプレイ範囲制御手段と、 前記プレイ範囲制御手段にて前記プレイの継続が許可されたことを条件として、所定のプレイヤに対して特典を発生させる特典制御手段と、 前記対価の支払いを受け付ける手段と、 を備え、 前記ゲームとして、複数のプレイヤが参加してプレイすることが可能な共通ゲームが提供され、 前記プレイ範囲制御手段は、前記対価の支払いに応じた前記プレイの継続をプレイヤごとに処理するように設けられるゲームシステム。」 <相違点> (相違点1) 本願発明1では、「対価の支払い」を「受け付ける手段が、電子通貨による前記対価の支払いを受け付けることができるように設けられ」ており、「前記受け付ける手段が前記対価の支払いを受け付けた場合には、その支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく」プレイ範囲制御手段によってプレイの継続が許可されるのに対し、引用発明2では、コイン検知部120が、コインによる対価の支払いを受けるように設けられており、各プレイヤ用にそれぞれ設置されたコイン検知部120にて対価の支払いを受け付けることによって、ゲーム演算部210にてプレイの継続が許可されている点。 (相違点2) 特典制御手段によって発生される特典が、本願発明1では、「継続が許可されたプレイヤ」と、「当該プレイヤに加えて、前記共通ゲームに参加している他のプレイヤのうち少なくとも一人のプレイヤ」に対して発生しているの対し、引用発明2では、一方のプレーヤがゲームオーバーとなり、該一方のプレーヤがコンティニューする場合には、他方のプレーヤに発生し、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなり、両方のプレーヤがコンティニューする場合には、両方のプレーヤそれぞれについて、互いに他方のプレーヤに発生し、両方のプレーヤがともにゲームオーバーとなったが、一方のプレーヤのみがコンティニューする場合には、該一方のプレーヤに発生している点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討すると、引用発明2は、コインによる対価の支払いを受け付けるコイン検知部120が、各プレイヤ用にそれぞれ設置されているものである。したがって、引用発明2は、対価の支払いがプレイを継続するプレイヤ自身によって行われることを前提としているものであり、対価の支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなくプレイの継続を許可するという技術思想はない。 そうすると、仮に、電子通貨による対価の支払いを受け付ける手段が本願出願時に周知技術であったとしても、当該電子通貨による対価の支払いを受け付ける手段を引用発明2に適用した場合に、その対価の支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなくプレイの継続を許可するように設定する点が、当業者において容易に想到し得たとはいえない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2008-284220号公報)及び周知例3(特開2000-24319号公報)にも、上記相違点1に係る本願発明1の構成は記載されていない。 一方、本願発明1は、上記相違点1に係る構成により、プレイの継続に必要な対価を支払う動機付けを、継続対象のプレイヤ自身のみならず他のプレイヤにも付与し、ゲームの収益性の向上を図るという格別の効果を奏する。 したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2、引用文献1及び周知例3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?4について 本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の発明特定事項にさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、上記1(2)と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2、引用文献1及び周知例3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明4は、本願発明1とカテゴリが異なるだけの発明であるから、上記1(2)と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2、引用文献1及び周知例3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1及び請求項4について上記引用文献2及び引用文献1に基づいて、請求項2及び請求項3について上記引用文献2、1及び周知例3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和1年11月28日付け手続補正書により補正された請求項1、4は、「対価の支払い」を「受け付ける手段が、電子通貨による前記対価の支払いを受け付けることができるように設けられ」ており、「前記受け付ける手段が前記対価の支払いを受け付けた場合には、その支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく各プレイヤの前記プレイの継続を許可」するという事項を有するものとなっており、上記第4のとおり、本願発明1?4は、引用発明2、引用文献1及び周知例3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について (1) 当審では、請求項1、4(平成30年11月6日付け手続補正書による補正後のもの、以下同じ。)の「前記対価が前記電子通貨にて支払われた場合においてその支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく各プレイヤの前記プレイの継続を許可する」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和1年11月28日付け手続補正書による補正により、「前記対価の支払いを受け付ける手段と、を備え、」「前記受け付ける手段は、電子通貨による前記対価の支払いを受け付けることができるように設けられ、」「前記受け付ける手段が前記対価の支払いを受け付けた場合には、その支払いがいずれのプレイヤによってなされたかに関わりなく各プレイヤの前記プレイの継続を許可するように設けられ、」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (2) 当審では、請求項1、4の「共通ゲームに参加している少なくとも一人の他のプレイヤに対しても特典を発生させる」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和1年11月28日付け手続補正書による補正により、「共通ゲームに参加している他のプレイヤのうち少なくとも一人のプレイヤに対しても特典を発生させる」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?4は、当業者が引用発明2、引用文献1及び周知例3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-01-07 |
出願番号 | 特願2018-7647(P2018-7647) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宮本 昭彦 |
特許庁審判長 |
藤本 義仁 |
特許庁審判官 |
尾崎 淳史 小林 謙仁 |
発明の名称 | ゲームシステム及びそのコンピュータプログラム |
代理人 | 山本 晃司 |