• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1358383
審判番号 不服2018-11967  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-06 
確定日 2020-01-22 
事件の表示 特願2014-177668「カード装着構造および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 51416、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成26年9月2日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 3月19日付け :拒絶理由の通知
平成30年 4月 4日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年 8月27日付け :拒絶査定(原査定)
平成30年 9月 6日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和元 年 8月30日付け :拒絶理由の通知(当審)
令和元 年10月18日 :手続補正書の提出

第2 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,令和元年10月18日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
メモリカードを挿脱可能に収納する第1収納部と,
前記第1収納部にスライド可能に設けられ,着脱操作時に前記メモリカードを覆った状態で,前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材と,
を備え,
前記カード着脱補助部材は,前記メモリカードを前記第1収納部から引き出す補助本体部と,前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部と,を有し,
前記第1収納部は,所定の開閉蓋で開口部が覆われるとともに所定の深さを有した第2収納部の側面から前記メモリカードを挿脱可能に設けられており,
前記開閉部は,前記第1収納部に対して前記カード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部として孔部が設けられているとともに,前記開口部側に開くように設けられており,
前記孔部は,少なくとも,前記カード着脱補助部材が前記メモリカードと共に前記第1収納部に収納されている状態のときであって前記開口部が前記開閉蓋から開放されている状態のときに,前記開口部側から視認可能な位置に設けられている,
ことを特徴とするカード装着構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカード装着構造において,
前記補助本体部は,前記第1収納部内に収納された前記メモリカードの奥端部中央に当接する引出部を有し,
前記開閉部は,前記メモリカードを前記第1収納部内に押し込む押込み部を有している,
ことを特徴とするカード装着構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカード装着構造において,
前記カード着脱補助部材は,前記補助本体部に対して前記開閉部を開閉方向に回転可能に連結するヒンジ部を形成するためのV字形状の溝が,前記メモリカードに対向する側の面に形成されている,
ことを特徴とするカード装着構造。
【請求項4】
請求項1?請求項3のいずれかに記載のカード装着構造において,
前記カード着脱補助部材は,弾力性を有する樹脂材料で形成されている,
ことを特徴とするカード装着構造。
【請求項5】
請求項1?請求項4のいずれかに記載のカード装着構造において,
前記カード着脱補助部材のスライド範囲を規制するスライド規制部が,前記メモリカードの上方に位置するように設けられている,
ことを特徴とするカード装着構造。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれかに記載されたカード装着構造を備えている,
ことを特徴とする電子機器。」

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-209992号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下,同様。)

A 「【0014】
以下,本発明の実施例1を図面に基づき説明する。
図4は,携帯電話機10の裏蓋を外し,電池収納部11から電池を取り出した状態を示している。この電池収納部11には,本発明によるICカード用コネクタが設けられ,このICカード用コネクタのコネクタハウジング14には,ICカード12がスライダ13とともに挿入/抜去することができるようになっている。
前記ICカード12は,長さ×幅×厚さ=25mm×15mm×0.5mm程度で,図2に示すように,下面に8個の電極31を有し,かつ,前端の一方部を斜めに切り欠いた切り欠き面32を有するもので,例えば,ヨーロッパ規格品のSIMカードが使用され,内部に記憶されているプログラムソフト,データ等は,当該国固有である。」

B 「【0017】
前記スライダ13は,トレー部33と,このトレー部33の両側から後方に伸びたアーム34が一体に設けられ,前記ICカード12を重ねたとき,その電極31が下面に露出する空間が形成されている。前記各アーム34の先端部には,カードストッパ35が上向きに突出して設けられている。また,これら両側のアーム34の下面には,図1(a)(b)に示すように,先端部にストッパ43が形成され,中間部にテーパーを有するクリック凹凸部44が形成されている。
前記トレー部33の両側には鍔部38が設けられ,かつ,一方の鍔部38には,外側に突出したストッパ50が形成されている。また,前記トレー部33の前端部には,開閉蓋36がヒンジ部39の軸40部分によって中折れ可能に連結されている。この開閉蓋36には,前記ICカード12の形状に合せた収納凹部37となリ,かつ,収納後にICカード12が抜け出ないように鍔部41が形成され,また,開閉蓋36の角部であって,前記ICカード12のもつ切り欠き面32に対応した位置に引き出し取っ手部42が一体に設けられている。」

C 「【0019】
このようにして組み立てられたICカード用コネクタへのICカード12の挿入/抜去について説明する。
ICカード用コネクタのカード挿入口49からスライダ13を抜き出すと,スライダ13のストッパ43が板ばね19に係止して,スライダ13はそれ以上抜き出せない。スライダ13は,抜き出すと,開閉蓋36が自重によりヒンジ部39の部分で折れ曲がり,収納凹部37部分が開口する。この状態でICカード12をスライダ13の収納凹部37に差し込むと,図1(b)の鎖線のように,ICカード12の先端部分がカードストッパ35に当接する。このまま,ICカード12を押し込むと,ICカード12とスライダ13は一体となってICカード用コネクタに挿入され,さらに押し込むと,開閉蓋36が携帯電話機10の開口部に接触しながら挿入されて軸40を支点として持ち上げられ,開閉蓋36の収納凹部37にICカード12が収納される。さらにやや強く押し込むと,クリック凹凸部44が板ばね19を押し下げてクリック感を生じさせ,図1(c)に示すように,クリック凹凸部44のテーパー部分に板ばね19の頂部が係止して携帯電話機10を斜めにしたり,手にとって動かしたりしても,スライダ13が抜け出るのが防止される。
このとき,ICカード12の電極31がコネクタハウジング14の所定のコンタクト20に接触する。
【0020】
ICカード12を取り出すときには,開閉蓋36の引き出し取っ手部42に指の爪等を引っ掛けてスライダ13をやや強く引き出すと,板ばね19の頂部をクリック凹凸部44のテーパー部分で押し下げながら乗り越える。さらに引き出すと,板ばね19がストッパ43に係止してそれ以上引き出されることはない。このとき,ICカード12の電極31がコネクタハウジング14の所定のコンタクト20から離れる。スライダ13をICカード12とともに引き出した後,引き出し取っ手部42から指等を離すと,開閉蓋36は,軸40を支点として自重で下方へ折れ曲がり,ICカード12の端部が露出するので,このICカード12の先端部を指で摘まんで抜き出す。」

D 「【0021】
前記実施例1では,スライダ13の開閉蓋36がトレー部33にヒンジ部39をもって連結し,軸40を支点にして回動して中折れできるようにした。
しかし,これに限られるものではなく,前記コネクタハウジング14におけるトレー部33と開閉蓋36の連結部分に,上向き又は下向きのV溝を形成して屈曲用の肉薄部とし,この肉薄部で中折れ可能にすることができる。」

E 「【図1】



F 「【図4】



2 引用発明

上記A-Fの記載からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「携帯電話機10のICカード用コネクタであって,
前記携帯電話機10の裏蓋を外すと電池が取り出せる電池収納部11に設けられ,前記ICカード用コネクタのコネクタハウジング14には,ICカード12がスライダ13とともに挿入/抜去することができるようになっており,
前記スライダ13は,トレー部33と,前記トレー部33の両側から後方に伸びたアーム34が一体に設けられ,前記ICカード12を重ねたとき,その電極31が下面に露出する空間が形成され,前記各アーム34の先端部には,カードストッパ35が上向きに突出して設けられ,また,両側の前記アーム34の下面には,先端部にストッパ43が形成され,中間部にテーパーを有するクリック凹凸部44が形成されており,
前記トレー部33の両側には鍔部38が設けられ,かつ,一方の前記鍔部38には,外側に突出したストッパ50が形成され,前記トレー部33の前端部には,開閉蓋36がヒンジ部39の軸40部分によって中折れ可能に連結され,前記開閉蓋36には,前記ICカード12の形状に合せた収納凹部37となリ,かつ,収納後にICカード12が抜け出ないように鍔部41が形成され,また,前記開閉蓋36の角部であって,前記ICカード12のもつ切り欠き面32に対応した位置に引き出し取っ手部42が一体に設けられており,
前記ICカード用コネクタへの前記ICカード12の挿入/抜去については,前記ICカード用コネクタのカード挿入口49から前記スライダ13を抜き出すと,前記スライダ13の前記ストッパ43が前記板ばね19に係止して,前記スライダ13はそれ以上抜き出せないようになり,前記スライダ13は,抜き出すと,前記開閉蓋36が自重により前記ヒンジ部39の部分で折れ曲がり,前記収納凹部37部分が開口し,この状態で前記ICカード12を前記スライダ13の前記収納凹部37に差し込むと,前記ICカード12の先端部分が前記カードストッパ35に当接し,このまま,前記ICカード12を押し込むと,前記ICカード12と前記スライダ13は一体となって前記ICカード用コネクタに挿入され,さらに押し込むと,前記開閉蓋36が前記携帯電話機10の開口部に接触しながら挿入されて前記軸40を支点として持ち上げられ,前記開閉蓋36の前記収納凹部37に前記ICカード12が収納され,さらにやや強く押し込むと,前記クリック凹凸部44が前記板ばね19を押し下げてクリック感を生じさせ,前記クリック凹凸部44のテーパー部分に前記板ばね19の頂部が係止して前記携帯電話機10を斜めにしたり,手にとって動かしたりしても,前記スライダ13が抜け出るのが防止され,
前記ICカード12を取り出すときには,前記開閉蓋36の前記引き出し取っ手部42に指の爪等を引っ掛けて前記スライダ13をやや強く引き出し,前記スライダ13を前記ICカード12とともに引き出した後,前記引き出し取っ手部42から指等を離すと,前記開閉蓋36は,前記軸40を支点として自重で下方へ折れ曲がり,前記ICカード12の端部が露出するので,この前記ICカード12の先端部を指で摘まんで抜き出す,
ことを特徴とするICカード用コネクタ。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「ICカード用コネクタ」は,「携帯電話機10の裏蓋を外すと電池が取り出せる電池収納部11に設けられ」,「ICカード12がスライダ13とともに挿入/抜去することができるようになって」いることから,本願発明1の「カード装着構造」に対応するといえる。

イ 引用発明の「ICカード用コネクタのコネクタハウジング14」には,「ICカード12」が「スライダ13とともに挿入/抜去することができるようになって」いることから,引用発明の「コネクタハウジング14」,「ICカード12」は,それぞれ本願発明1の「第1収納部」,「メモリカード」に相当するといえる。
そうすると,引用発明の「ICカード用コネクタ」と本願発明1の「カード装着構造」とは,
“メモリカードを挿脱可能に収納する第1収納部”を備える点で一致するといえる。

ウ 引用発明では,「コネクタハウジング14」に「ICカード12がスライダ13とともに挿入/抜去することができるようになって」いることから,引用発明の「スライダ13」は本願発明1の「カード着脱補助部材」に対応するといえる。
そして,引用発明の「スライダ13」は,「トレー部33」と「開閉蓋36」を有し,「トレー部33」は,「トレー部33の両側から後方に伸びたアーム34が一体に設けられ,前記ICカード12を重ねたとき,その電極31が下面に露出する空間が形成され,前記各アーム34の先端部には,カードストッパ35が上向きに突出して設けられ」,「前記トレー部33の前端部には,開閉蓋36がヒンジ部39の軸40部分によって中折れ可能に連結され,前記開閉蓋36には,前記ICカード12の形状に合せた収納凹部37とな」ることから,引用発明の「トレー部33」,「開閉蓋36」,「ヒンジ部39」は,それぞれ本願発明1の「補助本体部」,「開閉部」,「ヒンジ部」に相当するといえる。
また,引用発明の「開閉蓋36」は,「前記ICカード12を取り出すときには」,「スライダ13を前記ICカード12とともに引き出した後,前記引き出し取っ手部42から指等を離すと,前記開閉蓋36は,前記軸40を支点として自重で下方へ折れ曲がり,前記ICカード12の端部が露出する」ことから,引用発明の「開閉蓋36」はヒンジ部を中心とした回転の向きが本願発明1の「開閉部」と相違するが,“第1収納部から引き出された際に,ヒンジ部を中心に回転して開く”点で共通するといえる。
そうすると,引用発明の「ICカード用コネクタ」と本願発明1の「カード装着構造」とは,後記の点で相違するものの,
“前記第1収納部にスライド可能に設けられ,着脱操作時に前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材”を備え,“前記カード着脱補助部材は,前記メモリカードを前記第1収納部から引き出す補助本体部と,前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,ヒンジ部を中心に回転して開く開閉部と,を有”する点で一致するといえる。

エ 引用発明の「ICカード用コネクタ」は,「携帯電話機10の裏蓋を外すと電池が取り出せる電池収納部11に設けられ」,「ICカード用コネクタへの前記ICカード12の挿入/抜去については,前記ICカード用コネクタのカード挿入口49から前記スライダ13を抜き出す」ことから,引用発明の「電池収納部11」,「裏蓋」は,それぞれ本願発明1の「第2収納部」,「開閉蓋」に相当するといえる。
また,上記Fの図4の記載からすると,引用発明の「電池収納部11」は“所定の開閉蓋で開口部が覆われるとともに所定の深さを有”すること,「電池収納部11」の“側面からメモリカードを挿脱可能に設けられて”いることは明らかである。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,
“第1収納部は,所定の開閉蓋で開口部が覆われるとともに所定の深さを有した第2収納部の側面から前記メモリカードを挿脱可能に設けられて”いる点で一致するといえる。

オ 引用発明の「開閉蓋36」は,「前記開閉蓋36の角部であって,前記ICカード12のもつ切り欠き面32に対応した位置に引き出し取っ手部42が一体に設けられて」おり,「前記ICカード12を取り出すときには,前記開閉蓋36の前記引き出し取っ手部42に指の爪等を引っ掛けて前記スライダ13をやや強く引き出」すことから,引用発明の「引き出し取っ手部42」は本願発明1の「引出操作部」に相当するといえ,引用発明の「引き出し取っ手部42」は「ICカード用コネクタ」に対して「スライダ13」を“スライドさせるため”に「開閉蓋36」に設けられているといえる。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記の点で相違するものの,
“開閉部は,前記第1収納部に対して前記カード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部が設けられて”いる点で一致するといえる。

カ 引用発明の「引き出し取っ手部42」に関して,「前記ICカード12を取り出すときには,前記開閉蓋36の前記引き出し取っ手部42に指の爪等を引っ掛けて前記スライダ13をやや強く引き出」すこと,および,上記Eの図1(c)の記載からすると,「スライダ13」が「ICカード用コネクタ」に挿入されているときに「裏蓋」を外すと,引用発明の「引き出し取っ手部42」は“開口部側から視認可能な位置に設けられている”ことは明らかである。
そうすると,引用発明と本願発明1とは,後記の点で相違するものの,
“引出操作部は,少なくとも,前記カード着脱補助部材が前記メモリカードと共に前記第1収納部に収納されている状態のときであって前記開口部が前記開閉蓋から開放されている状態のときに,前記開口部側から視認可能な位置に設けられている”点で一致するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 メモリカードを挿脱可能に収納する第1収納部と,
前記第1収納部にスライド可能に設けられ,着脱操作時に前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材と,
を備え,
前記カード着脱補助部材は,前記メモリカードを前記第1収納部から引き出す補助本体部と,前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,ヒンジ部を中心に回転して開く開閉部と,を有し,
前記第1収納部は,所定の開閉蓋で開口部が覆われるとともに所定の深さを有した第2収納部の側面から前記メモリカードを挿脱可能に設けられており,
前記開閉部は,前記第1収納部に対して前記カード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部が設けられており,
前記引出操作部は,少なくとも,前記カード着脱補助部材が前記メモリカードと共に前記第1収納部に収納されている状態のときであって前記開口部が前記開閉蓋から開放されている状態のときに,前記開口部側から視認可能な位置に設けられている,
ことを特徴とするカード装着構造。」

(相違点)
(相違点1)
カード着脱補助部材に関し,本願発明1では,「カード着脱補助部材」が着脱操作時にメモリカードを覆った状態で,前記メモリカードと共にスライドするものであって,第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部を有するのに対して,
引用発明では,「スライダ13」が「ICカード用コネクタ」から引き出された際に,ヒンジ部を中心に回転して開く「開閉蓋36」を有するものの,「開閉蓋36」が第1収納部から引き出された際に,メモリカードを覆った状態で引き出され,「開閉蓋36」が前記引き出された側に位置するメモリカードの一部を露出させるように回転することは特定されていない点。

(相違点2)
開閉部に関し,本願発明1の「開閉部」は,第1収納部に対してカード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部として「孔部」が設けられているとともに,開口部側に開くように設けられているのに対して,
引用発明では,「開閉蓋36」に第1収納部に対してカード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部としての「引き出し取っ手部42」が設けられているものの,「孔部」が設けられるとともに,開口部側に開くように設けられることについては特定されていない点。

(相違点3)
引出操作部に関し,本願発明1の引出操作部として「孔部」が開口部側から視認可能な位置に設けられているのに対して,
引用発明では,「引き出し取っ手部42」が開口部側から視認可能な位置に設けられているものの,引出操作部として「孔部」が開口部側から視認可能な位置に設けられることについては特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
上記相違点1について検討すると,引用発明の「開閉蓋36」は,「さらに押し込むと,前記開閉蓋36が前記携帯電話機10の開口部に接触しながら挿入されて前記軸40を支点として持ち上げられ,前記開閉蓋36の前記収納凹部37に前記ICカード12が収納され」,「スライダ13を前記ICカード12とともに引き出した後,前記引き出し取っ手部42から指等を離すと,前記開閉蓋36は,前記軸40を支点として自重で下方へ折れ曲がり,前記ICカード12の端部が露出する」ところ,「開閉蓋36」が第1収納部から引き出された際に,「軸40」を支点として自重で下方へ折れ曲がり,メモリカードの端部が露出するものであり,これに代えて,「開閉蓋36」が第1収納部から引き出された際に,メモリカードを覆った状態で引き出され,「開閉蓋36」が前記引き出された側に位置するメモリカードの一部が露出するように操作者が回転させるものに変更することへの動機付けがあるとはいえない。
加えて,カード着脱補助部材が第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部を有する旨の技術が,本願出願前に当該技術分野において周知技術であったとはいえず,当業者が適宜に選択し得た設計的事項であるとすることもできない。
そうすると,引用発明において,カード着脱補助部材が着脱操作時にメモリカードを覆った状態で,前記メモリカードと共にスライドするものであって,第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部を具備させること,すなわち,本願発明1の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

イ 相違点2,3について
事案に鑑み上記相違点2,3についてあわせて検討すると,引用発明は,「開閉蓋36」に第1収納部に対してカード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部としての「引き出し取っ手部42」が設けられるところ,「開閉蓋36」の「引き出し取っ手部42」に「孔部」が設けられることは特定されておらず,また,引用文献1にそのような「孔部」が,開口部側から視認可能な位置に,開口部側に開くように設けられることについては記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明において,開閉部に,第1収納部に対してカード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部として孔部を設けるとともに,開口部側に開くように設け,さらに,カード着脱補助部材がメモリカードと共に前記第1収納部に収納されている状態のときであって開口部が開閉蓋から開放されている状態のときに,開口部側から視認可能な位置に設けること,すなわち,本願発明1の上記相違点2,3に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。

ウ まとめ
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の
“「第1収納部にスライド可能に設けられ,着脱操作時に前記メモリカードを覆った状態で,前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材」を備え,「前記カード着脱補助部材は,前記メモリカードを前記第1収納部から引き出す補助本体部と,前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部」を有する”(以下,「相違点1に係る構成」という。)
と同一の構成を備え,
また,“前記開閉部は,前記第1収納部に対して前記カード着脱補助部材をスライドさせるための引出操作部として孔部が設けられているとともに,前記開口部側に開くように設けられており,
前記孔部は,少なくとも,前記カード着脱補助部材が前記メモリカードと共に前記第1収納部に収納されている状態のときであって前記開口部が前記開閉蓋から開放されている状態のときに,前記開口部側から視認可能な位置に設けられている,”(以下,「相違点2,3に係る構成」という。)
と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1-5の「カード装着構造」のいずれかを備えた「電子機器」の発明であり,本願発明1の「相違点1に係る構成」および「相違点2,3に係る構成」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要および原査定についての判断
原査定は,請求項1-8について上記引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
しかしながら,令和元年10月18日付け手続補正により補正された請求項1-6は,それぞれ「相違点1に係る構成」および「相違点2,3に係る構成」と同一の構成を有するものとなっており,
上記のとおり,本願発明1-6は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第2号について>
1 当審では,請求項1の「カード着脱補助部材」について,「前記第1収納部にスライド可能に設けられ,前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年10月18日付けの手続補正により,「前記第1収納部にスライド可能に設けられ,着脱操作時に前記メモリカードを覆った状態で,前記メモリカードと共にスライドするカード着脱補助部材」のように補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項1を引用する請求項2-6についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

2 当審では,請求項1の「開閉部」について,「前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記カード収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させる方向に回動可能に開く開閉部」が特定する事項が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年10月18日付けの手続補正により,「前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,前記引き出された側に位置する前記メモリカードの一部を露出させるようにヒンジ部を中心に回転して開く開閉部」のように補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項1を引用する請求項2-6についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

3 当審では,請求項1の「前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記カード収納部から引き出された際に,」が特定されるところ,ここでの「カード収納部」は前記されておらず,「前記カード収納部」は「前記第1収納部」の誤記であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年10月18日付けの手続補正により,請求項1が「前記メモリカードが前記補助本体部と共に前記第1収納部から引き出された際に,」のように補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項1を引用する請求項2-6についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

4 当審では,請求項2の「前記開閉部は,前記メモリカードを前記カード収納部内に押し込む押込み部を有している,」が特定されるところ,ここでの「カード収納部」は前記されておらず,「前記カード収納部」は「前記第1収納部」の誤記であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和元年10月18日付けの手続補正により,請求項2が「前記開閉部は,前記メモリカードを前記第1収納部内に押し込む押込み部を有している,」のように補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
また,請求項2を引用する請求項3-6についても同様に,補正によりこの拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-6は,当業者が引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-12-09 
出願番号 特願2014-177668(P2014-177668)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
P 1 8・ 537- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 甲斐 哲雄  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 西出 隆二
辻本 泰隆
発明の名称 カード装着構造および電子機器  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ