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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1358416
審判番号 不服2018-9728  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-13 
確定日 2020-01-21 
事件の表示 特願2015-191106「松樹皮抽出物含有組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-185941、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月29日の出願(優先権主張 平成27年3月27日)であって、平成29年1月30日付けで拒絶理由の通知がされ、同年3月31日付けで手続補正書及び意見書が提出され、同年8月28日付けで2回目の拒絶理由の通知がされ、同年11月2日付けで手続補正書及び意見書が提出され、平成30年4月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年7月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、令和1年8月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の通知及び審尋がされ、同年10月31日付けで手続補正書及び意見書並びに審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」といい、これらをまとめて「本願発明」ともいう。)は、令和1年10月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
松樹皮抽出物を含有する、関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和するための組成物(ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く。)。
【請求項2】
軟骨保護用である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
歩行機能維持用である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
関節に異常を有する者又は中高年者に用いられる組成物である、請求項1?3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ロコモケア用である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ロコモティブ症状緩和用である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
関節部位の運動時違和感の緩和用である請求項1に記載の組成物。」

第3 当審拒絶理由の概要及び当審拒絶理由についての判断
(1)当審拒絶理由では、この出願は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとして、以下の点を指摘した。
なお、当審拒絶理由の対象は、平成30年7月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載される請求項1?6に係る発明である。

請求項1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和することによる軟骨保護用組成物」なる記載における「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和することによる」が、「軟骨保護用組成物」という医薬用途の作用機序を単に付記しているものであるのか、それとも、「軟骨保護用組成物」を、「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和するための組成物」という特定の医薬用途に更に限定するものであるのかが明らかではないから、請求項1に係る発明は明確とはいえない。
また、「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和することによる」各種組成物に係るものである請求項2、4?6に係る発明についても同様に明確といえないし、請求項1又は2を引用する請求項3に係る発明も同様である。

(2)当審拒絶理由について検討すると、令和1年10月31日付けの手続補正書により、補正後の本願発明1が「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和するため」という特定の医薬用途のための組成物の発明であることが明らかとなった。
また、請求項1を引用する本願発明2?7についても、医薬用途を限定する発明であることが明らかとなった。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第4 原査定の拒絶理由の概要
原査定(平成30年4月6日付け拒絶査定)の拒絶理由の概要は次のとおりである。
なお、原査定の拒絶理由の対象は、平成29年11月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載の請求項1?6に係る発明である。

(1)(新規性)本願の請求項1、3に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、以下の引用文献3、4、7、8、11又は12に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)本願の請求項1?6に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、以下の引用文献3、4、7、8、11又は12に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献>
3.国際公開第2008/139314号
4.国際公開第2007/006519号
7.Phytotherapy Res.,2008,Vol.22,pp.1087?1092
8.Nutrition Research,2007,Vol.27,pp.692?697
11.フードスタイル21,2008,Vol.12,No.4,pp.89?91
12.J.Nutr.Sci.Vitaminol.,2011,Vol.57,pp.251?257
(なお、この審決においては、引用文献の番号は、原査定におけるものをそのまま採用した。)

第5 原査定の拒絶理由(新規性及び進歩性)についての判断
以下においては、引用文献ごとに、原査定の拒絶理由についての判断を示す。
引用文献3、4、7、8、11又は12はいずれも、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献であるが、このうち、引用文献3、4、7、8、12は、外国語で記載された文献であるので、これらの引用文献の記載事項については、当審合議体による訳文で記載する。

1.引用文献3に基づく拒絶理由について
(1)引用文献3の記載事項及び引用発明3
引用文献3には以下の記載がある。(なお、下線は当審合議体が付した。この審決中で以下同様である。)

「請求の範囲
・・・
25.タンパク質分解酵素阻害剤、リシンおよびプロリン、ヒドロキシプロリン、コラーゲン、コラーゲン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数からなる構成要素を備える、脊椎動物において関節障害を治療するための組成物。
・・・
30.関節疾患は、関節炎である請求項25に記載の組成物。
31.関節炎は変形性関節症または慢性関節リウマチである請求項30に記載の組成物。
32.タンパク質分解酵素は、コラゲナーゼ、エラスターゼ、グリコシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、β-グルクロニダーゼ及びこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質分解酵素の作用を阻害するものである請求項25に記載の組成物。
33.前記1つまたは複数の構成要素は、プロリン、ヒドロキシプロリンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである請求項25に記載の組成物。
34.蛋白質分解酵素阻害剤は、プロアントシアニジンを含むものである請求項25-33のいずれか1項に記載の組成物。
35.プロアントシアニジンは、植物材料からの抽出物あるいは合成物である請求項34に記載の組成物。
・・・
37.プロアントシアニジンは松樹皮抽出物である請求項35に記載の組成物。」

また、引用文献3の実施例1(13頁21行?18頁最下行)には、膝変形性関節症の患者を対象として、ピクノジェノール(登録商標)(これは、7頁12?16行に記載のとおり、海岸松樹皮からの抽出物であって、プロアントシアニジンを含む)、リジン及びプロリンを組み合わせて治療を行う二重盲検試験の方法とその結果が記載されており、その結果を受けて、18頁の4?5行には、「この研究は、リジンとプロリンとプロアントシアニジン濃縮物との組み合わせが変形性関節症の臨床症状を低下させたことを明らかに示すものであった。」と記載されている。

上記記載によれば、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「タンパク質分解酵素阻害剤であるプロアントシアニジン含有松樹皮抽出物、リジン及びプロリンを含む、脊椎動物において変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎を治療するための組成物。」

(2)本願発明1と引用発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3における「タンパク質分解酵素阻害剤であるプロアントシアニジン含有松樹皮抽出物」は、本願発明1における「松樹皮抽出物」に相当する。
(イ)本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」も引用発明3の「変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎」も「関節の疾患」といえるから、引用発明3の「変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎」は、「関節の疾患」である限りにおいて、本願発明1と一致する。
また、本願発明1の組成物は、「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性を緩和するため」のものであるところ、「緩和」とは、「きびしい状態がやわらぐこと」、「ゆるめたり、やわらげたりすること」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味し、一方、引用発明3の組成物は、「治療」のためのものであり、引用発明3において、「治療」により、変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎の症状はやわらぐから、引用発明3の「治療」は、本願発明1の「緩和」に相当するといえる。
そうすると、引用発明3の「変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎を治療するための組成物」は、本願発明1の「関節の疾患を緩和するための組成物」に相当するといえる。
してみると、本願発明1と引用発明3との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「松樹皮抽出物を含有する、関節の疾患を緩和するための組成物。」
<相違点1>
関節の疾患を緩和するための松樹皮抽出物含有組成物について、本願発明1では「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」を緩和するためのものであって、「ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く」との条件を満足するものであることが特定されているのに対し、引用発明3では、「変形性関節症または慢性関節リウマチである関節炎」を治療するためのものであることが特定されている点。

新規性進歩性についての判断
(ア)まず、新規性について検討する。
相違点1に関し、引用発明3に関節障害として特定される変形性関節症及び慢性関節リウマチはいずれも、関節軟骨の組織学的変性を伴う疾患であるが、「関節炎」と記載されるとおり、関節の炎症を伴う疾患である。このことは、技術常識を示す文献として提示する「メルクマニュアル 第18版 日本語版」(日経BP社発行、2007年4月25日初版第3刷、298頁「34 関節疾患」の項目?301頁右欄の「鑑別診断」の項目、311?314頁の「変形性関節症」の項目)の、298頁左欄下から1行?右欄下から3行に、「関節疾患は炎症性であるか(関節リウマチ・・・)または比較的に軽い炎症性である(変形性関節症・・)こともある。」と記載され、同文献312頁右欄15?22行に、変形性関節症に「全ての関節組織は,変形性関節症を発症しうる。・・・関節滑膜は炎症を起こし,肥厚して粘性の低い関節液を生成し,体積が増える。」と記載されていることからも明らかである。
つまり、本願発明1と引用発明3は、組成物を適用する緩和対象となる疾患が、前者が「関節の炎症を伴わない」関節の疾患であるのに対して、後者は、「関節の炎症を伴う」関節の疾患である点で少なくとも相違している。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本願発明1について、引用発明3、つまり、引用文献3に記載された発明であるということはできない。

(イ)次に、進歩性について検討する。
相違点1に関し、引用文献3には、引用発明3のプロアントシアニジン松樹皮抽出物を含む組成物が、「関節の炎症を伴わない」関節軟骨の組織学的変性の緩和に有用であることを示唆する記載はない。そうすると、当業者は、引用発明3及び引用文献3の記載から、相違点1に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。

また、本願発明の効果に関し、本願明細書には、例1(【0056】?【0066】及び図1)に、松樹皮抽出物の関節疼痛に対する作用についての試験結果が記載され、モノヨード酢酸誘発関節炎モデルラットに、松樹皮抽出物(東洋新薬社;フラバンジェノール(登録商標))を1日1回21日間強制経口投与して、Von Frey式痛覚測定装置による疼痛閾値測定を実施したところ、松樹皮抽出物(FVG)を用いた場合、1週目から有意に疼痛が抑制され(【0066】)、また、モノヨード酢酸投与後2週間後及び3週間後においても1週間後と同様に、有意に疼痛が抑制されたことが示されている(図1)。
さらに、例2(【0067】?【0070】、図2及び図3)には、松樹皮抽出物による関節軟骨の組織学的変性度に対する作用についての試験結果が示されており、例1と同様のモノヨード酢酸誘発関節炎モデルラットに松樹皮抽出物を1日1回7日間強制経口投与し、7日後に解剖を行い、ラットの膝関節組織の関節軟骨の組織学的変性度をMankin法で評価し、スコア化してMankin Scoreを得たところ、関節軟骨の組織学的変性度が有意に緩和され、その程度は、抗関節炎剤として知られているジクロフェナクよりも大きかったことが示されている。

ここで、例1及び例2試験におけるモノヨード酢酸により誘発される関節軟骨の組織学的変性に関し、本願の優先日当時の技術常識を示すBeyreuther et al.,Arthritis Research&Therapy,2007,Vol.9,No.1(http://arthritis-research.com/content/9/1/R14)(以下、「参考資料」という。)の1頁の「Introduction」の、第3段落には、「変形性関節症の病理学における薬の特性分析のために最も特徴付けられたラットモデルは、代謝阻害剤であるモノヨード酢酸ナトリウム(MIA)の関節への注入を行うものであり、MIAは軟骨細胞におけるグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの活性を阻害し、結果として解糖の破壊をもたらし、最終的には細胞死をもたらす。」と記載されている。(なお、参考資料は外国語の文献であるので、記載事項の指摘は当審合議体による訳文で示している。)
また、参考資料の2頁左欄の「Development of osteoarthritis in the rat」の項目に「MIA注射5日後まで、このモデルでは滑膜関節の実質的な炎症が観察された。」と記載され、5頁右欄1段落(「Discussion」の項目の2段落目)に「変形性関節症のヨード酢酸ラットモデルでは初期の期間、一過性の滑膜炎症がある。MIA処置の1週間後、関節の炎症は解消されており、痛みの感覚は、関節軟骨と軟骨下骨に影響を与える生体力学的力によって引き起こされる可能性が高くなる。」と記載されている。
参考資料のこれらの記載によれば、モノヨード酢酸(MIA)誘発関節炎モデルラットは、モノヨード酢酸により軟骨細胞の細胞死が引き起こされて、関節軟骨中の軟骨細胞が減少する病態のモデルであり、このモデルにおいては、一過性の炎症が起こるが、炎症はMIA投与1週間後には解消され、それ以降の痛みは、関節軟骨と軟骨下骨に影響を与える生体力学的力によって引き起こされる可能性が高くなることが技術常識であるといえる。
そして、かかる技術常識を踏まえ、本願明細書の例1、2におけるモノヨード酢酸(MIA)誘発関節炎モデルラットを使用した試験の結果を検討するに、当業者は、本願明細書の例2においては、モノヨード酢酸誘発関節炎モデルラットへの松樹皮抽出物の投与により、炎症が治まった状態のMIA投与7日後において、関節軟骨の組織学的変性度が緩和された状態であるとの結果が示されており、かつ、例1において、MIA処置1週間後以降2週間目、3週間目の炎症が治まった状態での疼痛が松樹皮抽出の投与により抑制されているのは、関節軟骨と軟骨下骨に影響を与える生体力学的力によって引き起こされる疼痛、つまり、関節軟骨の組織学的変性による疼痛が抑制されていることが示されていると理解するもの、つまり、例1(図1)において、2週目以降、コントロールとは対照的に徐々に痛みが緩和されていくのは、松樹皮抽出物の投与により、関節軟骨の組織学的変性が緩和されている結果であると理解するものと解される。
そうすると、当業者は、本願明細書の例1及び2の記載から、松樹皮抽出物を投与することで関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性が緩和できることを理解するといえるところ、この本願発明の効果は、引用文献3からは示唆されない効果である。

以上のとおりであるから、本願発明1について、引用発明3に基いて当業者が容易に発明することができたものであるということはできない。

(ウ)よって、本願発明1について、引用文献3に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(3)本願発明2?7について
本願発明2?7は、いずれも、請求項1を引用する請求項に係る発明であって、いずれも、本願発明1の構成を備えるものであるから、上記(2)において、本願発明1について説示したと同様の理由により、本願発明2?7は、引用文献3に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。

2.引用文献4に基づく拒絶理由について
(1)引用文献4の記載事項及び引用発明4
引用文献4には以下の記載がある。
「1.本質的にプロアントシアニジンからなる組成物の治療有効量を患者に投与する工程を備える、患者の変形性関節症を治療するための方法。
・・・
7.プロアントシアニジンは、植物材料からの抽出物である、請求項1記載の方法。
8.プロアントシアニジンは、松樹皮抽出物からのものである、請求項7記載の方法。」

また、引用文献4の実施例(7頁1行?12頁12行)には、膝変形性関節症の患者を対象とした臨床試験であって、ピクノジェノール(登録商標)(これは、4頁28?30行に記載のとおり、海岸松樹皮からの抽出物であって、プロアントシアニジンを含む。)を投与して治療を行う方法とその結果が記載されており、その結果を受けて、12頁の2?3行には、「この研究は、プロアントシアニジン濃縮物が変形性関節症の臨床症状を低下させたことを明らかに示すものであった。」と記載されている。

上記記載によれば、上記引用文献4には、変形性関節症を治療するための方法において使用される組成物として、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「患者の変形性関節症を治療するための方法に使用される組成物であって、松樹皮抽出物からの抽出物である、本質的にプロアントシアニジンからなる組成物。」

(2)本願発明1と引用発明4との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明4とを対比する。
(ア)引用発明4における「松樹皮抽出物からの抽出物である、本質的にプロアントシアニジンからなる組成物」は、本願発明1における「松樹皮抽出物」に相当する。
(イ)本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」も引用発明3の「変形性関節症」も「関節の疾患」といえるから、引用発明4の「患者の変形性関節症」は、「関節の疾患」である限りにおいて、本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」と一致する。
また、上記1.(2)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、引用発明4の「治療」は本願発明1の「緩和」に相当するといえる。そうすると、引用発明4の「患者の変形性関節症を治療するための方法に使用される組成物」は、本願発明1の「関節の疾患を緩和するための組成物」に相当するといえる。
してみると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「松樹皮抽出物を含有する、関節の疾患を緩和するための組成物。」
<相違点2>
関節の疾患を緩和するための松樹皮抽出物含有組成物について、本願発明1では「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」を緩和するためのものであって、「ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く」との条件を満足するものであることが特定されているのに対し、引用発明4では、「変形性関節症」を治療するためのものであることが特定されている点。

新規性進歩性についての判断
(ア)まず、新規性について検討すると、上記1.(2)イ(ア)において本願発明1と引用発明3との相違点1に関して説示したとおり、変形性関節症は関節軟骨の組織学的変性を伴う関節の炎症を伴う疾患であり、本願発明1と引用発明4の組成物は、その緩和対象となる疾患が、前者が「関節の炎症を伴わない」関節の疾患であるのに対して、後者は、「関節の炎症を伴う」関節の疾患である点で相違している。
そうすると、少なくとも対象となる疾患が異なる点で上記相違点2は実質的な相違点である。
よって、本願発明1について、引用発明4、つまり、引用文献4に記載された発明であるということはできない。

(イ)次に、進歩性について検討する。
相違点2に関し、引用文献4には、引用発明4の組成物が、「関節の炎症を伴わない」関節軟骨の組織学的変性の緩和に有用であることを示唆する記載はない。そうすると、当業者は、引用発明4及び引用文献4の記載から、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
また、本願明細書の記載からは、技術常識を踏まえれば、上記1.(2)イ(イ)において説示したとおり、本願発明により、松樹皮抽出物を投与することで関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性が緩和できるという効果が奏されることが理解できるといえるが、この本願発明の効果は引用文献4からは示唆されない効果である。
よって、本願発明1について、引用発明4に基いて当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。

(ウ)以上のとおり、本願発明1について、引用文献4に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
請求項1を引用する請求項に係る発明である本願発明2?7についても同様である。

3.引用文献7に基づく拒絶理由について
(1)引用文献7の記載事項及び引用発明7
引用文献7には以下の記載がある。
・タイトル
「海岸松樹皮抽出物(ピクノジェノール(登録商標))の変形性膝関節症に対する効果」
・要約
「目的:他の炎症性疾患におけピクノジェノール(登録商標)(フランス海岸松樹皮抽出物)の安全かつ有効な使用は、変形性関節症(OA)患者における抗炎症効果の研究を促した。
この研究の目的は、二重盲検プラセボ対照無作為割付け試験においてピクノジェノール(登録商標)がOAの症状を軽減するかどうかを、膝変形性関節症ステージI及びIIに罹患した患者で評価することであった。
方法:100人の患者を、1日あたり食事中150mgのピクノジェノール又はプラセボのいずれかで3ヶ月間治療した。患者は、試験期間中に予め処方された抗炎症薬の使用の変化を報告しなければならなかった。患者は、2週間ごとに変形性関節症に関するウェスタンオンタリオ及びマクマスター大学(WOMAC)質問票を記入し、痛み強度の視覚的アナログスケールを用いて毎週の疼痛症状を評価した。
結果:ピクノジェノール(登録商標)を用いた患者の治療後、WOMAC指数の改善(p<0.05)、視覚アナログスケールによる痛みの有意な軽減(p<0.04)はあったが、プラセボは効果がなかった。鎮痛剤の使用は、正味群では減少したが、プラセボでは増加した。ピクノジェノールによる治療は十分に許容された。
結論:結果は、ピクノジェノールが、軽度から中等度のOA患者の症状を改善し、NSAIDを倹約できることを示している。」
(なお、上記において「(登録商標)」の記載は、原文では○の中に「R」と記載されているが、この審決では表記できないため上記のとおり記載した。)

上記引用文献7の記載によれば、上記引用文献7には次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。

「海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノール(登録商標)からなる膝変形性関節症改善剤。」

(2)本願発明1と引用発明7との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明7とを対比する。
(ア)引用発明7における「海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノール(登録商標)」は、本願発明1における「松樹皮抽出物」に相当する。
(イ)本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」も引用発明7の「膝変形性関節症」も「関節の疾患」といえるから、引用発明7の「膝変形性関節症」は、「関節の疾患」である限りにおいて、本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」と一致する。
また、引用発明7において膝変形性関節症が「改善」すれば膝変形性関節症状はやわらぐから、引用発明7の「改善」は、本願発明1の「緩和」に相当するといえる。
そうすると、引用発明7の「膝変形性関節症改善剤」は、本願発明1の「関節の疾患を緩和するための組成物」に相当するといえる。
してみると、本願発明1と引用発明7との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「松樹皮抽出物を含有する、関節の疾患を緩和するための組成物。」
<相違点3>
関節の疾患を緩和するための松樹皮抽出物含有組成物について、本願発明1では「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」を緩和するためのものであって、「ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く」との条件を満足するものであることが特定されているのに対し、引用発明7では、「膝変形性関節症」を改善するためのものであることが特定されている点。

新規性進歩性についての判断
(ア)まず、新規性について検討すると、上記1.(2)イ(ア)において本願発明1と引用発明3との相違点1に関して説示したとおり、膝変形性関節症は関節軟骨の組織学的変性を伴う関節の炎症を伴う疾患であり、本願発明1と引用発明7の組成物は、その緩和対象となる疾患が、前者が「関節の炎症を伴わない」関節の疾患であるのに対して、後者は、「関節の炎症を伴う」関節の疾患である点で相違している。
そうすると、少なくとも対象となる疾患が異なる点で上記相違点3は実質的な相違点である。
よって、本願発明1について、引用発明7、つまり、引用文献7に記載された発明であるということはできない。

(イ)次に、進歩性について検討する。
相違点3に関し、引用文献7には、引用発明7の組成物が、「関節の炎症を伴わない」関節軟骨の組織学的変性の緩和に有用であることを示唆する記載はない。そうすると、当業者は、引用発明7及び引用文献7の記載から、相違点3に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
また、本願明細書の記載からは、技術常識を踏まえれば、上記1.(2)イ(イ)において説示したとおり、本願発明により、松樹皮抽出物を投与することで関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性が緩和できるという効果が奏されることが理解できるといえるが、この本願発明の効果は引用文献7からは示唆されない効果である。
よって、本願発明1について、引用発明7に基いて当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。

(ウ)以上のとおり、本願発明1について、引用文献7に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
請求項1を引用する請求項に係る発明である本願発明2?7についても同様である。

4.引用文献8に基づく拒絶理由について
(1)引用文献8の記載事項及び引用発明8
引用文献8には以下の記載がある。
・タイトル
「ピクノジェノールの補給は、膝変形性関節症の大人における痛みとこわばりを軽減し、身体機能を改善する。」
・要約
「膝変形性関節症(OA)は、一般的な変性関節障害であり、痛みと障害の主な原因である。この研究の目的は、フラボノイドが豊富な栄養補助食品であるピクノジェノール(Horphag Research、Ltd、スイス、ジュネーブ)が膝OAの症状に及ぼす潜在的な影響を調査することであった。37人の変形性関節症患者が、並行群デザインによる無作為化二重盲検プラセボ対照試験に登録された。患者は、プラセボまたはピクノジェノールの錠剤(50mg、1日3回)を盲検方式で3か月間投与された。変形性関節症の臨床症状は、ウエスタンオンタリオとマクマスター大学(WOMAC)変形性関節症指数で毎月評価された。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)または選択的シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)阻害剤の使用も評価された。ピクノジェノール群では、治療の60日目と90日目に、痛みと身体機能の合計WOMACスコアとWOMACサブスケールスコアに有意な改善が見られた。90日目に、ピクノジェノール群では、自己申告による疼痛、硬直、身体機能、複合WOMACスコアの43%、35%、52%、49%の有意な減少がそれぞれ報告されたが、プラセボ群では有意な減少は見られなかった。NSAIDまたはCOX-2阻害薬の使用量と頻度はプラセボ群で増加し、ピクノジェノール群では有意に少なかった。この研究の結果は、変形性関節症の症状を緩和し、NSAIDまたはCOX-2阻害剤投与の必要性を減らすことにおけるピクノジェノールの有効性を示している。ピクノジェノールのこの有益な効果は、その抗酸化および抗炎症特性による可能性がある。この明らかな効果に関連する根本的なメカニズムを特定するには、さらなる研究が必要である。」
・69頁左欄1?2行
「ピクノジェノールは、フランス海岸松(pinus maritina)の標準化された樹皮抽出物である。」

上記記載によれば、上記引用文献8には次の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。(なお、以下の「(登録商標)」との記載は合議体が付した。)

「海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノール(登録商標)からなる膝変形性関節症緩和剤。」

(2)本願発明1と引用発明8の対比・判断
上記3.における本願発明1と引用発明7との対比を踏まえて本願発明1と引用発明8を対比すると、本願発明1と引用発明8とは、上記3.(2)アで記載した一致点で一致し、同相違点3で相違する。
そして、相違点3についての新規性及び進歩性の判断は、上記3.(2)イ(ア)及び(イ)で記載したとおりであり、本願発明1について、引用文献8に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
請求項1を引用する請求項に係る発明である本願発明2?7についても同様である。

5.引用文献11に基づく拒絶理由について
(1)引用文献11の記載事項及び引用発明11
引用文献11には以下の記載がある。
・90頁左欄「ピクノジェノール(登録商標)の骨関節炎に対する臨床データ」の項目の1段落
「骨関節炎に関する臨床試験は既に3つの試験が行われた。この試験に全部で296人の変形性関節症患者が参加し、二重盲検プラセボ比較臨床試験法で行われた。症状は国際的に使用されたWOMAC指数(Western Ontario and McMasters Universities Index of Osteoarthritis)にて評価された。結果として、ピクノジェノール(登録商標)摂取により、関節痛の上に、関節硬直、関節の機能及びWOMAC総合スコアが改善した。プラセボ群には有意な改善は見られなかった。また、この試験では、鎮痛剤の服用量も測った。ピクノジェノール(登録商標)群において、ピクノジェノール(登録商標)摂取で炎症や疼痛が改善され、鎮痛剤の服用量が有意に減ったが、プラセボ群では鎮痛剤の摂取量が逆に増量した。」

・89頁の欄外脚注
「ピクノジェノール(登録商標)は、フランス海岸松樹皮抽出物」
(なお、上記において「(登録商標)」の記載は、原文では○の中に「R」と上付き文字で記載されているが、この審決では表記できないため上記のとおり記載した。また、参照文献番号を示す上付き文字の記載は省略した。)

上記記載によれば、上記引用文献11には次の発明(以下、「引用発明11」という。)が記載されていると認められる。

「フランス海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノール(登録商標)からなる骨関節炎である変形性関節症改善剤。」

(2)本願発明1と引用発明11の対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明11とを対比する。
(ア)引用発明11における「フランス海岸松樹皮抽出物であるピクノジェノール(登録商標)」は、本願発明1における「松樹皮抽出物」に相当する。
(イ)本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」も引用発明11の「骨関節炎である変形性関節症」も「関節の疾患」といえるから、引用発明11の「骨関節炎である変形性関節症」は、「関節の疾患」である限りにおいて、本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」と一致する。
また、上記3.(2)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、引用発明11の「改善」は、本願発明1の「緩和」に相当するといえる。
そうすると、引用発明11の「骨関節炎である変形性関節症改善剤」は、本願発明1の「関節の疾患を緩和するための組成物」に相当するといえる。 してみると、本願発明1と引用発明11との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「松樹皮抽出物を含有する、関節の疾患を緩和するための組成物。」
<相違点4>
関節の疾患を緩和するための松樹皮抽出物含有組成物について、本願発明1では「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」を緩和するためのものであって、「ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く」との条件を満足するものであることが特定されているのに対し、引用発明11では、「骨関節炎である変形性関節症」を改善するためのものであることが特定されている点。

新規性進歩性についての判断
相違点4は、上記2.(2)アで記載した相違点2と実質的に同じである。
そして、相違点4についての判断は、上記2.(2)イの(ア)及び(イ)において相違点2について記載したとおりである。
よって、本願発明1について、引用文献11に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
請求項1を引用する請求項に係る発明である本願発明2?7についても同様である。

6.引用文献12に基づく拒絶理由について
(1)引用文献12の記載事項及び引用発明12
引用文献12には以下の記載がある。
・タイトル
「ラットのコラーゲン誘発関節炎に対するフランス松樹皮抽出物であるフラバンジェノールの効果」

・要約
「フランス海岸松樹皮抽出物であるフラバンジェノール(FG)は、主にオリゴマーにプロアントシアニジンを含んでいる。それは、抗酸化物質や抗アテローム性動脈硬化症など、多くの生理学的効果を有する。この研究では、ヒト関節リウマチのモデルであるラットのコラーゲン誘発関節炎に対するFGの効果を評価した。ラットには、関節炎誘発後4週間、対照の食事、0.3%FG、または1%FGが与えられた。FGダイエットは、コントロールダイエットと比較して、用量依存的に関節炎スコアの増加と足の腫れを抑制した。病理組織学的検査により、1%FG食がラットの急性および慢性関節病変を抑制したという証拠が明らかになった。さらに、FG飼料(0.3%および1%)は、ラットの血漿中の一酸化窒素の生成を抑制した。これらの結果は、食餌療法FGは、急性および慢性炎症反応を阻害することにより、ラットのコラーゲン誘発関節炎に有益な効果があることを示唆する。」

・252頁右欄2段落の「Induction of arthritis」の項目
「関節炎の誘発. ウシII型コラーゲンはコスモ-バイオ社(東京、日本)から購入され、・・・0.1%酢酸に溶解された。次いで、溶解物は等容積(1:1)のフロインドの不完全アジュバント(・・・)で乳化され、それぞれのラットは、軽いエーテル麻酔下に背中の4箇所に200μgのコラーゲンを含むエマルジョン200μLを皮内注射された。」

上記記載によれば、上記引用文献12には次の発明(以下、「引用発明12」という。)が記載されていると認められる。(なお、以下において「(登録商標)」の記載は、当審合議体が付した。)

「フランス松樹皮抽出物であるフラバンジェノール(登録商標)からなる、II型コラーゲン誘発関節炎に対する改善剤。」

(2)本願発明1と引用発明12との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明12とを対比する。
(ア)引用発明12における「フランス松樹皮抽出物であるフラバンジェノール(登録商標)からなる剤」は、本願発明1における「松樹皮抽出物」に相当する。
(イ)本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」も引用発明3の「II型コラーゲン誘発関節炎」も「関節の疾患」といえるから、引用発明12の「II型コラーゲン誘発関節炎」は、本願発明1の「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」と「関節の疾患」である限りにおいて一致する。
また、上記3.(2)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、引用発明12の「改善」は本願発明1の「緩和」に相当するといえる。
そうすると、引用発明12の「II型コラーゲン誘発関節炎に対する改善剤」は、本願発明1の「関節の疾患を緩和するための組成物」に相当するといえる。
してみると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「松樹皮抽出物を含有する、関節の疾患を緩和するための組成物。」
<相違点5>
関節の疾患を緩和するための松樹皮抽出物含有組成物について、本願発明1では「関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性」を緩和するためのものであって、「ただし、MMPおよびII型コラーゲンに誘発される軟骨の変性を緩和する医薬用途のための組成物を除く」との条件を満足するものであることが特定されているのに対し、引用発明12では、「II型コラーゲン誘発関節炎」を改善するためのものであることが特定されている点。

新規性進歩性についての判断
(ア)まず、新規性について検討すると、引用発明12の改善剤の対象疾患の「II型コラーゲン誘発関節炎」は、「関節の炎症を伴う」関節の疾患であって、本願発明1で適用対象とされる「関節の炎症を伴わない」関節の疾患とは対象となる疾患が異なる。そうすると、上記相違点5は実質的な相違点である。
よって、本願発明1について、引用発明12、つまり、引用文献12に記載された発明であるということはできない。

(イ)次に、進歩性について検討する。
相違点5に関し、引用文献12には、引用発明12の組成物が、「関節の炎症を伴わない」関節軟骨の組織学的変性の緩和に有用であることを示唆する記載はない。そうすると、当業者は、引用発明12及び引用文献12の記載から、相違点5に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
また、本願明細書の記載からは、技術常識を踏まえれば、上記1.(2)イ(イ)において説示したとおり、本願発明により、松樹皮抽出物を投与することで関節の炎症を伴わない関節軟骨の組織学的変性が緩和できるという効果が奏されることが理解できるといえるところ、この本願発明の効果は引用文献12からは示唆されない効果である。
よって、本願発明1について、引用発明12に基いて当業者が容易に発明することができたものであるということもできない。

(ウ)以上のとおり、本願発明1について、引用文献12に記載された発明であるとはいえないし、また、引用文献12に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
請求項1を引用する請求項に係る発明である本願発明2?7についても同様である。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、引用文献3、4、7、8、11又は12に記載された発明ではないし、また、引用文献3、4、7、8、11又は12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-08 
出願番号 特願2015-191106(P2015-191106)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61K)
P 1 8・ 537- WY (A61K)
P 1 8・ 113- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 大輔  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 渕野 留香
穴吹 智子
発明の名称 松樹皮抽出物含有組成物  
代理人 森本 敏明  
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