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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1358456 |
審判番号 | 不服2018-7813 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-06 |
確定日 | 2020-01-28 |
事件の表示 | 特願2015-509020「効率的なデータオブジェクトストレージ及び検索」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日国際公開、WO2013/162954、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521310、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2013年4月16日(パリ条約による優先権主張2012年4月27日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年10月24日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,平成26年12月18日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る。)の日本語による翻訳文が提出され,平成28年4月15日に手続補正がされ,平成29年4月21日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年8月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成30年1月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年6月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和1年5月14日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和1年8月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年1月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし21に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2004-206615号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由通知における拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 (明確性)本願請求項1?10,16は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2 (新規性)本願請求項1に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 3 (進歩性)本願請求項1,3?16に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 (サポート要件)本願請求項1,3?16は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 引用文献等一覧 1.特開2004-206615号公報 第4 本願発明 本願請求項1-17に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明17」という。)は,令和1年8月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 データストレージシステムにて、一つ以上の論理空間を含むボリュームを複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナとして維持するステップであって、前記複数のデータオブジェクトが前記データストレージシステムの複数の論理空間のうちの一つ以上に格納され、前記複数のデータオブジェクトがオブジェクト識別子により一意的に特定される、ステップと、 前記複数のデータオブジェクトを配置するために第1と第2のインデクスを維持するステップとを含み、 第1のインデクスは第1レンジの複数のオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップし、 第2のインデクスは前記第1レンジの複数のオブジェクト識別子に関連する複数のデータオブジェクトのストレージロケーションを示し、 第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され、第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される、 方法。 【請求項2】 複数の論理空間の各々は、一つ以上のスラブの少なくとも一部を含み、個々のスラブは一つ以上の物理ストレージデバイス内の、ストレージのブロックのセットとして定義される、 請求項1に記載の方法。 【請求項3】 第1のインデクスは第2レンジの複数のオブジェクト識別子を第3のインデクスにマップし、 第3のインデクスは前記第2レンジの複数のオブジェクト識別子に関連する複数のデータオブジェクトの各々のストレージロケーションを示す、 請求項1に記載の方法。 【請求項4】 第2のインデクスと第3のインデクスは、異なる論理空間内に格納される請求項1に記載の方法。 【請求項5】 第1のインデクスは、 第2のインデクスが格納される空間に対する識別子と、第2のインデクスが格納される空間内部でのオフセットとを、提供することにより、 前記第1レンジのオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップする、 請求項1に記載の方法。 【請求項6】 データオブジェクトのストレージロケーションを示すことが、 第1レンジのデータオブジェクトの各々が格納される空間の識別子と、 第1レンジのデータオブジェクトの各々が格納される空間の各々内部でのオフセットと、 第1レンジのデータオブジェクトの各々の長さとを提供することを含む、 請求項5に記載の方法。 【請求項7】 第2のインデクス内で示されるデータオブジェクトのストレージロケーションが、関連するオブジェクト識別子に基づいて発生順に配置される、 請求項1に記載の方法。 【請求項8】 更に、 データオブジェクトの一つに対するクライアント要求を受信するステップと、 第1のレンジと第2のレンジから、要求されたデータオブジェクトに関連するレンジを選択するステップと、 選択されたレンジが第1レンジならば、第2のインデクスから要求されたデータオブジェクトのストレージロケーションを判別し、選択されたレンジが第2レンジならば、第3のインデクスから要求されたデータオブジェクトのストレージロケーションを判別するステップと、 判別されたストレージロケーションから要求されたデータオブジェクトを検索するステップとを含む、 請求項1に記載の方法。 【請求項9】 更に、 データストレージシステムに格納するために、クライアントから新しいデータオブジェクトを受信するステップと、 ストレージスペースを、複数の論理空間のうちの一つにアロケートするステップと、 新しいデータオブジェクトを、アロケートされたストレージスペースに書き込むステップと、 アロケートされたストレージスペースのロケーションに基づいて、第1と第2のインデクスを更新するステップと を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項10】 新しいデータオブジェクトが、複数のブロックとしてクライアントから受信され、ストレージスペースが、ブロックの全てが受信されるまでアロケートされない、 請求項9に記載の方法。 【請求項11】 システムメモリと、 複数の論理空間であって、一つ以上の物理ストレージデバイス内の一つ以上のストレージのブロックが複数の論理空間の各々にアロケートされる、複数の論理空間と、 プロセッサとを含み、 前記プロセッサは、 ボリュームを複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナとして維持するステップであって、ボリュームは一つ以上の論理空間を含む、ステップと、 複数の論理空間のうちの一つ以上にデータオブジェクトを格納するステップであって、 データオブジェクトはオブジェクト識別子により一意的に特定される、ステップと、 第1のインデクスを維持するステップであって、第1のインデクスはシステムメモリに格納され、第1レンジの複数のオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップする、ステップと、 第2のインデクスを維持するステップであって、第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの論理空間に格納され、第1レンジの複数のオブジェクト識別子に関連するデータオブジェクトのストレージロケーションを示す、ステップと を行うように構成され、 第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され、第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される、 データストレージシステム。 【請求項12】 第1のインデクスは第2レンジのオブジェクト識別子を第3のインデクスにマップし、 第3のインデクスは前記第2レンジのオブジェクト識別子に関連するデータオブジェクトの各々のストレージロケーションを示す、 請求項11に記載のデータストレージシステム。 【請求項13】 第1のインデクスは、 第2のインデクスが格納される空間に対する識別子と、第2のインデクスが格納される空間内部でのオフセットとを、提供することにより、 前記第1レンジのオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップする、 請求項11に記載のデータストレージシステム。 【請求項14】 第2のインデクス内で示されるデータオブジェクトのストレージロケーションが、関連するオブジェクト識別子に基づいて発生順に配置される、 請求項11に記載のデータストレージシステム。 【請求項15】 更に、プロセッサは、 データストレージシステムに格納するために、クライアントから新しいデータオブジェクトを受信するステップと、 新しいオブジェクト識別子を新しいデータオブジェクトに割り当てるステップと、 ストレージスペースを、複数の論理空間のうちの一つ内にアロケートするステップと、 新しいデータオブジェクトを、アロケートされたストレージスペースに書き込むステップと、 第1と第2のインデクスを更新するステップとを 行うように構成されている、請求項11に記載のデータストレージシステム。 【請求項16】 データオブジェクトの一つに関連する更なるメタデータがデータオブジェクトと共に格納される、請求項11に記載のデータストレージシステム。 【請求項17】 プロセッサに、請求項1ないし10いずれか一項に記載の方法のステップを実行させるコンピュータプログラム。」 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用され,当審拒絶理由通知にも引用された引用文献1(特開2004-206615号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。) A 「【0023】 《実施例1》 図1?6を用いて、実施例1の記憶装置を説明する。図1は、本発明の記憶装置の構成を示すブロック図である。図1において、101は記憶装置、102はホスト装置である。記憶装置101は、記憶部111、ホストインタフェース部112、バッファメモリ113、記憶制御部114、テーブル制御部115を有する。記憶装置101はメモリカードである。記憶部111は、不揮発性メモリ(実施例においてはフラッシュメモリ)を有する。ホスト装置102は、メモリカードの挿入スロットを有する携帯機器(例えばメモリカードを記憶媒体とする音楽レコーダ)である。 【0024】 ホスト装置102は、記憶装置101にデータの書き込み及び読み出し等を指令し、書き込むデータを伝送し、記憶装置101から送られた応答及び読み出しデータを受け取る。 記憶装置101のホストインタフェース部112は、ホスト装置102から送信された指令及び書き込むデータを受信し、応答及び読み出しデータをホスト装置102に送信する。 バッファメモリ113は、書き込むデータ及び読み出しデータを一時的に記憶するRAMである。バッファメモリ113は電源投入後に、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル、消去済みテーブル、無効テーブル等の各種テーブルを格納する。 記憶制御部114は、バッファメモリ113に格納された書き込むデータを記憶部111に書き込み、記憶部111に記録されている読み出しデータをバッファメモリ113に格納する。 テーブル制御部115は、データの書き込み及び消去に基づいて、論理アドレス/物理アドレス変換テーブルを書き換える。 記憶部111は、データ及び論理アドレス/物理アドレス変換テーブルを格納する。 【0025】 図2は記憶部111の構成を示す図である。本発明において、記憶部111は、複数のセグメントに区分される。各セグメントは、それぞれ別個の記憶素子で構成されている。セグメントi(1≦i≦n。nは任意の正整数。)201は、複数の物理ブロック202を有する。物理ブロックは、データの消去単位である。 各セグメントには、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311が格納されている。本実施例の各セグメントの論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311は、論理アドレス(ホスト装置102から指定されるアドレス)に対応させて、セグメント内の物理アドレス(記憶部111の物理ブロックのアドレス)を割り当てる。 【0026】 図3は実施例1のセグメントの構成を示す図である。実施例1において、セグメント201はテーブル領域301とデータ領域302とに区分される。テーブル領域301は、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311を格納するための専用の領域である。テーブル領域301は、複数の論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311を分散して(それぞれ任意のアドレスに)格納する。データ領域302は、ホスト装置102から伝送されたデータを書き込むための領域である。」 B 「【0044】 《実施例2》 図1、図2及び図7?10を用いて、実施例2の記憶装置を説明する。図1及び図2は、実施例1と同一である。 図7は実施例2のセグメントの構成を示す図である。実施例2において、セグメント201はテーブル領域301とデータ領域302とに区分される。テーブル領域301は、インデックステーブル711を格納するための専用の領域である。データ領域302は、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311と、ホスト装置102から伝送されたデータとを書き込むための領域である。 実施例2において実施例1と違うところは、テーブル領域301にインデックステーブル711を格納し、データ領域302に論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311を格納することである。それ以外の点において、実施例1と同一である。 【0045】 テーブル領域301は、少なくとも1つのインデックステーブル711を格納する。実施例においては、テーブル領域301は、任意に分散して配置された複数のインデックステーブル711を有する。インデックステーブル711は、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311が格納されている物理ブロックのアドレスと、その論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレス(ホスト装置102から指定される。)の範囲を特定する情報(実施例においては、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレスの範囲の先頭の論理アドレス)と、を有する。 インデックステーブル711が論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311の物理アドレスを管理することにより、論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311をデータ領域302に格納することができる。」 C 「 ![]() 【図7】」 上記【図7】から,インデックステーブル711及び論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311の構成として, 例えば,テーブル領域301のインデックステーブル711に,論理アドレス“0000H”と物理アドレス“AB35H”を対応付けて記憶し,また論理アドレス“1000H”と物理アドレス“C628H”を対応付けて記憶し, データ領域302の物理アドレス“AB35H”には,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311として,論理アドレス“0000H”と物理アドレス“0326H”を対応付けて記憶するとともに論理アドレス“0001H”と物理アドレス“0328H”を対応付けて記憶し,また,データ領域302の物理アドレス“C628H”には,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311として,論理アドレス“1000H”と物理アドレス“D125H”を対応付けて記憶するとともに論理アドレス“1001H”と物理アドレス“D128H”を対応付けて記憶し, データ領域302の物理アドレス“0326H”に,論理アドレス“0000H”のデータを記憶し,データ領域302の物理アドレス“0328H”に,論理アドレス“0001H”のデータを記憶する,構成が読み取れる。 以上の記載及び検討から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 記憶部111,ホストインタフェース部112,バッファメモリ113,記憶制御部114,テーブル制御部115を有する記憶装置101において, 記憶部111は,複数のセグメント201に区分され,セグメント201はテーブル領域301とデータ領域302とに区分されており, テーブル領域301にインデックステーブル711を格納し,データ領域302に,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311とホスト装置102から伝送されたデータを格納し, インデックステーブル711は,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311が格納されている物理ブロックのアドレスと,その論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレス(ホスト装置102から指定される。)の範囲を特定する情報(論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレスの範囲の先頭の論理アドレス)と,を有し, 例えば,テーブル領域301のインデックステーブル711に,論理アドレス“0000H”と物理アドレス“AB35H”を対応付けて記憶し,また論理アドレス“1000H”と物理アドレス“C628H”を対応付けて記憶し, データ領域302の物理アドレス“AB35H”には,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311として,論理アドレス“0000H”と物理アドレス“0326H”を対応付けて記憶するとともに論理アドレス“0001H”と物理アドレス“0328H”を対応付けて記憶し,また,データ領域302の物理アドレス“C628H”には,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311として,論理アドレス“1000H”と物理アドレス“D125H”を対応付けて記憶するとともに論理アドレス“1001H”と物理アドレス“D128H”を対応付けて記憶し, データ領域302の物理アドレス“0326H”に,論理アドレス“0000H”のデータを記憶し,データ領域302の物理アドレス“0328H”に,論理アドレス“0001H”のデータを記憶する, 方法。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「記憶装置101」は,「記憶部111,ホストインタフェース部112,バッファメモリ113,記憶制御部114,テーブル制御部115を有」し,ホスト装置102から伝送されたデータを“記憶するシステム”であるといえるから,本願発明1の「ストレージシステム」に相当する。 また,引用発明の「記憶部111」は,ホスト装置102から指定される“論理アドレス”に基づいて,ホスト装置102から伝送された「データ(本願発明1における「データオブジェクト」に相当する)」を格納するものであるところ,ホスト装置102からみれば,“論理的なデータ格納手段”であるといえることから,本願発明1の「一つ以上の論理空間を含むボリューム」としての「複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナ」と,引用発明の「記憶部111」とは,“複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナ”である点で共通するといえる。 してみれば,本願発明1と引用発明とは,“データストレージシステムにて,複数のデータオブジェクトのための論理コンテナを維持するステップ”を含む点で共通する。 イ 引用発明の記憶部111は,ホスト装置102から指定される論理アドレスに基づいて,ホスト装置102から伝送された「データ」を格納するものであり,論理アドレスで表される“論理空間”に「データ」を格納しているといえるので,上記アで検討したことを踏まえると,本願発明1と引用発明とは,「前記複数のデータオブジェクトが前記データストレージシステムの複数の論理空間のうちの一つ以上に格納され」ている点で一致する。 ウ 引用発明において,「ホスト装置102から伝送されたデータ」は,「ホスト装置102から指定される」「論理アドレス」によって一意に識別されていることから,引用発明の「論理アドレス」が本願発明1の「オブジェクト識別子」に相当する。 してみれば,本願発明1と引用発明とは,「前記複数のデータオブジェクトがオブジェクト識別子により一意的に特定される」点で一致する。 エ 上記アないしウの検討を踏まえると,後記する点で相違するものの,本願発明1と引用発明とは,“データストレージシステムにて,複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナを維持するステップであって,前記複数のデータオブジェクトが前記データストレージシステムの複数の論理空間のうちの一つ以上に格納され,前記複数のデータオブジェクトがオブジェクト識別子により一意的に特定される,ステップ”を含む点で共通する。 オ 引用発明の「インデックステーブル711」は,「論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311が格納されている物理ブロックのアドレス」と,「その論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレス(ホスト装置102から指定される。)の範囲を特定する情報(論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311がサポートする論理アドレスの範囲の先頭の論理アドレス)」とを対応づけたテーブルであるところ,例えば,インデックステーブル711の具体例である,論理アドレス“0000H”と物理アドレス“AB35H”との対応付けにおける「論理アドレス“0000H”」は,データ領域302の物理アドレス“AB35H”に記憶される論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311における論理アドレスの範囲(“0000H”,“0001H”,・・・)の先頭の論理アドレスに対応しており,上記ウの検討も踏まえると,引用発明の「“0000H”,“0001H”,・・・の論理アドレスの範囲」は本願発明1における「第1レンジの複数のオブジェクト識別子」に相当するといえることから,当該「“0000H”,“0001H”,・・・の論理アドレスの範囲」を「論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311」(本願発明1における「第2のインデクス」に相当する)に対応付けている,すなわち“マップ”している引用発明の「インデックステーブル711」が本願発明1における「第1のインデクス」に相当する。 してみれば,本願発明1と引用発明とは,「第1のインデクスは第1レンジの複数のオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップし」ている点で一致する。 カ 引用発明では,「データ領域302の物理アドレス“0326H”に,論理アドレス“0000H”のデータを記憶し,データ領域302の物理アドレス“0328H”に,論理アドレス“0001H”のデータを記憶」しているところ,ここでの「データ領域302の物理アドレス“0326H”」及び「データ領域302の物理アドレス“0328H”」が,本願発明1の「複数のデータオブジェクトのストレージロケーション」に相当する。 また,引用発明の「論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311」は,「論理アドレス“0000H”と物理アドレス“0326H”を対応付けて記憶するとともに論理アドレス“0001H”と物理アドレス“0328H”を対応付けて記憶し」ており,上記の検討も考慮すると,引用発明の「論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311」(本願発明1における「第2のインデクス」)は,「“0000H”,“0001H”,・・・の論理アドレスの範囲」(本願発明1における「第1レンジの複数のオブジェクト識別子」)に関連する“複数のデータ(本願発明1における「データオブジェクト」)のストレージロケーション”を示しているということができる。 してみれば,本願発明1と引用発明とは,「第2のインデクスは前記第1レンジの複数のオブジェクト識別子に関連する複数のデータオブジェクトのストレージロケーションを示し」ている点で一致する。 キ 引用発明では,「テーブル領域301にインデックステーブル711を格納し,データ領域302に,論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311」「を格納し」ているから,上記オ及びカにおける検討も踏まえると,本願発明1と引用発明とは,「前記複数のデータオブジェクトを配置するために第1と第2のインデクスを維持するステップ」「を含」む点で一致する。 ク 上記アないしキの検討から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「データストレージシステムにて,複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナを維持するステップであって,前記複数のデータオブジェクトが前記データストレージシステムの複数の論理空間のうちの一つ以上に格納され,前記複数のデータオブジェクトがオブジェクト識別子により一意的に特定される,ステップと, 前記複数のデータオブジェクトを配置するために第1と第2のインデクスを維持するステップとを含み, 第1のインデクスは第1レンジの複数のオブジェクト識別子を第2のインデクスにマップし, 第2のインデクスは前記第1レンジの複数のオブジェクト識別子に関連する複数のデータオブジェクトのストレージロケーションを示す, 方法。」 (相違点1) 複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナに関し, 本願発明1は,「一つ以上の論理空間を含むボリュームを」複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナ「として」維持するものであるのに対して, 引用発明は,そのような特定はなされていない点。 (相違点2) 本願発明1は,「第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され,第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される」ものであるのに対して, 引用発明は,「インデックステーブル711」及び「論理アドレス/物理アドレス変換テーブル311」の格納先についてそのような特定はなされていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて,上記相違点2について先に検討する。 上記相違点2に係る構成である,「第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され,第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される」との構成は,これにより,「レンジインデクス310は,ボリュームの個別のOID毎に対するエントリを含むインデクス若しくはテーブルと比較して,相対的に小さい。各々のエントリはOIDのレンジに属するからである。小さいために,レンジインデクス310は,空間,若しくは他のディスクベースのストレージロケーション内に格納されるのではなく,アクセスするのにI/Oを要求しない半導体メモリ若しくはシステムの他のメモリ内に,維持され得る。このことは,前述の2つのステップインデクス検索プロセスのうちの第一のステップが,ディスクI/Oを実行すること無く,実行され得るということを意味する。従って,データオブジェクトは,二つのディスクI/Oのみで検索され得る。OIDインデクス320にアクセスするためにレンジインデクス310から検索される情報を,システムが用いるとき,第一のディスクI/Oが発生する。OIDインデクス320からの情報を用いて,システムは第二のディスクI/Oを実行して特定のロケーションからデータオブジェクトを検索する。」(【0033】)との効果を奏するものであるところ,当該相違点2に係る構成は,引用文献1には記載されておらず,また,本願優先日前において周知技術であるともいえない。 そうすると,引用発明に基づいて,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。 したがって,本願発明1は,相違点1を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献1に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-17について 本願発明11,17は,本願発明1とカテゴリーが異なるだけであり,本願発明1の相違点2に係る構成と同一または同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用発明,引用文献1に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 本願発明2ないし10,12ないし16は,本願発明1,11を更に限定したものであるので,本願発明1と同様の理由により,引用発明,引用文献1に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 (特許法第29条第2項について) 原査定は,請求項1ないし21について上記引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和1年8月6日付けの手続補正により補正された請求項1ないし17は,それぞれ相違点2に係る構成を有するものとなっており, 上記第6のとおり,本願発明1ないし17は,上記引用発明,引用文献1に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由について 1.特許法第36条第6項第2号について (1)当審拒絶理由通知では,本願請求項1?10,16において,「データストレージシステムにて,複数のデータオブジェクトのための論理コンテナを維持する」との記載における「論理コンテナ」とは,技術的にどのような事項を特定した構成であるのかが不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,令和1年8月6日付けの手続補正において,「データストレージシステムにて,一つ以上の論理空間を含むボリュームを複数のデータオブジェクトに対する論理コンテナとして維持する」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。 2.特許法第29条第1項3号について 上記「第6 対比・判断」の1.(1)で検討のとおり,令和1年8月6日付けの手続補正により,本願発明1は,「第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され,第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される」との構成(以下,「相違点2に係る構成」という。)を有することとなり,本願発明1と引用発明とは少なくとも上記相違点2に係る構成において相違するから,この拒絶の理由は解消した。 3.特許法第29条第2項について 上記「第6 対比・判断」の1.(2)で検討のとおり,令和1年8月6日付けの手続補正により,本願発明1は,相違点2に係る構成を有することとなり,そして,引用発明に基づいて,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえないから,この拒絶の理由は解消した。本願発明2?17についても同様である。 4.特許法第36条第6項第1号について (1)当審拒絶理由通知では,請求項1には,第1のインデクス?第3のインデクスとその内容については特定されているものの,当該第1のインデクス?第3のインデクスが,ストレージシステム内のどこに格納されているのかについては何ら特定されていないから,請求項1には,本願発明1の「データオブジェクトを検索するのに要求されるディスクI/Oの数を減少させて,ストレージシステムの全体パフォーマンスを向上する」という効果を奏するために必要な,「第1のインデクスはI/Oを実行すること無く実行され得るメモリロケーション内に格納される」という課題解決手段が特定されておらず,してみれば,請求項1には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題解決手段が反映されていないから,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとの拒絶の理由を通知しているが,令和1年8月6日付けの手続補正により,「第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され,第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される」との構成を付加する補正がなされた結果,この拒絶の理由は解消した。 (2)当審拒絶理由通知では,請求項11には,第1のインデクス?第3のインデクスとその内容については特定されているものの,当該第1のインデクス?第3のインデクスが,ストレージシステム内のどこに格納されているのかについては何ら特定されていないから,請求項11には,本願発明1の「データオブジェクトを検索するのに要求されるディスクI/Oの数を減少させて,ストレージシステムの全体パフォーマンスを向上する」という効果を奏するために必要な,「第1のインデクスはI/Oを実行すること無く実行され得るメモリロケーション内に格納される」という課題解決手段が特定されておらず,してみれば,請求項11には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題解決手段が反映されていないから,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとの拒絶の理由を通知しているが,令和1年8月6日付けの手続補正により,「第1のインデクスはデータストレージシステムのメモリ内に格納され,第2のインデクスは複数の論理空間のうちの一つの空間に格納される」との構成を付加する補正がなされた結果,この拒絶の理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり,本願発明1ないし17は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-01-14 |
出願番号 | 特願2015-509020(P2015-509020) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) P 1 8・ 113- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桜井 茂行 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
仲間 晃 山崎 慎一 |
発明の名称 | 効率的なデータオブジェクトストレージ及び検索 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |