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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1358509 |
審判番号 | 不服2018-236 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-09 |
確定日 | 2020-01-06 |
事件の表示 | 特願2016-518113「タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/043298、平成28年10月13日国内公表、特表2016-532174〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)7月21日(パリ条約による優先権主張 2013年(平成25年)9月29日 中華人民共和国、2014年(平成26年)6月4日 中華人民共和国、2014年(平成26年)6月4日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月28日に手続補正がなされ、平成29年1月23日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月14日に意見書が提出され、平成29年6月22日付けで拒絶理由が通知され、平成29年8月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成29年9月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成30年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月28日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成31年3月8日付けで拒絶理由が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会が与えられたが、その後、意見書の提出や手続補正はなされていない。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「カバープレートと、 接合層と、 薄膜層と、 前記薄膜層上に位置するバッファ層と、 前記バッファ層上に位置するセンシング層と、 前記センシング層上に位置する保護層と を含み、 前記接合層が前記カバープレートと前記薄膜層との間に位置し、 前記薄膜層が前記接合層と前記バッファ層との間に位置し、 前記バッファ層が前記センシング層と前記薄膜層との間に位置し、 前記センシング層が前記バッファ層と前記保護層との間に位置し、 前記保護層が環境中の物質によるセンシング層の腐食を減らし、 前記薄膜層の厚さが0.1μmから15μmであり、 前記薄膜層の材料が、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィン共重合体のうちの一つ又はこれらの組み合わせを含み、 前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されている ことを特徴とするタッチパネル。」 第3 拒絶の理由 平成31年3月8日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。 1.本件補正は、以下の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 請求項1の「カバープレートと、接合層と、薄膜層と、前記薄膜層上に位置するバッファ層と、前記バッファ層上に位置するセンシング層と、前記センシング層上に位置する保護層とを含」む「タッチパネル」に、「前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されている」という事項は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導かれる技術的事項とはいえず、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものである。 2.本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 <その1> 第1の接着層及び第1の基板と、接合層及びカバープレートとが、同時に積層されてなる「タッチパネル」は、当初明細書等に記載した事項の範囲を超えるものであるから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 <その2> 請求項1に係る発明は、カバープレート、接合層、薄膜層、バッファ層、センシング層及び保護層に加えて、基板及び接着層が形成されてなるタッチパネルであって、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 3.本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-76432号公報 引用文献2:国際公開第2013/125519号 引用文献3:国際公開第2013/136719号 引用文献4:国際公開第2013/114685号 引用文献5:特開2011-162432号公報 第4 当審拒絶理由の理由1(特許法第17条の2第3項)について 本件補正により、請求項1の「カバープレートと、接合層と、薄膜層と、前記薄膜層上に位置するバッファ層と、前記バッファ層上に位置するセンシング層と、前記センシング層上に位置する保護層とを含」む「タッチパネル」に、「前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されている」という事項が追加された。 ここで、当初明細書等には、「次いで、図1E-1、図1E-2および図1Fを参照しながら説明する。図1E-2は図1E-1の展開図であり、第1の基板100を除去する。図1E-1と図1E-2に示すように、先に周辺領域Nの中央領域Mに近い辺縁に沿って切断し、すなわち図1E-1に示す切断線CC’に沿って切断し、周辺領域Nに位置する第1の接着層110、薄膜層121、バッファ層122、第2の接着層140および第2の基板150を切り取ってから第1の基板100を除去する。先に主な接着作用を果たす第1の接着層110を切り取ることによって第1の基板100と薄膜層121の間における接着層を無くし、その間の接着力を大幅に低下させてから第1の基板100を除去するので、」(段落【0038】)との記載、及び「次に、図1Gに示すように、カバープレート170を薄膜層121に貼り付け、接合層160により積層またはその他の方法でカバープレート170と薄膜層121とを一体に貼り付けるとともに、接合層160が薄膜層121とカバープレート170との間に位置する。図1Gに示すように、積層の順序は、上から下へカバープレート170、接合層160、薄膜層121、バッファ層122、センシング層130、第2の接着層140および第2の基板150となっている。」(段落【0041】)との記載がある。(下線は当審で付与した。以下同様。) そして、当初明細書等のその他のすべての記載を考慮しても、第1の基板の周辺領域において、薄膜層との間に第1の接着層が形成された後、「タッチパネル」の製造過程で、薄膜層から、第1の接着層及び第1の基板は除去され、これら第1の接着層及び第1の基板が存在していた位置に、接合層及びカバープレートが設けられた「タッチパネル」、という技術的事項が導かれるだけであって、第1の接着層及び第1の基板と、接合層及びカバープレートとが、同時に積層されてなる「タッチパネル」は、当初明細書等のすべての記載を総合しても導かれる技術的事項とはいえず、本件補正は、新たな技術的事項を導入するものである。 第5 当審拒絶理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)について <その1> 請求項1は、「カバープレートと、接合層と、薄膜層と、前記薄膜層上に位置するバッファ層と、前記バッファ層上に位置するセンシング層と、前記センシング層上に位置する保護層とを含み、・・・、 前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されていることを特徴とするタッチパネル」、 すなわち、“カバープレート、接合層、薄膜層、バッファ層、センシング層及び保護層を含み、さらに薄膜層と基板に間に接着層が形成されてなるタッチパネル”を特定するものである。 そして、上記「第4」で検討したように、請求項1の「カバープレートと、接合層と、薄膜層と、前記薄膜層上に位置するバッファ層と、前記バッファ層上に位置するセンシング層と、前記センシング層上に位置する保護層とを含」む「タッチパネル」に、「前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されている」という事項は、明細書に記載した事項の範囲を超えるものであるから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 <その2> 請求項1は、上記<その1>に記載したように、“カバープレート、接合層、薄膜層、バッファ層、センシング層及び保護層を含み、さらに薄膜層と基板に間に接着層が形成されてなるタッチパネル”を特定するものである。 一方、明細書には、【発明が解決しようとする課題】として、 「本発明の実施例においてタッチパネルを提供することによって、タッチパネルの構造においてより一層の軽く、薄くおよび製造プロセスにおいてより一層の低コスト化の要望を満たした。」(段落【0004】)との記載、 また、【課題を解決するための手段】として、 「本発明の実施例はタッチパネルを提供する。該タッチパネルは、カバープレートと、薄膜層と、バッファ層と、センシング層と、接合層と、を含む。接合層が前記カバープレートと前記薄膜層との間に位置する。」(段落【0005】)、及び、 「本発明が提供したタッチパネルにおいて、タッチパネルの製造プロセスに2枚の基板である第1の基板と第2の基板を導入しており、この2枚の基板は最終製品であるタッチパネルの一部を構成しないが、タッチパネルの製造プロセスにおいて極めて大きな役割を果たしている。第1の基板の支持作用によりセンシング層を薄膜層に形成し、その後第1の基板を除去し、さらに第2の基板の移載作用により、薄膜層および薄膜層の上に形成されたセンシング層をカバープレートに貼り付け、これによって、形成されたタッチパネルはより軽く、より薄くなるとともに、製造コストが比較的安くなる。」(段落【0006】)との記載があることから、第1、第2の基板は、タッチパネルの製造過程で用いるものの、最終製品であるタッチパネルからは除去することによって、本願発明の、より軽く、薄いタッチパネルを提供するという課題を解決しているものと認められる。 そうすると、カバープレート、接合層、薄膜層、バッファ層、センシング層及び保護層に加えて、基板及び接着層が形成されてなるタッチパネルは、より多くの層から構成されることとなり、本願発明の、より軽く、薄いタッチパネルを提供するという課題を解決できるものとは認められない。 したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 第6 当審拒絶理由の理由3(特許法第29条第2項)について 1.引用文献の記載及び引用発明 (1) 引用文献1の記載及び引用発明 引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある。 ア 段落【0001】-【0002】 「【0001】 本発明は、可視光線領域に於いて透明性を有し、かつフィルム基材上にアンダーコート層を介して透明導電体層が設けられた透明導電性フィルムおよびその製造方法に関する。さらには、当該透明導電性フィルムを備えたタッチパネルに関する。 【0002】 本発明の透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式やタッチパネルなどに於ける透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断などのために用いられる。特に、本発明の透明導電性フィルムはタッチパネル用途において好適に用いられる。なかでも、静電容量結合方式のタッチパネル用途において好適である。」 イ 段落【0023】 「【0023】 本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介して、透明導電体層3を有する。透明導電体層3はパターン化されている。なお、各図において、透明導電体層3がパターン化されていることは、透明導電体層3を有するパターン部aと透明導電体層3を有しない非パターン部bを有することで示している。また、前記非パターン部bには前記アンダーコート層2を有する。図2、3は、アンダーコート層2が2層ある場合である。図2、3では、透明なフィルム基材1の側からアンダーコート層21、22がこの順で設けられている。図2では、非パターン部bにアンダーコート層21、22を有する場合である。図3は、透明なフィルム基材1から最も離れたアンダーコート層22は透明導電体層3と同様にパターン化されている。図3では、非パターン部bにアンダーコート層21を有する。即ち、アンダーコート層2が2層の場合には、非パターン部bには、透明なフィルム基材1の側から第一層目のアンダーコート層21を少なくとも有する。図2、3では、アンダーコート層2が2層の場合を例示しているが、アンダーコート層2は3層以上であってもよい。アンダーコート層2が3層以上の場合にも非パターン部bには、透明なフィルム基材1の側から第一層目のアンダーコート層21を少なくとも有する。第一層目より上側のアンダーコート層は、パターン化されていてもよく、パターン化されていなくてもよい。アンダーコート層2が少なくとも2層の場合は、パターン部aと非パターン部bの反射率差を小さく制御するうえで好ましい。特にアンダーコート層2が少なくとも2層の場合には、透明なフィルム基材から最も離れたアンダーコート層(図3のように、アンダーコート層2が2層の場合には、アンダーコート層22)は、透明導電体層3と同様にパターン化されていることが、パターン部aと非パターン部bの反射率差を小さく制御するうえで好ましい。なお、図4は、透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介することなく、パターン化された透明導電体層3を有する場合である。」 ウ 段落【0027】-【0028】 「【0027】 また、前記透明導電性フィルムの片面には、透明な粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わすことができる。透明基体5が貼り合わされた透明導電性フィルムは、片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように、透明基体5が貼り合わされている。図12は、図1の透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1(透明導電体層3が設けられていない面)に透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた構造の透明導電性フィルムである。透明基体5は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、図12は、透明基体5の外表面にハードコート層(樹脂層)6が設けられている場合である。図12では、図1の透明導電性フィルムについての例示であるが、同様の構造を図2、3の透明導電性フィルムにも適用できる。また、図5乃至図9等の構造の透明導電性フィルムにも適用できる。 【0028】 前記フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。」 エ 段落【0030】 「【0030】 前記フィルム基材1の厚みは、2?200μmの範囲内であることが好ましく、2?100μmの範囲内であることがより好ましい。フィルム基材1の厚みが2μm未満であると、フィルム基材1の機械的強度が不足し、このフィルム基材1をロール状にしてアンダーコート層2、透明導電体層3を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れなくなる場合がある。」 オ 段落【0085】 「【0085】 (実施例1) (アンダーコート層の形成) 厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなるフィルム基材の一方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1の熱硬化型樹脂(光の屈折率n=1.54)により、厚さが185nmの第一層目のアンダーコート層を形成した。次いで、シリカゾル(コルコート(株)製,コルコートP)を、固形分濃度2%になるようにエタノールで希釈し、第一層目のアンダーコート層上に、シリカコート法により塗布し、その後、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚さが33nmの第二層目のアンダーコート層(SiO_(2)膜,光の屈折率1.46)を形成した。第一層目、第二層目のアンダーコート層を形成した後の表面抵抗は、いずれも1×10^(12)Ω/□以上であった。」 よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介して、透明導電体層3を有し、透明なフィルム基材1の透明導電体層3が設けられていない面に透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた構造の透明導電性フィルムであって、 前記フィルム基材1の厚みは、2?200μmの範囲内であり、 前記フィルム基材1の材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等を用いることができる、 前記透明導電性フィルムを備えたタッチパネル。」 (2) 引用文献2の記載 引用文献2には、図面(特に、図6)とともに、段落[0048]に、以下の記載がある。 「[0048] 第3保護層12は、第1検出電極パターン3および第2検出電極パターン4を保護する役割を有する。ここで、第1検出電極パターン3および第2検出電極パターン4を保護する役割としては、例えば、第1検出電極パターン3および第2検出電極パターン4を外部からの衝撃によって傷を付けないように保護する役割が挙げられる。また、第1検出電極パターン3および第2検出電極パターン4を水分の吸湿による腐食から保護する役割が挙げられる。第3保護層12は、入力領域E1、および、被入力領域E2の一部の領域に対応する基体2の第2主面2b上に設けられており、第1検出電極パターン3、第2検出電極パターン4、絶縁体5、および接続配線9を被覆している。なお、本実施形態では、入力装置X1は、第2保護層11および第3保護層12を有しているが、これに限らず、第2保護層11および第3保護層12は、一つの部材であってもよい。第3保護層12の構成材料および形成方法としては、第1保護層7と同様のものが挙げられる。」 (3) 引用文献3の記載 引用文献3には、図面とともに、段落[0005]に、以下の記載がある。 「[0005] 投影型静電容量方式タッチパネルセンサーは、一般的に、図16に示すように、透明基板10上の矩形状の表示領域の第一の方向に沿って形成された複数の第一透明電極23と、透明基板10上に第一の方向と交差する第二の方向に沿って形成された複数の第二透明電極24と、第一透明電極23と第二透明電極24の電気的接触を防ぐために、その交差位置に形成される絶縁層22と、第一透明電極23及び第二透明電極24と外部接続端子(図示せず)とを電気的に接続するために矩形状の表示領域の外周部に配置された取出配線20を備えている。また、タッチパネルセンサー上には、必要に応じて、取出配線20の接続部位以外のほぼ全面を覆うように保護層(図示せず)が形成される。このように保護層が形成されることにより、第一透明電極23、第二透明電極24、及び取出配線20を腐食や接触による傷から守ることができる。」 (4) 引用文献4の記載 引用文献4には、図面(特に、図1、3)とともに、以下の記載がある。 ア 段落[0014] 「[0014] 本発明の製造方法で得られる積層体は、ガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属等の支持体の一面と、ポリイミドフィルムの一面とが、接着剤層を介することなく貼り合わされた積層体であって、あらかじめ決めたパターンによって支持体とポリイミドフィルムの剥離強度が異なる良好接着部分と易剥離部分とに分かれているので、ポリイミドフィルムの上にデバイスを作製した後、易剥離部分のポリイミドフィルムに切り込みを入れて剥離することによって、容易にデバイス付きのポリイミドフィルムを得ることができる。さらに、本発明によれば、ポリイミドフィルムが脂環族テトラカルボン酸類を主成分とするテトラカルボン酸類を用いて形成されるので、耐熱性に加え高い光透過性をも有するフィルム上にデバイスを形成することができ、例えば、液晶表示素子、タッチパネル、ボトムエミッション型の発光素子、基板側受光の光電変換素子、カラーフィルター等の用途にも好適に利用できる。」 イ 段落[0032] 「[0032]<ポリイミドフィルム> 本発明におけるポリイミドフィルムは、ジアミン類と、脂環族テトラカルボン酸類を主成分とするテトラカルボン酸類との反応によって得られるフィルムである。このようなフィルムは、例えば、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを少なくとも反応させて得られるポリアミド酸(「ポリイミド前駆体」ともいう)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該ポリイミドフィルム作製用支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。なお、ここで言う「ポリイミドフィルム作製用支持体」は、本発明の積層体の構成部材として上述した「支持体」とは異なる。また、ポリイミドフィルムは、ジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られたポリアミド酸溶液を、引き続き脱水閉環反応させてポリイミド溶液とし、該ポリイミド溶液をポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して製膜することによっても得られる。」 ウ 段落[0037] 「[0037] ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類は、光透過性の観点から、脂環族テトラカルボン酸類を主成分とする。具体的には、脂環族テトラカルボン酸類は、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。これにより、光線透過率が高いポリイミドフィルムとなり、本発明の積層体を、例えば液晶表示素子、タッチパネル、ボトムエミッション型の発光素子、基板側受光の光電変換素子、カラーフィルター等の光学用途に使用することが可能になる。」 エ 段落[0056] 「[0056] 本発明におけるポリイミドフィルムの厚さは、3?150μmである。ポリイミドフィルムの厚さが前記範囲であると、狭小部への適用が容易になり、センサーなどの素子の高性能化や電子部品の軽量化、小型化、薄型化に大きく貢献できる。ポリイミドフィルムの厚さが3μm未満では、厳密に厚さを制御することが難しく、また支持体からの剥離が困難になり、一方、150μmを超えると、支持体から剥がす際にポリイミドフィルムの折れ曲がりなどが起こり易くなる。ポリイミドフィルムの厚さは、好ましくは6.5μm以上、より好ましくは11μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、最も好ましくは60μm以下である。」 オ 段落[0086]-[0087] 「[0086] <パターン形成> 本発明の積層体の製造方法においては、前記カップリング剤処理に次いで、エッチングによりカップリング処理層の一部を不活性化して所定のパターンを形成する。これにより、支持体とポリイミドフィルムの間の剥離強度が強い部分と弱い部分を意図的に作り出すことができる。なお、カップリング処理層を不活性化処理するとは、物理的にカップリング処理層を部分的に除去する(いわゆるエッチングする)こと、物理的にカップリング処理層を微視的にマスキングすること、カップリング処理層を化学的に変性することを包含する。 カップリング処理層の一部を選択的に不活性化処理して所定のパターンを形成する手段としては、所定のパターンに応じた部分をマスクで一時的に被覆ないし遮蔽したうえで全面にエッチング等を施し、その後マスクを取り去るようにしてもよいし、可能であれば直描方式で所定のパターンに応じてエッチング等を行うようにしてもよい。マスクとしては、一般的にレジスト、フォトマスク、メタルマスクなどとして使われている物をエッチング方法に応じて適宜選択して用いればよい。 [0087] パターン形状は、積層するデバイスの種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。一例を挙げると図3に示す通りであり、図3の(1)に示すように、積層体の外周部のみに良好接着部分10が配置され、積層体の内部に易剥離部分20が配置されているパターンや、図3の(2)に示すように、積層体の外周部とともに内部にも線状に良好接着部分10が配置されたパターンが挙げられる。」 カ 段落[0102] 「[0102]<加圧加熱処理> 本発明の積層体の製造方法においては、前記エッチングの後、前記支持体と前記ポリイミドフィルムとを重ね合わせて加圧加熱処理する。これにより、支持体とポリイミドフィルムとを接着させることができる。 また一般に、支持体とポリイミドフィルムとの積層体を得る方法としては、支持体の上にポリイミドワニス(上述したポリアミド酸溶液)を直接塗布しイミド化させて製膜する方法も考えられるが、本発明では、ポリイミドをフィルム化した後、支持体に積層する。これは、ポリアミド酸溶液を支持体上で加熱してイミド化すると、例えば、支持体にもよるが同心円状の膜厚分布ができやすくなったり、ポリイミドフィルムの表と裏の状態(熱の伝わり方等)が異なるために反りや支持体からの浮きがあるフィルムになりやすいのに対して、予めフィルム化しておけば、これらの問題を回避できるからである。さらに、支持体にフィルムを重ね合わせるようにすることで、後述する加圧加熱処理を行い得る範囲において、重ね合わせる前にフィルムにデバイス(回路等)を形成しておくことも可能になる。」 キ 段落[0111]-[0113] 「[0111](デバイス構造体の製造方法) 本発明のデバイス構造体の製造方法は、支持体とポリイミドフィルムとを有する本発明の積層体を用いて、基材であるポリイミドフィルム上にデバイスが形成されてなる構造体を製造する方法である。 本発明のデバイス構造体の製造方法においては、本発明の積層体のポリイミドフィルム上にデバイスを形成した後、前記積層体の易剥離部分のポリイミドフィルムに切り込みを入れて該ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離する。 [0112] 前記積層体の易剥離部分のポリイミドフィルムに切り込みを入れる方法としては、刃物によってポリイミドフィルムを切断する方法や、レーザーと該積層体を相対的にスキャンさせることによりポリイミドフィルムを切断する方法、ウェータージェットと該積層体を相対的にスキャンさせることによりポリイミドフィルムを切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつポリイミドフィルムを切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。 [0113] 前記積層体の易剥離部分のポリイミドフィルムに切り込みを入れるにあたり、切り込みを入れる位置は、少なくとも易剥離部分の一部を含んでいればよく、基本的にはパターンに従って切断するのが通常である。ただし、正確にパターンに従い良好接着部分と易剥離部分の境で切断しようとすると誤差も生じることから、パターンより若干易剥離部分側に切り込むことが生産性を上げる点で好ましい。また、剥離させるまでに勝手に剥離してしまうことを防ぐうえでは、該パターンより若干良好接着部分に切り込む生産方式もありえる。更には、良好接着部分の巾を狭く設定するようにすれば、剥離時に良好接着部分に残存するポリイミドフィルムを減らすことができ、フィルムの利用効率が向上し、該積層体面積に対するデバイス面積が多くなり、生産性が向上する。更には、積層体の外周部の一部に易剥離部分を設けるようにしておき、該外周部を切断位置として、実際には切り込みを入れずに剥がす方式も、本発明の極端な一形式となりえる。」 (5) 引用文献5の記載 引用文献5には、図面(特に、図1)とともに、以下の記載がある。 ア 段落【0001】 「【0001】 本発明は、電子デバイス、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池、リチウムイオン電池、デジタルサイネージ、タッチパネル、電子ペーパー等のガラス基板に使用されるガラスフィルムや、有機EL照明のカバーガラスや医薬品パッケージ等に使用されるガラスフィルムを、支持ガラスによって支持したガラスフィルム積層体、及びガラスフィルムに関する。」 イ 段落【0040】 「【0040】 本発明に係るガラスフィルム積層体(1)は、図1に示す通り、ガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とで構成される。支持ガラス(3)の接触面には、表面粗さが相対的に小さい平滑面(4)と表面粗さが相対的に大きい粗面(5)とが設けられ、ガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とは、接着剤等を使用することなく積層されている。」 ウ 段落【0042】 「【0042】 ガラスフィルム(2)の厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは5μm?200μm、最も好ましくは5μm?100μmである。これによりガラスフィルム(2)の厚みをより薄くして、適切な可撓性を付与することができる。また、ガラスフィルム(2)の厚みを薄くすると、ハンドリング性が困難で、かつ、位置決めミスやパターニング時のずれ等の問題が生じやすくなるおそれがあるが、本発明では支持ガラス(3)を使用することにより、製造関連処理を容易に行うことができる。一方、ガラスフィルム(2)の厚みが5μm未満であると、ガラスフィルム(2)の強度が不足がちになり、ガラスフィルム積層体(1)からガラスフィルム(2)を剥離して、デバイスに組み込む際に破損を招き易くなる。他方、ガラスフィルム(2)の厚みが300μmを超えると、ガラスフィルムに可撓性を付与させ難くなるおそれがある。」 エ 段落【0047】 「【0047】 支持ガラス(3)の接触面には、図1に示す通り、平滑面(4)と粗面(5)とが設けられている。支持ガラス(3)の接触面にガラスフィルム(2)を貼り合わせることにより、平滑面(4)では密着性がよいため、ガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とが強い力で接着しつつ、粗面(5)ではガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とが弱い力で接着する。これにより、支持ガラス(3)上にガラスフィルム(2)を強固に積層させた状態で製造関連処理を施すことができると共に、製造関連処理後においては粗面(5)からガラスフィルム(2)を容易に剥離することができる。尚、図1、図3、図4の平面図において、支持ガラス(3)の接触面における粗面(5)については、斜線を付している。また、図1、図4、及び図5の断面図において、粗面(5)については、太線で表示をしている。」 オ 段落【0051】 「【0051】 図1に示す通り、支持ガラス(3)の接触面の外周部に沿って平滑面(4)が設けられ、平滑面(4)に囲まれた内部に、表面粗さRaが相対的に大きい粗面(5)が設けられている構成とすることができる。これにより、少ない接着面積でガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とをガラスフィルム積層体(1)の外周部に沿って強固に接着させることができる。製造関連処理工程に液体を使用する工程を有していたとしても、ガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)との隙間から液体が浸入することを防止することができ、ガラスフィルム(2)と支持ガラス(3)とが容易に剥離するのを防止することができる。」 2.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1) 引用発明の「透明なフィルム基材1」、「アンダーコート層2」、「透明導電体層3」、「粘着剤層4」、「透明基体5」は、それぞれ、本願発明の「薄膜層」、「バッファ層」、「センシング層」、「接合層」、「カバープレート」に相当する。 よって、引用発明において、「透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介して、透明導電体層3を有し、透明なフィルム基材1の透明導電体層3が設けられていない面に透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた構造の透明導電性フィルムであ」ることは、本願発明において、 「カバープレートと、 接合層と、 薄膜層と、 前記薄膜層上に位置するバッファ層と、 前記バッファ層上に位置するセンシング層と を含み、 前記接合層が前記カバープレートと前記薄膜層との間に位置し、 前記薄膜層が前記接合層と前記バッファ層との間に位置し、 前記バッファ層が前記センシング層と前記薄膜層との間に位置」することに相当する。 (2) 引用発明において、「前記フィルム基材1の材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等を用いることができる」ことは、本願発明において、「前記薄膜層の材料が、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィン共重合体のうちの一つ又はこれらの組み合わせを含」むことに相当する。 よって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。 <一致点> 「カバープレートと、 接合層と、 薄膜層と、 前記薄膜層上に位置するバッファ層と、 前記バッファ層上に位置するセンシング層と、 を含み、 前記接合層が前記カバープレートと前記薄膜層との間に位置し、 前記薄膜層が前記接合層と前記バッファ層との間に位置し、 前記バッファ層が前記センシング層と前記薄膜層との間に位置し、 前記薄膜層の材料が、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィン共重合体のうちの一つ又はこれらの組み合わせを含む タッチパネル。」 [相違点1] 本願発明は、「前記センシング層上に位置する保護層」を含み、「前記センシング層が前記バッファ層と前記保護層との間に位置し、前記保護層が環境中の物質によるセンシング層の腐食を減らし」ているのに対し、引用発明では、このような保護層について特定していない点。 [相違点2] 本願発明では、「前記薄膜層の厚さが0.1μmから15μmであ」るのに対し、引用発明では、「前記フィルム基材1の厚みは、2?200μmの範囲内であ」り、厚さの範囲が異なっている点。 [相違点3] 本願発明では、「前記薄膜層は、溶液を基板に塗布してからさらに前記溶液を硬化させることによって形成され、前記基板の周辺領域において前記薄膜層との間には接着層が形成されている」のに対し、引用発明では、フィルム基材1の形成方法が特定されていない点。 3.判断 [相違点1]について タッチパネルにおいて、センシング層上に保護層を設けることにより環境中の物質によるセンシング層の腐食を減らすことは、周知技術である(例えば、引用文献2(上記「第6」の1.(2)、及び、図6)、引用文献3(上記「第6」の1.(3))を参照されたい。)。 そして、引用発明のタッチパネルにおいて、環境中の物質によるセンシング層の腐食を避けたいということは、当業者が当然に認識している課題であるから、引用発明に上記周知技術を適用し、「前記センシング層上に位置する保護層」を含み、「前記センシング層が前記バッファ層と前記保護層との間に位置し、前記保護層が環境中の物質によるセンシング層の腐食を減ら」すように構成することは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2]について 引用文献1の「フィルム基材1の厚みが2μm未満であると、フィルム基材1の機械的強度が不足し、このフィルム基材1をロール状にしてアンダーコート層2、透明導電体層3を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電体層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れなくなる場合がある。」(上記「第6」の1.(1)エ)との記載から、フィルム基材1の厚みを機械的強度が不足しない範囲で可能な限り薄くしようとしていることが読み取れる。 また、引用文献1(上記「第6」の1.(1)オ)に、フィルム基材1の例として厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが記載されるとともに、引用文献1(上記「第6」の1.(1)ウの段落【0028】)に、フィルム基材1として「ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等」を用いることができることが記載されており、フィルム基材1の材料として、ポリエチレンテレフタレートよりも強度の強い材料を用いれば、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと同等の強度を保ちつつさらに厚さを薄くできることは、明らかである。 これらを踏まえると、引用発明において、フィルム基材1の厚みを機械的強度が不足しない範囲で可能な限り薄くしようとすれば、フィルム基材1の厚みは2μmまで薄くすることができるものであるから、引用発明において、本願発明のように、「0.1μmから15μmであ」るフィルム基材1を採用するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点3]について タッチパネルに用いられるフィルム基材の製造方法として、支持基板に、フィルムの外周部が接触する領域に良好接着部分を形成した状態で、支持基板上にフィルムを形成し、その後、当該支持基板を除去することにより膜厚3?150μm、5?100μm程度のフィルム基材を得ることは、周知技術である(例えば、引用文献4(上記「第6」の1.(4)ア、ウ-オ、及び、図1、3)、引用文献5(上記「第6」の1.(5)、及び、図1)を参照されたい。)。なお、支持基板の、フィルムの外周部が接触する領域に良好接着部分を形成した場合に、支持基板とフィルムとの積層体に、良好接着部分で切り込みを入れ、支持基板をフィルムから剥離することも、周知技術である(例えば、引用文献4(上記「第6」の1.(4)キ)を参照されたい。)。 また、タッチパネルに用いられるポリイミド樹脂などからなるフィルム基材を、支持基板上に溶液を塗布、乾燥(熱硬化)させて形成することは、当該技術分野において一般的に行われている技術である(例えば、引用文献4(上記「第6」の1.(4)イ、カ-キ)を参照されたい。)。 そうすると、引用発明の薄いフィルム基材を得るため、上記周知技術の、支持基板に、フィルムの外周部が接触する領域に良好接着部分を形成した状態で、支持基板上に溶液を塗布し、乾燥(熱硬化)させてフィルムを形成し、その後、当該支持基板をフィルムから剥離する手法を適用することは、当業者が容易になし得たことである。 さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。 4.小括 本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 また、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 さらに、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-07-29 |
結審通知日 | 2019-07-31 |
審決日 | 2019-08-19 |
出願番号 | 特願2016-518113(P2016-518113) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 537- WZ (G06F) P 1 8・ 55- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
白井 亮 梶尾 誠哉 |
発明の名称 | タッチパネル |
代理人 | 清原 義博 |