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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1358543 |
審判番号 | 不服2018-14890 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-07 |
確定日 | 2020-01-06 |
事件の表示 | 特願2015- 64226「ロジック実行装置及び設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月20日出願公開、特開2016-184291〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年3月26日の出願であって,平成29年3月15日付けで審査請求がなされ,平成30年2月5日付けで拒絶理由通知(同年2月13日発送)がなされ,同年4月16日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年7月30日付けで拒絶査定(原査定)(同年8月7日謄本送達)がなされ,これに対し,同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,令和元年6月28日付けで当審より拒絶理由通知がなされ(同年7月2日発送),同年9月2日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は,令和元年9月2日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。 「第一の演算処理モジュールと、複数の通信モジュールとを有する現用系ベースユニットと、 第二の演算処理モジュールと、複数の通信モジュールとを有する冗長系ベースユニットと、を備え、 現用系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールと、冗長系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールは、第一のループ型ネットワークを介して通信可能であり、 現用系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールと、冗長系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールは、第二のループ型ネットワークを介して通信可能であり、 前記現用系ベースユニットは、自己が有するいずれか一つの通信モジュールに障害が生じた場合に、前記冗長系ベースユニットへ処理の切替を行い、 前記現用系ベースユニット及び前記冗長系ベースユニットの各通信モジュールはそれぞれ個別にメモリを有し、 前記現用系ベースユニットの通信モジュールは、前記第一のループ型ネットワークを介して通信する前記冗長系ベースユニットの通信モジュールに設けられたメモリに情報を書き込む場合に、自装置のメモリにおいて前記情報が格納されているアドレスと同一のアドレスが割り当てられたメモリ領域に前記情報を書き込む、 ロジック実行装置。」 第3 拒絶の理由 令和元年6月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は,次のとおりのものである。 [理由1]本件出願の請求項1ないし4に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特表2007-525107号公報 引用文献2:特開2004-54907号公報 引用文献3:特開2012-230446号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 ア 引用文献1には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0012】 図1は、通信ネットワーク100の一実施形態の上位ブロック図である。ネットワーク100の実施形態は、安全性が重大なアプリケーションにおいて(たとえば、航空または自動車用アプリケーションにおいて)使われる分散型耐故障システムにおける、そのシステムとの、またはそのシステムとしての使用に適している。図1に示される実施形態において、ネットワーク100は、マスター/スレーブTTP/Aプロトコルアーキテクチャを用いて実装される。ネットワーク100は、1つのマスターノードペア102(ここでは、「マスターペア」102とも呼ばれる)および多数のスレーブノードペア104(ここでは、「スレーブペア」102とも呼ばれる)を含む。図1に示される実施形態では、ネットワーク100を介してマスターペア102と通信する3つのスレーブノードペア104(個別に「スレーブペアA」、「スレーブペアB」、および「スレーブペアC」で示す)がある。他の実施形態では、他の数のサブシステムが使われる。 【0013】 図1に示される実施形態において、各ノードペア102、104は、2つの冗長ノードを含む。他の実施形態では、ネットワーク100内のノードペア102および/または104の1つまたは複数によって実施される機能は、異なる数のノードを有して(たとえば、単一のノードまたは3つ以上のノードを使って)実装される。マスターペア102は、2つのマスターノード106を含む。マスターノード106はここでは、それぞれ、個別に「マスターノードA」および「マスターノードB」と呼ばれる。各マスターノード106は、マスターノード向けにTTP/A仕様において指定された通信および制御機能を実装する。一実装形態では、マスターノード106の1つは、1次マスターノードと指定され、そうすることが可能な場合は、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施する。このような実装において、他方のマスターノード106は、2次またはバックアップマスターノード106と指定される。1次マスターノードが、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施中(ここでは、「アクティブ」モードで動作中とも呼ばれる)の間、2次マスターノード106は、「シャドー」モードで動作し、このモードでは、2次マスターノード106は、ネットワーク100内の通信を監視し、そうすることによって、1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には、2次マスターノード106が、ネットワーク100のためのマスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐことが可能になる。他の実装形態では、他の二重冗長性方式が用いられる。」 B 「【0016】 マスターペア102は、2つの通信チャネル112を介してスレーブサブシステム104と通信する。通信チャネル112はそれぞれ、各ノードを、そのノードの2つの隣接ノードに接続する多重双方向直列リンク114を含むリングとして実装される。2つのチャネル112はここでは、それぞれ、個別に「チャネル0」または「リング0」および「チャネル1」または「リング1」とも呼ばれる。たとえば、図1に示されるように、リング0の一部であるリンク114は、マスターノードAを、マスターノードBに時計回り方向に結合し、リング0の一部である別のリンク114は、マスターノードAを、スレーブペアCのスレーブノードAに反時計回り方向に結合する。2つのリングが図1に示されているが、他の実施形態では、より多くのまたはより少ないリングが使われる(たとえば、図11に示される実施形態では、1つのリングが使われる)ことが理解されるべきである。 【0017】 図1に示される具体的な実施形態において、ノード106、108は、TTP/Aリニアバス構成要素を使って実装される。つまり、ノード106、108はそれぞれ、通常はTTP/Aノードを1つまたは複数のリニアバスに結合するのに使われるTTP/A構成要素を使って実装される。図1に示される具体的な実施形態において、各ノード106、108は、4つのリニアバスを介して通信するように適合される。各リニアバスノードは、1対のリングインタフェースユニット120を用いてリングに結合される。このような各リニアバスノードに対して、一方のリングインタフェースユニット120(ここでは、個別にリングインタフェースユニット120-0と呼ばれる)が、ノードをリング0に結合し、他方のリングインタフェースユニット(ここでは、個別にリングインタフェースユニット120-1と呼ばれる)が、ノードをリング1に結合する。このようにして、TTP/Aリニアバス構成要素は、図1の二重リングバストポロジにおいて使われ得る。より全般的には、リングインタフェースユニット120は、このようなリニアバス構成要素を利用して達成され得る完全性および/または信頼性を向上させるために、このようなトポロジにおける使用以外のためには設計されていないリニアバス構成要素を使って、リングバストポロジ(または同様のトポロジ)を実装するのに使われ得る。 【0018】 各リングインタフェースユニット120は、図1で、対応するノードとは別個のものとして示されているが、他の実施形態ではリングインタフェースユニット120は、対応するノードに統合される(たとえば、TTP/Aインタフェース構成要素が、ネットワーク100のリングバストポロジを直接サポートする場合)。また、他の実施形態では、本明細書において所与のリニアバスノード向けの1対のリングインタフェースユニット120-0、120-1によって実施されるものとして記載される機能は、単一のリングインタフェースユニットを用いて実装される。」 C 「【0026】 図2は、図1に示されるネットワーク100における使用に適したマスターノード106の一実施形態のブロック図である。マスターノード106は、アプリケーション202を実行するホスト200を含む。マスターノード106の高水準機能を実装するアプリケーション202。図2に示される実施形態において、ホスト200は、アプリケーション202を実行するプログラム可能なプロセッサ204を使って実装される。ホスト200は、このような実施形態において、アプリケーション202およびアプリケーション202によって使われるデータ構造208を格納するメモリ206を含む。たとえば、このような実施形態の一実装形式において、アプリケーション202は、飛行機内のドアを制御し、かつ/または監視するサブシステムなど、車両のサブシステムを監視し、かつ/または制御する制御アプリケーションである。このような実装において、スレーブノード108に結合されたトランスデューサ110は、飛行機内のドアを監視し、かつ/または制御するのに使われる。」 D 「【図1】 マスターノードAのリングインタフェース120-0と,マスタノードBのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続される旨,マスターノードAのリングインタフェース120-0と,マスタノードBのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続される旨,通信ネットワーク100内のリング0及びリング1は,それぞれループ型である旨が記載されている。」 イ ここで,上記引用文献1に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの【0012】の「ネットワーク100は、1つのマスターノードペア102(ここでは、「マスターペア」102とも呼ばれる)および多数のスレーブノードペア104(ここでは、「スレーブペア」102とも呼ばれる)を含む」との記載から,マスターペア102はマスターノードペア102とも呼ばれるところ,上記Aの【0013】の「マスターペア102は、2つのマスターノード106を含む」及び「マスターノード106の1つは、1次マスターノードと指定され、そうすることが可能な場合は、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施する。このような実装において、他方のマスターノード106は、2次またはバックアップマスターノード106と指定される」との記載から,マスターペア102は2つのマスターノード106を含み,2つのマスターノード106は,1次マスターノード及び2次マスターノードと指定されるので,引用文献1には,“マスターペアは1次マスターノード及び2次マスターノードを含”むことが記載されている。 (イ)上記Aの【0013】の「ネットワーク100内のノードペア102および/または104の1つまたは複数によって実施される機能は、異なる数のノードを有して(たとえば、単一のノードまたは3つ以上のノードを使って)実装される」との記載におけるノードペア102は,マスターペア102を指していると認められるところ,ノードペア102は,単一のノードを使って実装されることを含むことから,引用文献1には,“マスターペアで実施される機能は単一のノードで実装され”ることが記載されている。 (ウ)上記Aの【0013】の「1次マスターノードが、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施中(ここでは、「アクティブ」モードで動作中とも呼ばれる)の間、2次マスターノード106は、「シャドー」モードで動作」との記載から,引用文献1には,“1次マスターノードがアクティブモードで動作中に,2次マスターノードはシャドーモードで動作”することが記載されている。 (エ)上記Cの「マスターノード106は、アプリケーション202を実行するホスト200を含む」との記載から,マスターノード106はホスト200を含むと認められ,引き続き,上記Cの「ホスト200は、アプリケーション202を実行するプログラム可能なプロセッサ204を使って実装される」との記載から,ホスト200は,プロセッサ204を使って実装されると認められるところ,上記Aの【0013】の「マスターノード106の1つは、1次マスターノードと指定され、そうすることが可能な場合は、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施する。このような実装において、他方のマスターノード106は、2次またはバックアップマスターノード106と指定される」との記載から,マスターノード106として,1次マスターノード及び2次マスターノードが指定されることから,引用文献1には,“1次マスターノード及び2次マスターノードは,プロセッサ204を使って実装されるホスト200を含”むことが記載されている。 (オ)上記Bの【0017】の「各ノード106、108は、4つのリニアバスを介して通信するように適合される。各リニアバスノードは、1対のリングインタフェースユニット120を用いてリングに結合される。」との記載について,上記(ア)での認定から,各ノード106とは,1次マスターノード及び2次マスターノードを指すものと認められるところ,各リニアバスノードとは,ノード106を含むものと認められる。 また,上記Bの【0018】の「他の実施形態ではリングインタフェースユニット120は、対応するノードに統合される(たとえば、TTP/Aインタフェース構成要素が、ネットワーク100のリングバストポロジを直接サポートする場合)」との記載より,リングインタフェースユニット120は,対応するノードに統合されることから,以上総合して,引用文献1には,“1次マスターノード及び2次マスターノードは,統合される1対のリングインタフェースユニット120を用いてリングに結合され”ることが記載されている。 (カ)上記Bの【0017】の「各リニアバスノードは、1対のリングインタフェースユニット120を用いてリングに結合される。」との記載,上記Bの【0018】の「1対のリングインタフェースユニット120-0、120-1」との記載から,1対のリングインタフェースユニット120は,リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1から構成されることは明らかであるので,引用文献1には,“1対のリングインタフェースユニット120は,リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1から構成され”ることが記載されている。 (キ)上記Dの「マスターノードAのリングインタフェース120-0と,マスタノードBのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続される」及び「マスターノードAのリングインタフェース120-1と,マスタノードBのリングインタフェース120-1が,リング1を介して接続される」との記載について,上記Aの【0013】の「マスターノード106はここでは、それぞれ、個別に「マスターノードA」および「マスターノードB」と呼ばれる。」及び「マスターノード106の1つは、1次マスターノードと指定され、そうすることが可能な場合は、ネットワーク100のためにマスターノード処理を実施する。このような実装において、他方のマスターノード106は、2次またはバックアップマスターノード106と指定される。」との記載より,マスターノードA及びマスターノードBのいずれかが,1次マスターノード及び2次マスターノードのいずれかに該当すると認められるから,引用文献1には,“1次マスターノードのリングインタフェース120-0と,2次マスターノードのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続され,1次マスターノードのリングインタフェース120-1と,2次マスターノードのリングインタフェース120-1が,リング1を介して接続され”る点が記載されている。 (ク)上記Bの【0016】の「2つのチャネル112はここでは、それぞれ、個別に「チャネル0」または「リング0」および「チャネル1」または「リング1」とも呼ばれる。」との記載について,チャネル112とは,上記Bの【0016】の「通信チャネル112はそれぞれ、各ノードを、そのノードの2つの隣接ノードに接続する多重双方向直列リンク114を含むリングとして実装される。」との記載から,通信チャネル112であることは明らかであるので,引用文献1には,“リング0及びリング1は,通信チャネルとも呼ばれ”ることが記載されている。 (ケ)上記Dの「通信ネットワーク100内のリング0及びリング1は,それぞれループ型である」との記載から,引用文献1には,“リング0及びリング1は,通信ネットワーク100内でそれぞれループ型であ”る点が記載されている。 (コ)上記Aの【0013】の「1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には、2次マスターノード106が、ネットワーク100のためのマスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ」との記載から,引用文献1には,“1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には、2次マスターノードが、マスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ”ことが記載されている。 ウ 上記イで検討した事項を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「マスターペアは1次マスターノード及び2次マスターノードを含み,マスターペアで実施される機能は単一のノードで実装され,1次マスターノードがアクティブモードで動作中に,2次マスターノードはシャドーモードで動作し,1次マスターノード及び2次マスターノードは,プロセッサ204を使って実装されるホスト200を含み,1次マスターノード及び2次マスターノードは,統合される1対のリングインタフェースユニット120を用いてリングに結合され,1対のリングインタフェースユニット120は,リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1から構成され,1次マスターノードのリングインタフェース120-0と,2次マスターノードのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続され,1次マスターノードのリングインタフェース120-1と,2次マスターノードのリングインタフェース120-1が,リング1を介して接続され,リング0及びリング1は,通信チャネルとも呼ばれ,リング0及びリング1は,通信ネットワーク100内でそれぞれループ型であり,1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には、2次マスターノードが、マスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐマスターペア。」 2 引用文献2の記載 ア 引用文献2には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) E 「【0002】 【発明の背景】 ファクトリーオートメーション(FA)の制御装置として、プログラマブルコントローラ(PLC)が用いられている。このPLCは、複数のユニットから構成される。すなわち、電源供給源の電源ユニット,PLC全体の制御を統率するCPUユニット,FAの生産装置や設備装置の適所に取り付けたスイッチやセンサの信号を入力する入力ユニット,アクチュエータなどに制御出力を出す出力ユニット,通信ネットワークに接続するための通信ユニットなどの各種のユニットを適宜組み合わせて構成される。」 F 「【0027】 【発明の実施の形態】 図1は、本発明に係るプログラマブルコントローラを用いて構築されるネットワークシステムの一例を示している。すなわち、本発明の一実施の形態であるプログラマブルコントローラ10と、従来からある通常のプログラマブルコントローラ20が、リング方式で配線された伝送路30(通信回線)に接続された構成となっている。このリング方式は、例えば特開2001-156818号公報に開示された発明の技術を適用することができる。また、本実施の形態では、通信ユニットが二重化された本発明のPLC10と、二重化されていない通常のPLC20とが混在したネットワークシステム構成としているが、全てのノードが本発明に対応する二重化されたPLC10により構成されていてももちろんよい。」 G 「【0031】 さらに、第1,第2通信ユニット13,14を特定する通信ユニットを特定する情報(アドレス情報)、つまり、ノード番号(図1の場合は、ノード1)とユニット番号を同一にしている。このアドレス情報の設定は、通信ユニットに備えられたロータリスイッチなどによるアドレス設定スイッチ(図示せず)を用いて行うことができる。もちろん、設定ツール31を用いて通信ユニットの所定のメモリエリアにアドレス情報を格納するようにしても良い。 【0032】 これにより、例えば第1,第2通信ユニット13,14は、アクティブになっているものがデータリンク機能実行時にCPUユニット12との間でデータ交換を行うが、データリンクを行う際のメモリの割り付けはノード番号に基づいてそれぞれ設定されるため、第1,第2通信ユニット13,14のノード番号が同一であることから、何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし、データ交換をすることができる。また、ノード番号並びにユニット番号が同一であることから、ネットワーク(伝送路30)に接続された他のノードとの間のデータ通信(メッセージの送受)も、仮にアクティブの通信ユニットが切替わったとしても、通信相手先は、係る変更の有無にかかわらず同一のあて先に対してメッセージやレスポンスを送ることができる。 ・・・(略)・・・ 【0036】 第1,第2通信ユニット13,14は、同一の構成を採っている。具体的には、ネットワーク(伝送路30)に接続し、通信の制御を司る通信部インタフェース13a,14aと、各種の処理を実行するMPU13b,14bと、メモリ13c,14cを、システムバスに接続され、データの送受を行うインターフェースASIC13d,14dと備えている。 【0037】 メモリ13c,14cには、通信部インタフェース13a,14aを介して受信したメッセージを記憶するメッセージ受信メモリエリアと、CPUユニット12からシステムバス10aを介して取得した送信メッセージを記憶するメッセージ送信メモリエリアと、データリンクするデータを一時的に格納するためのデータリンクメモリエリアと、インタフェースの制御情報を格納するエリアなどを備えている。」 H 「【0044】 なお、アクティブの通信ユニットで異常が発生しても、スタンバイの通信ユニットがアクティブに切替わることにより、通信を継続できるので、PLC10はそのまま継続して通信をすることができ、制御・運転を継続できる。さらに、ネットワーク(伝送路30)に接続されているので、係る異常が発生したことを伝送路経由で他のノードやツールなどに通知することができる。なお、異常を検知する処理機能自体は、基本的に従来のものを適用できる。」 イ ここで,上記引用文献2に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Fの「通信ユニットが二重化された本発明のPLC10」との記載,上記Eの「プログラマブルコントローラ(PLC)」との記載から,引用文献2には,“通信ユニットが二重化され”たPLC(プログラマブルコントローラ)10が記載されている。 (イ)上記Fの「すなわち、本発明の一実施の形態であるプログラマブルコントローラ10と、従来からある通常のプログラマブルコントローラ20が、リング方式で配線された伝送路30(通信回線)に接続された構成となっている。」との記載は,上記(ア)での認定から,「プログラマブルコントローラ10」とは「PLC10」を指すことは明らかであるから,引用文献2には,“リング方式で配線された伝送路30(通信回線)に接続されたPLC(プログラマブルコントローラ)10”が記載されている。 (ウ)上記Gの【0031】の「第1,第2通信ユニット13,14」は,上記(ア)での認定から,PLC10が備えることは明らかであるので,引用文献2には,PLC10が“第1,第2通信ユニット13,14を備え”ることが記載されている。 (エ)上記Gの【0036】の「第1,第2通信ユニット13,14は、同一の構成を採っている。具体的には、ネットワーク(伝送路30)に接続し、通信の制御を司る通信部インタフェース13a,14aと、各種の処理を実行するMPU13b,14bと、メモリ13c,14cを、システムバスに接続され、データの送受を行うインターフェースASIC13d,14dと備えている。」との記載から,引用文献2には,“第1,第2通信ユニット13,14は,メモリ13c,14cを備え”ることが記載されている。 (オ)上記Gの【0037】の「メモリ13c,14cには、通信部インタフェース13a,14aを介して受信したメッセージを記憶するメッセージ受信メモリエリアと、CPUユニット12からシステムバス10aを介して取得した送信メッセージを記憶するメッセージ送信メモリエリアと、データリンクするデータを一時的に格納するためのデータリンクメモリエリアと、インタフェースの制御情報を格納するエリアなどを備えている。」との記載から,引用文献2には,“メモリ13c,14cには,データリンクするデータを一時的に格納するためのデータリンクメモリエリアを備え”ることが記載されている。 (カ)上記Gの【0032】の「第1,第2通信ユニット13,14は、アクティブになっているものがデータリンク機能実行時にCPUユニット12との間でデータ交換を行うが、データリンクを行う際のメモリの割り付けはノード番号に基づいてそれぞれ設定されるため、第1,第2通信ユニット13,14のノード番号が同一であることから、何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし、データ交換をすることができる」との記載から,引用文献2には,“第1,第2通信ユニット13,14は、アクティブになっているものがデータリンク機能実行時にCPUユニット12との間でデータ交換を行うが、データリンクを行う際のメモリの割り付けはノード番号に基づいてそれぞれ設定されるため、第1,第2通信ユニット13,14のノード番号が同一であることから、何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし、データ交換”することが記載されている。 (キ)上記Hの【0044】の「アクティブの通信ユニットで異常が発生しても、スタンバイの通信ユニットがアクティブに切替わることにより、通信を継続できるので、PLC10はそのまま継続して通信をすることができ、制御・運転を継続できる」との記載から,引用文献2には,“アクティブの通信ユニットで異常が発生しても、スタンバイの通信ユニットがアクティブに切替わることにより、通信を継続できるので、PLC10はそのまま継続して通信をすることができ、制御・運転を継続できる”ことが記載されている。 (ク)上記Fの「ネットワークシステム」との記載から,引用文献2には,“ネットワークシステム”が記載されている。 ウ 上記イで検討した事項を踏まえると,引用文献2には,以下の技術が記載されているものと認められる。 「通信ユニットが二重化され,リング方式で配線された伝送路30(通信回線)に接続されたPLC(プログラマブルコントローラ)10が,第1,第2通信ユニット13,14を備え,第1,第2通信ユニット13,14は,メモリ13c,14cを備え,メモリ13c,14cには,データリンクするデータを一時的に格納するためのデータリンクメモリエリアを備え,第1,第2通信ユニット13,14は、アクティブになっているものがデータリンク機能実行時にCPUユニット12との間でデータ交換を行うが、データリンクを行う際のメモリの割り付けはノード番号に基づいてそれぞれ設定されるため、第1,第2通信ユニット13,14のノード番号が同一であることから、何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし、データ交換し,アクティブの通信ユニットで異常が発生しても、スタンバイの通信ユニットがアクティブに切替わることにより、通信を継続できるので、PLC10はそのまま継続して通信をすることができ、制御・運転を継続できるネットワークシステム。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「マスターペア」は,「マスターペアで実施される機能は単一のノードで実装され」るところ,機能を実施する際に,所定のロジックを実行することは明らかであることに加え,単一のノードが装置で実装されることも明らかであるので,本願発明の「ロジック実行装置」に相当する。 イ 引用発明の「1次マスターノード」,「2次マスターノード」は,「1次マスターノードがアクティブモードで動作中に,2次マスターノードはシャドーモードで動作」することから,それぞれ,「現用系」のマスターノード,「冗長系」のマスターノードといえることに加え,「1次マスターノード及び2次マスターノードは,プロセッサ204を使って実装されるホスト200を含」むことから,ベースユニットといえることも明らかであるので,引用発明の「1次マスターノード」,「2次マスターノード」は,それぞれ,本願発明の「現用系ベースユニット」,「冗長系ベースユニット」に相当する。 ウ 引用発明の「1次マスターノード及び2次マスターノードは,プロセッサ204を使って実装されるホスト200を含」むことは,プロセッサが演算処理モジュールであることは明らかであるので,引用発明における,「1次マスターノード」が含む「プロセッサ204を使って実装されるホスト200」,「2次マスターノード」が含む「プロセッサ204を使って実装されるホスト200」は,それぞれ,本願発明の「第一の演算処理モジュール」,「第二の演算処理モジュール」に相当する。 エ 引用発明の「1対のリングインタフェースユニット120」について,「1対のリングインタフェースユニット120は,リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1から構成され」るところ,「1次マスターノードのリングインタフェース120-0と,2次マスターノードのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続され,1次マスターノードのリングインタフェース120-1と,2次マスターノードのリングインタフェース120-1が,リング1を介して接続され,リング0及びリング1は,通信チャネルとも呼ばれ」ることから,リング0を介して接続されるリングインタフェース120-0と,リング1を介して接続されるリングインタフェース120-1が,それぞれ通信を行っていることは明らかであるので,引用発明の「リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1」が,本願発明の「複数の通信モジュール」に相当する。 オ 上記ウでの認定,上記エでの認定に加え,引用発明の「1次マスターノード及び2次マスターノードは,統合される1対のリングインタフェースユニット120を用い」ることは,1次マスターノード及び2次マスターノードは,1対のリングインタフェースユニット120と統合されることから,1次マスターノード及び2次マスターノードが,1対のリングインタフェースユニット120を有していると認められるから,引用発明の「1次マスターノード」及び「2次マスターノード」は,それぞれ,本願発明の「第一の演算処理モジュールと、複数の通信モジュールとを有する現用系ベースユニット」,「第二の演算処理モジュールと、複数の通信モジュールとを有する冗長系ベースユニット」に相当する。 カ 引用発明の「リング0」,「リング1」は,「リング0及びリング1は,通信チャネルとも呼ばれ,リング0及びリング1は,通信ネットワーク100内でそれぞれループ型であ」ることから,それぞれ,本願発明の「第一のループ型ネットワーク」,「第二のループ型ネットワーク」に相当する。 キ 上記エでの認定ないし上記カでの認定から,引用発明の「1次マスターノードのリングインタフェース120-0と,2次マスターノードのリングインタフェース120-0が,リング0を介して接続され,1次マスターノードのリングインタフェース120-1と,2次マスターノードのリングインタフェース120-1が,リング1を介して接続され」ることは,本願発明の「現用系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールと、冗長系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールは、第一のループ型ネットワークを介して通信可能であり、 現用系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールと、冗長系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールは、第二のループ型ネットワークを介して通信可能であ」ることに相当する。 ク 引用発明の「1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には,2次マスターノードが,マスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ」ことは,マスターノード処理について,実施が不可能となった1次マスターノードから第2マスターノードに実施を切り替えることに他ならないことから,引用発明の「1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には,2次マスターノードが,マスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ」点は,本願発明と“前記現用系ベースユニットから前記冗長系ベースユニットへ処理の切替を行う”点で共通する。 ケ 以上,アないしクで検討した事項を踏まえると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 [一致点] 第一の演算処理モジュールと,複数の通信モジュールとを有する現用系ベースユニットと, 第二の演算処理モジュールと,複数の通信モジュールとを有する冗長系ベースユニットと,を備え, 現用系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールと,冗長系ベースユニットにおけるいずれかの通信モジュールは,第一のループ型ネットワークを介して通信可能であり, 現用系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールと,冗長系ベースユニットにおける他のいずれかの通信モジュールは,第二のループ型ネットワークを介して通信可能であり, 前記現用系ベースユニットから前記冗長系ベースユニットへ処理の切替を行う, ロジック実行装置。 [相違点1] 本願発明は,前記現用系ベースユニットから前記冗長系ベースユニットへ処理の切替を行う場合として,「自己が有するいずれか一つの通信モジュールに障害が生じた場合」であることが特定されているのに対して,引用発明は,「2次マスターノードが、マスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ」ものであって,「自己が有するいずれか一つの通信モジュールに障害が生じた場合」であることは特定されていない点。 [相違点2] 本願発明は,「前記現用系ベースユニット及び前記冗長系ベースユニットの各通信モジュールはそれぞれ個別にメモリを有」する点,「前記現用系の通信モジュールは,前記第一のループ型ネットワークを介して通信する前記冗長系の通信モジュールに設けられたメモリに情報を書き込む場合に,自装置のメモリにおいて前記情報が格納されているアドレスと同一のアドレスが割り当てられたメモリ領域に前記情報を書き込む」点が特定されているのに対して,引用発明は,これらの点が,特に明記されていない点。 第6 判断 上記相違点1について検討する。 ア 相違点1について 引用発明は,「1次マスターノードがマスターノード処理を実施することが不可能になった場合には,2次マスターノードがマスターノード処理の実施を直ちに引き継ぐ」ものである。 また,引用文献2に記載されるように,「通信ユニットが二重化され,リング方式で配線された伝送路30(通信回線)に接続されたPLC(プログラマブルコントローラ)10が」,「アクティブの通信ユニットで異常が発生しても、スタンバイの通信ユニットがアクティブに切替わることにより、通信を継続できる」ことは周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。 そして,引用発明及び引用文献2記載の上記周知技術1は,ともにリング方式で配線された伝送路を介して通信を行う技術に関するものであるので,引用発明に,引用文献2記載の上記周知技術1を採用し,引用発明の1次マスターノードがアクティブモードで動作中に,マスターノード処理を実施することが不可能になった場合を,1対のリングインタフェースユニット120において,リングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1のうちのいずれか1つに異常が生じた場合とし,この場合に,シャドーモードで動作していた2次マスターノードが,マスターノード処理の実施を直ちに引き継いでマスターノード処理を行うよう構成することは,当業者ならば容易に想到し得ることであって,相違点1に係る構成は格別のものではない。 イ 相違点2について 引用文献2には,「第1,第2通信ユニット13,14は,メモリ13c,14cを備え,メモリ13c,14cには,データリンクするデータを一時的に格納するためのデータリンクメモリエリアを備え,第1,第2通信ユニット13,14は,アクティブになっているものがデータリンク機能実行時にCPUユニット12との間でデータ交換を行うが,データリンクを行う際のメモリの割り付けはノード番号に基づいてそれぞれ設定されるため,第1,第2通信ユニット13,14のノード番号が同一であることから,何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし,データ交換」する技術(以下,「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。 ここで,上記引用文献2記載の技術のうち,「第1,第2通信ユニット13,14は,メモリ13c,14cを備え」ることが,本願発明の「前記現用系ベースユニット及び前記冗長系ベースユニットの各通信モジュールはそれぞれ個別にメモリを有」することに相当する。 また,上記引用文献2記載の技術のうち,「何れがアクティブになっても同一のメモリエリアに対してアクセスし,データ交換」するに際して,メモリ13c,14cにおける同一のアドレスが割り当てられたメモリエリアに対してアクセスし,データ交換することは明らかであって,データ交換の際には,情報の書き込みが行われるものと認められる。 そして,引用発明及び上記引用文献2記載の技術は,ともにリング方式で配線された伝送路を介して通信を行う技術に関するものであるので,引用発明に,上記引用文献2記載の技術を採用し,引用発明における,1対のリングインタフェースユニット120を構成するリングインタフェースユニット120-0及びリングインタフェースユニット120-1に対して,それぞれメモリを備え,同一のアドレスが割り当てられたメモリエリアに対してアクセスし,情報を書き込むよう構成することは,当業者ならば容易に想到し得ることであって,相違点2に係る構成は格別なものではない。 ウ 小括 上記ア及び上記イで検討したごとく,相違点1及び相違点2に係る構成は,いずれも格別なものとはいえず,そして,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,引用文献2に記載された技術及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本願発明は,引用発明,引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-10-29 |
結審通知日 | 2019-11-05 |
審決日 | 2019-11-18 |
出願番号 | 特願2015-64226(P2015-64226) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田名網 忠雄 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
松平 英 山崎 慎一 |
発明の名称 | ロジック実行装置及び設定方法 |
代理人 | 特許業務法人 志賀国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 志賀国際特許事務所 |