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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1358598
異議申立番号 異議2018-701005  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-12 
確定日 2019-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6341303号発明「熱伝導シート、その製造方法及び熱伝導シートを用いた放熱装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6341303号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし22〕について訂正することを認める。 特許第6341303号の請求項2ないし22に係る特許を維持する。 特許第6341303号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6341303号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし22に係る特許についての出願は、2007年(平成19年)10月29日(優先権主張 平成18年11月1日(以下、「優先日」という。)、平成19年7月18日)を国際出願日とする特願2008-542104号の一部を平成25年7月8日に新たな特許出願(特願2013-142614号)とし、その一部を平成27年2月18日に新たな特許出願(特願2015-30012号)とし、その一部を平成29年2月8日に新たな特許出願(特願2017-21384号)としたものであって、平成30年5月25日にその特許権の設定登録(請求項の数22)がされ、同年6月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年12月12日に特許異議申立人 柴田 留理子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし22)がされ、平成31年3月5日付けで取消理由が通知され、令和1年5月7日に特許権者 日立化成株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年同月10日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許異議申立人から応答がされず、同年8月16日付けで取消理由(決定の予告)がされ、同年10月18日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたものである。
なお、令和1年5月7日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和1年10月18日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記黒鉛粒子(A)の長径の平均値が、熱伝導シート厚の10%以上である請求項1に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「鱗片状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している黒鉛粒子(A)と、Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、熱伝導シートの表面がスライス面であり、前記スライス面が前記黒鉛粒子(A)の断面を含み、前記黒鉛粒子(A)の鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向しており、 熱伝導シートの表面に露出している前記黒鉛粒子(A)の面積が25%以上80%以下であり、70℃におけるアスカーC硬度が60以下であり、前記黒鉛粒子(A)の長径の平均値が、熱伝導シート厚の41.7%以上である、熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし22についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4ないし22についても、請求項3を訂正したことに伴う訂正をする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2又は3に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし22についても、請求項4を訂正したことに伴う訂正をする。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項5を直接又は間接的に引用する請求項6ないし22についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項6を直接又は間接的に引用する請求項7ないし22についても、請求項6を訂正したことに伴う訂正をする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?7のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項8を直接又は間接的に引用する請求項9ないし22についても、請求項8を訂正したことに伴う訂正をする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?9のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11ないし22についても、請求項10を訂正したことに伴う訂正をする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1?10のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?10のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項11を直接又は間接的に引用する請求項12ないし22についても、請求項11を訂正したことに伴う訂正をする。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」と記載されているのを、「請求項2?11のいずれか一項に記載の熱伝導シート。」に訂正する。
併せて、請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13ないし22についても、請求項12を訂正したことに伴う訂正をする。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱装置。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱装置。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートスプレッダ。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートスプレッダ。」に訂正する。

(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項15に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートシンク。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートシンク。」に訂正する。

(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項16に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性きょう体。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性きょう体。」に訂正する。

(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項17に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性基板。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性基板。」に訂正する。

(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項18に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである配管。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである配管。」に訂正する。

(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項19に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性発光体。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性発光体。」に訂正する。

(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項20に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである半導体装置。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである半導体装置。」に訂正する。

(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項21に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである電子機器。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである電子機器。」に訂正する。

(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項22に「前記熱伝導シートが、請求項1?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである発光装置。」と記載されているのを、「前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである発光装置。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるともに訂正前の請求項2の「黒鉛粒子(A)の長径の平均値」が「熱伝導シート厚の10%以上である」とされていたのを「熱伝導シート厚の41.7%以上である」と数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3ないし20について
訂正事項3ないし20は、いずれも引用請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3ないし20は、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし20は、それぞれ、特許請求の範囲の減縮又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし20は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項2ないし22は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし22は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし20は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし22に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし22〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし22に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、令和1年10月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
鱗片状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している黒鉛粒子(A)と、Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、
熱伝導シートの表面がスライス面であり、前記スライス面が前記黒鉛粒子(A)の断面を含み、
前記黒鉛粒子(A)の鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向しており、
熱伝導シートの表面に露出している前記黒鉛粒子(A)の面積が25%以上80%以下であり、
70℃におけるアスカーC硬度が60以下であり、
前記黒鉛粒子(A)の長径の平均値が、熱伝導シート厚の41.7%以上である、熱伝導シート。
【請求項3】
前記黒鉛粒子(A)は、分級により求めたその粒子径分布において、熱伝導シート厚の1/2以下の粒子径をもつ粒子が50質量%未満である請求項2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記黒鉛粒子(A)の含有量が、前記組成物全体積に対して10体積%?50体積%である請求項2又は3に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記黒鉛粒子(A)の鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向及び表裏平面における1方向に配向している請求項2?4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記有機高分子化合物(B)が、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物である請求項2?5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物が、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのいずれか又は両方を共重合成分として含む共重合体であり、前記アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのいずれか又は両方の共重合量が、共重合体の全組成中の50質量%以上である請求項6に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
前記組成物が、難燃剤を組成物全体積に対し5体積%?50体積%の範囲で含有する請求項2?7のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項9】
前記難燃剤が、りん酸エステル系化合物であり、かつ凝固点が15℃以下、沸点が120℃以上の液状物である請求項8に記載の熱伝導シート。
【請求項10】
片面又は両面に、保護フィルムを最外層として有し、前記保護フィルムはその表面と裏面が剥離力の異なるものである請求項2?9のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項11】
前記有機高分子化合物(B)が、3次元的な架橋構造を有する請求項2?10のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項12】
片面又は両面に、絶縁性のフィルムを有する請求項2?11のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項13】
発熱体と、放熱体と、前記発熱体と前記放熱体との間に介在した熱伝導シートと、を有する放熱装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱装置。
【請求項14】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる板状の成形体と、前記成形体に貼付された熱伝導シートと、を有するヒートスプレッダであって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートスプレッダ。
【請求項15】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる、塊状又はフィンを有する塊状の成形体と、前記成形体に貼付された熱伝導シートと、を有するヒートシンクであって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートシンク。
【請求項16】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる箱状物と、前記箱状物内面に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性きょう体であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性きょう体。
【請求項17】
電子基板又は電気基板と、前記電子基板又は電気基板の絶縁部分に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性基板であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性基板。
【請求項18】
放熱用配管若しくは加温用配管と、前記配管同士を接続する接合部及び/又は前記配管を被冷却物若しくは被加温物に取り付ける接合部と、を有する配管であって、
前記接合部に熱伝導シートが用いられ、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである配管。
【請求項19】
電灯、蛍光灯及びLEDからなる群から選ばれる少なくとも1つと、前記電灯、蛍光灯及びLEDからなる群から選ばれる少なくとも1つの背面部に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性発光体であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性発光体。
【請求項20】
半導体と、前記半導体から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する半導体装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである半導体装置。
【請求項21】
電子部品と、前記電子部品から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する電子機器であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである電子機器。
【請求項22】
発光素子と、前記発光素子から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する発光装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである発光装置。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
平成30年12月12日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立ての理由(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし22に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし22に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)証拠方法
甲第1号証:特開2002-363421号公報
甲第2号証:特開2002-26202号公報
甲第3号証:特開平11-19948号公報
甲第4号証:特開2006-137860号公報
甲第5号証:「工業材料便覧」幡野佐一著、日刊工業新聞社、昭和56年10月30日発行、第709頁?713頁、「10・10 炭素と黒鉛」の項
甲第6号証:「石油便覧 第3編>第3章>第5節 石油コークス」
甲第7号証:「Wikipedia アスファルト」
甲第8号証:「JIS使い方シリーズ 新版 ゴム材料選択のポイント」編集委員長 西敏夫、日本規格協会、1988年11月15日発行、第71頁?77頁
甲第9号証:「ゴム技術者のための入門講座[III]分子論的(熱力学的)説明 わかりやすいゴムの物性 ゴム弾性(その1)」、日本ゴム協会誌、第52巻第11号(1979)、第693頁?702頁
甲第10号証:特開2006-86271号公報
甲第11号証:特開2000-191812号公報
甲第12号証:「Wikipedia 熱伝導率」
甲第13号証:「ステンレス協会HP 他の材料との比較」
表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。ただし、甲第6、7、12及び13号証のインターネットアドレスは省略した。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由(決定の予告)の概要
令和1年8月16日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は、次のとおりである。なお、該取消理由(決定の予告)は、令和1年5月7日にされた訂正の請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項2ないし22に対するものである。

本件特許の請求項2ないし22に係る発明は、甲1に記載された発明並びに甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項2ないし22に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 当審の判断
1 取消理由(決定の予告)について
(1)甲1ないし3、5及び8ないし13に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「熱伝導性成形体及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 高分子マトリックス材料と、高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物を、所定の形状に成形してなる熱伝導性成形体であって、
前記炭素粉末は、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末であり、当該炭素粉末が、高分子マトリックス材料中で一定方向に配向していることを特徴とする熱伝導性成形体。
【請求項2】 主鎖に芳香族環を有する高分子材料が、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性成形体。
【請求項3】 主鎖に芳香族環を有する高分子材料が、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性成形体。
【請求項4】 炭素粉末のX線回折法による黒鉛層間の面間隔(d002)が、0.3370nm未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱伝導性成形体。
【請求項5】 高分子マトリックス材料と、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物に対して磁場を印加し、前記炭素粉末を一定方向に配向させた状態で前記熱伝導性高分子組成物を固化させることを特徴とする熱伝導性成形体の製造方法。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた熱伝導性を有する熱伝導性成形体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、電子機器等において半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放散させるための放熱部材、伝熱部材或いはそれらの構成材料として好適な熱伝導性成形体及びその製造方法に関するものである。」

・「【0009】本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、その目的は、優れた熱伝導性を有し、電子機器などにおける放熱部材、伝熱部材或いはそれらの構成材料として好適な熱伝導性成形体及びその製造方法を提供するものである。」

・「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
<熱伝導性成形体>熱伝導性成形体は、高分子マトリックス材料と、熱伝導性充填材として主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物を、所定形状に成形してなり、炭素粉末が高分子マトリックス材料中で一定方向に配向していることを特徴とする。
【0016】(炭素粉末)炭素粉末は、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末である。ここで、芳香族環とは、芳香族に属する環を総称したものであり、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などの芳香族炭化水素やその誘導体を包含する有機化合物の一群をいう。また、主鎖に芳香族環を有する高分子材料とは、主鎖に芳香族環を有する高分子重合体をいい、高分子鎖が線状、鎖状或いは網状に結合したものをいう。
【0017】具体的な主鎖に芳香族環を有する高分子材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維、或いはポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子フィルムが挙げられる。このように主鎖に芳香族環を有する高分子材料を用いる理由は、耐熱性が高いため熱処理した際に溶融しにくく、また、熱処理時に黒鉛化しやすいため、グラファイト構造が高度に発達した高い熱伝導率を有する炭素粉末を得ることができるからである。一方、主鎖に芳香族環を有しない高分子材料、例えば、従来技術であるレーヨン繊維やポリアクリロニトリル繊維、フェノール繊維、ポリオレフィンフィルム、脂肪族ナイロンフィルム、ポリスチレンフィルムやポリ塩化ビニルフィルムなどを前駆体として熱処理しても黒鉛化が困難であり、高い熱伝導率を有する炭素粉末を得ることができない。
【0018】また、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を用いる他の理由は、一定方向に優れた熱伝導率を有する炭素粉末を得ることができるからである。すなわち、主鎖に芳香族環を有する高分子材料(高分子繊維、高分子フィルム)は、高分子鎖が特定方向(繊維軸方向、フィルム面内方向)に配向したものであることから、熱処理して黒鉛化させると、高分子鎖の配向方向に黒鉛層面が高度に発達した炭素粉末を得ることができる。そのため、得られる炭素粉末は、六方晶系の黒鉛結晶構造のC軸に垂直な方向、すなわち基底面(黒鉛層面)に平行な方向に特に優れた熱伝導率を有するものとなる。従って、この炭素粉末を高分子マトリックス材料中で一定方向に配向させることにより、黒鉛層面に平行な方向への高熱伝導率を活かして、より一層熱伝導性が優れる熱伝導性成形体を実現することができる。
【0019】これらの中でも、主鎖に芳香族環を有する高分子材料は、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維、或いはポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子フィルムであることが好ましく、また、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド及び芳香族ポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維、或いはポリベンザゾール、芳香族ポリイミド及び芳香族ポリアミドよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子フィルムであることがさらに好ましい。主鎖に芳香族環を有する高分子材料は、その芳香族環構造が多いほど黒鉛化しやすい傾向にあり、著しく熱伝導性に優れた炭素粉末を得ることができる。」

・「【0021】主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末の形態としては、厳密には繊維状(繊維状の形態が維持された粉砕品や切断品も含む)、鱗片状、破砕状、球状、不定形状、ウィスカー状、マイクロコイル状、ナノチューブ状などの形状が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。
【0022】炭素粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、1?500μmであることが好ましい。炭素粉末の平均粒径は1?500μmの範囲が工業的に生産しやすく、また、得られる熱伝導性成形体の熱伝導性が大きくなる。平均粒径が1μmより小さいと、熱伝導性充填剤として高分子マトリックス材料中に配合した際に炭素粉末同士の接触が少なくなり、熱の伝達経路が不充分になって得られる熱伝導性成形体の熱伝導性が低下する。一方、平均粒径が500μmよりも大きいと、炭素粉末が嵩高くなって高分子マトリックス材料中に高充填することが困難になる。なお、上記の平均粒径は、レーザー回折方式による粒度分布から算出することができる。」

・「【0026】(高分子マトリックス材料)高分子マトリックス材料は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、架橋ゴムなどから用途や要求性能などに応じて適宜選択すればよい。
【0027】具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族及び芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸及びそのメチルエステルなどのポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーなどが挙げられる。
【0028】具体的な熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエンまたはスチレン-イソプレンブロック共重合体とその水添ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0029】具体的な硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル樹脂及び変性PPE樹脂などが挙げられる。
【0030】具体的な架橋ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。
【0031】これらの高分子マトリックス材料のなかでも、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及び熱可塑性エラストマーよりなる群から選択される少なくとも1種、さらに好ましくは、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、及び熱可塑性エラストマーよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子マトリックス材料を用いることが、耐熱性などの温度特性や電気的信頼性の観点から好ましい。また、高分子マトリックス材料として低硬度の架橋ゴムや熱可塑性エラストマーを用いると、熱伝導性に優れた柔軟な熱伝導性成形体を実現することができる。」

・「【0034】(熱伝導性高分子組成物)次に、上述した高分子マトリックス材料と炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物について説明する。
【0035】炭素粉末の配合量は、目的とする最終製品の要求性能によって決定されるが、高分子マトリックス材料100重量部に対して、1?500重量部であることが好ましく、40?300重量部であることがより好ましい。炭素粉末の配合量が1重量部よりも少ないと、得られる熱伝導性成形体の熱伝導率が小さくなって放熱特性が低下する。一方、炭素粉末の配合量が500重量部を超えると、得られる熱伝導性高分子組成物の粘度が増大して炭素粉末を高分子マトリックス材料中で一定方向に配向させることが困難となるばかりか、高分子マトリックス材料中に均一分散させることが困難となり、さらに、気泡の混入が避けられないため好ましくない。
【0036】熱伝導性高分子組成物は、上述した炭素粉末のほかに、その他の熱伝導性充填剤、難燃剤、軟化材、着色剤、安定剤等を必要に応じて配合してもよい。」

・「【0037】(熱伝導性成形体)以下、上述した熱伝導性高分子組成物を所定形状に成形してなる熱伝導性成形体について説明する。
【0038】熱伝導性成形体は、炭素粉末が高分子マトリックス材料中で一定方向に配向されている。これにより、炭素粉末の一定方向(黒鉛層面に平行な方向)への高熱伝導率が発揮されて、より一層熱伝導性に優れる熱伝導性成形体を実現することができる。ここで、炭素粉末が一定方向に配向されているとは、炭素粉末の六方晶系の黒鉛結晶構造の黒鉛面層が一定方向に向くように配向されていることをいう。なお、この炭素粉末の配向現象については、X線回折法によるX線結晶解析などによって確認することができる。
【0039】なお、シート状の熱伝導性成形体の場合、硬度は、目的とする最終製品の要求性能に応じて適宜決定されるが、使用時の応力緩和性と追随性に関しては柔軟なほど、すなわち低硬度ほど有利である。具体的な硬度としては、ショアA硬度で70以下であることが好ましく、ショアA硬度で40以下であることがより好ましく、アスカーC硬度で30以下のゲル状のシリコーンゴムや熱可塑性エラストマーを高分子マトリックス材料として使用したものが特に好ましい。また、厚さ方向への高熱伝導性が要求されるシート状の熱伝導性成形体においては、特に限定されるものではないが、その厚さが、50μm?10mmであることが好ましく、100μm?5mmであることがより好ましい。50μmよりも薄いと製造しにくく、また取り扱いにくくなり、一方、10mmよりも厚くなると熱抵抗が大きくなるので好ましくない。」

・「【0040】次に、熱伝導性成形体の使用方法について説明する。熱伝導性成形体は、電子機器等において半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放散させるための放熱部材、伝熱部材或いはそれらの構成材料などとして用いられる。具体的には、シート状に加工して半導体素子などの発熱部材と放熱器などの放熱部材との間に介在させて用いたり、放熱板、半導体パッケージ用部品、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント配線基板、冷却ファン用部品、ヒートパイプ、筐体などに成形加工して用いたりする。
【0041】図1?図4に、シート状の熱伝導性成形体を伝熱部材として用いた例を示す。図1に示す例では、プリント配線基板14上に実装された半導体素子11(ボールグリッドアレイ型半導体パッケージ)と放熱板12との間に、シート状の熱伝導性成形体13が介在されている。図2に示す例では、半導体素子11(チップサイズ型半導体パッケージ)とプリント配線基板14との間にシート状の熱伝導性成形体13が介在されている。図3に示す例では、プリント配線基板14上に実装された半導体素子11(ピングリッドアレイ型半導体パッケージ)とヒートシンク15との間にシート状の熱伝導性成形体13が介在されている。図4に示す例では、プリント配線基板14上に実装された複数の半導体素子11と筐体16との間にシート状の熱伝導性成形体13が介在されている。また、図5は、プリント配線基板14を熱伝導性成形体で構成した例を示す図である。同図に示すプリント配線基板14は、熱伝導性高分子組成物を板状に成形した基板17を備え、絶縁層を介してその基板17上に銅箔などからなる導電層18が形成されている。」

・「【0042】<製造方法>
(炭素粉末)炭素粉末は、上述した主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素繊維やグラファイトフィルムなどの炭素材料を、粉砕又は切断することにより製造される。
【0043】熱処理条件としては、2500℃以上の温度条件が必要とされる。熱処理温度が2500℃未満であると、黒鉛化が不充分となり高い熱伝導率を有する炭素粉末を得ることができない。また、熱処理は、真空雰囲気下又はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。真空又は不活性ガス雰囲気下で熱処理しないと、上述した主鎖に芳香族環を有する高分子材料が酸化するなど変質してしまうことがあり好ましくない。実用的には、アルゴンガス雰囲気下、2800?3200℃の高温で一定時間熱処理することが好ましく、これにより黒鉛化が高度に進行し、グラファイト構造が高度に発達した熱伝導率の大きな炭素粉末を製造することができる。なお、昇温速度、降温速度、処理時間などについては、特に限定されるものではない。
【0044】粉砕又は切断処理においては、例えば、ビクトリーミル、ジェットミル、高速回転ミルなどの粉砕機或いはチョップド繊維で用いる切断機などを利用して粉砕又は切断処理することが有効である。この粉砕或いは切断処理を効率良く実施するためには、上記各種方法に共通することであるが、例えばプレートを取り付けたローターを高速で回転することにより、繊維軸に対し直角方向に繊維を寸断する方法が適切である。粉砕或いは切断処理によって得られる炭素粉末の平均粒径は、ローターの回転数、プレートの角度などを調整することにより制御される。また、他の粉砕方法としてボールミルなどの磨砕機による方法もある。なお、粉砕又は切断処理は、熱処理の前工程として或いは熱処理の途中において行っても差し支えない。
【0045】(熱伝導性成形体)上記のように製造された炭素粉末と上述した高分子マトリックス材料とを、例えばブレンダー、ミキサー、ロール或いは押出機などの公知の混合装置又は混練装置を用いて混合し、必要に応じて攪拌、脱泡、混練等の操作を施すことにより、熱伝導性高分子組成物が得られる。なお、混合分散する際には、減圧或いは加圧することにより混入した気泡を除去する工程を加えることが好ましい。
【0046】そして、熱伝導性高分子組成物に対して磁場を印加し、炭素粉末を一定方向に配向させた状態で熱伝導性高分子組成物を固化させ所定形状に成形することにより、熱伝導性成形体が製造される。
【0047】熱伝導性成形体の成形方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、圧縮成形法、押出成形法、射出成形法、注型成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などのほか、熱伝導性高分子組成物が液状の場合には、塗装法、印刷法、ディスペンサー法、ポッティング法などの公知の方法が挙げられる。なお、熱伝導性高分子組成物をシート状に成形する場合には、圧縮成形法、押出成形法、ブレード成形法、カレンダー成形法を用いることが好ましい。
【0048】熱伝導性高分子組成物中における炭素粉末を一定方向に配向させる方法としては、流動場又はせん断場を利用する方法、磁場を利用する方法、電場を利用する方法等が挙げられる。これらのなかでも、熱伝導性高分子組成物に外部から磁場を印加して炭素粉末を磁力線と平行に配向させる方法が効率的で、かつ炭素粉末の配向方向を任意に設定できるため好ましい。また、上述した機械的な配向方法と比較して、炭素粉末を高度に一定方向に配向させることができる点で有利である。
【0049】磁場配向を利用して熱伝導性成形体を製造する場合には、例えば、金型のキャビティ内に注入された熱伝導性高分子組成物に対して磁場を印加し、その熱伝導性高分子組成物中の炭素粉末を一定方向に配向させた状態で熱伝導性高分子組成物を固化させる。
【0050】例えば、図6に示すような板状の熱伝導性成形体21において、炭素粉末を熱伝導性成形体21の厚さ方向(図6におけるZ軸方向)に配向させる場合には、図7(a)に示すように、磁力線Mの向きが熱伝導性成形体21の厚さ方向(図6におけるZ軸方向)に一致するように磁場発生手段22を配置して、金型23のキャビティ23a内に注入された熱伝導性高分子組成物24に対して磁場を印加する。また、炭素粉末を熱伝導性成形体21の面内方向(図6におけるX軸方向、Y軸方向等)に配向させる場合には、図7(b)に示すように、磁力線Mの向きが熱伝導性成形体21(図6参照)の面内方向に一致するように磁場発生手段22を配置して、金型23のキャビティ23a内に注入された熱伝導性高分子組成物24に対して磁場を印加する。
【0051】磁場発生手段22としては、永久磁石、電磁石などが挙げられる。磁場発生手段22によって形成される磁場の磁束密度は、熱伝導性高分子組成物の粘度や炭素粉末の粒径などに応じて適宜決定されるが、0.05?30テスラであることが好ましく、0.5テスラ以上であることがより好ましく、2テスラ以上であることが特に好ましい。磁束密度が0.5テスラ以上であれば実用的な炭素粉末の配向が達成でき、目的とする高熱伝導性を示す熱伝導性成形体を得ることができる。
【0052】なお、図7(a)、(b)に示す例では、一対の磁場発生手段22を金型23の両側に対向配置したが、各例において一方の磁場発生手段22を省略してもよい。また、図7(a)、(b)に示す例では、互いのS極とN極とが対向するように一対の磁場発生手段22を対向配置したが、S極同士又はN極同士が対向するように一対の磁場発生手段22を配置してもよい。さらに、磁力線Mは必ずしも直線状でなくてもよく、曲線状や矩形状であっても構わない。また、磁力線Mが1方向だけでなく2方向以上に延びるように磁場発生手段22を配置してもよい。」

・「【0058】・ 炭素粉末の配合量を、高分子マトリックス材料100重量部に対して、1?500重量部とした。これにより、粘度の増大及び気泡の混入を防止して、炭素粉末を高分子マトリックス材料中に均一分散させることができ、かつ炭素粉末を高分子マトリックス材料中で一定方向に配向させることが容易となり、熱伝導性をより一層向上させた熱伝導性成形体を実現することができる。」

・「【0061】
【実施例】以下、試作例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。なお、以下の実施例及び比較例においては、図6に示すような偏平な板状の熱伝導性成形体を製造するが、この偏平な板状の熱伝導性成形体の厚さ方向をZ軸方向、一方の面内方向をX軸方向、他方の面内方向をY軸方向とする。
【0062】(炭素粉末の試作例1)主鎖に芳香族環を有する高分子材料としてのポリベンザゾール繊維(東洋紡績株式会社製 商品名 ザイロンHT:ポリベンゾオキサゾール繊維)をアルゴンガス雰囲気下、3000℃で2時間熱処理して黒鉛化させ、炭素繊維を作製した。得られた炭素繊維を高速回転ミルで粉砕し、炭素粉末(試作例1)を試作した。得られた炭素粉末は、繊維直径が9μm、平均粒径が50μm、X線回折法による黒鉛層間の面間隔(d002)が0.3360nmであった。」

・「【0065】(実施例1)高分子マトリックス材料として不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 商品名 エポラック)100重量部に、熱伝導性充填材としてシランカップリング剤で表面処理した試作例1の炭素粉末125重量部を混合分散させ、真空脱泡して熱伝導性高分子組成物を調製した。次いで、この熱伝導性高分子組成物を所定の金型のキャビティ内に注入し、磁力線の向きが熱伝導性成形体の厚さ方向(Z軸方向)に一致する磁場(磁束密度10テスラ)を印加して、熱伝導性高分子組成物中の炭素粉末を十分に配向させた後に加熱硬化させ、厚さ1.5mm×縦20mm×横20mmの板状の熱伝導性成形体を製造した。得られた熱伝導性成形体中の炭素粉末は、厚さ方向(Z軸方向)に揃って配向していた。この熱伝導性成形体の厚さ方向(Z軸方向)及び面内方向(X軸方向)における熱伝導率を測定したところ、それぞれ18.7W/(m・K)、3.1W/(m・K)であった。」

・「【0073】(実施例5)高分子マトリックス材料として液状シリコーンゴム(GE東芝シリコーン株式会社製 商品名 TSE3070)100重量部に、熱伝導性充填材としてシランカップリング剤で表面処理した試作例1の炭素粉末110重量部と、酸化アルミニウム粉末(昭和電工株式会社製 商品名 AS-20)60重量部とを混合分散させ、真空脱泡して熱伝導性高分子組成物を調製した。次いで、この熱伝導性高分子組成物を所定の金型のキャビティ内に注入し、磁力線の向きが熱伝導性成形体の厚さ方向(Z軸方向)に一致する磁場(磁束密度12テスラ)を印加して、熱伝導性高分子組成物中の炭素粉末を十分に配向させた後に加熱硬化させ、厚み0.5mm×縦20mm×横20mmの板状の熱伝導性成形体(アスカーC硬度16)を製造した。得られた熱伝導性成形体中の炭素粉末は、厚さ方向(Z軸方向)に揃って配向していた。この熱伝導性成形体の厚さ方向(Z軸方向)及び面内方向(X軸方向)における熱伝導率を測定したところ、それぞれ18.4W/(m・K)、3.5W/(m・K)であった。」

・「【0086】上記実施形態、試作例、実施例及び比較例から把握される技術的思想について以下に記載する。
(A) 主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末。
(B) 主鎖に芳香族環を有する高分子材料が、ポリベンザゾール、芳香族ポ---リイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維又は高分子フィルムであることを特徴とする上記(A)に記載の炭素粉末。
(C) 平均粒径が1?500μmであることを特徴とする上記(A)又は(B)に記載の炭素粉末。
(D) X線回折法による黒鉛層間の面間隔(d002)が、0.3370nm未満であることを特徴とする上記(A)?(C)のいずれかに記載の炭素粉末。
(E) 上記(A)?(D)のいずれかに記載の炭素粉末よりなることを特徴とする熱伝導性充填材。
【0087】(F) 主鎖に芳香族環を有する高分子材料を、真空又は不活性ガス雰囲気下、2500℃以上で熱処理して黒鉛化させることを特徴とする炭素粉末の製造方法。
(G) 主鎖に芳香族環を有する高分子材料が、ポリベンザゾール、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド及び全芳香族ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子繊維又は高分子フィルムであることを特徴とする上記(F)に記載の炭素粉末の製造方法。
【0088】(H) マトリックス材料中に、上記
(A)?(D)のいずれかに記載の炭素繊維粉末を配合してなる熱伝導性複合材料組成物。
(I) マトリックス材料が、架橋ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料であることを特徴とする上記(H)に記載の熱伝導性複合材料組成物。
(J) 炭素粉末の配合量が、マトリックス材料100重量部に対して、1?500重量部であることを特徴とする上記(H)又は(J)に記載の熱伝導性複合材料組成物。
【0089】(K) 高分子マトリックス材料と、高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物をシート状に成形してなる熱伝導性シートであって、前記炭素粉末は、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末であり、当該炭素粉末が、高分子マトリックス材料中で一定方向に配向していることを特徴とする熱伝導性シート。
(L) 前記炭素粉末が、高分子マトリックス材料中でシートの厚さ方向に配向していることを特徴とする上記(K)に記載の熱伝導性シート。」

・「【0090】
【発明の効果】以上、詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、優れた熱伝導性を有する熱伝導性成形体を実現することができ、また、炭素粉末の黒鉛層面に平行な方向への高熱伝導率を活かして、一定方向の熱伝導性を飛躍的に向上させた熱伝導性に異方性を有する熱伝導性成形体を実現することができる。従って、電子機器等における放熱部材、伝熱部材或いはそれらの構成材料として好適に用いることができる、熱伝導性に優れる熱伝導性成形体を提供することができる。」

・「



(イ)甲1発明
甲1に記載された事項を、特に【0089】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「高分子マトリックス材料と、高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末とを含有する熱伝導性高分子組成物をシート状に成形してなる熱伝導性シートであって、前記炭素粉末は、主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末であり、当該炭素粉末が、高分子マトリックス材料中でシートの厚さ方向に配向している熱伝導性シート。」

イ 甲2に記載された事項
甲2には、「熱伝導性シート及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】 バインダ樹脂と、該バインダ樹脂中に分散せしめられた熱伝導性充填材とを含む熱伝導性シートであって、
前記バインダ樹脂が熱可塑性の樹脂からなり、かつ前記熱伝導性充填材が、前記熱伝導性シートの面に関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している無機充填材の粒子であり、そして前記熱伝導性シートが、前記熱可塑性の樹脂と前記無機充填材の粒子の混練物から成形した複数枚の一次シートを積層した後に、得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングすることによって形成されたものであることを特徴とする熱伝導性シート。」

・「【請求項6】 バインダ樹脂と、該バインダ樹脂中に分散せしめられた熱伝導性充填材とを含む熱伝導性シートを製造する方法であって、
前記バインダ樹脂としての熱可塑性の樹脂と、熱伝導性充填材の粒子とを含む混練物を成形して、主たる面に関してほぼ平行な方向に無機充填材の粒子が配向した一次シートを作製し、
複数枚の前記一次シートを所定の厚さに積層し、
得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングして、前記熱伝導性シートの面に関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している無機充填材の粒子を備えた熱伝導性シートを製造する工程を含んでなることを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。」

・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記したような従来の技術の多くの問題点を解決して、柔軟性があり、凹凸や曲面等の特殊な形状にも追従可能であり、薄く成形でき、かつ、同時に、高い熱伝導性を有する熱伝導性シートを提供することにある。本発明のもう1つの目的は、そのような熱伝導性シートの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した目的を解決すべく鋭意研究した結果、熱伝導性シートを製造する場合に、そのバインダ樹脂中において熱伝導性充填材をシート面にほぼ垂直に配向させるのが有効であるという知見を得、本発明を完成した。すなわち、本発明は、バインダ樹脂と、該バインダ樹脂中に分散せしめられた熱伝導性充填材とを含む熱伝導性シートであって、前記バインダ樹脂が熱可塑性の樹脂からなり、かつ前記熱伝導性充填材が、前記熱伝導性シートの面に関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している無機充填材の粒子であり、そして前記熱伝導性シートが、前記熱可塑性の樹脂と前記無機充填材の粒子の混練物から成形した複数枚の一次シートを積層した後に、得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングすることによって形成されたものであることを特徴とする熱伝導性シートにある。」

・「【0010】図1を参照して説明すると、本発明の熱伝導性シート10は、バインダ樹脂1と、このバインダ樹脂中に分散せしめられた熱伝導性充填材2とを少なくとも含んでいる。この熱伝導性シート10において、
(1)バインダ樹脂1は、熱可塑性の樹脂からなり、
(2)バインダ樹脂1中の熱伝導性充填材2は、熱伝導性シート10の主たる面10aに関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している無機充填材の粒子であり、そして(3)熱伝導性シート10は、バインダ樹脂1としての熱可塑性の樹脂と熱伝導性充填材2としての無機充填材の粒子とを少なくとも含む混練物から成形した複数枚の一次シートを積層した後に、得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングすることによって形成されたものである。」

・「【0017】さらにまた、その他の使用可能な添加剤として、例えば、粘着付与剤、改質剤、熱安定剤、着色剤、例えば顔料や染料も挙げることができる。本発明の熱伝導性シートにおいて、上記したバインダ樹脂中に分散せしめられる熱伝導性充填材は、熱伝導性シートの分野で一般的に使用されている各種の充填材を使用することができるが、好適には、本発明の工程によって熱伝導性シートの面に関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している粒子状の無機充填材である。このような無機充填材として、好適には、窒化硼素(BN)の粒子がある。BN粒子は、先に説明したように、六方晶の粒子であり、層状の結晶構造を有しているために、その粒子形状は板状である。この層状のBN粒子において、層に平行な方向(a軸方向)の熱伝導性は、層に垂直な方向(c軸方向)のそれの約30倍程度であり、本発明の熱伝導性シートでは、この特性を利用して顕著に高められた熱伝導性を得ている。すなわち、本発明の熱伝導性シートでは、その特有の製造工程に由来して、具体的には、以下において詳細に説明するけれども、熱可塑性の樹脂と無機充填材の粒子を含む混練物から成形した複数枚の一次シートを積層した後に、得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングすることによって、BN粒子をそのa軸が熱伝導性シート面に垂直な方向へ配向するように分散させ、よって、高められた熱伝導性を得ている。BN粒子のこのような選択的な配向状態は、図1の模式図からも理解できるであろう。」

・「【0024】さらに、片面粘着フィルムを基材として使用してもよい。このフィルムは、その片面に粘着層を有しているので、支持体に対して基材を貼り合わせる作業を効率よく行うことができる。粘着層は、剥離シートやその他の常用の表面保護シートで被覆しておくことが好ましい。本発明による熱伝導性シートは、いろいろな手法に従って製造することができるというものの、好ましくは、下記の工程:バインダ樹脂としての熱可塑性の樹脂と、熱伝導性充填材の粒子とを含む混練物を成形して、主たる面に関してほぼ平行な方向に熱伝導性充填材の粒子が配向した一次シートを作製し、複数枚の一次シートを所定の厚さに積層し、得られた積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングして、熱伝導性シートの面に関してほぼ垂直な方向に配向され、その方向に高い熱伝導性を有している熱伝導性充填材の粒子を備えた熱伝導性シートを製造すること、によって製造することができる。すなわち、本発明の熱伝導性シートは、必要に応じて変更してもよいけれども、図2に順を追って示すような工程で有利に実施することができる。
(1)混練工程
熱可塑性の樹脂、熱伝導性充填材の粒子(好ましくは、BN粒子)及び任意の添加剤を混練する。
(2)シート化工程
熱可塑性の樹脂などの混練物を好ましくは押し出し成形によって成形して、所定の厚さを有する一次シートを作製する。この一次シートでは、その主たる面に関してほぼ平行な方向に熱伝導性充填材の粒子が配向した状態が得られる。
(3)積層工程
複数枚の一次シートを所定の厚さに積層し、一体化する。この工程は、好ましくは、加熱圧着によって実施することができる。
(4)スライシング工程
一次シートの積層体をその積層面に対して垂直な方向にスライシングして、所定の厚さをもった熱伝導性シートを得る。スライシング工程は、いわば第2のシート化工程である。ここで、「スライシング」とは、広い意味で用いられており、シート化が可能な各種の薄切り法を包含する。」

・「【0037】
【実施例】引き続いて、本発明をその実施例について説明する。なお、下記の実施例は一例であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
実施例1
熱伝導性シートの作製
15体積部(13.7重量部)の水添合成ゴム(シエル社製、商品名「Kraton G1651」)、9体積部(8.4重量部)の脂肪族系石油樹脂(グッドイヤー社製、商品名「ウィングタックプラス」)、9体積部(8.1重量部)の芳香族系石油樹脂(ハーキュレス社製、商品名「クリスタレックス3085」)及び34体積部(76.8重量部)の窒化硼素粒子(平均粒径10μm 、水島合金鉄社製、商品名「HP-1」)を100体積部(87.0重量部)のトルエンに溶解し、混合した後、得られた混合物をシリコーン処理した表面をもつポリエステルフィルム(厚さ50μm)上に塗布し、65℃のオーブン中で5分間乾燥させた。厚さ0.22mmの一次シートが得られた。
【0038】上記のようにして作製した一次シートを総厚が12mmとなるように積層した後、積層体を加熱温度120℃及び圧力2kg/cm^(2) の条件下で1分間にわたって加熱圧着した。それぞれの一次シートが積層一体化した直方体状のブロックが得られた。次いで、ブロックを一次シートの積層方向とは垂直な方向でスライシングナイフで削り出した。それぞれの厚さが1mmであるシートが得られた。
【0039】引き続いて、上記のようにして作製したシートをフッ素系ライナー(厚さ75μm 、藤森工業製、商品名「フィルムバイナSF-3」)の上に置き、そのシートの表面に可塑剤(シエル社製、商品名「Shelflex371N」)を塗布し、含浸させた。可塑剤の含浸量は、67体積部(107.0重量部)のシートに対して33体積部(29.7重量部)となる量であった。厚さ1.15mmの熱伝導性シートが得られた。」

・「



ウ 甲3に記載された事項
甲3には、「電子部品用放熱部材の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】 窒化ホウ素粉末含有のゴムグリーンシートを成形し、その複数枚を積層して加硫硬化させた後、積層方向に所望厚みに切断するか、又はその複数枚を積層し積層方向に所望厚みに切断した後、加硫硬化させることを特徴とする電子部品用放熱部材の製造方法。」

・「【0004】放熱シートの熱抵抗を低減させる観点から、熱伝導率の高いフイラ-が注目されている。特に窒化ホウ素は、鱗片状粒子の長さ方向の熱伝導性が極めて高いという特異性があるので、窒化ホウ素粒子を立てた状態で使用する試みがなされている。例えば、特開平8-244094号公報には窒化ホウ素50体積%又は60体積%を含有せしめ、それぞれ0.20℃/W(0.3mm厚)、0.12℃/W(0.3mm厚)の熱抵抗のシートが得られることが示されており、また特開平3-151658号公報には、窒化ホウ素39体積%又は56体積%を含有せしめ、それぞれ0.41℃/W(0.5mm厚)、0.30℃/W(0.5mm厚)の熱抵抗が得られることが記載されている。」

・「【0029】
【実施例】以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0030】実施例1?3
A液(ビニル基を有するオルガノポリシロキサン)とB液(H-Si基を有するオルガノポリシロキサン)の二液性の付加反応型シリコーン(東レダウコーニング社製、商品名「SE-1885」)をA液対B液の混合比を表1に示す配合(体積%)で混合し、これにマレイン酸ジメチルを主剤とした反応遅延剤と窒化ホウ素粉末(電気化学工業社製、商品名「デンカボロンナイトライドGP」平均粒径=7μm)を表1に示す割合(体積%)で室温下で混合してスラリーを調製した。
【0031】このスラリーを1.0mm深さの断面凹状の金型(11cm角)の中央部に流し込み、上から平板で蓋をした後、加圧プレスで150℃×10分間加圧加熱して1.0mm厚の窒化ホウ素粉末含有のゴムグリーンシートを得た。
【0032】その50枚積層した後、乾燥機で150℃×22時間加熱硬化させて積層固化物を得、それをカッターで積層方向に垂直に切断し、本発明のシート状電子部品用放熱部材(1mm厚)を製造した。」

エ 甲5に記載された事項
甲5には、おおむね次の事項が記載されている。

・「

」(第710頁)

・「黒鉛^(*)は図10.34に示すように結晶層の内部では1.4Åの原子間距離を保って共有結合しているが,層間では3.4Åを保ち,van der Waals力の弱い結合になっているから六角平面層の方向(α-方向)では強いが各層間(c-軸方向)は弱く,強度,剛さ,熱および電気的性質に基づいて方向性が著しい。・・・(略)・・・
ふつう,商業上の黒鉛は石油コークス(精油所の副生物)を用い,ピッチを結合剤にして製造する.・・・(略)・・・つづく2,600?3,000℃加熱(電気炉)で自身が電熱エレメントになって黒鉛化する.・・・(略)・・・黒鉛化によって,結晶化は完全に行なわれ,主として,c-軸の方向に大きく成長する。・・・(略)・・・空隙は減少する。」(第710頁第4ないし23行)

オ 甲8に記載された事項
甲8には、おおむね次の事項が記載されている。

・「

」(第75頁)

カ 甲9に記載された事項
甲9には、おおむね次の事項が記載されている。

・「5.ガラス転移温度からみた各種ゴム
・・・(略)・・・特にTgの低いシリコーンゴム(-123℃),シス-ポリブタジエン(-95?102℃),シス1,4-ポリイソプレン(-74℃)はゴム弾性に富み,かつ低温特性のよいゴムとして知られる。またブチルゴム(-65?-75℃),SBR(-57℃),EMP,EPDM(-50?-60℃)などは耐寒性にも優れた合成ゴムの代表である。そしてこれらは何れも・・・(略)・・・常態では完全な無定形ゴム状高分子である。」(第698頁右欄第4ないし18行)

・「

」(第699頁)

キ 甲10に記載された事項
甲10には、「放熱シート」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
グラファイトを、ガラス転移温度が-50?50℃であるバインダー樹脂で結着させてなる放熱シートであって、グラファイト/バインダー樹脂の質量比が66.7/33.3?95/5であり、シート厚みが50?150μmであることを特徴とする放熱シート。
・・・(略)・・・
【請求項5】
請求項1?4記載の放熱シートが離型性保護フィルム上に貼着された離型性保護フィルムつき放熱シート。」

・「【0019】
本発明の放熱シートを製造するための組成物であるグラファイト分散樹脂溶液(コーティング剤)は、通常のコーティング機等で、離型層付き樹脂フィルムなどの離型性フィルム等の上に塗工され、遠赤外線輻射ヒーター、温風吹付けなどによって乾燥されることにより、シート化される。
該離型層としては、メランミン樹脂等が用いられる。また、該樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が用いられる。」

ク 甲11に記載された事項
甲11には、「熱伝導性シート」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】黒鉛化炭素繊維を含有させたシリコーンゴムからなるシートの少なくとも片面を電気絶縁性処理したことを特徴とする熱伝導性シート」

・「【0017】積層するフィルムやシートとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などの高熱伝導性充填剤を含む高熱伝導性PETフィルムや高熱伝導性ポリイミドフィルムも市販品が容易に入手できるので応用しやすい。電気絶縁性の塗料やインキをコーティングする場合には、基材シートの片面のみならず、シートの全面あるいは特定箇所を部分的にスクリーン印刷やパッド印刷することもできる。」

ケ 甲12に記載された事項
甲12には、おおむね次の事項が記載されている。

・「

」(上記表から、熱伝導率(単位:W/mK)が、鉄は83.5、ニッケルは94、真鍮は106、アルミニウムは236であることが理解できる。)

コ 甲13に記載された事項
甲13には、おおむね次の事項が記載されている。

・「

」(上記表から、熱伝導率(単位:W/m℃)が、ステンレス鋼の多くは16?26の範囲内、炭素鋼は58であることが理解できる。)

(2)対比・判断
ア 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲1発明を対比する。
甲1の【0026】によると、甲1発明における「高分子マトリックス材料」は、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂及び架橋ゴムなどから選択されるものであるから、甲1発明における「高分子マトリックス材料」は、本件特許発明2における「Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)」と、「有機高分子化合物(B)」であるという限りにおいて一致する。
甲1発明における「高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末」及び「主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる炭素粉末」は、「黒鉛粒子」であることは明らかであるから、甲1発明における「高分子マトリックス中でシートの厚さ方向に配向している」「当該炭素粉末」は、本件特許発明2における「鱗片状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している黒鉛粒子(A)」及び「鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向して」いる「黒鉛粒子(A)」と、「熱伝導シートの厚み方向に配向している」「黒鉛粒子(A)」であるという限りにおいて一致する。
甲1発明における「熱伝導性高分子組成物」は、本件特許発明2における「組成物」に相当する。
甲1発明における「シート状に成形してなる熱伝導性シート」は、本件特許発明2における「熱伝導シート」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「黒鉛粒子(A)と、有機高分子化合物(B)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、
前記黒鉛粒子(A)が熱伝導シートの厚み方向に配向している熱伝導シート。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
「黒鉛粒子(A)」に関して、本件特許発明2においては、「鱗片状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している」ものであって、「鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向」しているものであるのに対し、甲1発明においては、「主鎖に芳香族環を有する高分子材料を熱処理して黒鉛化させて得られる」ものであり、「シートの厚さ方向に配向」している点。

<相違点2>
「有機高分子化合物(B)」に関して、本件特許発明2においては、「Tgが50℃以下である」のに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3>
本件特許発明2においては、「熱伝導シートの表面がスライス面であり、前記スライス面が前記黒鉛粒子(A)の断面を含」み、「熱伝導シートの表面に露出している前記黒鉛粒子(A)の面積が25%以上80%以下」であるのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4>
本件特許発明2においては、「70℃におけるアスカーC硬度が60以下である」のに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点5>
本件特許発明2においては、「黒鉛粒子(A)の長径の平均値が、熱伝導シート厚の41.7%以上である」のに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、まず、相違点5から検討する。
甲1に記載された事項は、上記(1)ア(ア)のとおりであり、甲1には、炭素粉末の平均粒径に関し、「炭素粉末の平均粒径は、特に限定されるものではないが、1?500μmであることが好ましい。」(【0022】)旨の記載があるものの、「平均粒径」が「長径の平均値」であること及びその値が「熱伝導シート厚の41.7%以上」であることは記載も示唆もされていない。すなわち、相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項について、甲1には記載も示唆もされていない。
また、甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項は、上記(1)イないしコのとおりであり、相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項について、甲2、3、5及び8ないし13には記載も示唆もされていない。
そして、本件特許明細書の実施例1、3、4及び5の記載からみて、本件特許発明2は、相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項を有することにより、熱伝導率に関して、甲1発明並びに甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(なお、本件特許明細書に、実施例2の熱伝導率として、「7.5W/mK」(【0109】)と記載されているが、実施例2と類似した組成物からなる実施例1、3、4及び5の熱伝導率が、それぞれ、「65W/mK」、「62W/mK」、「102W/mK」及び「80W/mK」であることからみて、「7.5W/mK」は何らか別の値の誤記であると認められる。)
したがって、甲1発明において、甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項を適用して、相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項を想到することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)まとめ
したがって、相違点1ないし4について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明並びに甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明3ないし22について
請求項3ないし22は請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明3ないし22は、本件特許発明2をさらに限定したものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明及び甲2、3、5及び8ないし13に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)取消理由(決定の予告)についてのむすび
以上のとおり、本件特許発明2ないし22は、甲1発明並びに甲2、3、5及び8ないし13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないので、本件特許の請求項2ないし22に係る特許は、取消理由(決定の予告)によっては、取り消すことはできない。

2 特許異議申立書に記載した申立ての理由について
特許異議申立書に記載した申立ての理由は、甲4、6及び7を副引用文献としてさらに引用した以外は、取消理由(決定の予告)とおおむね同旨である。
そこで検討する。
甲4は、「熱伝導シート」に関する文献であり、甲6は、「石油コークス」に関する文献であり、甲7は、「アスファルト」に関する文献であるが、いずれの文献にも、相違点5に係る本件特許発明2の発明特定事項及び本件特許発明2の有する効果について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明並びに甲2ないし13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件特許発明3ないし22も、上記1(2)イのとおり、本件特許発明2をさらに限定したものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1発明及び甲2ないし13に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項2ないし22に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。

第6 結語
上記第5のとおり、本件特許の請求項2ないし22に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
鱗片状であり、結晶中の6員環面が鱗片の面方向に配向している黒鉛粒子(A)と、Tgが50℃以下である有機高分子化合物(B)と、を含有する組成物を含む熱伝導シートであって、
熱伝導シートの表面がスライス面であり、前記スライス面が前記黒鉛粒子(A)の断面を含み、
前記黒鉛粒子(A)の鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向に配向しており、
熱伝導シートの表面に露出している前記黒鉛粒子(A)の面積が25%以上80%以下であり、
70℃におけるアスカーC硬度が60以下であり、
前記黒鉛粒子(A)の長径の平均値が、熱伝導シート厚の41.7%以上である、熱伝導シート。
【請求項3】
前記黒鉛粒子(A)は、分級により求めたその粒子径分布において、熱伝導シート厚の1/2以下の粒子径をもつ粒子が50質量%未満である請求項2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記黒鉛粒子(A)の含有量が、前記組成物全体積に対して10体積%?50体積%である請求項2又は3に記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記黒鉛粒子(A)の鱗片の面方向が熱伝導シートの厚み方向及び表裏平面における1方向に配向している請求項2?4のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記有機高分子化合物(B)が、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物である請求項2?5のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物が、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのいずれか又は両方を共重合成分として含む共重合体であり、前記アクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルのいずれか又は両方の共重合量が、共重合体の全組成中の50質量%以上である請求項6に記載の熱伝導シート。
【請求項8】
前記組成物が、難燃剤を組成物全体積に対し5体積%?50体積%の範囲で含有する請求項2?7のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項9】
前記難燃剤が、りん酸エステル系化合物であり、かつ凝固点が15℃以下、沸点が120℃以上の液状物である請求項8に記載の熱伝導シート。
【請求項10】
片面又は両面に、保護フィルムを最外層として有し、前記保護フィルムはその表面と裏面が剥離力の異なるものである請求項2?9のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項11】
前記有機高分子化合物(B)が、3次元的な架橋構造を有する請求項2?10のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項12】
片面又は両面に、絶縁性のフィルムを有する請求項2?11のいずれか一項に記載の熱伝導シート。
【請求項13】
発熱体と、放熱体と、前記発熱体と前記放熱体との間に介在した熱伝導シートと、を有する放熱装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱装置。
【請求項14】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる板状の成形体と、前記成形体に貼付された熱伝導シートと、を有するヒートスプレッダであって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートスプレッダ。
【請求項15】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる、塊状又はフィンを有する塊状の成形体と、前記成形体に貼付された熱伝導シートと、を有するヒートシンクであって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートであるヒートシンク。
【請求項16】
熱伝導率20W/mK以上の素材からなる箱状物と、前記箱状物内面に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性きょう体であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性きょう体。
【請求項17】
電子基板又は電気基板と、前記電子基板又は電気基板の絶縁部分に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性基板であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性基板。
【請求項18】
放熱用配管若しくは加温用配管と、前記配管同士を接続する接合部及び/又は前記配管を被冷却物若しくは被加温物に取り付ける接合部と、を有する配管であって、
前記接合部に熱伝導シートが用いられ、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである配管。
【請求項19】
電灯、蛍光灯及びLEDからなる群から選ばれる少なくとも1つと、前記電灯、蛍光灯及びLEDからなる群から選ばれる少なくとも1つの背面部に貼付された熱伝導シートと、を有する放熱性発光体であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである放熱性発光体。
【請求項20】
半導体と、前記半導体から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する半導体装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである半導体装置。
【請求項21】
電子部品と、前記電子部品から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する電子機器であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである電子機器。
【請求項22】
発光素子と、前記発光素子から生じる発熱を放散させる熱伝導シートと、を有する発光装置であって、
前記熱伝導シートが、請求項2?12のいずれか一項に記載の熱伝導シートである発光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-14 
出願番号 特願2017-21384(P2017-21384)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 渕野 留香
加藤 友也
登録日 2018-05-25 
登録番号 特許第6341303号(P6341303)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 熱伝導シート、その製造方法及び熱伝導シートを用いた放熱装置  
代理人 伊藤 正和  
代理人 三好 秀和  
代理人 高橋 俊一  
代理人 伊藤 正和  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高松 俊雄  
代理人 高橋 俊一  
代理人 三好 秀和  
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