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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1358600
異議申立番号 異議2018-700655  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-06 
確定日 2019-11-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6275945号発明「両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6275945号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6275945号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6275945号の請求項1?6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成24年12月10日に出願され、平成30年1月19日にその特許権の設定登録がされ、平成30年2月7日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成30年 8月 6日 :特許異議申立人奥村一正による請求項1 ?6に係る特許に対する特許異議の申立 て
平成30年11月20日付け :取消理由通知書
平成31年 1月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出
平成31年 2月28日 :特許異議申立人による意見書の提出
平成31年 4月11日付け :(特許異議申立人に対し)審尋
令和元年 5月16日 :特許異議申立人による回答書の提出
令和元年 6月27日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和元年 8月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出(この訂正請求書による訂正の請求 を、以下「本件訂正請求」という。また 、本件訂正請求による訂正を、以下「本 件訂正」という。)
令和元年10月9日 :特許異議申立人による意見書の提出
なお、平成31年 1月18日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす

第2 本件訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり」と記載されているのを、「前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する)。

(2) 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1において、「25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)」と記載されているのを、「周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)」に訂正し、「80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)」と記載されているのを、「周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する)。

(3) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4において、「ベースポリマーが」と記載されているのを、「前記ベースポリマーが」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5,6も同様に訂正する)。

(4) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5において、「硬化後の80℃における貯蔵弾性率が1.0×10^(3)Pa?1.0×10^(6)Paである、」と記載されているのを、「硬化後の周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率が1.0×10^(3)Pa?5.0×10^(5)Paである、」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。

(5) 一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項である請求項〔1?6〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1-1について
特許請求の範囲の請求項1についての訂正事項1-1は、本件特許の願書に添付した明細書の【0073】及び【0056】の記載に基づいて、「前記第二粘着剤層を構成する粘着剤」の組成が、「光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤」であったものを、「ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤」であって、「前記ベースポリマー」が、「構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るものに限定する訂正である。
そうしてみると、訂正事項1-1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項1-1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項2?請求項6についても、同様のことがいえる。

(2) 訂正事項1-2について
特許請求の範囲の請求項1についての訂正事項1-2は、本件特許の願書に添付した明細書の【0036】の記載に基づいて、「貯蔵弾性率G’_(25℃)」および「貯蔵弾性率G’_(80℃)」が、それぞれ「25℃」および「80℃」における貯蔵弾性率と定義されていたものを、「周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)」および「周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)」として、貯蔵弾性率を測定する際の測定条件を明示するものである。
あるいは、訂正事項1-2は、「貯蔵弾性率G’_(25℃)」および「貯蔵弾性率G’_(80℃)」が、それぞれ「25℃」および「80℃」における貯蔵弾性率であったものを、「周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)」および「周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)」として、「周波数1Hz、温度25℃」及び「周波数1Hz、温度80℃」で測定されたものに限定するものであるということもできる。
そうしてみると、訂正事項1-2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。あるいは、訂正事項1-2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項2?請求項6についても、同様のことがいえる。

(3) 訂正事項2について
特許請求の範囲の請求項4についての訂正事項2は、訂正事項1-1により、請求項1において第二粘着剤層を構成する粘着剤が「ベースポリマー」を含有することが特定されたことに伴って、請求項4における「ベースポリマー」との記載を、「前記ベースポリマー」として、請求項4が引用する訂正後の請求項1における「ベースポリマー」と同一であることを明らかにするものである。
そうしてみると、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項5,6についても、同様のことがいえる。

(4) 訂正事項3について
特許請求の範囲の請求項5についての訂正事項3のうちの最初の訂正事項は、上記(2)と同様、本件特許の願書に添付した明細書の【0036】の記載に基づいて、「硬化後の80℃における貯蔵弾性率」を、「硬化後の周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率」として、貯蔵弾性率を測定する際の測定条件を明示するものである。
あるいは、訂正事項3は、上記(2)と同様、「硬化後の80℃における貯蔵弾性率」を、「周波数1Hz、温度80℃」で測定されたものに限定するものであるということもできる。
また、特許請求の範囲の請求項5についての訂正事項3のうちの2番目の訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書の【0052】の記載に基づいて、「硬化後の80℃における貯蔵弾性率」の上限を、「1.0×10^(6)Pa」であったものを「5.0×10^(5)Pa」として、「貯蔵弾性率」の数値範囲を限定するものである。
そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
請求項6についても、同様のことがいえる。

3 本件訂正請求についてのまとめ
本件訂正は、特許法120条5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものである。また、本件訂正は、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定にも適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明について
前記「第2」のとおり、本件訂正は認められることとなったので、本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、「本件特許発明1?6」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え、
さらに前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されており、
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であり、
前記第二粘着剤層は、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であり、厚みが30μm以上である、両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項2】
前記第一粘着剤層の厚みが3?30μmである、請求項1に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項3】
前記第二粘着剤層は、軟化点が50℃?150℃の粘着付与剤を含有する、請求項1または2に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項4】
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤は、前記ベースポリマーが、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項5】
前記第二粘着剤層は、活性光線が照射され硬化された場合に、硬化後の周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率が1.0×10^(3)Pa?5.0×10^(5)Paである、請求項1?4のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項6】
画像表示装置を製造する方法であって、
前記画像表示装置は、画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されており、
請求項1?5のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一工程;および
前記第二粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程、
を有し、
前記第二貼合工程後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線が照射され、前記第二粘着剤層が硬化される、画像表示装置の製造方法。」

第4 取消の理由(決定の予告)の概要
令和元年6月27日付けで特許権者に通知した取消の理由は、概略、次のとおりである。

取消理由1
請求項1?3、5、6に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

取消理由2
請求項1?3、5、6に係る発明は、引用文献4に記載された発明、引用文献1に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献1、引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができものであるから、 その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(引用文献等一覧)
引用文献1:特開2012-237965号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2010-72471号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2011-184582号公報(甲第3号証)
引用文献4:大房 一樹、「光硬化型粘接着フィルム UVPシリーズ」、東亞合成グループ研究年報 TREND 2012、第15号、2012年1月1日発行、第25頁?29頁、[online]、東亞合成株式会社、[平成30年8月1日検索]、インターネット(URL:http://www.toagosei.co.jp/develop/theses/detail/pdf/no15_04.pdf)(甲第4号証)
引用文献5:特開2007-31506号公報(甲第5号証)
引用文献6:特開2009-258589号公報(甲第6号証)
引用文献7:特開2012-128099号公報(甲第7号証)
参考例8:古山昌治 他、「動的粘弾性測定による粘着テープのせん断クリープ評価」、第29回エレクトロニクス実装学会春季講演大会(2015年3月16日?3月18日)、第105頁?第108頁(16C2-4)(第105頁「表1 試験サンプル」、第107頁左欄下から7行?4行、第107頁「図6 動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’」(図6に示された25℃及び85℃におけるサンプルAの測定周波数1Hz及び10Hzの貯蔵弾性率G’等)等参照。)(令和元年5月16日付けの特許異議申立人による回答書において提出された甲第11号証)。
参考例9:「4 アクリル系粘着剤(日本触媒(株)様 提供)の測定結果(1998)」(日本接着学会 粘着研究会 第49回例会*3(*3平成10年2月20日、大阪科学技術センター)の講演で使用したもの)、2019年5月9日検索、インターネット(URL:http://www.itkdva.jp/pdf/PSA_Data_1994-1998.pdf)(「4 アイクリル系粘着剤の測定結果(1998)」「4-3) A,B,C,3試料の周波数分散データ」(同一のシフトファクタできれいに重ね合わされたアクリル系粘着剤A,B,Cの温度25℃における「MASTER CURVE(Tr=25℃)」における1Hz及び10Hzの貯蔵弾性率G等参照)、「アクリル粘着剤試料の明細(株式会社日本触媒ご提供)」等参照。)(同甲第12号証)
参考例10:「アイティー計測制御株式会社 DVA-200シリーズによる動的粘弾性測定データ報告 2011-9 粘着剤のせん断モードでの測定(1) アクリル系粘着剤の温度分散と周波数分散」、2019年5月11日検索、インターネット(URL:http://www.itkdva.jp/pdf/DataSheet.pdf)(「5) マスターカーブ(換算の基準温度は25℃)」における試料Cのアクリル系粘着剤の1Hz及び10Hzの貯蔵弾性率Gr等参照。)(同甲第13号証)

第5 取消理由1についての当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
令和元年6月27日付けで特許権者に通知した取消の理由で引用された、本件特許の出願前に、日本国内または外国において頒布された刊行物である引用文献1(特開2012-237965号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当合議体が付したものである。以下、同様。)

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを貼り合わせるために用いられる粘着剤層であって、
23℃における貯蔵弾性率が、0.12MPa?1MPaである、粘着剤層。
【請求項2】
厚みが、30μm?300μmである、請求項1に記載の粘着剤層。
・・・略・・・
【請求項9】
光学フィルムの一方の面に、請求項1?8のいずれか1項に記載の粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学フィルム。
・・・略・・・
【請求項11】
前記光学フィルムが少なくとも偏光板を含む、請求項9または10に記載の粘着剤層付き光学フィルム。
・・・略・・・
【請求項13】
画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを有し、
前記画像表示パネルと前記前面透明板とが、請求項1?8のいずれか1項に記載の粘着剤層を介して貼り合わされている、画像表示装置。
【請求項14】
前記粘着剤層の厚みが、前記前面透明板の隆起部の高さの2倍?20倍である、請求項13に記載の画像表示装置。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルと前面透明板との貼り合わせに用いられる粘着剤層、光学フィルムの一方の面に当該粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学フィルム、および、当該粘着剤層を介して画像表示パネルと前面透明板とが貼り合わせられた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイでは、外表面から何らかの衝撃が加わった場合に、その衝撃が表示パネルに伝わって破損することを防ぐ観点から、表示パネルよりも視認側にアクリル板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。このような前面透明板を備える画像表示装置において、表示パネルと前面透明板との間に空気層が存在すると、空気層界面における屈折率差に起因して、反射損失が生じたり画像が二重になって見える等、視認性が低下する場合がある。そのため、表示パネルと前面透明板との間に空気層が存在しないように、両者を粘着剤層を介して貼り合わせることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、画面の周辺に特定の額縁や図形を表示して意匠性を高めるために、前面透明板の周縁部付近に印刷が施される場合がある。図1に示すように、この印刷は、前面透明板1の画像表示パネル3と対向する側の面に施されることが多い。このように前面透明板に印刷によって額縁等が施されている場合、前面透明板の印刷部分は、所定の厚みをもった隆起部1aとして形成されている。そのため、粘着剤層を介して液晶パネルと貼り合わせる場合に、隆起部付近に気泡を生じたり、温度や湿度等の環境の変化にともなって隆起部付近から剥離を生じる場合がある。
【0004】
このような不具合を解決する観点から、前面透明板と液晶表示装置とを貼り合わせるための粘着剤層の厚みを大きくして、接着性を高めることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2においては、前面透明板の印刷部分の厚みが40μmの場合に、175μmの粘着剤層を用いた例が開示されている。
・・・略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2において提案されているように、粘着剤層の厚みを大きくするためには、粘着剤層を形成するための塗布溶液の固形分濃度を大きくするか、塗布厚みを大きくする必要がある。しかしながら固形分濃度の上昇に伴って溶液粘度が指数関数的に上昇する傾向があるため、固形分濃度の上昇には限界がある。また、粘着剤溶液の塗布厚みが大きくなると乾燥に時間を要するために、粘着剤層を形成するために多大な時間を要するとの問題がある。さらに、本発明者らが検討したところ、粘着剤層の厚みを大きくする等によって接着力を高めても、隆起部付近で気泡や剥離を生じる場合があることが判明した。
【0007】
かかる問題に鑑み、本発明は、隆起部を有する前面透明板と画像表示パネルとの貼り合わせに用いた場合に、隆起部付近での気泡や剥離の発生を抑制し得る粘着剤層、および当該粘着剤層を用いて前面透明板と画像表示パネルとが貼り合わせられた画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明らは、上記課題に鑑みて検討の結果、隆起部を有する前面透明板と画像表示パネルとの貼り合わせに、所定の物理特性を有する粘着剤層を用いて段差吸収特性を持たせることによって、隆起部付近で気泡や剥離が抑制されることを見出し、本発明にいたった。
【0009】
本発明は、画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを貼り合わせるために用いられる粘着剤層に関する。本発明の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、0.12MPa?1MPaである。また、粘着剤層の厚みは、30μm?300μmであることが好ましい。
・・・略・・・
【0013】
さらに、本発明は、光学フィルムの一方の面に、前記粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学フィルムに関する。
・・・略・・・
【0014】
また、一実施形態において、前記光学フィルムは、少なくとも偏光板を含む。
・・・略・・・
【0015】
さらに、本発明は、画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを有する画像表示装置に関する。本発明の画像表示装置においては、前記画像表示パネルと前記前面透明板とが、前記粘着剤層を介して貼り合わされている。本発明の画像表示装置において、前記粘着剤層の厚みは、前記前面透明板の隆起部の高さの2倍?20倍であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着剤層は、所定の貯蔵弾性率を有するために、前面透明板の隆起部付近において粘着剤層に生じる内部応力歪みが低減されている。そのため、画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板との貼り合わせに本発明の粘着剤層を用いた場合には、隆起部付近での気泡や剥離の発生が抑制され、信頼性の高い画像表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による画像表示装置(液晶表示装置)を模式的に表す断面図である。
【図2A】前面透明板と画像表示パネルとを貼り合わせた形態における隆起部付近の様子を説明するための概念図である。
【図2B】前面透明板と画像表示パネルとを貼り合わせた形態における隆起部付近の様子を説明するための概念図である。
【図3】粘着剤層付き偏光板の一実施形態を模式的に表す断面図である。
【図4】粘着剤層付き偏光板の一実施形態を模式的に表す断面図である。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明を説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる画像表示装置を模式的に表す断面図である。画像表示装置100において、画像表示パネル3の視認側に粘着剤層2を介して前面透明板1が貼り合わせられている。前面透明板1は、画像表示装置の視認側表面(図中の上側)から外力が加わった際に、画像表示パネルが破損することを防止する等の観点から設けられるものである。前面透明板1としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えばアクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。
【0019】
前面透明板1の画像表示パネル3と対向する側の面には、隆起部1aが形成されている。この隆起部は、一般には、前面透明板の表面に形成された印刷層であり、画面の周辺に特定の額縁や図形を表示して意匠性を高めるために設けられる。隆起部が印刷により形成される場合、隆起部の色は黒色あるいは白色等の場合もあるし、赤等の有彩色の場合もある。さらに、画面の周辺部に図形、文字等を表示するために、色の異なる多層印刷により隆起部が形成される場合もある。一般に隆起部の印刷層の総数は1層?5層程度であり、その厚みd1aは、5μm?50μm程度である。
・・・略・・・
【0021】
画像表示パネルとしては、液晶パネルや有機ELパネル、プラズマ表示パネル等のフラットディスプレイパネルが挙げられる。画像表示パネルの例として、図1では、液晶パネルが図示されている。この例では、液晶パネル3を構成する各部材が、積層されて一体化されている例を示すが、本発明では、一部の部材が、液晶パネル3とは別体として積層されていてもよい。その場合も当該一部の部材を含めて「画像表示パネル」と称する。
【0022】
液晶パネル3は、液晶セル31の視認側に第1の偏光板32を備える。
・・・略・・・
【0023】
・・・略・・・ 液晶パネル3は、図1に示すように、液晶セル31の視認側と反対側に第2の偏光板33を備え、・・・略・・・このような液晶パネルにおいて、一般に偏光板32,33は、粘着剤層34,35を介して液晶セルに貼り合わせられている。
【0024】
上記のような液晶パネルでは、画像表示パネルの最表面層である第1の偏光板32が、粘着剤層2を介して前面透明板1と貼り合わされる。
・・・略・・・
【0028】
[粘着剤層]
本発明の粘着剤層は、画像表示パネル3と前面透明板1とを貼り合わせるために用いられる粘着剤層である。本発明の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は0.12MPa?1MPaであり、0.2MPa?0.9MPaであることが好ましく、0.3MPa?0.8MPaであることがより好ましい。粘着剤層の貯蔵弾性率を前記範囲とすることで、前面透明板の隆起部周辺における気泡の噛みこみや剥がれを抑止し得るとともに、粘着剤欠け等の粘着剤層のハンドリング上の問題も低減される。貯蔵弾性率が過度に小さい場合は、切断加工時の粘着剤欠け等が生じ易く、粘着剤層の加工性が低下する傾向がある。一方、貯蔵弾性率が過度に大きいと、前面透明板の隆起部周辺を起点として気泡の噛みこみや剥がれを生じ易くなる傾向がある。
【0029】
図2は、厚みd_(1a)の隆起部1aを有する前面透明板1に、厚みd_(2)の粘着剤層2を介して画像表示パネル3を貼り合わせた場合における隆起部付近の拡大図である。一般に粘着剤層2は、前面透明板やその表面に設けられた隆起部、および画像表示パネル表面に比して弾性率が小さいため、隆起部1a付近では粘着剤層が圧縮される。前面透明板とパネルとを貼り合わせた場合、図2Aに示すように、前面透明板の隆起部1a付近における前面透明板の表面から粘着剤層の表面までの距離d_(B)は、粘着剤層の厚みd_(2)と等しくなるのが理想的であり、この場合、隆起部1a付近における粘着剤層の厚みd_(2a)は、d_(2)-d_(1a)に等しくなる。しかしながら、図2Aに示す形態では、隆起部1a付近での粘着剤層の厚みが小さくなるために、隆起部1a付近の粘着剤層には圧縮による内部応力歪みが生じている。そのため、この歪みを解消しようとする力がきっかけとなって、図2Bに示すように、隆起部付近で粘着剤層の浮きが生じ、気泡や剥離が生じるものと推定される。
【0030】
図2Bでは、隆起部1a付近で気泡sが生じている様子を模式的に表している。前面透明板1と画像表示パネル3とが貼り合わせられた状態において、この気泡が生じている部分では、粘着剤層の厚みd_(2a)’は、粘着剤層の厚みd_(2)と気泡の高さd_(s)との差となる。このように気泡が生じた場合は、隆起部付近における粘着剤層の厚みがさらに小さくなるために、圧縮による内部応力歪みが増大し、気泡を起因とした粘着剤層の剥離が拡大する可能性が考えられる。
【0031】
これに対して、本発明においては、粘着剤層の貯蔵弾性率を上記範囲とすることによって、前面透明板の隆起部付近での粘着剤層の内部応力歪が小さくなる、すなわち粘着剤層が段差吸収性を有するために、気泡や剥離の発生が抑制されるものと推定される。
【0032】
本発明の粘着剤層の厚みは、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが過度に小さいと、前面透明板や画像表示パネルに対する粘着剤層の接着性(接着力)が小さくなる傾向がある。また、粘着剤層の厚みが小さいと、隆起部付近の粘着剤層のクッション性が低く、粘着剤層に付与される圧縮歪が大きくなるために、段差吸収性が不十分となる傾向がある。一方、粘着剤層の厚みの上限は特に制限されないが、粘着剤層の生産性や加工性の観点からは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
【0033】
粘着剤層の厚みは、段差吸収特性の観点から選択することもできる。すなわち、前面透明板1の隆起部の厚みd_(1a)が大きい場合、粘着剤層にはより大きな段差吸収特性が求められるために、粘着剤層の厚みを大きくする必要がある。かかる観点から、粘着剤層の厚みd_(2)は、前面透明板1の隆起部の厚みd_(1a)の2倍?20倍程度であることが好ましく、3倍?10倍程度であることがより好ましい。
【0034】
また、隆起部付近での気泡や剥離の発生を抑制する観点において、粘着剤層は段差吸収特性を有するとともに、前面透明板および画像表示パネルに対する接着性が高いことが好ましい。
・・・略・・・
【0035】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、粘着剤を構成するベースポリマーの種類、ガラス転移温度(例えば、ベースポリマーのガラス転移温度を上げることで貯蔵弾性率の値は高くすることができる)、架橋剤の種類、配合量(例えば、架橋剤の配合量を多くすることで貯蔵弾性率の値は高くすることができる)を制御することにより適宜増加ないし減少させることができる。
【0036】
粘着剤層2としては、上記貯蔵弾性率を満たすものであれば、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0037】
前記アクリル系粘着剤としては、例えば、ベースポリマーとして、第1のセグメントおよび第2のセグメントを有するアクリル系のブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有する粘着剤を用いることができる。好ましくは、第1のセグメントは、ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル系重合体セグメントであり、第2のセグメントは、ガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系重合体セグメントである。
・・・略・・・
【0048】
粘着剤のベースポリマーは、上記目的を逸脱しない範囲で架橋剤を用いて化学的に架橋されたものであってもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物や有機過酸化物、エポキシ系化合物、有機金属塩、金属アルコラート、金属キレート化合物、多官能性化合物等が用いられる。これらのうち、架橋反応性やその取扱い性の観点から、三官能性イソシアネートやアルミニウムキレート化合物が好適である。これらの架橋剤は、塗工、乾燥するまでは溶液の増粘現象を起こさないため、粘着剤層形成時の作業性に優れる。
【0049】
前述のように架橋剤を用いて架橋を行うと、凝集効果によって粘着剤層の貯蔵弾性率が前記好ましい範囲を超える傾向がある。そのため、粘着剤の形成において、架橋剤の添加量は、貯蔵弾性率が過度に高くならない範囲で調整することが好ましい。
・・・略・・・
【0084】
[粘着剤層付き光学フィルム]
先に述べたように、画像表示パネル3の最表面層を構成する部材の例としては、各種の光学フィルムが挙げられる。図1に示すように、画像表示パネル3の再表面層を構成する光学フィルムは、典型的には偏光板32である。すなわち、一般に液晶パネルにおいて視認側の最表面には偏光板が配置されることから、図3に示すように、偏光板32上に粘着剤層2を付設し、この粘着剤層付きの偏光板51を前面透明板1に貼り合わせることによって、画像表示装置を形成することができる。なお、当該形態の粘着剤層付き偏光板は、前面透明板との貼り合わせに供するまでの間、粘着剤層2の表面の汚染防止等を目的として、セパレータ41が仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層に接触することを防止できる。セパレータとしては、例えばプラスチックフィルム、・・・略・・・等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
・・・略・・・
【0086】
また、図4に示すように、偏光板32の一方の面に粘着剤層2を付設し、他方の面に偏光板と画像表示セル31とを貼り合わせるための粘着剤層34を付設した形態の粘着剤層付き偏光板を形成することもできる。この場合も、偏光板を貼り合わせに供するまでの間、粘着剤層2,34の表面には、セパレータ41,42が仮着されてカバーされることが好ましい。
【0087】
偏光板32と画像表示セル31との貼り合わせに用いられる粘着剤層34を形成するための粘着剤は特に制限されないが、・・・略・・・粘着剤層34の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1?500μmであり、5?200μmが好ましく、10?100μmがより好ましい。
【0088】
なお、各図面において、偏光板32は1層で図示されているが、一般には偏光板は偏光子の両面に接着剤層を介して適宜の透明保護フィルムが積層された形態を有している。また、偏光板32は、偏光子および透明保護フィルム以外に、位相差板等の光学機能層が、適宜の接着剤層や粘着剤層を介して積層されたものであってもよい。また、画像表示セル31として有機ELセルが用いられる場合は、偏光子上に直接あるいは透明保護フィルムを介して1/4波長板が貼り合わせられた円偏光板が好適に用いられる。
【0089】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上記の粘着剤層2を用いて、隆起部1aを有する前面透明板1と画像表示パネル3とが貼り合わせられたものであれば、その構成は特に限定されない。
【0090】
画像表示パネル3としては、本明細書中に記載されたものであればよいが、具体的な構成としては、例えば、(視認側から)偏光板/粘着剤層/液晶セル/粘着剤層/偏光板、有機ELパネル、偏光板/有機ELパネル、赤外線遮断フィルター層/プラズマディスプレイパネル、等の構成を挙げることができ、さらに、視認側に円偏光板等の偏光板、タッチパネル、位相差板等を貼り合わせた構成とすることもできる。また、画像表示パネル3の構成のうち一部の部材が別体として積層されていてもよく、その場合、当該一部の部材を含めて「画像表示パネル」と称する。
【0091】
前面透明板と画像表示パネル3との貼り合わせ順序としては、先に画像表示パネル表面の光学フィルムと前面透明板1とを粘着剤層2を介して貼り合わせた後、この積層部材を液晶セル等の他の画像表示パネル3を形成する部材と貼り合わせる方法、あるいは先に画像表示パネル表面の光学フィルムを液晶セル等の他の画像表示パネル3を形成する部材と貼り合わせた後、この画像表示パネル3と前面透明板1とを粘着剤層2を介して貼り合わせる方法が挙げられる。
【0092】
貼り合わせの作業性や、前面透明板1の隆起部1a付近での気泡の混入等を抑止する観点からは、先に画像表示パネル表面の光学フィルムと前面透明板1とを粘着剤層2を介して貼り合わせることが好ましい。偏光板等の光学フィルム32と画像表示セル等が貼り合わせられる前であれば、光学フィルム32が可撓性を有する状態で前面透明板との貼り合わせを行うことができるために、気泡の混入が抑止されるものと考えられる。また、貼り合わせの作業性の観点からは、図3に示すような粘着剤層付きの光学フィルムを形成し、この粘着剤層付き光学フィルムの粘着剤層を前面透明板と貼り合わせることが好ましい。」

エ 「【実施例】
【0093】
・・・略・・・
【0098】
実施例及び比較例
(粘着剤層の形成)
・・・略・・・
【0099】
(粘着剤層付き偏光板の形成)
上記セパレータ上に形成された粘着剤層を、偏光子の両面にトリアセチルセルロースフィルムからなる保護フィルムが形成された偏光板に転写して、偏光板上に粘着剤層が形成された粘着剤層付き偏光板を得た(下記表1)。
【0100】
[評価]
<貯蔵弾性率>
貯蔵弾性率は、レオメトリック社製の粘弾性スペクトロメータ(商品名:RSA-II)を用いて行った。測定条件は、周波数1Hz、サンプル厚2mm、圧着加重100g、昇温速度5℃/minでの-50℃?200℃の範囲に於ける、23℃での測定値とした。
【0101】
<加工性>
・・・略・・・
【0102】
<段差吸収特性>
50mm×150mmのガラス板の周縁部に、幅5mm、厚み20μmの印刷層を額縁状に形成したものを擬似前面透明板として用いた。この前面透明板上の印刷層を覆うように、前記粘着剤層付き偏光板を貼り合わせ、印刷層縁部における粘着剤層の浮き(図2Bにおけるd_(s))を観察し、以下の基準で評価した。
・・・略・・・
【0105】
表1に示すように、粘着剤層の貯蔵弾性率を調整することにより、前面板と貼り合わせた際の隆起部付近における粘着剤層の浮きが抑制され、かつ粘着剤層は加工性に優れることがわかる。
【符号の説明】
【0106】
1 前面透明板
1a 隆起部
2 粘着剤層
3 画像表示パネル(液晶パネル)
31 画像表示セル(液晶セル)
32,33 光学フィルム(偏光板)
34,35 粘着剤層
41,42 セパレータ
43 ITO処理したガラス
51,52 粘着剤層付き光学フィルム
100 画像表示装置」

オ 「【図1】



カ 「【図2A】




キ 「【図2B】



ク 「【図3】



ケ 「【図4】



(2) 引用発明1
ア 引用文献1の特許請求の範囲の請求項2の記載は、「厚みが、30μm?300μmである、請求項1に記載の粘着剤層。」であるところ、請求項1の記載は、「画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを貼り合わせるために用いられる粘着剤層であって」、「23℃における貯蔵弾性率が、0.12MPa?1MPaである、粘着剤層。」である。
ここで、「貯蔵弾性率」に関し、引用文献1の【0100】には、「貯蔵弾性率は、レオメトリック社製の粘弾性スペクトロメータ(商品名:RSA-II)を用いて行った。測定条件は、周波数1Hz、サンプル厚2mm、圧着加重100g、昇温速度5℃/minでの-50℃?200℃の範囲に於ける、23℃での測定値とした。」との記載がある。そうすると、請求項1に記載された「貯蔵弾性率」は、「周波数1Hz」、「23℃における貯蔵弾性率」である。

イ 引用文献1における発明は、「画像表示パネルと前面透明板との貼り合わせに用いられる粘着剤層」、「光学フィルムの一方の面に当該粘着剤層が形成された粘着剤層付き光学フィルム」及び「当該粘着剤層を介して画像表示パネルと前面透明板とが貼り合わせられた画像表示装置」(【0001】)に関するものであるところ、引用文献1の【発明を実施するための形態】の【0086】及び図4には、「粘着剤層付き光学フィルム」として、「偏光板32の一方の面に粘着剤層2を付設し、他方の面に偏光板と画像表示セル31とを貼り合わせるための粘着剤層34を付設した形態の粘着剤層付き偏光板」が記載され、この「粘着剤層付き偏光板」について、「偏光板を貼り合わせに供するまでの間、粘着剤層2,34の表面には、セパレータ41,42が仮着されてカバーされる」ことが記載されている。

ウ ここで、引用文献1の【発明を実施するための形態】の「粘着剤層付き光学フィルム」についての【0084】?【0088】の記載によれば、上記イの【0086】及び図4に記載された「粘着剤層付き偏光板」は、【0084】及び図3に記載された「粘着剤層付きの偏光板51」が前提となっていると理解されるところ、この「粘着剤層付きの偏光板51」は、「偏光板32上に粘着剤層2を付設し、この粘着剤層付きの偏光板51を前面透明板1に貼り合わせる」もの、すなわち、「偏光板32上に」「付設し」た「粘着剤層2」により、「粘着剤層付きの偏光板51を前面透明板1に貼り合わせる」ものである。
そうすると、前提となっている「粘着剤層付きの偏光板51」の構成を踏まえると、上記イの【0086】及び図4に記載された「粘着剤層付き偏光板」も、「偏光板32上に」「付設し」た「粘着剤層2」により、「粘着剤層付き偏光板」が「前面透明板1に貼り合わせ」るものであると把握できる。
そして、上記イの【0086】及び図4に記載された「粘着剤層付き偏光板」においては、「粘着剤層2」により「粘着剤層付き偏光板」を「前面透明板1に貼り合わせ」るのであるから、「粘着剤層2」が、特許請求の範囲の請求項1に記載された「画像表示パネルと、画像表示パネル側の面に隆起部を有する前面透明板とを貼り合わせるために用いられる粘着剤層」に対応する(図1の「1 前面透明板」、「2 粘着剤層」、「32 光学フィルム(偏光板)」、「34 粘着剤層」、「31 画像表示パネル(液晶セル)」の積層・貼合構造(順序)からも明らかなことである。)。

エ 上記ア?ウより、引用文献1には、「粘着剤層2」として、(請求項1を引用して記載された)請求項2に係る「粘着剤層」を備えた、【0086】及び図4に記載された「粘着剤層付き光学フィルム」である「粘着剤層付き偏光板」として、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明1」という。)。
「粘着剤層付き光学フィルムである粘着剤層付き偏光板であって、
偏光板32の一方の面に粘着剤層2を付設し、他方の面に偏光板32と画像表示セル31とを貼り合わせるための粘着剤層34を付設した形態であり、
偏光板を貼り合わせに供するまでの間、粘着剤層2、34の表面には、セパレータ41、42が仮着されてカバーされ、
偏光板32上に付設した粘着剤層2により、粘着剤層付きの偏光板が前面透明板1に貼り合わせられ、
粘着剤層2は、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaであり、厚みが30μm?300μmである、
粘着剤層付き偏光板。」

(3) 引用文献4の記載
令和元年6月27日付けで特許権者に通知した取消の理由で引用された、本件特許の出願前に、日本国内または外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4(大房 一樹、「光硬化型粘接着フィルム UVPシリーズ」、東亞合成グループ研究年報 TREND 2012、第15号、2012年1月1日発行、第25頁?29頁、[online]、東亞合成株式会社、[平成30年8月1日検索]、インターネット(URL:http://www.toagosei.co.jp/develop/theses/detail/pdf/no15_04.pdf))には、以下の事項が記載されている。

ア 25頁左欄「1 はじめに」
「粘着剤は、指圧程度の圧力で瞬時に接着が可能なことから、電子機器、自動車部品、建築材料など幅広い分野で利用されている。その中でも、携帯電話やTV、パソコンなどの主要部品であるフラットパネルディスプレイ(FPD)は、偏光板、輝度向上フィルム、カラーフィルター、タッチパネルなど、さまざまな機能を有する部材の集積体であり、多くの部位で粘着剤が用いられている^(1))。
FPD用部材は光学特性や信頼性などの要求レベルが高く、かつ技術の変遷により新たな要求が加わることも多いため、それらに用いられる粘着剤も絶え間なく技術開発が続けられている。
本稿では、従来の粘着剤にはない機能を有する光硬化型粘接着剤を取り上げ、従来の粘着剤や接着剤との違いについて述べた後、近年注目度の高い段差充填用樹脂への応用可能性について説明する。」

イ 25頁右欄「2.2 光硬化型粘接着フィルム」
「2.2 光硬化型粘接着フィルム
粘接着剤とは、「硬化前は粘着性を有して室温で貼合可能であり、熱や光などの方法により架橋・硬化し、接着強度が向上する」接着剤であり、その概念は古くから存在する^(4))。
粘接着剤は、硬化させるための反応機構の違いによって、熱硬化型(常温硬化型含む)及び光硬化型に大別され^(4)) 、熱硬化型は湿気硬化型の粘接着剤^(5))が実用化されており、光硬化型は光ラジカル硬化型^(6)) 、光カチオン硬化型^(7))の粘接着剤が開発されている。
それらの中でも、光硬化型粘接着剤は短時間で硬化できるため生産性に優れ、かつ高温加熱が不要なので、プラスチックフィルムのような熱に弱い基材に適している。光硬化型粘接着剤の概念を図2に示した。

図2 光硬化型粘接着剤の概念

さらに、基材レス粘着フィルムと同様、離形フィルムで粘接着層をサンドイッチした構造(光硬化型粘接着フィルム)にすることで、光学フィルムや部材の接着に適した形態となる。
市場に流通する粘・接着剤を、硬化方法や形態などで分類・比較した(表1)。光硬化型粘接着フィルムは、従来の基材レス粘着フィルムの高機能品と位置づけられ、段差追従性と環境耐性など、一般的に両立させることが困難な性能を共に満たすことが可能である。」

ウ 26頁左欄「3 UVPシリーズの特性」「3.1 グレード」?27頁右欄「3.4 光学特性」
「3 UVPシリーズ
3.1 グレード
UVPシリーズは、特殊アクリレート「アロニックス(R)」(当合議体中:登録商標を表す「丸付きのR」を「(R)」で代用している。)の開発で培われた光硬化技術を応用した光硬化型粘接着フィルムである。光硬化後の貯蔵弾性率、剥離強度、接着層の着色、光硬化性などの違いにより、図3のようにグレード分けされているため、要求性能に応じて適切なグレードを選択する必要がある。

図3 UVPシリーズのグレード

3.2 動的粘弾性
図4に、光硬化前のUVPシリーズと市販粘着フィルムの貯蔵弾性率G’を示した(ずりモードによる動的粘弾性測定)。
UVPシリーズは、主成分となるアクリルポリマーの他に、光硬化前は可塑剤として働く、比較的低分子量の反応性モノマー・オリゴマーが配合されている。そのため、光硬化前のUVPシリーズは市販粘着フィルムよりも貯蔵弾性率G’が低く、特に高温域において顕著である。
この結果から、被着体表面に段差(印刷パターン、配線、空隙など)が存在する場合、UVPシリーズはそれらを埋めて平滑化する能力に優れ、さらに60?80℃程度で短時間加熱することにより、一層良好となることが示唆される。

図4 硬化前の貯蔵弾性率G’

図5に、光硬化後のUVPシリーズの貯蔵弾性率E’と損失正接tanδの温度分散データ(引張モードによる動的粘弾性測定)を示した。
一般的な粘着剤は、Dahlquistの基準^(8))で1.59Hzにおける室温のG’が0.3MPa以下の材料であるが、それと比較して光硬化後のUVPシリーズはE’が大幅に高い(E’=3G’、但しポアソン比=0.5の場合)。そのため、耐熱性などの環境試験耐性や裁断性が粘着剤よりも優れていることが示唆される。
UVPシリーズは、アクリルポリマーのTgや官能基濃度、反応性モノマー・オリゴマーの分子量や官能基数などを調整することによって、硬化後でもタックを有するUVP-1003から、比較的硬い塗膜が得られるUVP-9000まで、貯蔵弾性率E’の違いによりグレード分けを行っている。高いレベルの耐熱性を求める場合は、より貯蔵弾性率の高いグレードを選択することが好ましい。

図5 硬化後の動的粘弾性

3.3 剥離強度
UVPシリーズの各種基材に対する剥離強度を図6、図7に示した。
UVPシリーズは、接着力を向上させる目的でベースとなるアクリルポリマーに極性基を導入している。そのため、プラスチックフィルムに対してコロナ放電などの表面処理を行うことで、多くの場合剥離強度が向上する。
また、UVPシリーズの剥離強度は、一部の例外はあるものの、硬化後の貯蔵弾性率が高いグレードの方が低い傾向が見られる。剥離強度を重視する用途の場合は、UVP-1003を選択することが好ましい。
・・・略・・・

3.4 光学特性
UVPシリーズの光学特性を表2に示した。UVPシリーズは、透明性に優れた非晶性のアクリルポリマーをベースにしているため、全光線透過率・ヘイズともに市販粘着フィルムと同等である。また、着色が問題となる場合は、着色の少ない光開始剤を用いた低着色グレード(UVP-1100?9100)を選択することも可能である。但し、低着色グレードはUV吸収の大きな基材には適さないため、使用にあたっては注意が必要である。」

エ 27頁右欄「4 応用例」?29頁右欄「4.5 視認性」
「4 応用例
近年における光硬化型粘接着剤の応用検討例として、Blu-ray用中間層の貼合^(6))・・・などが挙げられ、筆者らも円偏光板を作製するときの接着剤として、光硬化型粘接着フィルムが好適であることを報告している^(11))。
本稿では、FPDに使用されている光学部材中に存在する段差や空隙を隙間なく充填することができる、段差充填用樹脂への応用検討について報告する。

4.1 段差充填用樹脂とは
粘着剤は常温でゴム状態の柔軟な物質であるため、被着体に凹凸や段差が存在してもある程度追従し、隙間を充填できる。その特性を生かして、Blu-ray用カバー層^(6))や、化粧印刷されたタッチパネル用表面保護板の貼合^(3))などに、段差充填用樹脂として粘着剤が用いられている。
特に最近のタッチパネルは、額縁部にある化粧印刷の膜厚が大きくなる傾向にあるため、段差追従性向上の要望が強い。
段差追従性を向上させるには、粘着剤の厚膜化や低貯蔵弾性率化が有効であるが、粘着剤層の発泡や裁断性の低下を招きやすいと言われる^(3))。また、段差追従性が不十分だと、化粧印刷付近に気泡が残って外観不良が多発する。
この問題を解決するため、光硬化型粘接着フィルムの応用が検討されている^(12))。3.2項で述べたように、光硬化型粘接着フィルムは良好な段差追従性と環境試験耐性を示すことが期待される。
本稿では、段差充填用樹脂として膜厚100μmのUVP-1100と、同じ膜厚の市販アクリル系粘着剤シート品(粘着剤Aと呼称)の2種類を評価した結果について紹介する。

4.2 硬化前の動的粘弾性
UVP-1100(硬化前)と、粘着剤Aの5?85℃における貯蔵弾性率G’を比較した(図8)。
UVP-1100は上記温度領域において粘着剤Aよりも貯蔵弾性率G’が低く、温度が高いほどその差が顕著である。そのため、UVP-1100は段差追従性が粘着剤Aよりも高く、加熱することによりさらに良好になることが示唆される。

図8 段差充填用樹脂の貯蔵弾性率

4.3 段差追従性
下記試験法により、段差充填用樹脂の段差追従性を評価した。
(実験)
ガラス基板上に、東亞合成製ソルダーレジストフィルム「SRF SS-8000」(25μm)を用いたフォトリソグラフィー法により、幅5mm×長さ50mm×厚さ25μmの樹脂段差のあるガラス基板を作製した。
得られたガラス基板に、段差充填用樹脂を介してPMMAフィルムを貼り合わせた後、熱プレス装置で80℃×5分、0.5MPaの条件で熱圧着した。冷却後、UVP-1100はPMMAフィルム越しに光照射して硬化させ(積算光量2,000mJ/cm^(2))、100℃×24時間加熱して欠陥の有無を目視観察した(図9)。
(結果)
UVP-1100は、熱圧着により段差に追従して空隙を埋めることができたのに対し、粘着剤Aでは段差に完全に追従することができず、段差付近に空隙が残った状態であった。4.2項で述べた通り、UVP-1100は粘着剤Aよりも段差追従性に優れていることが明らかとなった。

図9 段差追従性試験
(左:UVP-1100、右:粘着剤A)

4.4 信頼性試験
下記試験法により、段差充填用樹脂の信頼性を評価した。
(実験)
図10に示すような構成で、段差充填用樹脂を介してガラス基板にプラスチックフィルムを貼り合わせた。UVP-1100はプラスチック越しに光照射して硬化させ(積算光量2,000mJ/cm^(2))、100℃×500時間加熱して欠陥の有無を目視観察した(図11)。
(結果)
粘着剤Aや光硬化前のUVP-1100では環境試験後に発泡が見られたが、一方で光硬化後のUVP-1100に外観異常は見られなかった。
一般的に、PMMAやポリカーボネートなどのプラスチックフィルムには揮発成分が存在するため、粘着剤の凝集力が低い場合には信頼性試験で粘着剤層に発泡が生じやすいとされる^(3))。今回の結果はそれを裏付けており、高貯蔵弾性率を有する光硬化型粘接着フィルムは高い信頼性を示した。

図10 信頼性試験 層構成

図11 信頼性試験 結果

4.5 視認性
段差充填用樹脂は、プラスチックやガラスに存在する段差や空隙を埋め、屈折率差を小さくして反射を防止し、視認性を高める機能が求められる。図12では、LCD表面にPETフィルムのみ配置した場合と、UVP-1100(100μm)を用いて貼り合わせた場合を並べて比較したが、前者が空気層の反射のためコントラストが低下しているのに対し、後者では反射を抑制できコントラストが高いことが判る。

図12 視認性(左:PETのみ、右:UVP-1100で貼合)」

オ 29頁左欄?右欄「5 まとめ」
「5 まとめ
本稿では、光学部材の貼り合わせに広く用いられている、基材レス粘着フィルムを補完する製品として光硬化型粘接着フィルムを紹介し、その特徴について説明した。また、近年注目度の高い、段差充填用樹脂として応用検討した結果、光硬化型粘接着フィルムが粘着フィルムよりも優れた性能を有することを明らかにした。
電子・電気用途や光学部材用途では、今後も粘着剤に対する要求性能はますます高まることが予想される。光硬化型粘接着フィルムは、従来技術では両立が難しかった性能を高いレベルで達成できる製品として、今後も応用が進むものと期待される。」

2 対比・判断
(1) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると以下のとおりである。
(ア) 引用発明1の「粘着剤層付き偏光板」は、「粘着剤層付き光学フィルムであ」り、「偏光板32の一方の面に粘着剤層2を付設し、他方の面に偏光板32と画像表示セル31とを貼り合わせるための粘着剤層34を付設した形態であり」、「偏光板32上に付設した粘着剤層2により、粘着剤層付きの偏光板が前面透明板1に貼り合わせられ」るものである。

(イ) 上記(ア)の引用発明1の構成からみて、引用発明1の「偏光板32」は、「粘着剤層付き偏光板」における「粘着剤層」を除いた「偏光板」のことである。
また、引用発明1の「粘着剤層付き偏光板」は、「粘着剤層付き光学フィルムであ」るから、引用発明1の「粘着剤層」を除く「偏光板」及び「偏光板32」は、「光学フィルム」である。
そうすると、「偏光板32」は、「偏光板32」を含む「光学フィルム」と言い換えることができる。
引用発明1の「偏光板32」(及び「粘着剤層」を除いた「偏光板」)及び「光学フィルム」は、それぞれ本件特許発明1の「偏光板」及び「光学フィルム」に相当する。
してみると、引用発明1の「偏光板32」と、本件特許発明1の「光学フィルム」は、「偏光板を含む」との点において共通する。

(ウ) 上記(ア)より、引用発明1は、「偏光板32の」「他方の面に偏光板32と画像表示セル31とを貼り合わせるための粘着剤層34を付設」している。
上記貼り合わせ構成から、引用発明1の「粘着剤層34」は、「偏光板32」(「偏光板32」を含む「光学フィルム」)の「画像表示セル31」と「貼り合」せられる側の面(「他方の面」)に設けられたものということができる。
技術的にみて、引用発明1の「画像表示セル31」は、本件特許発明1の「画像表示セル」に相当する。
そうすると、引用発明1の「粘着剤層34」は、本件特許発明1の「第一粘着剤層」に相当する。また、引用発明1の「粘着剤層34」と、本件特許発明1の「第一粘着剤層」は、「前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた」との点で共通する。

(エ) 上記(ア)より、引用発明1は、「偏光板32の一方の面に粘着剤層2」が「付設」され、「粘着剤層2により、粘着剤層付きの偏光板が前面透明板1に貼り合わせられ」るものである。
上記貼り合わせ構成から、引用発明1の「粘着剤層2」は、「偏光板32」(「偏光板32」を含む「光学フィルム」)の「前面透明板1」と「貼り合」せられる側の面(「一方の面」)に設けられたものということができる。
技術的にみて、引用発明1の「前面透明板1」は、本件特許発明1の「前面透明板」及び「透明板」に相当する。
そうすると、引用発明1の「粘着剤層2」は、本件特許発明1の「第二粘着剤層」に相当する。また、引用発明1の「粘着剤層2」と、本件特許発明1の「第二粘着剤層」は、「前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた」との点で共通する。

(オ) 上記(ア)?(エ)より、引用発明1は、本件特許発明1の「偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え」との構成を具備する。

(カ) 引用発明1の「粘着剤層2は」、「厚みが30μm?300μmである」。
そうすると、上記(エ)より、引用発明1は、本件特許発明1の「前記第二粘着剤層は」、「厚みが30μm以上である」との構成を具備する。

(キ) 引用発明1は、「偏光板を貼り合わせに供するまでの間」、「粘着剤層2、34」は、「セパレータ41、42が仮着されてカバーされ」ている。
技術的にみて、引用発明1の「粘着剤層2」及び「粘着剤層34」をそれぞれ「カバー」する「セパレータ41」及び「セパレータ42」は、「粘着剤層2」及び「粘着剤層34」を機械的な保護する、あるいは汚染から保護するという機能を有するものである。
また、引用発明1の「粘着剤層2」及び「粘着剤層34」にそれぞれ「仮着されて」いる「セパレータ41」及び「セパレータ42」は、それぞれ「粘着剤層2」及び「粘着剤層34」に剥離可能に貼着されていることは明らかである。
そうすると、引用発明1の「セパレータ41」及び「セパレータ42」は、それぞれ本件特許発明1の「保護シート」に相当する。また、上記(ウ)及び(エ)より、引用発明1は、本件特許発明1の「前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されており」との構成を具備する。

(ク) 上記(ア)の引用発明1の貼り合わせの構成からみて、引用発明1は、「前面透明板1」と「画像表示セル31」との間に配置して用いられるものである。
引用発明1における「偏光板32の一方の面」に「付設」された「粘着剤層2」及び「他方の面に」「付設」された「粘着剤層34」は、それぞれ本件特許発明1の「粘着剤」に相当する。
そうすると、上記(ア)?(キ)より、引用発明1の「粘着剤層付き偏光板」は、本件特許発明1の「粘着剤付き光学フィルム」及び「両面粘着剤付き光学フィルム」に相当し、引用発明1の「粘着剤層付き偏光板」と、本件特許発明1の「粘着剤付き光学フィルム」は、「前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる」との点で共通する。

(ケ) 上記(ア)?(ク)の対比結果を踏まえると、本件特許発明1と引用発明1は、
「前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え、
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されており、
前記第二粘着剤層は、厚みが30μm以上である、両面粘着剤付き光学フィルム。」である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1-1)
本件特許発明1の「前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るのに対して、
引用発明1の「粘着剤層2」を構成する「粘着剤」がそのようなものとなっていない点。

(相違点1-2)
本件特許発明1の「前記第二粘着剤層は、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であ」るのに対して、
引用発明1の「粘着剤層2」は、「周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaであ」るものの、「G’_(25℃)」及び「G’_(80℃)」が不明であり、「G’_(25℃)/G’_(80℃)」も不明である点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点1-1と相違点1-2を併せて検討する。
(ア) 先に、引用文献4に記載された「光硬化型粘接着フィルム」であるUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、UVP-1100(以下、これらのフィルムを総称して「引用文献4UVPフィルム」という。)が、上記相違点1-1に係る「ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るとの要件を満たすかどうかについて検討する。

a 引用文献4(上記1(3)ア?オ参照)には、化粧印刷されたタッチパネル用表面保護板のような被着体表面に印刷パターン等の段差が存在する場合において、印刷パターン等の段差を埋めて、平滑化する能力に優れ、さらに、60?80℃で短時間加熱することにより一層良好となり、光硬化させることにより、耐熱性などの環境試験耐性、揮発成分による発泡に対する信頼性や裁断性が粘着剤よりも優れたものとなり、段差充填用樹脂への応用が可能である「光硬化型粘接着フィルム」として、例えば、UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、UVP-1100等の「UVPシリーズ」があることが記載されている(以下、これら5つの「UVPシリーズ」のフィルムを総称して、「引用文献4UVPフィルム」という。)。
また、引用文献4には、「引用文献4UVPフィルム」については、具体的な組成は示されていないが、「光硬化型粘接着フィルム」である「UVPシリーズ」について、(a)特殊アクリレート「アロニックス(R)」の開発で培われた光硬化技術を応用した光硬化型粘接着フィルムであること、(b)主成分となるアクリルポリマーの他に、光硬化前は可塑剤として働く、比較的低分子量の反応性モノマー・オリゴマーが配合され、光硬化前は市販粘着フィルムよりも貯蔵弾性率G’が低く、特に高温域において顕著に低いものであること、(c)アクリルポリマーのTgや官能基濃度、反応性モノマー・オリゴマーの分子量や官能基数などを調整することにより、貯蔵弾性率のグレード分け行われるものであること、(d)接着力を向上させる目的でベースとなるアクリルポリマーに極性基が導入されたものであること、(e)透明性に優れた非晶性のアクリルポリマーをベースにしていることが記載されている。

b 上記aで述べたとおり、引用文献4には、引用文献4UVPフィルムの組成については具体的に記載されておらず、引用文献4UVPフィルムの具体的な組成は不明である。
また、これらの「引用文献4UVPフィルム」の組成を具体的に示す証拠は示されていない。また、これらの「引用文献4UVPフィルム」の具体的な組成が当業者の技術常識ともいえない。
加えて、上記aより、引用文献4UVPフィルムは、特殊アクリレート「アロニックス(R)」の開発で培われた光硬化技術を応用したものであるところ、引用文献4UVPフィルムに応用された特殊アクリレート「アロニックス(R)」の種類(品番)やその材料組成を示す証拠は示されていない。また、特殊アクリレート「アロニックス(R)」の開発で培われたどのような技術が「UVPシリーズ」に応用されているのかを示す証拠は示されていない。

c そして、上記aより、引用文献4UVPフィルムの組成に関し、光硬化性モノマー・光硬化性オリゴマーを含有すること、ベースポリマーの主成分がアクリルポリマーであること、アクリルポリマーに極性基が導入されていること、非晶性のアクリルポリマーをベースにしていることは理解できるものの、引用文献4UVPフィルムの「ベースポリマー」の「構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るとまではいうことはできない。
すなわち、引用文献4UVPフィルムのベースポリマーの主成分はアクリルポリマーであるから、引用文献4UVPフィルムは、ベースポリマーの(副)成分として、アクリルポリマー以外のポリマーを含んでいる。また、引用文献4UVPフィルムは、ベースポリマーの構成モノマーとして、アクリル系ポリマーの構成モノマーとしてよく用いられる(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する蓋然性が高いということはいえるとしても、引用文献4UVPフィルムは、アクリルポリマーの構成モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー成分を含んでいる可能性がある。
そうしてみると、引用文献4UVPフィルムの「ベースポリマー」の「構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」る蓋然性が高いとまではいうことはできない。

d してみると、当業者の技術常識を考慮したとしても、引用文献4に記載された「光硬化型粘接着フィルム」であるUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100が、上記相違点1-1に係る「ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るとの要件を満たすとまでいうことはできない。

e 異議申立人は、平成31年2月28日提出の意見書(以下、「異議申立人第1意見書」という。)8頁下から6行?9頁2行において、「ここで、引用文献4に記載されているUVP-7000あるいはUVP-9000の組成、または後述するUVP-1003あるいはUVP-3002の組成は、主成分としてアクリルポリマーを含むものであり・・・略・・・、したがって、・・・略・・・「前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40質量%以上であり」との発明特定事項は、引用文献4に記載されているUVP-7000,UVP-9000,UVP-1003,UVP-3002のいずれもが満たすものであることは明らかであります。」旨主張し、また、令和元年10月9日提出の意見書(以下、「異議申立人第2意見書」という。)の5頁下から2行?6頁12行において、「アクリルポリマーという場合に、そのモノマー成分について具体的に言及がない場合は、特別なモノマー成分でないと考えるのが通常であり、構成モノマーとして慣用されている(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量についても、40%未満であるか40%以上であるかの2択のいずれかであるかといえば、後者である蓋然性が高いと言うことができるものと考えます。」、「光硬化型のアクリル系粘着剤において、ベースポリマーであるアクリルポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を40%以上とすることは周知技術であります(例えば、特開昭61-83274号公報(甲第14号証)の第14カラムの実施例1に記載の組成、特開平10-279900号公報(甲第15号証)の【0061】に記載の組成、特開2006-111651号公報(甲第16号証)の【0039】に記載の組成等参照)。」旨主張している。
しかしながら、アクリルポリマーのモノマー成分について具体的に言及がないからといって、必ず特別なモノマー成分でないと考えることはできない。そして、UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100などUVPシリーズの品番で特定されている各フィルムのアクリルポリマーを主成分とするベースポリマーの構成モノマーの組成が不明であることは既に述べたとおりである。さらに、異議申立人提出の甲第14号証?甲第16号証に記載されているように、光硬化型のアクリル系粘着剤において、ベースポリマーであるアクリルポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を40%以上とすることが周知技術であるからといって、UVPシリーズの品番で特定される各引用文献4UVPフィルムの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40%以上である蓋然性が高いということはできない。また、上記a(a)?(e)の特徴を有する特定の品番の引用文献4UVPフィルムの組成を、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量を40%以上とすることは設計的事項でもない。
よって、異議申立人の上記主張を採用することはできない。

(イ) 続いて、引用文献4に記載された「引用文献4UVPフィルム」が、引用発明1の「粘着剤層2」における「周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaであ」るとの要件を満たすものであるかどうか検討する。

a 引用文献4UVPフィルムは、主成分となるアクリルポリマーの他に、光硬化前は可塑剤として働く、比較的低分子量の反応性モノマー・オリゴマーが配合され、光硬化前は市販粘着フィルムよりも貯蔵弾性率G’が低く、特に高温域において顕著に低いものであるところ、引用文献4の図4(「硬化前の貯蔵弾性率G’」)には、UVPシリーズの4つのフィルム(UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002)と市販粘着フィルムの硬化前の周波数10Hz、温度25℃付近?80℃付近における貯蔵弾性率G’(Pa)(ずりモードによる動的粘弾性測定)が示されている。
また、引用文献4の図8(「段差充填用樹脂の貯蔵弾性率」)には、UVPシリーズのUVP-1100の硬化前の周波数0.1Hz、温度0℃付近?80℃付近における貯蔵弾性率G’(Pa)が示されている。
しかしながら、引用文献4には、これら引用文献4UVPフィルムの硬化前の、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率は示されていない。

b ここで、アクリル系粘着剤の貯蔵弾性率のある温度(例えば、23℃)での周波数依存性(例えば、0.1Hz?10Hz間)は、その組成によって異なることは技術常識である。
また、一般的に、貯蔵弾性率に関して、同じ温度であれば、周波数が上昇するに従い、貯蔵弾性率が上昇する傾向にあること、同じ周波数であれば温度が上昇するに従い、貯蔵弾性率は低下していく傾向にあることは、技術常識である。

c そして、例えば、引用文献4の図4から、23℃付近の貯蔵弾性率が一番大きいUVP-7000の硬化前の周波数10Hz、23℃の貯蔵弾性率を読み取ることができ(あるいは図4のグラフから推察でき)たとしても、その読み取った値(あるいは推察した値)からは、周波数1Hz、23℃の貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPa(すなわち1.2×10^(5)Pa?1.0×10^(6)Pa)であるということはできない。
すなわち、既に述べたとおり、UVP-7000の組成は不明であり、また、23℃の貯蔵弾性率の周波数依存性も不明なのであるから、周波数1Hz、23℃の貯蔵弾性率は、周波数10Hz、23℃の貯蔵弾性よりも小さくなるということはいえるとしても、どの程度小さくなるのか、例えば、1/2程度となるのか、1/5程度となるのか、1/10程度となるのかは分からない。
他のUVP-9000、UVP-1003、UVP-3002についても同様に、各フィルムの組成も、貯蔵弾性率の周波数依存性も不明なのであるのから、引用文献4の図4の硬化前の23℃、10Hzの貯蔵弾性率からは、23℃、1Hzの貯蔵弾性率が1.2×10^(5)Pa?1.0×10^(6)Paであるということはできない。
UVP-1100についても同様に、その組成、貯蔵弾性率の周波数依存性が不明であり、周波数1Hz、23℃の貯蔵弾性率は、周波数0.1Hz、23℃の貯蔵弾性率よりも大きくなるということはいえるとしても、周波数1Hz、23℃の貯蔵弾性率が1.2×10^(5)Pa?1.0×10^(6)Paであるということはできない。

d してみると、当業者の技術常識を考慮したとしても、引用文献4のUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100は、引用発明1の「周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaであ」るとの要件を満たすものとはいえない。

e 異議申立人は、異議申立人第1意見書の9頁下から9行?最下行において、「引用文献4の図4には、温度23℃における貯蔵弾性率が少しづつ異なるUVP-1003,UVP-3002,UVP-7000,UVP-9000が記載されており、仮にUVP-9000の周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPaを下回るものであったとしても、これより貯蔵弾性率が高いUVP-7000,UVP-3002,UVP-1003は、またはこれらの少なくともいずれかは、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaの範囲内である蓋然性が高いといえます。したがって、引用文献4において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaの範囲内である粘着シートが記載されていることは明らかである。」旨主張している。
また、異議申立人は、令和元年5月16日提出の回答書において、証拠として、甲第11号証(参考例8)?甲第13号証(参考例10)を提出するとともに、5頁下から11行?6頁2行の「(5) アクリル系粘着剤の貯蔵弾性率の周波数依存性についての考察」において、甲第11号証の第107頁の図6(「動的粘弾性測定による貯蔵弾性率G’」)より、市販の工業用両面粘着テープである粘着テープ(サンプルA熱処理無し品)の測定周波数1Hz及び10Hzにおける25℃及び80℃の貯蔵弾性率をある数値範囲に含まれる値として読み取った値、甲第12号証の「4 アクリル系粘着剤の測定結果(1998)「4-3)」の株式会社日本触媒から提供された、架橋度が異なるA,B,Cの3種のアクリル系粘着剤試料の周波数分散データである「MASTER CURVE(Tr=25℃)」[A]?[C]より、架橋度が異なるA,B,Cの測定周波数1Hz及び10Hzにおける25℃の貯蔵弾性率をある数値範囲に含まれる値として読み取った値、甲第13号証のアクリル系共重合体から作られた試料Cの「5)マスターカーブ(換算の基準温度は25℃)」の「MASTER CURVE(Tr=25℃)[C]」より読み取った値(異議申立人は、試料Cは、甲第12号証のCのアクリル系粘着剤Cと同じと結論づけている。)を根拠として、「甲第11?13号証に示されているアクリル系粘着剤・・・略・・・について、測定周波数10Hzにおいては測定周波数1Hzより貯蔵弾性率の値は大きくなるものの、測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間における貯蔵弾性率の違いはせいぜい数倍程度であり、10倍に至ることはないと理解することができます・・・略・・・なお、アクリル系粘着剤について、その貯蔵弾性率、及びその周波数依存性は、組成によって異なるため、甲第11?13号証に示されているアクリル系粘着剤のデータに基づいて、引用文献4の図4に示されているアクリル系粘着剤の貯蔵弾性率の周波数依存性を正確に予測することはできないものの、大体の傾向を把握することはできるものと思量致します。」旨主張している。
しかしながら、甲第11号証の図6からは、甲第11号証において用いられた市販の工業用両面粘着テープについて、測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間における貯蔵弾性率の違いがせいぜい数倍程度であるということ、甲第12号証の「MASTER CURVE(Tr=25℃)」[A]?[C]からは、甲第12号証において用いられた株式会社日本触媒から提供された架橋度が異なるA,B,Cの3種のアクリル系粘着剤試料について、測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間における貯蔵弾性率の違いがせいぜい数倍程度であるということ、甲第13号証の「MASTER CURVE(Tr=25℃)[C]」からは、甲第13号証において用いられたアクリル系共重合体からなる試料Cについて、測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間における貯蔵弾性率の違いがせいぜい数倍程度であるということがいえるとしても、上記bのとおり、アクリル系粘着剤の貯蔵弾性率のある温度での0.1Hz?10Hz間の周波数依存性はその組成によって異なることが技術常識であるから、甲第11号証?甲第13号証からは、全てのアクリル系粘着剤が測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間で同じような変化(せいぜい数倍程度)を示すということはできない。
したがって、引用文献4に記載されたUVPシリーズの品番で特定される各引用文献4UVPフィルムについて、測定周波数1Hzと測定周波数10Hzとの間における貯蔵弾性率の違いがせいぜい数倍程度であるとまではいうことができないし、10倍に至ることはないともいうことができない。
そうしてみると、引用文献4において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaの範囲内である粘着シートが記載されているということはできない。
よって、異議申立人の主張を採用することはできない。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえ、引用発明1において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaである「粘着剤層2」として、引用文献4に記載された、反応性モノマー・オリゴマーが配合された光硬化性の粘接着フィルムである、UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100を採用することが、当業者に容易になし得たことであるかどうかについて検討する。

a 引用文献1の特許請求の範囲、【0001】、【0002】?【0004】、【0006】?【0009】、【0028】?【0033】、図2等の記載によれば、引用発明1は、粘着剤層2により画像表示パネル3(すなわちパネル最表面の偏光板)と隆起部(段差)を有する前面透明板1とを貼り合わせる時に、前面透明板1の隆起部周辺における粘着剤層2の内部応力歪を小さくし、段差を吸収して、隆起部周辺における気泡の噛みこみや剥がれを抑止し得るようにするとともに、貯蔵弾性率G’が過度に小さい場合の切断加工時の粘着剤欠け等の加工性の低下によるハンドリング上の問題を低減することができる、粘着剤及び当該粘着剤層が形成された光学フィルム(偏光板)及び当該粘着剤を介して画像表示パネルと前面透明板とが貼り合わされた画像表示装置を提供することができるように、粘着剤層2の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’を0.12MPa?1MPa、厚みを30μm以上(300μm以下)としたことにあると認められる。
そして、引用文献1の【0036】には、粘着材層2として、粘着剤層2の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaであるとの貯蔵弾性率の条件を満たすものであれば、特に制限なく使用できること、特に、光学透明性、濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱特性等にも優れるアクリル系粘着剤が好ましく用いられることが記載されているところ、【0037】には、アクリル系粘着剤として、ベースポリマーとして、ブロック共重合体またはクラフト共重合体を含有する粘着剤が好ましいこと、【0048】には、粘着剤のベースポリマーは、架橋剤を用いて化学的に架橋されたものであってもよいこと、【0049】には、架橋剤を用いて架橋を行うと、凝集効果によって粘着剤層の貯蔵弾性率が好ましい範囲を超える傾向があるため、粘着剤の形成において、架橋剤の添加量は、貯蔵弾性率が過度に高くならない範囲で調整することが好ましいことが記載されている。
引用文献1の上記記載から、引用文献1に記載された周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaである粘着剤について、粘着剤を介して画像表示パネルと前面透明板とを貼り合わせを行う時のみならず、貼り合わせた後も0.12MPa?1MPaを満たすものであること、また、粘着剤自体の形成に際して架橋剤により架橋されることはあっても、貼り合わせた後に架橋するものではないと理解される。
そうすると、引用文献1には、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’を0.12MPa?1MPaの粘着剤層2として、ベースポリマーと、光硬化性のモノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤を用いることは記載も示唆もされていないと認められる。
してみると、引用発明1において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaである「粘着剤層2」として、引用文献4に記載された、反応性モノマー・オリゴマーが配合された光硬化性粘接着フィルムである、UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100を採用する動機付けが引用文献1の記載には見当たらない。
また、光硬化後の貯蔵弾性率は光硬化前の貯蔵弾性率に比較して非常に大きくなると考えられることから、粘着剤の光硬化前の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaであったとしても、光硬化後には、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が1MPaを超えると考えられることから、引用発明1において、粘着剤層2として、硬化前の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaである光硬化性のモノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤を用いることには、阻害要因が存在するということができる。

b さらに、上記(イ)で述べたとおり、引用文献4に記載されたUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100は、引用発明1の「周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaであ」るとの要件を満たすものとはいえないのであるから、引用発明1における周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaである「粘着剤層2」として、引用文献4に記載されたUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100を採用することが、当業者に容易になし得たということはできない。

c さらに進んで、上記(ア)で述べたとおり、引用文献4に記載されたUVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100のベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であるとの要件を満たすものとはいえないのであるから、仮に、引用発明1において、粘着剤層2として、UVP-7000、UVP-9000、UVP-1003、UVP-3002、あるいはUVP-1100を採用したとしても、「第二粘着剤層を構成する粘着剤」の「ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るとの要件を満たすということはできない。

d 異議申立人が提出した、甲第2号証(引用文献2)、甲第3号証(引用文献3)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7)、甲第9号証(特開2002-348150号公報)、甲第10号証(国際公開第2010/044229号)にも、上記相違点1-1及び相違点1-2に係る、「粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」って、「周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であ」る「粘着剤層」は記載も示唆もされていない。

e してみると、引用発明1において、上記相違点1-1及び相違点1-2に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たものであるということはできない。

f 異議申立人は、異議申立人第2意見書において、「仮に、「引用文献4の「UVP-7000」の硬化前の周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率G’は、1.2×10^(5)Pa未満であり、引用発明1の貯蔵弾性率を満たさない」としても」、「引用発明1と引用文献4は、隆起部(印刷層)と、隆起部を埋めるための粘着剤層を備えた画像表示装置に関する点で技術分野に関連性があり、引用発明1における「23℃における貯蔵弾性率が、0.12MPa?1MPaである粘着剤層」及び引用文献4との「UVP-7000」とは、隆起部を埋める等のの共通の作用・機能を有するものでり、気泡の噛み込みを防ぐ等の共通の課題を有するものであり、引用発明1において、「23℃における貯蔵弾性率が、0.12MPa?1MPaである粘着剤層」に替えて、引用文献4の「UVP-7000」を採用する動機付けは十分にあるものと思量致します。」旨主張している。
しかしながら、上記aで述べたとおり、引用発明1において、粘着剤層2の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’を0.12MPa?1MPaとすることは、引用発明1の課題を解決するために欠くことのできない構成であるから、引用発明1において、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaである粘着剤層2に替えて、当該貯蔵弾性率の条件を満たさないUVP-7000等を採用することには、阻害要因があるというべきである。
よって、異議申立人の主張を採用することはできない。

(エ) 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明(主引用発明)、引用文献4に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2) 本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は、いずれも前記相違点1-1及び相違点1-2に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。
よって、本件特許発明1と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2?6は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 取消理由2についての当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献4の記載
a 引用文献4の記載は、「第5」1(3)のとおりである。

b 上記「第5」1(3)ア?オより、引用文献4には、光硬化型粘接着フィルムの発明として以下のものが記載されていると認められる(以下、引用発明4という。)。
「化粧印刷されたタッチパネル用表面保護板の貼合に段差充填用樹脂として用いられる光硬化型粘接着フィルムであって、
離形フィルムで、主成分となるアクリルポリマーの他に、光硬化前は可塑剤として働く、比較的低分子量の反応性モノマー・オリゴマーが配合された、UVP-9000をサンドイッチした構造であり、
UVP-9000の周波数10Hzにおける硬化前の貯蔵弾性率G’は、下記の図(右端部において一番下のグラフがUVP-9000)のとおりである、
光硬化型粘接着フィルム。



2 対比・判断
(1) 本件特許発明1について
ア 相違点
本件特許発明1と引用発明4とは、次の相違点において相違する。
(相違点4-1)
本件特許発明1においては、「第二粘着剤層を構成する粘着剤」の「ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であり」、「前記第二粘着剤層は、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であ」るのに対して、
引用発明4においては、「UVP-9000」が、そのような構成を備えているのか不明である点。

イ 判断
相違点4-1について検討する。
(ア) 引用発明4の「UVP-9000」の「ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るというとはできないことは、「第5」2(1)イ(ア)において既に述べたとおりである。
また、引用発明4の「UVP-9000」が、「周波数10Hzにおける硬化前の貯蔵弾性率G’を有する「UVP-9000」が、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであるとはいえないことも、「第5」2(1)イ(イ)において既に述べたとおりである。
そうすると、相違点4-1は、実質的な相違点を構成する。

(イ) そして、異議申立人が提出した、甲第1号証(引用文献1)には、相違点4-1に係る構成について記載・示唆されておらず、また、甲第2号証(引用文献2)、甲第3号証(引用文献3)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7)、甲第9号証(特開2002-348150号公報)、甲第10号証(国際公開第2010/044229号)にも、上記相違点4-1に係る構成は記載も示唆もされていない。

(ウ) 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用文献4に記載された発明(主引用発明)、引用文献1に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献1、引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができものということはできない。

(2) 本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は、いずれも上記相違点4-1に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。
よって、本件特許発明1と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2?6は、引用文献4に記載された発明、引用文献1に記載された技術、引用文献2に記載された技術及び(引用文献1、引用文献2、引用文献5、引用文献6、引用文献7に記載された)周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができものということはできない。

(3) 本件特許発明1から6について
上記(1),(2)においては、「UVP-9000」を用いて引用発明4を認定したが、「UVP-9000」に替えて、図4に周波数10Hzにおける硬化前の貯蔵弾性率G’が示された「UVP-7000」、「UVP-3002」、「UVP-1003」、あるいは図8に周波数0.1Hzにおける段差充填用樹脂の弾性貯蔵率が示された「UVP-1100」を用いて引用発明4を認定したとしても同様である。

第7 取消理由通知(決定の予告)で取り上げなかった特許異議申立ての理由について
特許異議申立書において、特許異議申立人は、[理由2]として、本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証(引用文献1、主引用例)、甲第2号証(引用文献2、副引用例)に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるため、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。
また、特許異議申立人は、[理由3]として、本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、甲第3号証(引用文献3、主引用例)及び周知技術(甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証(引用文献2)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7))に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるため、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。
また、特許異議申立人は、[理由1]として、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであると主張している。
そこで、当該[理由2]、[理由3]及び[理由1]について検討する。

1 [理由2]について
(1) 引用文献1の記載、引用発明1については、「第5」1(1)、(2)のとおりである。

(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1との対比、一致点、相違点は、「第5」2(1)アのとおりである。

イ 判断
事案に鑑み、相違点1-1及び相違点1-2を併せて検討する。
(ア) 引用発明1は、「第5」2(1)イ(ウ)で述べたとおり、粘着剤層2により画像表示パネル3(すなわちパネル最表面の偏光板)と隆起部(段差)を有する前面透明板1とを貼り合わせる時に、前面透明板1の隆起部周辺における粘着剤層2の内部応力歪を小さくし、段差を吸収して、隆起部周辺における気泡の噛みこみや剥がれを抑止し得るようにするとともに、貯蔵弾性率G’が過度に小さい場合の切断加工時の粘着剤欠け等の加工性の低下によるハンドリング上の問題を低減することができる、粘着剤及び当該粘着剤層が形成された光学フィルム(偏光板)及び当該粘着剤を介して画像表示パネルと前面透明板とが貼り合わされた画像表示装置を提供できるように、粘着剤層2の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’を0.12MPa?1MPa、厚みを30μm以上(300μm以下)とすることにある。
また、引用文献1の記載からは、引用文献1に記載された周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaである粘着剤について、粘着剤を介して画像表示パネルと前面透明板とを貼り合わせを行う時のみならず、貼り合わせた後も0.12MPa?1MPaを満たすものであること、また、粘着剤自体の形成に際して架橋剤により架橋されることはあっても、貼り合わせた後に架橋するものではないと、当業者は理解する。
そうすると、引用発明1において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaである「粘着剤層2」として、引用文献2に記載された、(C成分)として、硬化前に組成物の流動性を上げ被着体へぬれ性をあげるとともに被着体の凹凸面に追従し液晶ムラの発生を抑え、しかも硬化させることで保持力を向上することができる光硬化性樹脂(液状モノマー/又はオリゴマー)を含有する粘着剤の構成を採用する動機付けは、引用文献1の記載にはない。
また、光硬化後の貯蔵弾性率は光硬化前の貯蔵弾性率に比較して非常に大きくなると考えられることから、仮に、粘着剤の光硬化前の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaであったとしても、光硬化後には、周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が1MPaを超えると考えられることから、引用発明1において、粘着剤層2として、硬化前の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaである光硬化性モノマー・光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤を用いることには、阻害要因が存在するということができる(例えば、光硬化前の周波数1Hz、23℃における貯蔵弾性率G’が0.12MPa?1MPaとの条件を満たすと考えられる引用文献2の実施例4(【0056】、【0061】【表1】)の光硬化性粘着剤は、周波数1Hz、25℃の貯蔵弾性率が1.7×10^(5)Paであり、光硬化性のモノマー・オリゴマーを30質量%程度含有するものであり、光硬化により、1MPaを超えてしまうと考えられる。)。
さらに、引用文献2の実施例4(【0056】、【0061】【表1】)の光硬化性粘着剤は、ベースポリマーとして(A)水素添加DCPD系樹脂(エクソンモービル社製 Escorez5340)(100質量部)および(B)飽和ポリイソブチレン樹脂(BASF社製 オパノール)(40部)を含むものであるところ、これらのいずれも、構成モノマーとして(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むものではない。また、(C)成分のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(大阪有機社製)(60部)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであるものの、これは光硬化モノマーであって、「ベースポリマー」でない。
そうしてみると、仮に、引用発明1において、周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率が0.12MPa?1MPaである「粘着剤層2」として、引用文献2に記載された周波数1Hz、25℃の貯蔵弾性率が1.7×10^(5)Paである実施例4の粘着剤層を採用したとしても、「ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上」との構成が得られるわけではない。
してみると、本件発明1は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
そして、異議申立人が提出した、甲第3号証(引用文献3)、甲第4号証(引用文献4)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7)、甲第9号証(特開2002-348150号公報)、甲第10号証(国際公開第2010/044229号)に記載された内容を検討しても同様である。

ウ よって、本件特許発明1は、甲第1号証、甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。

(3) 本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は、いずれも相違点1-1及び相違点1-2に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。
よって、本件特許発明1と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2?6は、甲第1号証、甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。

2 [理由3]について
(1) 甲第3号証(引用文献3)の記載から把握される発明
引用文献3の請求項1?7、【0001】、【0007】、【0011】、【0012】、【0045】等の記載から、印刷段差や種々の加工処理により表面が平坦でない表面保護層と、液晶パネルを貼り合わせるのに使用できる紫外線架橋性粘着シートの発明として、以下の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明3」という。)。

「印刷段差や種々の加工処理により表面が平坦でない表面保護層と、液晶パネルを貼り合わせるのに使用できる紫外線架橋性粘着シートであって、
紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含み、
紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、5.0×10^(4)Pa以上、1.0×10^(6)Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×10^(4)Pa以下であり、
さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×10^(3)Pa以上であり、
30?50μmの厚みであり、その片面または両面に剥離フィルムを備えた、
紫外線架橋性粘着シート。」

(2) 本件特許発明1について
ア 相違点
本件特許発明1と引用発明3とは、次の相違点において相違する。
(相違点3-1)
本件特許発明1は、「前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であり」、
「前記第二粘着剤層は、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であ」るのに対して、
引用発明3は、「紫外線架橋性粘着シート」は、「光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有」しておらず、また、「ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であ」るのかどうか、「周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であ」るのかどうかが不明である点。

イ 判断
上記相違点3-1について検討する。
(ア) 引用発明3は、【0001】、【0002】?【0005】、【0007】、【0008】、【0011】?【0013】の記載から、粘着シートを用いて、画像表示装置モジュールまたはタッチパネルと、表面に装飾や光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い表面保護層とを貼り合わせる場合に、粘着シートの段差への追従性が不十分であって、段差の上または近傍に空隙が生じるという問題、粘着剤の変形による応力が大きすぎて液晶ディスプレイに色ムラが生じると問題があり、粘着シートの厚さを通常段差の10倍程度とする必要がある一方、画像表示装置の小型化、薄型化のため、あるいはタッチパネルの感度向上のために、粘着シートの厚さはできるだけ薄いことが望ましく、段差または隆起を有する表面に適用可能な、薄い(例えば、30?50μm厚)粘着シートを提供することを、解決しようとする課題としていることが理解され、【0008】の記載から、「紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含んでなる、紫外線架橋性粘着シートであって、紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、約5.0×10^(4)Pa以上、約1.0×10^(6)Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、約5.0×10^(4)Pa以下であり、さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、約1Hzにおいて、1.0×10^(3)Pa以上の構成を採用することによって、前記課題を解決したものと理解される。
また、【0011】、【0012】には、発明の効果として、紫外線架橋前の段階での加熱および/または加圧により、その厚さが段差または隆起の高さと同等程度(例えば、20?30μm)であっても、十分にその段差または隆起に追従することができ、その結果、段差または隆起近傍に空隙などが生じず、段差または隆起近傍での粘着シートの内部残留応力も不要に高くなることがないこと、そして、粘着シートを被着体に貼り合わせた後に紫外線架橋を行うことにより、信頼性の高い接着が実現可能となること、これにより、被着体を含む積層体の厚みを薄く抑えることができると共に、空隙や液晶の色ムラなどの欠陥がない貼り合わせが可能となること、画像表示装置の小型化・薄型化、あるいはタッチパネルの感度向上が達成できることが記載されている。また、高分子量の熱可塑性ベースポリマーと低分子量の架橋性成分との混合物からなる従来の紫外線架橋性ホットメルト粘着剤から形成される粘着シートにおいては、架橋性成分のブリードアウトや微視的または巨視的な相分離が生じることにより、粘着シートの透明性が減少する場合があるところ、架橋性成分、例えば多官能性モノマーまたはオリゴマーを粘着シートにさらに添加する必要がなく、紫外線架橋性粘着シートに含まれる(メタ)アクリル共重合体は、それ自体で紫外線架橋を行うことができ、架橋性成分に起因する透明性の減少といった問題を回避でき、高い透明性を有しているから、優れた光学特性が要求される用途に有用であることも記載されている。
そうすると、引用発明3は、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含み、紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、約5.0×10^(4)Pa以上、約1.0×10^(6)Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、約5.0×10^(4)Pa以下であり、さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、約1Hzにおいて、1.0×10^(3)Pa以上の構成が、課題の解決に欠くことのできない構成と理解できるところ、引用文献3には、「紫外線架橋性粘着シート」に、「紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体」に加えて、光硬化性モノマー、光硬化性オリゴマーを含有させることは記載も示唆もされていない。

(イ) してみると、引用発明3において、「紫外線架橋性粘着シート」を、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有させる構成とすることの動機付けは引用文献3には記載がない。

(ウ) さらに、引用発明3は、印刷段差や種々の加工処理により表面が平坦でない表面保護層と、液晶パネルを貼り合わせるのに使用できるものであるから、液晶表示装置に用いられる粘着シートとして、まさに高い透明性、優れた光学品質が求められるものであるところ、上記の発明の効果の記載(【0012】)によれば、低分子量の架橋性成分を混合させることは、架橋性成分のブリードアウトや微視的または巨視的な相分離が生じ、粘着シートの透明性が減少することとなると記載されている。
そうしてみると、引用発明3において、「紫外線架橋性粘着シート」に、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有させる構成とすることには、阻害要因があるというべきである。
また、引用発明3の「紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの(メタ)アクリル共重合体を含み」、「紫外線架橋前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、5.0×10^(4)Pa以上、1.0×10^(6)Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×10^(4)Pa以下であり」、「さらに、紫外線架橋後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×10^(3)Pa以上であ」ることを前提としたものにおいて、「光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有」させることについては、異議申立人が提出した、甲第3号証(引用文献3)、甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証(引用文献2)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7)、甲第4号証(引用文献4)には記載も示唆もされていない。
してみると、引用発明3において、上記相違点3-1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たということはできない。

(エ) よって、本件特許発明1は、甲第3号証(引用文献3、主引用例)及び周知技術(甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証(引用文献2)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7))に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。

(3) 本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は、いずれも相違点3-1に係る本件特許発明1の構成を具備する発明である。
よって、本件特許発明1と同様な理由により、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2?6は、甲第3号証(引用文献3、主引用例)及び周知技術(甲第1号証(引用文献1)、甲第2号証(引用文献2)、甲第5号証(引用文献5)、甲第6号証(引用文献6)、甲第7号証(引用文献7))に基づいて、当業者が容易に発明をすることできたものであるということはできない。

3 [理由1]について
(1) 特許異議申立人は、本件特許発明1について、「本件明細書の記載に基づくと、本件特許発明は、前面透明板の画像表示パネル側の面の周縁部の印刷段差部の気泡の発生を抑制することを解決課題の一つとしている(本件明細書の段落[0010]等)。」、「本件明細書には、インク印刷部を起点とする気泡の混入を抑制するために必要な第二粘着剤の厚みは、インク印刷部の厚みと相関があることが記載されている。すなわち、本件明細書には、「図3に模式的に示すように、前面透明部材70の画像表示パネル60側の面の周縁部に印刷部70aが設けられている場合は、第二粘着剤層の厚みが小さいと、粘着剤層が印刷段差に追従できず、印刷部70a付近に気泡が混入し易くなる傾向がある。そのため、光学フィルム10と貼り合せられる面に印刷部70aのような非平坦部を有する前面透明部材70が用いられる場合、第二粘着剤層の厚みは、非平坦部(印刷部)70aの厚みdaの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上がさらに好ましい。」と記載されている(記載事項c)。以上の記載及び技術常識から、気泡の発生の課題を解決するための手段として、印刷部の厚みに応じた厚みを有する第二粘着剤層を備えることが必須の手段であると理解される。」、「第二粘着剤層の厚みに関しての構成Hの規定「厚みが30μm以上」は、インク印刷部の厚み10μmである場合の解決手段にすぎず、インク印刷部は「10μm?数十10μm」であり得る中で(記載事項a)、第二粘着剤層の厚みに関して、厚みが30μm以上(構成H)と規定するのみでは、課題を解決するために必須の手段が反映されていないものと思料する。」、「以上より、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されている範囲を超えているものものと思料する。」と主張し、本件特許発明2?6についても、同様に、発明の詳細な説明に記載されている範囲を超えていると主張している。

(2) しかしながら、本件特許明細書の【0009】欄には、特許異議申立人が着目した【0010】欄の「前面透明板の画像表示パネル側の面の周縁部の印刷段差部の気泡の発生を抑制する」との課題と、並行して、「層間充填剤として、液状の光硬化性樹脂を用いる方法では、液状樹脂のはみ出しに伴う汚染が生じる等の問題がある。」、「一方、粘着シートを用いる方法では、貼り合せの前に粘着シートを画像表示装置のサイズと合致するようにカットする必要があることに加えて、所望位置に精度よく貼り合せることが容易でなく、作業性が良好とはいえない。」との課題も記載されている。
そして、本件特許発明1は、「前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって」、「偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え」、「さらに前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着され」との構成を具備するものであるところ、【0109】?【0147】の実施例の記載から、[比較例3](【0130】?【0132】、ガラス板上に所定サイズに打ち抜かれた片面粘着剤付きの偏光板を貼り合わせ、次に、粘着シートを、ガラス板上に貼り合わされた偏光板上に貼り合わせ、次に、印刷されたガラス板の印刷面と粘着剤層との貼り合わせを行った例)及び[比較例4](【0133】、【0134】、ガラス板上に貼り合せられた偏光板上に、UV硬化型液状接着剤溶液を適量塗布し、印刷されたガラス板の印刷面と液状接着剤が接するよう載置し、貼り合せた後、接着剤の硬化を行った例)では、貼り合わせ工程が煩雑となることに加えて、端部からの接着剤(粘着剤)のはみ出しが生じていた(【0135】、【0144】)のに対して、本件特許発明1の上記構成を備えた両面粘着剤付き光学フィルムを用いた実施例により、前面透明部材の貼り合せを簡便な工程で行うことができること、良好な貼り合わせを行うことができることが理解できる。
そうしてみると、本件特許発明1の両面粘着剤付き光学フィルムの構成により、本件特許明細書の【0009】欄に記載された「層間充填剤として、液状の光硬化性樹脂を用いる方法では、液状樹脂のはみ出しに伴う汚染が生じる等の問題がある。」、「一方、粘着シートを用いる方法では、貼り合せの前に粘着シートを画像表示装置のサイズと合致するようにカットする必要があることに加えて、所望位置に精度よく貼り合せることが容易でなく、作業性が良好とはいえない。」との課題が解決できると理解できる。
本件特許発明2?6についても同様である。

(3) よって、本件特許発明1?6は、発明の詳細な記載されたものであるから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面透明板またはタッチパネルと画像表示セルとの間に配置して用いられる粘着剤付き光学フィルムであって、
偏光板を含む光学フィルム;前記光学フィルムの画像表示セルと貼り合せられる側の面に設けられた第一粘着剤層;および前記光学フィルムの透明板またはタッチパネルと貼り合せられる側の面に設けられた第二粘着剤層、を備え、
さらに前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層のそれぞれには、保護シートが剥離可能に貼着されており、
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤が、ベースポリマー、および光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーを含有する光硬化性粘着剤であり、前記ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が40重量%以上であり、
前記第二粘着剤層は、周波数1Hz、温度25℃における貯蔵弾性率G’_(25℃)が1.0×10^(4)Pa?1.0×10^(7)Paであり、周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率G’_(80℃)が1.0×10^(2)Pa?3.0×10^(4)Paであり、G’_(25℃)/G’_(80℃)が5以上であり、厚みが30μm以上である、両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項2】
前記第一粘着剤層の厚みが3?30μmである、請求項1に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項3】
前記第二粘着剤層は、軟化点が50℃?150℃の粘着付与剤を含有する、請求項1または2に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項4】
前記第二粘着剤層を構成する粘着剤は、前記ベースポリマーが、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項5】
前記第二粘着剤層は、活性光線が照射され硬化された場合に、硬化後の周波数1Hz、温度80℃における貯蔵弾性率が1.0×10^(3)Pa?5.0×10^(5)Paである、請求項1?4のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルム。
【請求項6】
画像表示装置を製造する方法であって、
前記画像表示装置は、画像表示セル上に第一粘着剤層を介して偏光板を含む光学フィルムが配置され、前記偏光板上に第二粘着剤層を介して前面透明板またはタッチパネルが配置されており、
請求項1?5のいずれか1項に記載の両面粘着剤付き光学フィルムの第一粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記画像表示セルとが前記第一粘着剤層を介して貼り合せられる第一工程;および
前記第二粘着剤層に貼着された保護シートが剥離された後、前記光学フィルムと前記前面透明板またはタッチパネルとが前記第二粘着剤層を介して貼り合せられる第二貼合工程、
を有し、
前記第二貼合工程後に、前記前面透明板またはタッチパネル側から活性光線が照射され、前記第二粘着剤層が硬化される、画像表示装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-07 
出願番号 特願2012-269433(P2012-269433)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横川 美穂  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
河原 正
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6275945号(P6275945)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 両面粘着剤付き光学フィルム、およびそれを用いた画像表示装置の製造方法  
代理人 新宅 将人  
代理人 吉本 力  
代理人 新宅 将人  
代理人 吉本 力  
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