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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 特174条1項 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 発明同一 A61K 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1358624 |
異議申立番号 | 異議2018-700503 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-20 |
確定日 | 2019-11-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6250277号発明「化粧品組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6250277号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?22〕について訂正することを認める。 特許第6250277号の請求項1?7、10、11及び15?22に係る特許を維持する。 特許第6250277号の請求項8、9及び12?14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
[第1]手続の経緯 特許第6250277号の請求項1?22に係る特許についての出願は、平成24年12月21日に出願され、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。その後の手続は以下のとおりである。 ・平成30年 6月20日 特許異議申立人 山下桂(以下「申立人」 という)による特許異議の申立て ・ 同 年 9月5日付け 取消理由の通知(以下「取消理由通知書1 」ということがある) ・ 同 年12月10日付け 特許権者による意見書の提出及び訂正の 請求 ・平成31年 1月17日付け 申立人による意見書の提出 ・ 同 年 3月 6日付け 取消理由の通知(決定の予告。以下「取消 理由通知書2」ということがある) ・ 同 年 4月26日付け 特許権者による上申書の提出(意見書の 提出期間の延長を希望) ・令和 1年 5月 9日付け 通知書の送付(上申書に基づき、職権に より、意見書の提出期限を取消理由通知書 2の発送の日から120日とすることと した旨の通知) ・ 同 年 7月11日付け 特許権者による意見書の提出及び訂正の 請求 ・ 同 年 8月13日付け 申立人による意見書の提出 なお、平成30年12月10日付けの訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 [第2]訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正の請求による、請求項1?22からなる一群の請求項に係る訂正事項は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含み、 前記(c)ヒドロトロープが、オキソチアゾリジンカルボン酸、ビタミンB3及びその誘導体、キサンチン塩基、樟脳ベンザルコニウムメト硫酸塩、エラグ酸、ヒドロキシフェノキシプロピオン酸、ジエチルルチジン酸塩、テレフタリリデン二樟脳スルホン酸、フェルラ酸、サリチル酸、フロレチン、アセチルトリフルオロメチルフェニルバリルグリシン、レスベラトロール、アピゲニン、プラステロン、ベンゾフェノン-3、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、カプリロイルサリチル酸、サリチル酸エチルヘキシル、及び、ジャスモン酸誘導体からなる群から選択される、化粧品組成物。」 とあるのを 「 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含み、 前記(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有し、 前記(c)ヒドロトロープが、ビタミンB3、カフェイン、及び、テトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される、化粧品組成物。 」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7に 「 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、3から6個のグリセロール単位を含むモノラウリン酸ポリグリセリル、3から6個のグリセロール単位を含むモノ(イソ)ステアリン酸ポリグリセリル、3から6個のグリセロール単位を含むモノオレイン酸ポリグリセリル、及び3から6個のグリセロール単位を含むジオレイン酸ポリグリセリルから選ばれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。」 とあるのを 「 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、5個のグリセロール単位を含むモノラウリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノ(イソ)ステアリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノオレイン酸ポリグリセリル、及び5個のグリセロール単位を含むジオレイン酸ポリグリセリルから選ばれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8、9、12、13及び14を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10、11及び15?22中の請求項の引用を、次の1)?10)のとおりに訂正する。 ・1) 請求項10の「請求項1から9のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・2) 請求項11の「請求項1から10のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7及び10のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・3) 請求項15の「請求項1から14のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10及び11のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・4) 請求項16の「請求項1から15のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・5) 請求項17の「請求項1から16のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11、15及び16のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・6) 請求項18の「請求項1から17のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15から17のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・7) 請求項19の「請求項1から18のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15から18のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・8) 請求項20の「請求項1から19のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15から19のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・9) 請求項21の「請求項1から20のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の」に訂正する。 ・10) 請求項22の「請求項1から20のいずれか一項に記載の」を「請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について (i) 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、 ・成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」を、本件特許明細書の例えば【0063】中の「(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが・・・より好ましくは5又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有していることが好ましい。」との記載や、実施例におけるラウリン酸PG5(実施例1?4,6?8)又はオレイン酸PG5(実施例5)の使用に係る記載に基づき、「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」するものに限定する; と共に、 ・成分(c)の「ヒドロトロープ」の選択肢として挙げられていた「オキソチアゾリジンカルボン酸、ビタミンB3及びその誘導体、キサンチン塩基、樟脳ベンザルコニウムメト硫酸塩、エラグ酸、ヒドロキシフェノキシプロピオン酸、ジエチルルチジン酸塩、テレフタリリデン二樟脳スルホン酸、フェルラ酸、サリチル酸、フロレチン、アセチルトリフルオロメチルフェニルバリルグリシン、レスベラトロール、アピゲニン、プラステロン、ベンゾフェノン-3、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、カプリロイルサリチル酸、サリチル酸エチルヘキシル、及び、ジャスモン酸誘導体」を、実施例1?8で採用されている次の1)?3): ・1)「ビタミンB3及びその誘導体」の下位概念の化合物であって、本件特許明細書の【0075】【表1】や【0085】?【0087】で例示され、実施例1?5で採用されている「ビタミンB3」; ・2)「キサンチン塩基」の下位概念の化合物であって、本件特許明細書の【0092】で例示され、実施例6で採用されている「カフェイン」; ・3)「ジャスモン酸誘導体」の下位概念の化合物であって、本件特許明細書の【0102】の化学式で表され、実施例7、8で採用されている「メキゾリルSBO」即ち「テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム」(なお、「メキゾリルSBO」が【0102】の化学式で表される「テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム」と同一化合物であることは、例えば DATABASE REGISTRY ON STN、REGISTRY NO.1175006-92-4(ENTERED STN:24Aug2009) にみられるように、本件特許出願時当業者にとり既知であったと認められる); のいずれかに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、かかる訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ii) なお、申立人は、令和1年8月13日付けの意見書中で、訂正事項1における成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」について「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有し、」との記載を追加する訂正は、本件特許の「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるとはいえない」と主張するが、当該「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」することの訂正の根拠となる、例えば(i)で引用した本件特許明細書における【0063】中の「(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが・・・より好ましくは5又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有していることが好ましい。」との記載や、実施例のラウリン酸PG5(実施例1?4,6?8)又はオレイン酸PG5(実施例5)の使用に係る記載は、いずれも本件特許の明細書に記載された事項であるから、上の申立人の主張は失当であり、採用できない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項7において、成分(b)のポリグリセリル脂肪酸エステルの選択肢のそれぞれが「3から6個のグリセロール単位を含む」ものであったのを、本件特許明細書の例えば【0063】中の「(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが・・・より好ましくは5又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分有していることが好ましい。」との記載や、実施例におけるラウリン酸PG5(実施例1?4,6?8)又はオレイン酸PG5(実施例5)の使用に係る記載に基づき、「5個のグリセロール単位を含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、かかる訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項8、9、12、13及び14を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、かかる訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項3の請求項8、9、12、13及び14の削除に伴い、訂正前の請求項10、11及び15?22において、上記削除された請求項8、9、12、13及び14のいずれかを引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである; か、若しくは、それら削除された請求項との引用関係を解消するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 そして、これらの訂正は新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.小活 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。 [第3]訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?7、10、11及び15?22に係る発明(以下、順に「訂正発明1」?「訂正発明7」、「訂正発明10」、「訂正発明11」及び「訂正発明15」?「訂正発明22」ということがあり、また、これらをまとめて単に「訂正発明」ということがある)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7、10、11及び15?22に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 『 【請求項1】 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含み、 前記(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有し、 前記(c)ヒドロトロープが、ビタミンB3、カフェイン、及び、テトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される、化粧品組成物。 【請求項2】 (a)油が、植物起源油又は動物起源油、合成油、シリコーンオイル及び炭化水素油からなる群から選択される、請求項1に記載の化粧品組成物。 【請求項3】 (a)油が、室温で液体の形態の炭化水素油から選ばれる、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。 【請求項4】 (a)油が、分子量が600g/mol未満である油から選ばれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項5】 (a)油の量が、組成物の総質量に対して0.1から50質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項6】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、8.0から14.0のHLB値を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項7】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、5個のグリセロール単位を含むモノラウリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノ(イソ)ステアリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノオレイン酸ポリグリセリル、及び5個のグリセロール単位を含むジオレイン酸ポリグリセリルから選ばれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量が、組成物の総質量に対して0.1から25質量%の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項11】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの、 (a)油に対する質量比が、0.3から6である、請求項1から7及び10のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項12】(削除) 【請求項13】(削除) 【請求項14】(削除) 【請求項15】 (c)ヒドロトロープの量が、組成物の総質量に対して0.01から20質量%の範囲である、請求項1から7、10及び11のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項16】 前記(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び/又は、少なくとも1種のイオン性界面活性剤を更に含む、請求項1から7、10、11及び15のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項17】 少なくとも1種のポリオールを更に含む、請求項1から7、10、11、15及び16のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項18】 少なくとも1種の増粘剤を更に含む、請求項1から7、10、11及び15から17のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項19】 O/W型エマルションの形態であり、(a)油が、数平均粒度が300nm以下である液滴の形態である、請求項1から7、10、11及び15から18のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項20】 透明度が、50%超である、請求項1から7、10、11及び15から19のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項21】 皮膚を、毛髪を、粘膜を、爪を、まつ毛を、眉毛を、及び/又は、頭皮を手入れするための非治療的方法であって、請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の化粧品組成物が、皮膚に、毛髪に、粘膜に、爪に、まつ毛に、眉毛に、又は、頭皮に適用されることを特徴とする、非治療的方法。 【請求項22】 請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の化粧品組成物の使用であって、体用の、及び/又は、顔面皮膚用の、及び/又は、粘膜用の、及び/又は、頭皮用の、及び/又は、毛髪用の、及び/又は、爪用の、及び/又は、まつ毛用の、及び/又は、眉毛用の、ケア製品としての若しくはケア製品中での、及び/又は、洗浄製品としての若しくは洗浄製品中での、及び/又は、メイクアップ製品としての若しくはメイクアップ製品中での、及び/又は、メイクアップ除去製品としての若しくはメイクアップ除去製品中での、使用。 』 ※合議体注: ・以下、訂正発明1の成分(b)における「ポリグリセリル脂肪酸エステルが5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分」を「PG5」と略記し、同成分(b)を「PG脂肪酸エステル」又は「脂肪酸エステルPG5」のようにいうことがある。 [第4]特許異議申立書の異議申立理由について 申立人は、以下の甲第1?9号証を提出し、特許異議申立書において、訂正前の請求項1?22に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」?「本件特許発明22」ということがあり、また、これらをまとめて単に「本件特許発明」ということがある)に係る特許は、概要次の理由1.?6.の「申立理由1」?「申立理由7」により取り消されるべきものであることを主張している。 1.申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性又は進歩性) (1)1) 本件特許発明1?5、10、12、15?19、21及び22は、いずれも、甲第1号証に記載された発明と同一であって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2) 又は、本件特許発明1?5、10、12、15?19、21及び22は、いずれも、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2) 本件特許発明6?9、11、13、14及び20は、いずれも、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3、4、6、7号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2.申立理由2(甲第5号証を主引例とする新規性又は進歩性) (1)1) 本件特許発明1?3、5、10、12、15?18、21及び22は、いずれも、甲第5号証に記載された発明と同一であって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2) 又は、本件特許発明1?3、5、10、12、15?18、21及び22は、いずれも、甲第5号証に記載された発明、甲第5号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2) 本件特許発明4、6?9、11、13、14、19及び20は、いずれも、甲第5号証に記載された発明、並びに甲第1、3、4、6?8号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3.申立理由3(拡大先願) 本件特許発明1、2、4、5、10?12、15?18、21及び22は、いずれも、本件特許の出願日前の特許出願であって本件特許の出願後に出願公開された甲第2号証の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願時において本件特許の発明者が甲第2号証に係る出願の発明者と同一ではなく、また本件特許の出願時において本件特許の出願人が甲第2号証に係る出願の出願人と同一でもないから、これらの発明に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4.申立理由4(明確性) 請求項1には、(a)成分として少なくとも1種の油と、(b)成分として少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含むことが記載されているが、本件特許明細書には成分(a)の具体例として「エステル油」が記載されている(【0035】、【0038】等)一方、成分(b)はエステルであるから、これら「少なくとも1種の油」と「少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル」とは重複する成分を含んでおり、これらの定義及び範囲が不明である。そうすると、ポリグリセリル脂肪酸エステルが成分(a)、(b)のいずれに該当するのかが明確ではない。 したがって、本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1?22についての特許はいずれも、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 5.申立理由5(サポート要件)、申立理由6(実施可能要件) 請求項1は、成分(a)?(c)としてそれぞれ広範な化合物を包含しており、また、成分(a)?(d)の各含有量は規定しておらず、さらに、任意成分の種類及び量の規定もないから、広い範囲の化粧料組成物を規定するものである。 一方、本件特許明細書には、ナノエマルション又はマイクロエマルション等の微細なエマルションを形成することが難しかった、ある種の非イオン性界面活性剤が使用される場合であっても、透明又はわずかに半透明な、好ましくは透明な外観を伴う、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物を提供する(【0006】?【0007】、【0028】)という発明の課題(目的)は、上記(a)?(d)を含むナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物により解決(達成)され得ることが記載されている(【0008】)から、本件特許明細書では、請求項1の全ての範囲において上記課題を解決できることが実験データを以て裏付けられていなければならない。 しかしながら、本件特許明細書において、外観の透明性、粒径、透明度に関する実験データが具体的に示されているのは、実施例1?8の、ごく限られた組合せの組成物のみである。そして、本件特許明細書をみても、上記実施例以外の化粧料組成物においてまで、上述の透明又はわずかに半透明でナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物が得られるかどうかは不明であり、また、本件特許明細書全体の記載及び本件特許出願時の技術常識に照らして、請求項1の組成物の範囲全体においてまで、上述の課題を解決し得るものとして発明を拡張乃至一般化できるものとはいえない。 よって、本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1?22についての特許は、いずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。また、本件特許明細書の記載には不備があり、本件特許発明1?22についての特許は、いずれも、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 6.申立理由7(新規事項) 本件特許出願について平成29年5月1日付けで提出された手続補正書により、請求項1中の 「(b)好ましくは4から6個のグリセリン、より好ましくは5から6個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有する少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル」 なる記載が 「(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル」 と補正されているところ、この補正は、成分(b)のポリグリセリン部分のグリセリン数に係る「好ましくは4から6個のグリセリン、より好ましくは5から6個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有する」の規定を削除するものであって、この補正により成分(b)はあらゆるグリセリン数のポリグリセリン部分を有するものとなった。 一方、本件特許の出願時の明細書等(※合議体注:外国語書面の翻訳文のことと理解される)には 「【0062】[ポリグリセリル脂肪酸エステル] 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む。・・・」 との記載はあるものの、グリセロール部分については 「【0063】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、2から10個のグリセロールに由来する、・・・、更により好ましくは5又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有していることが好ましい。」 等の記載があるにとどまり、これらの記載を含む本件特許明細書全体をみても、あらゆるグリセリン数のポリグリセリル部分を有してよいことは理解できず、そのことが自明であるともいえない。 そうすると、上述の請求項1の補正は、外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許発明1?22についての特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであって、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。 [証拠方法] ・甲第1号証:国際公開第2004/069222号(及び翻訳文として特表2006-515001号公報) ・甲第2号証:特願2012-25815号の公開公報である特開2013-159605号公報 ・甲第3号証:特開2001-25654号公報 ・甲第4号証:国際公開第2006/020164号(及び翻訳文として特表2008-507523号公報) ・甲第5号証:国際公開第2009/081587号 ・甲第6号証:特開平11-262653号公報 ・甲第7号証:国際公開第00/61083号(及び翻訳文として特表2002-541173号公報) ・甲第8号証:特開2005-206467号公報 ・甲第9号証:特開2012-214701号公報 ※合議体注: ・以下、申立人による上記「甲第1号証」?「甲第9号証」を順に「甲1」?「甲9」ということがある。 [第5]取消理由通知書に記載した取消理由について 1.訂正前の請求項1?22に係る特許に対し通知された、取消理由通知書1に記載された取消理由は、概要次の(1)?(4)(以下、順に「取消理由1」?「取消理由4」ということがある)のとおりである。 (1)取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1?5、8?12、15?18、21、22に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1?12、15?22に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)取消理由3(拡大先願) この出願の請求項1、2、4、5、10?12、16?18、21、22に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第2号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (4)取消理由4(サポート要件) 本件特許発明が解決しようとする課題は、透明な又はわずかに半透明な外観を伴う、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物を提供することであると認められる。そして、本件特許明細書の実施例からは、ヒドロトロープとして「ビタミンB3」、「カフェイン」又は「メキゾリルSBO」の3種の化合物のいずれかを添加した場合に、透明又は半透明なエマルションを得られることが理解できる。 しかしながら、請求項1には、(c)成分のヒドロトロープについて、「-0.7?6の間」という広範囲のlog P値が特定されるとともに、その具体的なものとして多種多様な化学構造の化合物(オキソチアゾリジンカルボン酸、ビタミンB3及びその誘導体、キサンチン塩基、・・・及び、ジャスモン酸誘導体)が列記されている。ここで、「ヒドロトロープ」に関しては、本件特許明細書【0072】?【0103】に記載があるものの、そのlog Pの数値範囲について「-0.7から6、好ましくは-0.5から3であることが好ましい。」と記載されているのみであり(【0078】)、当該log Pの数値とエマルションの透明度との相関関係等の具体的な説明がされておらず、何故この数値範囲が好ましいのか不明であるから、「log Pが-0.7?6」との数値を満たせば上記課題を解決しうるものとは認められない。加えて、互いに化学構造の異なる「ビタミンB3」、「カフェイン」及び「メキゾリルSBO」がどのようにエマルションに透明性をもたらすかといった説明もないことから、「ビタミンB3」、「カフェイン」又は「メキゾリルSBO」を用いた実施例の結果をもって、これらとは構造がさらに異なる請求項1記載の種々の化合物をヒドロトロープとして採用した場合にも、同様に上記課題を解決しうるものとは認められない。 よって、請求項1?11、15?22には、本件特許に係る発明の課題を解決できると当業者が理解できる範囲のものが記載されているとは認められないから、本件特許は、請求項1?11、15?22の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 2.また、取消理由通知書2において、取消理由通知書1で記載した取消理由のうち解消していない取消理由として通知された取消理由は、上の取消理由1?4のうち取消理由1?3である。 [第6]合議体の判断 [6-1]甲1?甲9の記載事項 原文が英語のものは、申立人が提出した対応日本語公報を踏まえつつ合議体で作成した日本語文で示す。また、[]は摘示箇所の対応日本語公報における相当記載箇所を示す。 下線は合議体による。 (1)甲1 ・甲1-1)請求の範囲 「 1.(a)第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分、及び第1の水性キャリア(aqueous carrier)を含む第1のエマルションであって、前記第1の界面活性剤系は、C12?18のアルキル置換基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油類、及び直鎖若しくは分枝状モノ-又はトリアルキルグリセリド類から成る群から選択される2以上の非イオン性界面活性剤を含み、前記第1の油性構成成分は、皮膚軟化剤類、シリコーンオイル類、及びこれらの混合物から成る群から選択され、前記第1の界面活性剤系と前記第1の油性構成成分との重量比は約5:1?約1:1である第1のエマルション; (b)第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分、及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションであって、前記第2の界面活性剤系は、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油類、C10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステル類、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンステロール類、ポリオキシエチレン硬化ステロール類、ヒドロキシル化レシチン(hydroxylated lecithin)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート類及びこれらの塩類、並びにグリセレス-25PCAイソステアレート(glycereth-25 PCA isostearate)から成る群から選択される1以上の非イオン性界面活性剤を含み、前記第2の油性構成成分は、香料類、テルペン化合物類を含有する疎水性植物抽出物類、疎水性ビタミン類、及びこれらの混合物から成る群から選択され、前記第2の界面活性剤系と前記第2の油性構成成分との重量比は約20:1?約3:1である第2のエマルション;並びに (c)第3の水性キャリア を含むことを特徴とするスキンケア組成物。 2. 構成成分(a)?(c)から本質的に成る基礎組成物(base composition)は、波長340nmで約2以下の吸光度を有することを特徴とする、請求項1に記載のスキンケア組成物。 ・・・ 4. 前記マイクロエマルションは約100nm未満の平均粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載のスキンケア組成物。 ・・・」 ・甲1-2)(1頁4?8行)[【0001】] 「 本発明は、第1のエマルション及び第2のエマルションを含むスキンケア組成物に関する。特に、本発明は、透明性、並びに保湿性、滑らかさ、及び柔らかさといった皮膚コンディショニング効果を低下させずに、審美的効果及び/又は追加のコンディショニング効果を提供する、透明又は半透明のスキンケア組成物に関する。」 ・甲1-3)(3頁20?23行)[【0010】] 「 特に指定しない限り、百分率、割合、及び比率はすべて、本発明の組成物の総重量を基準とする。列挙した成分に関する場合のこのような重量はすべて活性レベルに基づいており、そのため、市販材料に含まれ得るキャリア又は副生成物を含まない。」 ・甲1-4)4頁4行?5頁12行[【0018】?【0023】] 「(第1のエマルション) ・・・ 好ましくは、第1のエマルションは約100nm未満、より好ましくは約80nm未満の平均粒径を有する。液滴の大きさはホリバ(Horiba)(日本)によるレーザー散乱粒径分布分析器LA-910(Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer LA-910)を使用して決定できる。液滴の大きさは温度25℃+/-1℃においてエマルションを30秒間混合した後、測定される。第1のエマルションはマイクロエマルションの形態を有する。本明細書では、「マイクロエマルション」とは、連続相として水性キャリアを含有するエマルションを意味し、この場合、そうでなければ不透明な外観を呈する非水溶性の構成成分が小さな液滴として分散するので、それらは透明なエマルションに見える。特定の油性構成成分がより大きい液滴直系で分散している場合でも透明に見える場合があることを、当業者は理解している。本発明においては、より大きい液滴直系では透明に見えない油性構成成分の液滴直系は、基礎組成物に透明性を与えるために重要である。理論に束縛されないが、界面活性剤系の種類及び量を選択することにより、油性構成成分を分散させるのに好適なマイクロエマルションが得られると考えられる。第1の界面活性剤系と第1の油性構成成分との重量比は、約5:1?約1:1である。 (第1の界面活性剤系) 第1の界面活性剤系は、C12?18のアルキル置換基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油類、及び直鎖若しくは分枝状モノ-又はトリアキルグリセリド類から成る群から選択される2種以上の非イオン性界面活性剤を含む。 ・・・ 本明細書で有用なポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の例にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、好ましくは、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油が挙げられる。 本明細書で有用なモノ-又はトリアルキルグリセリドの例としては、グリセリルモノステアレート、グリセリルオレエート、及びトリグリセリルジイソステアレートが挙げられ、好ましくは、トリグリセリルジイソステアレートが挙げられる。 ・甲1-5)9頁7?28行[【0039】?【0042】] 「(第2のエマルション) 本発明の組成物は、第2のエマルションを含む。第2のエマルションは、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分、及び第2の水性キャリアを含む。好ましくは、第2のエマルションはポリオール・キャリア(polyol carrier)を更に含有する。第2のエマルションの粒径は、好ましくは約50nm以下、より好ましくは約30nm以下の範囲であることができる。第2の界面活性剤系と第2の油性構成成分との重量比は約20:1?約3:1であり、好ましくは約15:1?5:1である。 (第2の界面活性剤系) 第2の界面活性剤系は、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油類、C10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステル類、ポリソルベート類、・・・、並びにグリセレス-25PCAイソステアレートから成る群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、第2の界面活性剤系は上記の種から選択される2種以上の非イオン性界面活性剤を含む。 ・・・ 本明細書で有用なC10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステル類としては、例えば、ポリグリセリル-6ラウレート、ポリグリセリル-10ラウレート、及びポリグリセリル-10ステアレートのような、6?10モルのグリセリン単位を有するものが挙げられる。」 ・甲1-6)10頁9?15行[【0046】第2段落] 「第2の界面活性剤系の親水性-親油性バランス(HLB)は、当業者により、第2の油性構成成分の量及び種類を考慮して選択される。好ましくは、第2の界面活性剤系の全体としてのHLBは、約8よりも高く、より好ましくは約10よりも高い。好ましくは、第2の界面活性剤系は8以上の、より好ましくは10以上のHLBを有する非イオン性界面活性剤類から本質的に成る。理論に束縛されないが、高HLBの界面活性剤のみを用いることによって、第2のエマルションは、その透明性を低下させることなしに、本組成物に含有されることができる。」 ・甲1-7)21頁27行?24頁表[【0093】?【0096】] 「実施例 ・・・ 組成物 ![]() ![]() ![]() 」 ・甲1-8)(24頁下から2行?26頁6行)[【0097】?【0098】] 「構成成分の定義 ・・・ *3 香料:リモネン(limonene)含有 ・・・ 調製方法 (a1)フェーズ01を約80℃に加熱する。フェーズ02を約78℃に加熱する。フェーズ01をフェーズ02に加えて混合することにより乳化させる。 (a2)(a1)の混合物を約10?約20分間以内に約50℃まで冷却する。 (a3)フェーズ03が室温である状態で、(a2)の混合物をフェーズ03に加える。 (b1)約25℃においてフェーズ04をフェーズ05に加えることにより乳化させる。 (c)工程(a3)の混合物と工程(b1)の生成物とを混合する。 (d1)含まれる場合、フェーズ06を約80℃に加熱して、フェーズ06を高速攪拌器を用いて523rad/s(5000rpm)以下で均質になるまで混合する。 (d2)フェーズ06を約80℃のフェーズ07に加え、この混合物を約45℃に冷却する。 (d3)フェーズ09を(d2)の混合物に加える。 (d4)フェーズ08を(d4)の混合物に加える。 (d5)フェーズ10を約80℃に加熱し、フェーズ10を高速攪拌器を用いて523rad/s(5000rpm)以下で均質になるまで混合する。フェーズ10を(d4)の混合物に加える。 (d6)フェーズ11を高速攪拌器を用いて523rad/s(5000rpm)以下で均質になるまで混合する。フェーズ11を(d5)の混合物に加える。 最後に、工程(c)の混合物と工程(d6)の混合物とを混合する。」 ・甲1-9)26頁7?11行[【0099】] 「 前述の実施例によって開示され示された実施形態は、多くの利点を有する。例えば、実施例1?8は顔の皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である。顔の皮膚に使用する場合、実施例1?8の組成物は皮膚にべとついた及び/又は油っぽい感触を残すことなしに、皮膚に保湿効果、滑らかさ及び柔らかさを与えることができる。」 ・甲1-10)26頁12行?最終行[【0100】] 「 実施例1?8において、フェーズ01、02、03、04、及び05を含む基礎組成物は透明な外観を有し、波長340nmにおける吸光度が約2以下である。実施例1?8の組成物は、半透明の外観を有する。実施例1?5、7、及び8の組成物は、香料及び/又はメンソールのおかげで審美的効果を提供できる。実施例6の組成物は、茶木油のおかげで追加のコンディショニング効果を提供できる。」 (2)甲2 甲第2号証に係る特許出願(以下、「先願」又は「甲2出願」ということがある)は、本件特許の出願日前の平成24年2月9日に出願され、本件特許の出願後の平成25年8月19日に出願公開されたものである。 そして、本件特許出願の出願人はロレアルであり、発明者はアンロール・ベルナールである一方、甲2出願の出願人は株式会社資生堂であり、発明者は鈴木一伸外3名であって、本件特許出願と甲2出願の出願人及び発明者を照合すると明らかなように、両出願の出願人及び発明者は同一ではない。 甲2出願の願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、これらをまとめて「当初明細書等」ということがある)には、次の記載が認められる。 ・甲2-1)特許請求の範囲 「【請求項1】 (A)1.5?3.0質量%のトラネキサム酸又はその誘導体から選択される少なくとも1種と、 (B)0.005?0.5質量%の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性モノマーの共重合体と、 (C)0.01?0.5質量%の親水性界面活性剤と、 (D)グリセリンを含有し、 増粘効果を有する成分の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする液状皮膚外用剤組成物。 【請求項2】 (C)親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロールから選択される1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の液状皮膚外用剤組成物。 【請求項3】 (E)0.01?3.0質量%の液状油分を更に含有し、その平均乳化粒子径が400nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の液状皮膚外用剤組成物。」 ・甲2-2)【0026】 「【0026】 増粘効果を有する成分としては、従来から液状化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、マンナン、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール、高重合度ポリエチレングリコール等の水溶性増粘成分がある。」 ・甲2-3)【0021】?【0022】 「【0021】 さらに本発明の組成物は、肌へのなじみを付与するため、親水性界面活性剤(成分C)を含有している。また、液状油分(成分E)を配合する際には可溶化剤または乳化剤としても作用する。 【0022】 親水性界面活性剤としては、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸石鹸、N-アシルグルタミン酸塩、アシルタウリン塩、アシルアルキルタウリン塩、高級アルキル硫酸エステル 塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルサルコシン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンメチルエーテルジメチコン等がある。このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテルが特に好ましい。」 ・甲2-4)【0027】?【0029】 「【0027】 また本発明の組成物は、常温で液状の油分(成分E)をさらに含有するのが好ましく、これを配合することにより、組成物を塗布した後の皮膚の柔らかさを向上させることができる。 ・・・ 【0029】 なお、液状油分を含有する場合には、親水性活性剤により可溶化または乳化し、油滴の平均乳化粒子径を400nm以下にすることにより、安定性に優れる。」 ・甲2-5)【0031】 「【0031】 本発明の組成物は、特に限定されないが、例えば、化粧水(透明、半透明、白濁を含む)、エッセンス(美容液)、シート状マスクの含浸液、二層タイプ美容液等の液状化粧料として使用するのに適している。更に、トラネキサム酸類を含有しているため、肌荒れ改善又は美白を目的とした化粧料として特に有効である。」 ・甲2-6)【0043】 「【0043】 (処方例2) 白濁化粧水: 配合成分 処方量(質量%) ・・・ トリエチルヘキサン酸グリセリル 0.2 ・・・ 」 ・甲2-7)【0047】?【0048】 「【0047】 (処方例4) エッセンス: 配合成分 処方量(質量%) トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 2.5 4-メトキシサリチル酸カリウム 0.5 ニコチン酸アミド 4.0 酢酸トコフェロール 0.05 グリセリン 1.0 PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル 5.0 ポリエチレングリコール1500 1.0 エリスリトール 1.0 トリメチルグリシン 2.5 エタノール 3.0 アルギン酸ナトリウム 0.02 ポリオキシエチレン(30)フィトステロール 0.2 ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.1 トリへチルヘキサン酸グリセリル 0.1 ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.1 クエン酸 適量 クエン酸ナトリウム 適量 メタリン酸ナトリウム 適量 サリチル酸 適量 香料 適量 染料 適量 イオン交換水 残余 【0048】 製造方法: 常法に従ってイオン交換水に水溶性成分を順次溶解し、水相を調製した。水不溶性成分は界面活性剤と加熱混合後に水相に徐々に添加し、エッセンスを得た。」 (3)甲3 ・甲3-1)請求項1 「【請求項1】 ショ糖脂肪酸ジエステルを含有する、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてマイクロエマルションを製造するための界面活性助剤。」 ・甲3-2)【0005】 「【0005】・・・本発明者は、・・・、非イオン界面活性剤のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いてマイクロエマルションを製造する場合に、ショ糖脂肪酸ジエステルを界面活性助剤として用いた場合、系のHLBを大きく変えることなく、また、ショ糖基の強い親水性のために油性成分への単分散濃度が非常に低いので効率よく可溶化容量を増加させることができるということを見出し本発明に達した。・・・」 ・甲3-3)【0011】 「【0011】本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステル・・・。ポリグリセリンとの平均重合度は一般には2?16であって、好ましくは4?12である。構成脂肪酸としては、一般には炭素数8?24の飽和または不飽和脂肪酸から選ばれるが、好ましくは10?20、より好ましくは12?18である。これらの脂肪酸としては、ラウリン酸、 ミリスチン酸、 パルミチン酸、ステアリン酸、・・・等が挙げられ・・・。これらの脂肪酸は目的に応じて2種類以上の組み合わせで用いることも出来る。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の他の非イオン界面活性剤と比較し安全性に優れ、化粧品、飲食品への使用に適している。」 ・甲3-4)【0018】?【0020】 「【0018】〔製造例2〕ポリグリセリンラウリン酸エステルの製造例 市販のヘキサグリセリン(ポリグリセリン#500;阪本薬品社製、平均重合度5.9)から改良型擬似移動床クロマト分離装置を用いることにより、重合度が7以上の成分を除去したポリグリセリンを調製した。このポリグリセリンの水酸基価より計算した平均重合度は4.5であった。・・・、このポリグリセリン・・反応させ、ポリグリセリンラウリン酸エステルを得た。・・・ 【0019】[実勢例1?3]製造例2で得られたポリグリセリンラウリン酸エステル、製造例1で得られたショ糖ステアリン酸ジエステル、ヘプタン、および蒸留した脱塩水を各配合比で混合し、加熱攪拌を行って均質化し、恒温槽に保持した。・・・、各温度での相分離の有無を確認し、最も少ない界面活性剤混合物量で1相のマイクロエマルションを生じるときの温度(HLB温度)を確認した。また、そのときの液組成から、マイクロエマルションを形成するのに必要な最低限の界面活性剤混合物濃度(ポリグリセリンラウリン酸エステル+ショ糖脂肪酸エステルの濃度)を計算した。・・・。その結果を表1に示す。 【0020】[実施例2]ショ糖ステアリン酸ジエステルの代わりに市販ショ糖ステアリン酸エステルS-570(三菱化学( 株) 製)を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。・・・。結果を表1に示す。」 (4)甲4 ・甲4-1)請求の範囲1 「1.(1)約0.001%?約10%のフラボノイド化合物、 (2)0.01%?約15%のビタミンB3化合物、及び (3)組成物全体の少なくとも約2重量%の油成分を含む皮膚科学的に許容可能な水中油型キャリア、を含むスキンケア組成物であって、 前記組成物は二酸化チタンを実質的に含まないスキンケア組成物。 ・・・ 」 ・甲4-2)1頁下から4行?2頁5行[【0005】?【0006】] 「 最近は、二酸化チタンのような、皮膚を美白し又は皮膚の色調を改善するための即時的な有益剤を利用するスキンケア組成物が、だんだん普及してきている。これらの即時的な有益剤は消費者に一時的な満足を与える場合があるが、一部の消費者はそれらによって炎症及び他のマイナスの皮膚状態が引き起こされることがある。 ・・・広範囲の処方にわたり安全且つ有効なスキンケア処置効果を提供し、及び広範囲の人々にわたり炎症を減少させる水中油型スキンケア組成物が必要とされている。具体的には、美白効果及び/又は老化防止効果を提供する組成物が必要とされている。」 ・甲4-3)13頁3?23行[【0056】?【0059】] 「 1つの極めて好ましい実施形態では、本発明の水中油型組成物は、外観が透明又は半透明であるマイクロエマルションを提供する。・・・。本明細書の以下では、マイクロエマルションを提供するための界面活性剤の選択は「第1の界面活性剤系」と呼ぶ。・・・ 第1の界面活性剤系は、ポリソルベート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、C10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステル、ポリオキシエチレンステロール、及びポリオキシエチレン水素添加ステロールから成る群から選択される1種以上の非イオン性界面活性剤を含む。第1の界面活性剤系の全体としての親水性-親油性バランス(HLB)は10以上、好ましくは約12以上、より好ましくは約14?約20である。・・・ ・・・ 本明細書で有用なC10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステルとしては、例えば、ポリグリセリル-6ラウレート、ポリグリセリル-10ラウレート、及びポリグリセリル-10ステアレートのような、6?10モルのグリセリン単位を有するものが挙げられる。」 (5)甲5 ・甲5-1)請求の範囲 「[1] (a)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(b)ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、(c)多価アルコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。 ・・・ [3] (b)成分がHLB10以上のショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の皮膚外用剤。 ・・・」 ・甲5-2)[0001] 「[0001] 本発明は皮膚に対する刺激性が少なく、長期保存安定性に優れた美肌並びに美白効果の高い皮膚外用剤に関する。」 ・甲5-3)[0006]?[0009] 「[0006] ロドデンドロール及びその誘導体は、しみ・そばかす等の皮膚の色素沈着を予防・改善させる成分として既に知られているが・・・、ロドデンドロール及びその誘導体を、防腐防黴を目的として用いられることは知られていない。 [0007] また、ロドデンドロール及びその誘導体は水に対する溶解性が低く、これらを配合した製剤、特に粘性を殆ど有しない化粧水などでは、製剤の安定性を高めるために可溶化剤として用いられるポリオキシエチレン付加型非イオン界面活性剤を通常より多く用い、さらに低級アルコールを組み合わせて配合するといった工夫が必要であり、皮膚への刺激性を高める一因となっている。 ・・・ [0008] 本発明は、(a)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(b)ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、(c)多価アルコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。 [0009] ・・・ (1) ・・・ 」 ・甲5-4)[0028]?[0030] 「[0028] 本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの平均重合度は、2?16が好ましい。エステル化度としては、モノエステル、ジエステル、トリエステルのものが挙げられる。本発明では、グリセリンの平均重合度が2?10で、モノエステルのものが好ましく使用される。 [0029] 本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、炭素数が10?18の脂肪酸が好ましい。特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸或いはベヘン酸等が好ましく例示できる。 [0030] 本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、多くが市販されており、特に好ましいものとしては、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノステアレート等が例示できる。」 ・甲5-5)[0057][表1]脚注 「(注1)・・・ (注2)NIKKOL Decaglyn1-L(日光ケミカルズ社製、HLB=15.5) (注3)サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1) 」 ・甲5-6)[0068] 「 ・・・ *7:シリコンFZ-209(日本ユニカー社製) ・・・ 」 ・甲5-7)[0073] 「応用例7(美容液) 原料成分 配合量 エタノール 5.0 リゾレシチン 0.5 ポリグリセリン脂肪酸エステル(注3) 0.1 メチルフェニルポリシロキサン(*7) 2.0 1,3-ブチレングリコール 3.0 ポリオキシエチレンメチルグルコシド(*16) 0.5 ポリエチレングリコール1000 1.0 ロドデンドロール 3.0 アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体(注1) 0.1 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.5 ・メタクリル酸共重合体(*38) グリチルリチン酸ジカリウム 0.2 ニコチン酸アミド 1.0 塩化レボカルニチン 0.3 N-メチル-L-セリン 0.1 水酸化カリウム 0.07 火棘抽出物 0.1 岩白菜エキス 0.01 乳酸菌発酵液(*39) 0.1 γ-アミノ酪酸(*40) 0.02 チャ実エキス(*41) 0.01 ツバキエキス(*42) 0.01 ジュズダマエキス(*43) 0.01 ユキノシタエキス(*44) 0.01 ジオウエキス(*45) 0.01 ヒノキ水(*46) 0.01 トウヒエキス(*47) 0.01 メバロノラクトン(*48) 0.01 ホオノキ樹皮エキス(*49) 0.01 精製水 残 量 *38;Lipidure PMB(Ph10)(日本油脂社製) *39;ホエイCPA(一丸ファルコス社製) *40;BIO GABA(協和発酵社製) *41;茶の実抽出物(丸善製薬社製) *42;ツバキ種子抽出物(丸善製薬社製) *43;ヨクイニン抽出液BG-S(丸善製薬社製) *44;ユキノシタエキス(一丸ファルコス社製) *45;ジオウ抽出液BG-J(丸善製薬社製) *46;ヒノキ水B(丸善製薬社製) *47;トウヒリキッドB(一丸ファルコス社製) *48;メバロノラクトン(旭電化社製) *49;ファルコレックスホオノキB(一丸ファルコス社製) 」 (6)甲6 ・甲6-1)特許請求の範囲 「【請求項1】a.平均重合度が5?15であるポリグリセリンとオレイン酸純度75重量%以上の組成を有する脂肪酸との反応物であるポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤0.1?30重量%、b.多価アルコール40?80重量%、c.油性物質0.1?20重量%およびd.水5?59.8重量%を含有することを特徴とする水中油型マイクロエマルション。 ・・・ 」 ・甲6-2)【0005】 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明は・・・加熱安定性、経時安定性および低温保存からの復元性に優れ、多種の油性物質に適用可能な水中油型マイクロエマルションおよびそれを含有する化粧料を提供することを目的とする。」 ・甲6-3)【0008】 「【0008】 【発明の実施の形態】本発明に用いられるa.ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤のグリセリンの平均重合度は5?15であり、好ましくは7?13、さらに好ましくは8?12である。平均重合度が5より小さいと親水性が強くなるため水中油型エマルションを形成し難くなり、15より大きいと極端にハンドリングが悪くなる。ここで、グリセリンの平均重合度は水酸基価によって求められ、例えば平均重合度10であるデカグリセリンの水酸基価は890である。」 ・甲6-4)【表1】 「 ![]() 」 ・甲6-5)【表2】 「 ![]() 」 ・甲6-6)【表4】 「 ![]() 」 ・甲6-7【表5】 「 ![]() 」 (7)甲7 ・甲7-1)請求の範囲 「1.(a)C_(12)?_(18)のアルキル置換基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン水素添加ヒマシ油、及び直鎖又は分枝鎖モノ又はトリアルキルグリセリドから成る群から選択される2つ又はそれ以上のノニオン界面活性剤、 (b)炭化水素油、脂肪酸エステル及びシリコーン油から成る群から選択される2つ又はそれ以上の油性成分、 (c)水溶性高分子量ポリマー、及び (d)ポリオール及び水を含む化粧品的に許容可能なキャリアを含み、 ここで、前記界面活性剤と前記油性成分の濃度の総計が約6.0質量%未満であり、前記界面活性剤と前記油性成分の比が約2:1?約1:1である透明な微小エマルション。 ・・・ 」 ・甲7-2)1頁9?12行[【0001】] 「 分野 本発明は透明な微小エマルションに関する。特に、本発明は皮膚に潤い、滑らかさ及び柔軟性を与える透明な微小エマルションに関する。」 ・甲7-3)2頁3?6行[【0004】] 「 ・・・、組成物中の保湿剤の量を最大限にすることにより皮膚の状態を改善し、及び/又は皮膚に対する保湿剤の伸展性を改善し、且つユーザーに油っぽくない感触を付与し続ける透明なエマルションを求める必要がある。」 ・甲7-4)6頁4?8行[【0016】] 「 本明細書で有用なモノ又はトリアルキルグリセリドの例としては、モノステアリン酸グリセリン、グリセリルオレエート、及びトリグリセリルジイソステアレートが挙げられ、好ましくはトリグリセリルジイソステアレートが挙げられる。 好ましくは、ノニオン界面活性剤の総濃度は約0.2質量%?約2質量%、好ましくは約0.6質量%?約1.2質量%である。」 ・甲7-5)18頁1行?19頁20行[【0073】?【0076】] 「 実施例1?3 本発明の透明な微小エマルションの実施例1?3は、下記の成分から・・・製造される。 ![]() ^(1)セテアレス-12: POE(12)セトステアリルエーテル;R(OCH_(2)CH_(2))_(n)OH、(n(平均)=12)のセテアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル ^(2)セテアレス-20: POE(20)セトステアリルエーテル;R(OCH_(2)CH_(2))_(n)OH、(n(平均)=20)のセテアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル ^(3)セテアレス-30: POE(30)セトステアリルエーテル;R(OCH_(2)CH_(2))_(n)OH、(n(平均)=30)のセテアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル ^(4)メルコートプラス(Merquat Plus)3330: ポリクアテルニウム39 実施例1?3に関しては、化粧品エマルションは以下のように製造される。: (1)A相成分を好適な大きさの容器内で混合(プロペラ型ミキサーを用いて)し、A相成分が完全に溶融するまで約75?80℃に加熱する。 (2)A相の混合物にB相を添加し、約75?80℃で混合する。 (3)AとBのバッチ混合物を約60℃まで冷却する。 (4)別に、C相成分を約70℃で均一になるまで混合し、そして約5℃に冷却する。 (5)A?B相のバッチ混合物にC相の混合物を加え、均一になるまで混合する。 (6)別に、D相成分を完全に溶解するまで作成し、そしてA?C相のバッチ混合物に添加して、 約35℃まで冷却し続ける。 (7)得られたバッチ混合物が均一になるまで混合を続ける。 」 (8)甲8 ・甲8-1)特許請求の範囲 「【請求項1】 下記(A)?(D)を含有し、非水系であることを特徴とする毛髪化粧料。 (A)一般式: 【化1】 ![]() [式中、R^(1)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(2)はR^(3)と同一またはメチル基または水酸基を表し、R^(3)は式R^(4)Z{R^(4)は3?6の炭素原子を有する2価のアルキレン基を表し、Zは-NR^(5)_(2)、-N+R^(5)_(3)A^(-)、-NR^(5)(CH_(2)NR^(5)_(2)、-NR^(5)(CH_(2))aN^(+)R^(5)_(3)A^(-)および-NR^(5)(CH_(2))aN(R^(5))C=O(R^(6))(R^(5))は水素または1?4の炭素原子を有するアルキル基を表し、R^(6)は1から4の炭素原子を有するアルキル基を表し、Aは塩素、ヨウ素または臭素原子を表し、aは2?6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す。}で表し、m+nは500?2,500の整数を表す。]で表される高分子シリコーン、 (B)一般式: 【化2】 ![]() (R^(7)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(8)はメチル基または水酸基を表し、pは10?100の整数を表す。)で表される低分子シリコーン、 (C)沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素、珪素数が2?8の揮発性シリコーン、メチルトリストリメチルシロキシシランからなる群より選ばれた一種類以上、 (D)ヨウ素価が120以下の植物油。 ・・・ 」 ・甲8-2)【0004】 「【0004】 本発明の目的とするところは、毛髪に対し、自然な光沢を与え、しかもべたつきがなく、滑らかな感触、優れたコンディショニング効果を付与し、かつ安定性に優れた毛髪化粧料を提供することにある。」 ・甲8-3)【0012】 「【0012】 本発明で使用する一般式2で示される低分子シリコーンは、R^(7)はメチル基または一部がフェニル基を表し、R^(8)はメチル基または水酸基を表し、pは10?100の整数である低分子タイプのものであり、分子量としては、約500?8,000程度であり、性状は常温で流動性のある液状で、25℃において6?300mm^(2)/sの粘度を示すものである。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどがあげられる。これら低分子シリコーンは市販されており、それらを例示すると、信越化学工業社製のKF-96A(10cs?300cs)、KF-50(100cs?300cs)、KF-53、KF-54、KF-56、東レダウコーニングシリコーン社製のSH200C(10cs?300cs)、SH-556、GE東芝シリコーン社製のTSF-451(6cs?300cs)、TSF431、TSF433、TSF437、SF1550、TSF484等があげられる。」 ・甲8-4)【0031】?【0032】 「【0031】 実施例7 配合量(%) (1)高分子シリコーン (GE東芝シリコーン社製、X-21-5613) 5.0 (2)低分子シリコーン (日本ユニカー社製、FZ-209) 5.0 (3)軽質流動イソパラフィン (日本油脂社製、パールリーム4) 85.0 (4)アーモンド油 3.0 (5)オリーブスクワラン 1.0 (6)パラメトキシケイ皮酸オクチル 0.5 (7)天然ビタミンE 0.1 (8)香料 0.4 【0032】 (製法)(1)?(8)を常法により均一に混合溶解し、透明液状の毛髪化粧料を得た。」 (9)甲9 ・甲9-1)特許請求の範囲 「【請求項1】 少なくとも、 (I) i)下記一般式(1)で示される分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2ヶ含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、 【化1】 ![]() (式中、R^(1)はそれぞれ同一であっても異なっていても良く、脂肪族不飽和基を有しない炭素原子数1?8の一価炭化水素基である。aは1以上の整数、bは0以上の整数で、a+bは80以上の整数である。Xはそれぞれ同一であっても異なっていても良く、水素原子又はR1である。) ii)下記一般式(2)で示される分子中に脂肪族不飽和基を少なくとも2ヶ含有するオルガノポリシロキサン 【化2】 ![]() (式中、R^(2)はそれぞれ同一であっても異なっていても良く、脂肪族不飽和基を有しない炭素原子数1?8の一価炭化水素基であり、R^(3)はそれぞれ同一であっても異なっていても良く、末端に不飽和基を有する炭素原子数2?8の一価炭化水素基である。cは1以上の整数、dは0以上の整数で、c+dは80以上の整数である。Yはそれぞれ同一であっても異なっていても良く、R^(2)又はR^(3)である。) とを含むオルガノポリシロキサン混合物を付加重合することにより得られるオルガノポリシロキサンエラストマー微粒子と、 (II) 25℃で液状の油剤 とからなるペースト状のオルガノポリシロキサンエラストマー組成物であって、前記(I)成分のオルガノポリシロキサンエラストマー微粒子が、体積平均粒径2?50μmの球状又は不定形の微粒子であり、該オルガノポリシロキサンエラストマー微粒子100質量部に対して25℃における動粘度が10mm^(2)/s以下のメチルポリシロキサン200質量部以上を吸収できる微粒子であることを特徴とするオルガノポリシロキサンエラストマー組成物。 ・・・ 」 ・甲9-2)【0006】 「【0006】 本発明は・・・、化粧料等に対する保存や配合等の安定性に優れ、のびの重さ、油っぽさ、べたつき、油膜感等がなく、さらさらとした軽い感触のペースト状オルガノポリシロキサンエラストマー組成物、及びこれを含有する化粧料を提供することを目的とする。」 ・甲9-3)【0039】 「【0039】 [(II)液状の油剤] 本発明で用いる(II)成分の液状の油剤としては、25℃における動粘度が0.65?10000mm^(2)/sであることが好ましい。このような液状油剤としては、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、天然動植物油、半合成油等から選択される少なくとも1種が挙げられる。」 ・甲9-4)【0041】 「【0041】 炭化水素油としては、鎖式及び環式の炭化水素、例えば、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添イソブテン、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。」 [6-2]申立理由1について(甲第1号証を主引例とする新規性及び進歩性の判断) 以下、申立理由1([第4]1.(1)1)、2)及び(2))について、まとめて判断する。 1.甲1に記載された発明 甲1-7及び甲1-8の摘記事項によれば、甲1の実施例1?8の各組成物は、フェーズ01をフェーズ02に加えて乳化し(a1)、冷却し(a2)、フェーズ03に加えて混合物を得る(a3)工程と、フェーズ04をフェーズ05に加えることにより乳化する(b1)工程とを行い、上記(a3)の混合物と上記(b1)の生成物を混合(c)した後、残りの成分を混合(d1?d6)することにより調製されるところ、上記(a1)?(a3)の乳化工程を経たものが「第1のエマルション」に、上記(b1)の乳化工程を経たものが「第2のエマルション」に、それぞれ相当するものと認められる。 そうすると、これら上記甲1-1、甲1-2、甲1-7(実施例2?6、8の部分)及び甲1-8?甲1-10の摘記事項より、甲1には次の発明1)?6): ・1) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.01重量%、 セテアレス-20 0.05重量%、 セテアレス-30 0.1重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.1重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.04重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.03重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.05重量%、 ベンジルアルコール 0.3重量%、 (D1)脱イオン水 31.6重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 グリセリン 2.0重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 香料(リモネン含有) 0.05重量%、 PEG-40硬化ヒマシ油 0.5重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.25重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.1重量%、 (A5)シクロメチコン/ジメチコノール 1.5重量%、 メチルパラベン 0.05重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.0重量%、 キサンタンガム 0.04重量%、 D-パンテノール 1.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 ・2) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.02重量%、 セテアレス-20 0.13重量%、 セテアレス-30 0.15重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.32重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.15重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.23重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.15重量%、 ベンジルアルコール 0.3重量%、 (D1)脱イオン水 34.3重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 グリセリルポリメタクリレート及びプロピレングリコール及びPVM/MAコポリマー 1.5重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 メンソール 0.01重量%、 香料(リモネン含有) 0.06重量%、 (B2)ポリグリセリル-6ラウレート 0.6重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.25重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.1重量%、 (A6)ジメチコン/ジメチコノール 2.0重量%、 メチルパラベン 0.1重量%、 1,3-ブチレングリコール 4.0重量%、 キサンタンガム 0.04重量%、 D-パンテノール 1.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量%、 ナツメ果実抽出物 0.15重量%、 クローブ抽出物 0.1重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 ・3) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.04重量%、 セテアレス-20 0.14重量%、 セテアレス-30 0.24重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.39重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.12重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.07重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.15重量%、 (A3)イソヘキサデカン 0.1重量%、 (D1)脱イオン水 34.3重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 グリセリン 2.0重量%、 グリセリルポリメタクリレート及びプロピレングリコール及びPVM/MAコポリマー 2.0重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 メンソール 0.05重量%、 PEG-40硬化ヒマシ油 0.2重量%、 ポリソルベート-20 0.3重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.3重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.85重量%、 (A5)シクロメチコン/ジメチコノール 1.5重量%、 メチルパラベン 0.05重量%、 1,3-ブチレングリコール 3.0重量%、 キサンタンガム 0.04重量%、 D-パンテノール 1.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量%、 ナツメ果実抽出物 0.1重量%、 ウィッチヘーゼル抽出物 0.1重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 ・4) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.02重量%、 セテアレス-20 0.054重量%、 セテアレス-30 0.097重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.156重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.048重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.028重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.06重量%、 (A3)イソヘキサデカン 0.1重量%、 ベンジルアルコール 0.12重量%、 (D1)脱イオン水 31.72重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 メンソール 0.05重量%、 香料(リモネン含有) 0.05重量%、 PEG-40硬化ヒマシ油 0.4重量%、 ポリソルベート-20 0.2重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.23重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.2重量%、 (A6)ジメチコン/ジメチコノール 1.0重量%、 メチルパラベン 0.07重量%、 1,3-ブチレングリコール 3.0重量%、 カルボマー 0.2重量%、 ヒアルロン酸ナトリウム 0.02重量%、 D-パンテノール 2.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量%、 マグネシウムアスコルビルグルコシド 2.0重量%、 セルロース粉末 3.0重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 ・5) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.013重量%、 セテアレス-20 0.05重量%、 セテアレス-30 0.09重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.14重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.04重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.025重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.05重量%、 (A7)イソノニルイソノナノエート 0.1重量%、 ベンジルアルコール 0.2重量、 (D1)脱イオン水 31.6重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 グリセリン 2.0重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 茶木油 0.1重量%、 PEG-40硬化ヒマシ油 0.4重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.2重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.2重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.06重量%、 (A5)シクロメチコン/ジメチコノール 1.0重量%、 メチルパラベン 0.07重量%、 1,3-ブチレングリコール 4.0重量%、 ヒアルロン酸ナトリウム 0.02重量%、 D-パンテノール 1.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量%、 ナツメ果実抽出物 0.15重量%、 ベンゾフェノン 2.0重量%、 二酸化チタン 1.0重量%、 ビニルジメチコーン/メチコールシルセスキオキサンクロスポリマー 5.0重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 及び、 ・6) 「 第1の界面活性剤系、第1の油性構成成分及び第1の水性キャリアを含む第1のエマルジョンと、第2の界面活性剤系、第2の油性構成成分及び第2の水性キャリアを含む第2のエマルションと、第3の水性キャリアを含むスキンケア組成物であって、 第1のマイクロエマルションが、 セテアレス-12 0.01重量%、 セテアレス-20 0.05重量%、 セテアレス-30 0.1重量%、 (B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート 0.1重量%、 PEG-20硬化ヒマシ油 0.04重量%、 (A1)セチル2-エチルヘキサノエート 0.03重量%、 (A2)メドウフォーム種子油 0.05重量%、 ベンジルアルコール 0.3重量%、 (D1)脱イオン水 31.6重量%、 安息香酸ナトリウム 0.07重量%、 EDTA 2-Na 0.04重量%、 グリセリン 2.0重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.3重量%、 メチルパラベン 0.07重量% を含み、 第2のマイクロエマルションが、 香料(リモネン含有) 0.05重量%、 グリセレス-25 PCA イソステアレート 0.45重量%、 1,3-ブチレングリコール 0.6重量%、 (D1)脱イオン水 2.0重量% を含み、 上記スキンケア組成物中にさらに アクリル酸/アルキルアクリレートコポリマー 0.25重量%、 (D1)脱イオン水 100重量%にする量、 水酸化ナトリウム 0.1重量%、 (A5)シクロメチコン/ジメチコノール 1.5重量%、 メチルパラベン 0.05重量%、 1,3-ブチレングリコール 2.0重量%、 キサンタンガム 0.04重量%、 D-パンテノール 1.0重量%、 (C1)ナイアシンアミド 2.0重量% を含み、 皮膚に使用するためのクリアローションを提供するために特に有用である、スキンケア組成物」 (以下、1)?6)を順に「甲1-1発明」?「甲1-6発明」ということがあり、また、これらをまとめて単に「甲1発明」ということもある) が記載されているものと認められる。 2.対比・判断 (1)訂正発明1について (i)新規性についての対比・判断 訂正発明1と甲1発明とを対比する。 次の点ア)?キ): ・ア) 甲1発明の「スキンケア組成物」は、訂正発明1における「化粧品組成物」に相当すること; ・イ) 甲1発明における「(A1)セチル2-エチルヘキサノエート」、「(A2)メドウフォーム種子油」、「(A3)イソヘキサデカン」、「(A5)シクロメチコン/ジメチコノール」、「(A6)ジメチコン/ジメチコノール」及び「(A7)イソノニルイソノナノエート」は、本件特許明細書中に 「【0033】 [油] 本発明の化粧用組成物は、少なくとも1種の油を含む。本明細書において、「油」とは、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で、液体又はペーストの形態(非固体)にある、脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油としては、化粧品中で一般に使用されているものを、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。 【0034】 油は、炭化水素油、シリコーンオイル等の非極性油;植物性油若しくは動物性油及びエステル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。 ・・・ 【0043】 好ましいエステル油の例として挙げることができるのは、例えば、・・・、2-エチルヘキサン酸-2-エチルヘキシル、・・・、オクタン酸セチル、・・・である。 ・・・ 【0045】 シリコーンオイルの例として挙げることができるのは、例えば、直鎖有機ポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、・・・環状有機ポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等・・・である。 ・・・ 【0053】 例えばRhodia社製の48シリーズのオイル等の、ジメチコノールの名称(CTFA)で公知の、ジメチルシラノール末端基を有するポリジメチルシロキサンも挙げることができる。 ・・・ 【0057】 炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン・・・を挙げることができる。」 と記載されていることからみて、いずれも訂正発明1の「(a)油」に相当すること; ・ウ) 甲1発明における「(B1)ポリグリセリル-3ジイソステアレート」及び「(B2)ポリグリセリル-6ラウレート」は、訂正発明1における「(b)ポリグリセリル脂肪酸エステル」に相当すること; ・エ) 甲1発明における「(C1)ナイアシンアミド」は、本件特許明細書中の 「【0075】 ・・・ ![]() ・・・ 【0084】 (c)ヒドロトロープは、・・・ビタミンB3及びその誘導体、好ましくはナイアシンアミド、・・・から選ばれることが好ましい。 ・・・ 【0085】 (ビタミンB3及びその誘導体) ビタミンB3は、・・・式 【0086】 ・・・ ![]() 【0087】 [式中、Rは、-CONH_(2)(ナイアシンアミド)、-COOH(ニコチン酸若しくはナイアシン)、・・・であることができ、ナイアシンアミドが好ましい] の化合物である。」(下線は合議体による) との記載(【0075】表中で「ニコチンアミド(ビタミンB3)」として記載されているのと同じ化学式で表される化合物が【0086】?【0087】で「ナイアシンアミド」とされている)からみて、「ニコチンアミド」と同義であり、訂正発明1における「(c)log Pが-0.7から6の間である・・・ヒドロトロープ」中の「ビタミンB3」に該当すること; ・オ) 甲1発明における「(D1)脱イオン水」は、訂正発明1における「(d)水」に相当すること; ・カ) 甲1発明は訂正発明1の(a)?(d)に相当する化合物以外の成分も含むが、訂正発明1も「(a)少なくとも1種の油と・・・(d)水とを含み」(下線は合議体による。)と記載されており、(a)?(d)以外の成分を含むことを排除するものではないから、この点は相違点にはならないこと; ・キ) 甲1-1発明?甲1-6発明の各スキンケア組成物を構成する第1のエマルジョンの粒径が好ましくは約100nm未満であり(甲1-4)、同第2のエマルジョンの粒径が好ましくは約50nm以下であり(甲1-5)、また、それら各スキンケア組成物自体はいずれもその外観が透明であること(甲1-10)から、甲1-1発明?甲1-6発明の各「スキンケア組成物」はいずれも、訂正発明1のナノエマルション又はマイクロエマルションの形態」に相当すること; を併せ踏まえると、両者は 「 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープであるビタミンB3と、 (d)水と、 を含む、化粧品組成物 」 の点で一致するが、次の点1): 1) 訂正発明1では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」するものと、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される」ものとを、組み合わせて含むのに対し、 甲1発明では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「ポリグリセリル-3ジイソステアレート」又は「ポリグリセリル-3ジイソステアレート及びポリグリセリル-6ラウレート」と、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3」とを、組み合わせて含む点 (以下、「相違点1」ということがある)において、相違する。 そうすると、訂正発明1は甲1発明と同一であるとはいえない。 したがって、訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。 (ii)進歩性についての判断 以下、上記相違点1について検討する。 ア) 甲1には、甲1発明におけるポリグリセリル-3ジイソステアレートのようなグリセロール重合数が3のポリグリセリル脂肪酸エステル(PG3脂肪酸エステル)や、同ポリグリセリル-6ラウレートのようなグリセロール重合数が6のポリグリセリル脂肪酸エステル(PG6脂肪酸エステル)に代えて、若しくは加えて、グリセロール重合数が5個のポリグリセリル脂肪酸エステル(PG5脂肪酸エステル)を用いることの特段の記載乃至示唆は認められない。また、甲1には、甲1発明の第2のエマルジョン中に含まれ得る第2の界面活性剤の選択肢の1つとして、C10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステル類が挙げられている(甲1-1)ものの、当該ポリグリセリンアルキルエステル類として具体的に例示されているポリグリセリン脂肪酸エステルは、6?10モルのグリセリン単位を有するもの(PG6?PG10脂肪酸エステル)のみである(甲1-5)。 そうすると、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれかの化粧品組成物において、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、若しくはポリグリセリル-3ジイソステアレート及びポリグリセリル-6ラウレートの配合に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合することの積極的な動機付けは、当業者といえども甲1から得ることができたとはいえない。 また、そうであれば、次の事項a)及びb): ・a)PG5脂肪酸エステルを、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンといった微細なエマルジョン形態の化粧品組成物の製造に使用する際、当該PG5脂肪酸エステルの配合により、得られるエマルジョンの透明性や安定性が損なわれる場合があること; ・b)そのような場合、甲1発明中のナイアシンアミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分が併せて配合されることにより、エマルジョン中の平均粒径をより小さくし、当該PG5脂肪酸エステルにより損なわれた透明性を向上させ得ること; のいずれも、甲1の記載からでは、当業者といえども予期し得なかったというほかはない。 イ) また、 ・イ1) 甲3には、非イオン界面活性剤であるポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリル脂肪酸エステル)を用いてマイクロエマルションを製造するに際し、界面活性性助剤としてショ糖脂肪酸ジエステルを含有せしめること、並びに、そうすることで系のHLBを大きく変えることなく、また効率よく可溶化容量を増加させることができることが記載されている(甲3-1?甲3-2)。 しかしながら、ここでいうポリグリセリン脂肪酸エステルについては、そのグリセリンの平均重合度は一般には2?16、好ましくは4?12であるとされている(甲3-3)ものの、実施例で実際に用いられているポリグリセリン脂肪酸エステルのグリセリン平均重合度も4.5(甲3-4)であって、特にPG5脂肪酸エステルを採用することの具体的な記載乃至示唆は認められない。 また、当該PG5脂肪酸エステルと、ビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分を併せて配合することの記載乃至示唆も認められない。 ・イ2) 甲4には、広範囲の処方にわたり安全且つ有効なスキンケア処置効果を提供し、広範囲の人々にわたり炎症を減少させる水中油型スキンケア組成物であって、(1)約0.001%?約10%のフラボノイド化合物、(2)0.01%?約15%のビタミンB3化合物、及び(3)組成物全体の少なくとも約2重量%の油成分を含む皮膚科学的に許容可能な水中油型キャリアを含み、二酸化チタンを実質的に含まないスキンケア組成物について記載されており(甲4-1?甲4-2)、当該水中油型組成物は外観が透明又は半透明であるマイクロエマルションであって、当該マイクロエマルションを提供するための界面活性剤である「第1の界面活性剤系」の選択肢の1つとしてC10?20のアルキル置換基を有するポリグリセリンアルキルエステルが挙げられることも記載されている(甲4-3)。 しかしながら、ここでいう当該ポリグリセリンアルキルエステルにおけるグリセリンの重合度は、例えば、ポリグリセリル-6ラウレート、ポリグリセリル-10ラウレート、及びポリグリセリル-10ステアレートのような、重合度6?10のものであって(甲4-3)、PG5脂肪酸エステルを採用することの特段の記載乃至示唆は認められないし、また、当該PG5脂肪酸エステルと、摘記甲4-1のビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分とを併せて配合することの記載乃至示唆も、甲4中に認めることはできない。 ・イ3) 甲5には、(a)摘記甲5-1の式(1)で示されるロドデンドロール及びその誘導体から選択されるいずれか、(b)ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルのから選択されるいずれか、及び(c)多価アルコールを含有することを特徴とする皮膚外用剤(甲5-1)の応用例として、摘記甲5-7の組成で表される美容液が記載されており、当該美容液は、シリコーンオイル(訂正発明1の成分(a)の「油」に相当する)及び精製水(訂正発明1の成分(d)の「水」に相当する)と共に、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリル脂肪酸エステル)としてサンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)(甲5-5の「(注3)」)、及びニコチン酸アミドを含むものであることが記載されている(甲5-7)。そして、[6-2]2.(1)(i)エ)で述べたとおり、「ナイアシンアミド」は「ニコチンアミド」と同義であって、訂正発明1における「ビタミンB3」に該当するところ、「ニコチンアミド」及び「ニコチン酸アミド」も同義である(この点については、要すれば、例えば 化学大辞典編集委員会編、化学大辞典6 縮刷版、共立出版株式会社、1978年9月10日第22刷発行、第690頁左欄の「ニコチンアミド」の項 を参照のこと)ことから、上述の摘記甲5-7のニコチン酸アミドは、本件特許明細書における「ニコチンアミド」又は「ナイアシンアミド」と同義であって、訂正発明1における「(c)log Pが-0.7から6の間である・・・ヒドロトロープ」である「ビタミンB3」に該当するものと認められる。 しかしながら、当該美容液中のポリグリセリル脂肪酸エステルである上記サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)は、ラウリン酸デカグリセリル、即ちグリセリンの重合度が10のPG10脂肪酸エステル、の市販品として既知のものであって、重合度が5のPG5脂肪酸エステルではない(なお、この点について、要すれば、例えば 特開2009-120492号公報の【0016】 を参照のこと)。また、甲5には、ポリグリセリル脂肪酸エステルとしてグリセリンの平均重合度が2?10でモノエステルのものが好ましく使用されることの記載もみられるものの(甲5-4)、上述の美容液(摘記甲5-7)において、サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)(PG10脂肪酸エステル)に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを選択し、これを併せて配合することの記載乃至示唆は認められない。また、PG5脂肪酸エステルと、上記美容液中のニコチン酸アミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分とを併せて配合することの記載乃至示唆自体、甲5中に認めることはできない。 ・イ4) 甲6には、a.平均重合度が5?15であるポリグリセリンとオレイン酸純度75重量%以上の組成を有する脂肪酸との反応物であるポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤0.1?30重量%、b.多価アルコール40?80重量%、c.油性物質0.1?20重量% 及び d.水5?59.8重量%を含有することを特徴とする水中油型マイクロエマルション(甲6-1)について記載されており、当該マイクロエマルジョンの例として、表1のポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤A?E(甲6-4)のいずれかを配合してなる実施例1?7のマイクロエマルジョン(甲6-5)、並びに、それら実施例1?7のマイクロエマルジョンのいずれかを含む、実施例8?14の透明化粧水(甲6-6)及び実施例15?21の透明浴用剤(甲6-7)が記載され、それらが透明性、経時安定性及び低温保存からの復元性等において優れていることが記載されている(甲6-2、甲6-6、甲6-7)。 しかしながら、甲6では、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリル脂肪酸エステル)のグリセリンの平均重合度として好ましい範囲は7?13、さらには8?12とされており(甲6-3)、実際に製造され使用されているポリグリセリル脂肪酸エステルの平均重合度も9.7?10.2の範囲内のものであって(甲6-4)、平均重合度5のPG5脂肪酸エステルを採用することの特段の記載乃至示唆はみられない。また、当該PG5脂肪酸エステルと、ビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分とを併せて配合することの記載乃至示唆も、甲6中に認めることはできない。 ・イ5) 甲7には、(a)C_(12)?_(18)のアルキル置換基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン水素添加ヒマシ油、及び直鎖又は分枝鎖モノ又はトリアルキルグリセリドから成る群から選択される2つ又はそれ以上のノニオン界面活性剤、(b)炭化水素油、脂肪酸エステル及びシリコーン油から成る群から選択される2つ又はそれ以上の油性成分、(c)水溶性高分子量ポリマー、及び(d)ポリオール及び水を含む化粧品的に許容可能なキャリアを含み、ここで、前記界面活性剤と前記油性成分の濃度の総計が約6.0質量%未満であり、前記界面活性剤と前記油性成分の比が約2:1?約1:1である透明な微小エマルション(甲7-1)について記載されており、当該微小エマルションの例として、(a)成分の1種としてトリグリセリルジイソステアレートを併せ配合してなる微小エマルション(甲7-5)が記載されている。 しかしながら、甲7には、PG5脂肪酸エステルと、ビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分とを併せ配合することについて、記載も示唆もされていない。 ・イ6) 甲8には、(A)【化1】で表される高分子シリコーン、(B)【化2】で表される低分子シリコーン、(C)沸点が100?260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素、珪素数が2?8の揮発性シリコーン、メチルトリストリメチルシロキシシランからなる群より選ばれた一種類以上、及び(D)ヨウ素価が120以下の植物油を含む、非水系の毛髪化粧料(甲8-1)について記載されているが、油及び水と共に、グリセリン重合度が5のPG5脂肪酸エステルと、ビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分とを組み合わせて配合することについては、記載も示唆も認められない。 ・イ7) 甲9には、(I)i)【化1】のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとii)【化2】のオルガノポリシロキサンとを含むオルガノポリシロキサン混合物を付加重合することにより得られるオルガノポリシロキサンエラストマー微粒子と、(II)25℃で液状の油剤とからなるペースト状のオルガノポリシロキサンエラストマー組成物(甲9-1)について記載されているが、油及び水と共に、グリセリン重合度が5のPG5脂肪酸エステルと、ビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分とを組み合わせて配合することについては、記載も示唆も認められない。 そうすると、これら甲3?甲9の記載を併せ考慮しても、甲1-1発明?甲1-6発明のいずれかの化粧品組成物において、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、若しくはポリグリセリル-3ジイソステアレート及びポリグリセリル-6ラウレート に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合することの具体的な動機付けは、当業者といえども得ることができたとはいえない。 また、そうであれば、次の事項a)及びb): ・a)PG5脂肪酸エステルを、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンといった微細なエマルジョン形態の化粧品組成物の製造に使用する際、当該PG5脂肪酸エステルの配合により、得られるエマルジョンの透明性や安定性が損なわれる場合があること; ・b)そのような場合、甲1発明中のナイアシンアミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分が併せて配合されることにより、エマルジョン中の平均粒径をより小さくし、当該PG5脂肪酸エステルにより損なわれた透明性を向上させ得ること; のいずれも、甲3?甲9の記載からでは、当業者といえども予期し得なかったというほかはない。 ウ) してみれば、甲1発明において、ポリグリセリル-3ジイソステアレート、若しくはポリグリセリル-3ジイソステアレート及びポリグリセリル-6ラウレート に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合すること; 及び、そうすることで、得られるナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンにおける平均粒度をより小さくし、PG5脂肪酸エステルの配合により損なわれ得る透明性の向上を見込むこと; は、甲1の記載、若しくは甲1の記載と甲3?甲9のいずれかの記載との組合せに基づいても、当業者にとり容易に想到し得たことであるということはできない。 エ)(訂正発明の新たな効果について) エ1) 本件特許明細書の実施例の項には、訂正発明1に係るエマルション形態の組成物の例として、成分(c)の種類に応じ次の群1-1)?1-3)のエマルション組成物: ・1-1) 成分(a)「油」としてパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル及びミリスチン酸イソプロピルのうちのいずれかのエステル油、及び成分(d)「水」と共に、成分(b)であるPG5脂肪酸エステルとしてラウリン酸PG5及びオレイン酸5PGのいずれか、及び、成分(c)としてビタミンB3を組み合わせて配合してなるO/W型エマルション(実施例1?5); ・1-2) 成分(a)「油」としてミリスチン酸イソプロピル、及び成分(d)「水」と共に、成分(b)であるPG5脂肪酸エステルとしてラウリン酸PG5、及び、成分(c)としてカフェインを組み合わせて配合してなるO/W型エマルション(実施例6); ・1-3) 成分(a)「油」としてパルミチン酸エチルヘキシル、及び成分(d)「水」と共に、成分(b)であるPG5脂肪酸エステルとしてラウリン酸PG5、及び、成分(c)としてメキゾリルSBO(テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム)を組み合わせて配合してなるO/W型エマルション(実施例7、8); のいずれもが、成分((c)を含まない点においてのみ異なる各実施例に対応するO/W型エマルションである比較例1?8(順に実施例1?8に対応)が ・外観:白色; ・粒度(nm):462,8nm(比較例6)?4224.4(比較例3) ・透明度(%):-0.1%(比較例2,3)?0.2%(比較例8) であったのに対し、 ・外観:わずかに半透明(実施例1、2)又は透明(実施例3?8) ・粒度(nm):22.4nm(実施例8)?109.8nm(実施例4) ・透明度(%):66.9%(実施例1)?98.2%(実施例8) であったことを示す試験結果が記載されている。 そして、これらの試験結果から、訂正発明1に係るエマルション(実施例1?8)のいずれもが、成分(a)の「油」及び成分(d)の「水」と共に、成分(b)のPG5脂肪酸エステルに対して特に成分(c)の「ビタミンB3」、「カフェイン」及び「テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム」から選択されるいずれかの「ヒドロトロープ」成分を併せて配合することで、当該成分(c)の「ヒドロトロープ」成分を併せ配合しない場合に比して、得られるエマルションの平均粒径をより小さくすることができ、PG5脂肪酸エステルの配合により損なわれ得る(半)透明性を向上させることができる、という、各甲号証の記載から予期し得ない優れた効果をもたらし得ることを把握し得るものである。 エ2) また、特許権者が令和1年7月11日付けの意見書に乙第1号証として添付した同月8日付けの実験成績証明書には、次の表I、表IIの比較試験結果が示されている。 ![]() ![]() また、これらの比較試験結果について、同号証の末尾では、次のように述べられている。 「 7.考察 上記の結果から明らかなように、ビタミンB3が存在しても、ポリグリセリル脂肪酸エステルのグリセロール単位が3又は6の場合はナノエマルション又はマイクロエマルションを形成することはできない。 一方、ポリグリセリル脂肪酸エステルのグリセロール単位が5の場合は、ビタミンB3の存在下、ナノエマルション又はマイクロエマルションを形成可能である。」 そして、これら表I、IIの比較試験結果を含む乙第1号証の記載によれば、 ・(a)成分:油 及び(d)成分:水 と共に、(b)相当成分としてポリグリセリル脂肪酸エステルを選択してナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物を調製するに際し、(b)相当成分としてPG6脂肪酸エステル又はPG3脂肪酸エステルを採用し配合した場合には、得られるエマルションの透明度は著しく損なわれる場合があり(外観:「白色(調製後に分離)」、粒度(nm):「測定不能」)、この透明度の損失は訂正発明1の(c)成分である「ヒドロトロープ」である「ビタミンB3」を併せて配合しても向上し得なかった(新表Iの「新比較例3-1」、「新比較例3-2」;表IIの「新比較例4-1」、「新比較例4-2」)が; ・(b)相当成分として、同じポリグリセリル脂肪酸エステルの中でも、特に訂正発明に係るPG5脂肪酸エステルを採用し、これと(c)成分である「ビタミンB3」を併せ配合した場合(表Iの「実施例3」、表IIの「実施例4」)には、粒度は「59.4nm」(「実施例3」)又は「109.8nm」(「実施例4」)程度により小さくすることができ、また、PG5脂肪酸エステルの配合により著しく損なわれた透明性を向上せしめることができる(外観:「透明」)、という、本件特許明細書の実施例1?5のエマルジョン((b)成分:PG5脂肪酸エステル 及び (c)成分:ビタミンB3 の組合せ配合例)、並びに同実施例6?8のエマルジョン((b)成分:PG5脂肪酸エステル 及び (c)成分:カフェイン又はテトラヒドロジャスモン酸ナトリウム(メキゾリルSBO) の組合せ配合例)において示されているのと同様の、優れた効果が現実にもたらされる; ということを把握することができる。 そして、このような効果は、PG5脂肪酸エステルとビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれかのヒドロトロープ成分とを組合せて配合することについて記載も示唆もない、甲1、3?9からでは予期し得ない、格別の効果である。 オ) 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、若しくは、甲1に記載された発明と甲1、3?9のいずれかの記載との組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)訂正発明2?7、10、11、15?22について 訂正発明2?7、10、11、15?22は、いずれも訂正発明1を直接又は間接的に引用してなる発明である。 そうすると、これらの訂正発明についてはいずれも、訂正発明1に係る上記相違点1以外の相違点の有無、並びにその容易想到性等について検討するまでもなく、訂正発明1について(1)(ii)で述べたのと同様の理由により、訂正発明2?7、10、11、15?22は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、また、甲1に記載された発明に基づいて、若しくは甲1に記載された発明及び甲1、甲3?甲9のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 (3)小活 以上、(1)?(2)で述べたとおりであるから、 ・本件訂正後の請求項1?5、10、15?19、21及び22に係る発明は、そのいずれも、甲第1号証に記載された発明ではなく、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対しなされたものではない。 ・また、本件訂正後の請求項1?5、10、15?19、21及び22に係る発明は、そのいずれも、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第1号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 ・また、本件訂正後の請求項6、7、11及び20に係る発明は、そのいずれも、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3、4、6、7号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 したがって、申立人による申立理由1は、理由がない。 [6-3]申立理由2について(甲第5号証を主引例とする新規性及び進歩性の判断) 以下、申立理由2([第4]2.(1)1)、2)及び(2))について、まとめて判断する。 1.甲5に記載された発明 上掲の摘記甲5-1及び甲5-5を踏まえた摘記甲5-7の記載によれば、甲5には、次の発明: 「 (a)下記一般式(1)で示されるロドデンドロール及びその誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(b)ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上と、(c)多価アルコールを含有することを特徴とする、、以下の成分組成の、美容液の形態である皮膚外用剤。 (1) 原料成分 配合量 エタノール 5.0 リゾレシチン 0.5 ポリグリセリン脂肪酸エステル(注3) 0.1 メチルフェニルポリシロキサン 2.0 1,3-ブチレングリコール 3.0 ポリオキシエチレンメチルグルコシド 0.5 ポリエチレングリコール1000 1.0 ロドデンドロール 3.0 アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体 0.1 2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン 0.5 ・メタクリル酸共重合体 グリチルリチン酸ジカリウム 0.2 ニコチン酸アミド 1.0 塩化レボカルニチン 0.3 N-メチル-L-セリン 0.1 水酸化カリウム 0.07 火棘抽出物 0.1 岩白菜エキス 0.01 乳酸菌発酵液 0.1 γ-アミノ酪酸 0.02 チャ実エキス 0.01 ツバキエキス 0.01 ジュズダマエキス 0.01 ユキノシタエキス 0.01 ジオウエキス 0.01 ヒノキ水 0.01 トウヒエキス 0.01 メバロノラクトン 0.01 ホオノキ樹皮エキス 0.01 精製水 残 量 (注3)サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1) 」 (以下、単に「甲5発明」ということがある)の発明が記載されているものと認められる。 2.対比・判断 (1)訂正発明1について(甲5発明との対比、判断) (i)新規性についての対比・判断 次の点ア)?カ): ・ア) 甲5発明における「美容液の形態である皮膚外用剤」は、訂正発明1における「化粧品組成物」に相当すること; ・イ) 甲5発明における「メチルフェニルポリシロキサン」は、本件特許明細書中に 「【0034】 油は、炭化水素油、シリコーンオイル等の非極性油;植物性油若しくは動物性油及びエステル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。 【0035】 (a)油は、植物起源油又は動物起源油、合成油、シリコーンオイル及び炭化水素油からなる群から選択されることが好ましい。 ・・・ 【0045】 シリコーンオイルの例として挙げることができるのは、例えば、直鎖有機ポリシロキサン、例えば・・・、メチルフェニルポリシロキサン、・・・」 との記載からみて、訂正発明1の「(a)油」に相当すること; ・ウ) 甲5発明における「ポリグリセリン脂肪酸エステル」である「サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)」は、[6-2]2.(1)(ii)イ3)で述べたとおり、ラウリン酸デカグリセリル、即ちグリセリンの重合度が10のデカグリセリル脂肪酸エステル(PG10脂肪酸エステル)であって、訂正発明1における「ポリグリセリル脂肪酸エステル」に相当すること; ・エ) 甲5発明における「ニコチン酸アミド」は、[6-2]2.(ii)イ3)で述べたとおり、訂正発明1における「(c)log Pが-0.7から6の間である・・・ヒドロトロープ」中の「ビタミンB3」に該当すること; ・オ) 甲5発明における「精製水」は、訂正発明1における「(d)水」に相当すること; ・カ) 甲1発明は訂正発明1の(a)?(d)に相当する化合物以外の成分も含むが、訂正発明1も「(a)少なくとも1種の油と・・・(d)水とを含み」(下線は合議体による)と記載されており、(a)?(d)以外の成分を含むことを排除するものではないから、この点は相違点にはならないこと; を踏まえると、両者は 「 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープであるビタミンB3と、 (d)水と、 を含む、化粧品組成物 」 の点で一致するが、次の点2)及び3): 2) 訂正発明1では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」するものと、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される」ものとを、組み合わせて含むのに対し、 甲5発明では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「デカグリセリル脂肪酸エステル」(PG10脂肪酸エステル)と、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3」とを組み合わせて含む点 3) 訂正発明1は「ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態」であるのに対し、甲5発明はそのような形態であることの限定はない; (以下、順に「相違点2」、「相違点3」ということがある)において、相違する。 そうすると、訂正発明1は甲5発明と同一であるとはいえない。 したがって、訂正発明1は、甲5に記載された発明ではない。 (ii)進歩性についての対比・判断 ア) 相違点2に関し、[6-2]2.(1)(ii)イ3)で述べたとおり、甲5発明中のポリグリセリル脂肪酸エステルであるサンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)は、ラウリン酸デカグリセリル、即ちグリセリンの重合度が10のPG10脂肪酸エステル、の市販品として既知のものであって、重合度が5のPG5脂肪酸エステルではない。また、甲5には、ポリグリセリル脂肪酸エステルとしてグリセリンの平均重合度が2?10でモノエステルのものが好ましく使用されることの記載もみられるものの(甲5-4)、特にPG5脂肪酸エステルを選択し、これを甲5発明におけるニコチン酸アミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分とを併せて配合することの記載乃至示唆を認めることもできない。 そうすると、甲5発明において、サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)、即ちラウリン酸デカグリセリル(PG10脂肪酸エステル)の配合に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合することの積極的な動機付けは、当業者といえども甲1から得ることができたとはいえない。 また、そうであれば、次の事項a)及びb): ・a)PG5脂肪酸エステルを、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンといった微細なエマルジョン形態の化粧品組成物の製造に使用する際、当該PG5脂肪酸エステルの配合により、得られるエマルジョンの透明性や安定性が損なわれる場合があること; ・b)そのような場合、甲5発明中のニコチン酸アミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分が併せて配合されることにより、エマルジョン中の平均粒径をより小さくし、当該PG5脂肪酸エステルにより損なわれた透明性を向上させ得ること; のいずれも、甲5の記載からでは、当業者といえども予期し得なかったというほかはない。 イ) また、甲1及び甲3、甲4、甲6?甲9の記載事項については、[6-2]2.(1)(ii)のア)及びイ1)、イ2)、イ4)?イ7)で検討したとおりであって、これら甲1、甲3、甲4、甲6?甲9の記載を併せ考慮しても、甲5発明に係る美容液において、サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)、即ちPG10脂肪酸エステル、に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合することの具体的な動機付けは、当業者といえども得ることができたとはいえない。 また、そうであれば、次の事項a)及びb): ・a)PG5脂肪酸エステルを、ナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンといった微細なエマルジョン形態の化粧品組成物の製造に使用する際、当該PG5脂肪酸エステルの配合により、得られるエマルジョンの透明性や安定性が損なわれる場合があること; ・b)そのような場合、甲5発明中のニコチン酸アミドのようなビタミンB3、若しくはカフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される、いずれかのヒドロトロープ成分が併せて配合されることにより、エマルジョン中の平均粒径をより小さくし、当該PG5脂肪酸エステルにより損なわれた透明性を向上させ得ること; のいずれも、甲1、甲3、甲4、甲6?甲9の記載からでは、当業者といえども予期し得なかったというほかはない。 ウ) してみれば、相違点3について検討するまでもなく、(i)の甲5発明において、サンソフトQ-12Y(太陽化学社製、HLB=17.1)、即ちPG10脂肪酸エステル、に代えて、若しくは加えて、特にPG5脂肪酸エステルを併せ配合すること; 及び、そうすることで、得られるナノエマルジョン又はマイクロエマルジョンにおける平均粒度をより小さくし、PG5脂肪酸エステルの配合により損なわれ得る透明性の向上を見込むこと; は、甲5の記載、若しくは甲5の記載と甲1、甲3、甲4、甲6?甲9のいずれかの記載との組合せに基づいても、当業者にとり容易に想到し得たことであるということはできない。 エ) そして、[6-2]2.(1)(ii)エ)で述べたとおり、訂正発明1は、成分成分(a):「油」及び成分(d):「水」と共に、成分(b)として特に「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有する」特定の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」を含み、更に成分(c):「ビタミンB3、カフェイン、及び、テトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される」「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」を併せて配合してなるナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物とすることで、当該「ビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸から選択される」いずれかの「ヒドロトロープ」成分により、エマルジョン中の平均粒径をより小さくし、「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有する」「ポリグリセリル脂肪酸エステル」により損なわれ得る透明性や安定性を向上せしめることができる、という、本件特許明細書の実施例1?8に記載され、乙第1号証の比較試験により裏付けられた、甲1、3?9のいずれからも予期し得ない、格別の効果をもたらすものである。 オ) 以上の検討のとおりであるから、訂正発明1は、甲5に記載された発明に基づいて、若しくは、甲5に記載された発明と甲1、甲3?甲9のいずれかの記載との組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)訂正発明2?7、10、11、15?22について 訂正発明2?7、10、11、15?22は、いずれも訂正発明1を直接又は間接的に引用してなる発明である。 そうすると、これらの訂正発明についてはいずれも、訂正発明1に係る上記相違点2や3以外の相違点の有無並びにその容易想到性等について検討するまでもなく、訂正発明1について(1)(ii)で述べたのと同様の理由により、訂正発明2?7、10、11、15?22は、甲5に記載された発明であるとはいえないし、また、訂正発明2?7、10、11、15?22は、甲5に記載された発明に基づいて、若しくは甲5に記載された発明及び甲1、甲3?甲9のいずれかに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 (3)小活 以上、(1)?(2)で述べたとおりであるから、 ・本件訂正後の請求項1?3、5、10、15?18、21及び22に係る発明は、そのいずれも、甲第5号証に記載された発明ではなく、これらの請求項についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対しなされたものではない。 ・また、本件訂正後の請求項1?3、5、10、15?18、21及び22に係る発明は、そのいずれも、甲第5号証に記載された発明、並びに甲第5号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 ・また、本件訂正後の請求項4、6、7、11、19及び20に係る発明は、そのいずれも、甲第5号証に記載された発明、並びに甲第1、3、4、6?8号証の記載及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 したがって、申立人による申立理由2は、理由がない。 [6-4]申立理由3について(拡大先願) 1.甲2出願の当初明細書等に記載された発明 摘記甲2-7の「処方例4」の配合成分に「トリへチルヘキサン酸グリセリル」とあるのは、上記(甲2-6)の摘記事項からみて「トリエチルヘキサン酸グリセリル」の誤記であると認められる。 ここで、処方例4の配合成分である「トリエチルヘキサン酸グリセリル」及び「ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)」は、いずれも常温で液状の油分である。そして、「処方例4」における「ポリオキシエチレン(30)フィトステロール」は、摘記甲2-3からみて、液状の油分を配合する際に可溶化剤または乳化剤として作用する親水性界面活性剤(あるいは親水性活性剤)として処方されたものと認められる。 そして、摘記甲2-4より、液状油分を含有する場合には、親水性活性剤により可溶化又は乳化し、油滴の平均乳化粒子径を400nm以下にすることで安定性に優れたものとすることも開示されている。 そうすると、上の摘記甲2-1及び摘記甲2-3?甲2-7より、甲2出願の当初明細書等には次のとおりの発明が記載されていると認められる(以下、単に「甲2発明」ということがある)。 「トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 2.5質量% 4-メトキシサリチル酸カリウム 0.5質量% ニコチン酸アミド 4.0質量% 酢酸トコフェロール 0.05質量% グリセリン 1.0質量% PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル 5.0質量% ポリエチレングリコール1500 1.0質量% エリスリトール 1.0質量% トリメチルグリシン 2.5質量% エタノール 3.0質量% アルギン酸ナトリウム 0.02質量% ポリオキシエチレン(30)フィトステロール 0.2質量% ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.1質量% トリエチルヘキサン酸グリセリル 0.1質量% ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.1質量% クエン酸 適量 クエン酸ナトリウム 適量 メタリン酸ナトリウム 適量 サリチル酸 適量 香料 適量 染料 適量 イオン交換水 残余 を含み、 液状油分であるトリエチルヘキサン酸グリセリル及びラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)が、親水性活性剤であるポリオキシエチレン(30)フィトステロールによって可溶化又は乳化され、油滴の平均乳化粒子径が400nm以下である、安定性に優れたエッセンス(美容液)」 2.対比・判断 (1)訂正発明1について 甲2発明における「油滴の平均乳化粒子径が400nm以下である、安定性に優れたエッセンス(美容液)」は、訂正発明1における「ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物」に相当する。 甲2発明における「トリエチルヘキサン酸グリセリル」及び「ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)」は、訂正発明1における「(a)油」に相当する。 甲2発明における「ジイソステアリン酸ポリグリセリル」は、訂正発明1における「(b)ポリグリセリル脂肪酸エステル」に相当する。 甲2発明における「ニコチン酸アミド」は、[6-2]2.(1)(ii)イ3)で述べたとおり、訂正発明1における「(c)log Pが-0.7から6の間である・・・ヒドロトロープ」中の「ビタミンB3」に該当する。 甲2発明における「イオン交換水」は、本件特許発明1における「(d)水」に相当する。 また、甲2発明は訂正発明1の(a)?(d)に相当する化合物以外の成分も含むが、訂正発明1も「(a)少なくとも1種の油と・・・(d)水とを含み」(下線は合議体による。)と記載されており、(a)?(d)以外の成分を含むことを排除するものではないから、この点も相違点にはならない。 以上の点を踏まえると、訂正発明1と甲2発明とは、 「 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープであるビタミンB3と、 (d)水と、 を含む、化粧品組成物 」 の点で一致するが、次の点4): 4) 訂正発明1では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」するものと、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される」ものとを、組み合わせて含むのに対し、 甲2発明では、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」として「ポリグリセリル」部分のグリセロールの重合度が特定されていない「(B3)ジイソステアリン酸ポリグリセリル」と、成分(c)の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」として「ビタミンB3」とを組み合わせて含む点 において、相違する。 そうすると、訂正発明1は、甲2出願の当初明細書等に記載された発明と同一であるということはできない。 (2)訂正発明2?7、10、11、15?22について 訂正発明2?7、10、11、15?22は、いずれも訂正発明1を直接又は間接的に引用してなる発明であるから、これらの訂正発明についてはいずれも、訂正発明1に係る上記相違点4以外の相違点の有無等について検討するまでもなく、訂正発明1について上述したのと同様の理由により、甲2出願の当初明細書等に記載された発明と同一のものとはいえない。 (3)小活 以上、(1)?(2)で述べたとおりであるから、本件訂正後の請求項1、2、4、5、10、11、15?18、21及び22に係る発明は、そのいずれも、甲第2号証の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一の発明ではなく、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものとはいえない。 したがって、申立人による申立理由3は、理由がない。 [6-5]申立理由4について (1) 訂正発明1の成分(b)は、「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有し」という特定のグリセロール重合度の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」であるところ、当該「ポリグリセリル脂肪酸エステル」が界面活性剤であることは、例えば本件特許明細書の 「【0003】 例えば、特開平9-110635号公報は、界面活性剤としてのポリグリセリル脂肪酸エステルと、・・」(下線は合議体による) との記載や、そのHLBに関する 「【0064】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB(親水性親油性バランス)値は、8.0から14.0・・・であってもよい。・・・」(下線は当審による) との記載(HLBが界面活性剤の効果を表す指標の1つであることは、本件特許出願当時当業者にとり技術常識であったと認められる。(なお、この点については、要すれば、例えば 大木道則外3名編「化学大辞典」第1版第4刷(1996年4月1日発行) (株)東京化学同人 278頁「HLB」の項 を参照のこと。) (2) そして、一般に、界面活性剤とは、水に溶けて水の表面張力を低下させる作用、即ち「界面活性」作用を有する物質であって、化学構造上、親水基と炭素数約8以上の炭化水素基で構成される親油基(疎水基)とを有し、例えば水と油の界面に吸着して水溶液中でミセルを形成し(乳化)、油のような水に溶けにくい物質を溶かし込む(可溶化)性質を有するものであり(この点については、要すれば、例えば 大木道則外3名編「化学大辞典」第1版第4刷(1996年4月1日発行) (株)東京化学同人 395頁「界面活性剤」の項 を参照のこと)、このような化学構造及び性質を有する「界面活性剤」が、成分(a)である「油」(親水性基を有しておらず、水に溶けにくい)と化学構造上及び性質上区別されるものであることは、上で引用した本件特許明細書の記載や「化学大辞典」の記載にみられるような本件特許出願時の技術常識に基づいて、当業者が明確に把握し得たことである。 (3) 申立人は、申立理由4について、特許異議申立書において、本件特許明細書には成分(a)の具体例として「エステル油」が記載されている(【0035】、【0038】等)一方、成分(b)はエステルであるから、これら「少なくとも1種の油」と「少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル」とは重複する成分を含んでおり、よってポリグリセリル脂肪酸エステルが成分(a)、(b)のいずれに該当するのか明確でない旨主張している。 しかしながら、 ・申立人が引用する「エステル油」は、本件特許明細書の次の記載: 「 【0035】 (a)油は、植物起源油又は動物起源油、合成油、シリコーンオイル及び炭化水素油からなる群から選択されることが好ましい。 ・・・ 【0038】 合成油の例として挙げることができるのは、(例えばエステル油及び人工型トリグリセリドである。)」(下線は合議体による) からみて、「合成油」即ち成分(a)の「油」の例として挙げられているものであって、成分(b)の例として挙げられたものでないことは明らかであること; ・当該「エステル油」を含む成分(a)の「油」は、成分(b)のような「界面活性剤」とは、その化学構造中に「エステル」部分を有する点では共通しているものの、化学構造全体及び水溶性の有無等の諸性質において明らかに異なるものであることは、上の(2)で述べたとおり、本件特許出願時の技術常識に基づき、当業者にとり明確に把握し得たこと; から、申立人の上記主張は、本件特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識に基づくものとはいえず、採用できない。 (4) 以上(1)?(3)の検討のとおりであるから、訂正後の請求項1において、成分(b)の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」は、成分(a)の「油」とは明確に区別して把握できる成分であって、成分(a)、(b)のいずれに該当するのか明確でないと解釈される余地はない。 よって、訂正後の請求項1、並びに同請求項1を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2?7、10、11、15?22についての特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、申立人による申立理由4は、理由がない。 [6-6]申立理由5、6について 訂正後の請求項1?7、10、11、15?22に係る各発明においては、それら各発明における(b)成分の「ポリグリセリル脂肪酸エステル」が「5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有」するという特定のグリセロール重合数のもの(PG5脂肪酸エステル)に限定され、かつ、それと組合せて配合される(c)成分の「log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープ」が「ビタミンB3、カフェイン、及び、テトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される」ものに限定されている。 そして、これらの限定が付された訂正発明1?7、10、11、15?22については、もはや特許請求の範囲の記載がサポート要件に違反するものではなく、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に違反するものでもないことを、以下に説示する。 1.サポート要件について (1) 特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)(i) そこで、上の(1)の観点を踏まえつつ検討するに、本件特許明細書中には、訂正発明に関し、次の記載がある(下線は合議体による)。 ・ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物に関する。」 ・イ)「【背景技術】 ・・・ 【0003】 例えば、特開平9-110635号公報は、界面活性剤としてのポリグリセリル脂肪酸エステルと、C_(10)?C _(22)2-ヒドロキシ脂肪酸との組合せを使用して構成される微細なエマルションを開示している。更に、特開平11-71256号公報は、ポリグリセリル脂肪酸エステルとベタインとの組合せを使用して構成される微細なエマルションを開示している。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかし、ある種の非イオン性界面活性剤がナノエマルション又はマイクロエマルション等の微細なエマルションの製造に使用された場合、エマルションの透明な又はわずかに半透明な外観、及びエマルションの安定性が損なわれる。 【0007】 本発明の一目的は、上記の非イオン性界面活性剤が使用される場合であっても、エマルションの透明な又はわずかに半透明な、好ましくは透明な外観を伴う、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物を提供することである。」 ・ウ)「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の上記の目的は、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)好ましくは4から6個のグリセリン、より好ましくは5から6個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有する少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含む、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物により達成され得る。」 ・エ)「【0028】 鋭意検討の結果、本発明者らは、ナノエマルション又はマイクロエマルション等の微細なエマルションを形成することが難しかった非イオン性界面活性剤を使用する場合であっても、エマルションの透明な又はわずかに半透明な、好ましくは透明な外観を伴う、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物を提供することが可能であることを発見した。 【0029】 そのため、本発明は、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)好ましくは3から6個のグリセリン、より好ましくは5から6個のグリセリンに由来するポリグリセリル部分を有する少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含む、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物である。 【0030】 本発明の化粧品組成物は、ポリグリセリル脂肪酸エステルとヒドロトロープとの組合せのために直径がより小さい分散相を有する。したがって、該化粧品組成物は、透明な又はわずかに半透明な、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態であることが可能である。」 ・オ)「【0033】 [油] 本発明の化粧用組成物は、少なくとも1種の油を含む。本明細書において、「油」とは、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で、液体又はペーストの形態(非固体)にある、脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。油としては、化粧品中で一般に使用されているものを、単独で又はそれらを組み合わせて使用することができる。これらの油は揮発性であっても不揮発性であってもよく、好ましくは不揮発性である。 【0034】 油は、炭化水素油、シリコーンオイル等の非極性油;植物性油若しくは動物性油及びエステル油等の極性油;又はそれらの混合物であってもよい。 【0035】 (a)油は、植物起源油又は動物起源油、合成油、シリコーンオイル及び炭化水素油からなる群から選択されることが好ましい。 【0036】 植物性油の例として、挙げることができるのは、例えば、亜麻仁油、・・・、ピーナッツ油、及びそれらの混合物である。 【0037】 動物性油の例として挙げることができるのは、例えばスクアレン及びスクアランである。 【0038】 合成油の例として挙げることができるのは、例えばエステル油及び人工型トリグリセリドである。 【0039】 エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝状の、C1?C26脂肪族の、一酸又はポリ酸の液状エステル、及び飽和又は不飽和の、直鎖又は分枝状の、C1?C26脂肪族の、モノアルコール又はポリアルコールの液状エステルであり、該エステルの炭素原子の総数は10個以上である。」 ・・・ 【0043】 好ましいエステル油の例として挙げることができるのは、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、・・・、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、・・・、パルミチン酸エチルヘキシル、・・・、ミリスチン酸イソプロピル、・・・、セバシン酸ジエチル、及びそれらの混合物である。 ・・・ 【0045】 シリコーンオイルの例として挙げることができるのは、例えば、直鎖有機ポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン等;環状有機ポリシロキサン、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等;及びそれらの混合物である。 ・・・ 【0057】 炭化水素油の好ましい例として、例えば、直鎖又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、・・・を挙げることができる。 【0058】 (a)油は、室温で液体である炭化水素油から選ばれることが好ましい。 【0059】 (a)油が、分子量が600g/mol未満である油から選ばれることも好ましい。 【0060】 好ましくは、(a)油は、600g/mol未満等の低分子量を有し、1つ又は複数の短鎖炭化水素を有するエステル油又はエーテル油(例えばミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、・・・及びパルミチン酸エチルヘキシル、・・・)、1つ又は複数の短鎖アルキル基を有する炭化水素油・・・、オクチルドデカノール等の短鎖アルコール型油の中から選ばれる。 【0061】 本発明による化粧品組成物中の(a)油の量は制限されず、組成物の総質量に対して0.1から50質量%、好ましくは0.5から40質量%、より好ましくは1から30質量%の範囲であってもよい。 ・カ)「【0062】 [ポリグリセリル脂肪酸エステル] 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含む。単一の型のポリグリセリル脂肪酸エステルを使用してもよいが、2つ以上の異なる型のポリグリセリル脂肪酸エステルを組み合わせて使用することもできる。 【0063】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、2から10個のグリセロールに由来する、より好ましくは3から6個のグリセロールに由来する、更により好ましくは5又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有していることが好ましい。 【0064】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB(親水性親油性バランス)値は、8.0から14.0、好ましくは9.0から13.5、より好ましくは10.0から13.0であってもよい。2種以上のポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、そのHLB値は、全てのポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB値の質量平均により決定される。 【0065】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2から30個の炭素原子、好ましくは6から30個の炭素原子、より好ましくは8から30個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和の、好ましくは飽和の、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、カプリル酸及びミリスチン酸等の酸の、モノエステル、ジエステル及びトリエステルから選ぶことができる。 【0066】 ポリグリセリル脂肪酸エステルは、カプリン酸PG2、・・・、トリオレイン酸PG2、カプリン酸PG3、・・・、トリオレイン酸PG3、カプリン酸PG4、・・・、トリオレイン酸PG4、カプリン酸PG5、・・・、ラウリン酸PG5、・・・、オレイン酸PG5、・・・、トリオレイン酸PG5、カプリン酸PG6、・・・、トリオレイン酸PG6、カプリン酸PG10、・・・及びトリオレイン酸PG10からなる群から選ぶことができる。 【0067】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、以下から選ばれることが好ましい: - 4から6個のグリセロール単位を含むモノラウリン酸ポリグリセリル、 - 4から6個のグリセロール単位を含むモノ(イソ)ステアリン酸ポリグリセリル、 - 4から6個のグリセロール単位を含むモノオレイン酸ポリグリセリル、 - 4から6個のグリセロール単位を含むジオレイン酸ポリグリセリル。 【0068】 一実施形態では、(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの原料は、・・・ポリグリセリル脂肪酸エステルの混合物から選ばれてもよく、該混合物は好ましくは、5から6個のグリセリンからなるポリグリセリル部分を有するポリグリセリル脂肪酸エステルを30質量%以上含む。 ・・・ 【0070】 本発明による化粧品組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量は制限されず、組成物の総質量に対して0.1から30質量%、好ましくは0.5から25質量%、より好ましくは1から20質量%の範囲であってもよい。」 ・キ)「【0071】 [ヒドロトロープ] 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種のヒドロトロープを含む。単一の型のヒドロトロープを使用してもよいが、2つ以上の異なる型のヒドロトロープを組み合わせて使用することもできる。 【0072】 ヒドロトロープ(又はヒドロトロープ剤)は、脂肪族の分子構造によって、及び、水中溶解性の劣る有機分子の溶解性を劇的に向上させる能力によって特徴付けられる、別種のクラスの化合物であってもよい。多くのヒドロトロープは、イオン部分を伴う芳香族の構造を有し、一方でそれらのいくつかは線状アルキル鎖であり、下表に挙げているとおりである。ヒドロトロープは、界面活性剤に極めて似ており、表面張力を低下させる能力を有してはいるが、それらの疎水性単位が小さいこと、及び、アルキル鎖が比較的により短いことから、両親媒性物質の別のクラスとして区別される。 ・・・ 【0073】 ・・・。ヒドロトロープは、Lee J.ら、「Hydrotropic Solubilization of Paclitaxel:Analysis of Chemical Structures for Hydrotropic Property」、Pharmaceutical Research、第20巻、No.7、2003年;及びHodgon T.K.、Kaler E.W.、「Hydrotropic Solutions」、Current Opinion in Colloid and Interface Science、第12巻、121?128頁、2007年において見出すことができる。 【0074】 ・・・。化粧品中で好ましいヒドロトロープは、下に列挙しているとおりである: 【0075】【表1】 ![]() ・・・ 【0077】 ヒドロトロープを使用する利点は、安定な溶液を一旦得たならば、さらなる希釈は該溶液の安定性に影響しないという点である。これは、活性物の水溶解性を向上させるために一般に使用される有機溶媒とは非常に異なる。典型的に、有機溶媒と溶解済み活性物との水性希釈は、結晶化又は沈殿を生じさせる。 【0078】 (c)ヒドロトロープのlog Pは、-0.7から6、好ましくは-0.5から3であることが好ましい。 【0079】 ヒドロトロープの透明度を最良状態に至らせるために、配合剤がpHを調整することになる。 【0080】 log P値とは、オクタン-1-オール/水の、見かけの分配係数のベース10対数の値である。log P値は公知であり、オクタン-1-オール及び水の中の、(c)化合物の濃度を測定する標準試験により測定される。・・・ ・・・ 【0084】 (c)ヒドロトロープは、・・・、ビタミンB3及びその誘導体、好ましくはナイアシンアミド、キサンチン塩基、好ましくはカフェイン、・・・、及びジャスモン酸誘導体、好ましくはテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選ばれることが好ましい。以下で更に詳細に説明されるビタミンB3及びその誘導体、カフェイン及びジャスモン酸誘導体がより好ましい。 【0085】 (ビタミンB3及びその誘導体) ビタミンB3は、ビタミンPPとも呼ばれ、式 【0086】 【化2】 ![]() 【0087】 [式中、Rは、-CONH_(2)(ナイアシンアミド)、-COOH(ニコチン酸若しくはナイアシン)、又はCH_(2)OH(ニコチニルアルコール)、-CO-NH-CH_(2-)COOH(ニコチン尿酸)若しくはCO-NH-OH(ニコチニルヒドロキサム酸)であることができ、ナイアシンアミドが好ましい] の化合物である。 ・・・ 【0091】 (キサンチン塩基) ・・・ 【0092】 キサンチン塩基は、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、アセフィリン、及びそれらの混合物からなる群から選ばれることが好ましい。・・・ ・・・ 【0094】 (ジャスモン酸誘導体) ジャスモン酸誘導体は、式 【0095】 【化3】 ![]() 【0096】 (式中、R_(1)はCOOR_(3)基を表し、該R_(3)は水素原子、又は、任意選択で1つ又は複数の水素基で置換されているC_(1)?C_(4)アルキル基を示しており;R_(2)は、1から18個の炭素原子を有する直鎖の、又は3から18個の炭素原子を有する分枝状若しくは環状の、飽和又は不飽和の炭化水素基を表す) に相当するもの、並びに、それらの光学異性体、及び、対応する塩から選ばれる化合物である。 ・・・ 【0101】 ジャスモン酸誘導体として、以下の化合物を使用することが好ましい。 【0102】 【化4】 ![]() 【0103】 (c)ヒドロトロープの量は制限されず、組成物の総質量に対して0.01から20質量%、好ましくは0.1から15質量%、より好ましくは1から10質量%、更により好ましくは2から9質量%、より以上に好ましくは3から8質量%の範囲であってもよい。」 ・ク)「【0104】 [水] 本発明による化粧品組成物は水を含む。 【0105】 水の量は制限されず、組成物の総質量に対して40から95質量%、好ましくは50から90質量%、より好ましくは60から80質量%であってもよい。」 ・ケ)「【0106】 [追加の界面活性剤] 本発明による化粧品組成物は、上記の(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び/又は、少なくとも1種のイオン性界面活性剤を更に含んでもよい。・・・。イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ぶことができる。 【0107】 (非イオン性界面活性剤) 追加の非イオン性界面活性剤は、上記の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルと異なっている限りは、限定されない。 【0108】 追加の非イオン性界面活性剤のHLB値は、8.0から14.0、好ましくは9.0から13.5、より好ましくは10.0から13.0であってもよい。・・・ 【0109】 ・・・(b)非イオン性界面活性剤は、以下から選ばれてもよい: (1)シリコーン界面活性剤、 (2)温度45℃以下で流体である界面活性剤(1から60個のエチレンオキシド単位を含むポリエチレングリコール、・・・から選ばれる少なくとも1種のポリオールのエステルと、・・・脂肪酸のエステルから選ばれる)、 (3)脂肪酸又は脂肪アルコールの混合エステル、カルボン酸及びグリセロールの混合エステル、 (4)糖の脂肪酸エステル、及び糖の脂肪アルコールエーテル、 (5)温度45℃以下で固体である界面活性剤(グリセロールの脂肪エステル、・・・)、並びに (6)エチレンオキシド(A)とプロピレンオキシド(B)とのブロックコポリマー。 ・・・ 【0141】 (陽イオン性界面活性剤) 陽イオン性界面活性剤は限定されない。陽イオン性界面活性剤は、任意選択でポリオキシアルキレン化された第一級、第二級及び第三級脂肪アミン塩、第四級アンモニウム塩、及び、それらの混合物からなる群から選択してもよい。 ・・・ 【0167】 (陰イオン性界面活性剤) 陰イオン性界面活性剤は限定されない。陰イオン性界面活性剤は、詳細には、野菜起源タンパク質又は絹タンパク質の陰イオン性誘導体、リン酸塩及びアルキルリン酸塩、カルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アミノ酸誘導体、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、スルホン酸塩、イセチオン酸塩、タウリン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、ポリペプチド、アルキルポリグルコシドの陰イオン性誘導体、及びそれらの混合物から選ばれてもよい。 ・・・ 【0190】 (両性界面活性剤) 両性界面活性剤は限定されない。両性又は双性のイオン性界面活性剤は、例えば(非限定的一覧)、脂肪族の第二級又は第三級アミン、及び、任意選択で第四級化されたアミン誘導体であり、その中の脂肪族基は、線状又は分枝状の鎖であり、8から22個の炭素原子を含んで少なくとも1つの水に可溶化させる陰イオン基(例えば、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン又はホスホン酸イオン)を有する。 ・・・ 【0201】 (ポリオール) 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種のポリオールを更に含んでもよい。単一の型のポリオールを使用してもよいが、2つ以上の異なる型のポリオールを組み合わせて使用することもできる。 ・・・ 【0206】 (増粘剤) 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種の増粘剤を更に含んでもよい。単一の型の増粘剤を使用してもよいが、2つ以上の異なる型の増粘剤を組み合わせて使用することもできる。 ・・・ ・コ)「【0255】 [他の材料] 本発明による化粧用組成物はまた、以前から別のところで美白用組成物中又は着色用組成物中で公知である他の有効量の材料を含んでもよく、例えば一般的な各種補助剤、EDTA及びエチドロン酸等の金属イオン封鎖剤、UV遮断剤、前述のもの以外のシリコーン(アミン基を有するもの等)、防腐剤、ビタミン又はプロビタミン、例としては、パンテノール、不透明化剤、香料、植物抽出物、陽イオン性ポリマー等である。 【0256】 本発明による化粧品組成物は、少なくとも1種の有機溶媒を更に含んでもよい。そのため、有機溶媒は、好ましくは水に混和性である。有機溶媒として挙げることができるのは、例えばC1?C4アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール及びフェノキシエタノール;類似の製品;及びそれらの混合物がある。 ・・・ 」 ・サ)「【0258】 [製造及び性質] 本発明による化粧品組成物は、上記の必須材料及び任意材料を、従来技術の方法に従って混合することにより製造できる。従来技術の方法としては、高圧ホモジナイザーによる混合(高エネルギープロセス)を挙げることができる。代替法として、該化粧品組成物は、転相温度法(PIT)、転相濃度法(PIC)、自動乳化法等の低エネルギープロセスにより製造できる。 【0259】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの、(a)油に対する質量比は、0.3から6、好ましくは0.4から3、より好ましくは0.5から1.5であってもよい。詳細には、該(b)ポリグリセリル脂肪酸エステル/(a)油の質量比は、好ましくは1.1以下、例えば0.3から1.1、好ましくは0.4から1.1、より好ましくは0.5から1.1である。」 ・シ)「【0260】 本発明による化粧品組成物は、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態である。 【0261】 「マイクロエマルション」は、2つの方法、すなわち広義と狭義とで定義され得る。つまり、ある場合(「狭義のマイクロエマルション」)では、マイクロエマルションは、油性成分、水性成分及び界面活性剤の3つの材料を有する三成分系を有する、熱力学的に安定な等方性単一液相を指し、他の場合(「広義のマイクロエマルション」)では、マイクロエマルションは、熱力学的に不安定な典型的なエマルション系の中で、より小さい粒度に起因して透明な又は半透明な外観を呈するようなエマルションを付加的に含んでいる(友正慧ら、OilChemistry、第37巻、No.11(1988年)、48?53頁)。「マイクロエマルション」は、本明細書で使用する場合、「狭義のマイクロエマルション」、すなわち熱力学的に安定な等方性単一液相を指す。 ・・・ 【0263】 マイクロエマルションは、レーザー粒度計で測定したときの数平均直径が100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下の分散相であり得る。 【0264】 「ナノエマルション」は、本明細書では、寸法が350nm未満の分散相であることを特徴とするエマルションを意味し、該分散相は、分散相/連続相の界面において、任意選択で薄板型の液体結晶相を形成することができる(b)ポリグレセリル脂肪酸エステルのクラウン等により安定化されている。特定の不透明化剤が存在しない中で、ナノエマルションの透明性は小寸法の分散相から生じており、この小寸法は、機械的エネルギーの使用、とりわけ高圧ホモジナイザーの使用のために得られている。 ・・・ 【0266】 マイクロエマルションは、レーザー粒度計で測定したときの数平均直径が300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下の分散相であり得る。 【0267】 本発明による化粧品組成物は、O/W型のナノエマルション若しくはマイクロエマルション、W/O型のナノエマルション若しくはマイクロエマルション、又は、共連続エマルションの形態であってもよい。本発明による化粧品組成物は、O/W型のナノエマルション又はマイクロエマルションの形態であることが好ましい。 【0268】 本発明による化粧用組成物は、O/W型エマルションの形態であって、(a)油の数平均粒度が300nm以下、好ましくは10nmから150nm、より好ましくは20nmから140nmである、液滴の形態であることが好ましい。 【0269】 本発明による化粧品組成物は、透明な又はわずかに半透明な外観、好ましくは透明な外観を有していることが可能である。 【0270】 透明度は、吸収スペクトロメーターで、可視部において透過率を測定することにより測定することができる(例えばPerkin Elmer製のLambda 14スペクトロメーター、又は島津製作所製のUV2101 PCスペクトロメーター)。該測定は、非希釈組成物について行う。ブランクは、蒸留水を用いて測定する。 【0271】 本発明による化粧用組成物は、好ましくは、透明度が50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超である。」 ・ス)「【0272】 [方法及び使用] 本発明による化粧品組成物は、皮膚に、毛髪に、粘膜に、爪に、まつ毛に、眉毛に、又は頭皮に適用することによって、皮膚を、毛髪を、粘膜を、爪を、まつ毛を、眉毛を、及び/又は頭皮を手入れする化粧方法等の非治療的方法に使用することができる。 【0273】 本発明はまた、本発明による化粧品組成物の、体用の、及び/又は、顔面皮膚用の、及び/又は、粘膜用の、及び/又は、頭皮用の、及び/又は、毛髪用の、及び/又は、爪用の、及び/又は、まつ毛用の、及び/又は、眉毛用の、ケア製品としての若しくはケア製品中での、及び/又は、洗浄製品としての若しくは洗浄製品中での、及び/又は、メイクアップ製品としての若しくはメイクアップ製品中での、及び/又は、メイクアップ除去製品としての若しくはメイクアップ除去製品中での使用にも関する。」 ・セ)「【実施例】 ・・・ 【0277】 (粒度) 粒度は、VASCO-2(CORDOUAN TECHNOLOGIES)で、非希釈条件下で測定した。 【0278】 (透明度) 透明度は、V-550(JASCO)で、可視光透過率(400から800nmの間)の平均として、2mm幅のセルで測定した。 【0279】 (実施例1及び比較例1) 表1に示している実施例1及び比較例1による以下の組成物を、表1に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)パルミチン酸イソプロピルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とビタミンB3(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表1に示している成分の量の数値は、全て活性原料としての「質量%」に基づいている。 【0280】 ・・・ ![]() 【0281】 実施例1及び比較例1によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表2に示す。 【0282】 ・・・ ![]() 【0283】 (実施例2及び比較例2) 表3に示している実施例2及び比較例2による以下の組成物を、表3に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)パルミチン酸イソプロピルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とビタミンB3(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表3に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0284】 ・・・ ![]() 【0285】 実施例2及び比較例2によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表4に示す。 【0286】 ・・・ ![]() 【0287】 (実施例3及び比較例3) 表5に示している実施例3及び比較例3による以下の組成物を、表5に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)パルミチン酸エチルヘキシルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とビタミンB3(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表5に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0288】 ・・・ ![]() 【0289】 実施例3及び比較例3によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表6に示す。 【0290】 ・・・ ![]() 【0291】 (実施例4及び比較例4) 【0292】 表7に示している実施例4及び比較例4による以下の組成物を、表7に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)パルミチン酸エチルヘキシルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とビタミンB3(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表7に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0293】 ・・・ ![]() 【0294】 実施例4及び比較例4によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表8に示す。 【0295】 ・・・ ![]() 【0296】 (実施例5及び比較例5) 表9に示している実施例5及び比較例5による以下の組成物を、表9に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)ミリスチン酸イソプロピルとオレイン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とビタミンB3(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表9に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0297】 ・・・ ![]() 【0298】 実施例5及び比較例5によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表10に示す。 【0299】 ・・・ ![]() 【0300】 上記の結果から明らかなとおり、本発明によるO/W型エマルションの形態の化粧品組成物は、油滴がより小さく、したがって、より良好な透明度を伴っている透明な又はわずかに半透明な外観が、ビタミンB3の存在に起因してもたらされたことが判明した。 【0301】 (実施例6及び比較例6) 表11に示している実施例6及び比較例6による以下の組成物を、表11に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)パルミチン酸エチルヘキシルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とカフェイン(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表11に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0302】 ・・・ ![]() 【0303】 実施例6及び比較例6によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表12に示す。 【0304】 ・・・ ![]() 【0305】 上記の結果から明らかなとおり、本発明によるO/W型エマルションの形態の化粧品組成物は、油滴がより小さく、したがって、より良好な透明度を伴う透明な外観が、カフェインの存在に起因してもたらされたことが判明した。 【0306】 (実施例7及び比較例7) 表13に示している実施例7及び比較例7による以下の組成物を、表13に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)ミリスチン酸イソプロピルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とメキゾリルSBO(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表13に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づく。 【0307】 ・・・ ![]() 【0308】 実施例7及び比較例7によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表14に示す。 【0309】 ・・・ ![]() 【0310】 (実施例8及び比較例8) 表15に示している実施例8及び比較例8による以下の組成物を、表15に示す成分を以下のとおり混合して調製した:(1)ミリスチン酸イソプロピルとラウリン酸ポリグリセリル-5とを混合して油相を形成する;(2)該油相をおよそ75℃まで加熱する;(3)水とメキゾリルSBO(使用する場合)とを混合して水相を形成する;及び(4)該水相を該油相中へ加え、続いてこれらを混合してO/W型エマルションを得る。表15に示している成分の量の数値は、全て活性原料として「質量%」に基づいている。 【0311】 ・・・ ![]() 【0312】 実施例8及び比較例8によって得たO/W型エマルションの、外観、油滴の粒度、及び透明度を、表16に示す。 【0313】 ・・・ ![]() 【0314】 上記の結果から明らかなとおり、本発明によるO/W型エマルションの形態の化粧品組成物は油滴がより小さく、したがって、より良好な透明度を伴う透明な外観が、メキゾリルSBO(ジャスミノール)の存在に起因してもたらされたことが判明した。 」 (ii) そして、これらの(i)で摘示した本件特許明細書の記載から、訂正発明1について、次の事項A)?D)を把握することができる。 A) 化粧品分野等において、ナノエマルション又はマイクロエマルションのような微細なエマルション組成物は、その透明又は半透明な外観のため、興味深く採用され得るところ、ある種の非イオン性界面活性剤をそのような微細なエマルションの製造に使用した場合、エマルションの透明又は半透明な外観、及びエマルションの安定性が損なわれることがあり(摘記ア、摘記イの【0006】)、そのような非イオン性界面活性剤に該当するものとして訂正発明1の成分(b):PG5脂肪酸エステルのようなポリグリセリル脂肪酸エステルが挙げられる(摘記イの【0003】、摘記セの比較例1?8)こと; 及び、かかる技術背景を踏まえ、訂正発明1により解決されるべき技術課題(目的)は、そのような非イオン性界面活性剤が使用される場合であっても、エマルションの透明又は半透明な外観を伴う、ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の安定な化粧品組成物を提供することにあるといえること(摘記イの【0007】) B) 上記技術課題の解決手段として、訂正発明1に規定される、成分(a)?(d)を組み合わせて含むナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物が提供されるものであり、当該化粧品組成物は、上記ポリグリセリル脂肪酸エステル(訂正発明1における成分(b)のPG5脂肪酸エステル)と特定のヒドロトロープ(訂正発明1における成分(c)のビタミンB3、カフェイン、及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択されるいずれか)との組合せにより、得られるエマルションの液滴の直径をより小さくすることができ、又はわずかに半透明な外観のナノエマルション又はマイクロエマルションとすることができること(摘記ウ、エ;特に摘記エの【0028】) C) かかる訂正発明1規定の成分(a)?(d)を含むエマルション形態の組成物の例として、成分(a):パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル及びミリスチン酸イソプロピル中のいずれかのエステル油、及び成分(d):水と共に、成分(b)及び成分(c)との組合せ例として、成分(b)であるPG5脂肪酸エステルに対し、同成分(c)であるビタミンB3、カフェイン、メキゾリルSBO(テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム)のいずれかを組み合わせて配合し製造された、実施例1?8のエマルションは、成分(c)のいずれをも含まず透明度が低い(白色の)比較例1?8のエマルションに比して、液滴の粒度(粒径)がより小さく、また透明又は半透明のエマルションとして提供され得るものであることが、実証されていること(摘記セ) D) そして、これら実施例1?8の製造例、並びにエマルションとしての高い安定性及び透明性に係る性状を実証した試験結果例に係る記載を踏まえつつ、また、本件特許明細書中の成分(a):油として採用し得る他の成分に関する記載(摘記オ)や成分(a)?(d)について採用し得る化粧品組成物中の各配合割合(摘記オの【0061】、摘記カの【0070】、摘記キの【0103】、摘記クの【0105】、摘記サの【0259】)、及び、成分(a)?(d)以外の追加し得る任意成分に関する記載(摘記ケ?コ)の記載に基づいて、成分(b):PG5脂肪酸エステルに対する成分(c)の組合せ配合による液滴の粒径の低下作用及び外観の透明化作用を損なわないよう留意しつつ、(a)の種類や成分(a)?(d)の配合割合等を変更したり、化粧品分野において慣用の任意成分を併せて配合したりすることを検討し行うことで、これら実施例1?8のエマルション以外にも、それら実施例1?8のエマルションと同様の、より小さい粒度(粒径)及び透明性を具備するナノエマルション又はマイクロエマルションもまた、当業者であれば許容される試行錯誤の範囲内で得ることができるであろうこと (iii) そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載をみた当業者であれば、訂正発明1に係る、特定のポリグリセリル脂肪酸エステルである成分(b)のPG5脂肪酸エステル、及び特定のヒドロトロープである成分(c)のビタミンB3、カフェイン及びテトラヒドロジャスモン酸ナトリウムから選択するいずれかとの組合せを含む、成分(a)?(d)の組成を含有するナノエマルション又はマイクロエマルション形態の化粧品組成物の提供により、上記成分(b)により透明性及び安定性が損なわれたエマルションにおいて、上記成分(c)の組合せ配合により、液滴の粒径をより小さくし外観を透明又は半透明に向上させることができ、以て、(ii)A)の技術課題を解決することができるものと、認識することができるといえる。 (3) したがって、訂正発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲のものであるといえる。 また、 ・訂正発明2、3に規定される成分(a)の例については、本件特許明細書の例えば【0035】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明4に規定される成分(a)の分子量については、例えば同【0059】?【0060】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明5に規定される成分(a)の組成物の総質量に対する含有割合については、例えば同【0061】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明6、7、10、11に規定される成分(b)のHLB、グリセロール単位数、組成物の総質量に対する含有割合、並びに成分(b)に対する質量比については、同【0064】?【0070】(摘記カ)及び同【0259】(摘記セ)に; ・訂正発明15に規定される成分(c)の組成物の総質量に対する含有割合については、例えば同【0103】(摘記キ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明16?18に規定される任意成分である、成分(b)以外の界面活性剤、ポリオール並びに増粘剤については、同【0103】、【0106】?【0190】、【0201】並びに【0206】(摘記ケ)に; ・訂正発明19に規定されるエマルション形態や成分(a)の液的の数平均粒度については、同【0266】や【0268】(摘記シ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明20に規定される透明度については。同【0269】?【0271】(摘記シ)や実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明21、22に規定される方法及び使用については、同【0272】?【0273】(摘記ス)に; それぞれ記載されていることから、いずれも本件特許明細書中の記載により裏付けられた事項であるといえることを併せ踏まえれば、訂正発明1を直接又は間接的に引用する訂正発明2?7、10、11、15?20の各化粧品組成物、並びに、これら訂正発明1?7、10、11、15?20のいずれかを引用する訂正発明21に係る非治療的方法並びに訂正発明22に係る使用もまた、いずれも、訂正発明1について上述したのと同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載をみた当業者が上記(ii)A)の技術課題を解決し得るものと認識するものであるといえ、よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。 (4) 以上述べたとおりであるから、訂正発明1?7、10、11、15?22は、いずれも、特許法第36条第6項第1号に規定される要件に適合するものである。 2.実施可能要件について (1)(i) 訂正発明1について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしている; とは、 本件特許明細書の発明の詳細な説明において、当業者が訂正発明1を実施することができる程度の明確かつ十分な記載がなされている; ということであり、これは、いいかえれば、 当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、訂正発明1に係る「ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物」をつくることができ、かつ使用することができる; といえることに他ならない。 (ii) そして、本件特許明細書中には、訂正発明に関し、1.(2)(i)で摘記したア?セの事項が記載されている。 そして、1.(2)(ii)で述べたとおり、これらの本件特許明細書の記載をみた当業者は、次の事項C)?D): C) 訂正発明1規定の成分(a)?(d)を含むエマルション形態の組成物の例として、成分(a):パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル及びミリスチン酸イソプロピル中のいずれかのエステル油、及び成分(d):水と共に、成分(b)及び成分(c)との組合せ例として、成分(b)であるPG5脂肪酸エステルに対し、同成分(c)であるビタミンB3、カフェイン、メキゾリルSBO(テトラヒドロジャスモン酸ナトリウム)のいずれかを組み合わせて配合し製造された、実施例1?8のエマルションは、成分(c)のいずれをも含まず透明度が低い(白色の)比較例1?8のエマルションに比して、液滴の粒度(粒径)がより小さく、また透明又は半透明のエマルションとして提供され得るものであること(摘記セ) D) そして、これら実施例1?8の製造例、並びにエマルションとしての高い安定性及び透明性に係る性状を実証した試験結果例に係る記載を踏まえつつ、また、本件特許明細書中の成分(a):油として採用し得る他の成分に関する記載(摘記オ)や成分(a)?(d)について採用し得る化粧品組成物中の各配合割合(摘記オの【0061】、摘記カの【0070】、摘記キの【0103】、摘記クの【0105】、摘記サの【0259】)、及び、成分(a)?(d)以外の追加し得る任意成分に関する記載(摘記ケ?コ)の記載に基づいて、成分(b):PG5脂肪酸エステルに対する成分(c)の組合せ配合による液滴の粒径の低下作用及び外観の透明化作用を損なわないよう留意しつつ、(a)の種類や成分(a)?(d)の配合割合等を変更したり、化粧品分野において慣用の任意成分を併せて配合したりすることを検討し行うことで、これら実施例1?8のエマルション以外にも、それら実施例1?8のエマルションと同様の、より小さい粒度(粒径)及び透明性を具備するナノエマルション又はマイクロエマルションもまた、当業者であれば許容される試行錯誤の範囲内で得ることができるであろうこと を把握し得るものである。 (iii) そうすると、それら上述の摘記ア?セを含む本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づけば、訂正発明1に係る実施例1?8のエマルション、並びに、それら実施例1?8のエマルション以外で、それら実施例1?8のエマルションと同様の、より小さい粒度(粒径)及び透明性を具備するナノエマルション又はマイクロエマルションは、そのいずれも、当業者であれば許容される試行錯誤の範囲内で作ることができ、また使用することができるものといえる。 (3) したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、訂正発明1について当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 また、 ・訂正発明2、3に規定される成分(a)の例については、本件特許明細書の例えば【0035】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明4に規定される成分(a)の分子量については、例えば同【0059】?【0060】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明5に規定される成分(a)の組成物の総質量に対する含有割合については、例えば同【0061】(摘記オ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明6、7、10、11に規定される成分(b)のHLB、グリセロール単位数、組成物の総質量に対する含有割合、並びに成分(b)に対する質量比については、同【0064】?【0070】(摘記カ)及び同【0259】(摘記セ)に; ・訂正発明15に規定される成分(c)の組成物の総質量に対する含有割合については、例えば同【0103】(摘記キ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明16?18に規定される任意成分である、成分(b)以外の界面活性剤、ポリオール並びに増粘剤については、同【0103】、【0106】?【0190】、【0201】並びに【0206】(摘記ケ)に; ・訂正発明19に規定されるエマルション形態や成分(a)の液的の数平均粒度については、同【0266】や【0268】(摘記シ)及び実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明20に規定される透明度については。同【0269】?【0271】(摘記シ)や実施例1?8(摘記セ)に; ・訂正発明21、22に規定される方法及び使用については、同【0272】?【0273】(摘記ス)に; それぞれ記載されていることから、それら訂正発明2?7、10、11、15?22についてもまた、訂正発明1について上述したのと同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明にはそれらの発明について当業者が実施することができるといえる程度の明確かつ十分な記載がなされているといえる。 (4) 以上述べたとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、訂正発明1?7、10、11、15?22について、特許法第36条第4項第1号に規定される要件に適合するものである。 3.申立理由5、6についての小括 以上、1.及び2.で述べたとおりであるから、本件訂正後の請求項1、並びに同請求項1を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項2?7、10、11、15?22についての特許は、特許法第36条第6項第1項又は同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、申立人による申立理由5、6は、いずれも理由がない。 [6-7]申立理由7について 申立理由7は、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当する、というものである。 しかし、本件特許に係る出願は外国語書面出願(特許法第36条の2第1項の規定による特許出願)であるから、同法第113条第1号は特許異議申立理由とならない。 したがって、申立理由7は失当であり、採用できない。 [6-8]取消理由1?4について 取消理由通知書1又は2に記載された取消理由の概要は、[第5]1.(1)?(4)で取消理由1?4として挙げたとおりである。 そして、[6-2]で検討し説示したとおり、訂正発明1?7、10、11及び15?22のいずれも、甲1に記載された発明でなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、甲1を主引例とする新規性否定及び進歩性否定に係る取消理由1及び取消理由2は、訂正発明1?7、10、11及び15?22のいずれに対しても理由がない。 また、[6-4]で検討し説示したとおり、訂正発明1?7、10、11及び15?22のいずれも、甲2出願の当初明細書等に記載され出願公開された甲2発明(先願発明)と同一の発明ではないから、当該甲2発明に係る取消理由3は、訂正発明1?7、10、11及び15?22のいずれに対しても理由がない。 さらに、[6-6]1.で検討し説示したとおり、訂正発明1?7、10、11及び15?22は、いずれも本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許請求の範囲の記載のサポート要件違反に係る取消理由4は、理由がない。 以上のとおり、取消理由1?4は、そのいずれも理由がない。 [6-9]むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、並びに、申立人による特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1?7、10、11及び15?22に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1?7、10、11及び15?22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項8、9及び12?14に係る特許に対する特許異議申立てについては、本件訂正により請求項8、9、12?14が削除されたことから、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ナノエマルション又はマイクロエマルションの形態の化粧品組成物であって、 (a)少なくとも1種の油と、 (b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、 (c)log Pが-0.7から6の間である少なくとも1種のヒドロトロープと、 (d)水と を含み、 前記(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが5個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有し、 前記(c)ヒドロトロープが、ビタミンB3、カフェイン、及び、テトラヒドロジャスモン酸ナトリウムからなる群から選択される、化粧品組成物。 【請求項2】 (a)油が、植物起源油又は動物起源油、合成油、シリコーンオイル及び炭化水素油からなる群から選択される、請求項1に記載の化粧品組成物。 【請求項3】 (a)油が、室温で液体の形態の炭化水素油から選ばれる、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。 【請求項4】 (a)油が、分子量が600g/mol未満である油から選ばれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項5】 (a)油の量が、組成物の総質量に対して0.1から50質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項6】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、8.0から14.0のHLB値を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項7】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、5個のグリセロール単位を含むモノラウリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノ(イソ)ステアリン酸ポリグリセリル、5個のグリセロール単位を含むモノオレイン酸ポリグリセリル、及び5個のグリセロール単位を含むジオレイン酸ポリグリセリルから選ばれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量が、組成物の総質量に対して0.1から25質量%の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項11】 (b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの、(a)油に対する質量比が、0.3から6である、請求項1から7及び10のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項12】(削除) 【請求項13】(削除) 【請求項14】(削除) 【請求項15】 (c)ヒドロトロープの量が、組成物の総質量に対して0.01から20質量%の範囲である、請求項1から7、10及び11のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項16】 前記(b)とは異なる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び/又は、少なくとも1種のイオン性界面活性剤を更に含む、請求項1から7、10、11及び15のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項17】 少なくとも1種のポリオールを更に含む、請求項1から7、10、11、15及び16のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項18】 少なくとも1種の増粘剤を更に含む、請求項1から7、10、11及び15から17のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項19】 O/W型エマルションの形態であり、(a)油が、数平均粒度が300nm以下である液滴の形態である、請求項1から7、10、11及び15から18のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項20】 透明度が、50%超である、請求項1から7、10、11及び15から19のいずれか一項に記載の化粧品組成物。 【請求項21】 皮膚を、毛髪を、粘膜を、爪を、まつ毛を、眉毛を、及び/又は、頭皮を手入れするための非治療的方法であって、請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の化粧品組成物が、皮膚に、毛髪に、粘膜に、爪に、まつ毛に、眉毛に、又は、頭皮に適用されることを特徴とする、非治療的方法。 【請求項22】 請求項1から7、10、11及び15から20のいずれか一項に記載の化粧品組成物の使用であって、体用の、及び/又は、顔面皮膚用の、及び/又は、粘膜用の、及び/又は、頭皮用の、及び/又は、毛髪用の、及び/又は、爪用の、及び/又は、まつ毛用の、及び/又は、眉毛用の、ケア製品としての若しくはケア製品中での、及び/又は、洗浄製品としての若しくは洗浄製品中での、及び/又は、メイクアップ製品としての若しくはメイクアップ製品中での、及び/又は、メイクアップ除去製品としての若しくはメイクアップ除去製品中での、使用。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-11-19 |
出願番号 | 特願2012-280293(P2012-280293) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K) P 1 651・ 161- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) P 1 651・ 113- YAA (A61K) P 1 651・ 55- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松元 麻紀子 |
特許庁審判長 |
關 政立 |
特許庁審判官 |
大久保 元浩 吉田 知美 |
登録日 | 2017-12-01 |
登録番号 | 特許第6250277号(P6250277) |
権利者 | ロレアル |
発明の名称 | 化粧品組成物 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |