• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1358638
異議申立番号 異議2019-700809  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-09 
確定日 2019-12-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6496981号発明「シーラントフィルム、並びにそれを用いたフィルム積層体及びスタンディングパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6496981号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6496981号の請求項1?7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月28日に特許出願され、平成31年3月22日にその特許権の設定登録がされた(平成31年4月10日に特許掲載公報の発行。)。
その後、令和1年10月9日に、請求項1?7に係る特許について、特許異議申立人成田隆臣(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第6496981号の請求項1?7の特許に係る発明(以下、「本件発明1?7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30?90質量%、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン10?30質量%及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン0?60質量%を含むラミネート層と、
石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むが、高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレンを1?40質量%含まないシール層と、
からなり、
バイオマス度が25%以上であり、
前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905?0.930g/cm^(3)であることを特徴とする、シーラントフィルム。
【請求項2】
前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体であって、前記α-オレフィンは、炭素数4又は6の化合物若しくはこれらの混合物であり、前記植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレンは、密度が0.945?0.965g/cm^(3)であることを特徴とする、請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905?0.935g/cm^(3)であり、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体であって、前記α-オレフィンは、炭素数4、6又は8の化合物若しくはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記ラミネート層の厚みが60?150μmであり、前記シール層の厚みが20?50μmであることを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
Tダイ共押出法によって形成されることを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のシーラントフィルムと、基材フィルムとを含み、前記シーラントフィルムのラミネート層側に前記基材フィルムを積層させたことを特徴とする、フィルム積層体。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルム積層体を用いて形成した、バイオマス度が25%以上であることを特徴とする、スタンディングパウチ。

3.申立理由の概要
申立人は、以下の理由により、本件発明に係る特許を取り消すべきである旨を主張している。
《理由》(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)
本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法113条第2号に該当し、取り消すべきである。


《引用例一覧》
甲1.特開平11-179859号公報
甲2.特開2012-251006号公報
甲3.杉山英路,外1名,“地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」”,コンバーテック,2009年8月,p.63-67
甲4.特開2005-246878号公報

ここで、甲1?4は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第4号証である。

4.甲1?4の記載
甲1?4の各々に記載された事項を甲1記載事項?甲4記載事項という。
(1)甲1記載事項
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐熱層(a)とヒートシール層(b)とが積層されたポリオレフィンフィルムであって、該耐熱層(a)が、密度0.940g/cm^(3)以上のポリエチレン樹脂100重量部及び密度0.918?0.935g/cm^(3)の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂10?40重量部からなり、該ヒートシール層(b)が、密度0.918?0.935g/cm^(3)の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂100重量部及び密度0.915g/cm^(3)以下の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂20?100重量部からなり、かつ、フィルム全体の層比が、耐熱層(a):ヒートシール層(b)=6:4?9:1であることを特徴とするポリオレフィンフィルム。」
イ.「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動包装適性に優れたポリオレフィンフィルムに関し、さらに詳しくは、低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを有し、廃棄性に優れたポリオレフィンフィルムに関する。」
ウ.「【0006】しかしながら、低温でシールできるポリエチレンフィルム単体をシール加工すると、ポリエチレンフィルムがシール熱で溶けるため、シール部の外観が阻害されたり、溶けた樹脂が製品に付着する等の不具合が起こることがあった。また、ポリエチレンフィルム単体を、印刷機や自動包装機等で加工する場合は、フィルム自体にある程度の「こし」の強さが必要となる。この「こし」は、密度の高いポリエチレンの使用によって得られるので、余り密度を高くすると低温でのシールが難しくなり、充填適性が低下するという問題点があった。
【0007】上述のように、従来の自動包装用フィルムは、より低温でのシールを可能にして充填適性を向上させると、フィルム自体の「こし」が弱くなって、印刷、製袋等の加工適性が低下するという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、良好な低温シール性と適度の「こし」の強さを付与することによって、充填適性及び加工適性に優れ、しかも廃棄物として廃棄されても処理が容易なポリオレフィンフィルムを提供することにある。」
エ.「【0010】以下、本発明について説明する。本発明のポリオレフィンフィルムは、耐熱層(a)は、ポリエチレン樹脂(P)及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(I)から形成され、シール層(b)は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(I)及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(以下、LLDPEという)(II)から形成される。
【0011】上記ポリエチレン樹脂(P)は、密度が小さくなると十分な加工適性が得られなくなるので、密度0.940g/cm^(3)以上に制限される。
【0012】上記LLDPE(I)は、密度が0.918?0.935g/cm^(3)である。密度が、0.918g/cm^(3)未満では、フィルムにべたつきが生じたり、シール強度が低下し、0.935g/cm^(3)を超えると十分な低温シールが得られなくなる。
【0013】上記LLDPE(II)は、密度が0.915g/cm^(3)未満に制限され、密度0.885g/cm^(3)以上が好ましい。密度が、0.915g/cm^(3)を超えると十分な低温シールが得られなくなり、0.885g/cm^(3)未満では、フィルムにべたつきが生じたり、十分なシール強度を発現しないことがある。」
オ.「【0015】上記耐熱層(a)において、上記ポリエチレン樹脂(P)に上記LLDPE(I)を混合することによって、ポリオレフィンフィルム層間の強度低下を防止し、密度差によるカールを抑制することができる。
【0016】上記耐熱層(a)におけるLLDPE(I)の配合量は、ポリエチレン樹脂(P)100重量部に対して10?40重量部である。LLDPE(I)の配合量が、上記範囲を外れると、得られるポリオレフィンフィルムにカールが発生することがある。
【0017】上記シール層(b)において、LLDPE(II)の配合量は、LLDPE(I)100重量部に対して20?100重量部である。LLDPE(II)の配合量が、上記範囲を外れると、得られるポリオレフィンフィルムにカールが発生することがある。」
カ.「【0021】本発明のポリオレフィンフィルムの厚さは、加工適性、強度、内容物の量等から、40?80μmが好ましい。厚さが、40μm未満ではシール強度が不足することがあり、80μmを超えると「こし」が強くなりすぎて、ピンホールが発生し易くなる。」
キ.「【0023】上記ポリオレフィンフィルムを得るための成形方法としては、従来のインフレーション法、Tダイ法等が使用できるが、ポリオレフィンフィルムの縦、横方向のバランスを保つためには、インフレーション法が好ましい。また、積層方法については、特に制限されないが、例えば共押出法を採用することによって、一度に耐熱層(a)とヒートシール層(b)との積層体を得ることができる。」
ク.「【0024】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)耐熱層(a)として、HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)100重量部、及び、LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)20重量部を混合して樹脂組成物(A1)を得た。また、シール層(b)として、重合活性点が複数ある触媒を用いて重合されたLLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)100重量部、及び、重合活性点が単一である触媒を用いて重合されたLLDPE(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1840」、密度=0.908g/cm^(3)、MI=1.0g/10分、Mw/Mn=2.8)45重量部を混合して樹脂組成物(B1)を得た。上記樹脂組成物(A1)及び(B1)を、多層インフレーション押出機を用いて共押出し、厚み50μm、層比(a:b)が7:3の2層ポリオレフィンフィルムを得た。」
ケ.「【0032】
【発明の効果】本発明のポリオレフィンフィルムは、上述の構成であり、良好な低温シール性と適度の「こし」の強さを有するので、充填適性及び加工適性に優れ、しかも廃棄物として廃棄されても処理が容易である。」

(2)甲2記載事項
ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなる樹脂フィルムであって、
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを前記樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなり、前記樹脂組成物が、0.91?0.96g/cm^(3)の密度を有する、樹脂フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、1?30g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記バイオマス由来のエチレンを、前記樹脂組成物全体に対して5?95質量%含んでなる、請求項1または2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記モノマーが、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンをさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記モノマーが、バイオマス由来のα-オレフィンをさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、化石燃料由来のエチレンと、化石燃料由来のエチレンおよび/またはα-オレフィンとを含むモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでなる、請求項1?5のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、5?90質量%の前記バイオマス由来のポリオレフィンと、10?95質量%の前記化石燃料由来のポリオレフィンとを含んでなる、請求項6に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記α-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、またはオクテンである、請求項4?7のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレンである、請求項1?8のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記樹脂組成物が押出成形されてなる、請求項1?9のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
前記押出成形が、Tダイ法またはインフレーション法により行われる、請求項10に記載の樹脂フィルム。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか一項に記載の樹脂フィルムからなる、包装製品。
【請求項13】
請求項1?11のいずれか一項に記載の樹脂フィルムからなる、シート成形品。」
イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリオレフィンを含む樹脂フィルムに関し、より詳細には、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなるポリオレフィン樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。
【0003】
・・・
【0004】
ここで、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂等、様々な種類が用いられている。特に、ポリエチレンは、フィルム、シート、ボトル等に成形され、包装材等の種々の用途に供されており、世界中での使用量が多い。そのため、従来の化石燃料由来のポリエチレンを用いることは環境負荷が大きい。
【0005】
そのため、ポリエチレンの製造にバイオマス由来の原料を用いて、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。例えば、現在までに、ポリオレフィン樹脂の原料となるエチレンやブチレンを、再生可能な天然原料から製造することが研究されてきた(例えば、特許文献1を参照)。」
ウ.「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂フィルムが、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーが重合してなるバイオマス由来のポリオレフィンを含んでなる樹脂組成物からなり、バイオマス由来のエチレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上含んでなることで、カーボンニュートラルなポリオレフィン樹脂フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリオレフィン樹脂フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリオレフィン樹脂フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないため、従来のポリオレフィン樹脂フィルムを代替することができる。」

(3)甲3記載事項
ア.「ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換えることは、植物の成育時のCO_(2)吸収と燃焼時の排出が同一(カーボンニュートラル)になり、地球上のCO_(2)を増やさないので地球環境にやさしく、また石油資源利用の節約にも貢献する。」(63頁左欄下から8?末行)
イ.「3.サトウキビ由来ポリエチレンの同等性
当社とBraskem社は共同でトリウンフォ工場内の研究開発センターで図2にある試験設備により同等性を評価した。
(1)エチレン
試験設備にバイオマス由来エタノールを導入し、出来上がったエチレンの成分分析を行った結果、従来の石油由来エチレンとの品質同等性を確認した。
(2)ポリエチレン
試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同1条件でポリエチレン重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた。」(63頁右欄4?末行)
ウ.「4.サトウキビ由来ポリエチレンの生産概要と生産予定グレード
サトウキビ由来ポリエチレンはBraskem社のトリウンフォ工場で、2011年から高密度ポリエチレン(HDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を合わせて年間20万トン生産される計画である。」(64頁左欄1行?中央欄4行)
エ.「

」(64頁)
オ.「

」(64頁)

(4)甲4記載事項
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性が高く、透明性に優れ、且つヒートシール性に優れるエチレン系樹脂積層体に関する。」
イ.「【0004】
一方、近年石油資源の有効利用あるいはコストダウンの観点からプラスチックの使用量を抑制しようという動きが進み、包装用フィルムの薄膜化の要求が高まりつつある。フィルムの機械的強度を維持しつつ薄膜化を行うためには、フィルムの剛性を向上させることが必要とされている。例えば、プラスチック製ブロー成形ボトルに代わる包装容器として、スタンディングパウチの使用が増加しつつある。このスタンディングパウチとは、剛性が高いフィルム(いわゆる「腰があるフィルム」)により自立性のある袋を作製し、これに水や洗剤等の液体を充填したものである。このスタンディングパウチ用のフィルムにおいては高剛性が求められるとともに、包装製品の外観の点から高透明性も同時に要求されている。」
ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、剛性が高く、透明性に優れ、且つヒートシール性に優れるエチレン系樹脂積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような状況に鑑み、上記課題の解決のため鋭意検討の結果、特定の直鎖状低密度ポリエチレンに特定の高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを特定の比率で配合した樹脂組成物の層と、特定の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを特定の比率で配合した樹脂組成物の層からなる積層体を形成することにより、剛性が高く、透明性に優れ、且つヒートシール性に優れるエチレン系樹脂積層体が得られること見い出し、本発明を完成するに至った。」
エ.「【0041】
本発明の樹脂組成物(1)の層の厚みは特に制限はないが、積層体の強度や経済性等の観点から20?160μmが好ましい。また、樹脂組成物(2)の層の厚みは特に制限はないが、積層体の強度や経済性等の観点から20?160μmが好ましい。」
オ.「【0058】
実施例1
LLDPE-3 80重量%とLDPE(東ソー社製 ペトロセン173、密度924kg/m^(3)、MFR0.3g/10分、以下「LDPE-1」と略す)20重量%を配合した樹脂組成物(2)を積層体の一層目とし、LLDPE-1 70重量%とLDPE-1 20重量%とHDPE(東ソー社製 ニポロンハード7300A、密度951kg/m^(3)、MFR0.05g/10分、以下「HDPE-1」と略す)10重量%を配合した樹脂組成物(1)を2層目とし、LLDPE-2 80重量%とLDPE-1 20重量%を配合した熱可塑性樹脂組成物を3層目として各々使用し、〔積層体の成形方法〕に示した方法により積層体を得た。」
カ.「【0073】
比較例2
樹脂組成物(1)をLLDPE-1 90重量%とHDPE-1 10重量%を配合した樹脂組成物に代えた以外は実施例1と同様な方法で積層体を得た。」

5.当審の判断
(1)甲1発明
甲1記載事項(上記4.(1)ア.?ケ.を参照)からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
《甲1発明》
耐熱層(a)とヒートシール層(b)とが積層されたポリオレフィンフィルムであって、
該耐熱層(a)が、HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)100重量部、及び、LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)20重量部からなり、
該ヒートシール層(b)が、重合活性点が複数ある触媒を用いて重合されたLLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)100重量部、及び、重合活性点が単一である触媒を用いて重合されたLLDPE(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1840」、密度=0.908g/cm^(3)、MI=1.0g/10分、Mw/Mn=2.8)45重量部からなる、低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを有し、廃棄性に優れた、ポリオレフィンフィルム。

(2)本件発明1と甲1発明との対比、一致点、相違点
甲1発明の「耐熱層(a)」、「ヒートシール層(b)」、「低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを有し、廃棄性に優れた、ポリオレフィンフィルム」は、各々、本件発明1の「ラミネート層」、「シール層」、「シーラントフィルム」に相当する。
甲1発明の「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)」、「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」、「LLDPE(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1840」、密度=0.908g/cm^(3)、MI=1.0g/10分、Mw/Mn=2.8)」は、甲1に、植物由来である旨は記載されていないから、これらの樹脂は、いずれも石油由来の樹脂であるといえる。
そして、「HDPE」、「LLDPE」は、各々、「高密度ポリエチレン」、「直鎖状低密度ポリエチレン」を意味することが技術常識であることを踏まえると、甲1発明における「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)」、「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」は、各々、本件発明1の「植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン」、「石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン」に相当する。
また、甲1発明の「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」及び「LLDPE(ダウケミカル社製「アフィニティ PL1840」、密度=0.908g/cm^(3)、MI=1.0g/10分、Mw/Mn=2.8)」について、甲1には、高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレンを1?40質量%含む旨は記載されていないから、これらは、本件発明1の「石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むが、高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレンを1?40質量%含まない」ものに相当する、
してみると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むラミネート層と、
石油由来および/または植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含むが、高圧ラジカル重合法により得られた低密度ポリエチレンを1?40質量%含まないシール層と、
からなる、シーラントフィルム。

《相違点》
本件発明1は、ラミネート層が、「(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン30?90質量%」、(b)植物由来および/または石油由来の高密度ポリエチレン「10?30質量%」及び(c)石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン「0?60質量%」を含むものであり、かつ、「バイオマス度が25%以上であり」、「前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンは、密度が0.905?0.930g/cm^(3)である」のに対し、甲1発明は、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含んでおらず、耐熱層(a)(本件発明1の「ラミネート層」に相当)が、「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)100重量部、及び、LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)20重量部からな」るものである点。

(3)相違点の判断
まず、甲2記載事項(上記4.(2)ア.?ウ.を参照。)及び甲3記載事項(上記4.(3)ア.?オ.を参照)からみて、本件特許の出願前に、石油由来のポリエチレンとの互換性がある、植物由来のポリエチレンが既に存在し、石油由来のポリエチレンに代えてこれを利用することは、周知の技術であったと解されるから、甲1発明における「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」を、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレンに置換すること自体は、当業者が容易に想到し得たことといえる。
しかしながら、甲1発明における「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)」、及び、「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」の配合割合について、甲1の段落【0006】には「・・・また、ポリエチレンフィルム単体を、印刷機や自動包装機等で加工する場合は、フィルム自体にある程度の「こし」の強さが必要となる。この「こし」は、密度の高いポリエチレンの使用によって得られるので、余り密度を高くすると低温でのシールが難しくなり、充填適性が低下するという問題点があった。」と記載され、【0007】には「上述のように、従来の自動包装用フィルムは、より低温でのシールを可能にして充填適性を向上させると、フィルム自体の「こし」が弱くなって、印刷、製袋等の加工適性が低下するという問題点があった。」と記載され、【0016】には「上記耐熱層(a)におけるLLDPE(I)の配合量は、ポリエチレン樹脂(P)100重量部に対して10?40重量部である。LLDPE(I)の配合量が、上記範囲を外れると、得られるポリオレフィンフィルムにカールが発生することがある。」(上記4.(1)オ.参照)と記載されているように、甲1には、上記配合割合の取り得る数値範囲は、「こし」の強さを有するために必要な量の高密度ポリエチレンが配合されることを前提とした上で、石油由来の高密度ポリエチレン100重量部に対し石油由来の直鎖状低密度ポリエチレン10?40重量部、すなわち、石油由来の直鎖状低密度ポリエチレンが9(=10/110)質量%?29(=40/140)質量%であって、石油由来の高密度ポリエチレンが71(=100-29)質量%?91(=100-9)質量%という配合割合(以下、「甲1配合割合」という。)とすることが記載されていると解すべきである。
ゆえに、甲1発明における「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)」の配合割合を、本件発明1のように10?30質量%に変更することは、記載されておらず、これを示唆する記載もないばかりではなく、そのような変更には阻害事由があるというべきである。
また、上記変更を動機付ける記載やこれを示唆する記載は、甲2?4にもない。
したがって、上記相違点に係る甲1発明の構成を、本件発明1の構成に変更することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

申立人は、申立書15頁11?21行において、「甲第1号証の【発明の詳細な説明】の記載によれば、引用発明は、低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを有するポリオレフィンフィルムを提供するものであり(【0001】段落)、【0008】段落)、この「こし」は、高密度ポリエチレン(HDPE)の使用によって得られること(【0012】段落)、低温ヒートシール性は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)によって得られること(【0006】段落)が理解できる。そのため、具体的な用途等に応じて、低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを考慮しつつ、両成分の配合割合を変更することは当業者が適宜行うことである。」と主張(以下、「主張1」という。)する一方で、「甲第1号証では、ラミネート層である耐熱層(a)に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を混合する理由は、ポリオレフィンフィルム層間の強度低下を防止し、密度差によるカールを抑制するためである(【0015】段落)。甲第1号証には、配合量の範囲を外れると、得られるポリオレフィンフィルムにカールが発生することがあるとの記載もある(【0016】段落)が、ラミネート層中の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が所定の配合量より多い場合には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から構成されるヒートシール層の密度の差は小さなり(当審注:原文は「小さなり」であるが、「小さくなり」と記載すべきものを誤記したものと認める。)、従ってカールの懸念が減少することは、当業者であれば直ちに理解できるから、当業者が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の配合量を増やす方向について検討することを阻害するものではない。」とも主張(以下、「主張2」という。)する。
しかしながら、上記したように、甲1には、「こし」の強さを有するために必要な量の高密度ポリエチレンが配合されることを前提とした上で、上記甲1配合割合とすることが記載されていると解すべきであるから、たとえ、上記主張2にあるように、「ラミネート層中の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が所定の配合量より多い場合には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から構成されるヒートシール層の密度の差は小さくなり、従ってカールの懸念が減少することは、当業者であれば直ちに理解できる」としても、このことは、甲1発明における「HDPE(旭化成社製「サンテック S360」、密度=0.954g/cm^(3)、MI=1.0g/10分)」、及び、「LLDPE(出光石油化学社製「モアテック 0238CM」、密度=0.920g/cm^(3)、MI=2.0g/10分、Mw/Mn=3.2)」の配合割合を、上記甲1配合割合の範囲を超えて変更する理由にはならないし、上記主張1にあるように「具体的な用途等に応じて、低温ヒートシール性と適度な「こし」の強さを考慮しつつ、両成分の配合割合を変更する」としても、その変更は、上記甲1配合割合の範囲内で行われるものと解するのが相当である。
したがって、上記主張1及び主張2は、当を得たものではないから、採用できない。

以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲1?甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(4)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲1?甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(5)小括
以上のとおり、本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-18 
出願番号 特願2014-69368(P2014-69368)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 渡邊 豊英
佐々木 正章
登録日 2019-03-22 
登録番号 特許第6496981号(P6496981)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 シーラントフィルム、並びにそれを用いたフィルム積層体及びスタンディングパウチ  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ