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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1358649
異議申立番号 異議2019-700244  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-01 
確定日 2020-01-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6401015号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6401015号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6401015号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年10月31日に出願され、平成30年9月14日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成31年4月1日に特許異議申立人井澤幹(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年7月12日に取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、令和元年9月13日に意見書を提出した。

2 本件発明
特許第6401015号の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
圧縮機(11)と、室外熱交換器(13)と、膨張機構(14)と、室内熱交換器(15)とを接続した冷媒回路(RC)と、
上記室内熱交換器(15)に空気を送る室内ファン(20)および上記室外熱交換器(13)に空気を送る室外ファン(10)と、
室内空気の湿度を検出する湿度センサ(H)と、
除湿運転モード時において、冷房負荷が予め定められた設定値以上であるときは冷房運転を行うと共に、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う一方、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるときは除湿運転を行う除湿運転モード制御部(100b)と
を備え、
上記除湿運転モード制御部(100b)は、
上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値以上であるときに上記除湿運転を行った後、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値よりも小さくなると、上記除湿運転を冷房運転に切り換えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
上記除湿運転時に、上記室内熱交換器(15)の液入口(151)の近くの一部が蒸発域(V)となり、この蒸発域(V)の下流側が過熱域(SH)となり、かつ、上記蒸発域(V)の大きさが除湿負荷に応じて変化するように、上記圧縮機(11)および膨張機構(14)を制御する除湿制御部(100c)を有することを特徴とする空気調和機。」

3 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
当審において、請求項1及び2に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2008-175490号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2013-221671号公報(以下「甲2」という。)
甲第4号証:特開2013-221669号公報(以下「甲4」という。)

(2)甲各号証の記載
ア 甲1には、図面とともに以下の記載がある(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば室内等の冷房・除湿運転及び暖房運転を行うヒートポンプ式の空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内等の空調対象空間内を空調することにより、快適な環境を提供するヒートポンプ式の空気調和装置(以下、「空調機」と呼ぶ)が広く知られている。・・・
上述した空調機の冷房運転時には、空調機に指示された設定温度Tsと、吸込空気温度Tiとの温度差ΔT(ΔT=Ti-Ts)が所定値ts以下(ΔT≦ts)になると、冷房運転を不要とするサーモオフが成立する。・・・
【0003】
サーモオフの成立は、実質的に空調対象空間内の空気温度(室内温度)と略一致している吸込空気温度Tiが空調目標の空気温度まで低下したことを意味しているので、制御部がこれ以上の冷房運転は不要と判断して圧縮機等の運転を停止する。こうして停止した冷房運転は、吸込空気温度センサにより継続して検出される吸込空気温度Tiが上昇し、温度差ΔTが所定値tsより大きくなるサーモオンの成立により再開される。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る空気調和装置(以下、「空調機」と呼ぶ)の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図5に示す空調機1は、室内機ユニット10と、室外機ユニット20と、制御部となる制御装置30とを具備して構成される。・・・
【0014】
室内機ユニット10は・・・室内ファン12が設けられている。
また、室内機ユニット10は・・・室内から導入した室内気の相対湿度を検出する相対湿度センサ15とを備えている。
【0015】
室内気温度センサ13は、室内機ユニット10の吸込口近傍に設置される温度検出手段であり、その検出値は吸込空気温度Tiとして制御装置30に入力される。
室内熱交温度センサ14は、室内熱交換器11の適所に密着して設置され、その検出値は室内熱交温度Teとして制御装置30に入力される。
相対湿度センサ15は、室内機ユニット10の吸込口近傍に設置される湿度検出手段であり、その検出値は室内気相対湿度Hiとして制御装置30に入力される。
・・・
【0016】
室外機ユニット20の筐体内部には・・・室外気ファン25とが設けられている。
この結果、室外機ユニット20内の圧縮機21、四方弁22、室外熱交換器23及び膨張弁24は、室内機ユニット10内の室内熱交換器11と冷媒配管2で連結されることにより、ヒートポンプ式空調機の冷凍サイクルを形成している。
【0017】
上述した空調機1の運転制御は、主要部が室内機ユニット10内に設置されている制御装置30により実施される。」
「【図5】


「【0021】
図1に示すモード選択過程のフローチャートにおいて、ステップS1で空調機1の運転開始指令が出され、続くステップS2のサーモオン成立により、空調機1の運転が開始される。このとき、空調機1の運転が冷房運転である場合、以下のモード選択過程により、除湿運転モードが選択実施される。
最初に、ステップS3で「除湿運転移行判断#1」を実施する。このステップでは、室内気温度センサ13で検出した吸込空気温度Tiと、リモコン40等により使用者が設定して空調機1に指示された設定温度Tsとの温度差ΔT(ΔT=Ti-Ts)が、所定値ts以下(ΔT≦ts)であるか否かの判断を行うものであり、従来と同様のサーモオフが成立するか否かの判断となる。なお、この場合の温度差ΔTは、たとえば1℃程度の小さな値であり、従って、冷房運転による室内の温度低下が所望の設定温度Tsまたはその近傍に到達したか否かの判断がなされる。
【0022】
ステップS3の判断により、温度差ΔTが所定値tsより大きいNOの場合には、室内温度を意味する吸込空気温度Tiが設定温度Tsより高温であるためサーモオフは成立せず、従って、さらに室内温度を低下させるために冷房運転が継続される。
しかし、ステップ3の判断により、温度差ΔTが所定値ts以下となるYESの場合には、室内温度を意味する吸込空気温度Tiが設定温度Tsと略一致しているので、これ以上の冷房運転を継続する必要はないと考えられる。従って、次のステップS4に進むことにより、「除湿運転移行判断#2」を実施する。
【0023】
ステップS4では、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、そして、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断する。
この結果、露点温度Tdまたは相対湿度Hiの所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断されるYESの場合には、次のステップS5に進んで除湿運転モードが選択実施される。この除湿運転モードでは、圧縮機21の運転回転数を設定可能な最小値まで低下させるとともに、室内ファン12の運転回転数を設定可能な最小値まで低下させることにより、室内風量も設定可能な最小値に変更する。
【0024】
こうして除湿運転モードが選択実施されると、図2のフローチャートに示した除湿運転モードの終了制御が行われる。
しかし、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)という所定条件に加えて、相対湿度Hiが所定値hiより大きい(Hi>hi)という所定条件がともに満たされていないと判断されるNOの場合には、すなわち、露点温度Tdが所定値tdより小さく(Td<td)、かつ、相対湿度Hiが所定値hi以下(Hi≦hi)と小さい場合には、冷房運転が継続される。」
「【0027】
次に、上述した除湿運転モードの終了制御について、図2に示したフローチャートに基づいて説明する。
・・・
【0029】
ステップS12の除湿運転終了判断では、実質的に上述したステップS4(図1参照)の除湿運転移行判断#2と同じ判断を繰り返す。すなわち、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、そして、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断する。
この結果、露点温度Tdまたは相対湿度Hiの所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断されるYESの場合には、次のステップS13に進んで冷房運転復帰判断を実施する。
【0030】
しかし、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)という所定条件に加えて、相対湿度Hiが所定値hiより大きい(Hi>hi)という所定条件がともに満たされていないと判断されるNOの場合には、すなわち、露点温度Tdが所定値tdより小さく(Td<td)、かつ、相対湿度Hiが所定値hi以下(Hi≦hi)と小さい場合には、ステップS17に進む。このステップS17では、ステップS5で変更した室内ファン12の運転回転数を当初の設定値(室内風量の設定風量)に戻した後、ステップS2のサーモオン成立に進んで冷房運転に復帰する。
【0031】
ステップS13の冷房運転復帰判断では、実質的に上述したステップS3(図1参照)の除湿運転移行判断#1と同じ判断を、温度差ΔTの設定値tsをts′に変更して繰り返す。すなわち、吸込空気温度Tiと設定温度Tsとの温度差ΔT(ΔT=Ti-Ts)が、所定値ts′以下(ΔT≦ts′)であるか否かの判断を行って冷房運転に復帰するか否かを判断する。この場合、温度差ΔTの設定値ts′は、たとえば設定値tsの1℃より若干大きな3℃程度の小さな値とされ、従って、除湿運転中に室温が上がってきて、再び冷房能力が出る冷房運転に戻る必要があるか否かの判断がなされる。
【0032】
ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′より大きいNOの場合には、室内温度を意味する吸込空気温度Tiが設定温度Tsより高温であるためサーモオフは成立せず、従って、さらに室内温度を低下させるために冷房運転が継続される。すなわち、ステップS17に進み、ステップS5で変更した室内ファン12の運転回転数を当初の設定値(室内風量の設定風量)に戻した後、さらに、ステップS2のサーモオン成立に進んで冷房運転に復帰する。
しかし、ステップ13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下となるYESの場合には、室内温度を意味する吸込空気温度Tiが設定温度Tsと略一致しているので、これ以上の冷房運転を継続する必要はないと考えられる。従って、次のステップS14に進むことにより、サーモオフが成立するか否かを判断するサーモオフ判定が実施される。
【0033】
ステップS14において、サーモオフが成立するYESの場合には、次のステップS15に進んで次回運転モード判断を実施する。この次回運転モード判断は、実質的にステップS12の除湿運転終了判断と同じことを繰り返すものであり、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、そして、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断する。
【0034】
この結果、露点温度Tdまたは相対湿度Hiの所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断されるYESの場合には、図1のステップS5へ進んで除湿運転モードの選択実施が選択される。
しかし、露点温度Tdが所定値tdより小さく(Td<td)、かつ、相対湿度Hiが所定値hi以下(Hi≦hi)と小さい場合には、ステップS17に進んでステップS5で変更した室内ファン12の運転回転数を当初の設定値(室内風量の設定風量)に戻した後、ステップS2のサーモオン成立に進む冷房運転の復帰が選択される。」




以上によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「圧縮機21と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、室内熱交換器11とを冷媒配管2で連結した冷凍サイクルと、
室内ファン12および室外気ファン25と、
室内気の相対湿度を検出する相対湿度センサ15と、
空調機1の運転制御を実施する制御装置30とを備え、
ステップS5で除湿運転モードが選択実施される場合において、
ステップS12の除湿運転終了判断では、露点温度Tdが所定値tdより小さく(Td<td)、かつ、相対湿度Hiが所定値hi以下(Hi≦hi)と小さい場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進んで冷房運転に復帰し、
ステップS13の冷房運転復帰判断では、吸込空気温度Tiと設定温度Tsとの温度差ΔT(ΔT=Ti-Ts)が、所定値ts′以下(ΔT≦ts′)であるか否かの判断を行い、温度差ΔTが所定値ts′より大きい場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進んで冷房運転に復帰し、
ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下となる場合には、ステップS14に進んでサーモオフ判定が実施され、
ステップS14において、サーモオフが成立する場合には、ステップS15に進んで次回運転モード判断を実施し、
ステップS15において、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断し、所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断される場合には、ステップS5へ進んで除湿運転モードの選択実施が選択され、Td<tdかつHi≦hiの場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進む冷房運転の復帰が選択される
空調機1。」

(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「圧縮機21と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、室内熱交換器11とを冷媒配管2で連結した冷凍サイクル」は、本件発明1の「圧縮機(11)と、室外熱交換器(13)と、膨張機構(14)と、室内熱交換器(15)とを接続した冷媒回路(RC)」に相当する。
甲1発明の「室内ファン12」、「室外気ファン25」は、それぞれ、本件発明1の「室内熱交換器(15)に空気を送る室内ファン(20)」、「室外熱交換器(13)に空気を送る室外ファン(10)」に相当する。
甲1発明の「室内気の相対湿度を検出する相対湿度センサ15」は、本件発明1の「室内空気の湿度を検出する湿度センサ(H)」に相当する。
甲1発明の「除湿運転モードが選択実施される場合」は、本件発明1の「除湿運転モード時」に相当する。
甲1発明のステップS13の判断で「温度差ΔTが所定値ts′より大きい場合」に「ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進んで冷房運転に復帰」することは、本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値以上であるとき」に「冷房運転を行う」ことに相当する。
なお、特許権者は、甲1発明は、ステップS12のYES判定とステップS13のNO判定のアンド条件を満たしたときに冷房運転に復帰するのに対し、本件発明1は、冷房負荷が予め定められた設定値以上であるときには、湿度の大小に関係なく冷房運転を行う点で相違する旨を主張する(意見書6?7ページ)。しかし、甲1発明は、ステップS12のYES判定とステップS13のNO判定のアンド条件を満たしたときにのみ冷房運転に復帰するのではなく、ステップS12でNO判定のときも冷房運転に復帰する。結局のところ、甲1発明は、「温度差ΔTが所定値ts′より大きい場合」は、湿度の大小に関係なく冷房運転を行うことになるから、上記特許権者の主張は採用できない。

甲1発明の「ステップ13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下となる場合」は、本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さ」い場合に相当する。
甲1発明の「ステップS15において、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断」することと、本件発明1の「上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいとき」及び「上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるとき」を判断することとは、「少なくとも、湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるか」を判断する点で共通する。
そうすると、甲1発明の
「ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下となる場合には、ステップS14に進んでサーモオフ判定が実施され、
ステップS14において、サーモオフが成立する場合には、ステップS15に進んで次回運転モード判断を実施し、
ステップS15において、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断し、所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断される場合には、ステップS5へ進んで除湿運転モードの選択実施が選択され、Td<tdかつHi≦hiの場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進む冷房運転の復帰が選択される」ことと、本件発明1の
「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う一方、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるときは除湿運転を行う」こと、及び、
「上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値以上であるときに上記除湿運転を行った後、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値よりも小さくなると、上記除湿運転を冷房運転に切り換える」こととは、
「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さい場合に、少なくとも、湿度センサにより検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるかを判断して、冷房運転を行うか除湿運転を行うかを決定する」点で共通する。
甲1発明の「制御装置30」は、除湿運転モードでの運転制御も行うものであるから、本件発明1の「除湿運転モード制御部」に相当する。
よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
圧縮機と、室外熱交換器と、膨張機構と、室内熱交換器とを接続した冷媒回路と、
上記室内熱交換器に空気を送る室内ファンおよび上記室外熱交換器に空気を送る室外ファンと、
室内空気の湿度を検出する湿度センサと、
除湿運転モード時において、冷房負荷が予め定められた設定値以上であるときは冷房運転を行うと共に、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さい場合に、少なくとも、湿度センサにより検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるかを判断して、冷房運転を行うか除湿運転を行うかを決定する除湿運転モード制御部と
を備える空気調和機。

[相違点1]
除湿運転モード制御部の機能について、本件発明1は、「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う一方、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値以上であるときは除湿運転を行う」とともに、「上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値以上であるときに上記除湿運転を行った後、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が上記しきい値よりも小さくなると、上記除湿運転を冷房運転に切り換える」ものであるのに対し、甲1発明は、「ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下となる場合には、ステップS14に進んでサーモオフ判定が実施され」、「サーモオフが成立する場合」には、「ステップS15において、露点温度Tdが所定値td以上(Td≧td)になっているか、相対湿度Hiが所定値hiより大きいか(Hi>hi)という二つの所定条件について各々判断し、所定条件のうち、少なくとも一方の条件が満たされていると判断される場合には、ステップS5へ進んで除湿運転モードの選択実施が選択され、Td<tdかつHi≦hiの場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進む冷房運転の復帰が選択される」ものである点。

イ 相違点についての判断
相違点1に係る本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う」動作について検討する。
甲1発明において、冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、湿度センサにより検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときに関する動作としては、「ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下」となり、「ステップS14において、サーモオフが成立」し、「ステップS15において」「Td<tdかつHi≦hiの場合には、ステップS17からステップS2のサーモオン成立に進む冷房運転の復帰が選択される」という動作がある。
ここで、「ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下」となり、「ステップS15において」「Hi≦hiの場合」は、本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいとき」に相当するといえる。
しかし、甲1発明において、ステップS15に至るには、ステップS14でサーモオフが成立することが前提となる。
ところで、甲1には、「サーモオフ」とは、空調機に指示された設定温度Tsと、吸込空気温度Tiとの温度差ΔT(ΔT=Ti-Ts)が所定値ts以下(ΔT≦ts)になり、冷房運転を不要と判断して圧縮機等の運転を停止することであり、こうして停止した冷房運転は、継続して検出される吸込空気温度Tiが上昇し、温度差ΔTが所定値tsより大きくなるサーモオンの成立により再開されることが記載されている(【0002】、【0003】)。
そうすると、甲1発明において、ステップS14でサーモオフが成立する場合には、サーモオフにより冷房運転が停止され、温度差ΔTが所定値tsより大きくなるサーモオンの成立まで冷房運転は再開されないと認められるから、「ステップS13の判断により、温度差ΔTが所定値ts′以下」となり、「ステップS15において」「Hi≦hi」となった時点においては、冷房運転はサーモオフにより停止していると認められる。そして、ステップS14でサーモオフが成立する場合に冷房運転を行うようにする動機付けは認められない。
よって、甲1発明は、露点温度Tdによる判断が含まれていることを別としても、相違点1に係る本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う」ものではないし、甲1の記載を踏まえても、そのようにすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲2に「空気調和機1では、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20が、液冷媒が蒸発する蒸発域と蒸発域の下流側の過熱域を有するが、この蒸発域の範囲が、負荷に応じて変化するように、圧縮機10及び膨張弁13が制御される。」(【0034】)と記載され、甲4に「空気調和機1では、所定の除湿運転モードにおいて、補助熱交換器20が、液冷媒が蒸発する蒸発域と蒸発域の下流側の過熱域を有するが、この蒸発域の範囲が、負荷に応じて変化するように、圧縮機10及び膨張弁13が制御される。」(【0036】)と記載されていて、本件発明2の制御に係る技術事項が開示されているものの、いずれも、上記相違点1に係る本件発明1の構成については示唆するところがない。

なお、申立人は、相違点1に係る本件発明1の「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う」ことは、甲1の、ステップ3で温度差ΔTが所定値ts以下と判断した場合はステップS4に進み、ステップS4で露点温度Tdが所定値tdより小さく(Td<td)、かつ、相対湿度Hiが所定値hi以下(Hi≦hi)と小さい場合には、冷房運転が継続されることの記載(【0022】?【0024】)に基づいて、当業者が容易に想到し得た旨を主張する。
しかし、本件発明1は、「除湿運転モード制御部」について、「除湿運転モード時において」、「冷房負荷が予め定められた設定値よりも小さく、かつ、上記湿度センサ(H)により検出された室内空気の湿度が予め定められたしきい値よりも小さいときは、冷房運転を行う」ことが特定されているものである。これに対し、上記甲1のステップS3、ステップS4は、除湿運転モードに移行する前のステップであるから、「除湿運転モード時」における動作とは異なるものである。そして、除湿運転モード以外での動作を「除湿運転モード時」における動作として採用することが容易であるとする根拠もないから、上記申立人の主張は採用できない。
申立人は、甲1のステップS3は除湿運転を行うための判定であるから、本件発明1における「除湿運転モード時」に相当する期間に行われていることになるとも主張するが、本件明細書には、リモコンで除湿運転モードが選択された場合の実施形態が記載されているのであって、除湿運転を行うための判定をしていれば「除湿運転モード時」に相当することが記載されているわけではないから、上記申立人の主張は採用できない。

したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲1、2、4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲1、2、4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに技術的に限定したものである。
よって、本件発明1と同様の理由で、本件発明2は、甲1発明及び甲1、2、4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、前記甲1、2、4に加えて、甲第3号証:特開2001-65947号公報(以下「甲3」という。)を提出し、本件発明1は、甲1発明及び甲2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲1発明及び甲2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
しかし、甲3には、空気調和機において、湿度センサによって検出された湿度が湿度設定値以上の値になると除湿モードに切り換えることが記載されているものの、前記相違点1に係る本件発明1の構成については示唆するところがない。
よって、上記3で検討したことと同様に、本件発明1は、甲1発明及び甲2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2?4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 むすび
したがって、請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-12-26 
出願番号 特願2014-222618(P2014-222618)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 紀本 孝
山崎 勝司
登録日 2018-09-14 
登録番号 特許第6401015号(P6401015)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 磯江 悦子  
代理人 山崎 敏行  
代理人 山田 卓二  

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