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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  G06Q
管理番号 1358667
異議申立番号 異議2019-700672  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-27 
確定日 2020-01-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6474183号発明「広告システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6474183号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6474183号の請求項1?2に係る特許についての出願(特願2018-225560号)は、平成27年5月25日の特許出願(特願2015-105647号)の一部を平成30年5月15日に新たな特許出願としたもの(特願2018-93913号)の一部をさらに平成30年11月30日に新たな特許出願としたものであり、平成31年2月8日にその特許権の設定登録がされ、平成31年2月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和元年8月27日に特許異議申立人株式会社PKBソリューション(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。
なお、この特許異議の申立ての副本の送付を受けた特許権者より、令和元年10月21日に上申書が提出されている。

2 本件特許発明
特許第6474183号の請求項1?2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
携帯端末のユーザーが参加者となるイベントを管理する広告管理サーバを備えた広告システムで行われる広告方法であって、
イベントの対象となる旨の表示と情報コードとを有する広告(以下、イベント広告という)が所定の複数箇所に設置され、該情報コードに個々のイベント広告の設置場所に割り当てられた場所コード、広告コード及び広告管理サーバのURL情報が含まれ、
広告管理サーバに、場所コードとそれに対応する設置場所の情報、広告コードとそれに対応する広告情報、イベントの開催期間、イベントの特典、特典の付与ルールが登録され、
イベント広告の情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によって広告管理サーバがアクセスされた場合に、
広告管理サーバが、そのアクセスの有効無効を判断し、
アクセスを有効と判断した場合に、そのアクセスを携帯端末ごとにイベント広告の設置場所と関連づけると共に該アクセスを特典の付与対象として登録し、
特典の付与ルールに基づき、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を決定し、
決定した特典の情報を携帯端末に送信し、
イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数をイベント広告の設置場所ごとに集計し、出力する広告方法。
【請求項2】
携帯端末のユーザーが参加者となるイベントを管理する広告管理サーバを備え、
イベントの対象となる旨の表示と情報コードを有する広告(以下、イベント広告という)が所定の複数箇所に設置され、
該情報コードに個々のイベント広告の設置場所に割り当てられた場所コード、広告コード及び広告管理サーバのURL情報が含まれ、
該情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によって広告管理サーバがアクセスされることを契機として該アクセスに対する特典を広告管理サーバが携帯端末に通知する広告システムであって、
広告管理サーバが、場所コードとそれに対応するイベント広告の設置場所の情報、広告コードとそれに対応する広告情報、イベントの開催期間、イベントの特典、特典の付与ルールを記憶する機能、
イベント広告の情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によって広告管理サーバがアクセスされた場合にそのアクセスの有効無効を判断する機能、
アクセスを有効と判断した場合に、そのアクセスを携帯端末ごとに場所コードと関連づけ、特典の付与対象として登録する機能、
特典の付与ルールに基づき、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を決定する機能、
決定された特典の情報を該携帯端末に送信する機能、及び
イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数をイベント広告の場所コードごとに集計し、集計結果を出力する機能
を有する広告システム。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、甲第2号証ないし甲第5号証及び甲第11号証を提出して、請求項1?2に係る発明が特許法第29条第1項第2号に該当し、請求項1?2に係る特許が同法同条同項に違反してされたものである旨(申立理由1)、及び、主たる証拠として甲第6号証(特開2005-115642号公報)、従たる証拠として甲第2号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証(特開2005-149244号公報)を提出して、請求項1?2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を(申立理由2)を主張し、請求項1?2に係る特許を取り消すべきものであると主張している。

4 文献の記載
(1)甲第6号証(申立理由2の主となる証拠)
甲第6号証(申立理由2)には、次の記載がある。
「【0011】・・・図1は、本発明に係るスタンプラリーシステムの概略構成図であり、図2は、本発明に係るスタンプラリーシステムの概略システム図である。本発明の2次元コードを利用したスタンプラリーシステム(1)は、管理サーバ(2)と、携帯端末(3)と、通信ネットワーク(4)から構成される。尚、本発明に於ける2次元コードに保存されている情報は、スタンプラリーに於ける2次元コードが設置される場所の情報が含まれている。又、本発明で使用される2次元コードは、特に限定されないが、一般的に知れているQRコードを利用することが好ましい。2次元コードを利用することによって、従来の1次元コードよりも保存させる情報量を極端に増加させることができ、URL(Uniform Resource Locater)を直接保存させることができる。URLを保存させることで、管理サーバ(2)へアクセスする際に、管理サーバ(2)のアドレスを入力する手間無しに、携帯端末(3)から直接管理サーバ(2)へアクセスすることができる。又、本発明で使用される2次元コードは、ポスター等に記載されるため、屋外に設置されることがあるが、2次元コード(特に、QRコード)は、汚れに強く、風雨等によって、約30%が欠けても情報を復元することができる。・・・本明細書中で使用される「スタンプラリーの情報」という文言は、2次元コードに保存されているとともに従来のスタンプに変わる拠点を訪れた証拠となる情報を指す。「スタンプラリーに関する情報」という文言は、上記するスタンプラリーの情報やスタンプラリー参加者の属性情報等のスタンプラリーに関する全ての情報を指す。
【0012】管理サーバ(2)は、スタンプラリーに関する情報を管理する。この管理サーバ(2)は、後述する通信ネットワーク(4)と接続されている。管理サーバ(2)は、2次元コード情報受信手段(21)と、情報処理手段(22)と、情報保存手段(23)と、通知手段(24)と、閲覧手段(25)と、送信手段(26)と、ツール送信手段(27)と、登録送信手段(28)と検出手段(29)とを有している。・・・
【0013】2次元コード情報受信手段(21)は、該携帯端末から送信される2次元コードからデコードされた情報を受信する。この2次元コード情報受信手段(21)に於いて受信される情報は、携帯端末(3)によって2次元コードからデコードされたスタンプラリーの情報である。この情報を管理サーバ(2)が受信することによって、携帯端末(3)を有するスタンプラリー参加者が、この2次元コードが設置された場所に訪れたことを証明することになる。
【0014】情報処理手段(22)は、2次元コード情報受信手段(21)に於いて受信した情報を所定の規則に従って処理を行う。この情報処理手段(22)に於いて行われる所定の規則は、受信した情報からこの情報が送信された携帯端末(3)を特定する。この情報処理手段(22)に於いて、送信元の携帯端末(3)が特定されることによって、後述する情報保存手段(23)で情報を保存する際に、携帯端末(3)毎にこの情報を保存することができる。又、所定の規則は、2次元コード情報受信手段(22)に於いて情報を受信した日時を特定する。情報を受信した日時を特定して、後述する情報保存手段(23)に於いて受信された情報にこの日時を付加して保存する。情報を受信した日時が特定されることによって、情報保存手段(23)で情報を保存する際に、この情報の受信日時を付与して保存することができ、スタンプラリー参加者の動向を時系列に比較することができる。
【0015】情報保存手段(23)は、情報処理手段(22)に於いて所定の規則によって処理された情報を保存する。管理サーバ(2)へ送信されたスタンプラリーの情報は、情報処理手段(22)に於いて送信元の携帯端末(3)と受信日時が特定され、情報処理手段(23)に設けられる携帯端末(3)の情報保存場所へ保存されることになる(図4参照)。
【0016】管理サーバ(2)は、前記情報保存手段(22)に情報が保存されると、この情報を送信した携帯端末(3)へ、この情報保存手段に保存される情報に従って、前記管理サーバから前記携帯端末へ通知を行う通知手段(24)を具備することが好ましい。この通知手段(24)を具備することによって、スタンプラリー参加者が2次元コードに保存されるスタンプラリーの情報を管理サーバ(2)に送信した後に、スタンプを収集したことを通知するだけでなく、この2次元コードが設置された場所の情報や次のスタンプ設置場所の情報(他の2次元コードが設置されている場所の情報)や、スタンプ取得順位等の情報をスタンプラリー参加者に送信して通知することができるからである。この通知手段(24)によって送信される情報は、上記する如く、2次元コードが設置された場所(拠点)周辺の情報(例えば、この場所周辺の地図情報やこの場所の商店街情報やバーゲン情報)や、次のスタンプ設置場所の情報(例えば、次に向かうスタンプ設置場所として距離的又は時間的に近いスタンプ設置場所の情報)が好ましい。又、携帯端末(3)から送信される情報を受信することで、この携帯端末(3)の現在の位置情報を把握することができるので、この携帯端末(3)の利用者がいる位置を把握することができ、位置(場所)や時間に応じた情報をあわせて送信することができる。例えば、衣料品店に於ける時間や場所に応じたバーゲン情報を送信することができる。
【0017】この通知手段(24)は、情報保存手段(23)に保存される情報によって、参加者の携帯端末(3)へスタンプラリーに関する情報を送信するので、情報保存手段(23)に所定条件を設けて、この所定条件を満した参加者に、所定条件を満した通知を行うこともできる。この所定条件は、特に限定されないが、スタンプラリー主催者が適宜設定すれば構わず、例えば、スタンプを10個収集する(2次元コードを10回送信する)と特典情報を送信すること等が考えられる。又、この通知手段(24)は、スタンプラリー主催者が任意でスタンプラリー参加者にスタンプラリーに関する情報(例えば、ボーナス特典情報)を送信することもできる。尚、この特典情報の特典は、スタンプラリー主催者が適宜設定すれば構わないが、物質的な物や電子クーポン券などが考えられる。・・・
【0019】この管理サーバ(2)は、情報保存手段(23)内に保存される情報から所定条件に該当する情報を選出して、この情報を有する携帯端末(3)を検出する検出手段(29)を有していることが好ましい。この検出手段(29)を有することによって、スタンプラリー主催者は、自らの所望する所定条件に該当するスタンプラリー参加者を検出することによって、スタンプラリー参加者の属性情報、動向やスタンプラリーの状況(スタンプを取得した日時や条件に達成しているかどうか)等を知ることができる。例えば、スタンプラリー開始から10日以内にスタンプラリーを終了した参加者を検出したり、スタンプが設置されている場所で最も参加者が訪れた回数の多い場所等を検出したりして知ることができる。又、スタンプラリーに複数回参加したことの有る参加者を検出することもできる。検出手段(29)に於いて検出したスタンプラリー参加者の携帯端末(3)に通知手段(24)を使用して、スタンプラリー主催者から、特定の情報を送信することもできる。この検出手段(29)に於いて検出したスタンプラリー参加者に情報を送信することによって、スタンプラリー主催者は、スタンプラリー参加者にとって、利用価値の高いと考えられる情報を送信することができるからである。」

「【0023】本発明に係る携帯端末(3)の機能について説明する。携帯端末(3)は、2次元コードを読み込み、上記した管理サーバ(2)に保存されるソフトウェア等のアプリケーションをダウンロードし、実行することができ、管理サーバ(2)と送受信することができる機能を有する装置であれば、特に限定されないが、カメラ付き携帯電話器であることが好ましい。カメラ付き携帯電話器を利用することで、特別な装置を必要とすることなく容易に利用することができるからである。・・・
【0025】本発明で使用される2次元コードに保存される情報は、スタンプラリーに関する場所や期間の情報やこの2次元コードが設置される場所(拠点)周辺の情報が保存される。又、管理サーバ(2)のアドレス(URL)や管理サーバ(2)へアクセスするコマンドが保存されることが好ましい。2次元コードに管理サーバ(2)のURLや管理サーバ(2)へアクセスするコマンドが保存されることで、スタンプラリー参加者は、自動で管理サーバ(2)へアクセスすることができるからである。本発明に係る2次元コードが設置される場所は、スタンプラリー主催者が、スタンプラリー参加者に訪問して欲しい場所である。この2次元コードは、従来のようにスタンプ台やスタンプを保存しておく箱を設ける必要が無く、ポスター等にこの2次元コードを印刷して設置しておくだけで構わない。
・・・」

以上の記載によれば、甲第6号証には、
「管理サーバ、携帯端末及び通信ネットワークから構成される、QRコード等の2次元コードを利用したスタンプラリーシステムであって、(【0011】)
この2次元コードは、スタンプラリー主催者がスタンプラリー参加者に訪問して欲しい場所として2次元コードを記載したポスター等が設置された場所である拠点を訪れた証拠となる情報であるスタンプラリーの情報と管理サーバへのアクセスのためのURLが保存されたものであり、(【0011】【0013】【0025】)
管理サーバは、上記スタンプラリーの情報、スタンプラリー参加者の属性情報等のスタンプラリーに関する全ての情報を管理するものであり、(【0011】【0012】)
2次元コードを読み込んだ携帯端末から送信される2次元コードからデコードされた情報であるスタンプラリーの情報を受信し、(【0013】【0023】)
受信した情報からこの情報が送信された携帯端末を特定し、携帯端末毎にこの情報を保存し、また、情報を受信した日時を特定して、受信された情報にこの日時を付加して保存し、(【0014】【0015】)
保存される情報を送信した携帯端末へ、保存される情報に従って通知を行って、スタンプを収集したことや拠点周辺の地図情報や拠点の商店街情報やバーゲン情報(例えば、衣料品店に於ける時間や場所に応じたバーゲン情報)等の拠点周辺の情報等の情報を通知し、(【0016】)また、スタンプを10個収集する等の所定の条件を満たした場合に電子クーポン券などの特典の特典情報を通知し、(【0017】)
保存される情報から所定条件に該当する情報を選出して、この情報を有する携帯端末を検出することによって、所望の所定条件に該当するスタンプラリー参加者を検出し、これによって、スタンプラリー参加者の属性情報、動向やスタンプラリーの状況等を知ることができ、例えば、スタンプが設置されている場所で最も参加者が訪れた回数の多い場所などを検出することができる、(【0019】)、
スタンプラリーシステムにおける方法」
の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲第10号証(申立理由2の従たる証拠)
甲第10号証(特に段落【0049】?【0050】)には、
ユーザー端末が、二次元コードが印刷されたカードであるスタンプ(【0021】)をスキャンして主催者端末に送信位置とともに送信し、
主催者端末が、ユーザー端末から送信されたスタンプを読み取り、スタンプに記録されたスタンプの設置場所と、概略位置が一致するか確認し、一致する場合は、スタンプに対応する広告入りポイントオリジナルページ画面をユーザー端末に送信し、一致しない場合はその旨のメールをユーザーに送信し、
ユーザー端末は、ユーザーを特定するための情報を広告入りポイントオリジナルページ画面に書き込み、書き込みを行った広告入りポイントオリジナルページ画面を主催者端末に送信し、(【0022】【0023】)
管理者端末は、ユーザー端末から広告入りポイントオリジナルページ画面を受信すると、ユーザーがそのスタンプについてのスタンプラリーにエントリーしているかどうかを判断し、エントリーしている場合は、ユーザーのスタンプ数を書き換えて、スタンプが登録された旨をユーザーに知らせ、エントリーがまだの場合は、エントリーを促すメールをユーザー端末に送信する(【0048】)、スタンプラリーシステム
の技術(以下、「甲10記載の技術」という。)

5 当審の判断(申立理由2について)
(1)請求項1に係る発明(本件特許発明1)について
ア 対比
甲6発明の「携帯端末」、「参加者」、「スタンプラリー」は、本件特許発明1の「携帯端末」、「参加者」となった「(携帯端末の)ユーザ」、「イベント」にそれぞれ相当する。
甲6発明の「管理サーバ」、「スタンプラリーシステム」は、バーゲン情報(例えば、衣料品店に於ける時間や場所に応じたバーゲン情報)等の広告に係るものといえるから、後述の相違点を除けば、本件補正発明の「広告管理サーバ」、「広告システム」に対応するものといえる。
甲6発明の「管理サーバへのアクセスのためのURL」は、本件特許発明1の「広告管理サーバのURL情報」に相当し、甲6発明の「QRコード等の2次元コード」は、この広告管理サーバのURL情報を保存しこれを含む情報コードであるから、この点において、本件特許発明1の「情報コード」に対応するものである。
甲6発明の「ポスター等」は、このような広告管理サーバのURL情報を含む情報コードを有する表示物である点で、本件特許発明1の「広告」に相当する。
甲6発明の「拠点」は、この表示物が設置箇所である設置場所であり、本件特許発明1の「設置され」た「箇所」である「設置場所」に相当し、甲6発明の「拠点を訪れた証拠となる情報であるスタンプラリーの情報」は、上記情報コードが有する、設置場所に割り当てられた情報であり、本件特許発明1の「場所コード」に相当する。
甲6発明の「スタンプを10個収集する等の所定の条件を満たした場合」に通知される「電子クーポン券などの特典の特典情報」は、本件特許発明1の「イベントの特典」に相当する。
甲6発明の「スタンプラリー参加者の属性情報等のスタンプラリーに関する全ての情報」は、バーゲン情報等の広告を含む拠点周辺の情報等の情報や所定の条件を満たした場合の特典情報の通知のために必要な情報を含んでいるから、本件特許発明1の「場所コードとそれに対応する設置場所の情報」、「広告情報」、「イベントの特典、特典の付与ルール」に相当する情報を含むものであり、両者は、広告管理サーバにこれらが登録されている点で共通している。
甲6発明は、「拠点周辺の地図情報や拠点の商店街情報やバーゲン情報等の拠点周辺の情報等の情報」を携帯端末に通知するものであるから、そのために広告管理サーバへのアクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づける処理を行うものであるといえ、この処理を行う点で、本件特許発明1と共通している。
甲6発明は、「スタンプを10個収集する等の所定の条件を満たした場合」に「電子クーポン券などの特典の特典情報」を通知するものであるから、そのために特典の付与ルールに基づき特典を決定する処理を行うものであるといえ、この処理を行う点で、本件特許発明1と共通している。

してみると、本件特許発明と甲6発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
携帯端末のユーザーが参加者となるイベントを管理する広告管理サーバを備えた広告システムで行われる広告方法であって、
情報コードを有する表示物が所定の箇所に設置され、該情報コードに個々の表示物の設置場所に割り当てられた場所コード及び広告管理サーバのURL情報が含まれ、
広告管理サーバに、場所コードとそれに対応する設置場所の情報、広告情報、イベントの特典、特典の付与ルールが登録され、
表示物の情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によって広告管理サーバがアクセスされた場合に、
広告管理サーバが、アクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づける処理及び特典の付与ルールに基づき特典を決定する処理を行い、決定した特典の情報を携帯端末に送信する、広告方法。

<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1は、表示物が「イベントの対象となる旨の表示」を有する「広告」である「イベント広告」であり、情報コードに「広告コード」が含まれ、広告管理サーバが「広告コード」を含むとともに広告管理サーバに登録された広告情報がこの「広告コードに対応する」ものであるのに対し、甲6発明は、表示物が「イベントの対象となる旨の表示」を有する「広告」であるか、及び、情報コードが「広告コード」を含むものであって広告管理サーバが「広告情報」と対応する「広告コード」を登録するか、について、明らかでない点
(相違点2)
本件特許発明1は、表示物の設置場所が「複数箇所」であるのに対し、甲6発明は、表示物の設置場所が複数箇所であるか、について明らかでない点
(相違点3)
本件特許発明1は、広告管理サーバが「イベントの開催期間」を登録するのに対し、甲6発明は、広告管理サーバが「イベントの開催期間」を登録するかについて、明らかでない点
(相違点4)
本件特許発明1は、表示物の情報コードを読み込んだ携帯端末によってアクセスされた広告管理サーバにおいて、「そのアクセスの有効無効を判断し」、て「アクセスを有効と判断した場合」の処理として「アクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づける処理及び特典の付与ルールに基づき特典を決定する処理」を行うのに対して、甲6発明は、そのアクセスの有効無効を判断するものでなく、アクセスを有効と判断した場合の処理としてアクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づける処理及び特典の付与ルールに基づき特典を決定する処理を行うものでない点
(相違点5)
本件特許発明1は、広告管理サーバが特典を決定するために「アクセスを携帯端末ごとにイベント広告の設置場所と関連づけると共に該アクセスを特典の付与対象として登録」し、特典を決定する処理を「携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して」行うのに対し、甲6発明は、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を付与するか否か、そのためにアクセスを特典の付与対象として登録するか否かについて、明らかでない点
(相違点6)本件特許発明1は、「イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数をイベント広告の設置場所ごとに集計し、出力する」ものであるのに対し、甲6発明は、スタンプラリー参加者の動向やスタンプラリーの状況等を知ることができ、例えば、スタンプが設置されている場所で最も参加者が訪れた回数の多い場所などを検出することができる点

相違点の判断
(相違点1について)
甲6発明においては、拠点を訪れて2次元コードの読み込もうとするスタンプラリー参加者において、2次元コードの読み込みのために、その2次元コードが表示されたポスター等の表示物をみることになり、また、その2次元コードがスタンプラリーにかかるものであることを知る必要があるから、この表示物を、そのようなスタンプラリー参加者に対して、スタンプラリー参加者を対象とした広告である拠点周辺の地図情報や拠点の商店街情報やバーゲン情報等の拠点周辺の情報等の情報やその一部を含むものとしたり、この表示物に2次元コードとともに表示された2次元コードがスタンプラリーに係るものである旨(「イベントの対象となる旨」)の表示を行って、表示物(ポスター等)を「イベントの対象となる旨の表示」を有する「広告」である「イベント広告」とすること自体は、当業者が適宜なし得ることであるといえる。
しかし、拠点を訪れたスタンプラリー参加者に対する広告としてこのポスター等を用いるにあたって、(相違点6について)で後述する「イベント広告の設置場所ごとに集計」するのでなければ、このような広告に対応する「広告コード」を読み取られる2次元コードに含める必要はないところ、後述するとおり、甲6発明において「イベント広告の設置場所ごとに集計」することについての動機づけは見当たらない。
よって、相違点1のうち、本件特許発明1の「情報コード」が「広告コード」を含むのに対し、甲6発明の「情報コード」が「広告コード」を含まない点については、相違点6に付随する点であるので、容易想到でない。

(相違点2について)
表示物の設置場所を「複数箇所」とすることは、適宜なし得たことであるから、相違点2は、容易想到である。

(相違点3について)
イベントには開催期間があるところ、甲6発明の管理サーバは、スタンプラリーに関する全ての情報を管理するものであるから、この管理サーバが「イベントの開催期間」を登録するものであることは、明示されていないものの、実質的な相違点でない。

(相違点4、相違点5について)
甲6発明は、受信した情報をこの情報が送信された携帯端末毎に日時を付加して保存し、保存される情報に従って通知を行ったり所定の条件に該当するスタンプラリー参加者を検出するものであり、これを管理サーバにおいて携帯端末からのアクセスの有効無効を判断して有効なアクセスの場合についてのみ処理を行うように変更する必要はなく、そのように変更することについての動機づけは見当たらない。
また、甲10記載の技術は、主催者端末が、ユーザー端末から送信されたスタンプを読み取り、スタンプに記録されたスタンプの設置場所と、概略位置が一致するか確認し、一致する場合は、スタンプに対応する広告入りポイントオリジナルページ画面をユーザー端末に送信するものであるものの、甲10記載の技術においては、「主催者端末」ではなく「管理者端末」においてユーザーのスタンプ数の書き換え及びスタンプが登録された旨のユーザーへの通知を行っているから、「主催者端末」は、本件特許発明の「広告管理サーバ」のようなイベントに係る特典の決定を行うものでない。さらには、甲10技術における、スタンプの設置場所と概略位置の一致の確認により一致している場合の処理は、スタンプに対応する広告入りポイントオリジナルページ画面をユーザー端末に送信するというものであって、アクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づける処理や特典の付与ルールに基づき特典を決定する処理でないから、甲10技術におけるスタンプの設置場所と概略位置の一致の確認は、これらの処理を行う場合であることの判断でなく、本件特許発明1の「アクセスの有効無効」の判断と対応しない。してみると、甲10技術は、甲6発明と組み合わせることによって相違点4を容易想到するために必要となる技術ではない。
してみると、動機づけ及び副引例記載技術のいずれの観点からみても、相違点4は、容易想到といえない。
相違点5の構成は相違点4の構成を前提としたものであり、相違点4が容易想到といえないから、相違点5も容易想到といえない。

(相違点6について)
甲6発明は、スタンプラリー参加者の動向やスタンプラリーの状況等を知ることができるものの、広告効果を確認しようとするものでない。そもそも甲6発明におけるポスター等の表示物は「広告」でない(相違点1)から、これを「広告」とするように変更した上ででなければ設置された表示物における広告の広告効果を集計するという課題が生ずることはなく、そのためにイベント広告の設置場所ごとの集計を行うようにする動機づけはない。
そして、本件特許発明1は、アクセス回数を「イベント広告の設置場所」ないし「場所コード」ごとに集計することによって、広告管理者において「個別のイベント広告の広告主が納得して支払うことができる広告料の請求を可能とするものであり(本件特許明細書段落【0067】)、この効果は、広告効果を確認しようとするものでない甲6発明からは予測することができないものである。
よって、相違点6は、容易想到といえない。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲6発明及び甲10記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(2)請求項2に係る発明(本件特許発明2)について
本件特許発明2は、本件特許発明1に対応するシステム発明であり、これと甲6発明との間には、概ね(1)で検討した相違点と同様の相違点があり、これらの相違点は容易想到といえない。
よって、本件特許発明2は、甲6発明及び甲10記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。

(3)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明2の「広告」の意義について、「スタンプラリーおよびスタンプラリーを知らせる何らかの情報」を意味する旨、主張している。
しかし、本件特許の明細書においても、「イベント中に広告主が所望の広告をユーザーに提供することも可能とする広告システムの提供を課題とする」(段落【0008】)にあるように、「広告」の文言は、スタンプラリーのような「イベント」を知らせる情報とは区別されるものとして用いられており、「イベントによる直接的な広告効果を容易に確認する」(段落【0008】)のも、「広告」が「イベント」自体の広告でないことを前提としているものであるから、この主張は、採用できない。
イ 特許異議申立人は、甲6発明の「例えば、スタンプが設置されている場所で最も参加者が訪れた回数の多い場所などを検出」を根拠として、上記相違点6は一致点である旨を主張している。
しかし、この記載は、所望の所定条件に該当するスタンプラリー参加者を検出し、これによって、スタンプラリー参加者の属性情報、動向やスタンプラリーの状況等を知ることができることの例を示すものであって、広告効果の確認のために「イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数をイベント広告の設置場所ごとに集計」することを示す記載ではないから、この主張は、採用できない。

6 当審の判断(申立理由1について)
(1)請求項1に係る発明(本件特許発明1)について
ア 「『思い出のマーニー×種田陽平展』開催記念モバイルコレクションラリー」というタイトルのイベント(以下、本件イベント)について
特許異議申立人が提出した証拠(甲第2号証ないし甲第5号証、甲第11号証)によれば、本件イベントについて、以下のとおり、認められる。
(ア)本件イベントは、平成26年7月27日?同年8月17日まで、東京都交通局及び東京地下鉄株式会社(以下「東京メトロ」という。)の合同企画として、「両国駅」「三田駅」及び「清澄白河駅」(「エリアA」)及び「東新宿駅」「六本木一丁目駅」「半蔵門駅」(「エリアB」)を対象駅として行われたものである。(甲2?甲2の4)
(イ)本件イベントは、東京都交通局及び東京メトロが一般消費者に対して自ら運営する電車の利用を促進するためのイベントキャンペーン活動の目的で実施されたものであり、東京都交通局及び東京メトロから企画進行を依頼された株式会社角川アスキー総合研究所からの依頼を受けた株式会社PKBソリューションの社内のモバイルラリーシステムを用いたものである。(甲第11号証)
(ウ)本件イベントのタイトルにある『思い出のマーニー×種田陽平展』は、本件イベントとは異なるイベントであり、江戸東京博物館において、平成26年7月27日?同年9月15日まで開催されたイベントである。(甲2?甲2の4)甲2の4には、「東京地下鉄株式会社からのお知らせ」として本件イベントが記載される一方で『思い出のマーニー×種田陽平展』は記載されておらず、『思い出のマーニー×種田陽平展』の主催者は、東京メトロではないことが明らかである。
(エ)本件イベントの参加方法は、
東京都交通局又は東京メトロの駅に掲出したポスターや駅のラックに設置したチラシに掲載のQRコードをスマートフォン又は携帯電話で読取った者において、マイページを取得してブックマークし、
対象駅に掲出されているポスターのQRコードから実施期間内に順不動で画像を取得し、
エリアAから両国駅を含む2駅とエリアBから1駅の合計3駅の画像を取得してその後にマイページから「思い出のマーニー」関連サイトにアクセスして江戸東京博物館にて画像を集めたスマートフォン又は携帯電話を提示すること(「3駅達成」)によって、『思い出のマーニーオリジナルスケッチブック』が先着1000名でプレゼントされ、またその引換終了後も『都営交通・東京メトロ のりものシール』がプレゼントされ、
さらに、6駅すべての画像を取得してその後にロゴから「思い出のマーニー」関連サイトにアクセスし(「6駅達成」)、スマートフォンまたは携帯電話で「抽選に応募する」ボタンから応募フォームに沿って必要事項を入力して応募することによって、特別展(「「思い出のマーニー×種田陽平展」ナイトミュージアム(9月7日)」)に応募することができ、抽選で50組100名が招待される、
というものである。
なお、「3駅達成」に係るプレゼント引換期間は、イベント開催期間と同じ(平成26年7月27日?同年8月17日)であり、また、「6駅達成」に係る応募締切は、イベント開催期間の末日(同年8月17日)の23時59分までである。(甲2?甲2の4)
(オ)ポスターは、対象駅と霞ヶ関駅を含む他の駅に掲示されたものであり、本件イベントのタイトル、合同企画者名、本件イベントの開催期間、対象駅、QRコード、本件イベントの参加方法の概要等が記載されたものである。
なお、ポスターには、『思い出のマーニー×種田陽平展』が江戸東京博物館において平成26年7月27日?同年9月15日まで開催されたものである旨(上記(ウ))は記載されていない。(甲2、甲2の4)
(カ)本件イベントの主催者である東京都交通局及び東京メトロ等に対する株式会社PKBソリューションからの説明資料(甲3、甲4、甲5)によれば、本件イベントについて、次の内容を認定することができる。
「お客様マイページ」(告知ページ)に「コレクションリスト」ボタンと「コレクションラリーについて」ボタンが表示され、
「コレクションリスト」のページに、エリアAとエリアBの欄、引換券ボタン等が表示され、エリアAとエリアBのそれぞれの欄にそれぞれの対象駅に対応する欄が用意されており、対象駅における地点ポスターのQRコードの読み取りによってこれらの対象駅に対応する欄に駅毎に異なる画像が表示され、また、「江戸東京博物館にて先着プレゼント!!9/15(月・祝)まで「思い出のマーニー×種田陽平展」開催中」とのテキストが表示される。
また、この「コレクションリスト」のページにおいて、所定の画像が表示された状態で引換券ボタンを選択することにより、先着プレゼントの引換に係るスタッフ確認用のチェックボックスと「引換済みとする」ボタンが表示されたページに遷移する。
(キ)また、甲4によれば、本件イベントについて、次の内容を認定することができる。
本件イベントの参加者が、画像取得済みの地点のQRコードを再度読み取った場合の画面に「この地点の画像は既に取得済みです。」と表示される。

イ 本件イベントに係る公然実施発明の認定
(ア)アによれば、本件特許に係る出願前である平成26年7月27日?同年8月17日において、次の発明(以下、「引用発明」という。)が公然実施されていたものと認められる。

(引用発明)
本件イベント(携帯端末のユーザーが参加者となるイベント)を管理するPKBソリューションの社内のモバイルラリーシステム(管理サーバを備えたシステム)で行われる方法であって、
本件イベントのタイトル、合同企画者名、本件イベントの開催期間、対象駅、本件イベントの参加方法の概要等(イベントの対象となる旨の表示)と、QRコード(情報コード)とを有するポスター(表示物)がエリアAとエリアBの対象駅(所定の複数箇所)に設置され、該QRコード(情報コード)に対象駅を示す情報(個々の表示物の設置場所に割り当てられた場所コード)及びURL情報が含まれ、
PKBソリューションの社内のモバイルラリーシステムのサーバ(以下、単に「サーバ」という。管理サーバ)に、対象駅とそれぞれの対象駅を示す情報と対象駅とを対応づける情報(場所コードとそれに対応する設置場所の情報)、本件イベントの開催期間(イベントの開催期間)、対象駅毎の異なる画像と対象駅と各画像とを対応づける情報(イベントの特典、特典の付与ルール)が登録され、
ポスター(表示物)のQRコード(情報コード)が携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によってサーバがアクセスされた場合に、そのアクセスを携帯端末ごとに対象駅(表示物の設置場所)と関連づけると共に対象駅に対応する欄に駅毎に異なる画像を表示させ(アクセスを特典の付与対象として登録し、特典の付与ルールに基づき、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を決定し、決定した特典の情報を携帯端末に送信する)、
方法。

(イ)本件イベントは、東京都交通局及び東京メトロの合同企画によるものであって、一般消費者に対して東京都交通局及び東京メトロが運営する電車の利用を促進するために実施されたものであり、『思い出のマーニー×種田陽平展』の広告宣伝のために行われたものといえない。そのことは、本件イベントの共同企画者が『思い出のマーニー×種田陽平展』を主催した者であると認められないこと、本件イベントのポスターにおいて『思い出のマーニー×種田陽平展』の開催期間等が記載されていないこと、等からみて、明らかである。
この点、携帯端末のコレクションリストのページにおいて、「江戸東京博物館にて先着プレゼント!!」の後の「9/15(月・祝)まで「思い出のマーニー×種田陽平展」開催中」とのテキストが表示されるものの、本件イベントの共同企画者が『思い出のマーニー×種田陽平展』を主催した者であると認められないこと、本件イベントのポスターにおいて『思い出のマーニー×種田陽平展』の開催期間等が記載されていないこと、等に照らせば、このテキストは、プレゼント交換の場所である江戸東京博物館において「思い出のマーニー×種田陽平展」の開催を知らせるための単なる告知にすぎず、広告とまではいえないものである。

ウ 対比
(ア)引用発明の「本件イベント」は、本件特許発明の「携帯端末のユーザーが参加者となるイベント」に相当し、引用発明の「管理するPKBソリューションの社内のモバイルラリーシステム」と「サーバ」は、本件イベントを管理するサーバであり、下記の相違点を除き、「システム」と「管理サーバ」である点で、本件特許発明1の「広告システム」と「広告管理サーバ」に対応するものといえる。

引用発明の「本件イベントのタイトル、合同企画者名、本件イベントの開催期間、対象駅、本件イベントの参加方法の概要等」、「エリアAとエリアBの対象駅」は、本件特許発明1の「イベントの対象となる旨の表示」、「所定の複数箇所」である「設置場所」に相当し、引用発明の「ポスター」は、「広告」でないものの、イベントの対象となる旨の表示を有し、所定の複数箇所に設置される表示物である点で、本件特許発明1の「イベント広告」に対応する。また、引用発明の「QRコード」は、この表示物が有し、管理サーバを示すURL情報を含む情報コードである点で、本件特許発明1の「情報コード」に対応する。

引用発明の「対象駅とそれぞれの対象駅を示す情報と対象駅とを対応づける情報」、「本件イベントの開催期間」、「対象駅毎の異なる画像と対象駅と各画像とを対応づける情報」は、それぞれ、本件特許発明の「場所コードとそれに対応する設置場所の情報」、「イベントの開催期間」、「イベントの特典、特典の付与ルール」に相当する。
また、本件特許発明1と引用発明とは、表示物の情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によってサーバがアクセスされた場合に、そのアクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づけると共にアクセスを特典の付与対象として登録し、特典の付与ルールに基づき、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を決定し、決定した特典の情報を携帯端末に送信するものである点で、共通するといえる。

してみると、本件特許発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
携帯端末のユーザーが参加者となるイベントを管理する管理サーバを備えたシステムで行われる方法であって、
イベントの対象となる旨の表示と、情報コードとを有する表示物が所定の複数箇所に設置され、該情報コードに個々の表示物の設置場所に割り当てられた場所コード及びURL情報が含まれ、
管理サーバに、場所コードとそれに対応する設置場所の情報、イベントの開催期間、イベントの特典、特典の付与ルールが登録され、
表示物の情報コードが携帯端末に読み込まれ、該携帯端末によって管理サーバがアクセスされた場合に、そのアクセスを携帯端末ごとに表示物の設置場所と関連づけると共にアクセスを特典の付与対象として登録し、特典の付与ルールに基づき、携帯端末ごとに特典の付与対象として登録されたアクセスに対して特典を決定し、決定した特典の情報を携帯端末に送信する、
方法。

<相違点>
(相違点1)
本件特許発明1の表示物は「広告」であり、管理サーバが「広告管理サーバ」であり、システムが「広告システム」であるのに対し、引用発明は表示物が「広告」でなく、管理サーバが「広告管理サーバ」でなく、システムが「広告システム」でない点。
(相違点2)
本件特許発明の表示物は「広告コード」を有し、「情報コード」が「広告コード」を含み、管理サーバに「広告コードとそれに対応する広告情報」が登録されるのに対し、引用発明の表示物は「広告コード」を有しておらず、「情報コード」は「広告コード」を含んでおらず、管理サーバに「広告コードとそれに対応する広告情報」が登録されていない点
(相違点3)
携帯端末によって管理サーバがアクセスされた場合に、本件特許発明1は「広告管理サーバがそのアクセスの有効無効を判断」して「アクセスを有効と判断した場合」に特典に係る登録、決定、携帯端末への情報の送信を行うのに対し、引用発明は、特典に係る登録、決定、携帯端末への情報の送信を行うのが「そのアクセスの有効無効を判断」して「アクセスを有効と判断した場合」か否か不明である点
(相違点4)
本件特許発明1は、イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数を表示物の設置場所ごとに集計し、出力するのに対し、引用発明は、イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数を表示物の設置場所ごとに集計し、出力するものでない点

エ 小括
してみると、本件特許発明1は、引用発明と同一でなく、提出された証拠方法によって特許出願前に公然実施された発明であるということはできないから、請求項1にかかる特許は、特許法第29条第1項第2号に該当する発明についてなされたものではない。

(2)請求項2に係る発明(本件特許発明2)について
本件特許発明2は、本件特許発明1に対応するシステム発明であり、これと引用発明との間には、概ね(1)で検討した相違点と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明2は、引用発明と同一でなく、提出された証拠方法によって特許出願前に公然実施された発明であるということはできないから、請求項2にかかる特許は、特許法第29条第1項第2号に該当する発明についてなされたものではない。

(3)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明2の「広告」の意義について、「スタンプラリーおよびスタンプラリーを知らせる何らかの情報」を意味する旨、主張し、このこと前提として、出願前公然実施発明として、本件特許発明1の「広告」についてのものを認定できる旨を主張している。
本件特許発明1及び本件特許発明2の「広告」の意義については、5(3)アにおいて上述したとおりであり、また、引用発明として「広告」についてのものを認定できないことは、(1)イ(イ)において上述したとおりである。
これらに照らして、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

イ 特許異議申立人は、ア(キ)を根拠として、出願前公然実施発明として、本件特許発明1の「そのアクセスの有効無効を判断」することを含むものを認定できる旨を主張している。
しかし、本件特許発明1及び本件特許発明2は、「広告管理サーバが、そのアクセスの有効無効を判断」するものであるところ、甲第4号証と甲第11号証を踏まえれば本件イベントに関連して「この地点の画像は既に取得済みです。」との表示が行われることを含めて公然実施されたと認定することは可能であるものの、甲第4号証及び甲第11号証を含め本件イベントに関するものとして提出されたいずれの証拠方法においても、この表示が行われる条件の具体的な内容やこの条件の判断に係る具体的な処理について、管理サーバと携帯端末のいずれにおいて行われるどのような処理に基づいてこの表示が行われるかが明らかでないから、携帯端末からアクセスがあった場合にそのアクセスの有効無効を管理サーバが判断することに対応する処理がなされることを含めて公然実施されたと認定することはできない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

ウ 特許異議申立人は、甲第5号証を示して、出願前公然実施発明として、本件特許発明1の「イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数を表示物の設置場所ごとに集計し、出力する」を含むものを認定できる旨を主張している。
しかし、甲第11号証によれば、甲第5号証は、開催運営進行主体と主催者(共同企画者)において「キャンペーンの実施期間中に参加者状況を確認するために用意されたWEB管理画面を閲覧する方法を記載した説明書(マニュアル)」であって、特許異議申立人、開催運営進行主体、主催者(共同企画者)に属しない者における閲覧が可能であったと認めることができず、甲第5号証の記載から「イベント開催期間の広告管理サーバへのアクセス回数を表示物の設置場所ごとに集計し、出力する」に対応する処理が公然実施されていたと認定することはできない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由(申立理由1及び申立理由2)によっては、請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-07 
出願番号 特願2018-225560(P2018-225560)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 112- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 緑川 隆上田 威  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
石川 正二
登録日 2019-02-08 
登録番号 特許第6474183号(P6474183)
権利者 株式会社トラストワイズプロダクション
発明の名称 広告システム  
代理人 特許業務法人田治米国際特許事務所  

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