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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24D
管理番号 1358997
審判番号 不服2018-17507  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-28 
確定日 2020-01-14 
事件の表示 特願2016-141060「加工砥石」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-196085〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年8月26日(優先権主張2013年8月26日、日本国、2014年2月28日、日本国)を国際出願日とする特願2015-534227号の一部を、平成28年7月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 5月25日付け :拒絶理由通知
平成30年 7月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 9月26日付け :拒絶査定
平成30年12月28日 :審判請求書の提出
令和 1年 8月28日付け :拒絶理由通知
令和 1年10月25日 :意見書、手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「ワークを延性モードで加工する回転駆動用の加工砥石において、
ダイヤモンド単結晶粒子同士の焼結結合体である多結晶ダイヤモンドで構成し、
前記ダイヤモンド単結晶粒子の粒径が25μm以下である、
加工砥石。」

第3 拒絶の理由
令和1年8月28日付けで当審が通知した拒絶理由のうち理由1は、次のとおりのものである。
本願請求項1-3に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2008-540154号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、「超硬切削工具およびこれに関連する方法」に関し、図1?9とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

(1)段落【0001】
「本発明は一般に、様々な材料から形成される平面加工物に使用される切削装置(cutting device)に関する。したがって、本発明は、化学、物理学および材料科学の分野を含む。」

(2)段落【0025】
「本明細書で使用されるとき、「焼結(sintering)」は、2つ以上の個々の粒子を連続した固体塊を形成するように連結させることを意味する。焼結プロセスは、少なくとも部分的に粒子間の間隙をなくすための粒子の連結を含む。焼結は、金属またはダイヤモンドなどの炭素質粒子で起きる。金属粒子の焼結は、材料の成分に応じて様々な温度で起きる。ダイヤモンド粒子の焼結は一般に、超高圧およびダイヤモンド焼結助剤として炭素溶媒の存在を必要とし、以下でより詳細に論じられている。焼結助剤は、焼結プロセスを補助するためにしばしば存在し、そのようなものの一部分は最終製品内に残る可能性がある。」

(3)段落【0031】-【0032】
「 本発明
本発明は、加工物から材料を除去し、加工物に仕上げられた、平滑な、および/または平坦な表面をもたらすように、加工物を切削する、またはさもなければ加工物に作用するのに利用できる、切削装置およびこれに関連する方法を提供する。本発明の切削装置は、例えば、加工物から材料を平削りする平削り装置、様々な加工物をドレッシングするドレッシング装置、および様々な加工物を研磨する研磨装置として有利に利用することができる。
図1に示す本発明の実施形態では、この切削装置10は、切削または平削りされる加工物(図3の19)に対面する加工面14を有することができる基部12を含むことができる。複数の個々の切削要素16を基部の加工面に配置することができる。・・・」

(4)段落【0034】
「切削要素16の切削エッジ18は、一実施形態では多結晶超硬材料を含む、様々な材料から形成することができる。そのように限定するわけではないが、この多結晶超硬材料は、多結晶ダイヤモンド成形体(「PCD」)または多結晶立方晶窒化ホウ素成形体(「PcBN」)であることができる。このPCDまたはPcBN成形体は、より詳細に以下で論じるように様々な方法で形成することができる。図1に示す本発明の一態様では、基部12ならびに切削要素16および切削エッジ18の各々は、多結晶超硬材料の一体的部片から一体的に形成される。」

(5)段落【0037】
「従来型の研磨または研削プロセスと対照的に、本発明は、加工物の表面を仕上げるまたは平削りするために、加工物から材料を切削するのに切削要素の1つまたは複数の切削エッジを利用することができる。一般に、材料に切削が行われるとき、切削の領域は塑性的に変形するか脆く割れるかのどちらかである。塑性変形が割れの伝播より遅い場合は、材料は脆性として知られている。延性変形に対しその反対が当てはまる。しかしながら、高圧の下では割れ伝播の速度が押さえられる。この場合、脆性材料(例えば、シリコン)は、軟らかい金属と類似したより延性のある特性を示す場合がある。本発明の鋭い切削エッジが脆性シリコンの表面に押し付けられるとき、最初の接触の面積は極めて小さい(例えば、直径で数ナノメートル)。結果として、この圧力は非常に高くなり得る(例えば、数GPa)。割れが抑制されるので、鋭いダイヤモンドエッジはシリコンに塑性的に侵入することができる。結果として、外部エネルギーは、継続的に延性切削を維持するように、非常に小さな体積のシリコンに受け渡されることができる。換言すれば、この鋭い切削エッジは、以前には達成されなかった方法でシリコンを薄く削るまたは平削りすることができる。」

(6)段落【0039】
「・・・さらに、切削エッジの形状は比較的鋭く維持されなければならない;ある場合には2nmの程度の半径を有する。これら2重の特性に対応するために、本発明の切削エッジの材料は、切削または平削りプロセス中変形に耐えるのに十分に硬い。このようにすると、加工物の延性を確実にする切削具の鋭さおよび硬さの両方が実現される。加工物を切削し加工物から材料を除去する延性プロセスが図3に概略的に示されており、そこでは、加工物19から破片24を薄く削っている切削要素16の切削エッジ18が示されている。」

(7)段落【0045】
「・・・典型的な用途では、この切削装置は、回転可能チャックに連結可能な保持器クッションに搭載することができる。加工物、例えばシリコンウェーハは、加工物の回転を可能にする真空チャックに連結することができる。回転可能チャックおよび真空チャックの両方とも、加工物から材料を除去するために時計方向または反時計方向のいずれかに回転させることができる。1つの要素の回転を別の要素に対して変化させることによって、加工物の一回転で程度の差はあるが材料を除去することができる。例えば、加工物および平削り器が同じ方向に(ただし、異なる速度で)回転する場合、それらが互いに反対に回転する場合より少ない材料が除去されるであろう。」

(8)段落【0056】
「本発明で利用されるPCDまたはPcBN成形体は、様々な方法で形成することができる。本発明の一実施形態では、PCD成形体は、ミクロン(例えば、1から10μm)のダイヤモンドを含むことができ、使用前に研磨することができる。別の態様では、このダイヤモンド粒は大きく(例えば、50μm)することができ、その表面は研磨なしで研削することができる。本発明の一態様では、SiC粒をPCD成形体の供給原料としてダイヤモンド粒と混合することができる。このPCDは、体積で約80%から約98%のダイヤモンド含有量を含むことができる。」

(9)上記(7)の記載から、「切削装置」は回転駆動されるものと認められる。

2 引用発明
上記1の記載事項及び図面で図示された内容から、上記(6)には延性プロセスで加工物を切削できること、上記(8)にはPCD成形体が1から10μmのダイヤモンドを含むことが記載されているから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「加工物19を延性プロセスで切削加工する回転駆動される切削装置10において、
多結晶ダイヤモンド成形体(PCD)で構成し、
PCDは、1から10μmのダイヤモンド粒を含む、
切削装置10。」

第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「加工物19」、「延性プロセス」、「切削加工」は、それぞれ本願発明の「ワーク」、「延性モード」、「加工」に相当する。

(2)引用発明の「切削装置10」は、上記「第4 1(3)」に記載されるように「加工物から材料を除去し、加工物に仕上げられた、平滑な、および/または平坦な表面をもたらすように、加工物を切削する、またはさもなければ加工物に作用するのに利用できる」ものであるから、本願発明の「加工砥石」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「回転駆動される切削装置10」は、本願発明の「回転駆動用の加工砥石」に相当する。

(3)引用発明の「多結晶ダイヤモンド成形体(PCD)」は、「1から10μmのダイヤモンド粒」を含むものである。一般に、PCDは様々な方法で成形できるが、引用文献1には、PCDを成形するための具体的な方法について、上記「第4 1(2)」に示す焼結プロセスによる方法のほかには記載がないから、引用文献1に接した当業者は、引用発明の「多結晶ダイヤモンド成形体(PCD)」について、「ダイヤモンド粒」同士が焼結結合されたものと当然に理解するといえる。
よって、引用発明の「多結晶ダイヤモンド成形体(PCD)」は、本願発明の「ダイヤモンド単結晶粒子同士の焼結結合体である多結晶ダイヤモンド」に相当するといえる。

(4)引用発明の「PCDは、1から10μmのダイヤモンド粒を含む」ことと、本願発明の「前記ダイヤモンド単結晶粒子の粒径が25μm以下である」こととを対比すると、「(多結晶ダイヤモンド(PCD)を構成する)ダイヤモンド単結晶粒子の粒径が1から10μmである」という点で一致する。

2 よって、本願発明と引用発明とは以下の一致点のとおり全ての点で一致し、相違点は見当たらない。
【一致点】
「ワークを延性モードで加工する回転駆動用の加工砥石において、
ダイヤモンド単結晶粒子同士の焼結結合体である多結晶ダイヤモンドで構成し、
前記ダイヤモンド単結晶粒子の粒径が1から10μmである、
加工砥石。」

3 したがって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 請求人は、令和1年10月25日付け意見書において、本願発明は、ダイヤモンド単結晶粒子の粒径が25μm以下である構成により、多結晶ダイヤモンドの表面に形成される凹みからなる切れ刃の深さ等を延性モードの加工を行うのに適したものに調整できるという格別の効果を得るのに対し、引用文献1には、多結晶ダイヤモンドの表面に形成される凹みからなる切れ刃の深さ等を延性モードの加工を行うのに適したものに調整することを目的として、ダイヤモンド単結晶粒子の粒径を25μm以下にすることについては記載も示唆もないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明と同一ではない旨を主張している。

しかし、前述のとおり、本願発明と引用発明との間に構成上の差異は一切認められないことから、仮に、目的や効果が異なっていたとしても、本願発明と引用発明とは同一といわざるを得ない。
よって、上記請求人の主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-20 
結審通知日 2019-11-21 
審決日 2019-12-03 
出願番号 特願2016-141060(P2016-141060)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B24D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 真誠  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 青木 良憲
見目 省二
発明の名称 加工砥石  
代理人 松浦 憲三  
代理人 松浦 憲三  
代理人 松浦 憲三  

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