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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1359075
審判番号 不服2018-16382  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-07 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 特願2014-201511「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開,特開2016- 72479〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年9月30日の出願であって,平成30年3月13日付けで拒絶理由が通知され,同年5月15日に意見書が提出され,同年9月6日付けで拒絶査定がされ(同年同月11日送達),これに対して,同年12月7日に審判請求がされるとともに同時に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
平成30年12月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであり,本件補正の前後で特許請求の範囲は以下のとおりである。
〈補正前〉
「【請求項1】
半導体層と,前記半導体層の上面に設けられた上部電極と,前記半導体層の下面に設けられた下部電極と,を備える平面視が略矩形状の発光素子であって,
平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,前記第1辺と対向する第2辺に接続される第2パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあり,
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2直線上において,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,は同じである請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第2直線上における,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,の比率と,
前記第1延伸部の対角線上における,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,の比率と,は同じである請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1パッド部と前記第2パッド部とは,前記第1延伸部における対角線の交点を通る第3直線上に設けられている請求項1乃至3のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1直線は,前記第3辺および前記第4辺に対して略平行である請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第2延伸部は,前記第3辺に対して略平行な部分を含み,前記第2延伸部の略平坦な部分は,前記第3辺の長さの2分の1以上の長さを有し,
前記第3延伸部は,前記第4辺に対して略平行な部分を含み,前記第3延伸部の略平坦な部分は,前記第4辺の長さの2分の1以上の長さを有する請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第2延伸部と前記第3延伸部とは,離間して前記第1パッド部及び前記第2パッド部のそれぞれに接続されている請求項1乃至6のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1延伸部と前記第2延伸部と前記第3延伸部とは,隣り合う延伸部が60°間隔になるように前記第1パッド部及び前記第2パッド部にそれぞれ接続されている請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離よりも長く,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離よりも長い請求項1乃至8のいずれか一つに記載の発光素子。」

〈補正後〉
「【請求項1】
半導体層と,前記半導体層の上面に設けられた上部電極と,前記半導体層の下面に設けられた下部電極と,を備える平面視が略矩形状の発光素子であって,
平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,前記第1辺と対向する第2辺に接続される第2パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあり,
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第2延伸部は,前記第1パッド部及び前記第2パッド部からそれぞれ前記第3辺に対して傾斜する方向に延伸する2つの延伸部と,その一方の延伸部の端部から他方の端部まで,第3辺に対して略平行に延伸する延伸部とを有し,
前記第3延伸部は,前記第1パッド部及び前記第2パッド部からそれぞれ前記第4辺に対して傾斜する方向に延伸する2つの延伸部と,その一方の延伸部の端部から他方の端部まで,前記第4辺に対して略平行に延伸する延伸部とを有する請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第2直線上において,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,は同じである請求項1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第2直線上における,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,の比率と,
前記第1延伸部の対角線上における,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離と,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離と,前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離と,の比率と,は同じである請求項1乃至3のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1パッド部と前記第2パッド部とは,前記第1延伸部における対角線の交点を通る第3直線上に設けられている請求項1乃至4のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1直線は,前記第3辺および前記第4辺に対して略平行である請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第2延伸部は,前記第3辺に対して略平行な部分を含み,前記第2延伸部の略平行な部分は,前記第3辺の長さの2分の1以上の長さを有し,
前記第3延伸部は,前記第4辺に対して略平行な部分を含み,前記第3延伸部の略平行な部分は,前記第4辺の長さの2分の1以上の長さを有する請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2延伸部と前記第3延伸部とは,離間して前記第1パッド部及び前記第2パッド部のそれぞれに接続されている請求項1乃至7のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1延伸部と前記第2延伸部の角度,前記第1延伸部と前記第3延伸部の角度及び前記第2延伸部と前記第3延伸部の角度がそれぞれ60°になるように,前記第1延伸部,前記第2延伸部及び前記第3延伸部とが前記第1パッド部及び前記第2パッド部にそれぞれ接続されている請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離よりも長く,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離よりも長い請求項1乃至9のいずれか一つに記載の発光素子。」

2 補正事項の整理
本件補正の補正事項は以下のとおりである。
〈補正事項1〉
補正後の請求項2を加入するとともに,補正前の請求項2?請求項9を補正後の請求項3?請求項10とし,これらに併せて,補正後の各請求項における引用請求項番号を変更する。

〈補正事項2〉
補正前の請求項8の,「前記第1延伸部と前記第2延伸部と前記第3延伸部とは,隣り合う延伸部が60°間隔になるように前記第1パッド部及び前記第2パッド部にそれぞれ接続されている」を,補正後の請求項9の「前記第1延伸部と前記第2延伸部の角度,前記第1延伸部と前記第3延伸部の角度及び前記第2延伸部と前記第3延伸部の角度がそれぞれ60°になるように,前記第1延伸部,前記第2延伸部及び前記第3延伸部とが前記第1パッド部及び前記第2パッド部にそれぞれ接続されている」と補正する。


3 補正の目的の適否についての検討
上記2の各補正事項のうち,補正事項1は,補正後の請求項2を新たに加えるものであって,このような補正は,特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの目的とするものにも該当しないから,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たさないものである。

4 むすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年12月7日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
半導体層と,前記半導体層の上面に設けられた上部電極と,前記半導体層の下面に設けられた下部電極と,を備える平面視が略矩形状の発光素子であって,
平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,前記第1辺と対向する第2辺に接続される第2パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあり,
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上であることを特徴とする発光素子。」

2 引用刊行物に記載された発明
(1)引用例1: 特表2013-508994号公報
ア 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である,特表2013-508994号公報(以下「引用例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。(下線は当審において付加。以下同様。)
(ア)「【0001】
本発明は,垂直型発光ダイオード(LED,Light Emitting Diode)装置に係り,特に,外側に設置された金属電極を具えた高輝度発光ダイオード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
・・・(中略)・・・
【0004】
LEDのパワーと発光量を増加する方法の一つは,その大きさ及び発光表面積を増加する,というものである。しかし,周知のLEDは通常,半導体材料層の導電性が比較的低いため,電流が有効に且つ均一に,接点から全体の活性層に広がらず,LED内部には一部の領域の電流密度が高くなり過ぎる状況が発生し得て,そのために全体の輝度に影響が生じ,ひいては活性層付近の早期劣化が引き起こされて,大幅に使用寿命が短縮されることとなる。
【0005】
・・・(中略)・・・
【0006】
周知の大サイズの垂直型発光ダイオード装置の電流が均一に拡がらないことは,発光ダイオード装置の発光効率に影響を与える主因であり,このため,半導体材料層の厚さを増して,導電性を増すことが考慮される。図1A,1Bに示される小サイズLED(約0.25mm2 以下)について述べると,このような方式は確実に輝度と電流拡散効果をアップするのに役立つ。ただし,半導体材料層の厚さを増すと,生産コストを増す以外に,通常,応力などの問題があるため,半導体材料層の厚さは大サイズの発光ダイオード装置の電流拡散効果要求に合わせて無制限に増加させることはできない。このため,もし図2に示されるような大サイズのものについては,半導体材料層の厚さを増加しても,満足のいく効果を得ることはできない。なぜならLED装置のサイズが増加する時,均一に電流をn型接点或いはp型接点から半導体材料層を経由して拡散するのはより難しくなるためである。これから分かるように,LEDのサイズは大幅に半導体材料層の電流拡散特徴に制限される。
【0007】
図2に示されるように,周知の大サイズの垂直型発光ダイオード装置200中,第2金属電極ソルダパッド領域210は第2導電性半導体層202の中心に位置し,通常は,放射状金属電極201を利用することで,電流拡散特性を高めている。ただし,一般に発光ダイオード装置の輪郭のほとんどは正方形或いは矩形とされ,このため各放射状金属線を最良の電流拡散効果を達成できる方式で発光層上に配置するのが難しいのみならず,隣り合う放射状金属線の間が確実に同じ間距を有するようにすることも難しい。且つその金属電極両側はいずれも高輝度光照射側に属し,光を吸収して輝度の下降を形成しやすい。図3A及び3Bには,別の周知の大サイズの垂直型発光ダイオード装置200Aと200Bが示され,その金属電極の両側はいずれも高輝度光照射側に属し,同様に光を吸収して輝度下降を形成しやすい。これにより,周知のLED装置には,以下のような改善を要する問題,たとえば,電流密度が十分に均一ではないこと,光取り出し効率が高くないこと,輝度が必要を満足できないこと,効率が要求を満足できないこと,使用寿命が十分に長くないこと,が不変に存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の問題を鑑み,本発明は一種の改良式垂直型発光ダイオード装置を提供し,それは周知のLED装置に較べてさらに高い出力輝度及び効率を有し,並びに余分のコストを増さない状況で,十分に現代人の高エネルギー効率の要求を満足させ,そのうち,複雑な製造工程技術に関わらず,十分に経済効果を有するものとする。
【0009】
本発明は電流拡散を改良し金属電極吸光特性を減らしたLED装置を提供することにより,上述の問題を解決し並びに上述の目的を達成する。」

(イ)「【0014】
図4は本発明に基づく一つの実施例の大サイズ垂直型GaN(窒化ガリウム)発光ダイオード装置300の平面図である。図5は同時に図4の発光ダイオード装置300の平面図及び断面図を示す。図6は図4の発光ダイオード装置300の立体図である。本実施例中,n型(第2)導電性半導体層302のサイズは1mm^(2 )である。本発明の大サイズ垂直型発光ダイオード装置300は,第1電極309,該第1電極309の上に形成された導電基底層308,該導電基底層308の上に形成された鏡面反射層306,該鏡面反射層306の上に形成されたp型(第1)導電性半導体層304,該p型(第1)導電性半導体層304の上に形成された活性層303(または「発光層」と称される),該活性層303の上に形成されたn型(第2)導電性半導体層302,該n型(第2)導電性半導体層302の上に形成された第2金属電極301を包含し,そのうち,第2金属電極301はn型導電性半導体層302の外側に設置され,且つ第2金属電極301の両側はそれぞれ高光照射側301’,低光照射側301”とされ,そのうち低光照射側301”は該鏡面反射層306の幅範囲W外に位置し,すなわち,低光照射側301”は並びに鏡面反射層306によりカバーされず,中央に3本の金属電極線が設置されて第2金属電極301と接続される。注意すべきことは,中央に設置される金属電極線の数は,全体のLED装置の外形輪郭及びサイズに合わせて,或いは必要により決定され得ることである。そのうち,第2導電性半導体層の表面の局部面積は,パターン化され得て,これにより,光取り出し効率を高める。このほか,LED装置300はさらに金属ソルダパッド領域310を包含し(図4及び図6に示されるとおり),それは,電気的接続に用いられる。注意に値することは,図中,電気的接続に用いられる金属ソルダパッド領域310は例示にすぎず,本発明はこの部分に記載される状況に限定されない。金属ソルダパッド領域310の数量は実際の必要により増減可能である。また,発光ダイオード装置300は導電透明層(図示せず)を包含可能で,それは第2導電性半導体層302と第2金属電極301の間に設置される。」

(ウ)「【0025】
図14A-14F,図15A-15F,図16A-16F,図17A-17F,図18A-18F,図19A-19Fはそれぞれ本発明のその他の実施例の大サイズ垂直型発光ダイオード装置の平面図を示し,そのうち,チップサイズは0.3mm^(2 )より大きい。図20A-20Dはそれぞれ本発明のその他の実施例の垂直型発光ダイオード装置の平面図であり,そのうち,チップサイズは0.3mm^(2 )より小さい。及び図21A-21Iはそれぞれ本発明のその他の実施例の直方体チップ垂直型発光ダイオード装置の平面図である。図22A-22Bは本発明の大サイズ垂直型発光ダイオード装置(たとえば図4-12,図14A-14F,図15A-15F,図16A-16F,図17A-17F,図18A-18F,及び図19A-19Fに示される発光ダイオード装置)の側面図である。図23A-23Bは図13の小サイズ垂直型発光ダイオード装置の側面図である。及び図24A-24Bは図21Aの直方体チップ垂直型発光ダイオード装置の側面図である。
【0026】
本発明の特徴は以下のとおりである。垂直型発光ダイオード装置の金属電極が外側の金属電極の方式で半導体層上に設置され,外側の金属電極配置により,立方体と直方体の垂直型発光ダイオード装置の電流拡散性能を最適化し金属電極吸光を減らし,これにより輝度を高め,効率を高め,使用寿命を延長し,周知技術に較べてさらに優れた性能を現出する。」

(エ)図19Fは以下のものである。


イ 前記ア(ウ)の「図14A-14F,図15A-15F,図16A-16F,図17A-17F,図18A-18F,図19A-19Fはそれぞれ本発明のその他の実施例の大サイズ垂直型発光ダイオード装置の平面図」について,当該各「大サイズ垂直型発光ダイオード装置」の積層構造は,前記ア(イ)に記載されたものと同様であると解される。

ウ ここで,上記ア(イ)の記載を参酌して図19Fを参照すると,「大サイズ垂直型発光ダイオード装置」の平面形状は略矩形であって,第2金属電極301に関しては,外形輪郭に沿った略矩形とともに,図示で,当該矩形上辺中央から下に延びる金属ソルダパッド310,および当該金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ略平行に並び,各々枝分かれする部分を備え,前記矩形下辺に到達する2本の電極線からなっていることが見て取れる。

エ 以上を総合すると,引用例1には,図19Fに示されたものについて,以下の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明」という。)。
「垂直型発光ダイオード300であって,
電流拡散を改良し金属電極吸光特性を減らしたものであって,
第1電極309,該第1電極309の上に形成された導電基底層308,該導電基底層308の上に形成された鏡面反射層306,該鏡面反射層306の上に形成されたp型(第1)導電性半導体層304,該p型(第1)導電性半導体層304の上に形成された活性層303,該活性層303の上に形成されたn型(第2)導電性半導体層302,該n型(第2)導電性半導体層302の上に形成された第2金属電極301を包含し,そのうち,第2金属電極301はn型導電性半導体層302の外側に設置され,且つ第2金属電極301の両側はそれぞれ高光照射側301’,低光照射側301”とされ,そのうち低光照射側301”は該鏡面反射層306の幅範囲W外に位置し,すなわち,低光照射側301”は並びに鏡面反射層306によりカバーされず,中央に金属電極線が設置されて第2金属電極301と接続され,
第2金属電極301は,外形輪郭に沿った略矩形であって,当該矩形上辺中央から下に延びる金属ソルダパッド310を更に備え,
垂直型発光ダイオード300表面の中央には,金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ,各々枝分かれする部分を備え,第2金属電極301の前記矩形下辺に到達する2本の金属電極線を備え,
前記中央に設置される金属電極線の数は,全体のLED装置の外形輪郭及びサイズに合わせて,或いは必要により決定され得るものであり,
金属ソルダパッド領域310の数量は実際の必要により増減可能である,
平面形状が略矩形の垂直型発光ダイオード。」

(2)引用例2:特開2011-114240号公報
ア 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2011-114240号公報(以下「引用例2」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は,半導体発光素子に関する。
【背景技術】
発光層を挟んでp型半導体層及びn型半導体層を積層した半導体発光素子において,両半導体層へと供給する電流を半導体平面の全面へと拡散させるために,外部電極との接続部より延伸した電極延伸部を,電極形成面の周縁部に沿って形成する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【0003】
・・・(中略)・・・
【0008】
しかしながら,半導体発光素子の更なる高効率化を図るには,さらなる改善として順方向電圧Vfを下げることが重要となる。順方向電圧Vfを下げるには,電極の面積を大きくして抵抗を小さくすることが挙げられるが,この方法では光取り出し効率が悪くなり,出力が低下するという問題があった。逆に電極面積を小さくすると,光取り出し効率が向上し出力を上昇できるが,Vfが悪くなる。このように順方向電圧Vfを下げることと出力の上昇はトレードオフの関係にあるため,両者を改善することは容易でなかった。
【0009】
本発明は,従来のこのような問題点を解消するためになされたものである。本発明の主な目的は,出力を維持しつつVf上昇を抑制した半導体発光素子を提供することにある。」

(イ)「【0028】
図1?図3に,本発明の実施の形態1に係る半導体発光素子を示す。これらの図において,図1は半導体発光素子の平面図,図2は図1のII-II’線における断面図,図3は図1のIII-III’線における断面図を,それぞれ示している。
【0029】
図2?図3に示す発光素子1は,支持台3と,この支持台3の上方に位置する半導体構造10と,半導体構造10を上下に狭む電極20より主に構成される。また,支持台3は,支持基板4及び接着層5が,この順に積層されて固定される。一方,半導体構造10は,発光層13と,この発光層13を挟んで積層された第一導電型層11であるn型半導体層と,第二導電型層12であるp型半導体層とを有する。図の例では,p型半導体層12,発光層13,n型半導体層11が,この順に積層して半導体構造10を構成しており,半導体構造10の上方側に位置するn型半導体層11側が,発光層13からの出射光の主発光面側,すなわち光取り出し側となる。
(電極)
【0030】
また,電極20はn型半導体層11及びp型半導体層12のそれぞれに電力を供給する第一電極21及び第二電極22を有する。具体的に,n型半導体層11には,第一電極21であるn型電極が形成され,電力供給可能となる。同様に,p型半導体層12の主面の一部に第二電極22が形成される。
(電極延伸部)
【0031】
図1は光取り出し側からの平面視における発光素子1の平面図であって,主にn型半導体層11上のn型電極21における形成パターンが図示されている。図1に示すように,n型電極21は,正方形状の電極形成面15の略中央域に形成された,一対の線状の電極の延伸部30である第一延伸部30A及び第二延伸部30B,これらの間に配置された第三延伸部30C,第三延伸部30Cと第一延伸部30Aとを接続する第一接続延伸部37Aと,第三延伸部30Cと第一延伸部30Aとを接続する第二接続延伸部37Bと,第一延伸部30A及び第二延伸部30B上の一部に重なるように配置された,外部電極と接続可能な第一外部接続領域16Aである第一パッド部及び第二外部接続領域16Bである第二パッド部とで構成される。これら第一延伸部30A,第二延伸部30B,第三延伸部30Cは,光取り出し側からの平面視において,略直線状とすることが好ましい。
【0032】
このn型電極21は,電極形成面15の端縁形状に沿って周縁をラウンドした包囲電極構造を有していない。ただ,電極形成面15の形状は,正方形状に限定されず,正多角形,平行四辺形等の矩形,多角形,円形等とできる他,n型半導体層11の露出領域の形状に依存して調節される。
【0033】
また好ましくは,電極延伸部は中心に対して逆の位置に設ける。例えば,光取り出し側からの平面視において,電極の延伸部30を,電極形成面15の中心Cを基準にして略対称に配置する。図1に示される第一延伸部30A及び第二延伸部30Bは,電極形成面15の中央域であって,中心Cを基準にして,略点対称に配置されており,互いに離間されている。ただ電極の延伸部30は,点対称に限らず,中心Cを含む直線に対して略線対称に配置してもよい。
【0034】
さらに第一延伸部30A,第二延伸部30B,第三延伸部30Cとは,互いに交差することはなく,図1の例では,線状の第一延伸部30A,第二延伸部30B,第三延伸部30Cが略平行に延伸され,離間距離は実質的に等間隔である。このように,外部からの電力供給領域を対称に配置することで,電極形成面15の全面への電流拡散を高効率に実現できる。また電極延伸部に,極力交差や分岐を備えない直線状の構造とすることで,電流の集中を抑止し,電流密度の均一性の向上が図れる。さらにこれら第一延伸部30A,第二延伸部30B,第三延伸部30Cとは,ほぼ同じ長さとすることが好ましい。
【0035】
また第一延伸部30A及び第二延伸部30Bを設ける位置は,電極形成面15のやや外側寄り,具体的には図1に示すように,第一延伸部30Aと第二延伸部30Bとの対向方向において,電極の延伸部30間の1/2の距離L1が,電極の延伸部30の端縁から電極形成面15の端縁までの距離L2よりも長い位置とする。特に縦方向の電極配置に関して,第一延伸部30Aと第二延伸部30Bとの間に第三延伸部30Cを追加している構成では,電極延伸部を電極形成面15の中央側でなく端部側に配置することで,電流分布の均一化を図ると共に光出力を向上させることができる。さらに,このような電流分布の均一化とN電極面積の最適化によって,Vfの低下,リニアリティの向上,放熱性の向上をすることが見込める。
(接続延伸部)
【0036】
また電極延伸部間を接続する接続延伸部も,ほぼ並行でほぼ等しい長さとすることが好ましい。すなわち図1に示す第一接続延伸部37Aと第二接続延伸部37Bとは,ほぼ並行に離間され,さらにほぼ等しい長さに延伸されている。接続延伸部は補助電極として機能し,電流を電極形成面15の全面に行き渡らせるよう作用する。
【0037】
第一接続延伸部37Aと第二接続延伸部37Bとは,好ましくは一直線状に並ばないよう,ずれて配置させる。第一接続延伸部37Aと第二接続延伸部37Bとが一直線状となれば,必然的に第三延伸部30Cと十字状に交差するため,交点部分に電流が集中する虞が生じる。そこでこのような十字状の交点の形成を回避し,電流分布を分散させるため,第三延伸部30C上で互い違いとなるように第一接続延伸部37Aと第二接続延伸部37Bとを設ける。
【0038】
また好ましくは,接続延伸部も中心に対して逆の位置に設ける。例えば,光取り出し側からの平面視において,第一接続延伸部37A及び第二接続延伸部37Bを,電極形成面15の中心を基準にして略点対称に配置する。あるいは中心Cを含む直線に対して略線対称に接続延伸部を配置してもよい。
【0039】
さらに接続延伸部を設ける位置は,逆に内側寄りとし,具体的には第一接続延伸部37Aと第二接続延伸部37Bとの対向方向において,接続延伸部間の1/2の距離W1が,接続延伸部の端縁から電極形成面15の端縁までの距離W2よりも短い位置とする。特に横方向の電極配置に関しては,接続延伸部を2本しているため,内側寄りに配置することで電流注入と拡散,放熱機能を高めることができる。さらに,このような電流分布の均一化とN電極面積の最適化によって,Vfの低下,リニアリティの向上が見込める。
(パッド部)
【0040】
さらに第一延伸部30A及び第二延伸部30Bは,上述の通りその一部に外部と接続可能な電極パッド部16をそれぞれ有している。電極パッド部16を2つ設けることで,ワイヤ等を介して供給される注入電流を分散することができ,より均一な発光が実現でき,電流や熱の集中を回避でき,発光品質及び素子信頼性の向上が図られる。
【0041】
図1の例では,ライン状の電極の延伸部30の一方の端部寄りに,電極パッド部16が設けられている。さらに,一対の電極パッド部16は,電極形成面15を構成する長手方向及び/又は短手方向に対して,オフセットに配置され,図1の電極パッド部16では,電極形成面15の中心Cを基準にして略点対称の位置に形成される。すなわち,電極形成面15の矩形状を構成する四辺に平行な2方向を基準にして,互いに斜向かいに形成されている。ただパット部の配置は点対称に限定されず,中心Cを基準にして対称であればよく,例えば中心Cを含む直線に対して線対称に設けてもよい。
【0042】
また第一パッド部16A及び第二パッド部16Bを,電極形成面15の長手方向及び/又は短手方向に対して,互いにオフセット配置させることで,第一パッド部16A及び第二パッド部16Bとの離間距離を稼ぐことができる。これらが近接すると,その領域に電流が集中して電流分布が偏るため,このような電流集中を避けるために,限られた電極形成面15においてパッド部を離間させて配置する。言い換えると,パッド部は電極形成面15の中心部分には配置しないことが望ましい。このため,第一延伸部30Aと第二延伸部30Bとの間に配置される第三延伸部30Cにはパッド部が重ならないように配置する。より好ましくは,電極形成面15の対角線上に第一パッド部16A及び第二パッド部16Bを配置する。この構成であれば,最も両者を離間させることが可能となる。
【0043】
同様に,パッド部は電極延伸部と接続延伸部との交点に位置させることが,電流が集中する領域の形成を最小限とできることから好ましいといえる。逆に,パッド部を電極延伸部と接続延伸部との交点以外に位置させると,各々が電流の集中しやすい領域となるため,それだけ電流分布が不均一となる傾向が強まる。よって電流の集中が生じうる領域を極力排除する観点から,上記構成が好ましいといえる。
【0044】
電極パッド部16は,ボンディングワイヤ等の導電部材と連結され,この導電部材を介して外部電源から電流が素子へと供給される。したがって,必然的に電極パッド部16を中心とするその近傍は,電流密度が大きい。一方で,電極パッド部16を含む電極の延伸部30の形成領域自体は発光領域29を覆うため,電極の延伸部30の直上では光採取量が低減する。すなわち,電極パッド部16をオフセットに配置することで,電流集中領域及び光遮断領域が,電極形成面15内に偏在してしまうことを抑止できるため,総合的に電流密度の均一性が向上された,かつ指向性の高い出射光を放出できる発光素子となる。また,図1の例では,各々の電極の延伸部30に一の電極パッド部16を設けているが,一の電極の延伸部30上或いは電極形成面15上に複数設ける形態でも良く,例えば,電極延伸部と同様に機能するように,電極形成面15上において直線状に配置できる他,ジグザグ状等二次元的に配列しても良い。」

(ウ)図1は以下のものである。


イ 以上から,引用例2には,図1に示されたものに関して,次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「半導体発光装置であって,
p型半導体層12,発光層13,n型半導体層11が,この順に積層して半導体構造10を構成しており,半導体構造10の上方側に位置するn型半導体層11側が,発光層13からの出射光の主発光面側,すなわち光取り出し側となるものであり,
出射光の主発光面側のn型電極21は,正方形状の電極形成面15の略中央域に形成された,一対の線状の電極の延伸部30である第一延伸部30A及び第二延伸部30B,これらの間に配置された第三延伸部30C,第三延伸部30Cと第一延伸部30Aとを接続する第一接続延伸部37Aと,第三延伸部30Cと第一延伸部30Aとを接続する第二接続延伸部37Bと,第一延伸部30A及び第二延伸部30B上の一部に重なるように配置された,外部電極と接続可能な第一外部接続領域16Aである第一パッド部及び第二外部接続領域16Bである第二パッド部とで構成されるものにあって,
第一延伸部30A及び第二延伸部30Bは,上述の通りその一部に外部と接続可能な電極パッド部16をそれぞれ有し,電極パッド部16を2つ設けることで,ワイヤ等を介して供給される注入電流を分散することができ,より均一な発光が実現でき,電流や熱の集中を回避でき,発光品質及び素子信頼性の向上が図られるものであり,
第一パッド部16A及び第二パッド部16Bを,電極形成面15の長手方向及び/又は短手方向に対して,互いにオフセット配置させ,電極形成面15の中心Cを基準にして略点対称の位置に形成されることで,第一パッド部16A及び第二パッド部16Bとの離間距離を稼ぐことができ,これらが近接すると,その領域に電流が集中して電流分布が偏るため,このような電流集中を避けるために,限られた電極形成面15においてパッド部を離間させて配置するものであり,
ここで,電極パッド部16は,ボンディングワイヤ等の導電部材と連結され,この導電部材を介して外部電源から電流が素子へと供給され,したがって,必然的に電極パッド部16を中心とするその近傍は,電流密度が大きいものとなる。」

(3)引用例3:特開2013-197197号公報
ア 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2013-197197号公報(以下「引用例3」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明の実施形態は,半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層を含む半導体層の表面(光取り出し面)上に設けられた表面電極には,発光層への均一な電流供給とともに表面からの光取り出しを大きく妨げないことが要求される。また,光取り出し効率を上げるため,光取り出し面の凹凸加工が多く行われているが,凹凸面への電極形成はコンタクト抵抗の増大をまねく懸念がある。」

(イ)「【0007】
以下,図面を参照し,実施形態について説明する。なお,各図面中,同じ要素には同じ符号を付している。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)は第1実施形態の半導体発光装置1の模式上面図であり,図1(b)は図1(a)におけるA-A’断面図である。
【0009】
なお,図1(a)では,図1(b)に示す平坦面14上の絶縁膜25の図示を省略している。その絶縁膜25は,後述するように,粗面15を形成したときのマスクの残部であり,平坦面14上に残らない場合もある。
【0010】
半導体発光装置1は,基板10と,基板10上に設けられた半導体層12と,半導体層12の第1の面(光取り出し面)16上に設けられた第1の電極としての表面電極23と,基板10の裏面に設けられた第2の電極としての裏面電極18とを備えている。
【0011】
半導体層12は,第1の面16と,第1の面16の反対側に設けられた第2の面17と,発光層13とを含む。発光層13はチップの全面に広がっている。表面電極23及び裏面電極18を通じて発光層13に電流が供給され,発光層13が発光する。
【0012】
・・・(中略)・・・
【0019】
表面電極23は,パッド22と,パッド22よりも細い線状の細線電極21とを有する。細線電極21は,平坦面14上に設けられ,粗面15上には設けられていない。パッド22も,平坦面14上に設けられ,粗面15上には設けられていない。
【0020】
例えば,第1の面16は四角形状の平面形状を有し,その2つの角部近傍にパッド22が設けられている。パッド22には,外部回路と接続するための外部端子(例えばボンディングワイヤ)が接合される。
【0021】
細線電極21はパッド22とつながっている。パッド22及び細線電極21は,例えば,同じ材料で同じ工程で一体に形成され,厚みも同じである。
【0022】
細線電極21は,電流を第1の面16の面方向に拡散させる機能を有し,第1の面16の面方向に偏りなくレイアウトされている。」

(ウ)図1(a)は以下のものである。


イ ここで,図1(a)を参照すると,図示縦方向に延びる細線電極21が,略等間隔に配列されていることが見て取れる。

ウ 以上から,引用例3には,図1(a)及び図1(b)に示されたものに関して,次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「導体発光装置1であって,
基板10と,基板10上に設けられた半導体層12と,半導体層12の第1の面(光取り出し面)16上に設けられた第1の電極としての表面電極23と,基板10の裏面に設けられた第2の電極としての裏面電極18とを備え,
半導体層12は,第1の面16と,第1の面16の反対側に設けられた第2の面17と,発光層13とを含む。発光層13はチップの全面に広がっている。表面電極23及び裏面電極18を通じて発光層13に電流が供給され,発光層13が発光するものであり,
表面電極23は,パッド22と,パッド22よりも細い線状の細線電極21とを有し,細線電極21はパッド22とつながっており,
細線電極21は,電流を第1の面16の面方向に拡散させる機能を有し,縦方向に延びる細線電極21が,略等間隔に配列されて,第1の面16の面方向に偏りなくレイアウトされているもの。」

3 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「p型(第1)導電性半導体層304,該p型(第1)導電性半導体層304の上に形成された活性層303,該活性層303の上に形成されたn型(第2)導電性半導体層302」を合わせたものは,本願発明の「半導体層」に相当する。

イ 引用発明においては「第1電極309,該第1電極309の上に形成された導電基底層308,該導電基底層308の上に形成された鏡面反射層306,該鏡面反射層306の上に形成されたp型(第1)導電性半導体層304」を備えるから,当該「第1電極309」は,本願発明の「前記半導体層の下面に設けられた下部電極」に相当する。

ウ 引用発明の「該n型(第2)導電性半導体層302の上に形成された第2金属電極301」,「金属ソルダパッド310」及び「2本の金属電極線」を合わせたものは,本願発明の「前記半導体層の上面に設けられた上部電極」に相当する。

エ(ア)引用発明の「第2金属電極301は,外形輪郭に沿った略矩形であって,当該矩形上辺中央から下に延びる金属ソルダパッド310を更に備え,
垂直型発光ダイオード300表面の中央には,金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ略平行に並び,各々枝分かれする部分を備え,第2金属電極301の前記矩形下辺に到達する2本の金属電極線を備え」ることと,
本願発明の「平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,前記第1辺と対向する第2辺に接続される第2パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあり,
前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上であること」とを対比する。
(イ)引用発明の「第2金属電極301は,外形輪郭に沿った略矩形であ」る部分は,本願発明の「前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部」に相当する。
(ウ)引用発明の「当該矩形上辺中央から下に延びる金属ソルダパッド310」は,本願発明の「前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部」に相当する。
(エ)引用発明の「直型発光ダイオード300表面の中央には,金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ略平行に並び,各々枝分かれする部分を備え,第2金属電極301の前記矩形下辺に到達する2本の金属電極線を備え」るところ,「2本の金属電極線」の一方は第2金属電極301の前記矩形右辺側にあり,他方は第2金属電極301の前記矩形左辺側にあるから,当該構成と,本願発明の「前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあ」ることとは,
「前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあ」る点で一致する。
(オ)よって,前記(ア)の両者は,
「平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあること」で一致する。

オ 引用発明の「平面形状が略矩形の垂直型発光ダイオード」は,本願発明の「平面視が略矩形状の発光素子」に相当する。

(2)よって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致する。
「半導体層と,前記半導体層の上面に設けられた上部電極と,前記半導体層の下面に設けられた下部電極と,を備える平面視が略矩形状の発光素子であって,
平面視において,前記上部電極は,
前記半導体層の周縁に沿って略矩形状に延伸する第1延伸部と,
前記第1延伸部を構成する4辺のうち第1辺に接続される第1パッド部と,
前記第1延伸部に囲まれた領域に設けられ,かつ前記第1パッド部と接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,
前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にある発光素子。」

(3)一方,両者は,以下の各点で相違する。
《相違点1》
本願発明は,「前記第1辺と対向する第2辺に接続される第2パッド部」を備えるが,引用発明は当該構成を備えない点。

《相違点2》
本願発明は,「前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあ」るとの構成を備えるのに対し,引用発明は,「第1パッド部と接続する,第2延伸部及び第3延伸部と,を有し,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にある」との構成は備えるものの,「第2延伸部及び第3延伸部」が「前記第1パッド部と前記第2パッド部とを接続する」ものであり,前記第1パッド部と前記第2パッド部とを最短距離で結ぶ第1直線よりも,前記第2延伸部は前記4辺のうちの第3辺側にあり,かつ前記第3延伸部は前記第3辺と対向する第4辺側にあ」るとの構成までは備えない点。

《相違点3》
本願発明は,「前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上である」構成を備えるが,引用発明は当該構成を備えない点。

4 判断
(1)上記相違点1及び相違点2を併せて検討する。
ア 一般に,発光ダイオード素子(以下「LED」という。)の光出射面側に設けられる電極について,LEDに電流を供給するパッドから,電流が均一に活性層の全体に拡がらないことから,必要に応じてパッドの数量を増して,LEDを動作させる一定の電流を一つのパッドのみからでなく,複数のパッドから供給することで,電流を分散させ,各パッドにおける電流集中を低減することは,引用例1(特に,前記1(1)ア(ア)の段落【0004】,及び同(イ)の段落【0014】)のほか,例えば以下の周知例1にも記載されているように,周知の事項である。

周知例1:特開2012-248847号公報
本願の出願の日前に日本国内において頒布された刊行物である,特開2012-248847号公報(以下「周知例1」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
a「【0002】
半導体発光装置は,出力や効率,信頼性の側面において有益な長所を有するため,照明装置またはディスプレイ装置のバックライトを代替できる高出力及び高効率の光源として積極的に研究開発されつつある。
【0003】
・・・(中略)・・・
【0006】
それに対し,伝導性基板を用いる場合には伝導性基板を一側の電極部分として用いることができる。このような構造の半導体発光装置は,前述した構造に比べて消失する発光面積がなく,比較的均一な電流の流れが保障されるため,発光効率の改善効果を期待することができる。
【0007】
また,そのような構造を有する半導体発光装置の光放出面に位置する電極(主に,n側電極)も,円滑な光放出のためにできるだけ小さなサイズに形成されなければならないが,この場合,駆動電圧が上昇するのみならず,電流分散(current spreading)効果が低下するため,実際活性層の相当な領域が有効な発光領域として活用できないという問題がある。
【0008】
従って,LEDの光効率を増加させるため,電流分散効果を極大にする研究が課題として浮上しており,このような研究は特に大面積に具現する高出力のための発光装置において大きく求められている。」

b「【0028】
図1は本発明の第1実施形態による半導体発光装置を示す概略斜視図である。
【0029】
本実施形態による半導体発光装置10は,第1導電型半導体層15aと,第2導電型半導体層15bと,上記第1及び第2導電型半導体層15a,15bの間に位置した活性層15cと,を有する半導体発光積層体15を含む。また,第1及び第2電極17,12は,それぞれ上記第1及び第2導電型半導体層15a,15bに形成される。
・・・(中略)・・・
【0037】
このようなパターン間隔によって電流が供給されるボンディングパッド17aに隣接した領域に相対的に大きく集中する電流を効果的に分散させることができ,結果的に全体領域において電流分散効果をより均一に示すことができる。
【0038】
もちろん,本実施形態とは異なり,上記複数のパターンは,上記ボンディングパッドと重複された領域から遠くなるほど次第に大きくなるように配列されることもできる。これは,ボンディングパッドから遠くなるほど電流の集中度が次第に弱まるという事実を考えると,より均一な電流分散効果を期待することができる。
【0039】
また,第1電極の構造は多様に変更されることができ,これによって,本発明は多様な実施形態に変形されて行われることができる。例えば,複数個のボンディングパッドを採用した形態を考慮することができ,これによって,電流制限層のパターンも多様に変形することができる。また,電流分散効率を考慮した電極指の配列も多様な形態で具現されることができ,これによって,電流分散効果を向上させるためにパターンの位置も変更されることができる。
【0040】
本発明の多様な実施形態の一つとして,図3には,2つのボンディングパッドと共に新たな電極指の配列を有する実施形態が示されている。
【0041】
図3に示された半導体発光装置30は,第1導電型半導体層35aと第2導電型半導体層35bと上記第1及び第2導電型半導体層35a,35bの間に位置した活性層35cとを有する半導体発光積層体35と,上記第1及び第2導電型半導体層35a,35bにそれぞれ形成された第1及び第2電極37,32と,を含む。
【0042】
・・・(中略)・・・
【0043】
本実施形態に採用された第1電極37は,前述した実施形態とは異なり,上記第1導電型半導体層35aに形成された2つのボンディングパッド37a1,37a2を含む。上記2つのボンディングパッド37a1,37a2は,対向する両側の角に配置されて全体面積において均一な電流分散を図ることができる。」

イ また,複数のパッドを設けた場合,当該複数のパッドを互いに近接させるよりも離間させる方が,各パッド付近に集中する電流がより離間し,全体としての電流の集中が低減できることは当業者に明らかな事項である。

ウ さらに,引用例3記載事項にもあるように,LEDの光出射面に設けられる電極は,電流を面方向に拡散させるように面内に偏りなく配置されるものであるところ,前記イのとおり,複数のパッド付近にはそれぞれ電流が集中するから,当該複数のパッドについても,面内に偏りなく配置することは,上記電流拡散の観点から当業者に明らかなことであって,例えば,面内の一方側のみに複数のパッドを設けないようにすることも当業者が当然に考慮することである。

エ そうすると,引用例2記載事項のうち,電極パッド部16について記載された「電極パッド部16を2つ設けることで,ワイヤ等を介して供給される注入電流を分散することができ,より均一な発光が実現でき」ること,及び「第一パッド部16A及び第二パッド部16Bを,電極形成面15の長手方向及び/又は短手方向に対して,互いにオフセット配置させ,電極形成面15の中心Cを基準にして略点対称の位置に形成されることで,第一パッド部16A及び第二パッド部16Bとの離間距離を稼ぐことができ,これらが近接すると,その領域に電流が集中して電流分布が偏るため,このような電流集中を避けるために,限られた電極形成面15においてパッド部を離間させて配置する」ことの両記載事項は,引用例2の記載上は,引用例2記載事項に係る「n電極21」の各「延伸部」30A?C及び各「接続延伸部」37A,Bと関連づけて記載されてはいるが,前記両記載事項は,当業者から見れば,必ずしも引用例2に記載された電極構造を前提としたものではなく,他の電極構造におけるパッド配置についても一般的に当てはまる事項を述べたものであることとわかる。

オ そして,引用発明においても,前記2(1)ア(ア)に摘記した引用例1の記載に照らせば,電流分布をより均一にすることが好ましいことは明らかであるから,引用例2に係る上記エにおける両記載事項を参照して,「当該矩形上辺中央から下に延びる金属ソルダパッド310」の反対側,すなわち,当該矩形下辺中央から上に延びる位置に,「金属ソルダパッド」を更に一つ設けて(以下これを「下部金属ソルダパッド」という。)相違点1に係る構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。
なお,矩形の上下辺について金属ソルダパッドを設けることは,引用例1の図14D,15B,19Bにも示されているように,既に知られているものであって,なんら格別なものではない。
また,下部金属ソルダパッドを設けることに伴い,引用発明の「金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ略平行に並び,各々枝分かれする部分を備え,第2金属電極301の前記矩形下辺に到達する2本の金属電極線」の矩形下辺側についても,同様に「下部金属ソルダパッド上部から2方向に分かれ略平行に並」ぶように接続して,相違点2に係る構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。

(2)上記相違点3について検討する。
引用例3記載事項には,細線電極21について,電流を第1の面16の面方向に拡散させる機能を有し,縦方向に延びる細線電極21が,略等間隔に配列されて,第1の面16の面方向に偏りなくレイアウトされることが記載されている。
そして,引用発明においても,前記2(1)ア(ア)に摘記した引用例1の記載に照らせば,電流がより均一に拡がることが好ましいことは明らかであるから,前記引用例3記載事項を参照して,「金属ソルダパッド310下部から2方向に分かれ略平行に並び,各々枝分かれする部分を備え」る「2本の金属電極線」について,略等間隔に配列されて,面方向に偏りなくレイアウトされるようにして,相違点3に係る,「前記第1直線を垂直に2等分する第2直線上において,前記第2延伸部と前記第3延伸部との距離は,前記第1延伸部と前記第2延伸部との最短距離以上であり,かつ前記第1延伸部と前記第3延伸部との最短距離以上である」構成を備えることは,当業者が適宜になし得たことである。

(3)本願明細書に記載された効果について
本願明細書の段落【0036】?【0044】には,本願発明に係る「実施例1」が,「比較例1」及び「比較例2」に比して,良好な順方向電圧Vf,光出力Po及び発光効率WPEの各値が得られる旨の記載がされている。
しかしながら,前記各「実施例1」,「比較例1」及び「比較例2」について,それらの具体的構成(電極を含む各部寸法,半導体層表面の導電率,等)が不明であって,通常,本願発明に含まれると解される発光装置が,比較例に対して優位にあるといえるか明らかでなく,また,前記各値の具体値を比較しても,順方向電圧Vfについては1%程度の減少,光出力Poについては1%未満の増加,発光効率WPEについては0.7%の増加にとどまる。よって,本願発明が従来技術に比して格別な効果を有するとまではいえない。

5 小括
よって,本願発明は,引用発明,及び引用例2及び3にそれぞれ記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-14 
結審通知日 2019-11-19 
審決日 2019-12-04 
出願番号 特願2014-201511(P2014-201511)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 近藤 幸浩
星野 浩一
発明の名称 発光素子  
代理人 山尾 憲人  
代理人 言上 惠一  

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