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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1359076
審判番号 不服2018-16455  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-10 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 特願2014-116569「反射防止フィルム及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月21日出願公開、特開2015-230386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年1月31日付け :拒絶理由通知書
平成30年4月3日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年9月14日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年12月10日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明は、平成30年4月3日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
直線偏光板と1/4波長板と正Cプレートとを順次積層した反射防止フィルムにおいて、
前記1/4波長板が、少なくとも前記直線偏光板の透過光に対して逆分散の波長特性であり、
前記正Cプレートの厚み方向のリタデーション値Rthが-50nm以下、-150nm以上であり、
前記1/4波長板が、透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長位相差層と、透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長位相差層との積層体であり、
前記1/2波長位相差層及び前記1/4波長位相差層は、ネマチック相を示す棒状化合物を用いており、
前記1/2波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して15度であり、
前記1/4波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して75度であり、
極角60度において方位角0度から360度の範囲で方位角を順次変化させて計測した計測結果における色座標の平均値からのバラツキ3σが0.02以下である
反射防止フィルム。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた以下の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。
特願2014-161220号(特開2015-163940号)

第4 先願の記載及び先願発明
1 先願の記載
平成27年9月10日に出願公開(特開2015-163940号)がされた出願(特願2014-161220号)(以下「優先権主張出願」という。)の優先権主張の基礎となる、平成25年9月10日に出願された特願2013-187059号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願当初明細書等」という。)には以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。また、記号(「R40」等)について、断り無しに半角を全角に置き換えたものがある。
また、先願当初明細書等の段落番号の後にかっこ書きで、優先権主張出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「優先権主張出願当初明細書等」という。)における対応する段落番号も付記する。

(1)「【技術分野】
【0001】(【0001】)
本発明は、楕円偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】(【0002】)
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの、光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムとしては、重合性液晶化合物を含む組成物を基材に塗布することにより製造される光学フィルムが知られており、偏光板と組み合わせることで楕円偏光板として機能することが知られている。例えば、特許文献1には、表示装置の光学補償に用いられる楕円偏光板分について記載されている。
・・・(省略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】(【0004】)
しかしながら、従来の楕円偏光板は、表示時の着色や光漏れを抑制するという光学補償特性において十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】(【0005】)
本発明は以下の発明を含む。
[1] 偏光子の一方の面に貼合された透明保護フィルムと、他方の面に貼合された光学異方性フィルムからなる楕円偏光板であって、
透明保護フィルム側からフィルム法線方向に偏光を入射させて測定した、
視感度補正単体透過率が43.0%以上であり、
視感度補正偏光度が95.0%以上であり、
単体の色相a*値が-2.0?1.0であり、
単体の色相b*値が-1.0?5.0である楕円偏光板。
[2] 光学異方性フィルムが、式(1)、(2)及び(3)を満たす[1]に記載の楕円偏光板。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100<Re(550)<160 (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する位相差値を表す。)
[3] 光学異方性フィルムが重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層を有する[1]又は[2]のいずれかに記載の楕円偏光板。
[4] 光学異方性フィルムが2つのコーティング層を有する[3]に記載の楕円偏光板。
[5] 光学異方性フィルムが下記式(4)を満たすコーティング層を有する[3]又は[4]に記載の楕円偏光板。
nx≒ny<nz (4)
(式中、nxは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。)
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0006】(【0006】)
本発明によれば、表示時の着色や光漏れの抑制に優れる楕円偏光板を提供することができる。」

(2)「【発明を実施するための形態】
【0008】(【0008】)
本発明の楕円偏光板(以下、本楕円偏光板ということがある。)は、偏光子の一方の面に貼合された透明保護フィルムと、他方の面に貼合された光学異方性フィルムからなり、透明保護フィルム側からフィルム法線方向に偏光を入射させて測定した視感度補正単体透過率が43.0%以上であり、視感度補正偏光度が95.0%以上であり、単体色相a*値が-2.0?1.0であり、単体色相b*値が-1.0?5.0である楕円偏光板である。
視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度、単体の色相a*値及び単体の色相b*値が上記の範囲であれば、有機EL表示装置等の表示装置において白表示時の着色の抑制に優れる楕円偏光板を得ることができる。
・・・(省略)・・・
【0011】(【0012】)
<偏光子>
偏光子は通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。偏光子の少なくとも一方の面に接着剤を介して透明保護フィルムで挟み込むことで偏光板が作製される。
・・・(省略)・・・
【0024】(【0028】)
[光学異方性フィルム]
本発明における光学異方性フィルムは、好ましくは下記式(1)、(2)及び(3)で表される光学特性を有する。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100<Re(550)<160 (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する位相差値を表す。)
【0025】(【0029】)
光学異方性フィルムが式(1)および式(2)で表される光学特性を有することで、式(1)および式(2)で表される光学特性を有する本楕円偏光板を得ることができる。光学異方性フィルムが式(1)および式(2)で表される光学特性を有すると、可視光域における各波長の光に対して、一様な偏光変換の特性が得られ、有機EL表示装置等の表示装置の黒表示時の光漏れを抑制することができる。
【0026】(【0030】)
光学異方性フィルムとしては、例えば、重合性液晶を重合させることにより形成される層及び延伸フィルムが挙げられる。光学異方性フィルムの光学特性は重合性液晶の配向状態または延伸フィルムの延伸方法により調節することができるが、本発明においては、光学異方性フィルムが重合性液晶を重合させることにより形成されるコーティング層(以下、光学異方性層ということがある)であるものが好ましい。
・・・(省略)・・・
【0031】(【0035】)
重合性液晶としては、棒状の重合性液晶および円盤状の重合性液晶が挙げられる。
棒状の重合性液晶が基材に対して水平配向または垂直配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の長軸方向と一致する。
円盤状の重合性液晶が配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の円盤面に対して直交する方向に存在する。
・・・(省略)・・・
【0036】(【0040】)
<重合性液晶>
重合性液晶とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でも良く、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でも良い。
【0037】(【0041】)
棒状の重合性液晶としては、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、重合性液晶(A)ということがある。)及び、下記式(X)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶(B)ということがある)が挙げられる。
・・・(省略)・・・
【0050】(【0054】)
重合性液晶(B)の具体例としては、下記式(I-1)?式(I-4)、式(II-1)?式(II-4)、式(III-1)?式(III-26)、式(IV-1)?式(IV-26)、式(V-1)?式(V-2)および式(VI-1)?式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2?12の整数を表わす。これらの重合性液晶(B)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
・・・(省略)・・・
【0053】(【0057】)

・・・(省略)・・・
【0064】(【0068】)
前記重合性液晶を重合させることにより形成される層は、基材上に形成することが好ましい。前記基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380?780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
・・・(省略)・・・
【0075】(【0079】)
[重合性液晶組成物]
重合性液晶を重合させることにより形成される層(光学異方性層)は、通常、1以上の重合性液晶を含有する組成物(以下、重合性液晶組成物ということがある。)を、基材、配向膜、保護層又は光学異方性層の上に塗布し、得られた塗膜中の重合性液晶を重合させることにより形成される。
・・・(省略)・・・
【0143】(【0147】)
本楕円偏光板は、下記式(4)を満たすコーティング層からなる光学異方性フィルムを含んでもよい。
nx≒ny<nz (4)
【0144】(【0148】)
光学異方性層が式(4)を満たすとは、厚み方向の位相差を発現することを意味する。重合性液晶を重合させることにより形成される層が厚み方向の位相差を発現するためには、重合性液晶を適した方向に配向させればよい。本発明において、厚み方向の位相差を発現するとは、式(20)において、Rth(厚み方向の位相差値)が負となる特性を示すものと定義する。Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値(R40)と、面内の位相差値(Re)とから算出することができる。すなわち、Rthは、Re、R40、d(光学異方性フィルムの厚み)、およびn0(光学異方性フィルムの平均屈折率)から、以下の式(21)?(23)によりnx、ny及びnzを求め、これらを式(20)に代入することで算出することができる。
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d (20)
Re =(nx-ny)×d (21)
R40=(nx-ny')×d/cos(φ) (22)
(nx+ny+nz)/3=n0 (23)
ここで、
φ=sin^(-1)〔sin(40°)/n0〕
ny'=ny×nz/〔ny^(2)×sin^(2)(φ)+nz^(2)×cos^(2)(φ)〕^(1/2)
また、nx、nyおよびnzは前述の定義と同じである。
・・・(省略)・・・
【0148】(【0152】)
式(4)を満たす光学異方性層(以下、ポジティブC層ということがある)の面内位相差値Re(550)は通常0?10nmの範囲であり、好ましくは0?5nmの範囲である。厚み方向の位相差値Rthは、通常-10?-300nmの範囲であり、好ましくは-20?-200nmの範囲である。かかる面内位相差値Re(550)及び厚み方向の位相差値Rthは、上記光学異方性層と同じ方法で調整することができる。
・・・(省略)・・・
【0240】(【0251】)
光学異方性フィルムが層A及び層Bを含む場合の本楕円偏光板の構成を図4に示す。層A及び層Bを含む構成の場合は、偏光板を積層する位置に制限がある。
具体的には、λ/4の位相差を有する層Aと、λ/2の位相差を有する層Bを積層する場合、偏光板の吸収軸に対して、まず層Bを、層Bの遅相軸が75°となるように形成し、次に層Aを、層Aの遅相軸が15°となるように形成する。第二の光学異方性フィルムの位置に制限はないが、偏光板、層B及び層Aがこの順番で積層される必要がある。このように積層することで、得られる楕円偏光板は広帯域λ/4板として機能を発現することが可能となる。ここで、層Aと層Bを形成する軸角度に制限はなく、例えば、特開2004-126538号公報に記載のように、層Aと層Bの遅相軸角度を偏光板の吸収軸に対して30°と-30°、あるいは45°と-45°としても、広帯域λ/4板としての機能を発現させることができることは公知であるから、所望の方法で層を積層することが可能である。
(当合議体注:図4は次の図である。なお、本図は優先権主張出願における図4に対応する。)



(3)「【実施例】
【0261】(【0272】)
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。
・・・(省略)・・・
【0270】(【0281】)
[組成物(B-1)の調製]
組成物(B-1)の組成を表2に示す。各成分を混合し、得られた溶液を80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却し、組成物(B-1)を得た。
【0271】(【0282】)
【表2】

表2における括弧内の値は、調製した組成物の全量に対する各成分の含有割合を表す。表2におけるLR9000は、BASFジャパン社製のLaromer(登録商標)LR-9000を、Irg907は、BASFジャパン社製のイルガキュア(登録商標)907を、BYK361Nは、ビックケミージャパン製のレベリング剤を、LC242は、下記式で示されるBASF社製の重合性液晶化合物を、PGMEAは、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートを表す。

・・・(省略)・・・
【0274】(【0285】)
[偏光子(3)の製造]
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.07/5.5/100の水溶液に28℃で75秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、95℃で152秒乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてなる偏光子(3)を作製した。
【0275】(【0286】)
[光学異方性フィルム(1)の製造]
延伸処理を施していないシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン製ZF-14 厚さ23μm)の表面を、コロナ処理装置(AGF-B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。
・・・(省略)・・・
【0276】(【0287】)
[光学異方性フィルム(2)の製造]
シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)の表面を、コロナ処理装置を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、配向性ポリマー組成物(1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、34nmであった。続いて、配向膜上に組成物(B-1)を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB?15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することによりコーティング層を形成した。得られたコーティング層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ、膜厚は450nmであった。また、得られた光学異方性フィルム(2)の波長550nmでの位相差値を測定したところRe(550)=1nm、Rth(550)=-70nmであった。すなわちコーティング層は下記式(4)で表される光学特性を有する。なお、COPの波長550nmにおける位相差値は略0であるため該光学特性には影響しない。
nx≒ny<nz (4)
・・・(省略)・・・
【0278】(【0289】)
[光学異方性フィルム(4)の製造]
トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製 KC4UYTAC 40μm)上に、位相差層形成用組成物(B-1)を用いた事以外は、実施例1と同様の方法で第一のコーティング層を形成した。このようにして得られた第一のコーティング層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ2.0μmであった。さらに、第一のコーティング層の上に、先と同様の方法でコロナ処理、配向処理を施し、位相差層形成用組成物(B-1)を用いて第二のコーティング層を形成した。このようにして得られた第一のコーティング層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1.0μmであった。この際、2回目の偏光UV照射の偏光方向を第一のコーティング層の光軸(遅相軸)に対して60°となるように設定し、第一のコーティング層と第二のコーティング層の遅相軸が60°に交差するように作製した。このようにして得られた光学フィルム(3)(当合議体注:「光学フィルム(3)」は「光学異方性フィルム(4)」の誤記である。)の位相差値を波長450nm、550nm、650nmで測定したところ、Re(450)=102nm、Re(550)=138nm、Re(650)=161nmであった。この測定値から前述した式(1)、(2)及び(3)を計算したところ以下のとおりであった。
Re(450)/Re(550)=0.74
Re(650)/Re(550)=1.17
・・・(省略)・・・
【0281】(【0292】)
[楕円偏光板(1)の製造]
上記のようにして得られた偏光子(1)と、透明保護フィルムとしてケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製 KC4UYTAC 40μm)と、光学異方性フィルム(1)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。この際、光学異方性フィルム(1)のCOP面を出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回コロナ前処理した。貼合物の張力を430N/mの保ちながら、60℃で2分間乾燥して偏光子の一方の面に貼合された透明フィルムと、他方の面に光学異方性フィルム1からなる楕円偏光板(1)を作製した。
・・・(省略)・・・
【0285】(【0296】)
実施例3
[楕円偏光板(3)の製造]
偏光子(1)の代わりに偏光子(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、楕円偏光板(3)を製造した。得られた楕円偏光板(3)の視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度、単体色相a*、単体色相b*値を測定した。この結果を表3に示す。また、コーティング層側に粘着剤を介して鏡に貼合し、反射率ならびに反射色相a*、反射色相b*値を測定した。この結果を表4に示す。
・・・(省略)・・・
【0288】(【0299】)
実施例6
[楕円偏光板(6)の製造]
光学異方性フィルム(1)の代わりに光学異方性フィルム(4)を用いた以外は実施例3と同様にして、楕円偏光板(6)を作製した。また、光学異方性フィルム(4)の第一のコーティング層の遅相軸と偏光子(3)の吸収軸は15°(当合議体注:本実施例に対応する発明を実施するための形態として記載されている【0240】の記載を考慮すると、「15°」は「75°」の誤記である。)に交差するようにした。楕円偏光板(6)の視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度、単体色相a*、単体色相b*値を測定した。この結果を表3に示す。また、コーティング層側に粘着剤を介して鏡に貼合し、反射率ならびに反射色相a*、反射色相b*値を測定した。この結果を表4に示す。
【0289】(【0300】)
実施例7
[楕円偏光板(7)の製造]
実施例5(当合議体注:「実施例5」は「実施例6」の誤記である。)で得られた楕円偏光板(6)の第二のコーティング層の上に、粘着剤を介して光学異方性フィルム(2)のCOP面を貼合して、楕円偏光板(7)を作製した。得られた楕円偏光板(7)の視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度、単体色相a*、単体色相b*値を測定した。この結果を表2(当合議体注:「表2」は「表3」の誤記である。)に示す。また、コーティング層側に粘着剤を介して鏡に貼合し、反射率ならびに反射色相a*、反射色相b*値を測定した。この結果を表4に示す。
・・・(省略)・・・
【0293】(【0304】)
【表3】


【0294】(【0305】)
【表4】



(4)「【産業上の利用可能性】
【0295】(【0306】)
本発明により製造した積層体は、簡便かつ容易に薄型の楕円偏光板を作製できるとともに、あらゆる方向から観察した際にも明所での反射防止特性に優れており有用である。」

(5)「【符号の説明】
【0296】(【0307】)
1 第一の光学異方性層
2 ポジティブC層
3、3’ 基材
4 層A
5 層B
6 偏光子
7 有機ELパネル
110 本楕円偏光板
・・・(省略)・・・」

2 先願発明
前記1より、先願当初明細書等には、実施例7の「楕円偏光板(7)」が記載されているところ、この「楕円偏光板(7)」は、その製造工程からみて、「トリアセチルセルロースフィルムと、偏光子と、トリアセチルセルロースフィルム、第一のコーティング層及び第二のコーティング層を含む光学異方性フィルム(4)と、シクロオレフィンポリマーフィルム及びコーティング層を含む光学異方性フィルム(2)とを、この順に具備する」ものである。また、先願当初明細書の段落【0240】の記載に照らし合わせてみると、上記「第一のコーティング層」は、「λ/2の位相差を有する層」であり、また、上記「第二のコーティング層」は、「λ/4の位相差を有する層」である。
そうしてみると、先願当初明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。なお、用語を整理して記載した。
「トリアセチルセルロースフィルムと、偏光子と、トリアセチルセルロースフィルム、第一のコーティング層及び第二のコーティング層を含む光学異方性フィルム(4)と、シクロオレフィンポリマーフィルム及びコーティング層を含む光学異方性フィルム(2)とを、この順に具備する楕円偏光板であって、
偏光子は、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてなり、
第一のコーティング層は、トリアセチルセルロースフィルム上に組成物(B-1)を塗布し乾燥した後、紫外線を照射することにより形成したλ/2の位相差を有する層であり、第一のコーティング層の遅相軸と偏光子の吸収軸は75°に交差するようにし、
第二のコーティング層は、第一のコーティング層上に組成物(B-1)を塗布し乾燥した後、紫外線を照射することにより形成したλ/4の位相差を有する層であり、第一のコーティング層と第二のコーティング層の遅相軸が60°に交差するように作製され、
光学異方性フィルム(4)の位相差値は、Re(450)=102nm、Re(550)=138nm、Re(650)=161nmであり、
光学異方性フィルム(2)のコーティング層は、シクロオレフィンポリマーフィルム上に組成物(B-1)を塗布し乾燥した後、紫外線を照射することにより形成したものであり、光学異方性フィルム(2)の位相差値はRe(550)=1nm、Rth(550)=-70nmであり、すなわち、光学異方性フィルム(2)のコーティング層はnx≒ny<nzで表される光学特性を具備し、
組成物(B-1)の組成は、次の表2に示すとおりである、
表示時の着色や光漏れの抑制に優れ、あらゆる方向から観察した際にも明所での反射防止特性に優れている楕円偏光板。
表2:



第5 対比
1 本願発明と先願発明とを対比する。
(1)反射防止フィルム
先願発明の「楕円偏光板」は、「あらゆる方向から観察した際にも明所での反射防止特性に優れている」ことから、本願発明の「反射防止フィルム」に相当する。

(2)直線偏光板
先願発明の「偏光子」は「ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてな」るものであるところ、このようにポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてなる偏光子は、直線偏光板としての光学特性を有することは技術常識である。また、先願発明における「トリアセチルセルロースフィルム」と「偏光子」とが積層されたものは、本願発明における「直線偏光板」に相当する。

(3)1/4波長板
先願発明の「光学異方性フィルム(4)」は、「位相差値は、Re(450)=102nm、Re(550)=138nm、Re(650)=161nm」となっていることから、1/4波長板としての機能を有するものであると認められる。また、「光学異方性フィルム(4)」は、「第一のコーティング層及び第二のコーティング層を含」み、「第一のコーティング層」は「λ/2の位相差を有する層」であり、「第二のコーティング層」は「λ/4の位相差を有する層」であることから、先願発明における「光学異方性フィルム(4)」は、「透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長位相差層と、透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長位相差層との積層体」であり、また、本願発明における「1/4波長板」に相当する。

(4)正Cプレート
先願発明における「光学異方性フィルム(2)」は、その「コーティング層」が「nx≒ny<nzで表される光学特性を具備し」、「光学異方性フィルム(2)の位相差値はRe(550)=1nm、Rth(550)=-70nm」であることから、先願発明における「光学異方性フィルム(2)」は本願発明における「正Cプレート」に相当し、先願発明における「光学異方性フィルム(2)」の厚み方向の位相差値は本願発明の「-50nm以下、-150nm以上」という要件を満たしている。

(5)直線偏光板と1/4波長板と正Cプレートとの積層順
先願発明における「楕円偏光板」は、「トリアセチルセルロースフィルムと、偏光子と、トリアセチルセルロースフィルム、第一のコーティング層及び第二のコーティング層を含む光学異方性フィルム(4)と、シクロオレフィンポリマーフィルム及びコーティング層を含む光学異方性フィルム(2)とを、この順に具備する」ものであることから、先願発明における積層順は本願発明における積層順と同じであると認められる。

(6)逆分散の波長特性
先願発明の「光学異方性フィルム(4)の位相差値は、Re(450)=102nm、Re(550)=138nm、Re(650)=161nm」となっているところ、このような光学特性は「逆分散の波長特性」であることから、先願発明における「光学異方性フィルム(4)」は本願発明の「少なくとも前記直線偏光板の透過光に対して逆分散の波長特性であ」るという要件を満たしている。

(7)ネマチック相を示す棒状化合物
先願発明の「第一のコーティング層」及び「第二のコーティング層」は表2に示されるように重合性液晶として「LC242」を含むものであるとこ
ろ、「LC242」は、本願明細書の段落【0030】における式(13)に該当する物質でもあることから、「ネマチック相を示す棒状化合物」に相当すると認められる。したがって、先願発明の「第一のコーティング層」及び「第二のコーティング層」は、本願発明における「ネマチック相を示す棒状化合物を用いて」いるという要件を満たしている。

(8)1/2波長位相差層の遅相軸と直線偏光板の透過軸との角度
先願発明は「第一のコーティング層の遅相軸と偏光子の吸収軸は75°に交差するようにし」たものであるところ、偏光子の吸収軸と透過軸とは90°で交差していることから、先願発明における「第一のコーティング層の遅相軸」は、偏光子の透過軸に対して15°となっているものと認められ、本願発明における「直線偏光板の透過軸に対して15度であ」るという要件を満たしている。

(9)1/4波長位相差層の遅相軸と直線偏光板の透過軸との角度
先願発明は「第一のコーティング層と第二のコーティング層の遅相軸が60°に交差するように作製され」たものであるところ、上記(8)において記載したように「第一のコーティング層の遅相軸」は偏光子の透過軸に対して15°で交差しているものであり、また、先願当初明細書の段落【0240】には「偏光板の吸収軸に対して、まず層Bを、層Bの遅相軸が75°となるように形成し、次に層Aを、層Aの遅相軸が15°となるように形成する」と記載されていることから、先願発明における「第二のコーティング層」は、偏光子の透過軸に対して75°となっているものと認められ、本願発明における「直線偏光板の透過軸に対して75度であ」るという要件を満たしている。

2 一致点
以上のことから、本願発明と先願発明とは、以下の構成において一致する。
「直線偏光板と1/4波長板と正Cプレートとを順次積層した反射防止フィルムにおいて、
前記1/4波長板が、少なくとも前記直線偏光板の透過光に対して逆分散の波長特性であり、
前記正Cプレートの厚み方向のリタデーション値Rthが-50nm以下、-150nm以上であり、
前記1/4波長板が、透過光に1/2波長分の位相差を付与する1/2波長位相差層と、透過光に1/4波長分の位相差を付与する1/4波長位相差層との積層体であり、
前記1/2波長位相差層及び前記1/4波長位相差層は、ネマチック相を示す棒状化合物を用いており、
前記1/2波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して15度であり、
前記1/4波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して75度である
反射防止フィルム。」

3 相違点
本願発明と先願発明とは、次の点で一応相違する。
「極角60度において方位角0度から360度の範囲で方位角を順次変化させて計測した計測結果における色座標の平均値からのバラツキ3σ」について、本願発明は「0.02以下である」のに対して、先願発明は、そのような測定についての記載が先願当初明細書等にないことから、「0.02以下である」のか一応明らかではない点。

第6 判断
1 相違点について
先願発明における「偏光子」、「光学異方性フィルム(4)」及び「光学異方性フィルム(2)」は本願発明と同様の役割(それぞれ、「直線偏光板」、「1/4波長板」及び「正Cプレート」)を果たしており、また、「光学異方性フィルム(4)」を構成する「第一のコーティング層」、「第二のコーティング層」についても、その材料は本願と同様に「ネマチック相を示す棒状化合物」を用いており、その遅相軸と偏光子の透過軸との角度の関係も本願発明と同じ関係となっている。さらに、先願発明における「光学異方性フィルム(2)」の位相差値は「Rth(550)=-70nm」であり、この値は本願発明における数値範囲である「-50nm以下、-150nm以上」を満たすものとなっている。したがって、先願当初明細書等には「極角60度において方位角0度から360度の範囲で方位角を順次変化させて計測した計測結果における色座標の平均値からのバラツキ3σ」についての記載はないものの、先願発明は本願発明と同様の構成を有していることから、先願発明においてはこの値が「0.02以下である」蓋然性が高いものであり、この点において本願発明と先願発明とが実質的に相違点となるものではない。
よって、本願発明は先願発明と同一である。

2 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「(A)引用文献5の0289において、「第一のコーティング層と第二のコーティング層の遅相軸が60°に交差する」旨が記載されており、
(B)また、引用文献5の[0299]において、「第一のコーティング層の遅相軸と偏光子(3)の吸収軸は15°に交差する」旨が記載されております。
上記(A)及び(B)の記載から、各コーティング層の遅相軸と、偏光子の透過軸との関係を算出すると、第一のコーティング層(本願請求項1の「1/2波長位相差層」に相当)の遅相軸は、偏光板の透過軸に対して75°、第二のコーティング層(本願請求項1の「1/4波長位相差層」に相当)の遅相軸は、偏光板の透過軸に対して15°となります。
そのため、上記(A)及び(B)の記載からは、審査官殿が指摘の上記下線部の記載(第一のコーティング層の遅相軸は偏光板の透過軸に対して15°、第二のコーティング層の遅相軸は偏光板の透過軸に対して75°と算出される。)にはなりません。
したがって、本願請求項1の発明は、「前記1/2波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して15度であり、前記1/4波長位相差層の遅相軸が、前記直線偏光板の透過軸に対して75度であり、」という構成を備えている点で、引用文献5に記載の発明とは相違しますので、上記理由3の拒絶理由は有さないものと思料致します。」と主張する。
しかしながら、上記「第4」1(3)において記載したように、先願当初明細書の段落【0288】(引用文献5の【0299】)における「第一のコーティング層の遅相軸と偏光子(3)の吸収軸は15°に交差する」との記載は、先願当初明細書の段落【0240】の記載を考慮すると「第一のコーティング層の遅相軸と偏光子(3)の吸収軸は75°に交差する」の誤記であると認められることから、先願発明と本願発明とはこの点において相違しない。
また、仮に先願当初明細書の段落【0288】における「第一のコーティング層の遅相軸と偏光子(3)の吸収軸は15°に交差する」との記載が誤記でないとしても、広帯域λ/4板とするために、λ/4の位相差を有する層と、λ/2の位相差を有する層とを、偏光板の透過軸に対して、λ/2の位相差を有する層の遅相軸が15°となるように形成し、λ/4の位相差を有する層の遅相軸が75°となるように形成する事項は周知技術であることから、この点については、先願発明に周知技術を適用するものにすぎず、新たな効果を奏するものでないことから実質的に相違点となるものではない。
したがって、いずれにしても審判請求人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされたとみなされる先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、また、本願の発明者が先願発明をした者と同一でないこと及び本願出願時において本願の出願人が先願の出願人と同一でもないことは明らかなので、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-08 
結審通知日 2019-11-12 
審決日 2019-12-02 
出願番号 特願2014-116569(P2014-116569)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山▲崎▼ 和子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
早川 貴之
発明の名称 反射防止フィルム及び画像表示装置  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
代理人 芝 哲央  

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