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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1359079
審判番号 不服2019-474  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-15 
確定日 2020-01-16 
事件の表示 特願2017- 61903「ゲームプログラム、方法、および情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日出願公開、特開2018-161434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月27日の出願であって、平成30年7月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成31年1月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年1月15日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容について
本件補正は、特許請求の範囲の記載について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成30年9月19日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へ補正することを含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年9月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「プロセッサ、メモリ、表示部、および第1ユーザの入力操作を受け付けるように構成された操作部を備える第1コンピュータにおいて実行されるゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムに基づくゲームは、前記第1ユーザを含む複数のユーザのそれぞれに対応する複数のキャラクタのそれぞれによって作用を順次付与された、前記複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数の移動体のそれぞれが、ゲーム空間内を順次移動することによって進行し、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
複数のメッセージを前記メモリに記憶させるステップと、
前記第1ユーザとは異なる第2ユーザに対応する第2キャラクタに、前記第2キャラクタに対応する第2移動体に前記作用を付与させるための、前記第2ユーザの入力操作が、前記第2ユーザに対応する第2コンピュータにおいて受け付けられた場合、前記第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得するステップと、
前記第1情報に基づいて、前記第2キャラクタによる前記第2移動体に対する前記作用の付与に関する評価を特定するステップと、
前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを前記表示部に表示させるステップと、
前記少なくとも1つのメッセージのうちいずれかを選択するための前記第1ユーザの前記入力操作が受け付けられた場合、選択された前記メッセージに関する第2情報を、前記第2コンピュータに送信するステップとを実行させる、ゲームプログラム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)
「プロセッサ、メモリ、表示部、および第1ユーザの入力操作を受け付けるように構成された操作部を備える第1コンピュータにおいて実行されるゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムに基づくゲームは、前記第1ユーザを含む複数のユーザのそれぞれに対応する複数のキャラクタのそれぞれによって作用を順次付与された、前記複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数の移動体のそれぞれが、ゲーム空間内を順次移動することによって進行し、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
複数のメッセージを前記メモリに記憶させるステップと、
前記第1ユーザとは異なる第2ユーザに対応する第2キャラクタに、前記第2キャラクタに対応する第2移動体に前記作用を付与させるための、前記第2ユーザの入力操作が、前記第2ユーザに対応する第2コンピュータにおいて受け付けられた場合、前記第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得するステップと、
前記第1情報に基づいて、前記第2キャラクタによる前記第2移動体に対する前記作用の付与に関する評価を特定するステップと、
前記第1情報を取得するまで、チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ、前記第1情報を取得したことに応答して、前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを、前記第1ユーザが前記チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作によらずとも自動的に前記表示部に表示させるステップと、
前記少なくとも1つのメッセージのうちいずれかを選択するための前記第1ユーザの前記入力操作が受け付けられた場合、選択された前記メッセージに関する第2情報を、前記第2コンピュータに送信するステップとを実行させる、ゲームプログラム。」

2 補正の適否
(1)新規事項について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを前記表示部に表示させるステップ」という記載を「前記第1情報を取得するまで、チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ、前記第1情報を取得したことに応答して、前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを、前記第1ユーザが前記チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作によらずとも自動的に前記表示部に表示させるステップ」と補正すること(以下、「補正事項」という。)を含むものである。

上記補正事項における「前記第1情報を取得するまで、チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」る点に関し、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には以下の記載がある。

「【0225】
図42は、第1ユーザによって操作されるユーザ端末100Aに表示されるゲーム画面4の一例を示す図である。図42のゲーム画面4において、キャラクタ41Aは、ラフ33の上に立っている。キャラクタ41Cに許可期間が割り当てられているため、マーク55がアイコン54Cの上部に配置される。表示制御部117は、チャット機能に対応するアイコン131を、ゲーム画面4において撮影画像に重畳させて、表示部152に表示させる。
【0226】
図43は、第2ユーザによって操作されるユーザ端末100Bに表示されるゲーム画面4の一例を示す図である。ユーザ端末100Bにおいて、仮想カメラ44は、ゲーム空間3におけるキャラクタ41Aおよび41Bを撮影範囲に含む位置に配置される。図43のゲーム画面4において、キャラクタ41Bは、ラフ33の上を歩いて移動している。キャラクタ41Aは、ゲーム画面4においてキャラクタ41Bの前方に配置される。ユーザ端末100Bの表示制御部117は、チャット機能に対応するアイコン131を、図43に示すように、ユーザ端末100Bのゲーム画面4において撮影画像に重畳させて、表示部152に表示させる。
【0227】
図42のゲーム画面4において、ユーザ端末100Aの操作受付部112は、アイコン131を選択するための第1ユーザの入力操作(たとえばタップ操作)を受け付ける。表示制御部117は、この入力操作に基づいて、たとえば図44に示すように、チャット機能に対応するウインドウ132および複数のメッセージ133を、表示部152に表示させる。
【0228】
(ウインドウ132の表示)
図44は、複数のメッセージ133が表示されるゲーム画面4の一例を示す図である。表示制御部117は、ゲーム画面4においてアイコン131に関連付けて配置されるウインドウ132を、表示部152に表示させる。表示制御部117は、さらに、ウインドウ132内に並んで配置される複数のメッセージ133を、表示部152に表示させる。各メッセージ133は、第1ユーザから第2?第4ユーザに対して伝達される事項を表す表示情報(画像およびテキストなど)を有する。各メッセージ133には、好ましくは、第2?第4ユーザに伝達される事項に対応する音声を表す音声情報が関連付けられる。」

上記記載をふまえると、当初明細書等には、「チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」ることは記載されていると認められる。しかしながら、当初明細書等には、「チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」る期間を「第1情報を取得するまで」とする点は記載されていない。

また、当初明細書等には、前記第1ユーザの操作に応答してウィンドウを表示部へ表示させることと、第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得することとの関連性についても記載がないから、上記「第1情報を取得するまで」とする点が、当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。

よって、上記補正事項における「第1情報を取得するまで」とする点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1では、第1ユーザの操作に応答した表示に関し、「メッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」ると記載されているのに対し、第1情報を取得したことに応答した表示に関し、「特定した前記少なくとも1つのメッセージを・・・前記表示部に表示させる」と異なる文言にて記載されていることから、第1ユーザの操作に応答した表示と、第1情報を取得したことに応答した表示とにおいて、表示部への表示態様を異なるものとすること(例えば、第1ユーザの操作に応答した表示については、メッセージの候補を含むウィンドウを表示部に表示させるのに対し、第1情報を取得したことに応答した表示については、ウィンドウを用いずにメッセージ自体を表示部に表示させること)も含むものと認められる。

一方、当初明細書等には、第1ユーザの操作に応答した表示、及び、第1情報を取得したことに応答した表示に関し、以下の記載がある。

「【0228】
(ウインドウ132の表示)
図44は、複数のメッセージ133が表示されるゲーム画面4の一例を示す図である。表示制御部117は、ゲーム画面4においてアイコン131に関連付けて配置されるウインドウ132を、表示部152に表示させる。表示制御部117は、さらに、ウインドウ132内に並んで配置される複数のメッセージ133を、表示部152に表示させる。各メッセージ133は、第1ユーザから第2?第4ユーザに対して伝達される事項を表す表示情報(画像およびテキストなど)を有する。各メッセージ133には、好ましくは、第2?第4ユーザに伝達される事項に対応する音声を表す音声情報が関連付けられる。」

「【0241】
(メッセージ134の表示)
図50は、ストレートに対応する複数のメッセージ133が配置されるゲーム画面4の一例を示す図である。表示制御部117は、ウインドウ132内に並んで配置される複数のメッセージ134を、表示部152に自動的に表示させる。これにより表示制御部117は、いずれかのメッセージ134に対する選択を、第1ユーザに促す。」

「【0249】
図53は、失敗に対応する複数のメッセージ135が配置されるゲーム画面4の一例を示す図である。表示制御部117は、ウインドウ132内に並んで配置される複数のメッセージ135を、表示部152に自動的に表示させる。これにより表示制御部117は、いずれかのメッセージ135に対する選択を第1ユーザに積極的に促す。」


上記記載をふまえると、当初明細書等には、第1ユーザの操作に応答した表示と、第1情報を取得したことに応答した表示に関して、いずれも、「ウインドウ内に並んで配置される複数のメッセージを表示」するという同一の表示態様とすることのみが記載されているにすぎず、異なる表示態様とすることは記載されていない。また、表示態様を異なるものとする点について示唆もされていないから、この点が、当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。

よって、上記補正事項に関し、第1ユーザの操作に応答した表示と、第1情報を取得したことに応答した表示とにおいて、表示部への表示態様を異なるものとすることを含むものとする点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)補正の目的について
上記補正事項によって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを前記表示部に表示させるステップ」との記載が、「前記第1情報を取得するまで、チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ、前記第1情報を取得したことに応答して、前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを、前記第1ユーザが前記チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作によらずとも自動的に前記表示部に表示させるステップ」と補正された。

上記補正事項について、補正前は、「評価に対応する少なくとも1つのメッセージ」を「表示部に表示させるステップ」を発明特定事項としているのに対し、補正後は、「評価に対応する少なくとも1つのメッセージ」を「表示部に表示させるステップ」に加え、これとは異なる表示である「チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」る事項を発明特定事項とするものである。

そうすると、補正後の発明特定事項である「チャット機能を起動させるための前記第1ユーザの操作に応答して、前記第2ユーザに送信するメッセージの候補を含むウィンドウを前記表示部に表示させ」る点は、補正前の発明特定事項である「評価に対応する少なくとも1つのメッセージ」を「表示部に表示させるステップ」を限定するものであるとは認められない。よって、上記補正事項は、補正前の発明特定事項を限定するものではない。

また、補正前の「前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを前記表示部に表示させるステップ」との記載に誤記が含まれるとも、この記載が明瞭でない記載であるともいえない。したがって、上記補正事項は、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもなく、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年9月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし6に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-17809号公報
引用文献2:特開2002-346230号公報
引用文献3:特開2014-79400号公報
引用文献4:電撃PlayStation Vol.221,メディアワークス,2002年11月8日,第8巻/第25号/通巻217号,p.148-p.150,「みんなのGOLF オンライン」
引用文献5:電撃PlayStation Vol.243,メディアワークス,2003年7月25日,第9巻/第18号/通巻239号,p.74-p.77,「みんなのGOLF オンライン」

3 引用文献
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に出願公開がされた引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム装置、ゲームシステム、ゲーム装置の制御方法、及びプログラムに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、あるプレイヤは、自分が有利になるように、他のプレイヤがプレイするゲームの難易度を変化させることが考えられる。このような場合、プレイヤ同士でゲームの難易度をお互いに変化させあうことになり、ゲームの興趣性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ゲームの興趣性を担保しつつ、プレイヤが他のプレイヤのゲームの難易度を変化させることが可能なゲーム装置、ゲームシステム、ゲーム装置の制御方法、及びプログラムを提供することである。」

ウ 「【0026】
[1-1.ゲームシステムの全体構成]
図1は、本発明に係るゲームシステムの全体構成を示す図である。図1に示すように、ゲームシステム1は、例えば、複数のゲーム装置10A,10B(以降、これらをまとめて単にゲーム装置10という。)を含む。ゲームシステム1を構成する各装置同士は、ネットワークを介してデータ通信可能に接続される。
【0027】
本実施形態においては、2人のプレイヤが互いに対戦する対戦ゲームが実行される場合を説明する。以降、一方のプレイヤを「第1プレイヤ」とし、他方のプレイヤを「第2プレイヤ」とする。また、第1プレイヤ及び第2プレイヤを、まとめて単にプレイヤともいう。例えば、第1プレイヤによりゲーム装置10Aが操作され、第2プレイヤによりゲーム装置10Bが操作される。
【0028】
例えば、ゲームシステム1に含まれる複数のゲーム装置10のうちの何れかは、ゲームシステム1において実行される対戦ゲームを統括的に制御するサーバとしての役割を果たす。そこで、ゲーム装置10Aがサーバとしての役割を果たした場合について以下に説明を行う。
【0029】
まず、ゲーム装置10Aは、当該ゲーム装置10Aにおける第1プレイヤの操作を受付ける。また、サーバとしての役割を果たすゲーム装置10Aは、他のゲーム装置であるゲーム装置10Bが取得した、第2プレイヤの操作内容を示すデータを受信する。サーバとしての役割を果たすゲーム装置10Aは、各ゲーム装置10で行われた操作に基づいて、対戦ゲームを実行し、対戦ゲームに係る各種データを更新する。さらに、サーバとしての役割を果たすゲーム装置10Aは、前記対戦ゲームに係る各種データの更新内容を、ネットワークを介して他のゲーム装置であるゲーム装置10Bに送信する。
【0030】
一方、最新のデータを受信したゲーム装置10Bでは、当該ゲーム装置10Bに記憶されるデータがこの受信したデータに基づいて更新される。このようにして、ゲームシステム1では、対戦ゲームに係る各種データが複数のゲーム装置10間で共通化される。」

エ 「【0032】
[1-2.ゲーム装置のハードウェア構成]
図2は、本発明の実施形態に係るゲーム装置のハードウェア構成を示す図である。本実施形態においては、ゲーム装置10Aとゲーム装置10Bとは、同様の構成を有する場合を説明する。ゲーム装置10は、公知のコンピュータによって実現されるものである。本実施形態においては、ゲーム装置10が、携帯端末(例えば、携帯ゲーム機、携帯電話機等)によって実現される場合を説明するが、ゲーム装置10は、家庭用ゲーム機、業務用ゲーム機、パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0033】
図2に示すように、ゲーム装置10は、制御部12、記憶部14、主記憶部16、表示部18、操作キー部20、タッチパネル22、センサ部24、通信部26等を含み、例えば、各部はバス28を介して接続される。なお、ゲーム装置10のハードウェア構成は、図2の例に限られず、ゲーム装置10は、公知の携帯端末に含まれる各種ハードウェア(例えば、SDカードスロットや光ディスク再生部等)を含んでいてもよい。」

オ 「【0036】
表示部18は、一又は複数の公知のモニタ、例えば、液晶表示パネルである。例えば、図示しないVRAMに描画された画像が表示部18に表示される。操作キー部20は、ユーザが各種操作を入力するための操作手段であり、十字キーや各種ボタン等を含んで構成される。タッチパネル22は、表示部18に重畳して配置される。タッチパネル22は、外部からの接触位置に関する情報を制御部12に送信する。」

カ 「【0038】
[1-3.ゲームシステムにおいて実行されるゲーム]
ゲームシステム1においては、プレイヤ(例えば、第1プレイヤ)がゲームをプレイする第1パートと、他のプレイヤ(例えば、第2プレイヤ)がゲームをプレイする第2パートと、を含んでなる対戦ゲームが実行される。あるパートにおいては、当該パートのゲームをプレイするプレイヤ以外のプレイヤは、当該パートをプレイするプレイヤがプレイを行うのを待機する。別の言い方をすれば、第1パートは、第1プレイヤがゲームをプレイする順番であり、第2パートは、第2プレイヤがゲームをプレイする順番である。
【0039】
本実施形態においては、第1プレイヤが操作する第1キャラクタと、第2プレイヤが操作する第2キャラクタと、が対戦するゴルフの試合を模したゴルフゲームが実行される場合を説明する。ゴルフゲームの第1パートにおいては、第1プレイヤがゲームをプレイして第1キャラクタにショットを行わせる。一方、ゴルフゲームの第2パートにおいては、第2プレイヤがゲームをプレイして第2キャラクタにショットを行わせる。このゴルフゲームは、記憶部14や各種記憶媒体から読み出されたプログラムが実行されることによって実現される。
【0040】
ゴルフゲームが開始されると、架空のゴルフ場を表すゲーム空間が主記憶部16に構築される。このゲーム空間を示すデータは、ゲーム装置10A,10Bの間で共有される。このゲーム空間を所与の視点から見た様子を示すゲーム画面が表示部18に表示される。
【0041】
図3は、ゲーム画面の一例を示す図である。本実施形態においては、ゲーム装置10A及びゲーム装置10Bにおいて、同じ表示内容のゲーム画面40が表示される場合を説明する。図3に示すように、ゲーム画面40には、ゴルフ場のフィールドを表すフィールド42が表示される。フィールド42上には、実際のゴルフ場と同様に、木42a、バンカー42b、グリーン42c、ホールポスト42d、ホール42eが配置される。
【0042】
プレイヤは、フィールド42上に配置されるキャラクタ44を操作してゲームをプレイする。ここでは、第1プレイヤの操作対象を第1キャラクタ44aとし、第2プレイヤの操作対象を第2キャラクタ44bとする。以降、これらをまとめて単にキャラクタ44ともいう。
【0043】
プレイヤは、所定のゲーム操作を行い、キャラクタ44にボール46を打たせる。そして、プレイヤは、より少ない打数でボール46をホール42eに入れることを目指す。
【0044】
なお、キャラクタ44がボール46を打つ順番は、所定の方法に基づいて決定される。
即ち、プレイヤがゲームをプレイするパートが訪れる順番は、所定の方法に基づいて決定される。例えば、ホール42eとボール46との距離が最も離れているキャラクタ44を操作するプレイヤが、ボール46を打つためのゲーム操作を行う。」

キ 「【0107】
[1-5.ゲームシステムにおいて実行される処理]
図11及び図12は、ゲームシステム1において実行される処理の一例を示すフロー図である。ここでは、サーバの役割を果たすゲーム装置10(例えば、ゲーム装置10A)の動作について説明する。図11及び図12の処理は、制御部12が、記憶部14から読み出されたプログラムに従って動作することにより実行される。第1パート及び第2パートにおいては、同様の処理が実行されるが、以下では第2パートにおいて実行される処理を説明する。」
「【0113】
制御部12は、第1プレイヤによりプレッシャーボタン62が選択されたか否かを判定する(S4)。第1プレイヤによりプレッシャーボタン62が選択されたと判定された場合(S4;Y)、制御部12は、ゲーム画面40に、第1キャラクタ44aが第2キャラクタ44bにプレッシャーをかけるようなメッセージ66を表示させる(S5)。制御部12は、インパクトゾーン58が狭くなるように、第1ゲームパラメータを変化させる(S6)。例えば、S6において表示されるインパクトゾーン58の幅は、S3において表示されるインパクトゾーン58の幅よりも狭い。
【0114】
一方、第1プレイヤによりプレッシャーボタン62が選択されたと判定されない場合(S4;N)、制御部12は、第1プレイヤにより応援ボタン64が選択されたか否かを判定する(S7)。
【0115】
第1プレイヤにより応援ボタン64が選択されたと判定された場合(S7;Y)、制御部12は、ゲーム画面40に、第1キャラクタ44aが第2キャラクタ44bを応援するようなメッセージ66を表示させる(S8)。制御部12は、インパクトゾーン58が広くなるように、第1ゲームパラメータを変化させる(S9)。例えば、S9において表示されるインパクトゾーン58の幅は、S3において表示されるインパクトゾーン58の幅よりも広い。
【0116】
第1プレイヤにより応援ボタン64が選択されたと判定されない場合(S7;N)、制御部12は、第2キャラクタ44bのスイングを開始するためのスイング操作が、第2プレイヤにより行われたか否かを判定する(S10)。
【0117】
第2プレイヤによりスイング操作が行われたと判定されない場合(S10;N)、処理は再びS4に戻り、第1プレイヤによりプレッシャーボタンが選択されたか否かが判定される。
【0118】
第2プレイヤによりスイング操作が行われたと判定された場合(S10;Y)、制御部12は、第2プレイヤのスイング操作に基づいてカーソル60を移動させる(S11)。S11における処理は、図4を参照して説明したように行われる。即ち、カーソル60がスイングゲージ56を右向きに移動した後、左向きに移動して停止する。
【0119】
制御部12は、第2キャラクタ44bのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定する(S12)。例えば、第2プレイヤによるプレイ内容(即ち、スイング操作)に基づいて、カーソル60がインパクトゾーン58内に停止したか否かが判定される。」

ク 上記キより、ゲーム装置10Aの制御部にS4?S12のステップを実行させるためのプログラムが記載されているものと認められる。

ケ 上記ウより、「サーバとしての役割を果たすゲーム装置10Aは、他のゲーム装置であるゲーム装置10Bが取得した、第2プレイヤの操作内容を示すデータを受信する」ものであることから、上記キにおける「第2プレイヤによりスイング操作が行われたと判定」し、「第2キャラクタ44bのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定する」際には、第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたか否かを判定し、前記第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたと判定された場合に、前記第2プレイヤのスイング操作に関する情報を制御部にて取得し、取得した情報に基づいて第2キャラクタのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定しているといえる。

上記記載事項アないしケから、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明1」という。)

「制御部、記憶部、主記憶部、表示部、ユーザが各種操作を入力するための操作手段である操作キー部を含むゲーム装置10Aにおいて実行されるプログラムであって、
前記プログラムが実行されることによって実現されるゴルフゲームは、第1プレイヤの操作対象である第1キャラクタと第2プレイヤの操作対象である第2キャラクタとが、架空のゴルフ場を表すゲーム空間において、所定の順番でボールを打つことによって進行し、各プレイヤはより少ない打数でボールをホールに入れることを目指すものであり、
前記プログラムは、前記制御部に、
第1プレイヤによりプレッシャーボタン又は応援ボタンが選択されたか否かを判定し、プレッシャーボタン又は応援ボタンが選択されたと判定された場合、ゲーム画面に、第1キャラクタが第2キャラクタにプレッシャをかける、又は、第2キャラクターを応援するようなメッセージを表示させるステップと、
第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたか否かを判定し、前記第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたと判定された場合に、前記第2プレイヤのスイング操作に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて第2キャラクタのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定するステップとを実行させる、プログラム。」

(2)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に出願公開がされた引用文献2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項14】ネットワークを介して接続された他のコンピュータシステムと通信を行なって所与のゲームを実行するためのコンピュータシステムであって、
複数のメッセージを前記所与のゲームのゲーム状況毎に分類して記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶したメッセージの内、ゲーム状況に応じた1以上のメッセージをメッセージ群として表示するための表示手段と、前記表示手段により表示されたメッセージ群の中からメッセージを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたメッセージを前記他のコンピュータシステムに送信するとともに、他のコンピュータシステムから送信されたメッセージを受信するための送受信手段と、
前記送受信手段により受信したメッセージを出力するための出力手段と、
を備えることを特徴とするコンピュータシステム。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、他のコンピュータシステムとメッセージの送受信を行なうためのゲーム情報、情報記憶媒体、コンピュータシステム、及びサーバシステムに関する。」

ウ 「【0005】本発明の課題は、ネットワークゲームにおいて、プレーヤ間で交換されるメッセージの入力をより容易にすることである。」

エ 「【0013】請求項1、3または請求項14記載の発明によれば、プレーヤは、ゲーム状況に応じて表示されるメッセージ群の中から、所望のメッセージを選択するだけで、メッセージの入力を行なうことができる。即ち、キーボードによる文字入力の苦手なプレーヤであってもメッセージのより迅速な入力が可能となる。従って、各ゲーム状況において他のプレーヤとメッセージによるコミュニケーションを容易にとることができ、例えば、他のプレーヤと協力してゲームを有利に進めるなどもできる。また、例えば、家庭用ゲーム装置や、携帯用ゲーム装置など、キーボードが常設されていないようなコンピュータシステムにおいてもメッセージを入力するためのキーボードを備えることなく、メッセージの入力が容易に行なえる。」

オ 「【0058】ゲーム状況判断部214は、操作部10からメッセージ入力指示が入力された時点のゲーム状況を判断する。ゲーム状況としては、例えば、敵と遭遇した、宝箱を発見した、他プレーヤキャラクタと出会った、といった自プレーヤキャラクタの状勢であっても良く、また、プレーヤが移動の操作を行なった、攻撃操作を行なったといったプレーヤが行なった操作(自プレーヤキャラクタがとった行動)であっても良い。また、例えば、他のプレーヤが操作ミスをした(例えば、他プレーヤキャラクタが壁にぶつかった、攻撃が空振りした等)といった他のプレーヤ(他プレーヤキャラクタ)の状勢等のゲーム状況であっても良い(他のプレーヤの状勢に対するメッセージとしては、例えば、他のプレーヤのミスに対するツッコミのメッセージであっても良い。)。」

(3)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に出願公開がされた引用文献3には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ間でコメントを交換する機能を備えたゲームシステムに関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゲームのプレイ中は、ユーザがコメントに返答したくてもゲームの操作に忙しく、コメントに返答する余裕を持てないことがある。そこで、本発明は、ゲームのプレイ中に受け取ったコメントに対して、ユーザが少ない負担で適切に返答することが可能なゲームシステム等を提供することを目的とする。」

ウ 「【0016】
以上に説明したように、本発明によれば、複数の返答候補コメントに対して設定された優先度に従って、優先度が高い返答候補コメントほどユーザにとって目立つように表示手法が差別化されつつそれらの返答候補コメントがユーザに提示され、ユーザからの指示に従って複数の返答候補コメントのいずれかが返答のコメントとして選択され、その選択された返答のコメントが元のコメントを送信したユーザに対して送信される。したがって、ユーザに少ない負担で適切に返答させることが可能である。」

エ 「【0022】
次に、図2を参照して、ゲームシステム1に実装されたコミュニケーション機能の概要を説明する。ゲームシステム1では、ユーザがネットワーク上でコミュニティを形成し、そのコミュニティに属するユーザが、ゲーム機3とユーザ端末装置4との間で、あるいはユーザ端末装置4同士の間でコメントを交換する等して情報を発信し、共有し、あるいは交換するサービスを享受することが可能である。そのサービスを総称してコミュニティサービスと呼び、特にユーザ間におけるコメントの交換に関連する機能をコメント機能と呼ぶ。コメント機能を利用することにより、ゲーム機3のユーザを受信者として、他のユーザからユーザ端末装置4等を利用して送信されたコメントを受信者のユーザがゲーム機3で受信し、その受信したコメントに対する返答のコメントを、ゲーム機3のユーザが元のコメントの送信者のユーザに対してゲーム機3から送信することが可能である。」

オ 「【0023】
ゲーム機3は入力装置としてゲーム画面110を覆うタッチパネルを備えている。ユーザは、コメントウィンドウ112に対して所定の返答操作を行うことにより、予め登録されている複数の返答コメントの候補から一つの候補を選択し、選ばれた返答コメントを元のコメントの送信者としてのユーザに返信することができる。」

カ 「【0027】
以上の手順によれば、コメントウィンドウ112に表示されたコメントに対してユーザが返答を希望する場合、そのコメントウィンドウ112にタッチすると返答候補のコメントを含んだ複数の返答ウィンドウ114が表示され、ユーザが希望する返答を含んだ返答ウィンドウ114にタッチすればそのウィンドウ114内のコメントが返答として送信される。しかも、返答ウィンドウ114に表示されるコメントは、所定の選択情報を参照して返答の優先度が高いと判断されたコメントに限られている。したがって、ユーザは自己の希望に一致し、又は近いコメントを数回のタッチ操作で選択して送信することができる。これにより、ユーザは、自己が受け取ったコメントに対して相対的に少ない負担で適切に返答することができる。」

キ 「【0040】
優先度は、ユーザのゲームの進行状況に応じて高低が変化するように制御されてもよい。例えば、ユーザがゲームを優位に進めているか否か、特定のステージまでユーザが進んでいるか否か、ユーザが特定のランキングや称号を得ているか否か、といったゲームの進行状況に関連付けられた要素に応じて優先度を変化させてもよい。この場合、返答選択情報には、ゲームの進行状況を特定する情報が記録される。例えば、優先度の設定に際して考慮されるべき要素の到達状況を判別するフラグ情報等を返答選択情報に記録すればよい。そして、その達成状況に応じて各返答候補コメントの優先度を変化させればよい。」

ク 「【0043】
次に、図7を参照して、ゲーム機3のコメント処理部33が実行するコメント表示制御処理の手順を説明する。図7のコメント表示制御処理は、ユーザが受信したコメントをゲーム機3の表示装置36に表示させ、ユーザの指示に従って、複数の返答候補コメントから返答コメントを選択してこれを送信するために一定の周期で実行される。なお、図7の処理は、ゲーム機3のカードリーダ37がユーザのカード38のカードIDを読み取ってセンターサーバ2にユーザを認証させ、そのユーザに対応するプレイデータ51がゲーム機3に提供されてその記憶部32に保存されている状態で行われる処理である。センターサーバ2から提供されたプレイデータ51が記憶部32に記録されることにより、返答候補コメント及び返答選択情報を記憶手段に記憶させる手順が実現される。また、他のユーザがゲーム機3のユーザを宛先として送信したコメントはセンターサーバ2のコミュニティサービス処理部25によってセンターサーバ2における記憶部23の宛先となるユーザに対応したコミュニティデータ52に適宜保存される。
【0044】
コメント処理部33は、図7の処理を開始するとまず新着コメントの有無を判別する(ステップS1)。新着コメントとは、ゲーム機3に取り込まれたプレイデータ51に保持されている最新の受信コメントよりも受信日付が新しく、かつプレイデータ51に含まれたステータスに未読と記録されている受信コメントである。新着コメントの有無を判別するためには、センターサーバ2のコメント処理部24からコミュニティデータ52内のコメントデータを取得し、そのコメントデータに含まれる受信コメントと、自らが保持するプレイデータ51内の受信コメントとを比較すればよい。新着コメントが存在する場合には、ステップS1にてその新着コメントのデータをプレイデータ51中の受信コメントデータに記録する。
【0045】
ステップS1にて新着コメントが存在しないと判断された場合、コメント処理部33は図7の処理を終える。一方、新着コメントが存在すると判断された場合、コメント処理部33は、図3Aに示す新着通知マーク111をゲーム画面110の適当な場所に表示させることにより、新着コメントが存在することをユーザに通知する(ステップS2)。続いて、コメント処理部33はユーザが新着通知マーク111にタッチして新着コメントの表示を指示したか否かを判別し(ステップS3)、表示を指示しなければ新着通知マーク111を消去して図7の処理を終える。一方、ステップS3にてユーザが表示を指示したと判断された場合、コメント処理部33は新着コメントのうち、ゲーム画面110に表示させるべき一のコメントを対象コメントとして選択する(ステップS4)。対象コメントは、例えば受信日付が古いコメントから優先的に選択する等、適宜の手法で選んでよい。
【0046】
次に、コメント処理部33は、対象コメントを含むようにして、図3Bのコメントウィンドウ112をゲーム画面110上に表示させる(ステップS5)。続いて、コメント処理部33は、対象コメントに対してユーザが返答すると仮定した場合の返答候補コメントの優先度を返答選択情報に基づいて決定する(ステップS6)。この場合、既に説明したように、返答候補コメントが選択された回数、頻度、対象コメントの送信者とユーザとの関連性、あるいは、ユーザのゲームにおける状況等に基づいて返答候補コメントの優先度が決定される。
【0047】
次に、コメント処理部33は、ユーザがコメントウィンドウ112にタッチすることにより、返答候補の表示を指示したか否かを判別する(ステップS7)。ユーザが返答候補の表示を指示した場合、コメント処理部33は、所定の並び順で所定数(図3Cの例では3つ)の返答ウィンドウ114を表示させることにより、優先度が相対的に高いものから順に所定数の返答候補コメントをユーザに提示する(ステップS8)。このときの返答ウィンドウ114の並び順は、一例として、優先度が最も高い返答候補コメントを含む返答ウィンドウ114を左端(つまりゲーム画面110の中心に近い位置)に配置し、以下、右へ向かうほど返答候補コメントの優先度が低下するように設定される。ただし、優先度に応じた返答ウィンドウ114の配列は図3Cの例に限らない。優先度が相対的に高い返答候補コメントを含む返答ウィンドウ114を、優先度が相対的に低いものよりもユーザにとって目立つように表示する限りにおいて、表示手法は適宜に変更可能である。この点は後述する。
【0048】
返答ウィンドウ114の表示後、コメント処理部33は、ユーザがいずれかの返答ウィンドウ114にタッチすることにより返答を指示したか否かを判別する(ステップS9)。ユーザが返答を指示した場合、コメント処理部33はユーザがタッチした返答ウィンドウ114内のコメントを、対象コメントの送信者に対して送信する(ステップS10)。ここで送信されたコメントは、センターサーバ2のコメント処理部24を介して返答相手のコミュニティデータ52におけるコメントデータに保存される。その保存されたコメントデータはWebサーバ部22のコミュニティサービス処理部25の処理により、返答相手のユーザ端末装置4に適時に配信される。その配信は、いわゆるプッシュ型でもよいし、プル型でもよい。」

(4)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、以下の事項が記載されている。

ア 「ゴルフゲームの代名詞的存在で、過去3作品がすべてミリオンセラーを記録している『みんGOL』シリーズ。その最新作がオンラインゲームとなって帰ってきた! このゲームの最大の魅力は、全国のプレイヤーとネットワークを通じて、一緒にラウンドできるという点にある。いつでもどこでも他のプレイヤーとの会話を楽しめるから、1打ごとに大いに盛り上がれるのだ。」(148頁中段)

イ 「『みんGOLオンライン』ではどんなときでも会話(チャット)が楽しめる。他人がいいプレイをしたときに「ナイスショット!」とほめたり、「風で左に曲がりそう」とアドバイスしたりと使い方はいろいろ。「木にぶつかりそう」なんて言ってプレッシャーをかけるのもアリかも? ・・・ あらかじめ登録されている単語もあるから、手軽にチャットが楽しめるようになっているのだ。」(150頁上段)

ウ 150頁上段左の画像から、あるキャラクタのスイングを見ているキャラクタから「ナイスショット」という文字が吹き出している様子が看取できる。

(5)引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献5には、以下の事項が記載されている。

ア 「全国の人と楽しくゴルフを楽しめる『みんなのGOLFオンライン』。今回はフリー対戦モードの魅力をどーんと紹介します!」(74頁上部)

イ 「ゲームに慣れてきたら、「フリー対戦」にも積極的にチャレンジしてみよう!」(74頁中段)

ウ 「チャットを楽しんだり、ヤジを飛ばしたりしながらコースを回れるのは、このモードだけなのだ!」(74頁中段)

エ 「ラウンド中の会話はチャットログに記録されている。ログを消すには、もう一度コマンドを選べばいい。」(75頁中段)

オ 75頁中段左の画像から、「チャットログ」と表示されたウィンドウ内に、「ナイスオン」、「ナイスイン」、「ナイスイーグルっ」等の文字が表示されていることが看取できる。

4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明1との対比

ア 引用発明1の「制御部」、「記憶部、主記憶部」、「表示部」、「ゲーム装置10A」、「ゲーム装置10B」、「第1プレイヤ」、「第2プレイヤ」、「第2キャラクタ」、「ボール」は、それぞれ、本願発明の「プロセッサ」、「メモリ」、「表示部」、「第1コンピュータ」、「第2コンピュータ」、「第1ユーザ」、「第2ユーザ」、「第2キャラクタ」、「移動体」に相当する。

イ 引用発明1の「ユーザが各種操作を入力するための操作手段である操作キー部」は、第1プレイヤにより操作されるゲーム装置10Aに含まれるものであることから、本願発明の「第1ユーザの入力操作を受け付けるように構成された操作部」に相当する。

ウ 引用発明1の「プログラム」は、当該プログラムが実行されることによりゴルフゲームが実現されるものであることから、本願発明の「ゲームプログラム」に相当する。

エ 引用発明1の「プログラムが実行されることによって実現されるゴルフゲーム」は、本願発明の「ゲームプログラムに基づくゲーム」に相当する。

オ 引用発明1の「第1プレイヤの操作対象である第1キャラクタと第2プレイヤの操作対象である第2キャラクタ」は、本願発明の「第1ユーザを含む複数のユーザのそれぞれに対応する複数のキャラクタ」に相当する。また、引用発明1の「架空のゴルフ場を表すゲーム空間」は、本願発明の「ゲーム空間」に相当する。さらに、引用発明1の「所定の順番でボールを打つこと」は、本願発明の「作用を順次付与」することに相当する。そして、引用発明1は「ゴルフゲーム」に関するものであり、「各プレイヤはより少ない打数でボールをホールに入れることを目指すもの」であることから、引用発明1の「ゴルフゲーム」が、「複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数の移動体のそれぞれが、ゲーム空間内を順次移動することによって進行」するものであることは明らかである。

してみれば、引用発明1の「第1プレイヤの操作対象である第1キャラクタと第2プレイヤの操作対象である第2キャラクタとが、架空のゴルフ場を表すゲーム空間において、所定の順番でボールを打つことによって進行し、各プレイヤはより少ない打数でボールをホールに入れることを目指すものであ」ることは、本願発明の「前記第1ユーザを含む複数のユーザのそれぞれに対応する複数のキャラクタのそれぞれによって作用を順次付与された、前記複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数の移動体のそれぞれが、ゲーム空間内を順次移動することによって進行」することに相当する。

カ 引用発明1は、「プレッシャーをかけるようなメッセージ」や「応援するようなメッセージ」をゲーム画面に表示させるものであるところ、引用発明1の「プログラム」が、制御部に、複数のメッセージを記憶部又は主記憶部に記憶させるステップを有していることは、技術常識に照らせば明らかである。

キ 引用発明1の「第2プレイヤのスイング操作」は、第2キャラクタにショットを行わせるためのものであることから、本願発明の「第1ユーザとは異なる第2ユーザに対応する第2キャラクタに、前記第2キャラクタに対応する第2移動体に前記作用を付与させるための、前記第2ユーザの入力操作」に相当する。また、引用発明1の「前記第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたと判定された場合」は、本願発明の「前記第2ユーザの入力操作が、前記第2ユーザに対応する第2コンピュータにおいて受け付けられた場合」に相当する。さらに、引用発明1の「前記第2プレイヤのスイング操作に関する情報を取得」することは、本願発明の「前記第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得する」ことに相当する。そして、引用発明1の「取得した情報に基づいて第2キャラクタのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定するステップ」は、本願発明の「前記第1情報に基づいて、前記第2キャラクタによる前記第2移動体に対する前記作用の付与に関する評価を特定するステップ」に相当する。

してみると、引用発明1の「第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたか否かを判定し、前記第2プレイヤのスイング操作がゲーム装置10Bにて行われたと判定された場合に、前記第2プレイヤのスイング操作に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて第2キャラクタのショット(即ち、第2プレイヤのプレイ)が成功したか否かを判定するステップ」は、本願発明の「第1ユーザとは異なる第2ユーザに対応する第2キャラクタに、前記第2キャラクタに対応する第2移動体に前記作用を付与させるための、前記第2ユーザの入力操作が、前記第2ユーザに対応する第2コンピュータにおいて受け付けられた場合、前記第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得するステップと、前記第1情報に基づいて、前記第2キャラクタによる前記第2移動体に対する前記作用の付与に関する評価を特定するステップ」に相当する。

(2)一致点・相違点
上記(1)の対比を踏まえれば、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違するものである。

<一致点>

「プロセッサ、メモリ、表示部、および第1ユーザの入力操作を受け付けるように構成された操作部を備える第1コンピュータにおいて実行されるゲームプログラムであって、
前記ゲームプログラムに基づくゲームは、前記第1ユーザを含む複数のユーザのそれぞれに対応する複数のキャラクタのそれぞれによって作用を順次付与された、前記複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数の移動体のそれぞれが、ゲーム空間内を順次移動することによって進行し、
前記ゲームプログラムは、前記プロセッサに、
複数のメッセージを前記メモリに記憶させるステップと、
前記第1ユーザとは異なる第2ユーザに対応する第2キャラクタに、前記第2キャラクタに対応する第2移動体に前記作用を付与させるための、前記第2ユーザの入力操作が、前記第2ユーザに対応する第2コンピュータにおいて受け付けられた場合、前記第2ユーザの入力操作に関する第1情報を取得するステップと、
前記第1情報に基づいて、前記第2キャラクタによる前記第2移動体に対する前記作用の付与に関する評価を特定するステップとを実行させる、ゲームプログラム。」

<相違点>

ゲームプログラムがプロセッサに実行させるステップに関し、本願発明が「前記メモリに記憶される複数のメッセージのうち、前記評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを前記表示部に表示させるステップと、前記少なくとも1つのメッセージのうちいずれかを選択するための前記第1ユーザの前記入力操作が受け付けられた場合、選択された前記メッセージに関する第2情報を、前記第2コンピュータに送信するステップ」を有するのに対し、引用発明1は、ユーザの入力操作に基づきメッセージを表示部に表示させるステップを有しているものの、その表示がショットの評価に対応するメッセージからユーザが選択することによって行われるものではない点。

(3)相違点についての検討
上記相違点について検討すると、プロセッサにて実行されるステップに関し、「メモリに記憶される複数のメッセージのうち、ゲーム状況に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを表示部に表示させるステップと、前記少なくとも1つのメッセージのうちいずれかを選択するための第1ユーザの入力操作が受け付けられた場合、選択された前記メッセージに関する情報を、他のコンピュータに送信するステップ」を有することは、例えば、引用文献2の【請求項14】、【0005】、【0013】、【0058】、引用文献3の【0027】、【0040】、【0043】?【0048】に記載されているように、ネットワークゲームの技術分野における周知技術(以下、「周知技術」という。)であるといえる。

そして、ゴルフゲームにおいて、ショットしたプレイヤに対して、他のプレイヤがショットの評価に対応する声がけを行うことは、例えば、引用文献4、5に記載されているように一般的に行われる慣用技術である。

一般に、ゲーム分野において、興趣性を高めるものとすることは、当業者が当然考慮すべき自明の課題であり、引用発明1においても内在する課題であると認められるから、引用発明1において、興趣性を高めることを目的として上記周知技術を適用するにあたり、上記慣用技術を考慮して、他のプレイヤのショットの評価に対応したゲーム状況に対してメッセージを表示させるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

したがって、引用発明1において、他のプレイヤのショットの評価に対応したゲーム状況に対して上記周知技術を適用し、メモリに記憶される複数のメッセージのうち、評価に対応する少なくとも1つのメッセージを特定し、特定した前記少なくとも1つのメッセージを表示部に表示させるステップと、前記少なくとも1つのメッセージのうちいずれかを選択するための第1ユーザの入力操作が受け付けられた場合、選択された前記メッセージに関する第2情報を、第2コンピュータに送信するステップとをプロセッサに実行させるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の奏する効果も、引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明1及び上記周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-13 
結審通知日 2019-11-19 
審決日 2019-12-02 
出願番号 特願2017-61903(P2017-61903)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 栄成瀬戸 息吹  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 尾崎 淳史
小林 謙仁
発明の名称 ゲームプログラム、方法、および情報処理装置  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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