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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1359098 |
審判番号 | 不服2018-5754 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-25 |
確定日 | 2020-02-13 |
事件の表示 | 特願2014- 49131「情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理システム、および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-172899、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 9月11日付け:拒絶理由通知書 平成29年11月 1日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 1月23日付け:拒絶査定 平成30年 4月25日 :審判請求書の提出 平成31年 3月28日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 5月15日 :意見書の提出 令和 元年 9月10日付け:拒絶理由通知書 令和 元年11月 5日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年1月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 (理由2)本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献A-Cに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.米国特許出願公開第2014/056461号明細書 B.米国特許第08468280号明細書 C.特開2006-079238号公報 第3 当審拒絶理由の概要 令和元年9月10日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 (理由1)本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2-3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010-219595号公報 (当審において新たに引用した文献) 2.特開2004-186831号公報 (当審において新たに引用した文献) 3.特開2008-277935号公報 (当審において新たに引用した文献) 第4 本願発明 本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和元年11月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 音声信号の入力に応じて音声出力装置から表示画像に応じた音声を出力するとともに、振動信号の入力に応じて振動装置を当該表示画像に応じて振動させる情報処理装置であって、 前記音声出力装置から出力される音声のソースとなる音声データと前記振動装置による振動のソースとなる振動データとを記憶するデータ記憶部と、 ユーザ操作に応じて、出力を調整するための調整量を設定する出力調整手段と、 前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、前記音声データに基づいて、前記音声信号を前記表示画像に応じて生成する音声制御手段と、 前記設定された調整量に応じて前記振動装置による振動の大きさが前記出力される音声の音量とともに変化し、前記音声に応じて振動するように、前記振動データに基づいて、前記振動信号を前記表示画像に応じて生成する振動制御手段とを備える、情報処理装置。」 また、本願発明2-13の概要は以下のとおりである。 本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明11は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「情報処理プログラム」の発明である。 本願発明12は、「情報処理装置」の発明である本願発明1に対応する「情報処理システム」の発明である。 本願発明13は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「情報処理方法」の発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2010-219595号公報)には、図面(特に、図2、4)及び表1とともに、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1) 段落【0024】-【0055】 「【0024】 -携帯電話装置100- 〈ハードウェア構成〉 図2は、本発明の一実施の形態に係る携帯電話装置100の構成を示すブロック図である。図2を参照して、携帯電話装置100は、上下方向の長さが左右方向の長さより大きい略直方体形状の筺体(図示せず)の上部端面に設けられるアンテナ104と、筺体の正面に設けられる操作部106及び表示部108と、筺体の背面に設けられる電源部(図示せず)とを含む。筺体の正面において、上部には受話口が形成され、下部には送話口が形成される。 【0025】 携帯電話装置100はさらに、CPU(Central Processing Unit)130を含む。CPU130は、マスクROM(Read-Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)134及びフラッシュROM136と電気的に接続される。 ・・・(中略)・・・ 【0028】 フラッシュROM136は、必要に応じてデータの読出又は書込が行なわれるメモリである。本実施の形態において、フラッシュROM136には、携帯電話装置100の各構成部の動作を実行し制御するためのプログラムとともに、着信/通話処理、着信音自動設定処理、通話モード自動設定処理、及び、ノイズサプレッサ設定処理を実行するためのプログラムが記憶される。このプログラムにおける、着信/通話処理、着信音自動設定処理、通話モード自動設定処理、及び、ノイズサプレッサ設定処理を実現するためのプログラム構造については後述する。 【0029】 フラッシュROM136は、また、着信ボリュームテーブルを記憶する。テーブル1に、着信ボリュームテーブルの一例を示す。 【0030】 【表1】 【0031】 テーブル1を参照して、着信ボリュームテーブルは、着信音の音量(以下、単に「着信音量」と記す場合がある。)の大きさの程度及び後述するバイブレータ部140の振動の程度を数値で示す着信ボリュームレベルと、着信音量と、バイブレータ部140の振動パターンとが、それぞれ関連付けて記憶される。着信ボリュームレベルは、着信ボリュームレベルの値が大きくなるほど、対応する着信音量及びバイブレータ部140の振動の程度が大きくなるように設定されている。 ・・・(中略)・・・ 【0044】 フラッシュROM136は、さらに、手動設定情報を記憶する。この手動設定情報とは、少なくとも着信音自動設定及び通話モード自動設定のいずれかがOFFに設定されている場合に、少なくとも着信ボリュームレベルの設定及び通話モードの設定のいずれかに使用される情報であって、ユーザによる操作部106からの入力操作によって予め手動で入力される情報である。手動設定情報には、着信ボリュームレベルの設定に使用される着信ボリュームレベル情報と、通話モードの設定に使用される、ハンズフリーモード及びハンドセットモードのいずれかを示す動作モード設定情報及びノイズサプレッサの設定情報とが含まれる。 ・・・(中略)・・・ 【0047】 CPU130は、操作部106等から出力されるユーザの指示に応じた制御信号に従って各種プログラムを実行することによって、携帯電話装置100の各構成部の動作、及び、通信基地局200との無線通信等の所望の処理を実行する。上記の各種プログラムは、予めフラッシュROM136に記憶されており、所望の処理の実行時において、当該フラッシュROM136から読出されてRAM134に転送される。CPU130は、CPU130内のプログラムカウンタと呼ばれるレジスタ(図示せず。)に格納された値によって指定される、RAM134内のアドレスからプログラムの命令を読出し、解釈する。CPU130はまた、読出された命令によって指定されるアドレスから演算に必要なデータを読出し、そのデータに対し命令に対応する演算を実行する。実行の結果も、RAM134、フラッシュROM136及びCPU130内のレジスタ等の、命令によって指定されるアドレスに格納される。 【0048】 CPU130には、さらに、操作部106、駆動回路138、電話網通信部124、音声入出力部126、及び、バイブレータ部140が電気的に接続される。 ・・・(中略)・・・ 【0052】 音声入出力部126には、増幅器(図示せず)及びスピーカ120が電気的に接続される。スピーカ120は、筺体内部において受話口に臨むように設けられ、通話の際に音声入出力部126から入力される電気信号(以下「音声信号」と記す。)を受話音声に変換して出力する。このとき、受話音声は、増幅器によって増幅されて拡声出力される。スピーカ120は、また、アンテナ104によって着信信号を含む電波信号が受信されたとき等に、設定された着信ボリュームレベルに基づく着信音量に応じた着信音を出力する。 ・・・(中略)・・・ 【0055】 バイブレータ部140は、バイブレータモータ及び重錘を含む。バイブレータ部140は、CPU130から入力される制御信号に応答して、設定された着信ボリュームレベルに基づく振動パターンに応じて、バイブレータモータを駆動して重錘を回転させることで携帯電話装置100の振動を発生させる。」 (2) 段落【0058】-【0061】 「【0058】 〈ソフトウェア構成〉 (着信/通話処理) 図4は、着信/通話処理を実現するためのプログラムの制御構造をフローチャート形式で示す図である。上述したように、フラッシュROM136に記憶されるプログラムは、着信/通話処理を実行するようにプログラミングされている。このプログラムは、CPU130が、上記プログラムに従って、携帯電話装置100の各構成部の動作を制御することによって、ハードウェアとコンピュータプログラムとの協働により実現する、判定機能、及び、動作モード設定機能等によって実行される。なお、判定機能とは、周波数オフセット量に基づいて携帯電話装置100が移動しているか否かを判定する機能のことであり、動作モード設定機能とは、判定機能による判定結果に基づいて、携帯電話装置100の動作モードを、ハンドセット通話を可能とするハンドセットモード及びハンズフリー通話を可能とするハンズフリーモードのいずれかに設定する機能のことである。 【0059】 着信/通話処理を実現するためのプログラムは、携帯電話装置100のアンテナ104が着信信号を含む電波信号を受信することによって起動される。図4を参照して、このプログラムは、移動カウンタ(図4中「Count」と記す。)に0を代入するステップS100を含む。ここで、移動カウンタとは、後述するステップS201において、周波数オフセット量(Δf)の絶対値が、予め定めるしきい値(fc)以上であると判定された回数、すなわち、携帯電話装置100が移動していると判定された回数を示す値である。 【0060】 このプログラムはさらに、着信音自動設定がONであるか否かを判定するステップS101と、ステップS101において、着信音自動設定がONであると判定された場合(YESの場合)に実行され、後述する着信音自動設定処理を実行するステップS102と、ステップS101において、着信音自動設定がONではないと判定された場合(NOの場合)、すなわち、着信音自動設定がOFFである場合に実行され、フラッシュROM136に記憶される手動設定情報に基づいて、着信ボリュームレベルを設定するステップS103とを含む。 【0061】 このプログラムはさらに、ステップS102又はステップS103にて設定された着信ボリュームレベルに従って、着信音動作及びバイブレータ動作を実行するステップS104を含む。ここで、着信音動作とは、スピーカ120に対し、設定された着信ボリュームレベルに対応する着信音量に従って着信音を出力させる動作のことである。バイブレータ動作とは、バイブレータ部140に対し、設定された着信ボリュームレベルに対応する振動パターンに従って、携帯電話装置100を振動させる動作のことである。なお、振動パターンがOFFと設定されている場合には、上記したバイブレータ動作は行なわれない。」 よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「 携帯電話装置100は、アンテナ104と、操作部106と、CPU130とを含み、 CPU130は、フラッシュROM136と電気的に接続され、 フラッシュROM136は、着信/通話処理を実行するためのプログラムとともに、着信ボリュームテーブルを記憶するものであって、 着信ボリュームテーブルは、着信音の音量(以下、単に「着信音量」と記す場合がある。)の大きさの程度及び後述するバイブレータ部140の振動の程度を数値で示す着信ボリュームレベルと、着信音量と、バイブレータ部140の振動パターンとを、それぞれ関連付けて記憶し、ここで、着信ボリュームレベルは、着信ボリュームレベルの値が大きくなるほど、対応する着信音量及びバイブレータ部140の振動の程度が大きくなるように設定されており、 フラッシュROM136は、さらに、手動設定情報を記憶するものであって、 手動設定情報は、着信音自動設定がOFFに設定されている場合に、着信ボリュームレベルの設定に使用される情報であって、ユーザによる操作部106からの入力操作によって予め手動で入力される情報であり、 CPU130は、操作部106等から出力されるユーザの指示に応じた制御信号に従って各種プログラムを実行することによって、携帯電話装置100の各構成部の動作、及び、通信基地局200との無線通信等の所望の処理を実行するものであって、操作部106、音声入出力部126、及び、バイブレータ部140と電気的に接続され、 音声入出力部126は、増幅器及びスピーカ120と電気的に接続され、 スピーカ120は、通話の際に音声入出力部126から入力される電気信号を受話音声に変換して出力するとともに、アンテナ104によって着信信号を含む電波信号が受信されたとき等に、設定された着信ボリュームレベルに基づく着信音量に応じた着信音を出力し、 バイブレータ部140は、バイブレータモータ及び重錘を含むものであって、CPU130から入力される制御信号に応答して、設定された着信ボリュームレベルに基づく振動パターンに応じて、バイブレータモータを駆動して重錘を回転させることで携帯電話装置100の振動を発生させ、 着信/通話処理を実現するためのプログラムは、CPU130が、携帯電話装置100の各構成部の動作を制御することによって実行されるとともに、携帯電話装置100のアンテナ104が着信信号を含む電波信号を受信することによって起動されるものであって、 着信音自動設定がOFFである場合に、フラッシュROM136に記憶される手動設定情報に基づいて、着信ボリュームレベルを設定し、 設定された着信ボリュームレベルに従って、着信音動作及びバイブレータ動作を実行する、 携帯電話装置100。」 2.引用文献2について 当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2004-186831号公報)には、図面(特に、図3、7、9)とともに、以下の記載がある。 (1) 段落【0067】-【0087】 「【0067】 次に、上記の振動発生装置を携帯電話機に搭載した実施の形態について説明する。 【0068】 図7は、振動発生装置を搭載した携帯電話機のシステム構成の概略を示すブロック図である。 ・・・(中略)・・・ 【0073】 データ記憶部40は、無線部60を介して接続されたネットワーク上のサイトからダウンロードした着信メロディの音響データを記憶できるようになっている。ダウンロードした音響データは、個々の着信メロディごとにファイル化されて前記データ記憶部40に保持される。 ・・・(中略)・・・ 【0077】 図7に示す前記D/Aコンバータ80は、音源部50から出力される着信メロディ(デジタル信号)をアナログ信号に変換してスピーカ90に転送する。これにより、前記着信メロディがスピーカ90から奏でられる。 【0078】 データ記憶部40にダウンロードされる着信メロディの音響データは、MIDI規格の準拠したフォーマットで作成されており、例えば音色データ、音階データ、音量データ、音符データなどから構成される楽譜形式となっている。 ・・・(中略)・・・ 【0084】 非マナーモードに設定されている場合において、携帯電話機100に着信があると、前記総合制御部20は選択されている着信メロディに対応するファイルを前記データ記憶部40から読み出して音源部50に送る。ファイル内の音響データは、前記音源部50のFIFOメモリ51に対して送り出される。前記FIFOメモリ51は、最初に読み込んだ音響データから順番にシーケンサ52に送る。 ・・・(中略)・・・ 【0087】 FMシンセサイザー53の個々のチャンネルは、音響データに含まれる音符データに基づく時系列に沿って、音階および音量などを含むデジタル信号に変換して出力する。前記D/Aコンバータ80は前記個々のチャンネルに対応して設けられており、前記FMシンセサイザー53からチャンネルごとに出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。前記アナログ信号は図示しない増幅器によって増幅されることにより、着信メロディが前記スピーカ90から奏でられる。」 (2) 段落【0094】-【0096】 「【0094】 前記振動発生装置では、図3に示す振動制御部14に前記指令信号Sdが入力されると、前記信号生成手段12がこの指令信号Sdに基づいて駆動信号S1を生成し、この駆動信号S1を前記ドライブ手段13に出力する。そして、上記同様にドライブ手段13から駆動信号S1に応じた駆動電流が前記コイル5の端子Ta1と端子Ta2に与えられ、可動体6がX方向に振動させられる。なお、このときにも前記振動制御部14からの指令によって選択されたいずれかのパターンの駆動信号S1が選択されて前記ドライブ手段13に与えられる。 【0095】 前記振動発生装置を駆動する駆動信号S1は、着信メロディを構成する音響データから生成されたものであるため、振動発生装置の可動体6を前記着信メロディに音階(音程)および/または音量の変化に同期して振動させることができる。またこの振動は、変換後の低い第2の基準振動数を基準に発生するため、使用者はこの振動を体感することが可能である。 【0096】 しかも、着信メロディの変化、すなわち曲の進行に沿って変化する音階データや音量データに合わせて振動発生装置の振動が変化するため、振動が着信メロディを表現することができる。」 (3) 段落【0101】-【0106】 「【0101】 図9は振動発生装置を搭載した携帯電話機のシステム構成おいて、主要部分の他の実施の形態を示すブロック図である。なお、図9では前記信号処理部30、無線部60および受話/送話部70が省略されている。 ・・・(中略)・・・ 【0104】 この構成においても、携帯電話機100に着信があると、着信メロディのファイルから音響データが音源部50に与えられるが、同時に前記振動制御チップ110に音響データが与えられる。前記振動制御チップ110では、使用者によって予め選択されているトラックtrに対応する音響データのみを抽出し、この音響データに含まれている音階データを所定の圧縮比で変換した新たな音階データにその他の音量データと音符データを付加した変換信号Stに変換する。そして、振動制御チップ内に設けられたFMシンセサイザーに相当する部分が、前記変換信号Stから指令信号Sdを生成するとともに、前記制御手段10の信号生成手段12に相当する部分が前記指令信号Sdから前記駆動信号S1を生成し、これを振動発生手段1に与える。よって、この場合にも上記同様に振動制御手段1は着信メロディの音階および/または音量の変化に合わせて振動することが可能となる。 ・・・(中略)・・・ 【0106】 また、上記においては特定のトラックtrの音響データを選択して振動を生じさせる構成としたが、着信メロディのデータフォーマット内に振動パート専用のトラックを追加させる構成としてもよい。この場合、特に波の音、小川のせせらぎの音、鳥の声などのいわゆる環境音楽を振動に変換することにより、携帯電話機に臨場感を備えさせることが可能となり、情報端末機の付加価値を高めることが可能となる。この場合、前記音響データは、純粋な音楽を演奏するための楽譜データではなく、前記環境音楽データを楽譜化したものとなる。」 3.引用文献3について 当審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2008-277935号公報)には、図面(特に、図11-12)とともに、以下の記載がある。 (1) 段落【0101】-【0109】 「【0101】 図11は、報知動作参照テーブルの一例を表す図である。この報知動作参照テーブルでは、加速度レベルに対応して、バイブレータの振動強度、スピーカ11の音量レベル、および、発光素子14の光量レベルが定められている。 【0102】 [動作] 次に携帯電話1の動作について説明する。 【0103】 図12は、本発明の一実施形態である携帯電話の動作の一例を表すフローチャートである。まず、ユーザにより携帯電話1の電源ONがなされた後、待受状態に移行する。次に、音声着信があると、図10に示すフローチャートの処理ルーチンが開始され、バイブレータ7を利用して着信を報知する設定であるか否かの判断を行う(ステップS501)。 【0104】 ここで、バイブレータ7を利用して着信を報知しない設定の場合には(ステップS501:No)、この処理ルーチンを終了し、その後、図1に示す表示部9に「着信有り」の表示がなされ、無鳴動音のモード等のマナーモードに移行する。一方、バイブレータ7により着信を報知する設定の場合には(ステップS501:Yes)、図2に示す報知動作設定部52は、図11に示す報知動作参照テーブルを読み出す(ステップS502)。 【0105】 次に、加速度検出部51では、加速度センサ6にて携帯電話1に生じる加速度を検出する(ステップS503、動作検出工程)。続いて、報知動作設定部52は、加速度検出部51にて検出された加速度の合成値から加速度レベルを決定し、その加速度レベルに対応付けられたバイブレータの振動強度の値を選択して設定値とする(ステップS504、報知動作設定工程)。 【0106】 次に、スピーカ11を利用して着信を報知する設定であるか否かの判断を行う(ステップS505)。ここで、スピーカ11を利用して着信を報知しない設定の場合には(ステップS505:No)、ステップS507の発光素子の報知の有無の判断処理にスキップする。一方、スピーカ11を利用して着信を報知する設定の場合には(ステップS505:Yes)、報知動作参照テーブル83から加速度レベルに対応する音量レベルを設定する(ステップ506、報知動作設定工程)。これにより、バイブレータ7のみならず、スピーカ11からも報知動作が行われる。 ・・・(中略)・・・ 【0108】 次に、報知動作制御部53は、報知動作設定工程にて設定された設定値に基づいて、まず、バイブレータの駆動回路を制御してバイブレータ7を振動させる(ステップS509、報知工程)。また、スピーカ11より着信を報知する設定の場合には、報知動作制御部53は、報知動作設定工程にて設定された設定値に基づいて、スピーカ11から着信音を出力する(ステップS509、報知工程)。さらに、発光素子14より着信を報知する設定の場合には、報知動作制御部53は、報知動作設定工程にて設定された設定値に基づいて発光指示信号を発光制御部12に入力し、発光制御部12は、発光素子14を点滅させる(ステップS509、報知工程)。 【0109】 上記報知工程により、バイブレータ7、スピーカ11、および発光素子14の報知動作を同時に行ったり、バイブレータ7およびスピーカ11、若しくは、バイブレータ7および発光素子14の組み合わせで報知動作が行われる。その後、この処理ルーチンを終了する。」 (2) 図11 図11を参照すると、バイブレータの振動強度を、着信音の音量とともに変化させることが記載されているといえる。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「携帯電話装置100」は、「操作部106等から出力されるユーザの指示に応じた制御信号に従って各種プログラムを実行することによって、携帯電話装置100の各構成部の動作、及び、通信基地局200との無線通信等の所望の処理を実行する」「CPU130」を含むものであるから、本願発明1の「情報処理装置」に対応する。 イ 引用発明の「スピーカ120」は、「増幅器」を介して「音声入出力部126」に接続され、「通話の際に音声入出力部126から」「増幅器」を介して「入力される電気信号を受話音声に変換して出力する」ものであるところ、「アンテナ104によって着信信号を含む電波信号が受信されたとき等に、設定された着信ボリュームレベルに基づく着信音量に応じた着信音を出力」する際にも、「スピーカ120」に、「着信音」に対応する「電気信号」が入力されることは、明らかである。 よって、引用発明の、「着信音」に対応する「電気信号」が入力される「スピーカ120」が、「着信音を出力」することは、本願発明1の「音声信号の入力に応じて音声出力装置から表示画像に応じた音声を出力する」ことと、「音声信号の入力に応じて音声出力装置から」「音声を出力する」点で共通する。 ウ 引用発明の「バイブレータ部140」は、「バイブレータモータ及び重錘を含むものであって、CPU130から入力される制御信号に応答して、設定された着信ボリュームレベルに基づいて、バイブレータモータを駆動して重錘を回転させることで携帯電話装置100の振動を発生させ」るものであるところ、「バイブレータモータ」の前段に、「CPU130から入力される制御信号に応答して、設定された着信ボリュームレベルに基づいて、バイブレータモータを駆動」する駆動回路があることは、明らかであり、また、「バイブレータモータ及び重錘」は、「制御信号」に対応する信号であって、駆動回路が出力する信号により、振動するものであるといえる。 よって、引用発明の、「制御信号」に対応する信号により、「バイブレータモータ及び重錘」を振動させることは、本願発明1の「振動信号の入力に応じて振動装置を当該表示画像に応じて振動させる」ことと、「振動信号の入力に応じて振動装置を」「振動させる」点で共通する。 エ 引用発明の「着信ボリュームレベル」は、「着信音量」「の大きさの程度」及び「バイブレータ部140の振動の程度を数値で示す」ものであるから、本願発明1の「出力を調整するための調整量」に相当する。 また、引用発明の「CPU130」は、「着信/通話処理」において、「着信音自動設定がOFFである場合に、」「ユーザによる操作部106からの入力操作によって予め手動で入力される」「手動設定情報に基づいて、着信ボリュームレベルを設定」するものであるから、本願発明1の「ユーザ操作に応じて、出力を調整するための調整量を設定する出力調整手段」に相当する。 オ 引用発明の「スピーカ120」は、上記イに記載したように、「着信音」に対応する「電気信号」が、「音声入力部126」から「増幅器」を介して入力され、「設定された着信ボリュームレベルに基づく着信音量に応じた着信音を出力」するものであるところ、「音声入力部126」及び「増幅器」は、「スピーカ120」が、「設定された着信ボリュームレベルに基づく着信音量に応じた着信音を出力」するように、「着信音」に対応する「電気信号」を出力するものであるといえる。 よって、引用発明の「音声入力部126」及び「増幅器」は、本願発明1の「前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、前記音声データに基づいて、前記音声信号を前記表示画像に応じて生成する音声制御手段」と、「前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、」「前記音声信号を」出力する「音声制御手段」の点で共通する。 カ 引用発明の駆動回路は、「制御信号に応答して、設定された着信ボリュームレベルに基づい」た、「制御信号」に対応した信号を出力することにより、「バイブレータモータ及び重錘」の「振動の程度」を、「設定された着信ボリュームレベル」に応じて変化させるものであるから、本願発明1の「前記設定された調整量に応じて前記振動装置による振動の大きさが前記出力される音声の音量とともに変化し、前記音声に応じて振動するように、前記振動データに基づいて、前記振動信号を前記表示画像に応じて生成する振動制御手段」と、「前記設定された調整量に応じて前記振動装置による振動の大きさが」「変化」「するように、」「前記振動信号を」出力する「振動制御手段」の点で共通する。 よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。 [一致点] 「 音声信号の入力に応じて音声出力装置から音声を出力するとともに、振動信号の入力に応じて振動装置を振動させる情報処理装置であって、 ユーザ操作に応じて、出力を調整するための調整量を設定する出力調整手段と、 前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、前記音声信号を出力する音声制御手段と、 前記設定された調整量に応じて前記振動装置による振動の大きさが変化するように、前記振動信号を出力する振動制御手段とを備える、情報処理装置。」 [相違点1] 音声出力装置から出力する音声に関して、本願発明1では、「表示画像に応じた」音声であるのに対して、引用発明では、そのような音声ではない点。 [相違点2] 振動装置による振動に関して、本願発明1では、「当該表示画像に応じて」振動させるのに対して、引用発明では、そのように振動させていない点。 [相違点3] 本願発明1は、「前記音声出力装置から出力される音声のソースとなる音声データと前記振動装置による振動のソースとなる振動データとを記憶するデータ記憶部」を備えるのに対して、引用発明では、そのような「データ記憶部」を備えることが特定されていない点。 [相違点4] 音声制御手段に関して、本願発明1では、「前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、前記音声データに基づいて、前記音声信号を前記表示画像に応じて生成する」のに対して、引用発明では、「前記設定された調整量に応じて前記音声出力装置から出力する音声の音量が変化するように、」「前記音声信号を」出力してはいるものの、「前記音声データに基づいて、前記音声信号を前記表示画像に応じて生成」していない点。 [相違点5] 振動装置による振動の大きさに関して、本願発明1では、「前記出力される音声の音量とともに」変化するのに対して、引用発明では、そのように変化していない点。 [相違点6] 振動装置による振動に関して、本願発明1では、「前記音声に応じて振動する」のに対して、引用発明では、そのように振動することが特定されていない点。 [相違点7] 振動制御手段に関して、本願発明1では、「前記振動データに基づいて、前記振動信号を前記表示画像に応じて生成する」のに対して、引用発明では、「前記振動信号を」出力してはいるものの、「前記振動データに基づいて、前記振動信号を前記表示画像に応じて生成」していない点。 (2) 相違点についての判断 事案に鑑みて、表示画像に応じて行われる処理について互いに関連する、上記相違点1-2、4、7について、先にまとめて検討する。 上記相違点1-2、4、7に係る本願発明1の構成である、音声信号の入力に応じて音声出力装置から表示画像に応じた音声を出力するとともに、振動信号の入力に応じて振動装置を当該表示画像に応じて振動させる情報処理装置であって、音声データに基づいて、前記音声信号を前記表示画像に応じて生成する、振動データに基づいて、前記振動信号を前記表示画像に応じて生成する、ことについて、引用文献1-3のいずれにも記載も示唆もなく、このことが本願出願前に周知技術であるともいえない。 また、引用発明の「携帯電話装置100」は、「アンテナ104が着信信号を含む電波信号を受信」したときに、「ユーザによる操作部106からの入力操作によって予め手動で入力される情報であ」って、「フラッシュROM136に記憶される手動設定情報に基づいて」「設定された着信ボリュームレベル」の「着信音の音量」「の大きさの程度」、「振動の程度」及び「振動パターン」「に従って、着信音動作及びバイブレータ動作を実行する」ものであるところ、引用文献1には、ユーザの利便性を向上させるために、周辺環境の騒音に対応した着信音量及び振動の程度によって、着信音の出力動作及び携帯電話装置の振動の発生動作を実行することが開示されてはいるものの、表示部108の表示画像に応じた着信音量及び振動の程度によって、着信音の出力動作及び携帯電話装置の振動の発生動作を実行するようにする起因、動機付けを見出すことはできない。 そして、本願発明1は、上記相違点1-2、4、7に係る構成によって、表示画像(仮想現実内を移動する仮想オブジェクト)の位置に応じて、知覚させる振動源の位置や音源を定位させる位置が設定され、振動による触覚、音声による聴覚、表示画面に移動体を表示する視覚を用いて仮想オブジェクトの位置を提示することによって、リアリティに富んだ体感をユーザに与えることができるとの格別の効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、上記相違点3、5-6を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術、及び、引用文献2-3に記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2-13について 上記「第4」のとおり、本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明11は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「情報処理プログラム」の発明であり、本願発明12は、「情報処理装置」の発明である本願発明1に対応する「情報処理システム」の発明であり、本願発明13は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「情報処理方法」の発明であって、上記相違点1-2、4、7に係る本願発明1の構成と実質的に同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-13も、当業者であっても、引用発明、引用文献1に記載された技術、及び、引用文献2-3に記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 本件補正で補正された請求項1-13は、上記「第6」のとおり、上記相違点1-2、4、7に係る本願発明1の構成を備えるものであり、当該構成は、原査定における引用文献A-Cには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-13は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Cに記載された発明に基づいて、容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-01-31 |
出願番号 | 特願2014-49131(P2014-49131) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加内 慎也 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
白井 亮 稲葉 和生 |
発明の名称 | 情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理システム、および情報処理方法 |
代理人 | 石原 盛規 |
代理人 | 小沢 昌弘 |
代理人 | 寺本 亮 |