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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1359116
審判番号 不服2018-14162  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-25 
確定日 2020-02-13 
事件の表示 特願2015-562451「ネットワーク内のスケーラブルなフロー及び輻輳制御」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/141006、平成28年 6月 2日国内公表、特表2016-516333、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月20日付けで手続補正がされ、平成30年3月8日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年6月6日付けで手続補正がされ、平成30年6月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.Chankchai So-In,他2名,Enhanced forward Explicit Congestion Notification(E-FECN) Scheme for Datacenter Ethernet Networks,performance Evaluation of Computer and Telecommunication Systems, 2008. SPECTS 2008. International Symposiumon,2008年 6月16日,pp.542-546
2.特開2012-49674号公報
3.特開2013-38570号公報


第3 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年6月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ネットワークにおいて輻輳管理を行う方法であって、
前記ネットワーク内の、スイッチ論理および輻輳通知論理を実装する処理回路を含むスイッチにおける輻輳状態を前記処理回路が監視することと、
前記処理回路が、前記スイッチにおいて、フロー・テーブル内のエントリのヘッダ・フィールド内のフラグであって、前記エントリに関連付けられたデータ・フローに関するデータのソースが、前記スイッチがデータを処理することができる速度より速くデータを送信していることを示す順方向輻輳フラグと、前記データ・フローに関するデータ要求の宛先が、前記スイッチが前記データ要求を処理することができる速度より速くデータを要求していることを示す逆方向輻輳フラグとを含む、前記フラグを検査することによって、前記輻輳状態が、前記スイッチに輻輳が存在することを示していると判定することと、
前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいてソースから第1の速度で受信されたデータに関連し、前記順方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第1の速度より遅い第2の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第1のメッセージを前記ソースに伝送することと、
前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1のメッセージの伝送に基づいて、
前記処理回路が、前記ネットワーク内の前記スイッチにおける前記輻輳状態を監視することと、
前記処理回路が、前記輻輳状態が、前記スイッチにおいて前記ソースから受信されたデータに関連する輻輳が前記スイッチにはもはや存在しないことを示しているとの判定に基づいて、前記スイッチから、前記第2の速度より速い第5の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第3のメッセージを前記ソースに伝送することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のメッセージの伝送に基づいて、
前記処理回路が、前記ネットワーク内の前記スイッチにおける前記輻輳状態を監視することと、
前記処理回路が、前記輻輳状態が、前記スイッチにおいて前記宛先から受信されたデータ要求に関連する輻輳が前記スイッチにはもはや存在しないことを示しているとの判定に基づいて、前記スイッチから、前記第4の速度より速い第6の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第4のメッセージを前記宛先に伝送することと
をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スイッチがOpenFlowスイッチであり、前記ネットワークがOpenFlowネットワークである、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ソース及び前記宛先がOpenFlowスイッチである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法を実施するためにコンピュータによって実行される命令を含む、ネットワークにおける輻輳管理のためのコンピュータ・プログラム。
【請求項7】
ネットワークにおいて輻輳管理を行うためのシステムであって、前記システムは、
前記ネットワークに接続するように構成されたスイッチを含み、前記スイッチは、
コンピュータ可読コンピュータ命令を有するメモリと、
前記コンピュータ可読命令を実行して、
前記スイッチにおける輻輳状態を監視し、
前記スイッチにおいて、フロー・テーブル内のエントリのヘッダ・フィールド内のフラグであって、前記エントリに関連付けられたデータ・フローに関するデータのソースが、前記スイッチがデータを処理することができる速度より速くデータを送信していることを示す順方向輻輳フラグと、前記データ・フローに関するデータ要求の宛先が、前記スイッチが前記データ要求を処理することができる速度より速くデータを要求していることを示す逆方向輻輳フラグとを含む、前記フラグを検査することによって、前記輻輳状態が、前記スイッチに輻輳が存在することを示していると判定し、
前記輻輳が前記スイッチにおいてソースから第1の速度で受信されたデータに関連し、
前記順方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記第1の速度より遅い第2の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第1のメッセージを前記ソースに伝送し、
前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送するためのプロセッサと
を含むシステム。
【請求項8】
前記命令が、
前記第1のメッセージの伝送に基づいて、
前記輻輳状態を監視することと、
前記輻輳状態が、前記スイッチにおいて前記ソースから受信されたデータに関連する輻輳が前記スイッチにはもはや存在しないことを示しているとの判定に基づいて、前記第2の速度より速い第5の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第3のメッセージを前記ソースに伝送することと
をさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記命令が、
前記第2のメッセージの伝送に基づいて、
前記輻輳状態を監視することと、
前記輻輳状態が、前記スイッチにおいて前記宛先から受信されたデータ要求に関連する輻輳が前記スイッチにはもはや存在しないことを示しているとの判定に基づいて、前記第4の速度より速い第6の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第4のメッセージを前記宛先に伝送することと
をさらに含む、請求項7又は請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記スイッチ、前記ソース及び前記宛先がOpenFlowスイッチであり、前記ネットワークがOpenFlowネットワークである、請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のシステム。」


第4 引用例、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)第1頁右欄30行目-39行目
「As shown in Fig. 1, rate regulators at the sources are used to adjust the rate of individual flows according to BCN messages received from switches. The switches are called congestion points(CPs) while the sources are the reaction points (RPs). The switches monitor their buffer utilization and send BCN messages back to the source based on the status and variation of the buffer queue. Two thresholds Qeq (equilibrium queue length) and Qsc (severe congestion queue length) are used to trigger BCN messages.」
(当審訳:図1に示すように、ソースのレートレギュレータを使用して、スイッチから受信したBCNメッセージに従って個々のフローのレートを調整する。スイッチは輻輳ポイント(CPs)と呼ばれ、ソースは反応ポイント(RPs)と呼ばれる。スイッチはバッファ使用率を監視し、バッファキューのステータスと変動に基づいてソースにBCNメッセージを返送する。BCNメッセージをトリガーするために、2つのしきい値Qeq(平衡キューの長さ)とQsc(深刻な輻輳キューの長さ)が使用される。)

(2)第2頁左欄20行目-33行目
「It has been shown that BCN achieves only proportional fairness not max-min fairness [6]. Furthermore, BCN is slow inconvergence to fair state and has large oscillations in throughput. FECN was proposed to deal with the fairness and oscillation issues [7]. As shown in Fig.2, FECN is a close-loop explicit rate feedback control mechanism. The sources periodically send probe messages that pass through the switches and are returned back to the sources from the destination. On the forward path, switches reduce the rate field in the probe and when the probes return to the sources,they contain the exact rate that the flow should follow. Therefore, the sources change their rate to that in the probes. The switches advertise the same rate to all flows passing through the switch. This ensures that all flows are treated fairly.」
(当審訳:BCNは、max-min公平性ではなく、比例公平性のみを達成することが示されている[6]。 さらに、BCNは公平な状態への収束が遅く、スループットに大きな変動がある。FECNは、公平性と振動の問題に対処するために提案された[7]。 図2に示すように、FECNは閉ループの明示的なレートフィードバック制御メカニズムである。 ソースは定期的にプローブメッセージを送信する。プローブメッセージはスイッチを通過し、宛先からソースに返される。フォワードパスでは、スイッチはプローブ内のレートフィールドを減らし、プローブがソースに戻ると、フローが従うべき正確なレートが含まれる。したがって、ソースはプローブに含まれるレートに変更する。スイッチは、スイッチを通過する全てのフローに同じレートをアドバタイズする。これにより、全てのフローが公平に処理される。)

(3)第3頁左欄6行目-12行目
「As shown in Fig. 3, in E-FECN, in addition to the normal probing mechanism of FECN, the switches are allowed to send BCN messages under severe congestion. E-EFCN allows sources to start sending the data at full rate (Fast Start) without a rate regulator. If this results in congestion on any switch, the switch sends a BCN00 message that requires the source to reduce to a low initial rate.」
(当審訳:図3に示すように、E-FECNでは、FECNの通常のプローブメカニズムに加えて、スイッチが厳しい輻輳の下でBCNメッセージを送信することができる。E-FECNにより、ソースはレートレギュレータなしでフルレート(ファーストスタート)によりデータの送信を開始できる。もしもその結果、いずれかのスイッチで輻輳が発生した場合、スイッチはBCN00メッセージを送信する。このメッセージでは、ソースが初期レートを低くする必要がある。)

(4) 引用発明
したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ソースのレートレギュレータを使用して、スイッチから受信したBCNメッセージに従って個々のフローのレートを調整し、
スイッチはバッファ使用率を監視し、バッファキューのステータスと変動に基づいてソースにBCNメッセージを返送し、
FECNは閉ループの明示的なレートフィードバック制御メカニズムであり、
ソースは定期的にプローブメッセージを送信し、
プローブメッセージはスイッチを通過し、宛先からソースに返され、
スイッチはプローブ内のレートフィールドを減らし、プローブがソースに戻ると、フローが従うべき正確なレートが含まれ、
ソースはプローブに含まれるレートに変更し、
E-FECNでは、FECNの通常のプローブメカニズムに加えて、スイッチが厳しい輻輳の下でBCNメッセージを送信することができる、
レートフィードバック制御メカニズム。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0018】、【0027】-【0028】には、以下の記載がある。
「【0018】
第1の実施形態では、このシステムにOpenFlowを適用している。従って、各スイッチはOFSとして、コントローラ30はOFCとして、それぞれ動作する。」
「【0027】
フローテーブル102は、背景技術の項で述べた通り、パケットヘッダと照合する条件(フローキー)と、処理内容を定義したアクション(Action)と、フロー統計情報との組を1つのエントリとして格納している。フローテーブル102の詳細については、後述する。
【0028】
ポートリンク情報管理部103は、各ポートが接続するリンクの通信状況を管理する。各ポートから通信が問題なく行われていれば、Linkの値は1に、障害または輻輳等が発生している場合には、Linkの値は0となる。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0021】、【0050】には、以下の記載がある。
「【0021】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に従い説明する。それに先立ち、本発明の輻輳通知機能を備えるパケット中継装置の基本構成について説明する。本発明のパケット中継装置の基本構成では、複数の入力回線と出力回線を備え、入力回線から受信したパケットの入力物理回線番号、または入力論理回線番号、またはパケットヘッダ情報のうち、少なくとも一つ以上の情報により識別されるパケットの集合から構成されるフローを検出し、フローが輻輳状態にあると判定すると、それ以降に受信した当該フローに対する応答パケットのパケットヘッダのうち、ネットワークの輻輳状態を示すフィールドを輻輳状態にあることを示す値に書き換える。」
「【0050】
図12に、本実施例の帯域監視エントリ毎輻輳状態管理テーブル541の一構成例を示す。帯域監視エントリ毎輻輳状態管理テーブル541は、フロー検索テーブル41の各フロー検索エントリに対応付けられた複数の帯域監視エントリ毎輻輳状態管理エントリ5411?541nから構成される。各輻輳状態管理エントリ5411?541nは、フロー検索エントリにより定義されたフロー毎の輻輳状態を示す輻輳状態フラグ5410から構成される。輻輳状態フラグ5410は、初期状態では輻輳状態に無いことを示す値となっている。輻輳状態管理部54は、監視結果判定回路530から輻輳検出を示す情報とヒットアドレスを入力されると、帯域監視エントリ毎輻輳状態管理テーブル制御部540によりヒットアドレスを書き込みアドレスとして帯域監視エントリ毎輻輳状態管理テーブル541の帯域監視エントリ毎輻輳状態管理エントリ5411?541nの輻輳状態フラグ5410に輻輳検出を示す情報を書き込む。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 引用発明の「スイッチ」は、メッセージの送信や、「バッファ使用率を監視」することで、輻輳の監視を実行していることから、引用発明の「スイッチ」が、本願発明1の「スイッチ論理および輻輳通知論理を実装する処理回路を含」み、「スイッチにおける輻輳状態を前記処理回路が監視」している「スイッチ」に対応することは自明である。
よって、引用発明において、「ソース」や「宛先」に対して、ネットワークを介して「メッセージ」を送受信し、また、「バッファ使用率を監視し」ている「スイッチ」は、本願発明1の「前記ネットワーク内の、スイッチ論理および輻輳通知論理を実装する処理回路を含むスイッチにおける輻輳状態を前記処理回路が監視すること」に対応する構成を備えているのは自明である。

イ 引用発明の「レートフィールド」が表す「レート」は、本願発明1における、通信の「速度」に相当する。
「プローブ」の「レートフィールド」が減らされて、「スイッチ」から「ソース」へ送信されることから、減らされる前の「レートフィールド」の「レート」が、本願発明1の「第1の速度」に、減らされた後の「レートフィールド」の「レート」が、本願発明1の「第2の速度」に、それぞれ対応する。
そして「レートフィールド」を「宛先」を介してフィードバックされて、「ソース」に伝える「プローブ」が、本願発明1の「第1のメッセージ」に相当する。
したがって、引用発明において、「ソース」が「定期的にプローブメッセージを送信し、」「スイッチ」が「プローブ内のレートフィールドを減らし、プローブがソースに戻ると、フローが従うべき正確なレートが含まれ」、「ソース」が「プローブに含まれるレートに変更」を行う構成は、本願発明1の「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいてソースから第1の速度で受信されたデータに関連し、前記順方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第1の速度より遅い第2の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第1のメッセージを前記ソースに伝送すること」と、「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいてソースから第1の速度で受信されたデータに関連し、前記スイッチから、前記第1の速度より遅い第2の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第1のメッセージを前記ソースに伝送すること」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「スイッチ」が、ネットワークの「レート」の「制御」を行い、「厳しい輻輳の下でBCNメッセージを送信する」構成は、本願発明1の「ネットワークにおいて輻輳管理を行う」構成に対応する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
ネットワークにおいて輻輳管理を行う方法であって、
前記ネットワーク内の、スイッチ論理および輻輳通知論理を実装する処理回路を含むスイッチにおける輻輳状態を前記処理回路が監視することと、
前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいてソースから第1の速度で受信されたデータに関連し、前記スイッチから、前記第1の速度より遅い第2の速度で前記データを送信するよう前記ソースに要求する第1のメッセージを前記ソースに伝送すること、
を含む方法。

[相違点1]
本願発明1は、「前記処理回路が、前記スイッチにおいて、フロー・テーブル内のエントリのヘッダ・フィールド内のフラグであって、前記エントリに関連付けられたデータ・フローに関するデータのソースが、前記スイッチがデータを処理することができる速度より速くデータを送信していることを示す順方向輻輳フラグと、前記データ・フローに関するデータ要求の宛先が、前記スイッチが前記データ要求を処理することができる速度より速くデータを要求していることを示す逆方向輻輳フラグとを含む、前記フラグを検査することによって、前記輻輳状態が、前記スイッチに輻輳が存在することを示していると判定」しているのに対し、引用発明は「前記フラグを検査することによって、前記輻輳状態が、前記スイッチに輻輳が存在することを示していると判定」していない点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記順方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて」第1のメッセージを前記ソースに伝送しているのに対し、引用発明は「順方向輻輳フラグ」を備えていない点。

[相違点3]
本願発明1は、「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」しているのに対し、引用発明は「宛先」に「データ要求」の「速度」に関する「メッセージ」を送信していない点。

(2)判断
[相違点3]について
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
上記引用文献1-3のうち、スイッチから、通信の速度に関するメッセージを、「宛先」に対して送信する点についての記載や示唆があるのは、引用文献1のみである。
引用文献2は、「OpenFlowを適用している」システムであって、「フローテーブル102」が「パケットヘッダと照合する条件(フローキー)と、処理内容を定義したアクション(Action)と、フロー統計情報との組を1つのエントリとして格納し」、「ポートリンク情報管理部103」が「各ポートが接続するリンクの通信状況を管理する」システムが開示されているものの、スイッチから、通信の速度に関するメッセージを、「宛先」に対して送信する点についての記載がない。
引用文献3は、「輻輳通知機能を備えるパケット中継装置」であって、「フローが輻輳状態にあると判定すると、それ以降に受信した当該フローに対する応答パケットのパケットヘッダのうち、ネットワークの輻輳状態を示すフィールドを輻輳状態にあることを示す値に書き換え」、「フロー検索エントリにより定義されたフロー毎の輻輳状態を示す輻輳状態フラグ5410から構成され」る「各輻輳状態管理エントリ5411?541n」によって輻輳を管理する技術が開示されているものの、スイッチから、通信の速度に関するメッセージを、「宛先」に対して送信する点についての記載がない。

ア 引用発明において、FECNのプローブに加えて送信される、BCNメッセージは、FECNと同様に、「ソース」への通知であって、「宛先」への、「データ要求」の「速度」に関する「メッセージ」とは異なる。また、引用発明において、BCNメッセージに代えて(または、これに加えて)、相違点3の「宛先」への「データ要求」の「速度」に関する「メッセージ」を送信するように構成するべき起因、動機付けも見出せない。

イ また、「フローテーブル」を備える「スイッチ」の「処理回路」である、「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」することが、周知技術であるとも認められない。

よって、当業者といえども、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて、相違点3に係る本願発明1の「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」する、という構成を容易に想到することはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6について
本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明であって、本願発明2-6も、本願発明1の上記相違点3に係る「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」するものと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7について
本願発明7は、本願発明1に対応するシステムの発明であり、本願発明1の上記相違点3に係る「前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、」「前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明8-10について
本願発明8-10は、本願発明7を減縮した発明であって、本願発明8-10も、本願発明1の上記相違点3に係る「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」するものと同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
原査定は、請求項1-10について上記引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年6月6日付け手続補正により補正された請求項1は、上記相違点3に係る「前記処理回路が、前記輻輳が前記スイッチにおいて宛先から第3の速度で受信されたデータ要求に関連し、前記逆方向輻輳フラグが設定されていることに基づいて、前記スイッチから、前記第3の速度より遅い第4の速度で前記データ要求を送信するよう前記宛先に要求する第2のメッセージを前記宛先に伝送」する構成を有するものとなっており、上記のとおり、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第7 むすび
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-01-28 
出願番号 特願2015-562451(P2015-562451)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 翔太  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 小田 浩
岩田 玲彦
発明の名称 ネットワーク内のスケーラブルなフロー及び輻輳制御  
代理人 上野 剛史  
代理人 太佐 種一  

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