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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1359199
審判番号 不服2019-966  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-24 
確定日 2020-01-23 
事件の表示 特願2017-132124号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-170215号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成25年8月30日に出願した特願2013-180509号の一部を平成29年7月5日に新たな特許出願(特願2017-132124号)としたものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 6月25日付け:拒絶理由通知
平成30年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月29日付け:拒絶査定(謄本送達日:同年同月31日)
平成31年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年 7月24日付け:拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
令和 1年 9月30日 :意見書(以下単に「意見書」という。)、手続補正書(以下、該手続補正書による補正を「本件補正」という。)の提出

(2)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
「A 当選役に関する抽選を行う抽選手段と、
B 複数の図柄が付されて各々が回転可能な複数のリールと、
C 前記リールの動作を制御するリール制御手段と、
D 前記リールが停止したときに、当該リールに付された図柄のうちの複数個の図柄を視認可能に表示する図柄表示領域が形成された図柄表示手段と、
E 前記図柄表示領域に表示された図柄組合せに基づいて賞を付与する賞付与手段と、
F 前記リール制御手段による前記リールの制御には、前記抽選手段による抽選で選ばれた当選役に基づく図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に前記リールの回転を制御する通常制御と、前記通常制御とは異なる制御でリールの回転を制御する特殊制御とが少なくとも含まれ、
G 前記抽選手段による抽選とは異なる抽選により前記特殊制御の実行を抽選する別抽選手段と、
H 前記特殊制御によるリールの制御が行われている際に、所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示し、遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を行う特殊状態制御手段と、
を備え、
I 前記別抽選手段による抽選の結果が前記特殊制御を実行する特定結果である場合に、前記特殊状態制御手段によって前記所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に構成されており、
J 前記抽選手段による抽選の結果が特別結果であり、且つ、前記別抽選手段による抽選の結果が前記特定結果である場合に、前記特殊制御による制御を複数の前記リールに対して行った後、前記特殊状態制御手段により遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を続いて実行し、当該特殊状態制御手段による制御を終了させた後、当該特殊制御が実行された同一ゲーム内にて、複数の前記リールに対して前記通常制御による制御を前記所定の図柄組合せが前記図柄表示領域に表示されることを許容して開始し、
K 前記特殊状態制御手段によって表示される前記所定の図柄組合せは、前記リールに対する停止操作を必要とすることなく表示されるのに対し、前記通常制御による制御で許容された前記所定の図柄組合せは、前記リールに対し適正な停止操作がなされた場合に前記図柄表示領域に表示され、
L 前記特殊状態制御手段によって実行される特典が付与されることを教示する制御は複数回実行されえる
M ことを特徴とする遊技機。」(以下「本願発明」という。なお、記号AないしMは、分説するため合議体が付した。)

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次の理由を含むものである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用例
引用例1.特開2013-13637号公報

3 引用例の記載及び引用発明
当審拒絶理由で引用例1として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-13637号公報(平成25年1月24日公開)(以下同じく「引用例1」という。)には、スロットマシン(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように告知演出は、特定の役決定結果が得られた場合に、そのことを率直に告知する役割のものだけではなく、実際には特定の役決定結果が得られていない場合でも、特定の役決定結果が得られた可能性があることを告知し、そのことによって、特定の役決定結果が得られたかもしれないという期待感を遊技者に持たせる役割のもの(以下「チャンス告知演出」と称する)もある。
【0014】
このようなチャンス告知演出が行われた場合、特定の役決定結果が本当に得られたのかどうかを遊技者が自ら確認したいと思うことがある。確認したい場合には、特定の役決定結果が得られた場合に所定の位置(例えば、有効ライン上)に停止表示させることが可能となる図柄の組合せや単独の図柄(以下「特定図柄群」と称する)を、所定の位置に停止表示させることを狙って目押しするというのが従来一般的である。特定図柄群を所定の位置に停止表示させることができれば、特定の役決定結果が得られていたということであり、逆に、特定図柄群を所定の位置に停止表示させることが可能なタイミングで目押しを行ったにも関わらず、特定図柄群が所定の位置に停止表示されなかった場合には、特定の役決定結果が得られていなかったことを意味する。一方、特定の役決定結果が本当に得られたのかどうかを積極的に確認したくない場合には、特定図柄群を狙った目押しを行わなければよい。
【0015】
このように従来のスロットマシンでは、チャンス告知演出等の告知が行われた際に、遊技者が役決定結果の内容を確認したいと思う場合と思わない場合とによって、遊技者が選択し得る遊技態様が限られているため、チャンス告知演出等の告知が行われた際の遊技が単調なものとなるという問題があった。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、所定の役決定結果が得られたことに関する情報が遊技者に告知された際、遊技者が実際の役決定結果を確認するために選択し得る遊技態様を多様化することにより、告知が行われた際の遊技性を向上させることが可能なスロットマシンを提供することを目的とする。
・・・略・・・
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、上記図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に共通する部分の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「役が成立する」及び「役の成立」等と記載する場合の「成立」とは、役決定により決定された役(遊技メダルの払出しがある役(小役等の入賞役)か、払出しのない役(再遊技役やBB役)かは問わない)を構成する図柄の組合せ(対応図柄)が、後述の有効ライン上に停止表示されたことを示す概念として用いている。ただし、成立のタイミングについては、例えば、役の対応図柄を有効ライン上に停止表示させることが可能なタイミングでリール停止操作が行われた時点や、役の対応図柄が有効ライン上に停止表示された時点、スロットマシンが、役の対応図柄が有効ライン上に停止表示されたことを認識した時点や、認識した結果を記憶領域に格納した時点等、適宜のタイミングとすることができる。
【0040】
<スロットマシンの外観>
第1実施形態及び第2実施形態に係るスロットマシン1は、図1に示すように、本体筐体の前面に開閉可能に取り付けられた前扉2を備えており、この前扉2の前面には、上部から順に、上パネルアセンブリ10、中パネルアセンブリ20、下パネルアセンブリ30及び受け皿アセンブリ40が取り付けられている。
【0041】
上記上パネルアセンブリ10の中央部には、その裏面側に配された画像表示装置11(図2参照)の表示画面11aが前方を臨むように配置されており、その周辺部には、第1演出ランプ12、第2演出ランプ13a,13b、第3演出ランプ14a,14bが配置されている。また、表示画面11aの下方左右には、一対の上部スピーカ15a,15bが配置されている。
【0042】
上記中パネルアセンブリ20の中央部には、本体筐体内に横並びに配設された3個のリール3a,3b,3cの表面が臨む表示窓Wが設けられており、この表示窓Wの下方には、遊技に供する遊技メダルが投入されるメダル投入口21、クレジットされた範囲内で遊技に供する遊技メダルを1枚投入するための1-BETスイッチ22、遊技に供する遊技メダルを最大許容投入枚数(例えば3枚)投入するためのMAX-BETスイッチ23、クレジットされた遊技メダルを払い出すための貯留メダル精算スイッチ24、全リール3a,3b,3cを一斉に回転開始させるためのスタートレバー25、各リール3a,3b,3cの回転を個別に停止させるための3個のストップスイッチ26a,26b,26c、及びメダル投入口21に投入した遊技メダルを返却するためのリジェクトスイッチ27等が設けられている。また、メダル投入口21の内部には、遊技メダルを検知するための投入メダルセンサ28(図2参照)が設けられている。
【0043】
上記表示窓Wは、3個のリール3a,3b,3cが全て停止した際に、リール毎に3個の図柄、合計9個の図柄が遊技者から視認可能に表示されるように構成されている。また、表示窓Wには、表示窓Wを横断するようにして合計5本の入賞ライン29a,29b,29c,29d,29eが表示可能に設けられている。入賞ライン29aは、左上段、中央上段及び右上段の各図柄表示領域を結ぶ横一直線のラインであり、入賞ライン29bは、左中段、中央中段及び右中段の各図柄表示領域を結ぶ横一直線のラインであり、入賞ライン29cは、左下段、中央下段及び右下段の各図柄表示領域を結ぶ横一直線のラインである。また、入賞ライン29dは、左上段、中央中段及び右下段の各図柄表示領域を結ぶ右下がりのラインであり、入賞ライン表示29eは、左下段、中央中段及び右上段の各図柄表示領域を結ぶ右上がりのラインである。各入賞ライン29a,29b,29c,29d,29eは、遊技に供された遊技メダル数によって有効となるライン数が変化し、最大許容投入枚数がベットされることにより、5本全てが有効となる。以下、有効となった入賞ラインを有効ラインと称することがある。
・・・略・・・
【0050】
ここで、有効ライン上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様(遊技メダルを獲得することができる役の態様)となっている場合には、各入賞態様に対応した枚数の遊技メダルがホッパー50により払い出されるか、またはクレジットとして加算される。」

(2)「【0152】
<第2実施形態>
次に、主に図26?図44を参照しながら、第2実施形態に係るスロットマシンの特徴構成について説明する。
【0153】
<リールの図柄配置>
第2実施形態では、各リール3a,3b,3cが表示する図柄が、図26に示すように配置されている(図26中の「左リール」、「中リール」及び「右リール」は、リール3a、リール3b及びリール3cをそれぞれ表す)。すなわち、「赤セブン」、「青セブン」、「ベル」、「スイカ」、「赤チェリー」、「青チェリー」、「バー」、「リプレイ」の各図柄が所定数ずつ各リール3a,3b,3cにそれぞれ配置されている。特に、第2図柄群(後述する小役7の対応図柄「バー・バー・バー」)を構成する「バー」の図柄は、各リール3a,3b,3cにおいて、それぞれ1つだけ配置されており(図26の図柄番号10の位置を参照)、各リール3a,3b,3cにおいて、「バー」の図柄からリール毎に決められた所定の図柄数(本実施形態では、全リール共通で、順方向(図26において図柄番号が増える方向)に10図柄、反対方向(図26において図柄番号が減る方向)に11図柄)だけ離れた位置には、第1図柄群(後述する小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」)を構成する「赤セブン」の図柄が配置されている(図26の図柄番号20の位置を参照)。ただし、「赤セブン」の図柄は、左リール(リール3a)の図柄番号19の位置と、右リール(リール3c)の図柄番号21の位置にも、1つずつ配置されている。なお、図26中において空欄となっている部分は、役の構成に関係しない任意の図柄が配置される。
・・・略・・・
【0156】
上記役決定手段101Aは、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(ハズレを含む)の中から1つまたは複数の役を選択する役決定を行うように構成されている。なお、この役決定は、図2に示す乱数発生器66及びサンプリング回路67を用いた乱数抽選により行われる。具体的には、乱数発生器66により生成された乱数列の中から、サンプリング回路67によって1つの乱数(数字)を取得した後、その取得乱数が、役抽選テーブル(図31?図35参照)に設定された複数の数値範囲の中のどの数値範囲に属するのかを判定し、取得乱数が属する数値範囲に対応した役を当選役として決定するように構成されている。
・・・略・・・
【0163】
上記フリーズ実行制御手段105Aは、上記告知態様決定手段104Aにより決定された告知態様の違いにより、上記所定の遊技において操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けてからリール回転停止操作を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態を変更するために、上記リール制御手段106Aを介してリール3a,3b,3cの駆動を制御するように構成されている。
【0164】
また、上記停止表示図柄判定手段107Aにより上記第2の図柄群が有効ライン上に停止表示されたと判定された場合において、上記所定の遊技における役決定により、上記第1の役決定結果が得られていた場合と上記第2の役決定結果が得られていた場合とによって、上記所定の遊技の次の遊技において操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けてからリール回転停止操作を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態を変更するために、上記リール制御手段106Aを介してリール3a,3b,3cの駆動を制御するように構成されている。
【0165】
上記リール制御手段106Aは、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、各リール3a,3b,3cを一斉に回転開始させるとともに、ストップスイッチ26a,26b,26cが順次押圧操作され、それらの各信号が入力された際に、対応する各リール3a,3b,3cを順次回転停止させるように構成されている。なお、各リール3a,3b,3cの回転停止制御は、ストップスイッチ26a,26b,26cが操作されたタイミングから、各リール3a,3b,3cが最大で4図柄移動する範囲内で行われる。すなわち、役決定手段101Aによる役決定の結果、所定の役が決定されている場合には、その決定された役の対応図柄が有効ライン上に停止表示されるように、ハズレの場合には、設定された何れの役の対応図柄も有効ライン上に停止表示されないよう停止制御がなされるようになっている。」

(3)「【0201】
<リール回転状態の変更>
また、先にも述べたように本実施形態では、上述の告知態様が決定された場合、決定された告知態様の違いにより、告知態様が決定された遊技において操作手段95Aがリール回転開始操作(スターレバー25の操作信号)を受け付けてからリール回転停止操作(ストップスイッチ26a,26b,26cの操作信号)を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態が変更されるようになっている。
【0202】
上述告知態様Aが決定された場合には、次述するフリーズAが実行される。このフリーズAは、操作手段95Aがリール回転開始操作(スタートレバー25の操作信号)を受け付けたことを契機として開始され、全リール3a,3b,3cを逆回転方向(表示窓W内において各図柄が下から上に移動する方向)に所定回数(例えば、2回)回転させた後、一旦、全リールを停止させ、その後、全リールを正回転方向(表示窓W内において各図柄が上から下に移動する方向)に回転開始させ、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものである。
【0204】
上述した告知態様の決定と、リール回転状態の変更の対応関係を図36に示す。図36において、「役決定結果B7+右第一操作」とは、BB遊技状態中の遊技における役決定により、役決定結果B7が得られ、かつ直前の遊技におけるリール回転停止操作の順序が上述の「右第一操作」であることを示している。同様に、「役決定結果B7,B8orB9+左or中第一操作」とは、BB遊技状態中の遊技における役決定により、役決定結果B7、役決定結果B8または役決定結果B9の何れかが得られ、かつ直前の遊技におけるリール回転停止操作の順序が上述の「左第一操作」または「中第一操作」であることを示している。
【0205】
また、上述したように本実施形態では、BB遊技状態中に役決定結果B7、役決定結果B8または役決定結果B9の何れかが得られた場合の遊技において、第2の図柄群(小役7の対応図柄「バー・バー・バー」)が有効ライン上に停止表示された場合には、当該遊技の役決定により、第1の役決定結果(役決定結果B7)が得られていた場合と第2の役決定結果(役決定結果B8)が得られていた場合とによって、当該遊技の次の遊技において操作手段95Aがリール回転開始操作(スタートレバー25の操作信号)を受け付けてからリール回転停止操作(ストップスイッチ26a,26b,26cの操作信号)を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態が変更されるようになっている。具体的には、次述するように、各リール3a,3b,3c上において、小役7の対応図柄「バー・バー・バー」を構成する「バー」の図柄が配置された位置から10図柄離れた位置に、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」を構成する「赤セブン」の図柄が配置されていることを利用したフリーズ制御が行われる。
【0206】
すなわち、第1の役決定結果(役決定結果B7)が得られていた場合には、次述するフリーズBが実行される。このフリーズBは、操作手段95Aがリール回転開始操作(スタートレバー25の操作信号)を受け付けたことを契機として開始され、図37に示すように、小役7の対応図柄「バー・バー・バー」が有効ライン29b上に揃っている状態(同図(a)参照)から、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ(同図(b)参照)、全リールを逆回転方向に、リール毎に決められた所定の整数回の回転数(例えば、全リール共通で3回転)+11図柄分の回転量だけ回転させた後に、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態(同図(c)参照)を遊技者に見せ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ(同図(d)参照)、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものである。
【0207】
一方、第2の役決定結果(役決定結果B8)が得られていた場合には、次述するフリーズCが実行される。このフリーズCは、操作手段95Aがリール回転開始操作(スタートレバー25の操作信号)を受け付けたことを契機として開始され、図38に示すように、小役7の対応図柄「バー・バー・バー」が有効ライン上に揃っている状態(同図(a)参照)から、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ(同図(b)参照)、リール3a,3cについては逆回転方向に所定の整数回の回転数(例えば、全リール共通で3回転)+11図柄分の回転量だけ回転させた後に、リール3bについては逆回転方向にリール3a,3cよりも1図柄分少ない回転量だけ回転させた後に、それぞれ一旦停止させることにより、リール3a,3cについては有効ライン29b上に「赤セブン」の図柄が停止表示され、リール3bについては有効ライン29b上に「赤セブン」の図柄が停止表示されずに、「ベル」の図柄が停止表示された状態(同図(c)参照)を遊技者に見せ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ(同図(d)参照)、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものである。
【0208】
なお、上記フリーズBでは、図37(c)に示すように、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態において、入賞ライン29e(BB遊技状態中は有効化されていない)上にも「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が揃った状態(以下「ダブルライン表示状態」と称する)となる。このことを利用して、フリーズBを行う際の態様として、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」を、図37(c)に示すダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、図39に示すように、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上でのみ揃い、有効化されていない入賞ライン29e上には揃わない状態(以下「シングルライン表示状態」と称する)で表示させる場合とを抽選等により選択し、選択された態様に応じてリールの駆動を制御するようにしてもよい。この場合、ダブルライン表示状態が選択された場合と、シングルライン表示状態が選択された場合とで、次述するアシスト可能回数上乗せ抽選において決定されるアシスト上乗せ回数が変わるように設定してもよい。
【0209】
<アシスト可能回数上乗せ抽選>
また、本実施形態では、BB遊技状態中の遊技における役決定により役決定結果B7が得られた場合には、アシスト回数制御手段112Aによりアシスト可能回数上乗せ抽選が行われる。このアシスト可能回数上乗せ抽選は、上述のアシスト可能回数の上乗せ回数を決定するものであり、本実施形態では、図44に示すように、アシスト上乗せ回数が30回とされる「W1」(確率は1/2)、アシスト上乗せ回数が50回とされる「W2」(確率は1/3)、アシスト上乗せ回数が70回とされる「W3」(確率は1/6)の3項目のうちの何れかが抽選により決定されるように設定されている。」

(4)「【図30】



(5)「【図37】



(6)上記(1)ないし(5)からみて、引用例1には、主に第2実施形態として、次の発明が記載されているものと認められる(なお、引用箇所の段落番号等を併記した。)。
「a 役抽選テーブルに設定された複数の数値範囲の中のどの数値範囲に属するのかを判定し、取得乱数が属する数値範囲に対応した役を当選役として決定する役決定手段101A(【0156】)と、
b 各図柄が所定数ずつそれぞれ配置されている各リール3a,3b,3c(【0153】)と、
c スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、各リール3a,3b,3cを一斉に回転開始させるとともに、ストップスイッチ26a,26b,26cが順次押圧操作され、それらの各信号が入力された際に、対応する各リール3a,3b,3cを順次回転停止させるリール制御手段106A(【0165】)と、
d 横並びに配設された3個のリール3a,3b,3cの表面が臨む表示窓W(【0042】)と、
e 表示窓Wに設けられた有効ライン上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様となっている場合には、各入賞態様に対応した枚数の遊技メダルを払い出すホッパー50(【0043】、【0050】)と、
f 上記リール制御手段106Aは、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けてからリール回転停止操作を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態を変更し得るものであり(【0163】)、フリーズAが実行される場合には、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けたことを契機として開始され、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に所定回数回転させた後、一旦、全リールを停止させ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものであり(【0202】)、
g、h、i フリーズBが実行される場合に、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ(【0206】)、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が揃った状態において、入賞ライン29e上にも「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が揃った状態、すなわちダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上でのみ揃い、有効化されていない入賞ライン29e上には揃わない状態、すなわちシングルライン表示状態で表示させる場合とを抽選により選択し、ダブルライン表示状態が選択された場合と、シングルライン表示状態が選択された場合とで、アシスト可能回数上乗せ抽選において決定されるアシスト上乗せ回数が変わるように設定する(【0208】)、フリーズ実行制御手段105A(【0163】)と、
を備え、
j,k 第1の役決定結果(役決定結果B7)が得られていた場合には、前記フリーズBが実行され、このフリーズBは、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けたことを契機として開始され、小役7の対応図柄「バー・バー・バー」が有効ライン29b上に揃っている状態から、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化する(【0206】)、
m スロットマシン1(【0040】、【0152】)。」(以下「引用発明」という。なお、記号aないしmについては、本願発明のAないしMに対応するように合議体が付した。)

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(m)は、本願発明のAないしMに対応させている。
(a)引用発明の「役決定手段101A」は、役抽選テーブルに設定された複数の数値範囲の中のどの数値範囲に属するのかを判定し、取得乱数が属する数値範囲に対応した役を当選役として決定するのであるから、本願発明の「当選役に関する抽選を行う抽選手段」に相当する。

(b)引用発明の「各リール3a,3b,3c」は、回転可能であることは技術常識であるとともに、各図柄が所定数ずつそれぞれ配置されているから、本願発明の「複数の図柄が付されて各々が回転可能な複数のリール」に相当する。

(c)引用発明の「リール制御手段106A」は、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、各リール3a,3b,3cを一斉に回転開始させるとともに、ストップスイッチ26a,26b,26cが順次押圧操作され、それらの各信号が入力された際に、対応する各リール3a,3b,3cを順次回転停止させるものであるから、本願発明の「前記リールの動作を制御するリール制御手段」に相当する。

(d)引用発明の「表示窓W」は、横並びに配設された3個のリール3a,3b,3cの表面が臨むものであり、リール3a,3b,3cが停止したときに、リールの図柄が視認可能であることは自明であるから、本願発明の「前記リールが停止したときに、当該リールに付された図柄のうちの複数個の図柄を視認可能に表示する図柄表示領域が形成された図柄表示手段」に相当する。

(e)引用発明は、表示窓W(図柄表示手段)に設けられた有効ライン上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様となっている場合には、各入賞態様に対応した枚数の遊技メダルをホッパー50により払い出すのであるから、本願発明の「前記図柄表示領域に表示された図柄組合せに基づいて賞を付与する賞付与手段」を備えることは明らかである。

(f)引用発明は、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものであり、技術常識からみて、引用発明の「リール制御手段106A」(リール制御手段)による制御には、本願発明の「前記抽選手段による抽選で選ばれた当選役に基づく図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に前記リールの回転を制御する通常制御」が含まれることは明らかである。
また、引用発明は、リール制御手段106A(リール制御手段)が、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けてからリール回転停止操作を受け付けるまでの間におけるリール3a,3b,3cの回転状態を変更し得るものであり、フリーズAが実行される場合には、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けたことを契機として開始され、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に所定回数回転させた後、一旦、全リールを停止させ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させるものであり、技術常識からみて、通常制御とは異なる制御でリールの回転を制御しているから、引用発明の「リール制御手段106A」(リール制御手段)による制御には、本願発明の「前記通常制御とは異なる制御でリールの回転を制御する特殊制御」が含まれることは明らかである。
してみると、引用発明は、本願発明の「F 前記リール制御手段による前記リールの制御には、前記抽選手段による抽選で選ばれた当選役に基づく図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に前記リールの回転を制御する通常制御と、前記通常制御とは異なる制御でリールの回転を制御する特殊制御とが少なくとも含まれ」との構成を備える。

(g)引用発明のg、h、iでは、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態(特殊制御)において、ダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、シングルライン表示状態で表示させる場合とを抽選するものであるから、引用発明のg、h、iと、本願発明の「G 前記抽選手段による抽選とは異なる抽選により前記特殊制御の実行を抽選する別抽選手段」とは、「G’前記抽選手段による抽選とは異なる抽選により前記特殊制御の実行に関して抽選する別抽選手段」を備える点で一致する。

(h)引用発明のg、h、iは、フリーズB(特殊制御)が実行される場合に、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(所定の図柄の組み合わせ)が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ、アシスト上乗せ(所定の特典)を教示しているといえるから、本願発明の「前記特殊制御によるリールの制御が行われている際に、所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示し、遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を行う特殊状態制御手段」を備えることは明らかである。

(i)引用発明のg、h、iは、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態(特殊制御)において、ダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、シングルライン表示状態で表示させる場合とを抽選するものであり、シングルライン表示状態で表示させた場合(特定結果である場合)に一つの「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(所定の図柄の組み合わせ)を表示するから、引用発明のg、h、iと、本願発明の「I 前記別抽選手段による抽選の結果が前記特殊制御を実行する特定結果である場合に、前記特殊状態制御手段によって前記所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に構成されて」とは、「I’前記別抽選手段による抽選の結果が特定結果である場合に、前記特殊状態制御手段によって前記所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に構成されて」いる点で一致する。

(j)引用発明j、kは、第1の役決定結果(役決定結果B7)(特別結果)が得られていた場合には、フリーズB(特殊制御による制御)が実行され、このフリーズBは、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けたことを契機として開始され、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ、アシスト上乗せ(所定の特典)を教示しているといえるから、引用発明のj、kと、本願発明の「J 前記抽選手段による抽選の結果が特別結果であり、且つ、前記別抽選手段による抽選の結果が前記特定結果である場合に、前記特殊制御による制御を複数の前記リールに対して行った後、前記特殊状態制御手段により遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を続いて実行し、当該特殊状態制御手段による制御を終了させた後、当該特殊制御が実行された同一ゲーム内にて、複数の前記リールに対して前記通常制御による制御を前記所定の図柄組合せが前記図柄表示領域に表示されることを許容して開始し、」とは、「J’前記抽選手段による抽選の結果が特別結果であり、且つ、前記別抽選手段による抽選の結果が前記特定結果である場合に、前記特殊制御による制御を複数の前記リールに対して行った後、前記特殊状態制御手段により遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を続いて実行し、」ている点で一致する。

(k)引用発明j、kは、フリーズB(特殊制御による制御)が、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ、停止操作をすることなく、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せているから、引用発明のj、kと、本願発明の「K 前記特殊状態制御手段によって表示される前記所定の図柄組合せは、前記リールに対する停止操作を必要とすることなく表示されるのに対し、前記通常制御による制御で許容された前記所定の図柄組合せは、前記リールに対し適正な停止操作がなされた場合に前記図柄表示領域に表示され」とは、「K’前記特殊状態制御手段によって表示される前記所定の図柄組合せは、前記リールに対する停止操作を必要とすることなく表示され」る点で一致する。

(m)引用発明の「スロットマシン」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

(2)上記(1)からみて、本願発明と引用発明とは、
「A 当選役に関する抽選を行う抽選手段と、
B 複数の図柄が付されて各々が回転可能な複数のリールと、
C 前記リールの動作を制御するリール制御手段と、
D 前記リールが停止したときに、当該リールに付された図柄のうちの複数個の図柄を視認可能に表示する図柄表示領域が形成された図柄表示手段と、
E 前記図柄表示領域に表示された図柄組合せに基づいて賞を付与する賞付与手段と、
F 前記リール制御手段による前記リールの制御には、前記抽選手段による抽選で選ばれた当選役に基づく図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に前記リールの回転を制御する通常制御と、前記通常制御とは異なる制御でリールの回転を制御する特殊制御とが少なくとも含まれ、
G’前記抽選手段による抽選とは異なる抽選により前記特殊制御の実行に関して抽選する別抽選手段と、
H 前記特殊制御によるリールの制御が行われている際に、所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示し、遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を行う特殊状態制御手段と、
を備え、
I’前記別抽選手段による抽選の結果が前記特殊制御を実行する特定結果である場合に、前記特殊状態制御手段によって前記所定の図柄組合せを前記図柄表示領域に表示可能に構成されており、
J’前記抽選手段による抽選の結果が特別結果であり、且つ、前記別抽選手段による抽選の結果が前記特定結果である場合に、前記特殊制御による制御を複数の前記リールに対して行った後、前記特殊状態制御手段により遊技者に所定の特典が付与されることを教示する制御を続いて実行し、
K’前記特殊状態制御手段によって表示される前記所定の図柄組合せは、前記リールに対する停止操作を必要とすることなく表示される、
M 遊技機。」(以下「一致点」という。)の点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項G、I)
「別抽選手段」は、
本願発明では、「特殊制御の実行を抽選する」のに対し、
引用発明では、ダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、シングルライン表示状態で表示させる場合とを抽選するものであり、「特殊制御の実行を抽選する」ものとはいえない点。

・相違点2(特定事項J、K)
「特殊状態制御手段による制御を終了させた後」の「通常制御による制御」に関し、
本願発明では、「当該特殊状態制御手段による制御を終了させた後、当該特殊制御が実行された同一ゲーム内にて、複数の前記リールに対して前記通常制御による制御を前記所定の図柄組合せが前記図柄表示領域に表示されることを許容して開始し、」「前記通常制御による制御で許容された前記所定の図柄組合せは、前記リールに対し適正な停止操作がなされた場合に前記図柄表示領域に表示され」るのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点3(特定事項L)
「前記特殊状態制御手段によって実行される特典が付与されることを教示する制御」(一致点の特定事項J’)の実行は、
本願発明では、「複数回」であるのに対し、
引用発明では、1回であり、「複数回」とはいえない点。

5 判断
(1)相違点1について
ア スロットマシンにおいて、フリーズ等の擬似変動遊技を実行するか否かを抽選により決定することは本願出願前に周知(以下「周知技術1」という。例.特開2010-148844号公報(特に「【0081】・・・本スロットマシン10では、各リール32L,32M,32Rの変動を用いた擬似変動演出を実行可能な構成となっており、変動回数設定処理では、擬似変動演出の実行回数を決定する。・・・また、いずれの当選フラグもセットされていない場合に選択される変動回数テーブルは、約1%の割合で変動回数として「4」が取得され、・・・約80%の割合で変動回数として「0」が取得されるよう、乱数と変動回数との対応関係が定められている。」との記載、図14の記載参照。)、特開2011-194146号公報(特に「【0018】 (第1の実施の形態)・・・ 図2に示すように、遊技機としてのスロットマシン10は、・・・【0041】また、本実施の形態では、フリーズ制御手段140は、通常遊技において、役抽選手段110の抽選結果がボーナス当選(BB当選又はRB当選)以外となった場合に、フリーズ状態を実行するか否かを抽選で決定するフリーズ実行抽選を行う。」との記載参照。)、特開2013-158584号公報(特に「【0038】 ここで、本実施の形態における回胴演出は、回転リール40を遊技実行時の通常の回転態様と異なる態様で回転させるものであり、通常の回転速度又は加速度と異なる速度又は加速度で回転させたり、通常の回転方向と逆方向に回転させたり、振動させたりする態様を含むものである。なお、スタートスイッチ30の操作を受付けてから回転リール40が回転開始するまでの時間を通常と異なるものとし、回転リール40の回転態様そのものは通常と変わらないものとする、いわゆるフリーズ演出も、回胴演出の範疇に含めることができる。スロットマシン10としては、上記した通常の回転態様と異なる態様の回胴演出以外に、そのような回胴演出(フリーズ演出)を実行可能であってもよい。」との記載、「【0081】・・・ 続いて、図7のステップ104における回胴演出決定処理について、図9のフローに基づき説明する。【0082】 まず、図9のステップ300において、実行抽選処理が行われ、次のステップ301において、実行抽選に当選したか否かが判断される。実行抽選に当選しなかった場合にはそのまま処理を終了し、実行抽選に当選した場合には、次のステップ302に進む。」との記載、図9の記載参照。))である。

イ 引用発明と周知技術1とは、当選役に関する抽選を行う抽選手段による抽選とは異なる抽選により特殊制御の実行に関して抽選する別抽選手段を備えるスロットマシンで共通するから、周知技術1を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得たことである。
そして、具体的には、引用発明は、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が揃った状態において、ダブルライン表示状態で停止表示させる場合と、シングルライン表示状態で表示させる場合とを抽選により選択するものであるところ、特殊制御の種類を抽選しているとはいえるものの、特殊制御の実行有無を抽選しているとはいえないものであるが、引用発明において、周知技術1を考慮すれば、特殊制御の種類のみならず、特殊制御の実行を抽選するようになすこと、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の特定事項となすことは当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について
ア 引用発明は、役決定結果B7が得られていた場合、フリーズが実行され、このフリーズは、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化するものである。

イ そうすると、引用発明において、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(所定の図柄の組み合わせ)が一旦停止表示される特殊制御後の同一ゲーム内の通常制御で、役決定結果B7(特別結果)に対応する小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(特定の図柄の組み合わせ)が表示されることを許容し、リールに対し、適正にストップスイッチの操作(停止操作)がなされた場合に、該「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が停止表示されることは当業者にとって自明である。

ウ してみると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の特定事項となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
ア スロットマシンにおいて、遊技が単調化することを抑制するために、フリーズ等の擬似変動遊技で、同じ停止図柄を含む所定図柄の組み合わせを複数回仮停止させることは本願出願前に周知(以下「周知技術2」という。例.上記特開2010-148844号公報(特に上記【0081】の記載、「【0121】・・・図19(a)に示すように、・・・有効ライン上に2つの「赤7」図柄が並んで停止したことを通じてBB当選の可能性が示唆される。・・・【0123】・・・図19(b)に示すように、・・・かかる停止出目により、有効ライン上に再び2つの「赤7」図柄が並んで停止したことを通じてBB当選の可能性が示唆される。・・・【0125】・・・図19(c)に示すように、・・・かかる停止出目により、有効ライン上に三度2つの「赤7」図柄が並んで停止したことを通じてBB当選の可能性が示唆される。」との記載、「【0131】 以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。【0132】・・・故に、遊技が単調化することを抑制することが可能となる。」との記載、図19の記載参照。)、特許第4925486号公報(特に「【0001】 本発明は、メダルを遊技媒体に使用するパチスロやパチンコ球を遊技媒体に使用するパチロットと称されるスロットマシン(回胴式遊技機)などの遊技機等に関する。」との記載、「【0268】 図112は、7RUSH演出の概要図である。・・・【0270】 主制御部100は、ドラム部2を上方向に揃えて回転させ(図112(B)参照)、振動を続ける赤7図柄を中央一直線に揃えて停止させて、ART上乗せゲーム数の50ゲームを表示する(図112(C)参照)。この表示は、当選した回数だけ何度も繰り返されるので、遊技者は興奮と感動を覚える。」との記載、図112の記載参照。)、特許第5212958号公報(特に「【0001】 本発明は、メダルを遊技媒体に使用するパチスロやパチンコ球を遊技媒体に使用するパチロットと称されるスロットマシン(回胴式遊技機)などの遊技機等に関する。」との記載、「【0372】 図112は、7RUSH演出の概要図である。・・・【0374】 主制御部100は、ドラム部2を上方向に揃えて回転させ(図112(B)参照)、振動を続ける赤7図柄を中央一直線に揃えて停止させて窓部3に表示し、ART上乗せゲーム数の50ゲームを表示する(図112(C)参照)。この表示は、当選した回数だけ何度も繰り返されるので、遊技者は興奮と感動を覚える。」との記載、図112の記載参照。))である。

イ 引用発明と周知技術2とは、特殊状態制御手段によって実行される特典が付与されることを教示する制御を実行するスロットマシンで共通するとともに、遊技が単調なものとならないようにするという課題でも共通するから、周知技術2を引用発明に適用することに十分な動機付けはある。
そして、引用発明は、「小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ」(特定事項j)ることにより、第1の役決定結果(役決定結果B7)及びアシスト上乗せを教示しているところ、周知技術2を考慮すれば、引用発明において、特典が付与されることの教示を強調して遊技が単調なものとならないようにするために、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(所定の図柄の組み合わせ)を繰返し停止表示させる、言い換えれば、停止表示させる制御を複数回実行されるようになし、上記相違点3に係る本願発明の特定事項のようになすことは当業者が適宜なし得たことである。

(4)以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1ないし3に係る本願発明の特定事項のようになすことは当業者が周知技術1及び2に基づいて適宜なし得たことである。

(5)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1及び2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(6)したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(7)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、意見書において、概略、以下のとおり主張している。
「[3]本願発明が特許されるべき理由
(A)理由1(進歩性)を解消していることについて
審判合議体のご認定に鑑み、補正後の本願発明は第4補正事項による補正により「前記特殊状態制御手段によって実行される特典が付与されることを教示する制御は複数回実行されえる」と補正しております。
このように構成することで、遊技者に所定の特典が付与されることを教示される所定の図柄組合せが複数回表示されることとなり、出願当初明細書の段落[0400]などに記載している加速感や期待感をより強く感じることが可能になります。
これに対して、引用例1に記載の遊技機は、「フリーズBが実行される場合に、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ(【0206】)、「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が揃った状態として、ダブルライン表示状態が選択された場合と、シングルライン表示状態が選択された場合とで、アシスト可能回数上乗せ抽選において決定されるアシスト上乗せ回数が変わるように設定する(【0208】)、フリーズ実行制御手段105A(【0163】)と、
を備え、
第1の役決定結果(役決定結果B7)が得られていた場合には、前記フリーズBが実行され、このフリーズBは、操作手段95Aがリール回転開始操作を受け付けたことを契機として開始され、小役7の対応図柄「バー・バー・バー」が有効ライン29b上に揃っている状態から、全リール3a,3b,3cを逆回転方向に回転開始させ、全リールを一旦停止させることにより、小役5の対応図柄「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が有効ライン29b上に揃った状態を遊技者に見せ、その後、全リールを正回転方向に回転開始させ、全リールが定速回転に達した時点で、ストップスイッチ26a?26cの操作を有効化する(【0206】)」ことなどが審判合議体のご認定通り記載されておりますが、補正後の本願発明のようにフリーズ中に複数回「赤セブン・赤セブン・赤セブン」が停止されることについては、一切記載も示唆もされておりません。
このため、当業者であっても引用文献1から補正後の本願発明に想到することはなく、補正後の本願発明が有する本願特有の効果を奏しえることも出来ないため、引用文献1からにより進歩性がなく特許を受けることができないとする拒絶の理由は解消されているものと思料いたします。」

イ 審判請求人の主張について検討する。
上記(3)で示したとおり、スロットマシンおけるフリーズ等の擬似変動遊技において、リーチ目やチャンス目等の特定の図柄の組み合わせを複数回仮停止させることは本願出願前に周知(周知技術2)であり、且つ、該周知技術2を考慮して、引用発明の「赤セブン・赤セブン・赤セブン」(所定の図柄の組み合わせ)の仮停止表示させる制御の実行回数を複数回となすことは当業者にとって容易である。
したがって、審判請求人の主張は、採用することができない。

6 むすび
本願発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-19 
結審通知日 2019-11-26 
審決日 2019-12-09 
出願番号 特願2017-132124(P2017-132124)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治牧 隆志  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 鉄 豊郎
島田 英昭
発明の名称 遊技機  

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