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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1359253
審判番号 無効2018-800115  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-09-11 
確定日 2020-02-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第6121026号発明「美容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件特許の経緯
本件特許第6121026号(以下、単に「本件特許」という。)についての特許出願は、平成26年3月27日に出願した特願2014-65029号の一部を平成28年4月26日に新たな特許出願とした特願2016-88002号に係り、平成29年4月7日にその特許権の設定登録がされた。その後、本件請求項1ないし4に係る発明についての特許に対して、平成30年3月23日付けで無効審判請求人 株式会社ファイブスターより無効審判(無効2018-800035号)の請求がされ、平成30年10月19日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされた。さらに、同じく無効審判請求人株式会社ファイブスターより本件無効審判(無効2018-800115号)が請求されたものである。

第2 本件無効審判の経緯
本件無効審判の経緯は以下のとおりである。

平成30年 9月11日 請求人 株式会社ファイブスターによる
本件無効審判請求
(無効2018-80115号)
平成30年12月18日 被請求人 株式会社MTGによる
審判事件答弁書
(以下単に「答弁書」という。)提出
平成31年 1月18日付け 審理事項通知書
平成31年 2月12日 請求人による口頭審理陳述要領書提出
平成31年 2月15日付け 審理事項通知書(2)
平成31年 3月12日 被請求人による口頭審理陳述要領書提出
平成31年 3月15日付け 審理事項通知書(3)
平成31年 3月26日 第1回口頭審理

なお、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。また、特許法の条文を使用する際に「特許法」という表記を省略することがある。

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。(以下「本件特許発明1」などということがある。また、これらをまとめて単に「本件特許発明」ということがある。)
「【請求項1】
棒状のハンドル本体と、該ハンドル本体の表面から内方に窪んだ凹部と、上記ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で上記凹部を覆うように上記ハンドル本体に取り付けられたハンドルカバーとからなるハンドルと、
上記ハンドル本体の長手方向の一端に一体的に形成された一対の分枝部と、
該一対の分枝部のそれぞれに形成されているとともに、上記凹部に連通する軸孔と、
該軸孔に挿通された一対のローラシャフトと、
該一対のローラシャフトに取り付けられた一対のローラと、
を備え、
上記ハンドル本体の表面及び上記ハンドルカバーの表面が、上記ハンドルの表面を構成している、美容器。
【請求項2】
上記凹部には、上記軸孔に挿通された上記ローラシャフトを支持するシャフト支持台が設けられている、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
上記凹部には電源部が収納されており、該電源部は上記ローラシャフトを介して、上記ローラに電気的に接続されており、該ローラと肌との間に微弱電流が流れるように構成され、上記凹部の底には上記ハンドル本体を貫通して上記電源部としての太陽電池パネルに外光を到達させる窓部が形成されている、請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項4】
上記一対のローラの並び方向から見たときに、上記一対のローラシャフトは上記ハンドル本体に対して傾斜しており、上記凹部は上記一対のローラシャフトが傾斜する側に開口するように形成されている、請求項1?3のいずれか一項に記載の美容器。」

第4 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人の主張する請求の趣旨は、本件特許発明1ないし4についての特許を無効とする、との審決を求めるものである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証の1:中国実用新案登録第201586180号公報の写し(以下、写しである旨の表記は省略する。)
甲第1号証の2:甲第1号証の1の翻訳文
甲第2号証:実用新案登録第3169597号公報
甲第3号証:特開2012-85809号公報
甲第4号証:特開2013-103085号公報
甲第5号証:特開2013-158608号公報
なお、以下において、甲第○号証を単に甲○ということがある。

(1)証拠方法の提出時期
以上の証拠方法は、審判請求書(以下単に「請求書」ということがある。)に添付されたものである。

(2)文書の成立の真正
上記甲第1号証の1ないし甲第5号証の文書の成立について、当事者間に争いはない(第1回口頭審理調書の「被請求人」欄2)。

3 請求の理由の要点
請求の理由は、請求人の主張の全趣旨を踏まえ、その要点は以下のとおりである。

(1)本件特許発明1、3、及び4は、甲第1号証の1に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)本件特許発明2、3、及び4は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

4 主張の概要
請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(ア)甲1発明は、以下のような構成を有する。
a.棒状の固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)と、固定フレーム(2)において内方に窪んだ凹部と、固定フレーム(2)との結合部分が露出しない状態で凹部を覆うように固定フレーム(2)に取り付けられた上部装飾カバー(1)とからなり、中心線に沿って上下に分割されている持ち手(15)と、
b.固定フレーム(2)の長手方向の一端に一体的に形成された一対の分枝部と、
c.一対の分枝部のそれぞれに形成されているとともに、凹部に連通する軸孔と、
d.軸孔に挿通された一対のスタッドボルト(9)と、
e.一対のスタッドボルト(9)に取り付けられた一対のマッサージローラ(5)と、を備え、
f.下部装飾カバー(4)及び上部装飾カバー(1)の表面が、上記持ち手(15)の表面を構成している、
g.美容器。(請求書第15ページ中段付近?第16ページ上段付近、口頭審理陳述要領書第9ページ中段付近、口頭審理陳述要領書第11ページ中段付近)

(イ)上部装飾カバー(1)が固定フレーム(2)に取り付けられるとの認定についての根拠については、次のとおり。
甲第1号証の1の段落【0013】には、「本考案は、持ち手(15)、ソーラーエレクトロニクス装置(17)及びY型マッサージヘッド(16)から構成される。持ち手(15)は、上部装飾カバー(1)、下部装飾カバー(4)、内蔵される固定フレーム(2)、シールリングA(3)、シールリングB(18)及びネジ(13)を含む。上下の装飾カバー(1,4)の接続箇所にはシールリングA(3)が内蔵されており、固定フレーム(2)部分はシールリングB(18)とネジ(13)により固定されている。」との記載がある。また、甲第1号証の1の図3には、固定フレーム(2)の内部に、3つの穴部を確認することができ、各穴部に対して、ネジ(13)が螺合されて、挿入される。したがって、少なくとも、甲第1号証の1の記載からは、ネジ(13)によって、下部装飾カバー(4)と固定フレーム(2)とが接続されていると理解できる。
甲第1号証の1では、「上下の装飾カバー(1,4)の接続箇所にはシールリングA(3)が内蔵され」と記載されており、図3に記載のように、シールリングA(3)は固定フレーム(2)の上部の周縁部分に設けられていることから、シールリングA(3)は、持ち手(15)の外部には、露出しない。
そして、図1及び図3に記載の下部装飾カバー(4)及び上部装飾カバー(1)の形状を比較すれば理解できるように、下図に赤色で着色した部分が下部装飾カバー(4)となり、水色で着色した部分が上部装飾カバー(1)となる。

よって、下部装飾カバー(4)と上部装飾カバー(1)とによって、持ち手(15)の表面が構成されている。下部装飾カバー(4)と固定フレーム(2)とがネジ(13)によって、接続されている状況において、図1に記載のように、下部装飾カバー(4)及び上部装飾カバー(1)が持ち手(15)の表面を構成するためには、何らかの手段で、上部装飾カバー(1)が固定フレーム(2)に取り付けられていることは、当業者にとって、明らかである。(請求人口頭審理陳述要領書第3ページ中段付近?第5ページ上段付近)

(ウ)甲第2号証には、以下の技術的事項が開示されている。
「把持部(2)と、把持部(2)の先端に設けられた回転可能な6つのローラー(11?16)を有するヘッド部(3)とを備えるマッサージローラ(1)であって、
把持部(2)は、
表面から内方に窪んだ凹部を有する棒状の本体ケース(4)と、
凹部に取り付けられたカバー部と、
把持部(2)の内部に設けられており、本体ケース(4)及びカバー部を固定する背面カバー部材(5)とを備え、
把持部(2)は、中心線に沿って上下に分割された構造ではなく、
カバー部は、把持部(2)の上側の一部を覆うように、本体ケース(4)の凹部に取り付けられており、
本体ケース(4)の表面及びカバー部の表面が把持部(2)の表面を構成している、マッサージローラー(1)。」
ここで、「本体ケース(4)の内部に設けられており、本体ケース(4)及びカバー部を固定する背面カバー部材(5)」との構成は、審判請求書20頁に記載した下図のように、青色に着色した背面カバー(5)に、黄色で着色したカバー部の内側底部から延びている円筒状の部分が、差し込まれていること、及び、黄緑色で着色したビスのような部材が、背面カバー(5)を介して、赤色に着色した本体ケース(4)に差し込まれていることを根拠としている。

さらに、「把持部(2)は、中心線に沿って上下に分割された構造ではなく、カバー部は、把持部(2)の上側の一部を覆うように、本体ケース(4)の凹部に取り付けられており」との構成は、甲第2号証の図1(a)及び(b)を根拠としている。(請求人口頭審理陳述要領書第11ページ下段付近?第12ページ下段付近)

(エ)請求人の主張する相違点を整理すると以下となる。
(相違点)
本件特許発明1のハンドルにおいて、ハンドル本体とハンドルカバーとは、上記ハンドルの中心線に沿って上下に分割された構成ではないのに対して、甲1発明では、「下部装飾カバー(4)及び固定フレーム(2)から構成される部分」と「上部装飾カバー(1)」とは、持ち手(15)の中心線に沿って上下に分割された構成となっている点で相違する。(請求人口頭審理陳述要領書第12ページ下段付近?第13ページ上段付近)

(オ)容易想到性
甲1発明は、持ち手(15)の内部に、固定フレーム(2)を有しており、固定フレーム(2)に、下部装飾カバー(4)及び上部装飾カバー(1)が取り付けられている。
甲2事項においても、把持部(2)の内部に、背面カバー部材(5)が設けられており、背面カバー部材(5)に、本体ケース(4)及びカバー部が取り付けられている。
したがって、甲1発明の持ち手(15)と甲2事項の把持部(2)とは、固定フレーム(2)及び背面カバー部材(5)を用いて、表面を構成する部材を取り付けているという点で、技術的な構成が共通している。また、甲1発明及び甲2事項は、共に、マッサージローラーに関するものである。ゆえに、甲1発明の持ち手(15)に対して、甲2事項の把持部(2)の構造を適用する動機付けが存在する。
甲1発明の持ち手(15)に対して、甲2事項の把持部(2)の構造を適用することで、持ち手(15)は、中心線に沿って上下に分割された構造ではないようにし、かつ、上部装飾カバー(1)を、持ち手(15)の上側の一部を覆うように、固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)の凹部に取り付けた構造とすることが可能となる。
このように、当業者であれば、甲1発明に、甲2事項を適用することで、本件発明1を容易に発明することができる。(請求人口頭審理陳述要領書第13ページ上段付近?下段付近)

第5 被請求人の主張

1 要点
これに対し被請求人は、以下の理由に基づき、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。

2 主張の概要
被請求人の主張の概要は、以下のとおりである。

(ア)甲1発明の「固定フレーム(2)」「上部装飾カバー(1)」「下部装飾カバー(4)」の技術的意義について
甲1発明の上記構成のうち、「固定フレーム(2)」は、フレームの文字どおり、枠・骨格としての技術的意義を有する。
そして、「上部装飾カバー(1)」「下部装飾カバー(4)」は、装飾カバーであることからそれぞれ「固定フレーム(2)」を上下から覆って装飾するという技術的意義を有する。
したがって、甲1発明の「固定フレーム(2)」は枠・骨格として、「上部装飾カバー(1)」「下部装飾カバー(4)」は、固定フレーム(2)を装飾、カバーするという技術的意義をそれぞれ有する(下記表)。

(被請求人口頭審理陳述要領書第10ページ中段付近?第11ページ上段付近)

(イ)甲2事項の「背面カバー部材(5)」「カバー部」「本体ケース(4)」の技術的意義について
甲2事項の上記構成のうち、「背面カバー部材(5)」は、背面カバーの文字どおり、枠状をなす本体ケース(5)の背面をカバーするという技術的意義を有する。請求人の主張する「カバー部」は、甲2にはその名称も含めて具体的な説明はないが、これも把持部(2)をカバーする技術的意義を有すると思われる。
そして、「本体ケース(4)」は枠状に形成されており、同本体ケース(4)内に円筒状ローラー(11)?(16)、ローラーホルダー(7)、導電ゴムシート(9)、太陽電池(8)等が収納される構成であるから(甲2・段落【0020】?【0024】、図1(c)等)、本体ケース(4)は把持部(2)を含む全体の枠・骨格としての技術的意義を有する。
したがって、甲2事項の「「背面カバー部材(5)」「カバー部」は「本体ケース(4)」の背面のカバー、「本体ケース(4)」は枠・骨格としての技術的意義を有する(下記表)。

(被請求人口頭審理陳述要領書第11ページ中段付近?下段付近)

(ウ)特に、甲1発明の「固定フレーム(2)」「下部装飾カバー(4)」と、甲2事項の「背面カバー部材(5)」「本体ケース(4)」は、それぞれ各構成の技術的意義が相違するため、甲2事項の「本体ケース(4)」の構成を技術的意義が相違する甲1発明の「下部装飾カバー(4)」に適用する動機付けはない。
また、甲2事項の「本体ケース(4)」(請求人が甲1発明の「下部装飾カバー(4)」に対応すると主張する構成)が枠状の構成を有しているのは、本体ケース(4)先端のヘッド部(3)に6つのローラー(11)?(16)を配置し、その上にローラーホルダー(7)、導電ゴムシート(9)や太陽電池(8)等を積層する構成を採用しており、これらを収納するための構成と理解することができる。一方、甲1発明の「下部装飾カバー(4)」は装飾用のカバーであり、ローラー(11)?(16)、ローラーホルダー(7)、導電ゴムシート(9)や太陽電池(8)等を積層して収納するものではない。このように、甲1発明と甲2事項とは構成が大きく相違することからも、甲1発明に甲2事項を採用する動機付けはない。(被請求人口頭審理陳述要領書第13ページ下段付近?第14ページ中段付近)

(エ)甲1発明は「凹部」を有するが、ハンドル本体の表面から内方に窪 んだ「凹部」は有しない。(口頭審理調書の被請求人欄3)

第6 無効理由についての当審の判断
1 各甲号証の記載内容
請求人が提出した証拠のうち、甲第1号証の1及び甲第2号証には、以下の発明又は事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

(1)甲第1号証の1
ア 甲第1号証の1に記載された事項
甲第1号証の1には、Y型構造の美容器具に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、括弧書きで示した日本語訳は、請求人が甲第1号証の2として提出した日本語訳に準じて作成したものである。また、日本語訳の下線は理解の便のため付した。

(ア)請求の範囲の1,2



(1.持ち手(15)、ソーラーエレクトロニクス装置(17)及びY型マッサージへツド(16)から構成され、Y型マッサージヘッド(16)は、持ち手(15)の一端の両側に設けられて持ち手(15)とともに全体としてY宇形状を構成し、ソーラーエレクトロニクス装置(17)は持ち手(15)の表面に設けられることを特徴とするY型構造の美容器具。
2.前記持ち手(15)は、上部装飾カバー(1)、下部装飾カバー(4)、内蔵される固定フレーム(2)、シールリングA(3)、シールリングB(18)及びネジ(13)を含み、上下の装飾カバー(1、4)の接続箇所にはシールリングA(3)が内蔵され、固定フレーム(2)部分はシールリングB(18)とネジ(13)により固定されることを特徴とする請求項1に記載のY型構造の美容器具。)

(イ)請求の範囲の3,4



(3.前記ソーラーエレクトロニクス装置(17)は、透明レンズ(12)、シールリングC(19)、ソーラーシート(10)、接続バネ(11)及び電極コネクタ(21)を含み、透明レンズ(12)、シールリングC(19)、ソーラーシート(10)、接続バネ(11)は上から下へと順に持ち手(15)の表面に固定され、電極コネクタ(21)は持ち手(15)とY型マッサージヘッド(16)を接続していることを特徴とする請求項1に記載のY型構造の美容器具。
4.前記Y型マッサージヘッド(16)は、2組の固定カバー(6)、シールリングD(20)、スタッドボルト(9)、軸受(14)、鉱物リング(7)、固定ナット(8)及びマッサージローラ(5)を含み、持ち手(15)のY型に分岐した先端にはシールリングD(20)を介してスタッドボルト(9)が接続され、スタッドボルト(9)の外周には軸受(14)と鉱物リング(7)が固定され、固定カバー(6)は軸受(14)の外周に固定され、マッサージローラ(5)の表面は多角形状に設計されており、マッサージローラ(5)は固定カバー(6)の外周に覆設され、スタッドボルト(9)の他端には固定ナット(8)が設けられることを特徴とする請求項1に記載のY型構造の美容器具。)

(ウ)



([0003]本考案は、ヘルスケア、美容、マッサージ機能を一体化したY型構造の美容器具を提供することを目的とする。)

(エ)



([0004]本考案は、持ち手、ソーラーエレクトロニクス装置及びY型マッサージヘッドから構成される。持ち手は、上部装飾カバー、下部装飾カバー、内蔵される固定フレーム、シールリングA、シールリングB及びネジを含む。上下の装飾カバーの接続箇所にはシールリングAが内蔵されており、固定フレーム部分はシールリングBとネジにより固定されている。ソーラーエレクトロニクス装置は、透明レンズ、シールリングC、ソーラーシート、接続バネ及び電極コネクタを含む。透明レンズ、シールリングC、ソーラーシート、接続バネは、上から下へと順に持ち手の表面に固定されている。また、電極コネクタは、陽極がマッサージローラに接続されており、陰極が持ち手に接続されている。Y型マッサージヘッドは持ち手の一端の両側に設けられ、持ち手とともに全体としてY字形状を構成している。Y型マッサージヘッドは、2組の固定カバー、シールリングD、スタッドボルト、軸受、鉱物リング、固定ナット及びマッサージローラを含む。持ち手のY型に分岐した先端にはシールリングDを介してスタッドボルトが接続されており、スタッドボルトの外周には軸受と鉱物リングが固定されている。また、固定カバーは軸受の外周に固定されている。マッサージローラの表面は多角形状に設計されており、マッサージローラは固定カバーの外周に覆設されている。また、スタッドボルトの他端には固定ナットが設けられている。)

(オ)「


([0011]図中の1は上部装飾カバー、2は固定フレーム、3はシールリングA、4は下部装飾カバー、5はマッサージローラ、6は固定カバー、7は鉱物リング、8は固定ナット、9はスタッドボルト、10はソーラーシート、1 1は接続バネ、12は透明レンズ、13はネジ、14は軸受、15は持ち手、16はY型マッサージヘッド、17はソーラーエレクトロニクス装置、18はシールリングB、19はシールリングC、20はシールリングD、21は電極コネクタである。)

(カ)「


([0013] 本考案は、持ち手(15)、ソーラーエレクトロニクス装置(17)及びY型マッサージヘッド(16)から構成される。持ち手(15)は、上部装飾カバー(1)、下部装飾カバー(4)、内蔵される固定フレーム(2)、シールリングA(3)、シールリングB(18)及びネジ(13)を含む。上下の装飾カバー(1、4)の接続箇所にはシールリングA(3)が内蔵されており、固定フレーム(2)部分はシールリングB(18)とネジ(13)により固定されている。ソーラーエレクトロニクス装置(17)は、透明レンズ(12)、シールリングC(19)、ソーラーシート(10)、接続バネ(11)及び電極コネクタ(21)を含む。透明レンズ(12)、シールリングC(19)、ソーラー・シート(10)、接続バネ(11)は、上から下へと順に持ち手(15)の表面に固定されている。また、電極コネクタ(21)は、陽極がマッサージローラ(5)に接続されており、陰極が持ち手(15)に接続されている。Y型マッサージヘッド(16)は持ち手(15)の一端の両側に設けられ、持ち手(15)とともに全体としてY宇形状を構成している。Y型マッサージヘッド(16)は、2組の固定カバー(6)、シールリングD(20)、スタッドボルト(9)、軸受(14)、鉱物リング(7)、固定ナット(8)及びマッサージローラ(5)を含む。持ち手(15)のY型に分岐した先端にはシールリングD(20)を介してスタッドボルト(9)が接続されており、スタッドボルト(9)の外周には軸受(14)と鉱物リング(7)が固定されている。また、固定カバー(6)は軸受(14)の外周に固定されている。マッサージローラ(5)の表面は多角形状に設計されているため、人の手でマッサージされているかのような心地よさを与えられる。マッサージローラ(5)は固定カバー(6)の外周に覆設されている。また、スクッドボルト(9)の他端には固定ナット(8)が設けられている。)

イ 甲第1号証の1記載の発明
(キ)上記記載事項(オ)等の「固定フレーム(2)」及び「下部装飾カバー(4)」は、図3の図示内容からして、いずれも“細長椀状”であると認められる。

(ク)図3の図示内容からして、上記「固定フレーム(2)」は、“内方に窪んだ凹部”を有するものと認められる。

(ケ)(i)図1の図示内容から、「下部装飾カバー(4)」及び「上部装飾カバー(1)」が持ち手(15)の表面を構成していることは明らかである。(ii)また、上記記載事項(カ)の「持ち手(15)は、上部装飾カバー(1)、下部装飾カバー(4)、内蔵される固定フレーム(2)、シールリングA(3)・・・を含む」との記載、及び「接続箇所にはシールリングA(3)が内蔵されており」を図3の図示内容に照らして合理的に考えれば、シールリングA(3)は、持ち手(15)の外部には、露出しない。
よって、上記(i)及び(ii)並びに上記記載事項(カ)及び認定事項(ク)を合わせ考えれば、「上部装飾カバー(1)」は、“下部装飾カバー(4)との結合部分が露出しない状態で、内蔵する固定フレーム(2)の凹部を覆うように設けられ”ているものと認められる。

(コ)上記記載事項(イ)に「持ち手(15)のY型に分岐した先端」とあるところ、該記載を図3の図示内容と照らし合わせれば、一対の「分枝部」が“固定フレーム(2)の長手方向の一端に一体的に形成され”ているものと認められる。

(サ)上記記載事項(カ)に「持ち手(15)のY型に分岐した先端には・・・スタッドボルト(9)が接続されており」とあるところ、これを図3の図示内容と技術常識に照らせば、一対の分枝部のそれぞれには“凹部に連通する軸孔”が形成されており、該軸孔に一対のスタッドボルト(9)が挿通されているものと認められる。

(シ)上記記載事項(カ)の「スタッドボルト(9)の外周には軸受(14)と鉱物リング(7)が固定されている。また、固定カバー(6)は軸受(14)の外周に固定されている。・・・マッサージローラ(5)は固定カバー(6)の外周に覆設されている。」との記載を図3の図示内容と合わせ読めば、これらは、“一対のスタッドボルト(9)に取り付けられた一対のマッサージローラ(5)”ということができる。

そこで、上記記載事項ア(ア)ないし(カ)及び認定事項(キ)ないし(シ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて、本件特許発明1に倣って整理すると、甲第1号証の1には以下の発明が記載されていると認める(以下「甲1-1発明」という。)。
「細長椀状の固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)と、固定フレーム(2)において内方に窪んだ凹部と、下部装飾カバー(4)との結合部分が露出しない状態で、内蔵する固定フレーム(2)の上記凹部を覆うように設けられた上部装飾カバー(1)とを含む持ち手(15)と、
固定フレーム(2)の長手方向の一端に一体的に形成された一対の分枝部と、
該一対の分枝部のそれぞれに形成されているとともに、凹部に連通する軸孔と、
該軸孔に挿通された一対のスタッドボルト(9)と、
該一対のスタッドボルト(9)に取り付けられた一対のマッサージローラ(5)と、を備え、
下部装飾カバー(4)の表面及び上部装飾カバー(1)の表面が、持ち手(15)の表面を構成している、美容器。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、「マッサージローラー」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)実用新案登録請求の範囲
「長尺状把持部と、該把持部の先端部に取り付けられたマッサージ用ヘッド部と、該ヘッド部の表面側に回転可能に軸支された円筒状ローラーを備えたマッサージローラーにおいて、
前記ヘッド部は、金属製の第1?第6の円筒状ローラー6本が前記把持部の長軸方向に沿って互いに平行に軸支されており、表面側の前記ローラー軸支部分との間に内部空間を形成すると共に該内部空間に光を透過させる透明窓部を有する背面カバー部材と、該透明窓部に受光面を露呈して前記内部空間に設置された太陽電池と、該太陽電池と前記ローラーのうちの少なくとも1本とを接続する導電性部材からなる通電機構とを備えていることを特徴とするマッサージローラー。」

(イ)「【0004】
一方、マッサージローラの使用時に微弱電流を発生させるタイプのものも開発されている。これは、電気治療の一種であるマイクロカレント療法で用いられているのと同様の微弱電流である。この治療は、もともと身体の損傷部に対して発生され、ATPの生成、タンパク室合成促進という細胞レベルでの活性化により細胞や傷ついた組織の再生を促すという損傷電流を擬似的に作り出して利用するものである。即ち、人工的に作られた微弱電流(マイクロカレント)により、損傷電流の働きを補完、促進して通常より新陳代謝や自然治癒力を向上する効果が期待できるものである。
【0005】
このような微弱電流のマッサージローラーでの利用は、上記マッサージ効果に加え、皮膚細胞の活性化による新陳代謝向上効果の付与も期待できる。また、必要な電流も数十マイクロアンペア程度であるため、手持ち型のマッサージローラーでも、太陽電池等を設置すれば、大型化することなく簡便に微弱電流発生機構を備えた構成にできる・・・」

(ウ)「【0020】
本考案の一実施の形態によるマッサージローラーを図1及び図2に示す。本マッサージローラー1は、長尺状把持部2の先端部に設けられたヘッド部3にステンレス鋼製の第1?6の6本の円筒状ローラー(11,12,13,14,15,16)を備えたものである。ヘッド部3は、把持部2から延在する枠状の本体ケース4に収められたローラーホルダー7の軸受部に各回転軸(11s,12s,13s,14s,15s,16s)の両端が軸支されることによってローラーがヘッド部3の表面側に把持部長軸方向に沿って並列配置され、本体ケース4の背面側が背面カバー部材5によって覆われるものである。」

(エ)「【0021】
なお、本実施形態においては、本体ケース4の表面側には中央位置に2?3mm幅の仕切り部4sが設けられており、ローラーホルダー7の第3のローラーの回転軸13sと第4のローラーの回転軸14sを軸支する軸受部の位置がこの仕切り部4sの幅に対応して離されている。これによって、ヘッド部3の表面側で、先端側の第1?第3のローラー(11,12,13)の軸支領域と後端側の第4?第6のローラー(14,15,16)の軸支領域とが互いに区分けされ、該領域同士が若干離れた配置となっている。
【0022】
一方、背面カバー部材5には、中央部にアクリル等の光透過性部材からなる透明窓部6が設けられており、その内側に太陽電池8が配置されている。従って、太陽電池は、透明窓部を透過した光を受光面で受けると、光起電力効果により光エネルギーを電力に変換して出力することができる。
【0023】
さらにその下方には、太陽電池8に対して絶縁された収納空間を、ローラーを軸支しているローラーホルダー7との間に形成するための絶縁ケースが配置されている。この絶縁ケースは、上下一対の絶縁部材(20,21)からなり、両部材の間に形成された収納室内にセラミックス22と磁石23とが収納されている。このうち下側の絶縁部材21には、セラミックス22と磁石23とが、それぞれ部分的にヘッド表面方向に露呈する開口部を備えた嵌合枠部21fで固定されるものとした。
【0024】
また、ホルダー7と第2のローラー12の回転軸12sと第5のローラー15の回転軸15sとを、導電性のポリアセタール樹脂製とすると共に、太陽電池8と絶縁ケース20の間に太陽電池8の電極に接するマイナス導電ゴム部材9aとプラス導電ゴム部材9bを介在させ、上下絶縁部材(20,21)を貫通して配置された導電コイルバネ10によってマイナス及びプラス導電ゴム部材(9a,9b)とローラーホルダー7とを電気的に接続した。これらの通電機構により、太陽電池8から、第2と第5のローラー(12,15)を介してこれらのローラーに接する皮膚に微弱電流が流れる。」

(オ)「【0028】
さらに、本実施形態においては、把持部2の末端にステンレス鋼製の突起17を設け、把持部2の内部に配線した電線18によって、太陽電池8と突起17とを接続した。この突起17を皮膚に押し付ければ、つぼ押しマッサージを行うことができる。このつぼ押しの際にも、電線18を介して太陽電池8から送られる微弱電流を突起17から皮膚に流すことができる。」

イ 甲2技術事項
また、上記記載事項(ア)ないし(オ)及び図面の記載から、次の事項が認められる。
(カ)本体ケース4は、図1の記載から、把持部2からヘッド部3まで延在している。
(キ)図1の図示内容から、本体ケース4内には、ヘッド部3の部分に太陽電池8及びローラー11?16が配置される空間、並びに、把持部2の部分に把持部2のほぼ全長にわたって空間があり、これらの空間は、本体ケース4の表面から内方に窪んだ凹部であるということができる。また、該凹部は、本体ケース4のほぼ全長にわたって延在するものである。
(ク)背面カバー部材5は、図1の記載から、凹部のうちヘッド部3の部分を覆うものである。
(ケ)下記参考図にて「ハンドルカバー」との名称を付す部材は、図1の記載から、凹部のうち把持部2の部分を覆うものである。
[参考図]
(甲第2号証の図1(a)?(c)に、当審が部材名称「ハンドルカバー」を付したもの)

(コ)図1の図示内容から、本体ケース4の把持部2の部分の表面及びハンドルカバーの表面は、把持部2の表面を構成しているものと認められる。

上記記載事項ア(ア)ないし(オ)及び認定事項(カ)ないし(コ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第2号証には以下の事項が記載されていると認める。(以下「甲2技術事項」という。)
「長尺状把持部2及びヘッド部3を備えるマッサージローラー1において、 把持部2からヘッド部3まで延在する本体ケース4に、本体ケース4の表面から内方に窪み、本体ケース4のほぼ全長にわたって延在する凹部を設け、
凹部のうちヘッド部3の部分に、太陽電池8及びローラー11?16を配置し、
透明窓部6が設けられた背面カバー部材5により、凹部のうちヘッド部3の部分を覆い、
ハンドルカバーにより、凹部のうち把持部2の部分を覆い、
本体ケース4の把持部2の部分の表面及びハンドルカバーの表面により、把持部2の表面を構成すること。」

2 無効理由についての判断
(2-1)本件特許発明1について
(1)甲1-1発明
甲1-1発明は、上記1(1)イにて認定したとおりである。

(2)対比
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比すると以下のとおりである。
甲1-1発明の「持ち手(15)」が本件特許発明1の「ハンドル」に相当することは、その機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「一対の」「スタッドボルト(9)」は「一対の」「ローラシャフト」に、「一対の」「マッサージローラ(5)」は「一対の」「ローラ」に相当することも明らかである。
次に、甲1-1発明における「下部装飾カバー(4)の表面及び上部装飾カバー(1)の表面」は、本件特許発明1の「ハンドル本体の表面及び上記ハンドルカバーの表面」と、“ハンドルの表面を構成する2つの部分”である限りにおいて共通する。
したがって、本件特許発明1と甲1-1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「ハンドルと、
一対の分枝部と、
該一対の分枝部のそれぞれに形成されているとともに、凹部に連通する軸孔と、
該軸孔に挿通された一対のローラシャフトと、
該一対のローラシャフトに取り付けられた一対のローラと、
を備え、
ハンドルの表面を構成する2つの部分が、上記ハンドルの表面を構成している、美容器。」

そして、本件特許発明1と甲1-1発明とは、以下の3点で相違する。
<相違点1>
「ハンドル」の構造に関し、本件特許発明1のハンドルは、
「表面から内方に窪んだ凹部」がある「棒状のハンドル本体」と「ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で上記凹部を覆うように上記ハンドル本体に取り付けられたハンドルカバー」とからなるのに対し、
甲1-1発明のハンドル(持ち手(15))は、本件特許発明1の「表面から内方に窪んだ凹部」がある「ハンドル本体」と「ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で上記凹部を覆うように上記ハンドル本体に取り付けられたハンドルカバー」に相当する構成を備えておらず、代わりに、細長椀状の固定フレーム(2)及び細長椀状の下部装飾カバー(4)並びに上部装飾カバー(1)の3つの部材を含み、下部装飾カバー(4)との結合部分が露出しない状態で、内蔵する固定フレーム(2)の凹部を覆うように上部装飾カバー(1)を設けたものである点。
<相違点2>
本件特許発明1の一対の分枝部は、ハンドル本体の長手方向の一端に形成されているのに対し、甲1-1発明の一対の分枝部は、固定フレーム(2)の長手方向の一端に形成されている点。
<相違点3>
ハンドルの表面を構成する2つの部分に関し、本件特許発明1においては、ハンドル本体の表面及び上記ハンドルカバーの表面であるのに対し、甲1-1発明においては、下部装飾カバー(4)の表面及び上部装飾カバー(1)の表面である点。

(3)相違点についての判断
ア 本件特許発明の技術的意義について
上記各相違点の検討に先立ち、本件特許発明の技術的意義について検討する。
本件特許発明の技術的意義に関連する本件特許明細書の記載として、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばハンドルを中心線に沿って上下又は左右に分割して、ハンドルの内部に各部材を収納する構成とした場合には、ハンドルの成形精度や強度が低下したり、各部材がハンドルの内部を密閉する作業に手間がかかって美容器の組み立て作業性が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、ハンドルの成形精度や強度を高く維持することができるとともに、組み立て作業性の向上が図られる美容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、棒状のハンドル本体と、該ハンドル本体の表面から内方に窪んだ凹部と、上記ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で上記凹部を覆うように上記ハンドル本体に取り付けられたハンドルカバーとからなるハンドルと、
上記ハンドル本体の長手方向の一端に一体的に形成された一対の分枝部と、
該一対の分枝部のそれぞれに形成されているとともに、上記凹部に連通する軸孔と、
該軸孔に挿通された一対のローラシャフトと、
該一対のローラシャフトに取り付けられた一対のローラと、
を備え、
上記ハンドル本体の表面及び上記ハンドルカバーの表面が、上記ハンドルの表面を構成している、美容器にある。
【発明の効果】
【0007】
上記美容器において、ハンドル本体は棒状であって、長手方向の一端に一対の分枝部が一体的に形成されている。そして、ハンドル本体には凹部が形成され、該凹部は分枝部に形成された軸孔が連通するとともに、ハンドルカバーによって覆われている。上記美容器は、このような構成を有することにより、ハンドルを上下又は左右に分割した場合に比べて、ハンドルの成形精度や強度を高く維持することができるとともに、ハンドルカバーによって凹部の内部を容易に密閉できることから美容器の組み立て作業性が向上する。」

以上の記載によれば、本件特許発明の技術的意義は、特に、棒状のハンドル本体に表面から内方に窪んだ凹部を形成し、該凹部をハンドルカバーによって覆うことで、ハンドルを上下又は左右に分割した場合に比べて、ハンドルの成形精度や強度を高く維持することができるとともに、ハンドルカバーによって凹部の内部を容易に密閉できるようにしたことであると認められる。

イ 相違点1及び3について
事案に鑑み、まず相違点1及び3につき検討する。
(ア)まず、甲1-1発明の「凹部」は、持ち手(ハンドル)を構成する3つの部材の中程の1つの部材たる固定フレーム(2)において内方に窪み、上部装飾カバーに覆われるものであって、本件特許発明1のようにハンドルの表面から内方に窪んだものではない。
一方、上記アにて説示したように、本件特許発明1の「凹部」は、「ハンドル本体に表面から内方に窪ん」で形成することにより、ハンドルを上下又は左右に分割した場合に比べて、ハンドルの成形精度や強度を高く維持することができるという技術的意義を有するものであるところ、甲1-1発明の3つの部材の中程の1つの部材から窪む甲1-1発明の「凹部」は、いわば積層構造の中部材の凹部ともいうべきものであり、ハンドルの成形精度や強度を維持する技術的意義を有するものとは言い難い。
また、上記本件特許発明1の技術的意義に関しては、甲第1号証の1、さらに甲第2号証にも関連する記載は見当たらない。

(イ)次に、上記1(2)イにて指摘した甲2技術事項は、(i)本体ケース4が甲1-1発明のように固定フレーム(2)の一端に形成された一対の分岐部を備える構成ではなく、また、(ii)甲1-1発明が細長椀状の固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)並びに上部装飾カバー(1)の3つの部材を積層構造にして構成されるのに対し、甲2技術事項は、本体ケース4上にハンドルカバー及び背面カバー部材5を同一面内並列状に配置するもので、両者はカバーの組立構造が大きく異なっていることから、甲1-1発明と甲2技術事項とは、全体的な形状に大きな差違がある。
これらを踏まえれば、甲2技術事項の本体ケース4の表面から内方に窪む凹部を覆う背面カバー部材5及びハンドルカバーを設ける構成等を、甲1-1発明に適用すべき動機付けは存在しないといわざるを得ない。

(ウ)したがって、甲2技術事項は「本体ケース4の把持部2の部分の表面及びハンドルカバーの表面により、把持部2の表面を構成する」というものではあるが、その点おいて相違点3に係る本件特許発明1の構成と共通するにとどまるものであって、甲2技術事項を甲1-1発明に適用すべき動機付けが存在しないのであるから、相違点3を容易想到ということはできない。

(エ)同様に、甲2技術事項は「本体ケース4の表面から内方に窪」む、凹部」及び「ハンドルカバーにより、凹部のうち把持部2の部分を覆」うという構成を有するものではあるが、仮にそれが相違点1に係る本件特許発明1の構成に部分的に対応するものであるとしても、甲2技術事項を甲1-1発明に適用すべき動機付けが存在しない以上、相違点1を容易想到ということはできない。

(オ)仮に、甲1-1発明に甲2技術事項を適用すべき動機付けが存在し、適用を試みたとしても、甲2技術事項におけるハンドルカバーが、本体ケース4又は背面カバー部材5に対してどのように取り付けられるかについては、甲第2号証において何ら説明されておらず、図面を参酌しても、ハンドルカバーが本体ケース4との結合部分を備えているかどうかは不明である。
そうすると、仮に、甲1-1発明に甲2技術事項を適用し得たとしても、「上記ハンドル本体との結合部分が露出しない状態で・・・上記ハンドル本体に取り付けられたハンドルカバー」との事項を含む相違点1に係る構成には到達し得ない。
加えて、上記(ア)にて指摘したように、甲1-1発明の「凹部」は、本件訂正発明1の「凹部」のようにハンドルの成形精度や強度を維持する技術的意義を有するものではなく、また甲2技術事項の「凹部」もそのようなものではないことから、仮に、甲1-1発明に甲2技術事項を適用し得たとしても、本件訂正発明1における技術的意義を有する「凹部」とすることが容易であるとすることはできない。

(カ)請求人の意見について
甲第1号証の1記載の発明の認定に関し、請求人は、(i)甲第1号証の1の記載から、ネジ(13)によって、下部装飾カバー(4)と固定フレーム(2)とが接続されていると理解でき、また、(ii)図面等より、下部装飾カバー(4)及び上部装飾カバー(1)が持ち手(15)の表面を構成するために、何らかの手段で、上部装飾カバー(1)が固定フレーム(2)に取り付けられていることは明らかであるから、(a)「棒状の固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)」と、(b)「固定フレーム(2)において内方に窪んだ凹部」「を覆うように固定フレーム(2)に取り付けられた上部装飾カバー(1)」とから持ち手(ハンドル)がなると認定すべきであると主張する(上記第4の4(ア)及び(イ))。
この請求人の主張は、要すれば、固定フレーム(2)と下部装飾カバー(4)とを、それらがネジで固定されていることをもって一体的な部材とみなし、かかる一体的な部材における固定フレーム(2)の「凹部」に、上部装飾カバー(1)が取り付けられていると認定できると主張しているものと解される。
しかしながら、甲第1号証の1記載の固定フレーム(2)は、相互に結合される上部及び下部の各装飾カバー(1)及び(4)によって上下対称的に表面が構成される持ち手(15)に「内蔵される」ものであるから、ことさら下部装飾カバー(4)のみを固定フレーム(2)と一体的な部材とみなすのは、甲第1号証の1記載の発明の妥当な解釈とは言い難い。
また、上部装飾カバー(1)、固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)という3つの部材が、請求人が主張に沿って、仮に、まず下部装飾カバー(4)に固定フレーム(2)をネジで取り付け、次いで下部装飾カバー(4)と固定フレーム(2)とを接続するという順で組み立てられているとしても、そのうち最初に取り付けられる、ネジで固定される独立した部材に過ぎない固定フレーム(2)及び下部装飾カバー(4)のみを、ことさらに一体的部材とみなす理由は乏しい。
よって、請求人の上記主張には理由がない。

(キ)上記(ア)?(カ)より、甲1-1発明及び甲2事項から相違点1及び相違点3に係る構成を容易想到とすることはできない。

ウ 小括
よって、相違点2について検討するまでもなく、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠によっては、本件特許発明1についての特許を無効にすることはできない。

(2-2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付すものであるから、本件特許発明2ないし4と甲1-1発明とは、少なくとも上記相違点1ないし3で相違する。
そして、相違点1及び3に係る構成は、甲1-1発明及び甲2技術事項から容易想到でないことは、上記(2-1)のとおりである。
よって、本件特許発明2ないし4についての特許は、その詳細を検討するまでもなく、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠によっては無効にすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人主張の理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1ないし4に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-14 
結審通知日 2019-05-16 
審決日 2019-05-29 
出願番号 特願2016-88002(P2016-88002)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 長屋 陽二郎
井上 哲男
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6121026号(P6121026)
発明の名称 美容器  
代理人 冨宅 恵  
代理人 ▲高▼山 嘉成  
代理人 小林 徳夫  
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