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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1359313
審判番号 不服2019-2639  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2020-02-25 
事件の表示 特願2015-11914「赤ワイン抽出物及び赤ワイン抽出物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月4日出願公開、特開2016-138042、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成27年1月26日を出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月26日付け :拒絶理由通知
平成30年10月 5日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年10月 9日 :手続補足書(実験報告書)の提出
平成30年11月30日付け :拒絶査定
平成31年 2月27日 :審判請求書の提出
平成31年 3月 1日 :手続補足書の提出
令和 1年11月 6日付け :拒絶理由通知
令和 1年12月11日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ請求項の順に「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、令和1年12月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラムにエタノール濃度40?80質量%の含水エタノールを通液して、その溶出物を回収し、トランス体レスベラトロールを乾燥物換算で4質量%以上10質量%以下含有し、ε-ビニフェリンを乾燥物換算で前記トランス体レスベラトロールの10に対して0.8以上3以下含有する組成物を得ることを特徴とする赤ワイン抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記赤ワインが南フランス産である請求項1記載の赤ワイン抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記赤ワインのブドウの品種がカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー、グルナッシュ、又はサンソーである請求項1又は2記載の赤ワイン抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記渋み抜きカラムの吸着剤が活性炭である請求項1?3のいずれか1つに記載の赤ワイン抽出物の製造方法。」

第3 当審拒絶理由の概要及び当審拒絶理由についての判断

1 特許法第17条の2第3項について
当審では、令和1年11月6日付け拒絶理由通知書により、平成30年10月5日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)のうち、本件補正後の請求項1についての補正には、本件補正前の請求項5の番号を「1」に繰り上げるとともに、これに対して、溶出物を回収するためにカラムに通液する「含水有機溶媒」を「エタノール濃度40?100質量%の含水エタノール又はエタノール」に変更し(以下「補正事項1」という。)、赤ワイン抽出物の組成に関して「トランス体レスベラトロールを乾燥物換算で4質量%以上含有し」との条件を加え(以下「補正事項2」という。)、かつ、「ビニフェリンを乾燥物換算で前記トランス体レスベラトロールの10に対して3以下含有する」との条件を加える(以下「補正事項3」という。)、という各補正事項が含まれ、また、本件補正には、明細書の【0025】において、「・・・搾汁液を、ポリビニルピロリドンからなる吸着剤を充填してなる渋み抜きカラム(カラム容量:約250L)に通液した。」との記載を、「・・・搾汁液を、吸着剤を充填してなる渋み抜きカラム(カラム容量:約250L)に通液した。」との記載に変更する補正(以下「補正事項4」という。)が含まれるところ、当該補正事項1-4は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである、との拒絶の理由を通知した。

2 特許法第36条第6項第1号について
当審では、上記1の拒絶理由通知書により、請求項1における「ビニフェリン」には、δ-ビニフェリン、ε-ビニフェリン、α-ビニフェリン等の複数種類のビニフェリンが含まれるが、本願明細書の発明の詳細な説明には、ε-ビニフェリン以外のビニフェリンについて、その含有量の低減された抽出物を得る方法は、当業者が認識できる程度に記載されていない、との拒絶の理由を通知した。

3 上記1及び2の拒絶の理由の通知に対して、令和1年12月11日提出の手続補正書による補正により、請求項1を「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラムにエタノール濃度40?80質量%の含水エタノールを通液して、その溶出物を回収し、トランス体レスベラトロールを乾燥物換算で4質量%以上10質量%以下含有し、ε-ビニフェリンを乾燥物換算で前記トランス体レスベラトロールの10に対して0.8以上3以下含有する組成物を得ることを特徴とする赤ワイン抽出物の製造方法。」と補正し、明細書の【0025】を
「【0025】
・・・ポリビニルピロリドンからなる吸着剤・・・」
と補正した結果、上記拒絶の理由はいずれも解消した。

第4 原査定の拒絶理由の概要

原査定(平成30年11月30日付け拒絶査定)の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
なお、原査定の拒絶理由の対象は、平成30年10月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された請求項1-4に係る発明である。

請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-3のいずれかに記載された発明及び以下の引用文献1-11に記載された技術事項に基づいて、その出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献>
1.赤ワインエキスR5 試験成績書 ロット#:1780-040,Anti-Aging Pro Corporation,2012年12月30日
2.赤ワインエキスR5 技術資料,Anti-Aging Pro Corporation, 2012年12月3日
3.レスベラトロール含有「赤ワインエキスR5」,2017年12月27日,URL,http://a2-pro.com.80/suppliers/reseratrol
4.特表2001-503391号公報
5.特表2001-506579号公報
6.特開2008-239576号公報
7.葡萄豆知識 ワインの葡萄,2007年10月25日,URL,http://blog.livedoorjp/kenko_wine/archives/50856698.html
8.特開昭56-144742号公報
9.特開2010-200651号公報
10.特開2007-76952号公報
11.特開2004-113189号公報

第5 原査定の拒絶理由についての判断

1 引用文献、引用発明等

(1)引用文献1

ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記1a)
「商品名:赤ワインエキスR5
名称:ブドウ抽出物 原材料名:赤ワインエキス 原材料原産地名:フランス」(1頁1-2行)

(摘記1b)


」(1頁下段)


イ 上記摘記1a中の「名称:ブドウ抽出物 原材料名:赤ワインエキス」との記載によれば、引用文献1に記載の赤ワインエキスについて、抽出により赤ワインエキスが製造されていると認められる。
そうすると、上記アの記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「抽出の工程を含む、以下の特徴:

を有する赤ワインエキスの製造方法。」

(2)引用文献2

ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記2a)
「1-1.赤ワインエキスR5のHPLCクロマトグラフ
・・・。
本品は、赤ワインを活性炭カラムを使用して分離抽出することによってレスベラトロールなどの特殊な赤ワインポリフェノールを特異的に抽出しています。・・・。」(1頁2行、同頁下12-11行)

(摘記2b)
「1-2.赤ワインエキスR5ならびに原料赤ワインの主要ポリフェノールの分析結果

赤ワインエキスR5ならびに原料赤ワインの主要ポリフェノールの分析結果を以下の表に示します。・・・。


レスベラトロールをターゲットとしてポリフェノールを分離抽出しているため、当然、赤ワインエキスは、ポリフェノールを高含有しています。・・・。
こういった傾向は、カラムの吸着特性と分画溶媒(エタノール含有量)に起因しています。原料製造で分離抽出が行われることで、ここでも示されなかった成分が選択的に抽出されたり除去されたりしているものと考えられます。」(2頁1行?同頁下6行及び同頁下3?下1行)

(摘記2c)


」(3頁上段)

(摘記2d)
「3-2.有機溶媒抽出
・・・。
弊社原料の場合、水でほとんどが溶解し、10%程度(赤ワインのアルコール濃度)のアルコールで完全に溶解します。その水不溶性成分が主に酒石酸塩であることもわかっています。この結果からも、赤ワインから抽出され、水・エタノールで抽出されていることがわかります。」(6頁下11-1行)

(摘記2e)
「4.. 安定性試験結果

赤ワインエキスR5におけるレスベラトロールの安定性試験結果を上記に示しました。24ヶ月でも減衰が少なく、5%を確保して安定していることがわかります。
・・・。」(7頁1?3行)

イ 上記アの記載を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「赤ワインを活性炭カラムを使用して分離抽出し、トランス-レスベラトロールを5%以上含み、レスベラトロールの2量体を0.5?2.0%の範囲で含む、以下の成分組成を有する赤ワインエキスの製造方法。



(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3については、本願の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことが確認できないから、証拠として採用できない。

(4)引用文献4

原査定の拒絶理由で周知技術を示す文献として引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記4a)
「 例1 赤ワインからのポリフェノール粉末の調製
約2000Lの赤ワイン(フランス産、1993年、カベルネソービニオン)を、ろ過して沈殿物を取除き、300ミリバールの減圧下75?80℃で1分間蒸留し、次に冷却し、減圧下55℃で濃縮し、次に冷蔵により25℃まですばやく冷却した。濃縮ワインを、65LのDiaion HP-20樹脂を含む、直径55cm、高さ約2mのカラムに通した。カラムを250Lの蒸留水で洗浄し、ポリフェノール類を約150分の期間にわたり約250Lの50%エタノールで溶離させた。この期間の終わりにおいて、溶離液は、フォリオン-チオカルト法で評価した結果、ポリフェノール類を含有しなかった。次に、溶離液を減圧蒸留下で35%乾燥物まで濃縮し、窒素下で噴霧乾燥して、水分量が3?4%の粉末を約2kg製造した。」(11頁1?11行)

(5)引用文献5

原査定の拒絶理由で周知技術を示す文献として引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審合議体が付した。

(摘記5a)
「 例1 赤ワインからのポリフェノール粉末の調製
約2000Lの赤ワイン(フランス産、1993年、カベルネソービニオン(Cabernet Sauvignon))を、ろ過して沈殿物を取除き、300ミリバールの減圧下75?80℃で1分間蒸留し、次に冷却し、減圧下55℃で濃縮し、次に冷蔵により25℃まですばやく冷却した。濃縮ワインを、65LのDiaion HP-20樹脂を含む、直径55cm、高さ約2mのカラムに通した。カラムを250Lの蒸留水で洗浄し、ポリフェノール類を約150分の期間にわたり約250Lの50%エタノールで溶離させた。この期間の終わりにおいて、溶離液は、フオリオン-チオカルト法(Singleton & Rossi,1965に記載)で評価した結果、ポリフェノール類を含有しなかった。次に、溶離液を減圧蒸留下で35%乾燥物まで濃縮し、窒素下で噴霧乾燥して、水分量が3?4%の粉末を約2kg製造した。」(21頁2?13行)

(6)引用文献6

原査定の拒絶理由で周知技術を示す文献として引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。

(摘記6a)
「【0019】
本発明による組成物は、レスベラトロール類が、オリゴマーとして0.1重量%以上50.0重量%以下、好ましくは下限値が1.0重量%以上であり上限値が30.0重量%以下の重量で、及び/又はモノマーとして0.1重量%以上10.0重量%以下、好ましくは下限値が1.0重量%以上であり上限値が5.0重量%以下の重量で含有されてなるものが好ましい。
【0020】
原料 原料は、ブドウ科ブドウ属、特に、ヨーロッパ系ブドウ属(Vitis Vinifera)または/およびアメリカ系ブドウ(Vitis Labrusca)に属する植物に属する植物の芽及び蔓である。この芽及び蔓の抽出物は、皮膚及び経口に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、養毛剤、皮膚外用剤及び機能性食品に配合するのに好適である。本発明にあっては、ブドウ科ブドウ属に属する植物であればいずれのものを使用することができる。
【0021】
ブドウ科ブドウ属に属する植物の具体例としては、バルべーラ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニオン、ドルチェット、ドルヘルンダー、ガメ、グルナッシュ、レンベルガー、メルロー、ムルヴェードル、ピノ・ノワール、シラー、マルベック、ネッビオーロ、ピノタージュ、プリミティーヴォ、レフォスコ、サンジョヴェーゼ 、テンプラニーリョ、ジンファンデル、アリゴテ、シャルドネ、シャスラ、シュナン・ブラン、 フュメ・ブラン、フルミント、ゲヴュルツトラミナー、グリューナー・フェルトリナー、 ケルナー、 モリオ・マスカット、ミュスカ、ミュラー・トゥルガウ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、ソーヴィニョン・ブラン、 ショイレーベ、セミョーン、シルヴァーナ、トレッビアーノ、ヴェルディッキオ、ヴェルナッチャ、甲州、デラウェア、マスカット・オヴ・アレキサンドリア、巨峰、ピオーネ、ネオ・マスカット、マスカットベリーA等の各ブドウの芽及び蔓を用いることができる。この中でも、ヨーロッパ系ブドウ属(Vitis Vinifera)または/およびアメリカ系ブドウ(Vitis Labrusca)に属する、カベルネ・ソービニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨーン、リースニングの各ブドウの芽及び蔓を用いることが好ましい。」

(摘記6b)
「【実施例】
【0041】
本発明の内容を下記の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
抽出組成物の調製
剪定したカベルネ・ソーヴィニヨン種のブドウの芽及び蔓を含水率が4%ほどになるまで4ヶ月以上天日乾燥を行ったうえで、約5mmの長さに粉砕した。粉砕物1kgを7Lのエタノールを用いて、30℃・24時間の条件で抽出した。その後、濾過・溶媒蒸留除去を行い、28gの粗製物(レスベラトロール類の含量約3%)を得た。得られた粗製生物に60%v/vの含水エタノール225mLを加え、25℃・1時間の条件で再抽出した。その後、遠心分離・溶媒蒸留除去を行い、8gの粉末(レスベラトロール類の含量約10%)を得た。得られた粉末に240mLの水を加え、25℃・1時間の条件で再抽出を行った。この溶液を遠心分離にかけ、不溶物除去後得られた上澄液にデキストリンを1.0g加えて噴霧乾燥を行い、3.4gの粉末品(レスベラトロール類の含量約23%)である、レスベラトロール類を含有する抽出組成物を得た。」

(7)引用文献7

原査定の拒絶理由で周知技術を示す文献として引用された引用文献7には、次の事項が記載されている。

(摘記7a)
「 赤ワインのブドウ「サンソー(Cinsault)」
・・・。
サンソーも、黒ブドウでありポリフェノールをたっぷりと含みます。カラダに良い、赤ワイン葡萄です。」(1頁1行、12?13行)

(8)引用文献8

原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献8には、次の事項が記載されている。

(摘記8a)
「 本発明の活性炭組成物は、清酒、ワインなどの酒類、食酢、醤油、グルタミン酸ソーダなどの調味料、砂糖、澱粉糖化液、医薬品、化成品、水処理用、その他の液体などの脱色あるいは精製に用いられる。
本発明の組成物は従来行われている活性炭を用いる溶液の精製と同様に用いられ、たとえば上記のような被精製物の溶液に本組成物を添加し、好ましくは、攪拌下に10分間?100時間程度接触せしめて被精製物中の不純物を活性炭に吸着せしめた後、濾過操作によって、精製物を含有する溶液と不純物を吸着した本活性炭組成物を分離することにより被精製物を精製することができる。上記のような精製工程において本発明の活性炭組成物を用いるとと濾過操作を短時間で終えることができる。また濾過速度が十分満足できる早さの粒子の大きい活性炭を用いて精製しようとする場合は、この活性炭を粉砕しこれにリンターパルプを加えて本発明の組成物として用いることにより、吸着速度を早めることもできる。」(2頁左下欄2行?同頁右下欄1行)

(9)引用文献9

原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献9には、次の事項が記載されている。

(摘記9a)
「【0025】
発酵後工程30においては、発酵工程20で得られた粗ワインに所定の処理を施して、最終的に製品ワインを得る。すなわち、例えば、粗ワインにろ過処理を施す。ろ過処理には、珪藻土、メンブレンフィルター、活性炭、ベントナイト等のろ材、ろ過助剤、清澄化剤等を使用することができる。この結果、清澄な製品ワインを得ることができる。」

(10)引用文献10

原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献10には、次の事項が記載されている。

(摘記10a)
「【0028】
本発明の活性炭は、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去等の機能を暗光下でも生じるので、バルク状にしても全体がその機能を有し、これを利用して新規な産業分野に適用できる。例えば、清酒、ワイン等の腐敗、変質防止のために低温殺菌を行っているが、この低温殺菌工程に代えて前記バルク状にした本発明の活性炭に処理前の清酒、ワイン等を流通させて殺菌することができ、加熱による品質低下の改善や、エネルギーコストの低下が図れる。」

(11)引用文献11

原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献11には、次の事項が記載されている。

(摘記11a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
非麦芽原料からの醸造酒の製造工程において、プリン体化合物を選択的に吸着する吸着剤でプリン体化合物を選択的に吸着、除去し、醸造酒中の総プリン体化合物含量を3mg/l以下とすることを特徴とするプリン体化合物低減醸造酒の製造方法。
【請求項2】
プリン体化合物を選択的に吸着する吸着剤が、活性炭であることを特徴とする請求項1記載のプリン体化合物低減醸造酒の製造方法。」

2 対比・判断

(1)引用発明1に基づく進歩性の対比・判断

ア 本願発明1について

(ア)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「t-レスベラトロール」及び「赤ワインエキス」は、それぞれ、本願発明1の「トランス体レスベラトロール」及び「組成物」である「赤ワイン抽出物」に相当する。また、引用発明1の「水分含量」が「10%以下」の「粉末」である「赤ワインエキス」が「t-レスベラトロール」を「6.32%」含有することは、本願発明1の「赤ワイン抽出物」が「トランス体レスベラトロールを乾燥物換算で4質量%以上10質量%以下含有」することに包含される。
そうすると、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「トランス体レスベラトロールを乾燥物換算で4質量%以上10質量%以下含有する組成物を得る赤ワイン抽出物の製造方法。」

<相違点1>
赤ワイン抽出物の製造方法について、本願発明1では、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラムにエタノール濃度40?80質量%の含水エタノールを通液して、その溶出物を回収」すると特定されているのに対し、引用発明1では、「抽出の工程を含む」とされるのみで、上記の点について特定されていない点。

<相違点2>
赤ワイン抽出物について、本願発明1では、「ε-ビニフェリンを乾燥物換算でトランス体レスベラトロールの10に対して0.8以上3以下含有する」と特定されているのに対し、引用発明1では、かかる物質を含むこと及びその含有量が特定されていない点。

(イ)相違点についての判断

相違点1について検討する。
上記相違点1に関連した記載として、引用文献1には、赤ワイン抽出物の製造方法に関して、上記第5の1(1)アに摘記したとおりの記載があり、引用文献1の上記記載からは、引用発明1に特定される特徴を有する赤ワインエキスを、「抽出」により製造したことが理解できるのみであって、抽出をどのような装置を使用して、どのような抽出溶媒によりどのように抽出したかは明らかでない。引用文献1の他の記載を併せみても同様である。
引用文献2には、赤ワインエキスの製造を、「赤ワインを活性炭カラムを使用して分離抽出」するという方法により行うことが記載されているが、抽出を、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を使用して行うことは記載されていない。
引用文献4及び5には、「赤ワインを濃縮した濃縮ワイン」をカラムに通して、そのカラムからポリフェノール類を50%エタノールで溶離させることが記載されているが、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」からポリフェノール類を溶離させることは記載されていない。
また、引用文献6-11について検討しても、引用文献6には、ブドウの芽及び蔓を原料として、それらに対する抽出等の工程を経て、最終的にレスベラトロール類を含有する抽出組成物を得ることが記載され、引用文献7には、赤ワインのブドウ「サンソー(Cinsault)」がポリフェノールを含有することが記載され、引用文献8には、活性炭組成物がワインの脱色又は精製に用いられることが記載され、引用文献9には、粗ワインに活性炭によるろ過処理を施し、清澄な製品ワインを得ることが記載され、引用文献10には、活性炭に処理前のワインを流通させて殺菌することが記載され、引用文献11には、醸造酒の製造工程において、吸着剤である活性炭でプリン体化合物を選択的に吸着、除去することが記載されているが、引用文献6-11のいずれにも、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を使用して抽出を行うことは記載されていない。
そうしてみると、これらのいずれの文献にも、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を対象として抽出を行うことは、開示も示唆もされていない。また、抽出による赤ワインエキスの製造に際し、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を使用することが本願の出願前に周知であったともいえない。
よって、引用文献1-2、4-11のいずれの記載及び本願出願時の技術常識を参酌しても、当業者は、引用発明1において、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」の使用を動機付けられるとはいえない。

一方、本願明細書には、本願発明は、「トランス体レスベラトロールを高含量で含み、なお且つ、ビニフェリンの含有量の低減された抽出物を、ブドウからコスト安く得る方法を提供する」こと(【0005】)を目的とし、その目的を、従来活用されることはなかった(【0017】)「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」に着目し、これを活用することで解決したものであって、「トランス体レスベラトロールを高含量で含み、なお且つ、ビニフェリンの含有量の低減された抽出物を、ブドウからコスト安く得る方法を提供」できる、という効果を奏するものであることが記載されている。そして、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を活用することで、「トランス体レスベラトロールを高含量で含」むのみならず、「なお且つ」、「ビニフェリンの含有量の低減された抽出物」を得られるという、本願発明1の効果は、引用文献1-2、4-11のいずれからも示唆されない効果である。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献1-2、4-11に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願発明2-4について

本願発明2-4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらにそれらを限定したものであるから、前記ア(イ)と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献1-2、4-11に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)引用発明2に基づく進歩性の対比・判断

ア 本願発明1について

(ア)対比

本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「トランス-レスベラトロール」及び「赤ワインエキス」は、それぞれ、本願発明1の「トランス体レスベラトロール」及び「組成物」である「赤ワイン抽出物」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「トランス体レスベラトロールを含有する組成物を得ることを特徴とする赤ワイン抽出物の製造方法。」

<相違点1>
赤ワイン抽出物の製造方法について、本願発明1では、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラムにエタノール濃度40?80質量%の含水エタノールを通液して、その溶出物を回収」すると特定されているのに対し、引用発明2では、「赤ワインを活性炭カラムを使用して分離抽出」すると特定されるのみで、上記の点について特定されていない点。

<相違点2>
赤ワイン抽出物について、本願発明1では、トランス体レスベラトロールを「乾燥物換算で4質量%以上10質量%以下含有し」、「ε-ビニフェリンを乾燥物換算で前記トランス体レスベラトロールの10に対して0.8以上3以下含有する」のに対し、引用発明2では、トランス-レスベラトロールを「5%以上含み」、「レスベラトロールの2量体を0.5?2.0%の範囲で含む」と特定されている点。

(イ)相違点についての判断

相違点1について検討する。
上記(1)ア(イ)で説示したように、引用文献1-2、4-11のいずれにも、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」から「その溶出物を回収」することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明2に係る「赤ワインエキスの製造方法」において、「赤ワインを活性炭カラムを使用して分離抽出」することに代えて、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を使用して、「その溶出物を回収」するとの技術手段を採用しようとする動機付けに欠けるといわざるを得ない。

上記(1)ア(イ)で説示したように、本願明細書には、本願発明は、「トランス体レスベラトロールを高含量で含み、なお且つ、ビニフェリンの含有量の低減された抽出物を、ブドウからコスト安く得る方法を提供」できる、という効果を奏するものであることが記載されている。そして、「赤ワインの製造工程で使用された該使用後の渋み抜きカラム」を活用することで、「トランス体レスベラトロールを高含量で含」むのみならず、「なお且つ」、「ビニフェリンの含有量の低減された抽出物」を得られるという、本願発明1の効果は、引用文献1-2、4-11のいずれからも示唆されない効果である。

したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1-2、4-11に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願発明2-4について

本願発明2-4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらにそれらを限定したものであるから、前記ア(イ)と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1-2、4-11に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括

以上のとおり、本願発明1-4は、当業者が引用文献1-2のいずれかに記載された発明及び引用文献1-2、4-11に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび

したがって、原査定の理由及び当合議体が通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-02-12 
出願番号 特願2015-11914(P2015-11914)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61K)
P 1 8・ 55- WY (A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金子 亜希  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 渕野 留香
渡邊 吉喜
発明の名称 赤ワイン抽出物及び赤ワイン抽出物の製造方法  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
代理人 松井 茂  
代理人 宮尾 武孝  
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