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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07C |
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管理番号 | 1359324 |
審判番号 | 不服2018-16178 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-05 |
確定日 | 2020-02-18 |
事件の表示 | 特願2014-194867「化合物」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日出願公開、特開2015- 86378、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月25日(優先権主張 平成25年9月26日)を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年3月22日付け 拒絶理由通知 同年6月26日 意見書、手続補正書の提出 同年7月31日付け 拒絶査定 同年12月5日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年7月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2.本願の請求項3?6に係る発明は、以下の引用文献3及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 引用文献等一覧 2.特開2012-168258号公報 3.特開2008-298820号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正のうち、請求項1の式(II)で表される化合物の置換基であるR^(9)?R^(12)で定義されている置換基の中から「エチル基」に限定する補正は、発明特定事項の限定的減縮を目的とするものである。 また、上記請求項1の式(II)で表される化合物は、当該化合物の置換基であるR^(9)?R^(12)を「エチル基」と特定することにより、当初明細書の段落【0086】?【0091】で合成された式(AII-5)で表される化合物に特定したものであり、新規事項を追加するものではないといえる。 さらに、上記補正のうち、請求項3?6を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものであり、新規事項を追加するものではないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1及び2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、平成30年12月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(請求項1及び2に係る発明を、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)。 「 【請求項1】 式(II)で表される化合物。 【化1】 [式(II)中、R^(1)?R^(6)は、水素原子を表す。 R^(7)およびR^(8)は、1-エチルペンチル基を表す。 R^(9)?R^(12)は、エチル基を表す。] 【請求項2】 請求項1に記載の化合物を含む着色剤。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献について (1)引用文献3の記載 (1a)「【請求項1】 下記一般式(1)で表されるスクアリリウム金属キレート色素を含有することを特徴とする光学フィルター用組成物。 一般式(1) M[(SQ)l(W_(1))m(W_(2))n]X (式中、Mは金属イオンを表す。SQは下記一般式(2)で表されるスクアリリウム化合物を表し、W_(1)およびW_(2)はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていても良い。lは1以上の整数であり、mおよびnは各々0?2の整数を表し、l+m+n≧2であり、Xは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表す。)。 【化1】 (式中、Aは任意の有機基を表し、B_(1)、B_(2)、B_(3)およびB_(4)は炭素原子または窒素原子であって、炭素原子のとき水素原子または置換基を有し、芳香環を形成する。 R_(1)は水素原子または置換基を表す。) 【請求項2】 前記金属イオンが、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属イオンであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター用組成物。」 (1b)「【発明が解決しようとする課題】 【0015】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、スクアリリウム金属キレート化合物を含有した光学フィルター用組成物の提供にあり、可視域に色再現性上好ましい色相を有し、耐候性、保存性など堅牢性が良好な色素及び該色素を含有する光学フィルター及びディスプレイ用前面フィルターを提供することにある。」 (1c)「【0050】 一般式(2)において、R_(1)は水素原子または置換基であり、R_(1)で表される置換基として、具体的には、アルキル基(例えば、・・・・等)、シクロアルキル基(例えば、・・・・等)、アルケニル基(例えば、・・・・等)、アルキニル基(例えば、・・・・等)、アリール基(例えば、・・・・等)、ヘテロアリール基(例えば、・・・・等)、ヘテロ環基(複素環基とも呼び、例えば、・・・・等)、アルコキシ基(例えば、・・・・等)、シクロアルコキシ基(例えば、・・・・等)、アリールオキシ基(例えば、・・・・等)、アルキルチオ基(例えば、・・・・等)、シクロアルキルチオ基(例えば、・・・・等)、アリールチオ基(例えば、・・・・等)、アルコキシカルボニル基(例えば、・・・・等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、・・・・等)、ホスホリル基(例えば・・・・)、スルファモイル基(例えば、・・・・等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、・・・・等)、アミド基(例えば、・・・・等)、カルバモイル基(例えば、・・・・等)、ウレイド基(例えば、・・・・等)、スルフィニル基(例えば、・・・・等)、アルキルスルホニル基(例えば、・・・・等)、アリールスルホニル基(・・・・基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、アゾ基(例えば、・・・・)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、・・・・)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、・・・・等)、ヒドロキシル基などが挙げられる。R_(1)は置換基であることが好ましく、置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスホリル基、スルファモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、シアノ基、であることが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヘテロアリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基であることが好ましく、より好ましくはアシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基である。またこれらは更に同様の置換基よって置換されても良い。」 (1d)「【0051】 B_(1)、B_(2)、B_(3)およびB_(4)は炭素原子または窒素原子であって、炭素原子のとき水素原子または置換基を有し、単環6員芳香環を形成する。 【0052】 このときB_(1)、B_(2)、B_(3)およびB_(4)のうち少なくとも一つは炭素原子であることが好ましく、より好ましくは少なくとも二つが炭素原子であって、さらには全て炭素原子であることがより好ましい。 【0053】 B_(1)、B_(2)、B_(3)およびB_(4)のいずれかが炭素原子である場合、水素原子または置換基を有する。 【0054】 置換基の数としては特に限定されないが1以上であることが好ましく、より好ましくは2以上であることであり、さらに3以上であることが好ましい。 【0055】 置換基として具体的には上記R_(1)で表される置換基と同様のものを挙げることができる。 【0056】 この中でも好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、アゾ基、アルキルスルホニルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基が挙げられ、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アシル基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アシル基、アミド基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基が挙げられ、溶解性向上の観点からは少なくとも一つの置換基は炭素数4原子以上の直鎖あるいは分岐のアルキル基を有する事が好ましい。 【0057】 また、特にB_(2)上の置換基としてヒドロキシル基、アミノ基が好ましく、より好ましくはアミノ基である。アミノ基としてはアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基が好ましく、特にジアルキルアミノ基が好ましい。このとき、アミノ基の置換基は同一でも異なっていても良く、互いに、あるいはB_(1)、B_(3)上の置換基と結合してさらに環を形成しても良い。 【0058】 このとき形成される環としては、アミノ基の置換基が互いに結合したヘテロ環、ヘテロアリール環であることが好ましく、形成される環の大きさは特に限定されないが5員または6員であることが好ましく、5員環であることがより好ましい。 【0059】 スクアリリウム化合物は分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、その対角線上に位置する二ヶ所の炭素原子に芳香族化合物からなる置換基を有した構造をしている。 【0060】 それら二つの芳香族置換基が同一である場合には、これを便宜上、対称型スクアリリウム化合物(または対称型スクアリリウム色素)と呼んでおり、異なる場合には、非対称型スクアリリウム化合物(または非対称型スクアリリウム色素)と呼んでいる。 【0061】 本発明のスクアリリウム金属キレート化合物に用いられるスクアリリウム化合物については対称型スクアリリウム化合物であっても非対称型スクアリリウム化合物であっても良いが、色調調整の観点から非対称型スクアリリウム化合物であることが好ましい。」 (1e)「【0068】 Aで表される有機基のうち、より好ましくはアリール基、ヘテロ環基が挙げられ、さらにはヘテロ環基であることが好ましく、より好ましくは具体的には下記一般式(C-1)?(C-32)で表される構造が挙げられ、色調など光学特性の観点からより好ましくは(C-1)?(C-15)であり、さらに好ましくは(C-1)?(C-10)である。 【0069】 また、特に分光特性の観点から(C-1)、(C-9)および(C-10)が好ましい。 【0070】 【化4】 【0071】 一般式(C-1)?(C-32)において、Ra?Rgは水素原子または置換基であり、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよく、置換基の種類としては前記R_(1)で表される置換基と同様の基が挙げられる。 【0072】 Raの置換基として好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヘテロアリール基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基が挙げられ、より好ましくはアルキル基、アシル基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基が挙げられる。 【0073】 アルキル基としてはその一部あるいは全てがフッ素原子で置換されたアルキル基も同様に好ましい。またアルキル基としてより好ましくは分岐アルキル基(例えば、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ネオペンチル基、tert-アミル基など)である。 【0074】 また、少なくとも一つはキレート可能な基を有することが同様に好ましい。 【0075】 キレート可能な基とは非共有電子対を有する原子を含有する置換基を表し、具体的にはヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、およびヘテロ環チオ基等が挙げられ、より好ましくはヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基アルキルチオ基、アリールチオ基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシ基、カルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、ヘテロ環基等が挙げられる。」 (1f)「【0115】 以下に、本発明における一般式(1)で表されるスクアリリウム金属キレート化合物の代表的な具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。 【0116】 【化16】 【0117】 【化17】 【0118】 【化18】 」 (2)引用文献2の記載 (2a)「【請求項1】 (A)メタノール中における吸収極大が720nm以上を示すシアニン染料、又はスクアリリウム染料、 (B)150mgKOH/g以下のカルボン酸、スルホン酸又はリン酸価を有するアルカリ可溶性ポリマーおよび (C)重合性化合物 を有し、前記(A)染料が前記(B)アルカリ可溶性ポリマー中で、少なくもと、620?670nmに吸収極大を持つことを特徴とする、着色硬化性組成物。」 (2b)「【0032】 スクアリリウム染料(一般式((VI)および(VII)) 【化12】 (式中、R_(55)?R_(72)は、それぞれ、水素、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エーテル基、チオール基、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、チオエーテル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アリールケト基、アルキルケト基、シアノ基、ハロゲン、アリール基、又はヘテロアリール基である。R_(55)?R_(72)は、それぞれ、縮環可能な部位間において脂肪族性、芳香族性の環を形成しても良く、置換基を有していても良い。Xは、酸素原子、硫黄原子又はCR_(51)R_(52)で示され、R_(51)、R_(52)は、それぞれ、アルキル基である。) 【0033】 R_(55)、R_(56)、R_(57)およびR_(58)は、それぞれ、置換または無置換の炭素数1?5アルキル基が好ましい。R_(61)、R_(62)、R_(63)およびR_(64)は、水素原子が好ましい。R_(59)とR_(60)およびR_(65)とR_(66)は、それぞれ、互いに結合してベンゼン環を形成していることが好ましい。 ・・・・・・・ 【0038】 次に、本発明で用いられるシアニン染料、スクアリリウム染料の具体例を以下に示す。但し、本発明は、これらに限定されるわけではない。下記化合物中、Etはエチル基を、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、それぞれ示す。 【0039】 【化13】 ・・・・・・・ 【0042】 」 2 引用発明について 引用文献3には、上記(1f)より、スクアリリウム化合物として、 「 」の発明(以下、「引用文献3発明1」という。)及び 「 」の発明(以下、「引用文献3発明2」という。)が、それぞれ記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用文献3発明1との対比・判断 ア 本願発明1と引用文献3発明1とを対比すると、両者は、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合し、それぞれのフェニル基の2位に1-エチルペンチル-CONH基が、4位に置換基を有する化合物である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 上記フェニル基の4位の置換基について、本願発明1は、ジエチルアミノ基であるのに対して、引用文献3発明1は、ヒドロキシル基である点で相違する。 イ 判断 相違点1について検討すると、引用文献3には、上記(1a)?(1e)より、スクアリウム化合物として、一般式(2)で示される化合物が記載され、その定義から、炭素環やヘテロ環を含む多くの化学構造が記載されている。その中には、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合している化合物である場合も記載されているが、その場合であっても、フェニル基の3位、5位、6位も含め4位にも、ヒドロキシル基、ジアルキルアミノ基を含むアミノ基などの数多くの種類の置換基を結合させることができると記載されている(特に、上記(1d)の【0057】参照)。 しかしながら、これらの記載は、単にスクアリン酸骨格に結合したフェニル基の4位にジアルキルアミノ基を置換基として選択できることを単に示唆しているに過ぎず、引用文献3には、本願発明1のように、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合し、それぞれのフェニル基の2位に1-エチルペンチル-CONH基が結合している化合物のフェニル基の4位にヒドロキシル基を有する化合物において、必然的に当該化合物のフェニル基の4位に結合したヒドロキシル基をジアルキルアミノ基に含まれるジエチルアミノ基に置換することまで記載ないし示唆している訳ではない。 そうであれば、引用文献3発明1と引用文献3に記載された技術的事項を組み合わせたとしても、上記本願発明1における相違点1の技術的事項を導くことはできないといわざるを得ない。 また、引用文献2には、上記(2a)及び(2b)より、スクアリリウム染料を含む着色硬化性組成物が記載され、スクアリウム染料として、 が記載されているいるが、単にh-6で示される化合物を例示しているのみであり、引用文献3発明1におけるフェニル基の4位のヒドロキシル基を、ジエチルアミノ基に置換することまでは記載も示唆もしていない。 したがって、本願発明1は、引用文献3に記載された技術的事項、あるいは引用文献3及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたとは認められない。 (2)本願発明1と引用文献3発明2との対比 ア 本願発明1と引用文献3発明2とを対比すると、両者は、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合し、それぞれのフェニル基の2位に1-エチルペンチル-CONH基が、4位に置換基を有する化合物である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> フェニル基の4位の置換基について、本願発明1は、ジメチルアミノ基であるのに対して、引用文献3発明2は、ピロリジル基である点で相違する。 イ 判断 相違点2について検討すると、引用文献3には、上記(1a)?(1e)より、スクアリウム化合物として、一般式(2)で示される化合物が記載され、その定義から、炭素環やヘテロ環を含む多くの化学構造が記載されている。その中には、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合している化合物である場合も記載されているが、その場合であっても、フェニル基の3位、5位、6位も含め4位にも、ピロリジル基を含むヘテロ環基、ジアルキルアミノ基を含むアミノ基などの数多くの種類の置換基を結合させることができると記載されている(特に、上記(1d)の【0057】参照)。 しかしながら、これらの記載は、単にスクアリン酸骨格に結合したフェニル基の4位にジアルキルアミノ基を置換基として選択できることを単に示唆しているに過ぎず、引用文献3には、本願発明1のように、分子中央部にスクアリン酸骨格を持ち、当該スクアリン酸骨格にフェニル基が左右対称に結合し、それぞれのフェニル基の2位に1-エチルペンチル-CONH基が結合している化合物のフェニル基の4位にピロリジル基を有する化合物において、必然的に当該化合物のフェニル基の4位に結合したピロリジル基をジアルキルアミノ基に含まれるジエチルアミノ基に置換することまで記載ないし示唆している訳ではない。 そうであれば、引用文献3発明2と引用文献3に記載された技術的事項を組み合わせたとしても、上記本願発明1における相違点2の技術的事項を導くことはできないといわざるを得ない。 また、引用文献2は、上記(2a)及び(2b)より、スクアリリウム染料を含む着色硬化性組成物が記載され、スクアリウム染料として、 が記載されているが、単にh-6で示される化合物を例示しているのみであり、引用文献3発明2におけるフェニル基の4位のピロリジル基を、ジエチルアミノ基に置換することまでは記載も示唆もしていない。 したがって、本願発明1は、引用文献3に記載された技術的事項、あるいは引用文献3及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたとは認められない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献3に記載された発明、あるいは引用文献3及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたとは認められない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の化合物を含む着色剤に関する発明である。 しかしながら、本願発明1が引用文献3に記載された発明、あるいは引用文献3及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではないことは、上記1のとおりであるから、本願発明2についても、本願発明1と同様に、引用文献3に記載された発明、あるいは引用文献3及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものではない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により、拒絶査定時の請求項3?6に係る発明は削除され、拒絶査定時の請求項1及び2に係る発明に対応するものとして、上記本願発明1及び2になった。 したがって、上記第6で検討したのと同様に、本願発明1及び2は、拒絶査定において引用された引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 上記のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-02-03 |
出願番号 | 特願2014-194867(P2014-194867) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C07C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 直子 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
冨永 保 佐々木 秀次 |
発明の名称 | 化合物 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |