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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1359436
審判番号 不服2018-13020  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-01 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 特願2017-138331「ヘッドホン」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月 7日出願公開、特開2019- 22058〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
1 手続の経緯
本件出願は、平成29年7月14日の出願であって、平成30年1月25日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成30年4月2日付けで手続補正がなされたが、平成30年6月26日付け(発送日平成30年7月3日)で拒絶査定がなされた。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成30年10月1日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年4月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本願発明)
(A)ヘッドバンドと、
(B)ドライバを収納するハウジングと、
(C-1)前記ヘッドバンドの長さ方向の両端のそれぞれと前記ハウジングとを連結し、
(C-2)前記ヘッドバンドの前記長さ方向とは異なる方向を回転軸として前記ハウジングを回転させる
(C)連結部材と、
を備える、
(D)ことを特徴とするヘッドホン。

((A)?(D)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件D」という。)

第2 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献の記載事項
原査定における拒絶の理由に引用された国際公開2015/097934号(以下「引用文献」という。)には、「ヘッドフォン」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(下線は当審が付与した。)

「[0014] ヘッドフォン100は、ヘッドバンド110と、スピーカ筐体120a、120bと、連結部130a、130bと、ピンジャック140を備える。
[0015] ヘッドバンド110は、ヘッドフォン100を装着する利用者の左右の耳に配置されるスピーカ筐体120aと、120bを支持する。ヘッドバンド110は、利用者の上方である頭頂部に沿うように、実質的には円弧形状を有している。
[0016] スピーカ筐体120a、120bは、ヘッドバンド110の両端に接続される。スピーカ筐体120aはヘッドフォン100を装着する利用者の左耳に配され、スピーカ筐体120bはヘッドフォン100を装着する利用者の右耳に配される。スピーカ筐体120a、120bは、それぞれ内部に音を出力する図示しないスピーカユニットを有している。また、スピーカ筐体120aの利用者の耳と接触する部分にはイヤーパッド150aが設けられ、スピーカ筐体120bの利用者の耳と接触する部分にはイヤーパッド150bが設けられている。以下、特に左右のスピーカ筐体120a、120bを区別しない場合は、スピーカ筐体120と表現する。同様に、イヤーパッド150a、150bの区別をしない場合はイヤーパッド150と表現する。
[0017] 連結部130a、130bは、ヘッドバンド110のそれぞれ異なる端部に配置されている。連結部130aは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとを接続し、連結部130bは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120bとを接続する。以下、特に左右の連結部130a、130bの区別をしない場合は、連結部130と表現する。」

「[0019] 図4、図7に示すようにヘッドフォン100は、その形状が一部変化する。具体的には、連結部130aと、スピーカ筐体120aが利用者の前後方向に所定の範囲で調整可能である。連結部130aを基準とすると、スピーカ筐体120aの位置が、図4で示す最前方と、図7で示す最後方との範囲で可動である。その結果、ヘッドフォン100全体としての形状が変化する。」

「[0022] また、図4、図7で示すように、連結部130aとスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係を変更することで、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係も調整できる。」

「[0024] なお、ヘッドフォン100の右側面図を用いてヘッドフォン100の形状の変化を説明したが、ヘッドフォン100の左側面においても同様に連結部130bとスピーカ筐体120bとの前後方向の位置関係を変更できる。」

「[0034] 図9は、スピーカ筐体120とヘッドバンド110との取り付けについて説明する図である。
[0035] スピーカ筐体120のイヤーパッド150は既に説明したように、ヘッドフォン100をコンパクトにするには、実質的に楕円形状とすることが好ましい。しかしその場合には、イヤーパッド150と利用者の耳との相対的な位置関係について制約を受ける場合がある。具体的には利用者の耳の長軸方向とイヤーパッド150の長軸方向と、利用者の耳の短軸方向とイヤーパッド150の短軸方向とを、それぞれ実質的に一致させる必要がある。
[0036] 一般的に人の耳は、耳長軸方向が鉛直方向と一致せず、処定の角度α(0<α<45:αは実数)を有している。そのため、スピーカ筐体120が利用者の耳に好適に装着される場合、ヘッドバンド110が利用者の頭頂部方向に実質的に鉛直上向きとなるためにはこの角度αを考慮して、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120とが連結されることが必要となる。つまり、ヘッドバンド110は、その中心軸が鉛直方向と実質的に一致する角度αでスピーカ筐体120と連結する。
[0037] このようにすることで、イヤーパッド150をよりコンパクトにできるとともに、ヘッドフォン100を使用する際に、コンパクトになったイヤーパッド152でも利用者の耳を好適に覆うことができる。」

「[0038] 図10は、図1の10-10断面図であり、連結部130aの具体的な構成の一例を示す図である。図10は、図1の10-10断面図は利用者の左耳側の断面図であるが、利用者の右耳側も同様であるため、連結部130として説明する。連結部130は、連結軸310と、ストッパ320と、可動子330と、連結部筐体340を有する。
[0039] 連結軸310は、物理的に、連結部130とスピーカ筐体120を接続する。連結軸310は、図示していないが、内部は中空である。スピーカユニットへの配線等は、この中空部分を通る。連結軸310は、スピーカ筐体120に設けられた挿入用の貫通穴121を通る。
[0040] ストッパ320は、連結軸310のスピーカ筐体120側の端部に設けられる。ストッパ320は、スピーカ筐体120が連結軸310から下落するのを防ぐ。そのため、ストッパ320の長手方向の断面は、スピーカ筐体120に設けられた貫通穴121の長手方向の断面よりも大きくなる。ストッパ320は、貫通穴121を通過した連結軸310とスピーカ筐体120の内部側から結合される。
[0041] 可動子330は、連結軸310の連結部130側の端部に設けられる。可動子330は、連結部筐体340の内部に配置されている。可動子330は、連結軸310、ストッパ320、及びスピーカ筐体120が、連結部130から下落するのを防ぐ。可動子330は、連結部筐体340に設けられた開口部分341の大きさよりも大きい形状を有する。
[0042] また、可動子330は連結部筐体340内部を移動する。この移動により、スピーカ筐体120が、ヘッドバンド110に対して相対的な位置の変化となる。つまりヘッドフォン100において、スピーカ筐体120が所定の前後方向に移動して調整される。この可動子330の連結部筐体340内部での可動範囲の大きさが、スピーカ筐体120と連結部130の調整する量の大きさとなる。
[0043] 連結部筐体340は、可動子330を格納する筐体である。連結部筐体340の内部は、上述の通り、可動子330が連結部筐体340の内部を移動するため、可動子330の形状よりも大きい空間が必要である。さらに、連結部筐体340の下部には、連結軸310を貫通させるため、開口部分341がある。
[0044] なお、連結軸310を中心軸として、スピーカ筐体120は回転するものであってもよい。回転する場合は、スピーカ筐体120は、イヤーパッド150を利用者の耳の接触面の角度に応じて、回転方向を調整することが可能となる。」




[図1]

[図4]


[図7]

[図9]



[図10]


2 引用文献に記載された発明
段落[0014]によると、ヘッドフォン100は、ヘッドバンド110と、スピーカ筐体120a、120bと、連結部130a、130bを備える。
段落[0016]によると、スピーカ筐体120a、120bは、ヘッドバンド110の両端に接続され、スピーカ筐体120a、120bは、それぞれ内部に音を出力するスピーカユニットを有している。
段落[0017]によると、連結部130a、130bは、ヘッドバンド110のそれぞれ異なる端部に配置され、連結部130aは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとを接続し、連結部130bは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120bとを接続する。
段落[0022]によると、連結部130aとスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係を変更することで、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係が調整できる。段落[0024]によると、同様に連結部130bとスピーカ筐体120bとの前後方向の位置関係を変更できる。
段落[0036]によると、ヘッドバンド110は、その中心軸が鉛直方向と実質的に一致する角度αでスピーカ筐体120と連結する。
段落[0038]によると、連結部130は、連結軸310と、ストッパ320と、可動子330と、連結部筐体340を有する。
段落[0044]によると、連結軸310を中心軸として、スピーカ筐体120は回転するものであってもよいから、連結軸310を中心軸として、スピーカ筐体120は回転するものとして、引用文献1に記載された発明を認定する。

また、段落[0016]には、「特に左右のスピーカ筐体120a、120bを区別しない場合は、スピーカ筐体120と表現する」と記載されているから、上記の「スピーカ筐体120」は、「スピーカ筐体120a、120b」といえる。さらに、段落[0017]には、「特に左右の連結部130a、130bの区別をしない場合は、連結部130と表現する」と記載されているから、上記の「連結部130」は、「連結部130a、130b」といえる。

以上によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)ヘッドバンド110と、スピーカ筐体120a、120bと、連結部130a、130bを備えるヘッドフォン100であって、
(b)スピーカ筐体120a、120bは、ヘッドバンド110の両端に接続され、スピーカ筐体120a、120bは、それぞれ内部に音を出力するスピーカユニットを有し、
(c) 連結部130a、130bは、ヘッドバンド110のそれぞれ異なる端部に配置され、連結部130aは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとを接続し、連結部130bは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120bとを接続し、
(d)連結部130aとスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係を変更することで、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係が調整でき、同様に連結部130bとスピーカ筐体120bとの前後方向の位置関係を変更でき、
(e)ヘッドバンド110は、その中心軸が鉛直方向と実質的に一致する角度αでスピーカ筐体120a、120bと連結し、
(f) 連結部130a、130bは、連結軸310と、ストッパ320と、可動子330と、連結部筐体340を有し、
(g)連結軸310を中心軸として、スピーカ筐体120a、120bは回転する、
(a)ヘッドフォン。

なお、(a)?(g)は、構成を識別するために付与した。以下各構成を「構成a」?「構成g」という。

第3 対比及び判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)構成要件Aと構成aの「ヘッドバンド110」とを対比する。
構成aの「ヘッドバンド110」は、「ヘッドバンド」として構成要件Aと一致する。

(2)構成要件Bと構成a、bの「スピーカ筐体120a、120b」とを対比する。
構成bの「音を出力するスピーカユニット」は、構成要件Bの「ドライバ」に相当し、構成a、bの「スピーカ筐体120a、120b」は、「ハウジング」といえる。
したがって、内部に音を出力するスピーカユニットを有するスピーカ筐体120a、120bは、「ドライバを収納するハウジング」として、構成要件Bと一致する。

(3)構成要件C-1、Cと構成cとを対比する。
構成cの「連結部130a、130b」は、「ヘッドバンド110のそれぞれ異なる端部に配置され、連結部130aは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとを接続し、連結部130bは、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120bとを接続」し、上記(2)のとおり、スピーカ筐体120a、120bは、「ハウジング」といえるから、構成cの「連結部130a、130b」は、「前記ヘッドバンドの長さ方向の両端のそれぞれと前記ハウジングとを連結」する「連結部材」として、構成要件C-1、Cと一致する。

(4)構成要件C-2、Cと構成d?gとを対比する。
構成fによると、連結部130a、130bは、連結軸130を有し、構成gによると、連結軸310を中心にスピーカ筐体120a、120bは回転する。
そして、構成eによると、ヘッドバンド110は、その中心軸が鉛直方向と実質的に一致する角度αでスピーカ筐体120a、120bと連結しているから、連結部130a、130bは、「前記ヘッドバンドの前記長さ方向とは異なる方向を回転軸として前記ハウジングを回転させる」連結部材といえる。
また、引用発明においては、構成dによると、連結部130aとスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係を変更することで、ヘッドバンド110とスピーカ筐体120aとの前後方向の位置関係が調整でき、同様に連結部130bとスピーカ筐体120bとの前後方向の位置関係を変更できるものであるが、連結部130a、130bは、「前記ヘッドバンドの前記長さ方向とは異なる方向を回転軸として前記ハウジングを回転させる」連結部材といえる点に変わりはない。
したがって、構成要件C-2、Cと構成d?gとを対比すると、「前記ヘッドバンドの前記長さ方向とは異なる方向を回転軸として前記ハウジングを回転させる」連結部材として一致する。

(5)構成要件Dと構成aの「ヘッドフォン」とを対比する。
構成aの「ヘッドフォン」は、「ヘッドホン」として構成要件Dと一致するといえる。

2 判断
上記1の対比のとおり、本願発明と引用発明とは全ての構成要件で一致する。

請求人は、審判請求書5頁14?20行において、「もし、引用文献1の発明において、仮に本願発明のように、ハウジングとヘッドバンドとを連結するための連結部材そのものが、該ハウジングをヘッドバンドの長軸方向とは異なる方向に回転させる構造にしたとすれば、スライド可能な機構を実現することができず、引用文献1の発明の目的を達成することができない。また、ハウジングをヘッドバンドの長軸方向とは異なる方向に回転させるようにハウジングとヘッドバンドとを連結させる連結部材で、かつハウジングをスライド可能にするような構造を実現できるとは到底考えられない。」と主張する。
しかしながら、引用文献の段落[0044]には、「連結軸310を中心軸として、スピーカ筐体120は回転するものであってもよい。」と記載され、引用文献の図10をみると、連結軸310により、スピーカ筐体120は、回転できることは明らかであるから、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2017-138331(P2017-138331)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 正宏  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 間宮 嘉誉
小池 正彦
発明の名称 ヘッドホン  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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