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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1359440
審判番号 不服2018-15105  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-13 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 特願2017-158755「ゲームプログラム,方法および情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開,特開2019- 34075〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年8月21日に出願され,平成30年3月22日付けで拒絶理由が通知され,同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出され,同年8月7日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,それに対して,同年11月13日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年6月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ゲームプログラムであって,
前記ゲームプログラムは,プロセッサと,メモリと,タッチスクリーンとを備えるコンピュータにより実行されるものであり,
前記ゲームプログラムに基づくゲームは,前記タッチスクリーンに対する操作を受け付けると,該操作に関連付けられたアクションを,ユーザが操作する操作キャラクタに実行させるゲームであり,
前記ゲームプログラムは,前記プロセッサに,
前記タッチスクリーンに対する,前回の操作に続いていない操作から始まる連続する操作よりなる操作列に含まれる各操作に,該操作の前記操作列における順序に応じたアクションを関連付ける編集画面を表示するステップ,を実行させるゲームプログラム。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,平成30年6月1日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2等に示される周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。



引用文献1:『新次元ゲイム ネプテューヌVII』予約特典&限定版情報,キャラやシステム,主題歌情報も公開,[online],2015年1月8日,2018年3月22日検索,URL,http://gamestalk.net/neptune-vii-8/
引用文献2:特許第6180610号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献1の記載事項及び引用発明
1 記載事項
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された,『新次元ゲイム ネプテューヌVII』予約特典&限定版情報,キャラやシステム,主題歌情報も公開,[online],URL,http://gamestalk.net/neptune-vii-8/(以下,「引用文献1」という。)には,以下の記載がある。なお,下線は認定に用いた箇所を強調するために付与した。

ア 「コンパイルハートは4月23日に発売を予定しているPS4『新次元ゲイム ネプテューヌVII』の公式サイトを更新し,予約特典と限定版「ドリームエディション」,キャラクター「ノワール」「ブラン」「ベース」,システム「コンボメイク」,「主題歌」の情報を公開しました。ここでは,キャラ以外の情報をご紹介します。」

イ 「コンボメイクとはバトル中にキャラクターが繰り出すコンボを設定できるシステム。」

ウ 「1.コンボ一覧
現在装備している武器が持つセット可能なコンボ一覧。
2.セットされているコンボ
装備している武器により使えるコンボが異なる。
コンボは最大5thまで繰り出すことができ,「ラッシュ」「パワー」「スタンダード」のそれぞれの系統に応じたコンボをひとつずつセットできる。
なお,同一のコンボは1箇所にしかセットできない。
3.コンボの詳細
【コンボ特性】は,その条件を満たすとバトルで通常より高いダメージを与えることができる。繰り出す順番を考え,効率の良いセットを行うことが攻略の近道。」

エ 「コンボの回数は全キャラクター共通ではなく,装備している武器によって決定。つまり武器選びが戦闘の鍵となる。」

オ 「戦闘の主力となる「コンボ攻撃」の仕組みも変化。前作までの「ブレイク」に代わる「スタンダード」が導入され,「ラッシュ」「パワー」「スタンダード」計3種類の技を駆使して攻撃を行う。
ラッシュ
1発あたりのダメージは低いが,ヒット数が多い。連発すれば一気にヒット数を稼げる。(※ヒット数に応じて,エグゼドライヴゲージを貯められる)
パワー
ラッシュとは反対に,ヒット数は少ないがダメージが高く,相手のHPを大幅に削れる。
スタンダード
ラッシュとパワーの中間をとった技。ヒット数を増やしながらHPを削る時に役立つ。」

カ 「コンボ攻撃を行う祭(当審注:「祭」は,「際」の誤記と認められる。),技を使う順序によっては次に使う技の威力が上がる。このコンボの特性はメニューで確認できるので,コンボの設定は“特性”を確認しながら行う。」

キ 上記イの摘記事項の直後の画像


ク 上記キの画像からは,以下の事項が把握できる。
(ア) 左上に「コンボ」の文字列がある。
(イ) 上記「コンボ」の文字列の下には,人の顔が表示され,その右に「Lv.12」及び「ネプテューヌ」の文字列がある。
(ウ) 上部に「使用するコンボを設定して下さい」の文字列がある。
(エ) 「1st」の文字列の下には,3つの長方形が縦に並んでおり,上段の長方形(以下,「1st上段長方形」という。)には,「(当審注:<※>の表記は,丸の中に※の文字又は記号が書かれていることを表す。以下,同様。) RUSH」の文字列が付いており,中段の長方形(以下,「1st中段長方形」という。)には,「

POWER」の文字列が付いており,下段の長方形(以下,「1st下段長方形」という。)には,「 STANDARD」の文字列が付いている。
(オ) 1st上段長方形及び1st中段長方形の中は空欄であるが,1st下段長方形の中には,長方形で囲まれた「アタック」の文字列がある。
(カ) 「2nd」,「3rd」及び「4th」の文字列の下に,これらの文字列にまたがる横長の長方形が縦に3つ並んでおり,上段の横長の長方形(以下,「上段横長長方形」という。)には,「<△> RUSH」の文字列が付いており,中段の横長長方形(以下,「中段横長長方形」という。)には,「<□> POWER」の文字列が付いており,下段の横長長方形(以下,「下段横長長方形」という。)には,「<○> STANDARD」の文字列が付いている。
(キ) 上段横長長方形の中には,「2nd」,「3rd」及び「4th」の文字列の位置にそれぞれ対応するように,長方形で囲まれた,「ラッシュ」,「ラピッドラッシュ」及び「ハイラッシュ」の文字列があり,「ラッシュ」の文字列は明るく,「ラピッドラッシュ」及び「ハイラッシュ」の文字列は暗く表示されている。
(ク) 中段横長長方形の中には,「2nd」,「3rd」及び「4th」の文字列の位置にそれぞれ対応するように,長方形で囲まれた,「パワーエッジ」,「パワースラッシュ」及び「メガ・ド・ダイブ」の文字列があり,いずれの文字列も明るく表示されている。
(ケ) 下段横長長方形の中には,「2nd」,「3rd」及び「4th」の文字列の位置にそれぞれ対応するように,長方形で囲まれた,「ザンバー」,「ダブルザンバー」及び「コンビアーツ」の文字列があり,「ザンバー」及び「ダブルザンバー」の文字列は明るく,「コンビアーツ」の文字列は暗く表示されている。
(コ) 上段横長長方形の中の「ラッシュ」の文字列の左側には,三角形が表示され,「ラッシュ」の文字列は,明るい長方形で囲われている。
(サ) 右下に「R2女神化 <□>外す <△>情報表示 <○>選択 <×>戻る」の文字列がある。

(2) 上記(1)の事項から,以下のことがいえる。
ア 上記(1)アの摘記事項における「PS4」は,「プレイステーション4」というゲーム機を意味することは明らかである。
したがって,上記(1)アの「PS4『新次元ゲイム ネプテューヌVII』」の「『新次元ゲイム ネプテューヌVII』」とは,プレイステーション4用のゲームの名称であると把握される。
そして,上記(1)イないし同キが,当該『新次元ゲイム ネプテューヌVII』における,「コンボメイク」というシステムについての説明であると認められる。

イ プレイステーション4について,以下の3点は技術常識であると認められる。
(ア) プレイステーション4が,テレビモニタなどの表示装置に接続され,ゲームプログラムを実行することで,当該表示装置にゲームの画像を表示するための表示データを出力する点。
(イ) プレイステーション4が,プロセッサと,メモリと,コントローラとを備え,前記コントローラが,少なくとも△ボタン,□ボタン,○ボタンを有する点。
(ウ) ゲームプログラムをプレイステーション4で実行することで表示装置に表示される画像において,「<△>」という表示が,△ボタンを押下する操作に対応する点。

ウ 上記イ(イ)の技術常識を踏まえると,上記(1)キの画像は,<1>,<2>,<3>の数字などを重ねる加工は施されているものの,前記ゲームプログラムをプレイステーション4に実行させることで,プレイステーション4から表示データが出力されて表示装置に表示される画像を示し,この表示装置に表示される画像に対して,<1>,<2>,<3>の数字などを重ねる加工がされているものと認められる。
そして,表示装置に表示される画像には,「使用するコンボを設定してください」の文字列が表示され(上記(1)ク(ウ)),また,「ラッシュ」の文字列が明るい長方形で囲われ,横に三角形が表示され(上記(1)ク(コ))るとともに,画面右下に「<□>外す」などの文字列が表示されて(上記(1)ク(サ))ていることから,当該画面(以下,「コンボ設定画面」という。)を表示中にコントローラを操作することで,バトル中にキャラクターが繰り出すコンボを設定できるものと認められる。

エ 上記(1)ク(イ)の事項における,「人の顔」は,技術常識に照らせば,ゲームに登場するキャラクターのものであることは明らかであり,その右にある「ネプテューヌ」の文字列は,当該キャラクターの名前であると認められ,上記イ(イ)の技術常識を踏まえると,前記コントローラをユーザが操作することで,「ネプテューヌ」という名前のキャラクター(以下,単に「ネプテューヌ」という。)を操作して,ゲームを行うことは明らかである。

オ 上記イ(ウ)の技術常識を踏まえると,コンボ設定画面において,「<△> RUSH」の文字列が付いている上段横長長方形の中の「ラッシュ」,「ラピッドラッシュ」及び「ハイラッシュ」は,コントローラの△ボタンを押下することで,ネプテューヌが実行する技であり,同様に,「パワーエッジ」,「パワースラッシュ」及び「メガ・ド・ダイブ」は□ボタンを押下することで,ネプテューヌが実行する技であり,「ザンバー」,「ダブルザンバー」及び「コンビアーツ」は○ボタンを押下することで,ネプテューヌが実行する技であると認められる。
さらに,2nd,3rd及び4thの文字列を合わせて考慮すると,△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下すると,ネプテューヌに,2nd,3rd及び4thの順番で,△ボタン,□ボタン又は○ボタンに対応する技を実行させるものと認められる。

カ 1st下段長方形の中に書かれた「アタック」も,ネプテューヌが実行する技であることは明らかである。
また,コントローラをどのように操作することで,「アタック」の技を実行するのかは判然としないが,コンボが戦闘で繰り出されるものであることを踏まえると,攻撃を開始するためのユーザによるコントローラに対する何らかの操作(以下,「攻撃開始操作」という。)が行われることで,ネプテューヌに,1stに対応する「アタック」の技を実行させることは明らかである。

キ 1stの後に,2nd,3rd及び4thが続くことは明らかである。

ク 上記(1)ウの「3.コンボの詳細」に関する記載と,上記(1)カの記載を総合すると,コンボ特性とは,技を使う順序が,その条件を満たすとバトルで通常より高いダメージを与えることができるような条件のことであると認められる。
ここで,上記ウで検討したとおり,引用文献1には,コンボ設定画面を表示中にコントローラを操作することで,バトル中にキャラクターが繰り出すコンボを設定できることが開示されており,上記(1)ウの「繰り出す順番を考え,効率の良いセットを行うことが攻略の近道。」という記載を踏まえると,コンボを設定する際には,技を出す順番を考える必要があり,順番を考える以上,当該順番を変更できるものと認められる。
すなわち,引用文献1には,1st,2nd,3rd及び4thの少なくとも一部の段階において,技を出す順番を変更できることが開示されているものと認められる。

ケ 上記(1)ウ及び同オの記載から,「技」には,「ラッシュ」,「パワー」及び「スタンダード」という3種類の系統があることが把握でき,「ラッシュ」,「パワー」及び「スタンダード」が,それぞれ,英単語で「RUSH」,「POWER」及び「STANDARD」と綴ることを踏まえると,コンボ設定画面に表示されている,「ラッシュ」(なお,以下においては,技の「ラッシュ」と区別するため,系統の「ラッシュ」は「RUSH」と英語で表記する。また,同様に,系統の「パワー」及び「スタンダード」は,それぞれ,「POWER」及び「STANDARD」の表記に統一する。),「ラピッドラッシュ」及び「ハイラッシュ」は,「RUSH」の系統の技であり,「パワーエッジ」,「パワースラッシュ」及び「メガ・ド・ダイブ」は,「POWER」の系統の技であり,「アタック」,「ザンバー」,「ダブルザンバー」及び「コンビアーツ」は,「STANDARD」の系統の技であると認められる。
そして,上記(1)オの記載から,「RUSH」,「POWER」及び「STANDARD」の系統の技は,それぞれ,「1発あたりのダメージは低いが,ヒット数が多い。連発すれば一気にヒット数を稼げる。」,「ラッシュ(当審注:この「ラッシュ」は系統の「RUSH」を意味することは明らかである。)とは反対に,ヒット数は少ないがダメージが高く,相手のHPを大幅に削れる。」及び「ラッシュ(当審注:この「ラッシュ」も系統の「RUSH」を意味することは明らかである。)とパワー(当審注:この「パワー」は系統の「POWER」を意味することは明らかである。)の中間をとった技。ヒット数を増やしながらHPを削る時に役立つ。」という特徴があることも把握できる。
そうすると,ゲームの分野において,同じ名前の技に,異なる特徴を持たせることは通常行われないという技術常識を踏まえると,上記クで検討した,1st,2nd,3rd及び4thの少なくとも一部の段階における技を出す順番の変更は,同一の系統の中で行われるものと解することが相当である。

(3) 引用発明
上記(1)及び(2)から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ゲームプログラムであって,
前記ゲームプログラムは,プロセッサと,メモリと,コントローラとを備え,表示装置に接続され,当該表示装置にゲームの画像を表示するための表示データを出力するプレイステーション4により実行されるものであり,
前記ゲームは,前記コントローラをユーザが操作することで,ネプテューヌを操作するものであり,
前記プレイステーション4に,
前記コントローラに対する攻撃開始操作が行われることで,ネプテューヌに,1stに対応する「アタック」の技を実行させ,その後,前記コントローラが備える△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下すると,ネプテューヌに,2nd,3rd及び4thの順番で,△ボタン,□ボタン又は○ボタンに対応する技を実行させる機能と,
技には,「RUSH」,「POWER」及び「STANDARD」という3種類の系統があり,技を使う順序が,コンボ特性の条件を満たすとバトルで通常より高いダメージを与えることができるようにする機能と,
接続された表示装置にコンボ設定画面を表示させる機能と,
前記コンボ設定画面を表示中にコントローラを操作することで,バトル中にキャラクターが繰り出すコンボを設定でき,1st,2nd,3rd及び4thの少なくとも一部の段階において,技を出す順番の変更を,同一の系統の中で行わせる機能と,
を実現させるためのゲームプログラム。」

2 公知日
上記1(1)で摘記した事項は,Wayback Machineに,2015年3月29日に保存された版に全て記載されている(https://web.archive.org/web/20150329011201/https://gamestalk.net/neptune-vii-8/)ところ,引用発明は,遅くとも,本願の出願日前である2015年3月29日には,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であると認められる。

第5 当審の判断
1 対比
本願発明と,引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。
(1) 引用発明の「ゲームプログラム」は,本願発明の「ゲームプログラム」に相当する。

(2) 引用発明の「プロセッサ」及び「メモリ」は,それぞれ,本願発明の「プロセッサ」及び「メモリ」に相当する。

(3) 本願発明の「タッチスクリーン」と,引用発明の「コントローラ」とは,共にキャラクターを操作する操作手段であるという概念において共通する。

(4) 上記(2)及び(3)の検討を踏まえると,本願発明の「コンピュータ」と,引用発明の「プレイステーション4」とは,「プロセッサと,メモリと,キャラクタを操作する操作手段とを備え」点で共通し,本願発明と,引用発明とは,「コンピュータにより実行されるものであ」る点でも共通する。

(5) 引用発明においては,ゲームは,前記コントローラをユーザが操作することで,ネプテューヌを操作するものであり,前記コントローラに対する攻撃開始操作が行われることで,ネプテューヌに,1stに対応する「アタック」の技を実行させ,その後,前記コントローラが有する△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押す順序によって,ネプテューヌに,2nd,3rd及び4thに対応する技を実行させるものであり,引用発明の「ユーザ」及び「ネプテューヌ」は,本願発明の「ユーザ」及び「操作キャラクタ」に相当する。
そして,上記(3)の検討も踏まえると,本願発明の「タッチスクリーンに対する操作」と,引用発明の「コントローラに対する攻撃開始操作」及び「前記コントローラが備える△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下する」ことは,「操作手段に対する操作」である点で共通する。
さらに,引用発明において,前記コントローラに対する攻撃開始操作が行われることで,ネプテューヌに,1stに対応する「アタック」の技を実行させ,その後,前記コントローラが備える△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下すると,ネプテューヌに,2nd,3rd及び4thの順番で,△ボタン,□ボタン又は○ボタンに対応する技を実行させることから,引用発明の「技」は,本願発明の「アクション」に相当し,本願発明の「ゲームプログラムに基づくゲーム」と,引用発明の「ゲーム」とは,「操作手段に対する操作を受け付けると,前記操作に関連付けられたアクションを,ユーザが操作する操作キャラクタに実行させる」点で共通する。

(6) 引用発明の「攻撃開始操作」は,攻撃を開始するための操作であるから,前回の操作に続いていないものといえる。
したがって,上記(3)の検討を踏まえると,引用発明の「攻撃開始操作」は,本願発明の「操作手段に対する,前回の操作に続いていない操作」に相当する。
また,引用発明においては,攻撃開始操作の後に,前記コントローラが備える△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下すると,ネプテューヌに,2nd,3rd及び4thの順番で,△ボタン,□ボタン又は○ボタンに対応する技を実行させており,引用発明において,攻撃開始操作の後に,前記コントローラが備える△ボタン,□ボタン又は○ボタンを押下することは,本願発明において,「前回の操作に続いてしない操作から始まる連続する操作よりなる操作列」に相当する。

(7) 引用発明においては,コンボ設定画面を表示中にコントローラを操作することで,バトル中にキャラクターが繰り出すコンボを設定でき,1st,2nd,3rd及び4thの少なくとも一部の段階において,技の順番の変更を,同一の系統の中で行わせており,技の順番を変更することは,技を出すためのボタンを押下する操作と,それによって出される技との関連を変更しているといえる。
そうすると,本願発明の「編集画面」と,引用発明の「コンボ設定画面」とは,「前記操作手段に対する,前回の操作に続いていない操作から始まる連続する操作よりなる操作列に含まれる」「操作に,該操作の前記操作列における順序に応じたアクションを関連付ける」ものである点で共通する。
また,引用発明において,表示装置に表示データを出力して,ゲームの画面を表示させることは,プレイステーション4が備えるプロセッサが行っていることは明らかであるから,本願発明と,引用発明とは,「前記プロセッサに,」「編集画面を表示するステップ,を実行させる」点でも共通する。

(8) 上記(1)ないし(7)より,本願発明と,引用発明とは,以下の点で一致する。

[一致点]
「ゲームプログラムであって,
前記ゲームプログラムは,プロセッサと,メモリと,キャラクタを操作する操作手段とを備えるコンピュータにより実行されるものであり,
前記ゲームプログラムに基づくゲームは,前記操作手段に対する操作を受け付けると,該操作に関連付けられたアクションを,ユーザが操作する操作キャラクタに実行させるゲームであり,
前記ゲームプログラムは,前記プロセッサに,
前記操作手段に対する,前回の操作に続いていない操作から始まる連続する操作よりなる操作列に含まれる操作に,該操作の前記操作列における順序に応じたアクションを関連付ける編集画面を表示するステップ,を実行させるゲームプログラム。」

(9) そして,両者の発明は,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は,キャラクタを操作する操作手段として「タッチスクリーン」を備えるコンピュータによって実行されるのに対して,引用発明は,前記操作手段として△ボタン,□ボタン又は○ボタンを有するコントローラを備えるプレイステーション4によって実行される点。

[相違点2]
本願発明においては,前記操作手段に対する,前回の操作に続いていない操作から始まる連続する操作よりなる操作列に含まれる各操作に,該操作の前記操作列における順序に応じたアクションを関連付ける,すなわち,「前回の操作に続いていない操作」と,当該操作を含む連続する所定数の操作に対して,アクションを関連付けるのに対して,引用発明においては,1st,2nd,3rd及び4thの少なくとも一部の段階において,技を出す順番を,同一の系統の中で変更できるものであるが,1stを含む連続する所定数の段階において,技の順番を変更できるのか否かが特定されていない点。

2 相違点に対する判断
(1) 相違点1について
ゲームプログラムを実行するコンピュータとして,プロセッサと,メモリと,キャラクタを操作する操作手段としてのタッチスクリーンとを備えたものを用いることは,本願出願前の周知技術(例えば,引用文献2の段落【0023】ないし【0050】の記載を参照。)であると認められる。
引用発明において,どのようなゲーム機で実行させるゲームプログラムとするかは,当業者が適宜選択するべき事項にすぎないところ,前記周知技術を考慮すると,引用発明に対して,プレイステーション4に代えて,プロセッサと,メモリと,キャラクタを操作する操作手段としてのタッチスクリーンを備えたコンピュータに実行させるゲームプログラムとして構成すること,すなわち,本願発明の相違点1に係る発明特定事項をなすことは,当業者が適宜なし得たことである。

(2) 相違点2について
ア ゲーム分野において,攻撃の手段をユーザの好みに応じて,多様にカスタマイズできるようにして興趣性を高めることは,当業者にとって自明な課題であることを踏まえると,引用発明において,多様なカスタマイズを可能とするために,カスタマイズ可能な範囲を広げ,1stを含む連続する所定数の段階,具体的には4thまでの全ての技の順序を,同一の系統の中で変更できるようにすることは,当業者が適宜なし得たことである。

イ なお,請求人は,審判請求書において,『新次元ゲイム ネプテューヌVII』の公式ウェブサイト,参考資料1及び参考資料2を提示して,引用発明においては,武器ごとに1段目の系統が固定されており,1段目のコンボを編集可能とすることは,武器ごとの特色を有しない武器が存在することになり,ゲームのおもしろさを没却させてしまう旨の主張をしている。
しかし,仮に,引用発明において,1段目の技が固定されているとしても,そのような構成に代えて,前記アで述べたように,1段目の技を同一の系統の技の中から選択して変更できる構成としたときには,請求人が主張する「武器ごとの特色」という特徴を有したままで,多様なカスタマイズを実現することができるのであるから,そのような構成の変更がゲームのおもしろさを没却させることはない。
したがって,請求人の前記主張は,採用することはできない。

3 請求人のその他の主張に対する判断
請求人は,引用文献1が,個人のウェブサイトであり,改ざん等の可能性も想定される旨主張するが,上記第4の2で説示したとおり,引用文献1において,引用発明の認定に用いた記載は,全て,本願の出願日より前の2015年3月29日に存在しているので,引用発明も遅くとも同日には,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。
よって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2にも記載される周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり結審する。
 

審理終結日 2019-11-29 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2017-158755(P2017-158755)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 目黒 大地  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 清水 康司
塚本 丈二
発明の名称 ゲームプログラム、方法および情報処理装置  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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