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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1359450 |
審判番号 | 不服2019-2084 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-14 |
確定日 | 2020-02-06 |
事件の表示 | 特願2017-506021号「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月22日国際公開、WO2016/147484号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成27年(2015年)11月17日(優先権主張 特願2015-50927号 2015年3月13日)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月25日付けで手続補正がなされ、平成30年8月2日付けで拒絶理由が通知され、同年9月21日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月12日付け(送達日 同年同月20日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成31年2月14日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされた後、当審において、令和元年9月26日付けで拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由」という。)、同年11月15日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、令和元年11月15日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 アノード用電極ランドと、 カソード用電極ランドと、 少なくとも第1の発光部、第2の発光部および第3の発光部を含む発光部と、 前記アノード用電極ランドおよび前記カソード用電極ランドに接続して並列に設けられた3本以上の配線と、を備え、 前記3本以上の配線は、第1の配線、第2の配線および第3の配線を含み、 前記第1の発光部は、前記第1の配線上で直列に接続されるLED素子を含み、 前記第2の発光部は、前記第2の配線上で直列に接続されるLED素子を含み、 前記第3の発光部は、前記第3の配線上で直列に接続されるLED素子を含み、 前記第1の発光部、前記第2の発光部および前記第3の発光部は、それぞれ異なる色温度の光を発し、 前記3本以上の配線の内、少なくとも前記第1の配線および前記第2の配線は前記発光部の外側に配置された固定抵抗を有し、 前記第1の配線に配置された固定抵抗の抵抗値は、前記第2の配線に配置された固定抵抗の抵抗値と同じか、または小さい値であり、 前記3本以上の配線の内、少なくとも前記第1の配線、前記第2の配線および前記第3の配線は、それぞれ異なる順電流-順電圧特性を有し、それぞれ前記第1の発光部、前記第2の発光部および前記第3の発光部に接続され、 前記発光部全体の発する光の色温度を調整可能であり、 前記第1の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N1、前記第2の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N2、前記第3の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N3は全て異なり、前記N1、前記N2、および前記N3の値は、N1:N2:N3=(n-2):(n-1):n(3≦n≦8)を満たし、 前記発光部全体の発する光の色温度は、印加電流が大きくなるに従い、低色温度から高色温度に向かって、色度座標上において黒体軌跡に沿った曲線で変化することを特徴とする、 発光装置。」(以下「本願発明」という。) 3 引用文献の記載及び引用発明 (1)当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた、国際公開第2011/004796号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ)。 (ア)「技術分野 [0001] 本発明は、白色光の色温度を良好に制御することができる発光装置に関するものである。」 (イ)「[0017] 本実施形態に係る発光装置1は、図1に示すように、電源2と、第1のLED素子321及び第2のLED素子322を具備するLEDパッケージ3と、これらのLED素子321、322それぞれに接続された可変抵抗41、42と、制御装置5と、を備えたものである。 [0018] 以下に各部を詳述する。 電源2は、その電圧が第1のLED素子321及び第2のLED素子322の降下電圧より大きいものである。 [0019] LEDパッケージ3は、図2及び図3に示すように、上端面311に開口する凹部312を有した基体31と、凹部312の底面313に実装された第1のLED素子321及び第2のLED素子322と、これらLED素子321、322を封止する透光性部材34と、蛍光体を含有する波長変換部材35と、を備えたものである。 [0020] 基体31は、上端面311に開口する凹部312を有するものであり、例えば、アルミナや窒化アルミニウム等の熱伝導率が高い絶縁材料を成型してなるものである。 [0021] このような基体31は、その凹部312の底面313に後述するLED素子3を実装するものであるが、当該底面313には、LED素子3が電気的に接続されるための配線導体(図示しない。)が形成されている。この配線導体が基体31内部に形成された配線層(図示しない。)を介して発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続されることにより、LED素子3と外部電気回路基板とが電気的に接続される。 (・・・途中省略・・・) [0024] 第1のLED素子321及び第2のLED素子322は、互いに異なる放射ピークを有するものであり、例えば、395nmに放射ピークを有するLED素子と410nmに放射ピークを有するLED素子とを組み合わせて使用したり、365nmに放射ピークを有するLED素子と405nmに放射ピークを有するLED素子とを組み合わせて使用したりする。本実施形態では各LED素子321、322とも3個ずつ使用して、同一基体31の凹部312底面313上に交互(互い違い)に配置してある。 (・・・途中省略・・・) [0029] 可変抵抗41、42は、3つの端子を有し、両端の端子間の抵抗は一定で、軸を回すことにより、中央の端子と両端の端子間の抵抗値が変わるように構成してあるものであり、これにより、LED素子321、322に流れる電流量I_(1)、I_(2)を可逆的に調節するものである。」 (ウ)「[0034] 次に発光装置1を用いてLEDパッケージ3が発する白色光の色温度及び光量を調節する方法を図4のフローチャートを参照して説明する。 [0035] まず、オペレータがダイヤルを回すことにより所定の色温度値を有する色温度データを入力し(ステップS1)、当該色温度データを色温度受付部51が受け付ける(ステップS2)。 [0036] 同様に、オペレータがダイヤルを回すことにより所定の光量値を有する光量データを入力し(ステップS3)、当該光量データを光量受付部52が受け付ける(ステップS4)。 [0037] 電流制御部53は、色温度受付部51から色温度データを、光量受付部52から光量データを、それぞれ取得して、当該色温度データ及び光量データに基づき、所定の演算処理を行うことにより、各LED素子321、322に流れる電流値の比I_(1):I_(2)と、各LED素子321、322に流れる電流の総流量値I_(1)+I_(2)を算出し、更にこれより各可変抵抗41、42の抵抗値V_(1)、V_(2)を算出し、当該抵抗値V_(1)、V_(2)を有する制御信号を生成し、各可変抵抗41、42に出力する(ステップS5)。 [0038] 各可変抵抗41、42は制御信号を受信し、その抵抗値V_(1)、V_(2)を制御信号に従い変更する(ステップS6)。 [0039] 各可変抵抗41、42の抵抗値V_(1)、V2が変更されると、各LED素子321、322に流れる電流値I_(1)、I_(2)が変動し、各LED素子321、322が発する光量値が変動する(ステップS7)。 [0040] この結果、LEDパッケージ3が発する白色光の色温度及び光量が制御される。 [0041] このような実施形態に係る発光装置1であれば、同一基体31に実装された2種類のLED素子321、322から発せられた異なる波長の紫外線又は短波長の可視光線が、同一の波長変換部材35で変換されるので、色温度の異なる2種類の白色光が同一パッケージ3内で良好に混ざり合って、黒体軌跡又はこの近傍に沿って色温度が変化しうる自然な白色光を得ることができる。」 (エ)「[0044] なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。 (・・・途中省略・・・) [0048] LEDパッケージ3に用いられるLED素子は2種類に限定されず、3種類以上であってもよく、また、各種類のLED素子の設置数は、それぞれ、1個ずつであっても、2個以上ずつであってもよい。 [0049] また、同種のLED素子同士は、互いに直列に接続されていなくともよく、例えば、並列に接続されていてもよく、直列と並列とが併用されていてもよい。」 (2)引用発明 上記(1)によれば、引用文献には、下記発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基体31は、その凹部312の底面313にLED素子3を実装するものであって、当該底面313には、LED素子3が電気的に接続されるための配線導体が形成され、この配線導体が基体31内部に形成された配線層を介して発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続されることにより、LED素子3と外部電気回路基板とが電気的に接続され([0021])、 電源2と、第1のLED素子321及び第2のLED素子322を具備するLEDパッケージ3と、これらのLED素子321、322それぞれに接続された可変抵抗41、42と、制御装置5と、を備え([0017])、 前記LEDパッケージ3に用いられるLED素子は3種類であって([0048])、 前記3種類のLED素子は、互いに異なる放射ピークを有するものであり、前記各LED素子とも3個ずつ使用して、同一基体31の凹部312底面313上に配置し([0024])、 同一基体31に実装された3種類のLED素子から発せられた異なる波長の紫外線又は短波長の可視光線が、同一の波長変換部材35で変換されるので、色温度の異なる3種類の白色光を得ることができ([0041])、 前記3種類のLED素子を具備するLEDパッケージ3と、これらのうち前記第1のLED素子321及び第2のLED素子322それぞれに接続された可変抵抗41、42を備えたものであり([0017])、 前記可変抵抗41、42は、3つの端子を有し、両端の端子間の抵抗は一定で、軸を回すことにより、中央の端子と両端の端子間の抵抗値が変わるように構成してあるものであり([0029])、 電流制御部53は、色温度受付部51から色温度データを、光量受付部52から光量データを、それぞれ取得して、当該色温度データ及び光量データに基づき、所定の演算処理を行うことにより、各LED素子321、322に流れる電流値の比I_(1):I_(2)と、各LED素子321、322に流れる電流の総流量値I_(1)+I_(2)を算出し、更にこれより各可変抵抗41、42の抵抗値V_(1)、V_(2)を算出し、当該抵抗値V_(1)、V_(2)を有する制御信号を生成し、各可変抵抗41、42に出力し([0037])、 前記LEDパッケージ3が発する白色光の色温度及び光量が制御され([0040])、 前記LEDパッケージ3に用いられる各種類のLED素子の設置数は、それぞれ、1個ずつであっても、2個以上ずつであってよく([0048])、 同種のLED素子同士は、互いに直列に接続され([0049])、 色温度の異なる3種類の白色光が同一パッケージ3内で良好に混ざり合って、黒体軌跡に沿って色温度が変化しうる自然な白色光を得ることができる([0041])、 発光装置1([0017])。」 4 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「配線導体」は「LED素子3が電気的に接続されるための配線導体が形成され、この配線導体が基体31内部に形成された配線層を介して発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続されることにより、LED素子3と外部電気回路基板とが電気的に接続」されるものであるから、当該「発光装置1の外表面に導出されて外部電気回路基板に接続される」箇所は、本願発明の「アノード用電極ランド」及び「カソード用電極ランド」に相当する。 (イ)引用発明の「LEDパッケージ3」は「第1のLED素子321及び第2のLED素子322を具備」し、「LEDパッケージ3に用いられるLED素子は3種類以上であってもよ」いものであるから、当該「LEDパッケージ3」の「第1のLED素子321」の箇所、「第2のLED素子322」の箇所、及び、3種類目のLED素子の箇所は、本願発明の「少なくとも第1の発光部、第2の発光部および第3の発光部を含む発光部」に相当する。 (ウ)引用発明の「LEDパッケージ3」は、「用いられるLED素子は3種類以上であってもよく、また、各種類のLED素子の設置数は、それぞれ、1個ずつであっても、2個以上ずつであってよく」「同種のLED素子同士は、互いに直列に接続され」るから、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「配線導体」は並列に設けられた3本以上の配線であるということができる。 したがって、引用発明の「LEDパッケージ3」は、「用いられるLED素子は3種類以上であってもよく、また、各種類のLED素子の設置数は、それぞれ、1個ずつであっても、2個以上ずつであってよく」「同種のLED素子同士は、互いに直列に接続され」る「配線導体」は、本願発明の「前記アノード用電極ランドおよび前記カソード用電極ランドに接続して並列に設けられた3本以上の配線と、を備え、前記3本以上の配線は、第1の配線、第2の配線および第3の配線を含」む「配線」に相当する。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)を踏まえると、引用発明の「LEDパッケージ3」の「第1のLED素子321」の箇所、「第2のLED素子322」の箇所、及び、3種類目のLED素子の箇所は、それぞれ「配線導体」上で「互いに直列に接続され」る「2個以上ずつ」のLED素子を含むといえるから、本願発明の「前記第1の発光部は、前記第1の配線上で直列に接続されるLED素子を含み、前記第2の発光部は、前記第2の配線上で直列に接続されるLED素子を含み、前記第3の発光部は、前記第3の配線上で直列に接続されるLED素子を含」むことに相当する。 (オ)引用発明の「同一基体31に実装された2種類のLED素子321、322から発せられた異なる波長の紫外線又は短波長の可視光線が、同一の波長変換部材35で変換されるので、色温度の異なる2種類の白色光を得ることができ」る点、及び、上記(ア)ないし(エ)を踏まえると、引用発明の「LEDパッケージ3」の「第1のLED素子321」の箇所、「第2のLED素子322」の箇所、及び、3種類目のLED素子の箇所により、色温度の異なる3種類の白色光を得ることができると解されるから、本願発明の「前記第1の発光部、前記第2の発光部および前記第3の発光部は、それぞれ異なる色温度の光を発」することに相当する。 (カ)引用発明の「可変抵抗41、42」は「第1のLED素子321及び第2のLED素子322を具備するLEDパッケージ3と、これらのLED素子321、322それぞれに接続された」ものであるから、「LEDパッケージ3」の「第1のLED素子321」の箇所、「第2のLED素子322」の箇所、及び、3種類目のLED素子の箇所の外に配置されたものであるということができるから、本願発明の「前記3本以上の配線の内、少なくとも前記第1の配線および前記第2の配線は前記発光部の外側に配置された固定抵抗を有」する点と、「前記3本以上の配線の内、少なくとも前記第1の配線および前記第2の配線は前記発光部の外側に配置された抵抗を有」する点で一致する。 (キ)引用発明の「可変抵抗41、42」は「両端の端子間の抵抗は一定で、軸を回すことにより、中央の端子と両端の端子間の抵抗値が変わるように構成してあるものであ」るから、「可変抵抗41、42」の抵抗値と同じ場合と、一方が他方より小さい値場合があるということができ、本願発明の「前記第1の配線に配置された固定抵抗の抵抗値は、前記第2の配線に配置された固定抵抗の抵抗値と同じか、または小さい値であ」ることと、「前記第1の配線に配置された抵抗の抵抗値は、前記第2の配線に配置された抵抗の抵抗値と同じか、または小さい値であ」ることの点で一致する。 (ク)引用発明の「各LED素子321、322に流れる電流値の比I_(1):I_(2)と、各LED素子321、322に流れる電流の総流量値I_(1)+I_(2)」は、「電流制御部53」が、「色温度受付部51から色温度データを、光量受付部52から光量データを、それぞれ取得して、当該色温度データ及び光量データに基づき、所定の演算処理を行うことにより、各LED素子321、322に流れる電流値の比I_(1):I_(2)と、各LED素子321、322に流れる電流の総流量値I_(1)+I_(2)を算出し、更にこれより各可変抵抗41、42の抵抗値V_(1)、V_(2)を算出し、当該抵抗値V_(1)、V_(2)を有する制御信号を生成し、各可変抵抗41、42に出力」するものであるから、「LEDパッケージ3」の「第1のLED素子321」の「配線導体」、「第2のLED素子322」の「配線導体」、及び、3種類目のLED素子の「配線導体」の順電流-順電圧特性はそれぞれ異なるということができ、本願発明の「前記3本以上の配線の内、少なくとも前記第1の配線、前記第2の配線および前記第3の配線は、それぞれ異なる順電流-順電圧特性を有し、それぞれ前記第1の発光部、前記第2の発光部および前記第3の発光部に接続され」ることに相当する。 (ケ)引用発明の「LEDパッケージ3」の「発する白色光の色温度及び光量が制御される」ことは、本願発明の「前記発光部全体の発する光の色温度を調整可能であ」ることに相当する。 (コ)引用発明の「発光装置1」は、「色温度の異なる2種類の白色光が同一パッケージ3内で良好に混ざり合って、黒体軌跡に沿って色温度が変化しうる自然な白色光を得ることができる」ところ、3種類目のLED素子も同様であるから、本願発明の「前記発光部全体の発する光の色温度は、印加電流が大きくなるに従い、低色温度から高色温度に向かって、色度座標上において黒体軌跡に沿った曲線で変化する」ことと、「前記発光部全体の発する光の色温度は、印加電流が大きくなるに従い、低色温度から高色温度に向かって、黒体軌跡に沿った曲線で変化する」ことの点で一致する。 (サ)引用発明の「発光装置1」は、本願発明の「発光装置」に相当する。 (シ)以上(ア)ないし(サ)によれば、本願発明と引用発明とは、下記各点で相違し、その余の点で一致する。 〔相違点1〕 抵抗が、本願発明では「固定抵抗」であるのに対して、引用発明は「可変抵抗」である点。 〔相違点2〕 本願発明は、「前記第1の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N1、前記第2の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N2、前記第3の発光部に含まれる前記LED素子の直列個数N3は全て異なり、前記N1、前記N2、および前記N3の値は、N1:N2:N3=(n-2):(n-1):n(3≦n≦8)を満た」すのに対して、引用発明は、このように特定されない点。 〔相違点3〕 発光部全体の発する光の色温度が、低色温度から高色温度に向かって、黒体軌跡に沿った曲線で変化する際に、本願発明は、「色度座標上において」黒体軌跡に沿った曲線で変化するのに対して、引用発明は、このように特定されない点。 (2)判断 ア 相違点1について 引用発明は、「電流制御部53」が「色温度データ及び光量データ」に基づく制御を行うために各可変抵抗41、42を制御することで各LED素子321、322に流れる電流値の比I_(1):I_(2)及び電流の総流量値I_(1)+I_(2)の両方を制御するものであるところ、電流の総流量値I_(1)+I_(2)のみで制御する場合は各可変抵抗41、42を特定の電流比の固定抵抗としてよく、引用発明において、可変抵抗41、42を特定の電流比の固定抵抗とすることに格別の困難性は認められない。 イ 相違点2について 引用発明の「LEDパッケージ3に用いられるLED素子」の「各種類のLED素子の設置数は、それぞれ、1個ずつであっても、2個以上ずつであってよ」いから、適宜の数であってよいといえる。 したがって、引用発明において、「LEDパッケージ3に用いられるLED素子」の「各種類のLED素子の設置数」を適宜の「全て異なる」数とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 また、当業者が、3つの発光部のLED素子の設置数を全て異なる数とする事項を実施するに際して、単に1つ違い(例えば、1:2:3、2:3:4等)として「N1:N2:N3=(n-2):(n-1):n(3≦n)」とすることは、容易に想到し得たことにすぎない。 そして、その数の上限を適宜の個数まで(n≦8)とすることも設計的事項にすぎない。 ウ 相違点3について 発光部全体の発する光の色温度が、低色温度から高色温度に向かって、黒体軌跡に沿った曲線で変化する際に、どのような座標上において黒体軌跡に沿った曲線で変化するかは、当業者が適宜選択し得ることであるところ、発光部全体の発する光の色温度が変化するものであるから、「色度座標上において」黒体軌跡に沿った曲線で変化する構成となすことに格別の困難性は認められない。 エ 本願発明の奏する効果について 本願発明において、上記相違点1ないし3の構成となすことにより奏される効果も予測し得た程度のことにすぎない。 オ 小括 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、令和元年11月15日に提出した意見書の「【意見の内容】」の「(2) 特許法第29条第2項」の文末において、 「引用文献1には、発光素子部に含まれるLEDの数については、第1LEDの数として12個(引用文献1の段落[0026])、8個(引用文献1の段落[0091])、第2LEDの数として6個(引用文献1の段落[0037])、8個(引用文献1の段落[0091])が記載されているのみです。 したがって、『前記N1、前記N2、および前記N3の値は、N1:N2:N3=(n-2):(n-1):n(3≦n≦8)を満たし、』との規定を含む補正後の請求項1に係る本願発明は、引用文献1に何ら開示、教示、示唆されたものではありません。 以上のように、たとえ当業者であっても引用文献1の記載から本願発明を到底容易には想到し得るものではなく、補正後の本願発明は引用文献1に対し進歩性を有するものであって、特許法第29条第2項の規定に該当するものではないと思量致します。」と主張する。 イ しかしながら、当審拒絶理由における引用文献(国際公開第2011/004796号)には、段落[0091]はなく、また、段落[0026]、[0037]にも上記アに摘記したような、請求人の指摘した事項は記載されていない(請求人の言う「引用文献1」は、原査定の引用文献1(特開2015-35598号公報)と思われる。)。 したがって、請求人の上記意見書における主張は、引用文献の記載に基づくものとはいえず、採用できない。 また、たとえ、請求人の主張が、当審拒絶理由における引用文献(国際公開第2011/004796号)に基づくものであっても、上記「(2)」「イ」で検討したとおりであるから採用できない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-12-02 |
結審通知日 | 2019-12-03 |
審決日 | 2019-12-16 |
出願番号 | 特願2017-506021(P2017-506021) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 松川 直樹 |
発明の名称 | 発光装置 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |