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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1359469
審判番号 不服2017-18304  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-08 
確定日 2020-02-05 
事件の表示 特願2015-533259「天然に存在するCpGオリゴヌクレオチド組成物およびその治療的適用」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月27日国際公開、WO2014/047588、平成27年12月17日国内公表、特表2015-535829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年9月23日(パリ条約による優先権主張 2012年9月21日 (US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成28年 3月10日付け:拒絶理由通知書
平成28年 9月15日 :意見書、手続補正書
平成28年11月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年 5月30日 :意見書、手続補正書
平成29年 8月 3日付け:拒絶査定
平成29年12月 8日 :審判請求書、手続補正書
平成30年10月26日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月26日 :意見書、手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成31年4月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1、4及び5は次のとおりのものである。

「【請求項1】
経口投与のために製剤化された組成物であって、前記組成物が、
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、および
(b)天然に存在する免疫刺激性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、を含み、
粘膜投与のために製剤化され、投与の後1分以上で完全に溶解するように製剤化された組成物。」

「【請求項4】
免疫疾患、肝障害、癌、またはライム病または他のダニ媒介性疾患を処置する方法において使用するための請求項1から請求項3のいずれか1項記載の組成物であって、任意に、前記可溶化液もしくは前記細胞壁抽出物、および前記ODNが有効な量で存在する、組成物。」

「【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、ここで
(a)前記免疫疾患は、慢性炎症性疾患および障害を含むTリンパ球関連障害であり、前記慢性炎症性疾患および障害は、クローン病、反応性関節炎を含み、前記反応性関節炎は、ライム病、インスリン依存型糖尿病、臓器特異的自己免疫を含み、前記臓器特異的自己免疫は、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、およびグレーブス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態を含み、前記アトピー性状態は、喘息、およびアレルギー、例えば、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある特定の病原体感受性を含み、前記ある特定の病原体感受性は、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)感染、HIVを含む特定のウイルス感染、ならびに結核およびらい腫性ハンセン病を含む細菌感染であるか:または
(b)感染、医原性障害、遺伝性障害、自己免疫障害、胆汁うっ滞性症候群、サルコイドーシス、臓器移植、肝癌などに起因する肝障害である、
組成物。」

したがって、請求項1を引用する請求項4を、更に引用する請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項5】
免疫疾患、肝障害、癌、またはライム病または他のダニ媒介性疾患を処置する方法において使用するための、
経口投与のために製剤化された組成物であって、前記組成物が、
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、および
(b)天然に存在する免疫刺激性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、を含み、
粘膜投与のために製剤化され、投与の後1分以上で完全に溶解するように製剤化された組成物であって、
任意に、前記可溶化液もしくは前記細胞壁抽出物、および前記ODNが有効な量で存在する、組成物であって、ここで
(a)前記免疫疾患は、慢性炎症性疾患および障害を含むTリンパ球関連障害であり、前記慢性炎症性疾患および障害は、クローン病、反応性関節炎を含み、前記反応性関節炎は、ライム病、インスリン依存型糖尿病、臓器特異的自己免疫を含み、前記臓器特異的自己免疫は、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、およびグレーブス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態を含み、前記アトピー性状態は、喘息、およびアレルギー、例えば、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある特定の病原体感受性を含み、前記ある特定の病原体感受性は、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)感染、HIVを含む特定のウイルス感染、ならびに結核およびらい腫性ハンセン病を含む細菌感染であるか:または
(b)感染、医原性障害、遺伝性障害、自己免疫障害、胆汁うっ滞性症候群、サルコイドーシス、臓器移植、肝癌などに起因する肝障害である、
組成物。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月26日付けで当審が通知した拒絶の理由は、本願発明は、出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。

第4 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審で付したものがある。)

「【発明の背景】
【0004】
発明の分野。ここで開示および教示された本発明は、一般的に、哺乳類、特にヒトにおいて障害を処置する組合せおよび方法に関する。特に、この発明は、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよびグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用する、肝障害およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置のための併用治療および処置レジメンを提供する。
【0005】
関連分野の記載
哺乳類における肝障害およびいくつかの他のウイルス性障害を処置する従来の手法は、ウイルス自体を治療、例えば、ウイルス特異的化学療法剤の標的とすることである。そのような障害を処置する代替手法は、ウイルス自体を標的とする代わりに、またはそれに加えて、対象の免疫系を標的とすることである(「免疫治療」)。免疫治療の潜在的利益は、正常な健康細胞に対する有害効果を最小限にしながら、腫瘍に対する患者自身の免疫応答を増強することにより有効性の向上を実現することである。
【0006】
細菌DNAは、B細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化する免疫刺激効果を有する[Tokunaga,T.ら、1988.Jpn.J.Cancer Res.79:682?686;…に概説されている]。細菌DNAの免疫刺激効果は、特定の塩基構成(CpGモチーフ)の非メチル化CpGジヌクレオチドの存在の結果であり、それは、細菌DNAにおいて一般的であるが、脊椎動物DNAにおいてはメチル化され、少なく見積もられる[Kriegら、Nature、374巻、546?549ページ(1995);Krieg、Biochim.Biophys.Acta、93321:1?10(1999)]。細菌DNAの免疫刺激効果は、これらのCpGモチーフを含有する合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(以下、「CpG ODN」または「免疫刺激性ODN」と交換可能に呼ばれる)で模倣することができる。そのようなCpG ODNは、B細胞増殖、サイトカインおよび免疫グロブリン分泌、ナチュラルキラー(NK)細胞溶解活性、IFN-γ分泌、ならびに同時刺激分子を発現し、かつサイトカイン、特にTh1様T細胞応答の発生を促進することにおいて重要であるTh1様サイトカインを分泌する樹状細胞(DC)および他の抗原提示細胞の活性化を誘導する、いくつかの哺乳類生物学的機能に対して高い刺激効果を生じることが示されている。天然のホスホジエステル主鎖CpG ODNの免疫刺激効果は、CpGモチーフがメチル化され、GpCへ変わり、または別なふうに除去され、もしくは変化した場合には、その効果が劇的に低下する点において、高度にCpG特異的である[Kriegら、Nature、374巻、546?549ページ(1995);Hartmannら、1999 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96巻、9305?9310ページ(1999)参照]。
【0007】
免疫刺激効果が、プリン-プリン-CpG-ピリミジン-ピリミジン配列の構成のCpGモチーフを必要とすることは以前に考えられていた[Kriegら、Nature、374巻、546?549ページ(1995);…]。しかしながら、マウスリンパ球が、この構成ではないホスホジエステルCpGモチーフに十分よく応答すること[Yiら、J.Immunol.160巻、5898?5906ページ(1998)]、および同じことがヒトB細胞および樹状細胞についてもいえること[Hartmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96、9305?10ページ(1999)]が現在、明らかである。
【0008】
1つのクラスのGpG ODNは、B細胞を活性化するのに強力であるが、IFN-αおよびNK細胞活性化を誘導することにおいては比較的弱く、このクラスはBクラスと名付けられている。BクラスCpGオリゴヌクレオチドは、典型的には、完全に安定化されており、ある特定の好ましい塩基構成内に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。例えば、米国特許第6,194,388号;第6,214,806号;第6,239,116号;および第6,339,068号を参照。
【0009】
T細胞媒介性肝損傷は、肝臓疾患、例えば、自己免疫性肝炎、ウイルス性肝炎、および急性肝不全の病気の発生において鍵となる役割を果たすこともまた示されている[Becker,Y.、Virus Genes、30巻(2)、251?266ページ(2005)]。トール様受容体(TLR)9についてのリガンドである、CpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫学的アジュバントとして広く使用されており、いくつかのグループは、肝炎および他の疾患のマウスモデルにおいてCpG ODNのT細胞媒介性肝臓傷害への効果の研究の結果を報告している。炎症細胞の活性化が、CpG ODN前処置により減弱され得ることもまた示されている。これらの結果は、CpG ODN前処置が、肝細胞アポトーシス、リンパ球の炎症および活性化を阻害することにより肝臓傷害から保護することを示唆した[Zhang,H.ら、Int.Immunopharmacol.、10巻(1)、79?85ページ(2010)]。
【0010】
CpG ODNの治療的応答を誘導するための個々の使用は、患者におけるいくつかの障害の処置においてかなり有望であるが、そのような障害をそのような免疫治療的手法で処置する新規な治療を開発する必要性が残されている。
【0011】
ここで開示および教示された本発明は、肝障害、癌、ライム病、および/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置のための治療および処置レジメン、加えて、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよびグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用するそのような処置方法のための組成物を対象とする。」

「【発明の概要】
【0012】
天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよび少なくとも1種類のグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用する、肝障害、癌、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)障害、加えて癌障害を含む免疫疾患および障害の処置のための併用治療および処置レジメンを使用するための系に関係した、本発明の、上記の目的ならびに他の利点および特徴は、ここで、ならびに関連した付属書類および図面に示されているように、本出願に組み入れられている。
【0013】
本開示の第1の態様によれば、そのような処置を必要としている患者において1つ以上の障害を処置または防止する方法であって、(a)治療的有効量の1つ以上のグラム陽性細菌可溶化液と組み合わせて、治療的有効量の1つ以上の天然に存在するCpG OGNを患者へ、同時に、準同時的に、別々に、または逐次的に、投与することを含む治療的レジメン、および任意に、(b)維持用量のCpG OGN、グラム陽性細菌可溶化液、またはその組合せを含む維持レジメンを患者へ投与することを含む、方法が記載されている。例示的態様において、CpG ODNは、本開示のある特定の側面によればグラム陽性細菌可溶化液に由来する、天然に存在するCpG ODNである。本開示のさらなる側面において、治療的レジメンは、治療的有効量の、合成CpG ODN、または細菌可溶化液とは別の供給源由来のCpG ODNをさらに含んでもよい。
【0014】
本開示のさらなる態様によれば、そのような処置を必要としている患者において1つ以上の障害を処置または防止することに使用する組成物であって、治療的有効量の細菌細胞壁可溶化液または画分、および治療的有効量の天然に存在するCpG ODNを含む、組成物が記載されている。
【0015】
本開示のさらに別の態様において、対象における肝障害の処置のための、対象の粘膜を通しての治療剤の送達のための組成物であって、(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩;および(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含み、細胞壁可溶化液およびODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物が記載されている。この態様の側面によれば、組成物は栄養補助食品である。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、1つ以上の肝障害を患っている対象において肝障害の合併症の処置のための組成物であって、治療的有効量の、1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つのトール様受容体(TLR)9アゴニストを含み、グラム陽性細菌が、ラクトバチルス科の細菌から選択される、組成物が記載されている。この態様の側面によれば、TLR9アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である。さらにこの態様の側面によれば、CpG ODNは細菌可溶化液内に天然に存在している。
【0017】
本開示の別の態様において、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導する方法であって、腫瘍を有する対象を選択すること、ならびに(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩;および(b)天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含む治療的有効量の組成物を対象に投与し、それにより、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導することを含む、方法が記載されている。この態様の選択された側面によれば、天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、細菌可溶化液に由来している。」

「【0021】
定義 以下の定義は、本発明の詳細な説明を理解することにおいて当業者を助けるために、提供される。ここで他に定義がない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味をもつものとする。…
【0023】
ここで使用される場合、用語「CpGモチーフ」は、リン酸結合またはホスホジエステル主鎖によって連結された非メチル化シトシン-グアニンジヌクレオチド(すなわち、シトシン(C)、続いてグアニン(G))を含有するヌクレオチド配列を意味する。これらのモチーフはまた、同等に「非メチル化シトシン-ホスフェート-グアニンジヌクレオチド」とも呼ばれ、生物学的応答、例えば、免疫応答を活性化する。
【0024】
ここで使用される場合、用語「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」(以下、「CpG ODN」と呼ばれる)は、上記のCpGモチーフの少なくとも2個を含むオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を意味する。そのようなCpG ODNは、必要に応じて、クラス-A(D型)、クラス-B(K型)、クラス-C、クラスP、またはクラスSであってもよい。

【0039】
ここで使用される場合、「処置すること」または「処置」は、関心対象となる疾患または状態を有する哺乳類、好ましくはヒトにおける、関心対象となる疾患または状態、例えば、組織傷害の処置、加えて、疾患または障害についての予防的または抑制的措置を網羅し、それは、(i)哺乳類において、特に、そのような哺乳類が、その状態に罹りやすいが、それを有するとはまだ診断されていない場合に、疾患もしくは状態が起きるのを防止すること、(ii)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわちそれの発生を停止させること、(iii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち、疾患もしくは障害の退行を引き起こすこと、または(iv)疾患もしくは障害に起因する症状を軽減することを含む。したがって、例えば、用語「処置」は、疾患または障害の発症前、または発症後に作用物質を投与し、それにより、疾患または障害の全ての徴候を防止または除去することを含む。別の例として、疾患の臨床所見後の疾患の症状と戦うための作用物質の投与は、疾患の「処置」を構成する。さらに、発症後および臨床症状が発生した後の作用物質の投与であって、投与が疾患または障害の臨床パラメータ、例えば、組織傷害の程度または疾患の寛解に影響する、投与は、疾患の「処置」を構成する。

【0062】
ここで使用される場合、細胞懸濁液に関しての用語「溶解させること」は、細胞壁および/または細胞膜、細胞構成要素、細胞の少なくとも一部のオルガネラを破裂させ、その結果、その内容物の少なくとも一部、例えば、細胞の生物学的分子が放出されることを指す。本発明の方法のある特定の態様において、生物学的材料の少なくとも一部が溶解して、可溶化液を形成する。操作のいかなる特定の理論に縛られるつもりはないが、生物学的試料は、圧力、および熱もしくはキャビテーションのいずれかまたはその2つの組合せと共に適切な溶媒環境の組合せにより生じる物理化学的力により溶解する。溶解で放出される生物学的分子には、核酸、糖質、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、DNA(ssDNA、dsDNA、およびmsDNA(マルチコピー一本鎖DNA))、RNA(ssRNAを含む)、複合糖(オリゴ糖)、ペプチドグリカン、およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。生物学的試料は、典型的には水性であり、水性とは、それらが、それらを液体状態にさせるのに有効量の水分子を含有することを意味する。
【0063】
ここで使用される場合、用語「溶解」は、(例えば、酵素または他の適切な材料を使用する消化による)細胞膜または細胞壁の破裂、および細胞質の細胞からの放出を指す。ここで使用される場合、用語「可溶化液」は、溶解の破壊的過程によって生じる材料、具体的には、溶解した細胞片(例えば、破裂した細胞壁および/または細胞膜)およびDNAを含む液化相を指す。
【0064】
ここで使用される場合、用語「可溶化液」は、生物学的材料を溶解させることの生成物、例えば、上記で列挙されているような放出される生物学的分子を指す。たいていの可溶化液は生物学的試料液中に容易に溶けるが、ある特定の可溶化液部分、例えば、疎水性構成要素は、可溶化液の少なくとも一部が可溶化されるのを保証するために追加の工程を必要とする場合がある。可溶化液の可溶化を保証するための追加の工程の例には、適切な界面活性剤(または脱水剤)、例えば、典型的には緩衝液中に含まれるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。可溶化液の可溶化はまた、激しい混合、剪断、界面活性剤中の加熱、キャビテーション、ビーズでのビーティング、煮沸、脱泡、またはそれらの組合せを使用して補助されてもよい。」

「【発明の詳細な説明】
【0070】

【0071】
出願人は、1種類以上のグラム陽性細菌に由来した治療剤(例えば、グラム陽性細菌の細胞壁画分)および天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドを使用する、肝障害、ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV)、癌、およびライム病を含む免疫障害の処置のための併用治療および処置レジメンを生み出している。本開示の組成物により、および関連した方法を使用して、処置され得る例示的な免疫障害には、限定されるわけではないが、慢性炎症性疾患および障害、例えば、クローン病、ライム病を含む反応性関節炎を含むTリンパ球関連障害、インスリン依存型糖尿病、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、およびグレーブス病を含む臓器特異的自己免疫、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態、例えば、喘息、およびアレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む消化管アレルギーを含むアレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある特定の病原体感受性、例えば、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)感染、ならびにHIVを含む特定のウイルス感染、ならびに結核およびらい腫性ハンセン病を含む細菌感染が挙げられる。

【0075】
本発明による好ましい第1の生物学的治療活性物質は、以下からなる群から選択されるグラム陽性細菌の可溶化液または細胞壁抽出物である:ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、…、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)、…、加えて、それらの機能的に等価の変種。これらの混合物の一部は凍結乾燥した形で市販されている。
【0076】
第2の生物学的活性治療剤は、天然に存在するCpG ODNである。天然に存在するCpG ODNは、第1の生物学的活性治療剤が得られる同じ細菌または細菌可溶化液から得られることが、必要ではないが、好ましい。CpG ODNは、任意のCpGモチーフであってもよく、そのCpGモチーフには、必要に応じて、クラス-A(D型)、クラス-B(K型)、クラス-C、クラスP、もしくはクラスS、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。第2の生物学的活性治療剤は、単一のCpG ODNまたは2つ以上のCpG ODNの組合せであってもよく、その組合せには、天然に存在する、および合成のCpG ODNの組合せであって、唯一の条件が、2つ以上のCpG ODNのうちの少なくとも1つが天然に存在することである、組合せが挙げられる。本発明は、幅広い範囲の用量における、治療用量の、または治療用量と維持用量の両方のCpG ODN構成要素の投与をさらに企図する。本組成物のCpG ODN構成要素の例示的な治療および/または維持用量には、1日あたり1回から最高3回までの、約0.001mg/kgから約5.0mg/kgまで、好ましくは約0.001mg/kgから約2.5mg/kgまでの用量範囲が挙げられるが、それらに限定されない。本発明は、治療用量に加えて、維持レジメンの一部として、約0.001?約5.0mg/KgのCpG ODNの維持用量の投与を企図し、維持用量として使用されるそのようなCpG ODNが、必要に応じて、グラム陽性細菌の可溶化液内のCpG ODNと同じまたは同
じではないかのいずれかである。」

「【0099】
C.剤形
本発明の治療用組成物は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体剤形、例えば錠剤(例えば咀嚼錠、低速溶解錠、急速溶解錠)、丸剤、カプセル剤、トローチ、キャンディ、ガム、散剤、溶液剤、懸濁剤、エマルジョン、エアロゾル、または同種のものなどの形態をとっていてもよい。好ましくは、剤形は、チューインガム、急速溶解錠、キャンディ、またはトローチである。本開示のさらなる側面によれば、本組成物は、栄養補助食品、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、または他の経口送達製剤の形態である。

【0117】
2.錠剤
剤形が錠剤、例えば溶解錠(すなわち崩壊性錠剤)または咀嚼錠である場合、本発明の組成物は、ここで説明されるような1種類以上のグラム陽性細菌に由来した治療剤、またはその薬学的に許容される塩、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド、例えばCpG ODNモチーフもしくは等価体、任意の促進剤、担体、例えば結合剤、および緩衝系、例えば二成分または三成分の緩衝系などを含む。錠剤組成物は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および崩壊剤をさらに含んでいてもよい。典型的には、本発明の錠剤組成物は、重量で約0.001%から約10.0%まで、より典型的には約1.0%から約5.0%までの活性治療剤(どのような形態が選ばれたとしても、その遊離塩基の形態として測定される)を含む。当業者は、前述のパーセンテージは、利用される活性治療剤の特定の供給源、最終的な製剤で望まれる活性治療剤の量、加えて所望の活性治療剤の特定の放出速度に応じて変更されることを理解する。錠剤組成物の緩衝系は、少なくとも約8.0を超える、好ましくは少なくとも約9.5を超える、より好ましくは約pH9.9から約pH11までの範囲の最終的な唾液のpHをもたらす。
【0118】
ある特定の態様において、錠剤は、溶解錠、例えば咀嚼を必要とせずとも対象の唾液で溶解する低速溶解錠または急速溶解錠である。例えば対象の舌の上に置かれた溶解錠は、治療剤の口腔内送達に使用できる。あるいは、対象の舌下に置かれた溶解錠は、治療剤の舌下送達に使用できる。小さい子供や高齢の個体はある種のものを咀嚼するのが難しい場合がしばしばあることから、このタイプの剤形は小児および老齢の患者に特に望ましい場合がある。溶解錠は、典型的には投与後約1?約15分以内、好ましくは約2?約10分以内、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、または10分以内に溶解するように製剤化される。当業者は、急速溶解錠は低速溶解錠より速く溶解し、典型的には、低速溶解錠は、対象の唾液で迅速にというよりも徐々に溶解することを理解する。好ましい態様において、低速溶解錠または急速溶解錠は、約1分より長い期間にわたり舌下粘膜を通して治療剤を送達する。 」

「【0141】
D.投与方法
本発明の組成物は、例えば、肝臓の疾患または障害、例えば、A型、B型、および/またはC型肝炎を含む免疫疾患または障害の処置を、そのような処置を必要としている対象において行うための、治療的適用において有用である。本発明の方法は、様々な肝障害、特に、対象の補体系における代替経路との関連リンクによって特徴づけられる肝障害の処置において有用である。したがって、本開示によれば、肝障害は、肝臓または周囲脈管構造における任意の肝臓疾患または障害である。例えば、本発明の方法および組成物は、感染、医原性障害、遺伝性障害、自己免疫障害、胆汁うっ滞性症候群、サルコイドーシス、臓器移植、肝癌などに起因するものを含む、様々な肝障害の処置において有用である。
【0142】
本開示の範囲内の疾患または障害には、表1に詳述された疾患および障害が挙げられるが、それらに限定されない。
【表1-1】


【表1-2】

【0143】
本発明の組成物で防止され、寛解し、および/または処置され得る他の障害または疾患には、対象内の癌および腫瘍が挙げられる。ここで使用される場合、用語「癌」は、分化の喪失、成長速度の増加、周囲組織の浸潤を伴う特徴的な退形成を起こしており、転移する能力がある悪性新生物を指す。例えば、甲状腺癌は、甲状腺組織中に、またはそれから生じる悪性新生物であり、乳癌は、乳房組織中に、またはそれから生じる悪性新生物(例えば、乳管癌腫)である。残存癌は、甲状腺癌を縮小させ、または根絶するために対象に施された任意の型の処置後、対象に残存する癌である。転移性癌は、転移性癌が由来する最初の(原発性の)癌の起源の部位以外の身体における1つ以上の部位における癌である。癌には、固形腫瘍が挙げられるが、それらに限定されない。

【0146】
固形腫瘍、例えば、肉腫および癌腫の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、リンパ系腫瘍、膵臓癌、乳癌(基底乳癌腫、乳管癌腫、および小葉乳癌腫を含む)、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌腫、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、甲状腺髄様癌腫、甲状腺乳頭癌腫、褐色細胞腫、皮脂腺癌腫、乳頭部癌腫、乳頭腺癌、髄様癌腫、気管支原性肺癌腫、腎細胞癌腫、肝細胞腫、胆管癌腫、絨毛癌、ウイルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌腫、およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの例において、腫瘍は、メラノーマ、肺癌、リンパ腫、乳癌、または結腸癌である。

【0148】
本発明の組成物で処置可能であり得るさらに別の障害には、ライム病、ならびに、ネズミバベシア(Babesia microti)によって引き起こされる貧血、エーリキア症、野兎病(例えば、フランシセラ・ツラレンシス(Franciselia tularensis)によって引き起こされるもの)、およびリケッチア・リケッチイ(Rikettsia rickettsii)によって引き起こされる疾患を含む他のマダニ類感染症が挙げられる。
【0149】
本発明の関連内での特に好ましい障害は、慢性肝炎、特に、感染、特にウイルス感染に起因する肝炎である

【0152】
重要なことには、本発明の組成物は、唾液の開始時点のpHに関係なく、口腔粘膜を通しての本開示の活性治療剤組成物の迅速な送達を提供する。特に、口腔粘膜を通しての治療剤の送達は、肝臓の初回通過代謝、胃腸管内での分解、および吸収の際の治療剤の損失を回避する。結果として、治療剤は、伝統的な経口(例えば、錠剤)投与に関してより、実質的により短い期間で、かつ実質的により高い濃度で、体循環に達する。
【0153】
本発明の組成物は、ヒトおよび獣医学的治療学のエリアにおいて特別な有用性をもつ。一般的に、投与される投薬量は、数ピコモル?数マイクロモルの濃度の活性組成物を適切な部位へ送達するのに有効である。
【0154】
本発明の組成物の投与は、好ましくは、口腔の粘膜への認められた投与様式のいずれかによって行われ得る。口腔粘膜内の投与の適切な部位の例には、非限定的に、口腔底の粘膜(舌下粘膜)、頬(頬側粘膜)、歯肉(歯肉粘膜)、口蓋(口蓋粘膜)、唇の内層、およびそれらの組合せが挙げられる。これらの領域は、それらの解剖学的形態、薬物透過性、および薬物に対する生理的応答に関してお互いに異なる。好ましくは、本発明の組成物は、舌下粘膜、頬側粘膜、またはそれらの組合せに投与される。
【0155】
豊富な血液供給および適切な薬物透過性を有する口腔粘膜は、治療剤の全身性送達のための特に魅力的な投与経路である。さらに、口腔粘膜を通しての治療剤の送達は、肝臓の初回通過代謝を迂回し、胃腸管内での酵素的分解を回避し、かつ薬物吸収のためのより適切な酵素的細菌叢を提供する。ここで使用される場合、用語「舌下送達」は、口腔底および/または腹側舌を裏打ちする粘膜を通しての治療剤の投与を指す。ここで使用される場合、用語「頬側送達」は、頬を裏打ちする粘膜を通しての治療剤の投与を指す。

【0164】
理論によって限定または制限されることを望まないが、天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、結合能研究を通して示されているように、ヒト天然B細胞の抗原提示細胞機能、特に様々な肝臓ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)エピトープについてのその機能を増強する潜在能力を有すると考えられている。これらの結果は、ワクチン設計の開発のための新しいストラテジーを示唆し、かつそれを必要としている患者のためのより毒性の低い治療レジメンを提供することができる。」

「【0166】
[実施例]
例1:活性成分組成物調製
治療試験およびさらなる細胞系試験、例えば、スクリーニング試験および対象試験において適した、ここで記載されているような例示的な製剤を調製する。
【0167】
活性成分。活性成分は、グラム陽性細菌、例えば、上記のものである。例として、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(Bulgaricus)を使用し、Kerry Ingredients & Flavours(Beloit、WI)により実行されるような、および一般的に下記のような発酵および細胞単離プロセスを利用した。
【0168】
発酵。グラム陽性細菌、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスの細胞を、500Lの適切な培地中でおよそ120時間、発酵させた。
【0169】
細胞単離。500Lのブロスを遠心分離し、生じた細胞集団を脱イオン水で3回、洗浄した。これは、およそ60kgの湿った細胞集団を生じた。
【0170】
溶解および精製。湿った細胞集団を再構成し、pHを6.8?7.0に調整する。(ニワトリ卵白から抽出された)塩化リゾチームを添加し、500ppmの濃度の塩化リゾチームを含む溶液を作製した。スラリーを撹拌し、温度を40?50℃に24時間、維持する。溶解後、活性構成要素は液相中にあった。水溶性活性構成要素を含有するこの液体材料を、固体材料を除去する遠心分離によって回収し、その後、脱イオン水で3回、洗浄した。生じた混合物を、ペレットとして凍結させ、遠心機における残りの固体材料を廃棄した。
【0171】
製剤。凍結したペレットを凍結乾燥させて、乾性粉末を形成し、必要に応じて粉砕した。この材料を、促進剤、例えば、N-アセチルD-グルコサミンHCI(NAG)と混合して、溶解したラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスとNAGの混合物を形成した。任意に、必要に応じて、固形丸剤または散剤を作製するために、他の製剤賦形剤を添加した。その後、この生成物を、以下のスクリーニング試験に用いた。
【0172】
例2:TLRスクリーニング
TLR刺激を、所定のTLRまたはNLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより、試験した。試料の活性を、7個の異なるヒトTLR:TLR2、3、4、5、7、8、および9(Invivogen、San Diego、CA)、ならびに2つの異なるヒトNLR(NOD1およびNOD2)に関して試験した。各リガンドを、TLRまたはNLR細胞に関して、ストック溶液の1/100の最終濃度で試験し、下記のような対照リガンドと比較した。この工程を3連で実施した。
【0173】
例で使用される対照リガンド、対照細胞系、および試料産物は表2に示されている通りであった。
【表2】

【0174】
一般的手順:スクリーニングにおけるTLR刺激を、所定のTLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより試験する。分泌型アルカリフォスファターゼレポーターは、転写因子NF-κBにより誘導可能なプロモーターの制御下にある。スクリーニングにおけるTLR刺激を、所定のTLRまたはNLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより、試験した。このレポーター遺伝子は、NF-κBの活性化に基づいた、TLR/NLRを通してのシグナル伝達のモニタリングを可能にする。適切な細胞(50,000?75,000細胞/ウェル)を含有する96ウェルプレート(200μL総容積)において、20μLの試料(可溶化液産物)または陽性対照リガンドをウェルに添加した。ウェルに添加される培地は、NF-κB誘導性SEAP(分泌型アルカリフォスファターゼ)の検出のために設計される。16?20時間のインキュベーション後、650nmにおけるOD(光学密度)は、Molecular Devices Spectra Max 340PC吸光度検出器において読み取られ、記録された。
【0175】
これらの実験のスクリーニング結果は、図3においてグラフで示され、スクリーニングデータ結果表として、図5に示されている。対照細胞系比較は、図4においてグラフで示され、データとして、図6の集計表に示されている。これらの結果から見ると、試験された可溶化液試料が、1/100濃度においてヒトTLR2、4、およびNOD2を活性化していることは明らかである。]

「【図1】図1は、本開示に従って使用するのに適したCpG ODNの例示的な一般的な構造を示す。


「【図2】図2は、様々なCpGモチーフ、ならびに自然免疫系および適応免疫系へのそれらの効果を示す。


「【図3】図3は、選択されたTLR/NLR細胞系への本発明の組成物の例示的な刺激効果のグラフを示す;グラフにおける値は、スクリーニング1?3の平均に対応する。




「【図4】図4は、本発明の対照および試料組成物のNF-κB対照細胞に対する刺激効果のグラフを示す;グラフにおける値は、スクリーニング1?3の平均に対応する。



「【図5】図5は、ヒトTLR/NLRリガンドのスクリーニングの結果を示す。



「【図6】図6は、NF-κB対照細胞のスクリーニングの結果を示す。



第5 当審の判断
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、この観点に立って、以下検討する。

(1)本願発明の課題について
本願発明は、「(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物」及び「(b)天然に存在する免疫刺激性CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)」(以下、「本願有効成分」という。)を含み、粘膜投与のために製剤化され、投与の後1分以上で完全に溶解するように製剤化された、「免疫疾患」、「肝障害」、「癌」、または「ライム病または他のダニ媒介性疾患」を処置する方法において使用するための組成物であって、前記「免疫疾患」は、「慢性炎症性疾患および障害を含むTリンパ球関連障害であり、前記慢性炎症性疾患および障害は、クローン病、反応性関節炎を含み、前記反応性関節炎は、ライム病、インスリン依存型糖尿病、臓器特異的自己免疫を含み、前記臓器特異的自己免疫は、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、およびグレーブス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態を含み、前記アトピー性状態は、喘息、およびアレルギー、例えば、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある特定の病原体感受性を含み、前記ある特定の病原体感受性は、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)感染、HIVを含む特定のウイルス感染、ならびに結核およびらい腫性ハンセン病を含む細菌感染」であり(以下「本願所定の免疫疾患」という。)、前記「肝障害」は、「感染、医原性障害、遺伝性障害、自己免疫障害、胆汁うっ滞性症候群、サルコイドーシス、臓器移植、肝癌などに起因する肝障害」である(以下「本願所定の肝障害」という。)。
そして、本願明細書の【0004】?【0011】の記載からみて、本願発明の課題は、「本願所定の免疫疾患」、「本願所定の肝障害」、「癌」及び「ライム病または他のダニ媒介性疾患」を処置することができる組成物を提供することであると認められる。
なお、上記課題における「処置する」とは、本願明細書の【0039】の記載からみて、「予防又は治療する」ことを意味すると解される。

(2)技術常識について
本願出願時において、哺乳類は、微生物由来の核酸や細胞構成成分を、膜タンパクであるTLRを含むパターン認識受容体を介して認識し、その結果、病原微生物のオプソニン化、補体の活性化等が起こり、免疫系が活性化される仕組みとなっており、TLR2はグラム陽性菌の細胞壁成分であるペプチドグリカン、TLR4はグラム陽性菌のリポタイコ酸、TLR9は細菌やウイルスのCpG DNAなどをリガンドとすることは広く知られていた(「ベーシック薬学教科書シリーズ10 免疫学」,山元弘編,(株)化学同人発行,2012年4月20日第1版第4刷,156-159頁)。また、TLRと同じく外来生物のパターン認識受容体として機能し、細胞質内に存在するNLR(Nod2等)も、TLRと同様に免疫に関わるものとして広く知られていた(生化学,2010年,第82巻,第1号,pp.12-20)。
そして、TLRのリガンドとされる物質を用いた病気の治療について、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスの可溶化液とN-アセチルグルコサミンをC型肝炎患者に口腔粘膜上で溶解する剤形で投与すると、SF-36スコアにより測定した生活の質が改善したこと(米国特許第8007783号明細書(審査段階の引用文献1):第2欄のSUMMARYの項参照)、合成したCpG ODNをマウスに腹腔内又は皮下注射すると癌に対して免疫療法剤としての効果を奏したこと(Update on Cancer Therapeutics,2006年,pp.49-58(審査段階の引用文献5):要約、51頁左欄1行?53頁右欄13行)などが報告されていた。

しかしながら、本願出願時において、TLR/NLRのリガンドとされるCpG ODNなどの物質を生体に投与すれば、免疫が過剰に反応することによる疾患(例:アレルギー性鼻炎)や免疫力が弱くなることによる疾患(例:HIVを含むウイルス感染)などの様々な「免疫疾患」、感染や医原性障害などの様々な原因に起因する「肝障害」、「腫瘍」及び「ライム病などのダニ媒介性疾患」という複数の疾患や障害を処置できることが、技術常識となっていたとはいえない。

(3)当業者が本願発明の課題を解決できると認識し得るかについて
ア 本願明細書の発明の詳細な説明には、(i)第1の生物学的治療活性物質は、グラム陽性細菌の可溶化液または細胞壁抽出物であり、第2の生物学的活性治療剤は、天然に存在するCpG ODNであり、CpG ODNは、可溶化液内のCpG ODNと同じであってもよいこと(【0075】【0076】)、(ii)溶解錠は、典型的には投与後約1?約15分以内に溶解するように製剤化されること(【0118】)、(iii)対象となる疾患として、様々な肝障害(【0141】【0142】)、癌(腫瘍)(【0143】【0146】)、ライム病などのマダニ類感染症(【0148】)などがあることが記載されている。
また、天然に存在するCpG ODNは、ヒト天然B細胞の抗原提示細胞機能、特に様々な肝臓ウイルスのエピトープの機能を増強する潜在能力を有すると考えられていること(【0164】)が記載されている。
そして、実施例として、溶解したラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカス(合議体注:「可溶化液」に相当。この中にCpG ODNが包含されていると解される。)及びN-アセチルD-グルコサミンHCI(NAG)の混合物が、HEK293細胞を用いたin vitro実験において、ヒトTLR2、TLR4及びNOD2を活性化したこと(【0166】?【0175】)が記載されている。

しかしながら、本願明細書の実施例において具体的に確認されているのは、HEK293細胞を用いたin vitro実験において、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスの可溶化液とNAGを含む組成物が、TLR2、TLR4及びNOD2のシグナル伝達を活性化したことのみであって、実際に、生体に投与した際にどのような疾患や障害を処置することができるのかは、何ら確認されていない。
また、グラム陽性菌の細胞壁抽出物と天然に存在するCpG ODNを混合したものについての実施例は、全く記載されていない。
さらに、本願明細書には、天然に存在するCpG ODNは、ヒトB細胞の抗原提示細胞機能、特に様々な肝臓ウイルスのエピトープの機能を増強する潜在能力を有すると考えられていること(【0164】)が記載されているものの、当該記載は、本願有効成分を生体に投与すれば、「本願所定の肝障害」が処置できることを具体的に示すものではない。

イ そして、上記(2)のとおり、本願出願時において、TLR/NLRのリガンドとされるCpG ODNなどの物質を生体に投与すれば、免疫が過剰に反応することによる疾患(例:アレルギー性鼻炎)や免疫力が弱くなることによる疾患(例:HIVを含むウイルス感染)などの様々な「免疫疾患」、感染や医原性障害などの様々な原因に起因する「肝障害」、「腫瘍」及び「ライム病などのダニ媒介性疾患」という複数の疾患や障害を処置できることが、技術常識となっていたとはいえない。
特に、本願出願時、免疫が過剰に反応することによる疾患(例:アレルギー性鼻炎)と免疫力が弱くなることによる疾患(例:HIVを含むウイルス感染)との両方の疾患を、同じ成分により処置することは、非常に困難であったといえる。
また、生体に対する投与経路によって、ある成分が奏する作用に影響が生じる場合があり得ることを考慮すると、HEK293細胞を用いたin vitro実験の結果から、生体に対して投与の後1分以上で完全に溶解するように粘膜投与した場合の結果を、予測することはできない。

ウ そうすると、本願出願時の技術常識を参酌しても、当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、本願有効成分を生体に対して投与の後1分以上で完全に溶解するように粘膜投与すると、「本願所定の免疫疾患」、「本願所定の肝障害」、「癌」及び「ライム病または他のダニ媒介性疾患」を処置できることを認識することはできない。

エ したがって、本願発明は、本願出願時の技術常識に照らして本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、「少なくとも添付の参考資料1乃至3に示されるように、細菌由来組成物(bacterial composition)の粘膜投与は、その細菌由来組成物が免疫応答を活性化するのに十分な生物学的利用率を可能とします。
それ故、これら技術常識と、クレームした可溶化液のTLR活性化効果を示す出願人の開示とあわせて考えると、当業者は、この可溶化液の粘膜投与が、対象におけるTLR活性化をもたらし、それ故、クレームされた疾患の効果的な治療的処置として機能することを理解したでしょう。」と主張する。(平成31年4月26日提出の意見書3頁の[3]の項)

しかしながら、審判請求人が示す参考資料1?3には、対象におけるTLR活性化効果により免疫が活性化されたことが、直ちに、「本願所定の免疫疾患」、「本願所定の肝障害」、「癌」及び「ライム病または他のダニ媒介性疾患」を処置できることにつながることが示されているとはいえないから、参考資料1?3は、上記(3)に示した判断を左右しない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-08-30 
結審通知日 2019-09-03 
審決日 2019-09-25 
出願番号 特願2015-533259(P2015-533259)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 六笠 紀子  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 前田 佳与子
藤原 浩子
発明の名称 天然に存在するCpGオリゴヌクレオチド組成物およびその治療的適用  
代理人 河野 直樹  
代理人 飯野 茂  
代理人 鵜飼 健  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  
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