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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1359477
審判番号 不服2018-6381  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-09 
確定日 2020-02-05 
事件の表示 特願2017-115672「CRISPRに基づくゲノム修飾および制御」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-192392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月5日(パリ条約による優先権主張 2012年12月6日 米国、2013年1月30日 米国、2013年2月5日 米国、2013年3月15日 米国)を国際出願日とする特許出願である特願2015-545838号の一部を、平成29年6月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 7月27日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月 8日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月22日付け:拒絶査定
平成30年 5月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 6月21日 :審判請求書を対象とする手続補正書の提出


第2 平成30年5月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年5月9日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(下線部は補正箇所である。)
「真核細胞の染色体配列に外来配列を組み込むための方法であって、
a)真核細胞に、(i)少なくとも1つの核局在化シグナルを含む少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ、または少なくとも1つの核局在化シグナルを含む少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸、ここで、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、クラスタ化調節的散在型短パリンドローム反復配列(CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)(CRISPR/Cas)II型システムタンパク質であり、CRISPR/CasII型システムタンパク質がCas9タンパク質である、(ii)少なくとも1つのガイドRNAまたは少なくとも1つのガイドRNAをコードするDNA、および(iii)外来配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを導入すること、および
b)真核細胞を、ガイドRNAが、RNA誘導型エンドヌクレアーゼを染色体配列中の標的部位へ誘導し、そこでRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、二本鎖の切断を誘導し、該二本鎖の切断が、外来配列が、染色体配列に組み込まれるようにDNA修復過程により修復されるように培養すること、
を含み、ここで、染色体配列中の標的部位が、プロトスペーサー近接モチーフ(PAM)の直前に位置し、前記方法は、ヒトを処置する方法を含まない、方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「真核細胞の染色体配列に外来配列を組み込むための方法であって、
a)真核細胞に、(i)少なくとも1つの核局在化シグナルを含む少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ、または少なくとも1つの核局在化シグナルを含む少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸、ここで、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、クラスタ化調節的散在型短パリンドローム反復配列(CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)(CRISPR/Cas)II型システムタンパク質であり、CRISPR/CasII型システムタンパク質がCas9タンパク質である、(ii)少なくとも1つのガイドRNAまたは少なくとも1つのガイドRNAをコードするDNA、および(iii)外来配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを導入すること、および
b)真核細胞を、ガイドRNAが、RNA誘導型エンドヌクレアーゼを染色体配列中の標的部位へ誘導し、そこでRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、二本鎖の切断を誘導し、該二本鎖の切断が、外来配列が、染色体配列に組み込まれるようにDNA修復過程により修復されるように培養すること、
を含み、ここで、前記方法は、ヒトを処置する方法を含まない、方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「染色体配列中の標的部位」について、上記のとおり「プロトスペーサー近接モチーフ(PAM)の直前に位置」するとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定で引用された、本願優先日(本願では、パリ条約に基づく優先権主張が複数なされているところ、本審決において特に断りなく「本願優先日」という場合は、最先の優先権主張日である2012年12月6日を意味することとする。)より前に頒布された刊行物である、引用文献1(Science, Aug 2012, Vol.337, p.816-821, Supplementary Materials)は、「細菌の獲得免疫におけるデュアルRNA誘導性のプログラム可能なDNAエンドヌクレアーゼ」と題する学術論文であって、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(1-1)「クラスター化等間隔短鎖回分リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系は、侵入する核酸の抑制を誘導するために、CRISPR RNA(crRNA)を利用するウイルスやプラスミドに対する獲得免疫を、細菌や古細菌に提供するものである。本論文で、我々は、この系の一部分において、成熟crRNAが、トランス活性化crRNA(tracrRNA)と塩基対を組むことで、標的DNAに二本鎖切断を導入するようにCRISPR関連タンパク質Cas9を誘導する2つのRNAからなる構造を形成することを示す。…このデュアル-tracrRNA:crRNAは、一本鎖RNAキメラとして設計されたときも、配列特異的なCas9による二本鎖DNA切断を誘導する。我々の研究は、部位特異的DNA切断のためにデュアル-RNAを使用するエンドヌクレアーゼのファミリーを明らかにし、RNAでプログラム可能なゲノム編集のためにこのシステムを利用する可能性を強調する。」(要約)

(1-2)「本論文で、我々は、II型の系において、Cas9タンパク質が、標的二本鎖DNAを切断するために、活性化tracrRNAと標的指向crRNAの間の塩基対構造を必要とする酵素ファミリーを構成するものであることを示す。位置特異的切断は、標的であるプロトスペーサーDNAとcrRNAの間の塩基対を形成する相補性と、標的DNAの領域に並置される短いモチーフ[プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる]により定められる場所で生じる。」(816頁中欄25?35行)

(1-3)「我々は、標的認識配列を5’末端に含み、その下流にtracrRNAとcrRNAの間に生じる塩基対相互作用を保持するヘアピン構造を含む2つのバージョンのキメラRNAを設計した。…プラスミドDNAを用いた切断アッセイにおいて、長い方のキメラRNAは、切断tracrRNA:crRNA複合体を用いた場合に観察された場合と同じような挙動でCas9によるDNA切断を誘導できることを観察によって確認した。」(820頁左欄5?18行)

(1-4)「図5 Cas9は、tracrRNAとcrRNAの特徴を組み合わせた単一のエンジニアリングされたRNA分子を使用して、プログラムすることができる。(A)(上)II型CRISPR/Cas系において、Cas9は、活性化しているtracrRNA及び標的化crRNAにより形成される2つのRNA構造により誘導されて、部位特異的に標的となった二本鎖DNAを切断する。(下)crRNAの3’末端をtracrRNAの5’末端に融合することにより生成されたキメラRNA。(B)プロトスペーサー4標的配列及びWT PAMを保有するプラスミドに、tracrRNA(4?89):crRNA-sp4二重鎖、又はcrRNAの3′末端を、GAAAテトラループを用いてtracrRNAの5′末端に結合させて構築し、インビトロ転写させたキメラRNAによりプログラムしたCas9による切断処理を施した。切断反応は、XmnIによる制限酵素マッピングにより解析した。キメラRNAのA及びBの配列は、DNAを標的化する配列(黄色)、crRNAリピート由来の配列(橙色)及びtracrRNA由来の配列(水色)で示されている。…

」(図5)

(1-5)「ジンク-フィンガーヌクレアーゼや転写活性化様エフェクターヌクレアーゼは、ゲノムを操作するために設計された人工酵素として、大きな関心を集めた。私たちは、遺伝子ターゲティングとゲノム編集への応用に向けた大きな潜在能力をもたらし得るRNAによりプログラムされたCas9に基づく代替的な手法を提案する。」(第820頁右欄第2行?第9行)

(1-6)「プラスミドDNA切断アッセイ
…未処理の、あるいは制限酵素処理により鎖状化されたプラスミドDNA(300ng(?8nM))は、精製されたCas9タンパク質(50?500nM)とtracrRNA:crRNA複合体(50?500nM、1:1)とともに、Cas9プラスミド切断緩衝液(20mM HEPES pH7.5、150mM KCL、0.5mM DTT、0.1mM EDTA)中で、10mM MgCl_(2)を加えて、あるいは加えずに、37℃で60分間インキュベートした。…」(SUPPLEMENTARY MATERIALS AND METHODSの「Plasmid DNA cleavage assay.」)

(イ)引用文献2
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Gene Ther., 2008, Vol.15, No.22, p.1463-1468には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(2-1)「ZFN誘導性切断は、2つの異なる様式の遺伝子編集に用いることができる。…通常、遺伝子ターゲティングとして考えられる配列置換様式を実施するために、標的に対して高い相同性を有し特定の所望の置換配列を有するドナーDNAが、ZFNと一緒に送達される。相同的組換えが、このドナーをテンプレートとして利用すれば、標的において置換が導入される。」(1463頁右欄最終段落)

(2-2)「公表された報告は、種々の生物の内因性染色体における、成功したZFN誘導性の14遺伝子のターゲティングについて述べている。哺乳類細胞で6遺伝子、ゼブラフィッシュで3遺伝子、ショウジョウバエで3遺伝子、線虫と植物細胞で1遺伝子ずつである。」(1464頁右欄1?5行)

(2-3)「彼らはまた、1つのZFNと1コピーのドナーDNAを有するコンビネーションベクターを製造した。これにより、同じ細胞に感染させなければならない区別されたウイルスの数が減少する。」(1465頁左欄29?32行)

(2-4)「このケースでは両方のZFNは、CMVプロモーターによりその発現が駆動される1つのバイシストロニックベクターにより送達された。」(1465頁左欄42?44行)

(ウ)引用文献3
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Nature Biotechnology, 2011, Vol.29, No.2, p.143-148には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(3-1)「これらの結果は、TALEヌクレアーゼキメラ(TALEN)の選択的ゲノム切断のため位置特異的エンドヌクレアーゼとしての潜在的な利用に関する関心に拍車をかけた。ここでは私たちは、内因性遺伝子の効率的な修復を仲介できるTALENの開発を報告する。まず、私たちは、標的とされたエピソーマルレポーターと内因性遺伝子の制御を通して、哺乳類の細胞の環境におけるTALE活性を示す」(143頁右欄8?13行)

(3-2)「次に、これらのTALENは、BglI制限サイトをコードする46bpの挿入配列を標的位置に挿入するように設計されたドナーDNAフラグメントと共にK562細胞に導入された。それに続くPCRとBglI消化は、16%ものアレイが挿入配列を有しているという効果的な編集を明らかにした(図5)。これの結果は、ここに記載されるTALEN構築物が相同性指向修復による正確なゲノム編集を誘導することを示す。」(146頁右欄最終行?147頁左欄5行)

(エ)引用文献4
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Genetics, 2010, Vol.186, p.757-761には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(4-1)「短期的には、内在性の染色体標的を認識して切断するカスタムTALENを作成できるかどうかを試験し、カスタムTALENが、非相同末端結合及び相同組換えによるゲノム修飾を生じさせる際の効率を評価する予定である。このような実験は、真核生物のゲノム工学のためのこれらの試薬の完全な有用性を評価する鍵となろう。」(760頁右欄1?8行)

(オ)引用文献5
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、ZEBRAFISH, 2011, Vol.8, p.147-149には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(5-1)「図1 設計された転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の図…

」(図1)

(カ)引用文献6
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Nucleic Acids Research, 2011, Vol.39, e82, p.1/11-11/11には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(6-1)「結果として、TALエフェクターは、DNAターゲティングツールとして大きな関心を集めた。特に、私たちと他のグループは、ゲノム編集のためにインビボにおけるDNA二本鎖切断(DSB)を生成するため、TALエフェクターをFokIヌクレアーゼの触媒ドメインと融合できることを示した。…DSBはほぼ全ての細胞において、しばしば短い挿入や欠失をもたらし遺伝子破壊に利用され得る非相同末端結合(NHEJ)と、遺伝子の挿入や置換のために用いられ得る相同組換え(HR)という、高度に保存された2つの過程のうちのいずれかにより修復される。」(2頁左欄5?19行)

(6-2)「私たちは、このソフトウェアにより標的化され、プラスミドのセットを用いて組み立てられたTALENが酵母DNA切断アッセイにおいて活性であり、ヒト細胞とシロイヌナズナのプロトプラストにおける遺伝子ターゲティングに効果的であることを示す。」(2頁右欄35?40行)

(6-3)「ヒトHPRT1遺伝子を標的とする一組のTALENを、XhoIとAflIIを用いて、哺乳動物発現ベクターpCDNA3.1(-)(インビトロジェン)にサブクローニングした。これらの酵素はpTAL3あるいはpTAL4からTALEN全体を切り出して、コード配列をCMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下に置いたものである。得られたプラスミドは、製造者が提供するプロトコルにしたがってリポフェクトアミン2000(インビトロジェン)を用いてトランスフェクトすることで、HEK293T細胞に導入した。」(6頁左欄下から14行?下から6行)

(6-4)「図1 TALエフェクターとTALENの構造(a)天然にみられるTALエフェクターの構造。…(b)TALENの構造。…

」(図1)


(キ)引用文献7
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、PNAS, 2011, Vol.108, p.2623-2628には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(7-1)「部位特異的で希少な切断ヌクレアーゼは、ゲノム工学における価値ある道具である。二本鎖DNA切断(DSB)の生成は、真核生物での相同組換えを促進するとともに、付加、欠失及び不活性化という遺伝子ターゲティングを促し得る。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、DSBの生成とそれに続くゲノム編集のために使用されてきたものの、効率と再現性は低い。タイプIIIエフェクター(TALE)の転写活性化因子様ファミリーには、特定のDNA標的に結合するように操作可能なタンデムリピートの中央ドメインが含まれている。本論文では、ユーザーが選択したDNA結合特異性を持つHax3ベースのハイブリッドTALEヌクレアーゼを調製したことを報告する。…タバコ葉における一過性発現アッセイは、ハイブリッドヌクレアーゼがその標的配列にDSBを作成し、続いて、非相同末端結合修復により修復されることを示唆する。…」(要旨)

(7-2)「染色体上のDSBは、広く保存されている2つの修復経路、すなわち非相同末端結合(NHEJ)と相同組換え(HR)のうちの1つによって修復される(2)。NHEJ修復は、破損した鎖の端を結合し、その結果として小さな削除又は挿入をもたらす。しかし、HRでは、切断部位にわたる情報をコピーするためのテンプレートとして、相同的なDNA部分を必要とする。標的のDSBの生成は、DNA認識の高い忠実度を有し、部位特異的切断を提供するタンパク質を必要とする(3、4)。」(2623頁左欄下から22?14行)

(7-3)「図1 Hax3及びdHax3.Nタンパク質の構造の表示とそれらのDNA標的特異性(A)Hax3 TALE…(C)dHax3のC末端に、FokI切断ドメインの196アミノ酸が融合していることを示す、dHax3.Nの構造の表示。

」(図1)

(ク)引用文献8
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Science, 2003, Vol.300, p.763には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(8-1)「図1 キメラヌクレアーゼにより誘導される遺伝子ターゲッティング。…(A)キメラヌクレアーゼの構造。L0、L3及びL18は、エンドヌクレアーゼドメインとジンクフィンガーDNA結合ドメインとの間の、それぞれ0、3又は18個のアミノ酸リンカーを表す。…

」(図1)

(ケ)引用文献9
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、BioResearch Open Access, Jun 2012, Vol.1, p.99-108には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(9-1)「ZFNへの核局在化シグナルの付加
ex vivoでの使用のために、pZFNプラスミドは、SV40ラージT抗原の核局在化シグナル(NLS)配列PKKKRKVが、ZFNタンパク質のアミノ末端のフレーム内に含まれるように改変された。リン酸化オリゴヌクレオチドNLS+及びNLS-をアニールして、NheIオーバーハングを有するdsDNA分子を作成し、pZFNプラスミドに唯一のNheI部位にクローニングした。正しい方向は、DNAの配列解析(…)により決定された。」(100頁右欄25?33行)

(コ)引用文献10
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Nature Methods, Aug 2012, Vol.9, p.805-807には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(10-1)「図1 …(a)ZFNタンパク質及びZFNタンパク質表面の静電ポテンシャルの図…

」(図1)

(サ)引用文献11
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Methods, 2011, Vol.53, p.339-346には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(11-1)「相同組換えのより高い効率が、ジンク-フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)に基づく技術を用いることにより達成される。ZFNは、あらかじめ定められたゲノムの位置において、DNA二本鎖切断(DSB)を引き起こす分子はさみである。…この酵素的に誘導されるDSBは、短い挿入や欠失につながり、誤りが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)か、外因性ドナーDNAと標的位置の間の相同組換えに基づく相同性指向修復(HDR)により修復され得る。…典型的には、ZFN誘導性のDSBは、相同組換えの効率を数千倍に高める。全体では、ZFNテクノロジーは、ショウジョウバエ、植物、ゼブラフィッシュ、ラット、そして、マウスあるいはヒトの多能性幹細胞を含め10以上の生物にうまく適用された。」(339頁右欄最終段落?340頁左欄下から3行)

(シ)引用文献12
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Nucleic Acids Research, 2011, Vol.40, p.3443-3455には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(12-1)「相同組換え(HR)によるドナー及びアクセプターDNA分子間の遺伝情報の交換は、ホスホジエステル結合の切断に依存する。二本鎖及び一本鎖DNA切断(SSB)の両方がHRのトリガーとして発動されてきたが、ごく最近まで、主にSSBベースの組換えモデルの不足のため、前者のタイプのDNA損傷に主要な焦点が当てられてきた。ここで、ヒト体細胞におけるHR開始基質としてのニックの入ったDNA分子の役割を調査するために、外因性ドナーと、アデノ随伴ウイルス配列並びに鎖特異的エンドヌクレアーゼRep78及びRep68の認識配列を含む染色体上の標的DNAに基いた、相同性指向遺伝子ターゲティングシステムを考案した。SSBが染色体アクセプターだけでなくドナーDNAテンプレートにも導入されると、HRが大きく促進されることがわかった。…」(要旨)

(ス)引用文献13
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、Annals of Neurosciences, 2011, Vol.18, p.25-28には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから当審による訳文を記載する。

(13-1)「…設計されたZFNが指定された遺伝子座を認識して結合すると、ZFN上の2つのヌクレアーゼドメインの二量体化を引き起こし、標的DNAに二本鎖切断(DSB)を引き起こす。次に、細胞は、非相同末端結合(NHEJ)または相同組換え修復(HDR)のいずれかの天然DNA修復プロセスを使用して標的破壊を修復する。…HDR修復経路により、標的領域への導入遺伝子又は他の定義された変更の正確な挿入が可能となる。このアプローチにより、切断部位の両側の領域に相同な配列と隣接する導入遺伝子を含むドナーテンプレートは、ZFNとともに細胞に共送達される。特定のDSBを作成することにより、これらの細胞修復メカニズムを利用して、標的遺伝子の削除、統合又は修飾を行うことにより、細胞株と動物モデルの両方において、正確に標的化されたゲノム編集を引き起こすことができる。…」(要旨)

(セ)引用文献14
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、国際公開第2011/159369号には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、訳文として当該刊行物の国内公表公報である特表2013-534417号公報の記載事項及び摘記箇所を示す。

(14-1)「細胞における標的化組換えの方法であって、TAL III型エフェクター結合ドメインおよび切断ドメインを含んで成る融合タンパク質を前記細胞に導入し、その結果、細胞クロマチンがTALエフェクター結合ドメインにより標的化された領域で切断され、その結果、相同組換えが起こりうるステップを含むものである前記方法。」(【請求項1】)

(14-2)「本明細書に記載した融合分子だけでなく、選択したゲノム配列の標的化置換はまた、置換(またはドナー)配列の導入を必要とする。融合タンパク質の発現の前に、と同時に、またはその後に、ドナー配列を細胞中に導入することができる。ドナーポリヌクレオチドはゲノム配列と十分な相同性を有し、それと相同性を有するゲノム配列との相同組換えを支援する。…」(【0083】)

(ソ)引用文献15
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、特表2007-501626号公報には、以下の事項が記載されている。

(15-1)「このような方法において、1種又は複数の標的化されたヌクレアーゼは、予め決定された部位での細胞クロマチンの2本鎖切断を生じ、及びこの切断領域の細胞クロマチンのヌクレオチド配列と相同性を有するドナーポリヌクレオチドが、この細胞へ導入される。細胞DNA修復プロセスは、2本鎖切断の存在により活性化され、並びにドナーポリヌクレオチドが、この切断の修復のための鋳型として使用され、ドナーのヌクレオチド配列の全て又は一部が細胞クロマチンへ導入される。従って細胞クロマチン中の第一の配列は変更され、ある態様においては、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列へ変換することができる。」(【0028】)

(15-2)「実施例1:標的化された組換えによる染色体hSMC1L1遺伝子の校正
hSMC1L1遺伝子は、出芽酵母遺伝子の第1染色体構造維持(…)のヒトオルソログである。Walker ATPaseドメインを含むタンパク質のアミノ-末端部分をコードしているこの遺伝子の領域を、標的化された切断及び組換えにより変異誘発した。切断は、ジンクフィンガーDNA-結合ドメイン及びこのコドンの近傍に結合するFokI切断ハーフ-ドメインを含むキメラヌクレアーゼをデザインすることにより、メチオニン開始コドン(ヌクレオチド24-26、図1)の領域に標的化した。…
これら2種のZFP結合ドメインを各々コードしている配列を、FokI切断ハーフ-ドメインをコードしている配列…に融合し、その結果コードされたタンパク質は、カルボキシ末端にFokI配列を及びアミノ末端にZFP配列を含んだ。これらの各融合配列は次に、修飾された哺乳類発現ベクターpcDNA3においてクローニングした(図2)。」(【0226】?【0227】)

(15-3)「染色体hSMC1L1遺伝子の標的化された変異のために、ZFP-FokI融合体をコードしているふたつのプラスミド及びドナープラスミドを、1×10^(6)個HEK293細胞へと、…トランスフェクションにより導入した。…細胞は、5%CO_(2)中37℃で培養した。トランスフェクション後48時間で、ゲノムDNAを細胞から単離し、200ngをPCR増幅の鋳型として使用し、ドナー配列…と相同なその領域の外側の遺伝子領域に相補的なひとつのプライマー、及び識別用の変異が導入されたドナー分子の領域に相補的な第二のプライマーを用いた。これら2種のプライマーを使用し、標的化された組換え事象が生じた場合に、400塩基対の増幅産物をゲノムDNAから得た。…
この分析の結果(図5)は、400塩基対増幅産物(図の中で「キメラDNA」と表示)は、ドナープラスミド及び両方のZFP-FokIプラスミドでトランスフェクションされた細胞から抽出したDNAでのみ得られたことを示している。」(【0230】?【0231】)

(15-4)「図2

」(図2)

(タ)引用文献16
原査定で周知技術を示すものとして引用された、本願優先日より前に頒布された刊行物である、国際公開第2011/146121号には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、訳文として当該刊行物の国内公表公報である特表2013-529083号公報の記載事項及び摘記箇所を示す。

(16-1)「人工ヌクレアーゼによって作成される二本鎖切断(DSB)は、例えば、標的化変異誘発を誘導するために、細胞DNA配列の標的化欠失を誘導するために、かつ所定の染色体遺伝子座で標的化組換えを促進するために使用されている。…したがって、標的ゲノム位置でDSBを生成する能力は、任意のゲノムのゲノム編集を可能にする。
DSBを修復する2つの主要なはっきりと異なる経路、相同組換え及び非相同末端結合(NHEJ)が存在する。相同組換えは、細胞修復プロセスを誘導するために、テンプレート(「ドナー」として既知である)として相同配列の存在を必要とし、修復の結果は、エラーがなく、予測可能である。相同組換えのためのテンプレート(又は「ドナー」)配列の不在下で、細胞は、典型的には、エラーを起こしやすいNHEJプロセスを介してDSBを修復しようと試みる。」(【0012】?【0013】)

(16-2)
「…ある特定の実施形態において、少なくとも1つのTALE反復単位は、遺伝子操作される(例えば、非自然発生、非定型、コドン最適化、それらの組み合わせ等)。…他の実施形態では、TALE反復をコードする核酸は、DNA配列が変更されるが、アミノ酸配列は変更されないように修飾される。いくつかの実施形態において、DNA修飾は、コドン最適化のためである。…」(【0018】)

(16-3)「…いくつかの実施形態において、TALE反復ドメインをコードする遺伝子は、TALE反復アミノ酸を特定するコドンは変更されるが、特定されたアミノ酸は変更されないように(例えば、コドン最適化の既知の技法を介して)、DNAレベルで遺伝子操作される。…」(【0125】)

(3)引用発明
学術論文である引用文献1の要約部分である摘記事項(1-1)には、CRISPR/Cas系は、成熟crRNAがtracrRNAと塩基対を組むことで、標的DNAに二本鎖切断を導入するようにCas9タンパク質を誘導すること、及びこのデュアル-tracrRNA:crRNAは、一本鎖RNAキメラとして設計されたときも、配列特異的なCas9による二本鎖DNA切断を誘導することが記載されている。
また、導入分である摘記事項(1-2)には、II型の系において、Cas9タンパク質による位置特異的切断は、標的であるプロトスペーサーDNAとcrRNAの間の塩基対を形成する相補性と、標的DNAの領域に並置されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)により定められる場所で生じることが記載されている。
そして、引用文献1の主たる実験データである摘記事項(1-4)の図5Aには、キメラRNAにより誘導されて、Cas9が部位特異的に標的となった二本鎖DNAを切断すること、及びキメラRNAの標的認識配列の認識部位がPAMの直前に位置することが記載され、また、図5Bには、crRNAの3′末端を、GAAAテトラループを用いてtracrRNAの5′末端に結合させたキメラRNAを構築したこと、及びキメラAなるキメラRNAによりプログラムしたCas9により、標的配列において、プラスミドDNAの切断が誘導されたことが記載されていると認められる。
また、図5の実験結果に関して、摘記事項(1-3)には、標的認識配列を5’末端に含み、その下流にtracrRNAとcrRNAの間に生じる塩基対相互作用を保持するヘアピン構造を含むキメラRNAを設計したこと、及びプラスミドDNAを用いた切断アッセイにおいて、当該キメラRNAが、Cas9によるDNA切断を誘導できたことが記載されている。
さらに、摘記事項(1-6)には、図5の実験で用いられたCas9タンパク質によるプラスミドDNA切断アッセイが緩衝液中で行われたことが記載されている。
以上からみて、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「CRISPR/Cas系により緩衝液中のプラスミドDNAを配列特異的に二本鎖DNA切断する方法であって、
a)緩衝液中に、
(i)II型CRISPR/Cas系のCas9タンパク質、及び
(ii)標的認識配列を5’末端に含み、その下流にtracrRNAとcrRNAの間に生じる塩基対相互作用を保持するヘアピン構造を含むキメラRNA
を導入すること、並びに
b)Cas9タンパク質が、キメラRNAにより誘導されて、部位特異的に標的となった二本鎖DNAを切断すること
を含み、ここで、キメラRNAの標的認識配列の認識部位がPAMの直前に位置する、方法。」

(4)対比
本件補正発明の「ガイドRNA」は、「RNA誘導型エンドヌクレアーゼを染色体配列中の標的部位へ誘導」し、当該標的部位において「RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、二本鎖の切断を誘導」するものであるところ、引用発明の「キメラRNA」は、Cas9タンパク質が、部位特異的に標的となった二本鎖DNAを切断することを誘導するものである。以上からみて、引用発明の「キメラRNA」は、本件補正発明の「ガイドRNA」に相当すると認められる。
念のため、本件補正発明の「ガイドRNA」の構造に関する本願明細書の記載を検討してみると、本件補正発明の「ガイドRNA」について、本願明細書【0071】には「ガイドRNAは、3つの領域:染色体配列中の標的部位に相補的である5’末端における第一の領域、ステムループ構造を形成する第二の内部領域、および本質的に一本鎖のままである第三の3’領域を含む」ことが、【0072】には「ガイドRNAの第一の領域は、ガイドRNAの第一の領域が標的部位と塩基対を形成し得るように、染色体配列中の標的部位で配列…に相補的である」ことが、【0073】には「ガイドRNAは…、二次構造を形成する第二の領域を含む。ある態様において、該二次構造は、ステム(またはヘアピン)およびループを含む」ことが、【0074】には「ガイドRNAは…、本質的に一本鎖のままである第三の領域を3’末端に含む」ことが、及び【0076】には「ある態様において、ガイドRNAは、全ての3つの領域を含む単一分子からなる」ことが記載されている。一方、引用発明の「キメラRNA」は、「標的認識配列を5’末端に含み、その下流にtracrRNAとcrRNAの間に生じる塩基対相互作用を保持するヘアピン構造を含む」ものであるところ、当該キメラRNAの構造は、摘記事項(1-4)の特に図5BのキメラAについての記載からみて、標的部位に相補的である5’末端における第一の領域に続いて、ステムループ構造を形成する第二の領域、及び一本鎖のままである第三の3’領域を有するものである。以上からみて、引用発明の「キメラRNA」の構造は、本件補正発明の「ガイドRNA」として本願明細書に示された構造と共通するといえる。
また、引用発明の「キメラRNA」の標的認識配列の認識部位はPAMの直前に位置するから、本件補正発明の「ガイドRNA」の標的部位、及び引用発明の「キメラRNA」の標的認識配列の認識部位は、いずれも、「プロトスペーサー近接モチーフ(PAM)の直前に位置」する点で共通すると認められる。
さらに、引用発明の「II型CRISPR/Cas系のCas9タンパク質」は、本件補正発明の「(i)少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ、ここで、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、クラスタ化調節的散在型短パリンドローム反復配列(CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)(CRISPR/Cas)II型システムタンパク質であり、CRISPR/CasII型システムタンパク質がCas9タンパク質である」に相当すると認められる。
加えて、引用発明がヒトを処置する方法でないことは明らかである。
以上から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。

【一致点】
「a)DNAの存在する系に、(i)少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼ、ここで、少なくとも1つのRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、クラスタ化調節的散在型短パリンドローム反復配列(CRISPR)/CRISPR-関連(Cas)(CRISPR/Cas)II型システムタンパク質であり、CRISPR/CasII型システムタンパク質がCas9タンパク質である、及び(ii)少なくとも1つのガイドRNAを導入すること、並びに
b)ガイドRNAが、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをDNA配列中の標的部位へ誘導し、そこでRNA誘導型エンドヌクレアーゼが、二本鎖の切断を誘導すること、
を含み、ここで、DNA配列中の標的部位が、プロトスペーサー近接モチーフ(PAM)の直前に位置し、ヒトを処置する方法を含まない、方法。」

【相違点1】
DNAの存在する系、及びそこで切断されるDNAが、本件補正発明は「真核細胞」及び「染色体」であるのに対し、引用発明は「緩衝液中」及び「プラスミドDNA」である点。
【相違点2】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼであるCas9タンパク質が、本件補正発明では、「少なくとも1つの核局在化シグナルを含む」と特定されているのに対し、引用発明では核局在化シグナルを有していない点。
【相違点3】
本件補正発明は「真核細胞の染色体配列に外来配列を組み込むための方法」であって、そのために、「真核細胞」に「外来配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを導入」し、「真核細胞」を「二本鎖の切断が、外来配列が、染色体配列に組み込まれるようにDNA修復過程により修復されるように培養する」ものであるのに対し、引用発明は、ドナーポリヌクレオチドを導入するものではなく、「緩衝液中のプラスミドDNAを配列特異的に二本鎖DNA切断する方法」にとどまる点。
【相違点4】
RNA誘導型エンドヌクレアーゼであるCas9タンパク質、及びガイドRNAを導入するに際し、本件補正発明はそれらをコードする核酸を用いる態様を包含しているのに対し、引用発明はそのような態様を包含してない点。

(5)判断
ア 相違点1?3について
摘記事項(1-1)及び(1-5)からみて、引用文献1には、引用発明のCRISPR/Cas系が、遺伝子ターゲティングとゲノム編集への応用に向けた大きな潜在能力をもたらし得ることや、当該CRISPR/Cas系に基づく手法が、ゲノムを操作するために設計された人工酵素である、ジンク-フィンガーヌクレアーゼ(以下「ZFN」という。)や転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(以下「TALEN」という。)の代替方法となり得ることが記載されているといえる。
ここで、摘記事項(2-2)、摘記事項(3-1)及び(3-2)、摘記事項(4-1)、摘記事項(6-1)及び(6-2)、摘記事項(11-1)、並びに摘記事項(15-2)及び(15-3)からみて、本願優先日当時、ゲノム編集の主たる対象は真核細胞であって、ZFNやTALENが真核細胞中の標的DNA、すなわち、核内の染色体を切断するものであることは周知であるから、引用発明のCRISPR/Cas系を、真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることは当業者にとってごく自然な発想にすぎない。
そして、それを具現化するにあたり、CRISPR/Cas系を真核細胞の核内の染色体に到達させるために、タンパク質を核内に移行させるための手段として本願優先日当時から周知であった核局在化シグナル(摘記事項(5-1)、摘記事項(6-4)、摘記事項(7-3)、摘記事項(8-1)、摘記事項(9-1)、摘記事項(10-1)及び摘記事項(15-4)参照。以下「核局在化シグナル」を「NLS」という。)をCas9タンパク質に付加することは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得たことである。
また、ゲノム編集とは標的遺伝子を改変してゲノム情報を書き換えることであって、摘記事項(2-1)、摘記事項(3-1)及び(3-2)、摘記事項(7-1)及び(7-2)、摘記事項(11-1)、摘記事項(12-1)、摘記事項(13-1)、摘記事項(14-1)及び(14-2)、摘記事項(15-1)及び(15-3)、並びに摘記事項(16-1)からみて、ヌクレアーゼによる二本鎖DNAの切断と、それに続く、相同組換えによる修復経路を介したドナーポリヌクレオチドによる相同組換えを行うことや、ドナーポリヌクレオチドとして、外来配列を含むものを用いることが本願優先日当時の周知技術であり、加えて、上記のとおり、引用文献1に、引用発明のCRISPR/Cas系をゲノム編集に応用することが示唆されている以上、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させる際に、外来配列を含むドナーポリヌクレオチドと併用することは当業者にとって発明力を要するほどのことでなく、また、外来配列が組み込まれるよう、当該真核細胞を培養することも当業者が当然行うことである。

イ 相違点4について
細胞の内部で所望のタンパク質や核酸を機能させようとする場合に、それらを発現するベクターを用いることは常套手段である。前記アで検討したとおり、引用発明のCRISPR/Cas系を、外来配列を含むドナーポリヌクレオチドとともに真核細胞の染色体に対して機能させようとすることが十分に動機づけられる以上、Cas9タンパク質及びガイドRNAについて、それらをコードするDNAを含むベクターとして細胞に導入することや、その際に、ドナーポリヌクレオチドについてもベクターとして細胞に導入することは当業者が必要に応じて適宜なし得たことにすぎない。
実際、本願優先日当時、ゲノム編集のための成分をベクター系で細胞に導入することが一般的であった(摘記事項(2-3)及び(2-4)、摘記事項(6-3)並びに摘記事項(15-2)?(15-4)参照)。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2?16によって示される本願優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)審判請求人の主張について
請求人は、審判請求書を対象とする平成30年6月21日付け手続補正書において、概ね、以下のア?オの主張をする。

ア 引用文献1には、CRISPR/Cas9を真核細胞で作用させた実際のデータがなく、当業者が真核細胞でうまく利用できるCRISPR/Cas9系を開発するための具体的かつ有用な教示はないから、引用文献1は当業者を本件補正発明に導くようなものではない。

イ 引用文献1における、細菌又はインビトロでの、細胞及び核を含まない条件に限定されたデータでは、CRISPR/Cas9を真核細胞にも同様に適用できることへの合理的な期待を当業者が否定する理由(ア)?(オ)がある。
(ア)真核細胞の低い細胞内Mg^(2+)濃度は、CRISPR/Cas系に最も近い先例であるグループIIイントロンTargeTron系の機能に対する障壁となることが発見されており、その標準的なインビトロ反応条件が5?10mMのMg^(2+)を使用するところ、引用文献1において、生化学的に有益な実験の大部分は5?10mM MgCl_(2)の存在下でインビトロで実施されており、当業者は細菌CRISPR/Cas9系が、遊離Mg^(2+)濃度が原核生物よりも低い真核細胞において、効率的に機能できることを合理的に期待することはなかった。
(イ)引用文献1の図S4A及びBからみて、超らせんプラスミド中の一本鎖ニックを生成する反応が、5mMのMg^(2+)は、1mMのMg^(2+)より少なくとも100倍速く、また、図S6は10mMのMg^(2+)を使用することを選択していることからみて、CRISPR/Cas9はグループIIイントロンTargeTronと同程度のMg^(2+)制限を受ける可能性が高く、ヒト細胞の生理学的Mg^(2+)濃度(0.2?1.2mMの範囲)では効率的に機能しないと結論づけられる。
(ウ)正確なRNA二次及び三次構造の形成に依存する多くのリボスイッチ、リボザイム、及びアプタマーは、インビトロでは有効であるが、真核細胞環境に移行した場合には機能しないところ、CRISPR/CasはガイドRNAの二次構造に少なくとも部分的に頼っていると考えられることから、当業者は、CRISPR/Casが、真核細胞において機能的であると合理的に期待することはできなかった。
(エ)細菌タンパク質であるT7 RNAポリメラーゼは、真核性クロマチンに接近して徐々に伸長することができないため、ほとんどの高等真核生物では適切に機能しないことが知られており、また、グループIIイントロンにおいても、遺伝子ターゲッティング反応において障壁となるクロマチンが発見されており、さらに、核および核エンベロープの存在のような細胞構成はタンパク質アクセスに対する障壁を示す。
(オ)タンパク質の折りたたみ、分子クラウディング、細胞組成および機構(リボヌクレアーゼ、RNA干渉、クロマチンなど)を含む様々な理由により、当業者は、引用文献1の試験管での実験を、真核生物細胞の機能性を予測するものとはみなさない。

ウ 引用文献1の主要共著者であるJennifer Doudnaらが、「これらの知見は、Cas9:sgRNA複合体が、部位特異的ゲノム編集を容易にすることができるDSBを生成するための単純かつ多目的なRNA指向システムを構成する可能性があることを示唆している。しかし、そのような細菌系が真核細胞で機能するかどうかは知られていなかった。」(eLIFE, 2013, Vol.2, p.e00471)、「我々の2012年の論文は大成功であったが、問題があった。CRISPR/Cas9が真核生物(植物細胞や動物細胞)で機能するかどうか確信が持てなかった。」(Catalyst, Spring/Summer 2014, Vol.9, p.18-20)などと述べており、また、Doudnaについて「Doudnaは、CRISPRをヒト細胞において機能させるにあたって、『多くの失望』を経験した。しかし彼女は、成功したならばCRISPRが『極めて大きな発見』であり、強力な遺伝子治療技術となり得ることを知っていた」(OZY, Jan 07 2014, http://www.ozy.com/rising-stars/jennifer-doudna-crispr-code-killer/4690)と記載されていることに基づき、Loring博士は、「これらの記述は、真核生物細胞においてCRISPR/Cas9系を適用することが、そのような系がどのように機能するかについての相当な不確実性を克服することを必要とするというさらなる証拠を提供する。ゲノム編集のためのそのような複雑な系の機能のためには、送達、適切な発現、折りたたみおよびアセンブリがすべて必要であり、当業者は系が真核細胞で機能することを予測できなかった。」と結論づけている。

エ 特定の細菌性タンパク質(Cas9など)をNLSと融合したときに、どんな状況であっても真核細胞における核内機能を獲得することが成功することに合理的な期待をもたらすとはいえず、また、引用文献1の実験がインビトロで行われているため、真核生物におけるCas9のためのコドン最適化は必要なく、引用文献1はコドン最適化の使用を開示も示唆もしていない。そして、引用文献1の共著者は本願優先日の1か月以上後まで、真核細胞におけるCRISPR/Casの使用に成功していないとの事実と、前記ウに示した「多くの失望」についての、引用文献1の共著者の多数の陳述を考慮すれば、本願優先日時点での当業者であれば、細菌を起源とするCRISPR/Cas系を真核生物に応用することが決して容易なことではないと理解するはずである。

オ CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することは当業者が容易に想到し得るとの認定は当業者の技術常識を反映するものとはいえず、仮に、このような認定が認められるのであれば、ZFNやTALEN以降の遺伝子改変技術はすべて進歩性を有さず、特許が認められるべきものではなくなるはずであるところ、日本国特許庁は特許第6203879号でCRISPR/Cas系の技術に特許を認めているし、特願2015-514015号も特許査定が発行されたところである。本願発明は、これらの出願よりも前に、CRISPR/Cas系の真核細胞への応用に世界で初めて成功したパイオニア発明というべきものであり、特許性が認められるべき優れた発明である。

(7)請求人の主張に対する検討
前記(6)に示した請求人の主張について、以下で検討する。

ア 主張アについて
前記(5)で検討したとおり、引用文献1の記載から、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがあり、また、引用発明のCRISPR/Cas系を実際に真核細胞の染色体に対して機能させるにあたって必要な技術は本願優先日当時の周知技術であったから、引用文献1に、CRISPR/Cas9を真核細胞で作用させた実際のデータや、真核細胞で作用させるための具体的かつ有用な教示がないことは、引用文献1が、当業者を本件補正発明に導くものとはならない理由には当たらない。したがって、請求人の主張アは採用できない。

イ 主張イについて
前記(6)イに示されるとおり、請求人の主張イは、主張(ア)?(オ)に基づくものであるところ、そのうちの主張(ア)及び(ウ)?(オ)は、要するに、引用発明のCRISPR/Cas系が、真核細胞において機能的であると合理的に期待することはなかったというものである。しかし、前記(5)で検討したとおり、引用文献1の記載から、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがある以上、当業者がそのような試みを行うことを妨げるような阻害要因があったということはできない。また、前記(5)で検討したとおり、引用発明のCRISPR/Cas系を実際に真核細胞の染色体に対して機能させるにあたって必要な技術は本願優先日当時の周知技術であったから、当業者の特段の創意工夫を要したということもできない。そして、実際にそのような周知技術を適用するに際し格別の技術的困難性があったと認めるに足る根拠は見出せない。
次に、主張(イ)について検討する。主張(イ)は、要するに、引用文献1の図S4A及びB並びに図S6の記載からみて、引用発明のCRISPR/Cas系は、ヒト細胞の生理学的Mg^(2+)濃度(0.2?1.2mMの範囲)では効率的に機能しないと結論づけられるというものであるといえる。しかし、図S4Aには、1mMのMg^(2+)濃度においてもCRISPR/Cas9による切断反応があったことが示されているから、同程度のMg^(2+)濃度を示す真核細胞に対して引用発明のCRISPR/Cas系を適用するにあたり、当業者は、機能することについて一定の期待を抱くことができたといえ、たとえより高いMg^(2+)濃度において反応が効率的であることが引用文献1に示されていたとしても、そのことは、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることの動機付けを阻害するものとはならない。
以上からみて、請求人の主張イは採用できない。

ウ 主張ウについて
請求人の主張ウは、要するに、引用文献1の主要共著者であるDoudna氏の発言や、Doudna氏に関する記載からみて、引用発明のCRISPR/Cas系の真核細胞への適用が成功するという確信がもてなかったということを主張するものであるといえる。しかし、この点については、前記イで検討したとおり、引用文献1の記載から、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがある以上、単にその成功に確信がもてなかったという点のみをもって、当業者がそのような試みを行うことを妨げるような阻害要因があったということはできない。さらにいえば、請求人が提示する「OZY, Jan 07 2014, http://www.ozy.com/rising-stars/jennifer-doudna-crispr-code-killer/4690」には、「彼女は、成功したならばCRISPRが『極めて大きな発見』であり、強力な遺伝子治療技術となり得ることを知っていた」との記載があり、むしろ、CRISPR/Cas9の真核細胞への適用を試みることに強い動機付けがあったことを示すものといえる。したがって、請求人の主張ウは採用できない。

エ 主張エについて
請求人の主張エは、要するに、(ア)Cas9とNLSとが融合したときに、どんな状況であっても真核細胞における核内機能を獲得することが成功することに合理的な期待をもたらすとはいえない、(イ)引用文献1は、Cas9を真核細胞のコドンに最適化することを開示も示唆もしていない、及び(ウ)前記(6)ウに示したDoudna氏の陳述を考慮すれば、本願優先日時点での当業者は、細菌を起源とするCRISPR/Cas系を真核生物に応用することが決して容易なことではないと理解することを主張するといえるので、順に検討する。
まず、主張(ア)については、前記(5)で検討したとおり、引用文献1の記載から、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがあり、しかも、それを具現化するにあたり、CRISPR/Cas系を真核細胞の核内の染色体に到達させるために、タンパク質を核内に移行させるための手段として本願優先日当時から周知であった核局在化シグナルをCas9タンパク質に付加することは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得たことである以上、当業者がそのような試みを行うことを妨げるような阻害要因があったということはできない。
次に、主張(イ)について検討する。そもそも、本件補正発明は、「RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードする核酸」が、真核細胞のコドンに最適化されているとの特定を有するものでないから、主張(イ)は、本件補正発明に則した主張とはいえない。加えて、引用文献1にコドン最適化に関する記載がないとしても、本願優先日当時、コドンを最適化することは周知技術であり(摘記事項(16-2)及び(16-3)参照)、当業者が必要に応じて適宜なし得たことといえる。
最後に、主張(ウ)について検討する。まず、そもそも、請求人の示すDoudna氏の発言やDoudna氏に関する記載は、本願優先日より後に明らかになったものであるから、Doudna氏本人を除く他の当業者の本願優先日当時の理解や認識を形成するものとはならず、加えて、前記ウで検討したとおり、これらの発言や記載は、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることを妨げるような阻害要因とはならない。
以上からみて、請求人の主張エは採用できない。

オ 主張オについて
請求人の主張オは、要するに、(ア)CRISPR/Cas系を真核細胞に適用することは当業者が容易に想到し得るとの認定は当業者の技術常識を反映するものとはいえないとの主張、及び(イ)他の特許出願の出願時期や審査状況に基づく主張であるといえる。
まず、主張(ア)については、前記(5)で検討したとおり、引用文献1の記載から、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがあり、また、引用発明のCRISPR/Cas系を実際に真核細胞の染色体に対して機能させるにあたって必要な技術は本願優先日当時の周知技術であったのである。
次に、主張(イ)は、引用発明のCRISPR/Cas系を真核細胞の染色体に対して機能させようと試みることには十分な動機付けがあるとの判断や、引用発明のCRISPR/Cas系を実際に真核細胞の染色体に対して機能させるにあたって必要な技術は本願優先日当時の周知技術であったとの判断を覆す理由とはなり得ない。
以上からみて、請求人の主張オは採用できない。

カ 小括
上記ア?オのとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(8)まとめ
以上からみて、請求人の主張はいずれも採用できず、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2?16によって示される本願優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上からみて、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年5月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?17に係る発明は、本願優先日より前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び周知技術を示す文献として提示された下記の引用文献2?16に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献
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16:国際公開第2011/146121号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?16の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「染色体配列中の標的部位」についての限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2?16によって示される本願優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2?16によって示される本願優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-04 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-26 
出願番号 特願2017-115672(P2017-115672)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安居 拓哉藤井 美穂竹内 祐樹  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 小暮 道明
田村 聖子
発明の名称 CRISPRに基づくゲノム修飾および制御  
代理人 冨田 憲史  
代理人 稲井 史生  
代理人 山尾 憲人  

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