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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1359494
審判番号 不服2018-993  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2020-02-15 
事件の表示 特願2016-182086「自律型小型無線装置及びその分散設置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018- 46517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月16日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成29年8月29日付け :拒絶理由通知書
平成29年10月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年10月20日付け:拒絶査定
平成30年1月24日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成30年6月20日 :上申書の提出
平成30年12月10日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成31年1月7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願発明は、平成31年1月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「 他電源受給路を有さない着脱交換不能な自律型電源(太陽電池を利用するものを除く)と、
前記自律型電源にて駆動される通信回路を含む通信制御回路と、
前記通信制御回路にて駆動されるアンテナと、
を備え、
前記通信制御回路はルーティング機能手段を有する固定設置する自律型小型無線装置。」

第3 拒絶の理由
平成30年12月10日付けの当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」であるところ、請求項1に対して下記引用例10、11が引用されている。

10.特表2003-508939号公報
11.特開平10-51858号公報

第4 引用例の記載、引用発明、公知技術
1 引用例10の記載事項
当審拒絶理由で引用した特表2003-508939号公報(以下「引用例10」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(1) 「【0010】
【発明の実施の形態】
付録には、本発明の好ましい1実施形態のミニオン^(TM)ファームウェア動作概要が示されている。
図1および2に示されているミニオンネット^(TM)ネットワーク100 は、短距離装置間メッセージングによって特徴付けられる無線データネットワークである。(ミニオン^(TM)、ミニオンネット^(TM)、μミニオン^(TM)、ミューミニオン^(TM)、マイクロミニオン^(TM)、ゲートウェイミニオン^(TM)、ジェオミニオン^(TM)およびキャップ^(TM)は本出願人の登録商標名である。以降使用されるように、ミニオン装置は他に特定されない限り、ミニオン^(TM)、ミニオンネット^(TM)、μミニオン^(TM)、ミューミニオン^(TM)、マイクロミニオン^(TM)、ゲートウェイミニオン^(TM)および、またはジェオミニオン^(TM)を意味する。商標登録表記^(“TM”)は以下において便宜上使用されない。)メッセージは多数の装置間“ホップ”によって自動的に経路設定され、ロバストな領域カバレージ、冗長性および耐雑音性を与えると共に動的な経路設定および再構成を行う。これらの装置間メッセージは、セルラー電話網のような実時間音声接続に認められるようなタイムクリティカル要求を有しない。
【0011】
ミニオンネットネットワーク100 により使用される装置は一般にミニオン装置と呼ばれ、以下に説明するトランシーバのような実際非常に廉価な2方向データ無線機である。とくにミニオン装置は、それぞれ本出願人の登録商標であり、以下に説明されるμミニオン(マイクロミニオン)装置110 、ゲートウェイミニオン装置120 またはジェオミニオン装置130 であってよい。これらのミニオン装置の1つの重要な特徴は、図1において矢印によって示されているように、それらが短いデータメッセージを互いに交換することができることである。各ミニオン装置はコミュニティの一部分となり、ある領域にわたってメッセージを伝送する負担を共有することができる。どのミニオン装置も、レンジ内の他のいずれのミニオン装置とも直接通信することができる。以下説明するように、これによってメッセージハンドオフおよび受領通知が容易になる。
【0012】?【0015】(省略)
【0016】
[ミニオンネットネットワーク]
ミニオンネットネットワークはグループと同じ方針に沿って動作する。各個人は、新たに入ってきた者を含む彼等の非常に親しい近隣の者とのみ会話する。小グループが全て並列に動作しているために、短期間で非常に多くの情報が交換される可能性が高い。移動するメッセンジャは、重要度の低い項目を抑制しながら重要なデータをあるグループから別のグループに送ることができる。電話機のような共有されるリソースは効率的に使用され、かつ廉価である。グループの個人の間で、あるいはミニオンネットネットワークの場合にはそのノード間で高レベルの協同動作が発生している。ミニオン装置はノードであってもよいため、ここではノードとはミニオン装置を指し、その逆にミニオン装置とはノードを指す。
【0017】(省略)
【0018】
[システムアーキテクチャ]
ミニオンネットネットワークの多数の可能な適用および構成が考えられるが、ここでは、それらのいくつかだけを開示する。たとえば、ミニオンネットネットワークは以下に説明するようにジェオロケーション(geolocation) ネットワークとして使用されてもよい。この環境において、これはフィールド内のミニオン装置のごく一部のものを、図3においてブロック図で示されているジェオミニオン(geoMinion) 装置130 として動作させることによって行われる。これらのジェオミニオン装置130 は、別のミニオン装置の位置を突きとめるためのアンカー地点として動作するようにすでに配置された衛星航法システム(GPS)とインターフェースする。
【0019】
全てのミニオン装置は、アンテナと、トランシーバを制御するためのマイクロプロセッサと、このマイクロプロセッサに関連したメモリと、および電源とを備えた無線トランシーバの形態の共通した構造を共に有していることが好ましい。トランシーバは同じ周波数で送受信し、それによってハードウェア要求が減少し、単一のフィルタがそのアンテナ上で送信および受信の両方を行うために使用されることが可能になる。これによって、同調または周波数選択装置もまた不要になる。
【0020】
図3に示されているように、ジェオミニオン装置130 は、GPS受信機300 とインターフェースするように構成されたμミニオン装置110 を含んでいる。GPS受信機300 は、このGPS受信機300 の位置の2元次または3次元表示を示すGPSと直接的に、あるいはオプションのGPS増強受信機310 を介して通信している。いくつかのジェオミニオン装置130 間における別のμミニオン装置110 の位置を突きとめることにより、μミニオン装置110 の近似的な位置を決定することができる。ジェオミニオン装置130 の電源オプションおよび電力制御は、以下図7に関して説明される。
【0021】
その代わりに、ミニオンネットネットワークは、アンカーされた物理的な位置を図1および2に示されているような仮想位置に関連付けるために使用されることができる。たとえばミニオンネットネットワーク内の地点は、メッセージ伝送時間およびネットワークローディングが最小化されるように、広域ネットワークに接続されなければならない。これは、フィールド内のミニオン装置のごく一部のものを、図4においてブロック図で示されているゲートウェイミニオン装置120 として動作させることによって達成される。これらのゲートウェイミニオン装置120 は、全国的なミニオンネットネットワークの中央管理コンポーネントに送信され、およびそこから発信されるメッセージのための集信装置として動作する。ゲートウェイミニオン装置の実際の広域接続は、ベル・サウス無線データモービテックス(登録商標)ネットワーク、CDPDを使用するセルラーベースのネットワーク、あるいはOrbcommのような衛星ベースのデータネットワークのような地上広域無線データネットワークによって設定されてもよい。
【0022】
図4に示されているように、ゲートウェイミニオン装置120 は、広域ネットワーク(WAN)インターフェース400 とインターフェースするように構成されたμミニオン装置110 を含んでいる。WANインターフェース400 は、μミニオン装置にデータを供給し、あるいはμミニオン装置からデータを受信する別のステーションと直接的に、あるいは無線で通信している。ゲートウェイミニオン装置120 の電源オプションおよび電力制御は、以下図7に関して説明される。
【0023】
ミニオンネットネットワークプロトコルの動的構成および自動経路設定特徴により、メッセージはそれらの発信元からそれらの最終的な目的地に最も効率的な方法によって導かれる。多数のミニオン装置はカバレージ、ジェオロケーションサービスおよび特定用途向け機能を増加させるように固定された位置に設置されるので、有線および無線構内ネットワークならびにその他既存のデータネットワークによってゲートウェイサービスを提供することが可能となる。全てのミニオン装置は全て同じ通信プロトコル、データフォーマットおよびデータレートを使用するため、ソフトウェアおよびハードウェア要求が減少すると共に、ネットワーク自身の簡単さが維持される。
【0024】
ゲートウェイサービスを個々のミニオン装置に提供するということは、図2に示されているように全てのミニオン装置が実効的にインターネットの一部分になるということである。状態問合せおよびデータメッセージは世界中のいずれのインターネットワークステーションからでも発信されることが可能であり、いずれのミニオン装置にも導かれることができる。中央ミニオンネットネットワークサーバおよび個々のミニオン装置の特定用途向け機能は、どのような要求されたレベルのセキュリティでも提供する。セキュリティの特徴には一般に、特定のデータに関する端末間保護を行なう一方で、ミニオンネットのネットワークの共有される特徴への完全な参加を依然として可能にするための頑強な公開キー暗号手法が含まれる。
【0025】
ミニオン装置間の仮想ジェオロケーションのメカニズムおよびルーチン通信はまた、正確な時間および日付の情報の配信を可能にする。ミニオン装置はそれらの内部時計を自動的に1ミリ秒内に同期させる。ミニオンネットのネットワーク信号はネットワーク中にわたってイベントを調整するために使用されることができる。ローカル時間変換情報を提供する日常的に送信されるデータメッセージは、特定用途向け装置が標準時間帯、夏時間変更およびうるう秒を追跡することを可能にする。ミニオン装置は、この重要な付加価値のある機能を多数の消費者製品に提供することができる。
【0026】
図5に示されているように、ミニオン装置の好ましい1実施形態は、ほぼ郵便切手のサイズの両面回路板上に含まれる無線トランシーバ500 、マイクロ制御装置510 およびデータメモリ520 から構成されている。マイクロ制御装置は、ミニオン装置の機能的ニーズを満足させるようにプログラムされることのできる任意のマイクロプロセッサまたは制御装置であることが好ましい。たとえば1つの好ましいマイクロ制御装置は、マイクロチップテクノロジー社製のモデル16F876である。このような制御装置の利点には、電源管理を可能にするビルトインアナログデジタル変換器と、制御信号に対して十分な数の入力と、単に結晶が制御装置に追加されるだけでよいようにするためのビルトインクロック発生器と、電池電力およびプログラム可能なメモリに対して許容可能にするための2.6ボルト等の非常に低い動作電圧とが含まれる。とくに、プログラム可能なメモリは、その制御装置の動作しているソフトウェアがミニオンネットネットワークシステムによって実際に変更されることができるように素早くフィールドプログラム可能であるオンチップフラッシュメモリであることが好ましい。このようにして、ミニオン装置は物理的に接続するか、あるいは再度プログラムされている特定のミニオン装置を処理する必要なしにミニオンネットネットワークシステムにより再度プログラムされることができる。
【0027】
トランシーバ500 は、その開示全体がここにおいて参考文献とされている米国特許第 5,787,117号明細書に開示されているような増幅器シーケンスドハイブリッド(ASH)トランシーバを含んでいることが好ましい。無線トランシーバは認可されていないISM帯域(たとえば、米国のFCCによって、およびその他いくつかの国の、とくに北米および南米の対応した規制機関によって認可されている現在902-928MHz)において1ミリワット未満の実効出力パワーで動作することが好ましいが、別の基準周波数およびパワー出力レベルを使用する別の実施形態もまた予想される。第2の周波数選択は欧州市場の大部分をカバーしなければならない。全てのミニオン装置は単一の周波数で送受信するため、トランシーバのほとんどのコンポーネントは、メッセージの送受信とそのメッセージが次のノードにハンドオフされたことを知らせるための受領通知の受信および送信の両方に使用される。これによって、スペクトラム拡散または周波数可変方法に固有の費用および複雑さの追加が解消される。その受信機は安定した廉価な直接変換形態である。ミニオン装置は周波数シンセサイザ、局部発振器、IFフィルタ、IF増幅器、またはアンテナ送受切換え器を備えていない。
【0028】
[非明示的および明示的受領通知]
メッセージの受信は、非明示的受領通知または明示的受領通知のいずれかによって確認されることができる。非明示的受領通知が発生するのは、発信元のミニオン装置が中間ミニオン装置を介して目的地ミニオン装置にメッセージを送信し、そのメッセージのコピーが中間ミニオン装置によって送信されているときにこれを発信元のミニオン装置が受信したときである。たとえば、ミニオン装置AおよびBが互いに通信しており、ミニオン装置BおよびCが互いに通信しており、ミニオン装置BおよびDが互いに通信していると仮定する。図6Cに示されているようにミニオン装置Fに到達するために通過されるミニオン装置Bに対して、ミニオン装置Aがメッセージを送信すると仮定する。ミニオン装置Aはメッセージを、これを受信するミニオン装置Bに送信する。ミニオン装置Bは、ミニオン装置Dがそのメッセージを次に受信すべきかどうかを決定し、そのメッセージをミニオン装置Dに送信する。ミニオン装置AおよびBは通信中であるので、ミニオン装置Bがミニオン装置Dに送信したとき、ミニオン装置Aもまたその送信されたものを受信し、これを、ミニオン装置Aが前にミニオン装置Bに送信した同じメッセージとして認識する。ミニオン装置Dが第1にミニオン装置Aからメッセージを受信しない限り、ミニオン装置Bはそのメッセージをミニオン装置Dにハンドオフすることができないので、これが、ミニオン装置Bがメッセージを受信したことを知らせる非明示的受領通知である。
【0029】?【0108】(省略)
【0109】
[アンテナおよび物理的実施形態]
無線装置のアンテナはケース内に組込まれ、無指向性カバレージを提供するように設計されている。図15に示されているように、アンテナAは両面回路板B自身上に印刷され、その回路板の周囲に巻き付けられている。これによって、アンテナは印刷回路板レイアウトの一部分として印刷されることが可能になる。アンテナは、ダイポールまたはjポールあるいはその他のアンテナ構造であってもよいが、一般に、回路板Bに埋設されることのできる接地平面GPを備えたモノポールとして機能する。回路板の他方の面上には、マイクロ制御装置510 と、メモリ540 と、および電池電源(破線で示されている)に接続するためのコネクタ(+および-)が取付けられている。その代わりに、図16に示されているように、アンテナは、回路板Bから延在し、埋設された接地平面GPを有する配線の一部分の形態のホイップアンテナA´であってもよい。たとえば、トラフィック符号ポストP上に取付けられたミニオン装置Mは長さ1フィートの1/4波長ホイップコイルWCを、そのハウジングH(図17参照)内に、あるいはそのハウジングから吊り下げられて備えていてもよい。そのハウジングは、図17に示されているように電池を収容するためのエンドキャップを備えたPCVパイプであってもよい。ミニオンはいくつかの方法で取付けられることができる。1つの好ましい方法は、カメラ、センサおよび他のトラフィックモニタ装置をトラフィック信号規格で取付けるために使用される標準取付けブラケットSMBを使用することである。その代わりに、PVCパイプは、電池を再充電するように太陽電池の一部分として機能するアモルファスシリコンSASの外部スリーブによって被覆されてもよい。指向性が所望または要求される場合には、3素子八木アンテナのような利得を有するビームアンテナ、または反射器を有するアンテナが使用されてもよい。たとえば、あるミニオン装置が、道路のどちらの側に別のミニオン装置が配置されているかを知っている必要のある状況において、指向性アンテナが使用される。また、警察車両上のミニオン装置は、別の車両上に配置されたミニオン装置の正面においてそれに直接集中して問合せるための指向性アンテナを有していてもよい。無指向性アンテナは実際には実現されず、環境的な制限はネットワークの動作の予測される一部分である。トランシーバの動作範囲は固定された距離ではなく、むしろ確率関数として考察すべきである。したがって、無線装置間におけるメッセージ交換が成功する可能性は、スペースでのそれらの位置の関数である。このようにして考えた場合、伝送エラーの全ての原因は単一の機能に取り込まれることができる。これは、固定長のメッセージに対して許されるビットエラーレートをとって、受信が成功する確率を決定することに類似している。配線ネットワークとは異なり、無線ネットワークのエラーレートは空間的に分布している。
【0110】
すなわち、ミニオン装置の実効的範囲が100フィートから300フィートまで変化すると考える。特定用途向けアンテナおよびパッケージ設計の使用により、そのカバレージエリアの付加的な制御が可能である。オプションの特定用途向けインターフェースは、車両、ドアロック、ユーティリティメーター、電気機器、ビルディング制御、ユーザディスプレイ、およびユーザキーボードへのインターフェースを含んでいる。特定用途向けインターフェースはまた、磁束、温度、気象、加速度、高度および圧力用センサのような外部センサにリンクしてもよい。
【0111】
大部分のミニオン装置に対して使用されるアンテナは、技術的に知られている任意の無指向性アンテナが使用されるように、全方向性カバレージを実現するように設計されている。
【0112】
いくつかの適用において、ミニオン装置は、それが特定の領域においてのみ、または別のあるミニオン装置だけと通信するように、指向性が与えられる指向性アンテナを必要とする。これは従来技術においてよく知られている指向性アンテナによって、あるいはナルを有する他のセクタに関して制限された受信セクタを有するように上述のアンテナを電子工学的に同調することによって達成される。また、アンテナの指向性は、パラボラ反射器のほうを向いた別のアンテナだけが反射器内のアンテナと通信することができるようにパラボラ反射器と組合せられたアンテナを使用する等の、シールドまたは反射器内にアンテナを配置することによって制御されることができる。非常の多数のミニオン装置間に生じる非常に多量の混信を回避するために、アンテナは一般に約100mの距離範囲を有している。その実効範囲を特定の方向において10mをはるかに越える大きさに増大させるために、特定の方向の利得を提供するように設計されたアンテナが使用されてもよい。各ミニオン装置、とくにμミニオン装置に関して最もコンパクトなサイズを維持するために、またμミニオン装置に対して高い効率は常に要求されないために、アンテナは、ミニオン装置の他のコンポーネントを含む印刷回路板上に構成されて取付けられることが好ましい。いくつかの適用には外部アンテナが必要である。たとえば、ミニオン装置の近くの別の装置のせいで生じたRF妨害のためにそのmμミニオン装置回路を遮蔽室内に収容する必要がある場合に外部アンテナが使用されることができる。このような場合、適切な相互接続ケーブルがミニオン装置と外部アンテナとの間で使用されることができる。
【0113】
[電源]
図7に示されているように、自給ミニオン装置は、以下の電源の1以上のものによって給電される:
(1)主電池;いくつかの適用ではユーザ交換可能な電池を使用している。電池交換の必要性を示すあるメカニズムが必要となる。いくつかの適用では使い捨てのミニオン装置が可能であり、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が単一の電池から獲得可能である。
(2)再充電可能な電池;充電機能を提供するために別の電源と共に使用される。主として、電源が信頼性の低いものであるか、あるいは間欠性のものである適用向きである。また、電源への不正変更が検出および報告されなければならない状況において適用可能である。
(3)太陽電池;一般に、再充電可能な電池の充電に適用可能である。また、主電池の寿命を延長するために補足的な電源として使用されることができる。
(4)スーパーキャパシタ;再充電可能な電池の代わりになるものである。化学反応を必要としないので、電池には高温過ぎるか、あるいは低温過ぎる苛酷な環境に適している。
(5)熱電気;温度差は、利用可能な電源が他にない環境においてミニオン装置を動作させるのに十分な電力を生じさせることができる。
【0114】?【0121】(省略)
【0122】
ミニオン装置によって送信された各メッセージは、発信元のミニオン装置IDおよび最終目的地IDを有しており、結果的に、そのプロセスにおいて1以上のゲートウェイによる伝送が行われる。通常、IDはミニオン装置の製造番号である。いくつかのIDはとくに重要である。ナルミニオン装置(IDゼロ)は、あるエリア内の全ての受信端末に対して放送され、実際に意図されたメッセージの目的地として使用される。特定用途向けミニオン装置は、その用途に対応したデータベースを表す最終目的地IDにデータを送信する。ミニオンネットのネットワークは、メッセージを正しいサーバに転送するゲートウェイミニオン装置にそのメッセージを経路設定する。
【0123】
各ミニオン装置は、以下のフィールドを含んでいるメッセージルーティングテーブルを維持している:
(1)ターゲットミニオン装置ID;メッセージが到達する必要のあるミニオン装置のID、
(2)中間ミニオン装置ID;メッセージをターゲットに送るために使用すべきミニオン装置のID、
(3)ホップ;メッセージを中間ミニオン装置を介してターゲットミニオン装置に送るために必要なホップの数、
(4)満期;このテーブルエントリが有効ではなくなる時間、
(5)中間ミニオン装置属性;ミニオン装置に送信するために要求されるそのパワーセーブ状態、信号強度および送信パワーレベルのようなそのミニオン装置に関する情報。
【0124】
ルーティングテーブルは、特定の受信端末に対するメッセージではなく、受信された全てのメッセージをスヌープ(snoop) することによって維持される。したがって、全てのメッセージトラフィックは、ルーティングテーブルの更新だけのために調整された追加のトラフィックを発生させずに、全てのミニオン装置において正しいルーティングテーブルを維持することを助ける。
【0125】?【0228】(省略)
【0229】
[ハンディキャップ補助]
出口ロケータ…ミニオン装置は公共のビルの出口、階段、休憩所等に設置されることができる。ハンディキャップまたは視覚的に傷害のある人々は、これらの位置を迅速に突き止め、通路に沿って障害物または危険物を警告されるように持ちまたは車椅子に取り付けられたミニオン装置を使用する。緊急避難では、これらは緊急救助人員によるハンディキャップのある人の補助を可能にすることと反対の機能をする。」
(2) 図1

(3) 図5

(4) 図6C

(5) 図7


2 引用発明
(1) 上記1(5)図7、及び上記1(1)段落0113によると、引用例10には、「(2)再充電可能な電池」及び「(3)太陽電池」とは異なるカテゴリーとして、「そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池」を備える「使い捨ての自給ミニオン装置」が記載されているといえる。
(2) 上記1(3)図5、及び上記1(1)段落0019、0026によると、引用例10には、ミニオン装置110が、アンテナと、ミニオンネット無線トランシーバ500、及びマイクロ制御装置510とを備え、アンテナが、ミニオンネット無線トランシーバ500及びマイクロ制御装置510により駆動されるものであることがみてとれる。
また、使い捨ての自給ミニオン装置においては、ミニオンネット無線トランシーバ500及びマイクロ制御装置510が電池により駆動されることは明らかである。
(3) 上記1(1)段落0010の「メッセージは多数の装置間“ホップ”によって自動的に経路設定され、ロバストな領域カバレージ、冗長性および耐雑音性を与えると共に動的な経路設定および再構成を行う。」、また、段落0023の「ミニオンネットネットワークプロトコルの動的構成および自動経路設定特徴により、メッセージはそれらの発信元からそれらの最終的な目的地に最も効率的な方法によって導かれる。」との記載よれば、引用例10には、ミニオン装置により構成されるミニオンネットネットワークにおいて、メッセージの経路設定、すなわちルーティングが行われることが記載されているといえる。
また、上記1(4)図6C、及び上記1(1)段落0028によると、引用例10記載のミニオン装置Bは、ミニオン装置Aからメッセージを受信し、ミニオン装置Dがそのメッセージを次に受信すべきかどうかを決定し、そのメッセージをミニオン装置Dに送信する。
そして、同様に互いに通信可能なミニオン装置Cではなくミニオン装置Dのみを宛先として、ミニオン装置Aから受信したメッセージを送信するミニオン装置Bの上記動作は、ネットワークにおいてデータの通信経路を決定するルーティング動作といえる。
更に、上記1(1)段落0123によると、ミニオン装置は、メッセージルーティングテーブルを維持していることからも、引用例10記載のミニオン装置がルーティング動作を行うことは明らかである。
加えて、ミニオン装置の通信制御がマイクロ制御装置510により行われることは明らかであるから、通信制御に含まれるルーティング動作はマイクロ制御装置510により行われているといえる。
(4) 上記1(1)段落0023には、「多数のミニオン装置はカバレージ、ジェオロケーションサービスおよび特定用途向け機能を増加させるように固定された位置に設置される」と、また、上記1(1)段落0229には、「ミニオン装置は公共のビルの出口、階段、休憩所等に設置されることができる。」と記載されているから、引用例10記載のミニオン装置は、固定設置されるものといえる。
(5) 以上を踏まえると、引用例10には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「再充電可能な電池、及び太陽電池とは異なる、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池と、
電池により駆動されるマイクロ制御装置510及びミニオンネット無線トランシーバ500と、
ミニオンネット無線トランシーバ500及びマイクロ制御装置510により駆動されるアンテナと、を備え、
マイクロ制御装置510はルーティング動作を行い、
固定設置される使い捨ての自給ミニオン装置。」

3 引用例11及び公知技術について
当審拒絶理由で引用した特開平10-51858号公報(以下「引用例11」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)
(1)「【0039】なお、以上はMS3による発呼時の通話制限を述べたが、使用限度をオーバした様なMS3については、該MS3宛の着信呼を受け付けないように構成してもよい。図8は第3の実施の形態(移動機主導バッテリー管理型)による使い捨て移動機MS4の構成を示す図である。
【0040】このMS4も自ら使用限度の管理を行う使い捨て移動機であり、MS4のメモリ52はCPU51が実行する図9の制御プログラムと、移動局番号等のデータを記憶している。但し、使用限度の管理はバッテリー7の寿命で行う。このために、バッテリー7はMS4の本体内に封止されており、かつ外部からはバッテリー交換もバッテリー充電もできない。一方、電源スイッチ部8は、機械的にも電気的にも電源ONのみ可能であり、電源キーPWにより一旦電源ONすると、その後は電源OFFできない。更に、このバッテリー7は、MS4の使用(契約)期間に応じた電源容量を備えており、使用期間が例えば3カ月の場合は、MS4を通常の頻度で使用した場合に3カ月の使用に十分耐える電源容量を備える。なお、MS4で連続通話した様な場合は、通話電力は待ち受け電力よりも大きいので、3カ月以前に使用出来なくなる場合も有る。
【0041】このように、MS4は、契約(使用)期限を経過すると、バッテリー7が消耗して使用できない。従って、移動体交換機の側では、基本的には、MS4については何らの期限管理を行う必要はない。従って、このようなMS4は既存の移動交換システムに別段の変更を加えることなく容易に導入できる。しかし、MS4の通話中に契約期限(別途に契約期限が設けられている場合)を越える場合があり、又は悪意でバッテリー交換され、使用期限が実質的に大幅に延びる場合がある。そこで、この実施の形態による移動体交換機は、確認的な意味で、期限管理を行う。」

(2) 上記(1)により、引用例11には下記の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認める。
「バッテリーを本体内に封止し、外部からバッテリー交換もバッテリー充電もできない使い捨て移動機。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
1 引用発明の「再充電可能な電池、及び太陽電池とは異なる、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池」は、「着脱交換不能な」と特定されていないものの、「他電源受給路を有さない自律型電源(太陽電池を利用するものを除く)」といえる点で本願発明と共通する。
2 引用発明の「ミニオンネット無線トランシーバ500」は、「通信回路」といえる。そして、引用発明の「マイクロ制御装置510及びミニオンネット無線トランシーバ500」を、「通信回路を含む通信制御回路」と呼称することは任意である。
してみると、引用発明の「電池により駆動されるマイクロ制御装置510及びミニオンネット無線トランシーバ500」は、本願発明の「前記自律型電源にて駆動される通信回路を含む通信制御回路」に対応する。
3 引用発明の「ミニオンネット無線トランシーバ500及びマイクロ制御装置510により駆動されるアンテナ」は、本願発明の「前記通信制御回路にて駆動されるアンテナ」に相当する。
4 ルーティング動作を行うマイクロ制御装置510はルーティング機能手段を有するといえるから、引用発明は「前記通信制御回路はルーティング機能手段を有する」といえる点で本願発明と一致する。
5 特に大型の無線装置と特定されていない自給ミニオン装置は、「小型」の無線装置を含むといえるから、引用発明の「固定設置される使い捨ての自給ミニオン装置」は、「固定設置する自律型小型無線装置」といえる点で本願発明と一致する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致、及び相違する。
一致点
「 他電源受給路を有さない自律型電源(太陽電池を利用するものを除く)と、
前記自律型電源にて駆動される通信回路を含む通信制御回路と、
前記通信制御回路にて駆動されるアンテナと、
を備え、
前記通信制御回路はルーティング機能手段を有する固定設置する自律型小型無線装置。」

相違点
一致点である「他電源受給路を有さない自律型電源(太陽電池を利用するものを除く)」が、本願発明では、「着脱交換不能な」であるのに対し、引用発明では、引用発明の自給ミニオン装置が「使い捨て」であり、「再充電可能な電池、及び太陽電池とは異なる、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池」により給電されるものの、電池が「着脱交換不能な」と特定されていない点。

第6 判断
第4 3(2)のとおり、「バッテリーを本体内に封止し、外部からバッテリー交換もバッテリー充電もできない使い捨て移動機。」は公知技術である。そして、引用発明と公知技術とは、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池により給電される機器である点で共通する技術分野に属するから、引用発明に公知技術を適用し、引用発明の「再充電可能な電池、及び太陽電池とは異なる、そのユニットの寿命に対して十分な電池寿命が獲得可能である単一の電池」を外部からバッテリー交換できないように本体内に封止すること、すなわち、「着脱交換不能な」ものとすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。

なお、ここで、引用発明の公知発明としての適格性について検討する。
1 請求人は平成31年1月7日提出の意見書「(1) 理由1について」において、引用例10に記載の技術は、特許法第29条第1項第3号の電気通信回線を通じて公衆に「利用可能となった発明」に該当しないと反論している。
しかしながら、公表特許公報である引用例10(特表2003-508939号公報)は出願前に日本国内において「頒布された刊行物」といえるから、引用例10の記載事項に基づいて認定した引用発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される、日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に該当する。
2 請求人が、平成31年1月7日提出の意見書「(1) 理由1について」において、引用例10に記載の技術は、いわゆる当業者が実施をすることができる程度に明確、かつ十分に記載されていないと反論している点についても検討する。
引用発明の公知発明としての適格性については、「特許出願前に「頒布された刊行物に記載された発明」というためには、特許出願当時の技術水準を基礎として、当業者が当該刊行物を見たときに、特許請求の範囲の記載により特定される特許発明等の内容との対比に必要な限度において、その技術的思想を実施し得る程度に技術的思想の内容が開示されていることが必要であり、かつ、それで足りると解するのが相当である。例えば、特許発明等が「物」の発明の場合にあっては、特許発明等と対比される刊行物の記載としては、その「物」の構成が、特許発明等の内容との対比に必要な限度で開示されていることが必要であるが、当業者が、当該刊行物記載及び特許出願時の技術常識に基づいて、その「物」を入手又は製造し、使用することができれば、必ずしも、当該刊行物にその「物」を製造する具体的な方法が開示されている必要はなく、また、当該刊行物に記載された具体的な「物」それ自体でなくても、特許発明等の内容との対比に必要な限度でその「物」と同一性のある構成の「物」を入手又は製造し、使用することが可能であれば、それで足りるというべきである。」(平成18年(行ケ)第10316号)と判示されている。
(1) そこで、まず、引用発明が引用例10の記載に基づいて当業者が製造し、使用することができるものかどうか検討する。
ア 引用発明が備える電池については、再充電可能な電池、及び太陽電池とは異なる一般的な電池で、当業者が実施し得ることは明らかである。
イ 引用発明が備える「マイクロ制御装置510」については、上記1(1)段落0026の「マイクロ制御装置は、ミニオン装置の機能的ニーズを満足させるようにプログラムされることのできる任意のマイクロプロセッサまたは制御装置であることが好ましい。」との記載に基づき、任意のマイクロプロセッサで当業者が実施し得ることは明らかである。
ウ 引用発明が備える「ミニオンネット無線トランシーバ500」については、上記1(1)段落0027の「トランシーバ500 は、その開示全体がここにおいて参考文献とされている米国特許第 5,787,117号明細書に開示されているような増幅器シーケンスドハイブリッド(ASH)トランシーバを含んでいることが好ましい」との記載に基づけば、公知のASHトランシーバで当業者が実施し得ることは明らかである。
エ 引用発明が備えるアンテナについては、上記1(1)段落0109?0112の記載に基づけば、任意の無指向性アンテナ、又は、任意の指向性アンテナで当業者が実施し得ることは明らかである。
オ ネットワーク中のノードにおけるルーティング動作については、長文のため摘記を割愛したが、引用例10の段落0034?0108のマイクロ制御装置510によるトランシーバ500の制御についての記載、段落0257?0370にはμミニオンファームウェアの概要についての記載に基づき当業者が実施し得るといえる。
カ 装置を固定設置する点については、当業者が適宜なし得る事項といえる。
したがって、上記ア?カによると、引用発明は、引用例10の記載に基づいて当業者が製造し、使用することができるものといえる。
(2) 更に、出願時の技術常識についても検討する。
ルーティング動作を行う無線デバイスは、例えば、ZigBee SPECIFICATION、ZigBee Document 053474r20、ZigBee Alliance、2012年9月7日、http://www.zigbee.org/wp-content/uploads/2014/11/docs-05-3474-20-0csg-zigbee-specification.pdfの「2.5.5.5.2 ZigBee Router」「3.6.3 Routing」に示される通信規格に定められた、本願出願時における技術常識である。
また、無線デバイスが、電池を含む電源、制御装置、無線トランシーバー、アンテナで構成されることは明らかであるから、引用発明は、引用例10の記載及び本願の出願時の技術常識に基づいても、当業者が製造し、使用することができるものといえる。
(3) 上記(1)又は(2)のとおり、引用例10は、「特許出願当時の技術水準を基礎として、当業者が当該刊行物を見たときに、特許請求の範囲の記載により特定される特許発明等の内容との対比に必要な限度において、その技術的思想を実施し得る程度に技術的思想の内容が開示されている」といえるから、本願発明の進歩性の有無を判断するため、引用発明を「頒布された刊行物に記載された発明」、すなわち特許法第29条第1項第3号の公知発明として、本願発明と対比することに問題はない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-05 
結審通知日 2019-02-06 
審決日 2019-02-22 
出願番号 特願2016-182086(P2016-182086)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 真治▲郎▼  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 松永 稔
倉本 敦史
発明の名称 自律型小型無線装置及びその分散設置方法  
代理人 工藤 一郎  

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