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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H02S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02S
管理番号 1359509
審判番号 不服2018-15317  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2020-02-05 
事件の表示 特願2016-144207「太陽光モジュール及びこれを備えた太陽光システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 28993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)7月22日(パリ条約による優先権主張2015年7月23日、韓国)の出願であって、平成29年5月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成29年8月30日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年12月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成30年6月25日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成30年7月12日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年7月17日に請求人に発送された。これに対して、同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年11月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のように補正された(下線は当審で付与。以下同じ。)。
「【請求項1】
太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールからの直流電源を変換するコンバーター部と、
前記コンバーター部からの前記直流電源を交流電源に変換するインバーターと、
第1電源端子、第2電源端子及び接地端子を含み、前記インバーターからの交流電源を外部に出力するプラグと、
前記インバーターと前記プラグの間に接続され、前記プラグの前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子にそれぞれ電気的に連結される第1電源ライン、第2電源ライン及び接地ラインを含む、交流電源ケーブルとを含み、
前記太陽電池モジュールの接地と前記インバーターを含むジャンクションボックスの接地との電気的連結のために、前記太陽電池モジュールの金属フレームと前記ジャンクションボックスの導電性フレームと電気的に接続され、
前記ジャンクションボックスの導電性フレームと前記インバーターの接地は電気的に連結され、
前記プラグの接地端子は、
交流電源ケーブルを介して前記インバーターの接地と電気的に連結され、
前記太陽電池モジュールの接地は、前記ジャンクションボックスの導電性フレームを介して前記インバーターの接地と電気的に連結され、
前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子を含む前記プラグは、統合コネクタの複数のコネクタの第1コネクタと電気的に接続され、
前記統合コネクタは、前記複数のコネクタを介して入力された交流電源を並列で結合し、並列で結合された交流電源を出力し、
前記統合コネクタは接地端子を含む統合プラグと電気的に接続され、
前記統合プラグは、建物内外のアウトレットの各端子と電気的に連結される、太陽光モジュール。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
上記(1)の本件補正の特許請求の範囲の請求項1に対応する、本件補正前の、平成30年6月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
太陽電池モジュールと、
前記太陽電池モジュールからの直流電源を変換するコンバーター部と、
前記コンバーター部からの前記直流電源を交流電源に変換するインバーターと、
第1電源端子、第2電源端子及び接地端子を含み、前記インバーターからの交流電源を
外部に出力するプラグと、
前記インバーターと前記プラグの間に接続され、前記プラグの前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子にそれぞれ電気的に連結される第1電源ライン、第2電源ライン及び接地ラインを含む、交流電源ケーブルとを含み、
前記太陽電池モジュールの接地と前記インバーターを含むジャンクションボックスの接地との電気的連結のために、前記太陽電池モジュールの金属フレームと前記ジャンクションボックスの導電性フレームの間に接続され、
前記ジャンクションボックスの導電性フレームと前記インバーターの接地は電気的に連結され、
前記プラグの接地端子は、
交流電源ケーブルを介して前記インバーターの接地と電気的に連結され、
前記太陽電池モジュールの接地は、前記ジャンクションボックスの導電性フレームを介して前記インバーターの接地と電気的に連結され、
前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子を含む前記プラグは、建物内外のアウトレットの各端子に連結される、太陽光モジュール。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プラグ」と「建物内外のアウトレットの各端子」の連結について、本件補正事項のとおりの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1の記載事項
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、米国特許出願公開第2012/0024563号明細書(2012年2月2日公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「[0001]The invention relates generally to photovoltaic (PV) systems and more particularly to a system and method of implementing intra-module dc grounding for a system of PV ac modules.」
(仮訳;[0001] 本発明は、全般的に光起電力(PV)システムと、より具体的には、PV ACモジュールのシステム用の内部モジュールDC接地を実装するシステムおよび方法に関連するものである。)

b 「DETAILED DESCRIPTION
・・・
[0030]FIG. 3 illustrates a PV ac-voltage module grounding system 30 according to one embodiment of the invention. System 30 comprises a plurality of dc-ac micro-inverters 32 . Each micro-inverter 32 is internally connected to a respective chassis ground or case 36 described in further detail herein with respect to FIG. 4 . Each micro-inverter 32 is also integrated with a corresponding PV dc-voltage module 34 to provide a corresponding ac-voltage module 38 . Each ac-voltage module 38 comprises a metallic enclosure or case 40 that includes a male ac-voltage plug and play connector 42 and a female ac-voltage plug and play connector 43 .」
(仮訳;[0030] 図3は、発明の一つの実施例による、PV AC電圧モジュールの接地システム30を示している。システム30は、複数のDC-ACマイクロインバータ32を含む。各マイクロインバータ32は、それぞれの筐体グランドまたは図4に関連してさらに詳細に説明されているケース36に内部で接続されている。各マイクロインバータ32は、対応するAC電圧モジュール38を提供するため、PV-DC電圧モジュール34に組み込まれる。各AC電圧モジュール38は、金属容器またはオス型AC電圧プラグと活線挿抜コネクタ42およびメス型AC電圧プラグと活線挿抜コネクタ43を含むケース40を含む。)

c 「[0031]According to one embodiment, each male ac-voltage plug and play connector 42 comprises a pair of 120V ac-voltage pins 80 , a neutral conductor pin 82 and a dc ground conductor pin 60 such as depicted in FIG. 9 . Each corresponding female plug and play connector 43 comprises a pair of 102V ac-voltage slots 81 , a neutral conductor slot 83 and a dc ground conductor slot 61 such as depicted in FIG. 10 . Each plug and play connector dc ground conductor 60 is electrically connected internal to its corresponding micro-inverter 32 to a respective micro-inverter chassis/ground which may be, for example, the micro-inverter case 36 .」
(仮訳;[0031] 一つの実施例によれば、各オス型AC電圧プラグおよび活線挿抜コネクタ42は、図9で説明したような120V AC電圧ピン80のペア、無極性導体ピン82およびDCグラウンド導体ピンを含む。対応する各メス型プラグおよび活線挿抜コネクタ43は、図10で説明しているように、102V(審決注;120Vの誤記と認める。) AC電圧スロット81、無極性導体スロット83、DCグラウンド導体スロット61を含む。各プラグおよび活線挿抜コネクタDC導体60は、対応するマイクロインバータ32、例えばマイクロインバータケース36である対応するマイクロインバータ筐体/グラウンドに電気的に接続されている。)

d 「[0032]The metal case 36 of each micro-inverter 32 is mechanically and electrically attached to the metallic frame 40 of a corresponding ac-voltage module 38 via, for example, a metallic frame attachment bracket 44 to form a low resistance grounding contact between the micro-inverter metal case 36 and the corresponding ac-voltage module metallic frame 40 .」
(仮訳;[0032] 各マイクロインバータ32の金属ケース36は、例えば、金属フレーム取り付けブラケット44を介して、対応するAC電圧モジュール38の金属フレームに機械的、電気的に装着され、マイクロインバータ金属ケース36と対応するAC電圧モジュール金属フレーム40の間の接地抵抗が低くなるようにしている。)

e 「[0033]The micro-inverter dc inputs are connected to the ac-voltage module 38 through corresponding junction box 47 connectors 48 . Each junction box 47 houses the normal +/- dc wiring/connectors of a PV module 34 and a micro-inverter 32 . Since each micro-inverter case 36 is also electrically coupled to the metallic frame 40 of its corresponding ac-voltage module 38 , the ground pin in each of the plug and play connectors 42 , 43 automatically grounds all of the module frames 40 that are interconnected through the plug and play connectors 42 , 43 .」
(仮訳;[0033] マイクロインバータDC入力は、対応する配線接続箱47のコネクタ48を通じて、AC電圧モジュールに接続されている。各配線接続箱47には、PVモジュール34の通常の+/?DC配線/コネクタおよびマイクロインバータ32を収納している。各マイクロインバータケース36は対応するAC電圧モジュール38の金属フレーム40に電気的に結合しているため、プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43の接地ピンは、プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43を通じて内部で接続しているすべてのモジュールフレームを自動的に接地している。)

f 「[0035]FIG. 4 is a more detailed diagram illustrating the dc grounding conductor path 60 carried through ac-power plug and play connectors 42 , 43 shown in FIG. 3 . The plug and play connectors 42 , 43 carry a dc-voltage ground connection from ac-voltage module 38 to ac-voltage module 38 through the plurality of ac-voltage modules 38 . Each dc-ac micro-inverter 32 comprises a metallic case 36 that is mechanically connected or bonded to the metallic case of its corresponding PV dc-voltage module 34 via a metallic electrically conductive mounting bracket 44 . Each ac-voltage module 38 comprises a male ac power connector 42 and a female ac power connector 43 . Each power connector 42 , 43 includes a dc grounding conductor that is connected to a corresponding micro-inverter 32 chassis/ground (case) 36 internal to its corresponding dc-ac micro-inverter 32 as shown. Each power connector 42 , 43 further includes ac-voltage pins 62 and a neutral grounding pin 64 according to one embodiment. Since each micro-inverter case 36 is electrically coupled to the metallic frame 40 of its corresponding ac-voltage module 38 , the ground pins in the plug and play power connectors 42 , 43 automatically ground all of the module frames 40 via grounding path 60 when all of the ac-voltage modules 38 are installed into a frame structure such as illustrated in FIG. 3 .」
(仮訳;[0035] 図4は、図3に示すAC電源プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43をDC接地導体経路60をより詳細に図で示したものである。プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43は、複数のAC電圧モジュール38を通ってAC電圧モジュール38からAC電圧モジュール38にAC電圧接地接続を担っている。各DC-ACマイクロインバータ32は、金属の電気的に導電性のある取り付けブラケット44を介して、対応するPV DC電圧モジュール34の金属ケースに機械的に接続または接着されている、金属ケース36を含む。各AC電圧モジュール38は、オス型AC電源コネクタ42およびメス型AC電源コネクタ43を含む。各電源コネクタ42、43は、図に示すように、対応するDC-ACマイクロインバータ32の内側の対応するマイクロインバータ32の筐体/グラウンド(ケース)36に接続されたDC接地導体を含む。一つの実施例によれば、各電源コネクタ42、43はさらにAC電圧ピン62および無極性接地ピン64を含む。各マイクロインバータケース36は対応するAC電圧モジュール38の金属フレーム40に電気的に結合しているため、プラグおよび活線挿抜電源コネクタ42、43の接地ピンは、すべてのAC電圧モジュール38が、図3に示すようなフレーム構造に実装されたとき、接地経路60を介してすべてのモジュールフレーム40を自動的に接地する。)

g 「[0040]The mating male-female electrical ac-power connectors 42 , 43 thus implement intra-module dc grounding for a system of PV ac-modules 38 having metallic/conductive frames 40 . While a conventional approach requires the attachment of grounding wires or conductive clips to individual modules during installation that is time consuming and adds to installation costs, the male-female electrical connectors 42 , 43 circumvent such requirements by adding a grounding connector pin to the ac-voltage electrical connectors 42 , 43 that provides for module 38 interconnections and by arranging the grounding connector pin to be electrically connected to a corresponding micro-inverter chassis, case or equipment ground 36 and for the case 36 of the micro-inverter 32 to be grounded to the module frame 40 upon its attachment.」
(仮訳;[0040] 結合しているオス型?メス型AC電源電気コネクタ42、43は、金属/導電性フレーム40を有するPV ACモジュール38のシステム用の内部モジュールDC接地をこのように実装している。従来型の方法では、実装する際に接地ワイヤまたは導電性クリップの各モジュールへの装着が必要であるが、これは時間がかかり、実装コストも余分にかかる。オス型?メス型電気コネクタ42、43は、モジュール38を内部接続するためのAC電圧電気コネクタ42、43に接地コネクタピンを追加し、対応するマイクロインバータ筐体、ケース、または機器のグラウンド36に電気的に接続するように、マイクロインバータ32のケース36の場合は、取り付け具の上にモジュールフレーム40に接地されるように接地コネクタピンを配置することでこのような要件を回避している。)

h FIG.3は以下のとおりである。


i FIG.4は以下のとおりである。


j FIG.9、FIG.10は以下のとおりである。


(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記記載及びFIG.3から、複数のPV(光起電力)AC電圧モジュール38からなるPVモジュールが構成されていることが看て取れる。

b 「ケース36」、「金属ケース36」、「マイクロインバータ金属フレーム36」、「マイクロインバータケース36」は、「金属ケース36」を意味していると解される。

c 「ケース40」、「AC電圧モジュール金属フレーム40」、「AC電圧モジュール38の金属フレーム40」、「モジュールフレーム40」は、「AC電圧モジュール金属フレーム40」を意味していると解される。

d 上記(ア)、a?cから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「複数のPV(光起電力)AC電圧モジュール38からなるPVモジュールであって、
PV AC電圧モジュールの接地システム30は、複数のDC-ACマイクロインバータ32を含んでおり、各マイクロインバータ32は、金属ケース36に内部で接続されており、各マイクロインバータ32は、対応するAC電圧モジュール38を提供するため、PV-DC電圧モジュール34に組み込まれ、各AC電圧モジュール38は、オス型AC電圧プラグと活線挿抜コネクタ42およびメス型AC電圧プラグと活線挿抜コネクタ43を含むAC電圧モジュール金属フレーム40を含んでおり([0030])、
各オス型AC電圧プラグおよび活線挿抜コネクタ42は、120V AC電圧ピン80のペア、無極性導体ピン82およびDCグラウンド導体ピンを含み、対応する各メス型プラグおよび活線挿抜コネクタ43は、120V AC電圧スロット81、無極性導体スロット83、DCグラウンド導体スロット61を含み、各プラグおよび活線挿抜コネクタDC導体60は、対応するマイクロインバータ32、例えば金属ケース36に電気的に接続されており([0031])、
各マイクロインバータ32の金属ケース36は、例えば、金属フレーム取り付けブラケット44を介して、対応するAC電圧モジュール38の金属フレームに機械的、電気的に装着され、金属ケース36と対応するAC電圧モジュール金属フレーム40の間の接地抵抗が低くなるようにしており([0032])、
マイクロインバータDC入力は、対応する配線接続箱47のコネクタ48を通じて、AC電圧モジュールに接続されており、各配線接続箱47には、PVモジュール34の通常の+/?DC配線/コネクタおよびマイクロインバータ32を収納しており、各金属ケース36は対応するAC電圧モジュール金属フレーム40に電気的に結合しているため、プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43の接地ピンは、プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43を通じて内部で接続しているすべてのモジュールフレームを自動的に接地しており([0033])、
プラグおよび活線挿抜コネクタ42、43は、複数のAC電圧モジュール38を通ってAC電圧モジュール38からAC電圧モジュール38にAC電圧接地接続を担っており、各AC電圧モジュール38は、オス型AC電源コネクタ42およびメス型AC電源コネクタ43を含み、各電源コネクタ42、43は、対応するDC-ACマイクロインバータ32の内側の対応する金属ケース36に接続されたDC接地導体を含んでおり、一つの実施例によれば、各電源コネクタ42、43はさらにAC電圧ピン62および無極性接地ピン64を含んでおり、各金属ケース36は対応するAC電圧モジュール金属フレーム40に電気的に結合しているため、プラグおよび活線挿抜電源コネクタ42、43の接地ピン64は、すべてのAC電圧モジュール38が、フレーム構造に実装されたとき、接地経路60を介してすべてのAC電圧モジュール金属フレーム40を自動的に接地している([0035])、
PVモジュール。」

イ 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2007-259694号公報(平成19年10月4日公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【発明の分野】
【0002】
[0002]本発明は、一般的には、直流(DC)を交流(AC)に変換するインバータに関する。より詳細には、本発明は、DCをACに変換するための変換パラメータを動的に選択するマイクロインバータに関する。」

b 「【0011】
[0018]発電システム100は、複数のマイクロインバータ1021、1022、...、102n、ジャンクションボックス104、配電盤106、複数の光起電性パネル1081、1082、...、108n、および電気計器110を備える。システム100は、電力網112、電気器具116、または、それらの両方へ電力を供給する。複数の光起電性パネル1081、1082、...、108nは、当分野においてよく知られているものであり、太陽エネルギーからDC電力を生成するのに使用される。複数の光起電性パネル1081、1082、...、108n(ここでは、太陽電池パネルとも呼ばれる)は、どのような寸法または形状を有していてもよい。システム100は、8つの光起電性パネル1081、1082、・・・、108nを備えて示されるが、システム100は、どのような数の光起電性パネル108を含んでもよい。
【0012】
[0019]それぞれの光起電性パネル1081、1082、・・・、108nは、マイクロインバータ1021、1022、・・・、102nに結合される。マイクロインバータ1021、1022、・・・、102nは、複数の光起電性パネル1081、1082、・・・、108nによって生成されたDC電力をAC電力に変換する。本発明のマイクロインバータは、AC電力網電流と同相の電流を測定し、かつ、このような電流を小さな歪みで生成する。
【0013】
[0020]マイクロインバータ1021、1022、・・・、102nは、出力ACをACバス114に結合する。ACバス114は、ジャンクションボックス104の中で終端される。このようなACバス114および個々のインバータを用いて、システム100は、拡張性および柔軟性のあるものとなり、どのようなユーザのニーズにも適合する。マイクロインバータ1021、1022、・・・、102nの構造および機能を、以下に説明する。
【0014】
[0021]ジャンクションボックス104は、一般的には、すべてのマイクロインバータ1021、1022、・・・、102nからの出力を互いに接続し、配電盤106に供給される単一ACを形成する。
【0015】
[0022]配電盤106は、ジャンクションボックス104からの電力を電力網112に接続し、また、アプリケーションによっては、ユーザの家屋内に存在する電気器具116に接続する。例えば、家庭においては、配電盤106は、様々なブレーカーおよび/またはヒューズを備えるよく知られているAC配電ハブであり、家庭内の様々な回路へ電気を分配する。配電盤106は、電気計器110を介して電力網112に結合される。電気計器110は、電力網へ供給された電力の量を測定し、それによって、システム100の所有者は、電気を供給したことに対しての報酬を受けることができる。
【0016】
[0023]図2は、図1のマイクロインバータの例示的な実施形態の詳細ブロック図である。マイクロインバータ102は、電力変換回路200およびコントローラ202を備える。電力変換回路200は、入力回路204(DC回路とも呼ばれる)、少なくとも1つの電力段2251、2252、・・・、225n、出力回路236(AC回路とも呼ばれる)、出力フィルター回路248、およびAC電圧サンプリング回路260を備える。電力段225は、入力回路204と出力回路236との間に結合される。
【0017】
[0024]電力変換回路200は、コントローラ202によって制御されDCをACに効率的に変換する。効率を最適化するために、コントローラ202は、DC入力電圧、DC入力電流、およびAC出力電圧の現在の状態に応じて、電力変換回路200で使用される様々なフライバックモードの動作を選択する。そのようなものとして、一実施形態においては、電力変換回路200は、通常フライバックモード、インターリーブモード、擬似共振モード、または、それらを組み合わせたモードのいずれかに切り替える。ここで、通常フライバックモードは、低出力電圧状態および低出力電流状態中に使用され、インターリーブフライバックモードは、高出力電流状態中に使用され、擬似共振インターリーブフライバックモードは、高出力電圧状態中に使用される。高電流状態かつ高電圧状態においては、インターリーブ擬似共振モードが使用されてもよい。これらのモード変更は、DC電力をAC電力に最適に変換するために、電力変換回路200のそれぞれのスイッチングサイクル中に頻繁に発生する。
【0018】
[0025]入力回路204は、1つまたはそれ以上の電力段2251および2252に結合され、変換回路200がインターリーブフライバックモードで動作しているかどうかに応じて、1つまたはそれ以上の段を使用する。本発明の実施形態によっては、1つの電力段しか使用されず、インターリーブフライバックモードは利用できない。入力回路204は、DC入力、例えば、少なくとも1つの光起電性パネルによって生成されたDC入力を受け取る。入力回路204は、DC電流サンプリング回路206、入力コンデンサー212、およびDC電圧サンプリング回路214を備える。
【0019】
[0026]入力コンデンサー212の両端のリップル電圧は、線路周波数の2倍の正弦波形を有し、太陽電池パネルの出力電圧に等しい電圧変位を有する。電力(V×I)を1サイクルの2つの半サイクルにわたって積分することによって、コントローラ202は、パネルに対する最適な動作電圧を決定することができ、すなわち、パネルに対する最適な負荷を維持するようにインバータの出力電流を制御することができる。
【0020】
[0027]パネル電力を制御量として使用するのを助けるために、コントローラ202は、DC電圧サンプリング回路214およびDC電流サンプリング回路206を備える。DC電流サンプリング回路206は、サンプリング抵抗208およびA/D変換器(ADC)210を備え、そのA/D変換器(ADC)210は、抵抗208に並列に結合されてもよい。ADC210は、DC電流を示すディジタルサンプルを生成する。サンプルは、コントローラ202に結合される。サンプリング抵抗208の一方の端子は、DC入力に結合され、他方の端子は、入力コンデンサー212およびDC電圧サンプリング回路214に結合される。入力コンデンサー212の端子は、DC入力に結合される。
【0021】
[0028]DC電圧サンプリング回路214は、2つの直列に接続された抵抗216および218(分圧回路を形成する)を備える分圧回路222およびADC220を備える。抵抗216の一方の端子は、フィルターコンデンサー212および抵抗206に結合される。抵抗216の第2の端子は、抵抗218に結合される。抵抗218は、ADC220に並列に結合される。抵抗218の第2の端子は、フィルターコンデンサー212に結合される。ADC220は、DC電圧サンプリング回路214からコントローラ202へDC電圧サンプルを出力する。
・・・
【0027】
[0034]電力変換回路200は、コントローラ202によって生成される制御信号およびスイッチング信号に基づいて、DCをACに変換する。以下で説明されるように、コントローラ202は、DC信号およびAC信号のサンプルに応じて、制御信号およびスイッチング信号を生成する。その結果として、電力変換回路200は、特定の動作モードを使用するように最適に制御され、DC信号およびAC信号の現在の状態に適合させ、すなわち、AC出力を電力網の位相に最適に一致させ、それによって、DC電力は、電力網に効率的に結合される。
【0028】
[0035]コントローラ202によって、電力変換回路200は、様々なモード、すなわち、単純なフライバックモード、擬似共振フライバックモード、インターリーブフライバックモード、およびそれらを組み合わせたモードのいずれかに切り替える。コントローラ202の任務は、(1)さもなければ別の回路によって達成されてもよい効率的な最大電力点追従制御機能(MPPT)を有するように電力変換回路を制御すること、(2)AC電圧の位相、電圧、および周波数を推定すること、(3)電力段における過電流のような予期しない動作に対処すること、および(4)マイクロインバータによって生成されたAC電力に関する統計のようなデータをエンドユーザに報告することである。」

c 図2は以下のとおりである。


ウ 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特表2013-525908号公報(平成25年6月20日公開。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0013】
態様の詳細な説明
発電装置から電力を得るためのシステム、回路、および方法が、本明細書において説明される。発電装置は、例えば、風力タービン、燃料電池、または光電池であってもよい。発電装置は、分散型の発電装置であってもよい。本明細書においては、システム、回路、および方法の態様が、主として光電池に関して説明されるが、システム、回路、および方法が光電池に限定されないことは理解されるであろう。
【0014】
本明細書において説明されるシステム、回路、および方法を、発電装置のためのマイクロインバータにおいて使用することができる。本明細書において使用される場合、用語「マイクロインバータ」は、発電装置と負荷(配電網など)とを接続する装置を指す。マイクロインバータを備えるシステムが、図1(a)の一般化されたブロック図に示されている。マイクロインバータ20が、発電装置10から電力を受け取り、負荷30へと電力を出力する。マイクロインバータ20は、例えばDC-DC変換、DC-AC変換、またはこれらの組み合わせなどの一つまたは複数の機能を実行することができる電力部200を備えることができる。マイクロインバータは、例えば、発電装置の最大電力点追従および/または電力部200へのゲート信号の供給などの一つまたは複数の機能を実行することができる制御部300を備えることができる。ゲート信号は、発電装置の電圧および/もしくは電流ならびに/または負荷の電圧および/もしくは電流を検出することによって決定することができる。
【0015】
図1(b)の一般化されたブロック図が、発電装置10から電力を受け取る電力変換部210(例えば、DC-DC変換器)と、変換部210から電力を受け取って出力電力を生成するインバータ部220とを備えるマイクロインバータの態様を示している。出力電圧は、任意で、負荷30(例えば、配電網)に適合するように調整(例えば、フィルタ処理)250されることができる。任意で、一つまたは複数の受動部品(例えば、コンデンサおよび/またはインダクタ)を、電力変換部210の入力および/または電力変換部210とインバータ部220との間(すなわち、それぞれ230および240)に使用することができる。フィルタ250を、任意でインバータ部220の出力に使用することができる。第1のコントローラ310が、発電装置の電圧および/または電流を検出し、電力変換部210のスイッチのためのゲート信号を生成することができる。第1のコントローラが、最大電力点追従を実行することができる。第2のコントローラ320が、負荷へともたらされる電圧および/または電流を検出し、インバータ部220のスイッチのためのゲート信号を生成することができる。」

b 「【0020】
本明細書において使用される場合、用語「光電池」は、光子を吸収して光電効果によって電子を生成するための光吸収材料を有しているあらゆる電池を指す。光電池の例は、これに限られるわけではないが、太陽電池である。光吸収材料は、例えば、地表に届く太陽光の波長、および/または地球の大気を超える太陽光の波長を含む任意の波長または波長の組み合わせの光を吸収することができる。特定の光吸収波長を有する2つ以上の光吸収材料を、異なる光吸収および電荷の分離の機構を好都合に利用するために、組み合わせて使用することができる。光吸収材料を、例えば、バルク材料、薄膜(例えば、無機物層、有機染料、および有機ポリマー)、および/またはナノ結晶として構成することができる。光電池を、アレイ、ストリング、モジュール、またはパネルに組み合わせることができる。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「光電池ストリング」は、直列、並列、直並列、または他の構成にて接続された複数の光電池を指す。PVセルストリングは、PVセルモジュールを形成することができる。」

c 図1bは以下のとおりである。


エ 引用文献6の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、米国特許出願公開第2011/0308177号明細書(2011年12月22日公開。以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「[0039]Referring to FIG. 3a, a bottom view of a solar panel collection system 300 is illustrated. The system 300 includes a solar collection surface 302 , for example a collection of silicon photovoltaic cells. The solar collection surface 302 converts light into a DC current, which is aggregated at outlet 304 . The DC current is fed through DC Power cable 306 to inverter 308 . Inverter 308 converts the DC current into AC current. A female AC receptacle 314 is connected to the inverter 308 with power cable 310 and mounted on the system 300 . A male AC cable and plug 315 are also connected to the inverter 308 . One anchor 312 is provided on each corner of the system 300 in order to connect the system to a roof or other structure.
[0040]Referring to FIG. 3b, a side view of a solar panel collection system 300 is illustrated. The side view shows the solar collection surface 302 on top of the system 300 , with the other components 304 and 308 mounted underneath the solar collection surface 302 . The female AC receptacle 314 is mounted on the side of the system, and male AC cable and plug 315 are flexibly attached to the system which allows the plug 315 to be plugged into an adjacent solar panel collection system (not shown) or to be plugged into a receptacle on a structure.
[0041]In operation, a system 300 may be connected to a structure, for example the roof of the structure, or a residential roof, by driving connectors through each anchor 312 and into the structure. Suitable connectors include nails, spikes, screws, or bolts, or other connectors as are known in the art. Once the system 300 has been connected to the structure, male AC cable and plug 315 can be plugged into an adjacent receptacle on the structure.」
(仮訳;[0039]図3aには、ソーラーパネル収集システム300の底面図が示されている。システム300は、例えばシリコン光電池セル集合体のような太陽集光面302を含む。太陽集光面302は、光を直流電流に変換し、この直流電流は、出口304において集束される。DC電流は、DC電力ケーブル306を介してインバータ308に供給される。インバータ308は、直流電流を交流電流に変換する。インバータ308には、電力ケーブル310を介して雌ACレセプタクル314が接続され、システム300に実装されている。また、インバータ308には、雄ACケーブルとプラグ315とが接続されている。システムを屋根または他の構造物に接続するために、システム300の各隅部に1つのアンカー312が設けられている。
[0040]図3bには、ソーラーパネル収集システム300の側面図が示されている。側面図は、システム300の上部にある太陽集光面302を示し、他の構成要素304および308は太陽集光面302の下に取り付けられている。雌型ACレセプタクル314はシステム側に取り付けられ、雄型ACケーブルおよびプラグ315は、プラグ315が隣接するソーラーパネル収集システム(図示せず)に差し込まれるか、または構造体のレセプタクルに差し込まれることを可能にするシステムに可撓的に取り付けられる。
[0041]動作において、システム300は、各アンカー312を介して構造体、例えば構造体にコネクタを駆動することによって、構造体、例えば構造体の屋根、または住居用屋根に接続されてもよい。適切なコネクタとしては、釘、スパイク、またはボルト、または当技術分野で公知の他のコネクタが挙げられる。システム300が構造体に接続されると、雄ACケーブルおよびプラグ315は、構造体上の隣接するレセプタクルに差し込むことができる。)

b 「[0058]Referring to FIG. 5 a, the structure 502 with roof 504 , and a plurality of solar collection panels 520 each connected to the roof 504 . In operation, each solar collection panel 520 will be exposed to light, for example sunlight, which will create a DC current, which will converted to an AC current by an inverter connected to the panel 520 . In one embodiment, each panel's inverter may then be connected to the next panel's inverter in a daisy chain structure using male and female plugs and receptacles to pass the AC current through the power cord 512 and to a male plug at the end of the power cord 512 which is plugged into a female receptacle 514 .
[0059]In another embodiment, each panel's inverter may be connected to a power cord with a male plug at the end. Each male plug may be plugged into a power aggregator with a plurality of female receptacles, for example a power strip. The power aggregator may then have a male plug a at the end of a power cord 512 which is plugged into a female receptacle 514 connected to the structure 502 .」
(仮訳;[0058]図5aには、屋根504を有する構造502と、屋根504に接続された複数の太陽集光パネル520を備える。動作において、各太陽集光パネル520は、例えば太陽光のような光に曝され、これは、パネル520に接続されたインバータによってAC電流に変換されるDC電流を生成する。一実施形態では、各パネルインバータは、雄プラグと雌プラグとレセプタクルを使用してデイジーチェーン構造で次のパネルインバータに接続され、AC電流を電源コード512を通過させるとともに、電源コード512の雌レセプタクル514にプラグ接続された端部のオスプラグにAC電流を流す。
[0059]別の実施形態において、各パネルインバータは、端部に雄プラグを有する電源コードに接続することができる。各雄プラグは、複数の雌レセプタクルを有するパワーアグリゲータ、例えばパワーストリップに差し込まれてもよい。パワーアグリゲータは、電源コード512の端部に、構造体502に接続された雌型レセプタクル514に差し込まれる雄プラグを有してもよい。)

c 「[0062]In one embodiment, there is disclosed a solar electricity system, comprising a solar collection surface adapted to convert light into DC electricity; a power inverter to convert the DC electricity into AC electricity; and a power cable connected to the power inverter, the power cable comprising a male plug on its distal end adapted to mate with a female power receptacle on a building structure. In some embodiments, the system also comprises a second power cable connected to the power inverter, the second power cable comprising a female power receptacle on its distal end. In some embodiments, the male plug comprises a 110 volt U.S. Type B plug comprising a hot, a neutral, and a ground prong.・・・」
「(仮訳;)[0062]一実施形態では、光を直流電気に変換するように適合された太陽集光面と、直流電気を交流電気に変換する電力インバータと、電力変換器に接続された電力ケーブルとを備え、電力ケーブルは、建物構造の雌型電力レセプタクルと嵌合するように適合された雄プラグを備えた雄プラグを備える、太陽電気システムが開示される。いくつかの実施形態では、システムはまた、電力変換器に接続された第2の電力ケーブルを備え、第2の電力ケーブルは、その遠位端に雌型電力レセプタクルを備える。いくつかの実施形態では、雄プラグは、ホット、ニュートラル、および接地プロングを含む110ボルトのUSタイプBプラグを含む。」

d Fig.3A、3Bは以下のとおりである。


e Fig5Aは以下のとおりである。


(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「PV(光起電力)AC電圧モジュール38」、「PVモジュール」は、それぞれ本件補正発明の「太陽電池モジュール」、「太陽光モジュール」に相当する。

イ 引用発明の「DC-ACマイクロインバータ32」は、直流電源を交流電源に変換するものであることは明らかであるから、本件補正発明の「直流電源を交流電源に変換するインバーター」に相当する。

ウ 引用発明において、「各マイクロインバータ32は、対応するAC電圧モジュール38を提供」し、「各AC電圧モジュール38は、各オス型AC電圧プラグおよび活線挿抜コネクタ42は、120V AC電圧ピン80のペア、無極性導体ピン82およびDCグラウンド導体ピンを含」んでいるから、「オス型AC電圧プラグおよび活線挿抜コネクタ42」は、「マイクロインバータ32」の「交流電源」を外部に出力することは明らかである。したがって、引用発明の「オス型AC電圧プラグおよび活線挿抜コネクタ42」は、本件補正発明の「インバーターからの交流電源を外部に出力するプラグ」に相当し、引用発明の「120V AC電圧ピン80のペア」、「DCグラウンド導体ピン」は、それぞれ本件補正発明の「第1電源端子、第2電源端子」、「接地端子」に相当する。

エ 引用発明において、「各マイクロインバータ32の金属ケース36は、例えば、金属フレーム取り付けブラケット44を介して、対応するAC電圧モジュール38の金属フレームに機械的、電気的に装着され、金属ケース36と対応するAC電圧モジュール金属フレーム40の間の接地抵抗が低くなるようにして」いることから、引用発明の「金属ケース36」は、本件補正発明の「ジャンクションボックス」に相当するとともに、引用発明の上記構成は、本件補正発明の「前記太陽電池モジュールの接地と前記インバーターを含むジャンクションボックスの接地との電気的連結のために、前記太陽電池モジュールの金属フレームと前記ジャンクションボックスの導電性フレームと電気的に接続され」ることに相当する。

オ 引用発明において、「各プラグおよび活線挿抜コネクタDC導体60は、対応するマイクロインバータ32、例えば金属ケース36に電気的に接続されて」いることから、当該構成は、本件補正発明の「前記ジャンクションボックスの導電性フレームと前記インバーターの接地は電気的に連結され」ていることに相当する。

カ 引用発明において、「各プラグおよび活線挿抜コネクタDC導体60は、対応するマイクロインバータ32、例えば金属ケース36に電気的に接続されて」いるので、当該構成は、本件補正発明の「前記プラグの接地端子は、交流電源ケーブルを介して前記インバーターの接地と電気的に連結され」と、「前記プラグの接地端子は」、「前記インバーターの接地と電気的に連結され」ている点で共通する。

キ 上記ア?カから、本件補正発明と引用発明は、 以下の点で一致し、相違点1?3で相違する。
<一致点>
「太陽電池モジュールと、
直流電源を交流電源に変換するインバーターと、
第1電源端子、第2電源端子及び接地端子を含み、前記インバーターからの交流電源を外部に出力するプラグと、
前記太陽電池モジュールの接地と前記インバーターを含むジャンクションボックスの接地との電気的連結のために、前記太陽電池モジュールの金属フレームと前記ジャンクションボックスの導電性フレームと電気的に接続され、
前記ジャンクションボックスの導電性フレームと前記インバーターの接地は電気的に連結され、
前記プラグの接地端子は、
前記インバーターの接地と電気的に連結され、
前記太陽電池モジュールの接地は、前記ジャンクションボックスの導電性フレームを介して前記インバーターの接地と電気的に連結される、太陽光モジュール。」

<相違点1>
本件補正発明が、「太陽電池モジュールからの直流電源を変換するコンバーター部」を有しているのに対し、引用発明がそのような構成を有しているか不明である点。

<相違点2>
本件補正発明が、「インバーターと前記プラグの間に接続され、前記プラグの前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子にそれぞれ電気的に連結される第1電源ライン、第2電源ライン及び接地ラインを含む、交流電源ケーブルとを含」んでいるのに対し、引用発明がそのような構成を有しているか不明である点。

<相違点3>
本件補正発明が、「前記第1電源端子、前記第2電源端子及び前記接地端子を含む前記プラグは、統合コネクタの複数のコネクタの第1コネクタと電気的に接続され、前記統合コネクタは、前記複数のコネクタを介して入力された交流電源を並列で結合し、並列で結合された交流電源を出力し、前記統合コネクタは接地端子を含む統合プラグと電気的に接続され、前記統合プラグは、建物内外のアウトレットの各端子と電気的に連結され」ているのに対し、引用発明がそのような構成を有しているか不明である点。

(4)判断
ア 相違点1について
本願明細書には、コンバータ部について、「【0099】コンバーター部530は、バイパスダイオード部510から出力された入力電源(Vpv)を変換する。一方、コンバーター部530は第1電力変換部と名付けられることができる。【0100】例えば、コンバーター部530は、直流入力電源(Vpv)を疑似直流電源(pseudo dc voltage)に変換させることができる。これにより、キャパシタC1には疑似直流電源が保存されることができる。一方、dc端キャパシタC1の両端はdc端と言え、キャパシタC1はdc端キャパシタと名付けられることもできる。【0101】他の例として、コンバーター部530は、直流入力電源(Vpv)を昇圧して直流電源に変換することができる。これにより、dc端キャパシタC1には昇圧された直流電源が保存されることができる。」と記載されており、「コンバータ部」とは直流電源を直流電源に変換するものであると認められる。
引用文献2、3に記載されているように、マイクロインバータにおいて、直流電源を直流電源に変換する部分、すなわちコンバータ部を設けることは周知であり、引用発明の「マイクロインバータ」においても、コンバータ部を有している蓋然性が高く、相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。
仮に、相違点であるとしても、上記周知事項に基づいて、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

イ 相違点2について
上記(3)ウで説示したとおり、引用発明の「120V AC電圧ピン80のペア」、「DCグラウンド導体ピン」は、それぞれ本件補正発明の「第1電源端子、第2電源端子」、「接地端子」に相当する。
また、太陽電池モジュール間に適宜、交流電源ケーブルを設けることは、引用文献6に「雄ACケーブルおよびプラグ315」、「電源コード512」として記載されているように、常套手段にすぎず、引用発明において、当該常套手段を採用することは当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。そして、当該常套手段を採用する際に、当該ケーブルには、引用発明における「120V AC電圧ピン80のペア」、「DCグラウンド導体ピン」とそれぞれ電気的に連結されるライン(本件補正発明の「第1電源ライン、第2電源ライン及び接地ライン」に相当)を含むことは自明である。

ウ 相違点3について
引用文献6には「各雄プラグは、複数の雌レセプタクルを有するパワーアグリゲータ、例えばパワーストリップに差し込まれてもよい。パワーアグリゲータは、電源コード512の端部に、構造体502に接続された雌型レセプタクル514に差し込まれる雄プラグを有してもよい。」(上記(2)エbの仮訳参照)と記載されており、引用文献6に記載された「複数の雌レセプタクルを有するパワーアグリゲータ」、「構造体502に接続された雌型レセプタクル514」は、それぞれ本件補正発明の「統合コネクタ、統合プラグ」、「建物内外のアウトレット」に相当する。
そして、引用発明及び引用文献6に記載されたものは、ともにインバーターを備えた太陽電池モジュールの技術分野に属し、また、太陽電池モジュールの技術分野において、得られた電力を建物内で用いるようにすることは自明のことであるから、上記引用文献6に記載されたものを、引用発明に適用して、相違点3に係る本件補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
なお、複数の太陽電池や電源を結合する際に並列に結合するか、直列に結合するかは、当業者が適宜選択しうる常套手段にすぎず(必要であれば、例えば、引用文献3の【0021】等参照)、引用文献6に記載された「複数の雌レセプタクルを有するパワーアグリゲータ」の「複数の雌レセプタクル」は、並列に結合されている蓋然性が高いし、仮にそうでないとしても、並列に結合するようにすることは当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、及び引用文献2、3、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年11月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年6月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?3、6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

3 進歩性について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「(前記太陽電池モジュールの金属フレームと前記ジャンクションボックスの導電性フレーム)と電気的に(接続され)」、「統合コネクタの複数のコネクタの第1コネクタと電気的に接続され、前記統合コネクタは、前記複数のコネクタを介して入力された交流電源を並列で結合し、並列で結合された交流電源を出力し、前記統合コネクタは接地端子を含む統合プラグと電気的に接続され」、「前記統合プラグは、(建物内外のアウトレットの各端子)と電気的(に連結される)」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明、及び引用文献2、3、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、及び引用文献2、3、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び引用文献2、3、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-09-09 
結審通知日 2019-09-10 
審決日 2019-09-24 
出願番号 特願2016-144207(P2016-144207)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02S)
P 1 8・ 121- Z (H02S)
P 1 8・ 572- Z (H02S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 麻梨子小林 幹島田 英昭  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 星野 浩一
井上 博之
発明の名称 太陽光モジュール及びこれを備えた太陽光システム  
代理人 竹本 実  
代理人 青木 篤  
代理人 河合 章  
代理人 南山 知広  
代理人 三橋 真二  

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