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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1359515
異議申立番号 異議2019-700323  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-24 
確定日 2019-12-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6411415号発明「シート状部材の成形方法及び装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6411415号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-5〕について訂正することを認める。 特許第6411415号の請求項1、2及び4に係る特許を維持する。 特許第6411415号の請求項3及び5に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6411415号(以下、「本件特許」という。)は、平成28年8月8日を出願日とする特許出願に係るものであって、平成30年10月5日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、平成31年4月24日に、請求項1-5に係る特許に対し、特許異議申立人増淵貞夫(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
令和1年6月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月23日に意見書及び訂正請求書の提出があった。
その訂正の請求に対して、令和1年9月3日付けで申立人に対して特許法第120条の5第5項の規定に基づく送付を行ったものの、申立人から何らの応答はなされなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1.請求の趣旨
令和1年8月23日に特許権者が行った訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第6411415号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-5について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。

2.訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所を分かりやすく対比するために、当審において下線を付与した。

(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されており、
前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形される」と記載されているのを、
「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、
前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形される」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正することになる。)

(2)訂正事項2
請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されている」と記載されているのを、
「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有する」に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項5を削除する。

(5)訂正事項5
明細書の【0007】に
「本発明のシート状部材の成形方法は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されており、前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形されることを特徴とする。」と記載されているのを、
「本発明のシート状部材の成形方法は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形されることを特徴とする。」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の【0011】に
「さらに、前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、前記第2工程では、前記シート状部材は前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形されることが好ましい。」と記載されているのを、
「さらに、前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、前記第2工程では、前記シート状部材は前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形される。」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の【0013】に
「本発明のシート状部材の成形装置は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されていることを特徴とする。」と記載されているのを、
「本発明のシート状部材の成形装置は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有することを特徴とするシート状部材の成形装置。」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の【0015】に
「また、前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有することが好ましい。」と記載されているのを、
「また、前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有する。」に訂正する。

(9)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2-3は、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1-3は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。また、本件訂正前の請求項5は、訂正請求の対象である請求項4の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項4-5は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、訂正事項1及び2は、訂正前の一群の請求項1-3に対するものであり、訂正事項3及び4は一群の請求項4-5に対するものである。また、明細書の訂正に係る訂正事項5及び6は、訂正事項1及び2に対応するものであるから、同様に訂正前の一群の請求項1-3に対するものであり、訂正事項7及び8は訂正事項3及び4に対応するものであるから、同様に訂正前の一群の請求項4-5に対するものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-3〕、〔4-5〕に対して請求されたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、第2工程において第1形状のシート状部材が押し込まれる「第2成形部」の形状を、「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され」ている形状のものに限定するとともに、前記第2工程における前記シート部材の成形を、「前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状」にされるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件特許明細書等」ともいう。)の請求項3の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正後の請求項1を引用する請求項2についての訂正も同様である。)

(2)訂正事項3について
訂正事項3は、第2金型における「第2成形部」の形状を、「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有する」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件特許明細書等の請求項5の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項2及び4による訂正について
訂正事項2は、請求項3を削除するものであるし、訂正事項4は、請求項5を削除するものであるから、これらはいずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5-8について
訂正事項5-8は、上記訂正事項1-4に係る訂正に伴い、明細書の【0007】、【0011】、【0013】及び【0015】の記載を、訂正後の請求項1、2及び4の記載に整合させる訂正であるので、いずれも、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5-8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-5〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1-5に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2に係る発明を「本件発明2」、請求項4に係る発明を「本件発明4」という。)。

「【請求項1】
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、
前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、
前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形されることを特徴とするシート状部材の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシート状部材の成形方法において、
前記第2工程の後に行われ、前記第2押し込み部材を、前記第2形成部の前記第2方向としての押込み方向の下流端まで押し込むことで、前記所定の形状に成形された前記シート状部材を、前記第2成形部から取り出して前記第2成形部の下方に配置されたステータコアのスロットに挿入する第3工程を備えることを特徴とするシート状部材の成形方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、
第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、
前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、
前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有することを特徴とするシート状部材の成形装置。
【請求項5】
(削除) 」

第4 特許異議の申立て及び取消理由通知の概要
1.特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件訂正前の請求項1-5に係る発明に対して、申立人が申立てていた特許異議の申立ての理由は、概略、以下の(1)?(3)のとおりであって、申立人は、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)に添付して、証拠方法として下記(4)の甲第1号証-甲第4号証(以下、「甲1」-「甲4」という。)を提出した。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性)
請求項1及び4に係る発明は甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(1)(甲1を主引例とする進歩性)
請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3に示される周知技術に基いて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に示される周知技術に基いて、請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3に示される周知技術に基いて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許の請求項1、3、4及び5に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由2(2)(甲4を主引例とする進歩性)
請求項1及び2に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、請求項3に係る発明は、甲4に記載された発明、甲1に記載された事項、甲2に記載された事項及び甲3に示される周知技術に基いて、あるいは、甲4に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲3に示される周知技術に基いて、請求項4に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、請求項5に係る発明は、甲4に記載された発明、甲1に記載された事項、甲2に記載された事項及び甲3に示される周知技術に基いて、あるいは、甲4に記載された発明、甲1に記載された事項及び甲2、甲3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許の請求項1-5に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)証拠方法
・甲第1号証:特開2011-182596号公報
・甲第2号証:特開平7-117146号公報
・甲第3号証:特開2013-162562号公報
・甲第4号証:特開2014-135865号公報

2.取消理由通知書に記載した取消理由
当審合議体が令和1年6月26日付け取消理由通知書で通知した取消理由は、概略、以下の(1)-(3)のとおりである。
(1)取消理由1(甲1に基づく新規性)
請求項1及び4に係る発明は甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(1)(甲1を主引例とする進歩性)
請求項1及び4に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許の請求項1及び4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)取消理由2(2)(甲4を主引例とする進歩性)
請求項1及び2に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるし、請求項4に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び4に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。

第5 当審合議体の判断
上記第4で記載した取消理由1は、申立人が主張する申立理由1と同旨であり、取消理由2(1)は申立理由2(1)と同旨(但し、請求項1及び4に対してのみで、請求項3及び5は対象外)であり、取消理由2(2)は申立理由2(2)と同旨(進歩性;但し、請求項1、2及び4に対してのみで、請求項3及び5は対象外)であって、取消理由はいずれも申立理由に包含される。したがって、以下の当審合議体の判断では、申立理由についての判断を記載する。なお、本件訂正により申立理由2(1)及び申立理由2(2)の対象とされた請求項3及び5は削除された。

1.申立理由1(甲1に基づく新規性)及び申立理由2(1)(甲1を主引例とする進歩性)について

(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
甲1には、以下の記載がある。(なお、下線は当審が付した。以下この決定中において同様である。)
「【請求項1】
回転電機の巻線コイル(12)に挿入されるコイル絶縁紙(1)を、コの字形に成形するコイル絶縁紙成形装置であって、
カッター(21)を有する押し込みガイド(24)と、
前記カッター(21)により所定寸法に切断されたコイル絶縁紙(1)が、前記押し込みガイド(24)により垂直方向に押し込まれる保持ガイド(22)と、
水平方向に、前記コイル絶縁紙(1)を押し出すプッシャ(26)と、
垂直方向の内側両側面が、前記プッシャ(26)の進行方向に対して、テーパ部(34)と直線部(35)の順に構成されたテーパ折りフォーマー(30)とを具備するコイル絶縁紙成形装置において、
前記コイル絶縁紙(1)が、前記プッシャ(26)により押し出されて、前記テーパ折りフォーマー(30)において、前記テーパ部(34)と前記直線部(35)の順に通過することにより、前記コイル絶縁紙(1)の折り曲げ部を、所定角度に成形するコイル絶縁紙成形装置。」

「【0005】
このような巻線コイル12の場合は、コイル直線部2が、外周側から内層側に向けて、直線状(縦状)に整列して、積層配列されている。このコイル直線部2に対し、コの字形に成形された絶縁紙1を、外周側から挿入する。この時、絶縁紙1の開き口の角度の拡がりが大きすぎると、隣り合う絶縁紙1が干渉し、絶縁紙1の拡がり力の反発で、それぞれの絶縁紙1が抜け落ちてしまっていた。また、開き口の角度の拡がりが小さすぎると、絶縁紙の挿入時に、絶縁紙がコイルに干渉してしまい挿入不可になる。つまり、所定の拡がり角度を満たした成形が必要である。
【0006】
しかしながら、滑りやすい材質(PEN(ポリエチレンナフレタート)フィルム+アラミド織布等)を用いた絶縁紙の場合には、所定の拡がり角度を満たした狙い形状を、型(フォーマー)で転写成形するだけでは、所望の形状を得ることができず問題となっていた。
【0007】
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑み、回転電機に用いられるコイル絶縁紙折り曲げ部を、所定角度に成形(筋付け)する成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、回転電機の巻線コイル(12)に挿入されるコイル絶縁紙(1)を、コの字形に成形するコイル絶縁紙成形装置であって、カッター(21)を有する押し込みガイド(24)と、前記カッター(21)により所定寸法に切断されたコイル絶縁紙(1)が、前記押し込みガイド(24)により垂直方向に押し込まれる保持ガイド(22)と、水平方向に、前記コイル絶縁紙(1)を押し出すプッシャ(26)と、垂直方向の内側両側面が、前記プッシャ(26)の進行方向に対して、テーパ部(34)と直線部(35)の順に構成されたテーパ折りフォーマー(30)とを具備するコイル絶縁紙成形装置において、前記コイル絶縁紙(1)が、前記プッシャ(26)により押し出されて、前記テーパ折りフォーマー(30)において、前記テーパ部(34)と前記直線部(35)の順に通過することにより、前記コイル絶縁紙(1)の折り曲げ部を、所定角度に成形するコイル絶縁紙成形装置である。
【0011】
これにより、滑りやすい材質(PEN(ポリエチレンナフレタート)フィルム+アラミド織布等)を用いた絶縁紙の場合であっても、所定の拡がり角度を満たした狙い形状を、型(フォーマー)で転写成形するだけで、所望の形状を得ることができる。」

「【0017】
3図(a)は、本発明の一実施形態を説明する説明図である。(b)は、押し込みガイドと保持ガイドの概略断面図である。(c)は、ワーク受け50の概略断面図である。・・カッター21により所定寸法に切断した後、コイル絶縁紙1は、押し込みガイド24により保持ガイド22に挿入される。
【0018】
26は、保持ガイド22の前方(最後退位置)に設けられたプッシャ26である。プッシャ26は水平方向にスライドするために、手動、又は、アクチュエータ(空気圧・油圧シリンダ、電動モータとボールねじ等)で駆動される。本実施形態では、手動で駆動される。図4(b)におけるハンドル28’は、プッシャ26は水平方向にスライドするためのハンドルである。
【0019】
プッシャ26の両側面には、スライドガイド25が設けられている。このスライドガイド25は、プッシャ26が前進するとき、保持ガイド22のスライド溝23に係合し、位置決めされてスライドする。それと同時に、スライドガイド25の先端部は、図3(b)に示すように、V字形状となって保持ガイド22に挿入されたコイル絶縁紙1を押し出す機能を有している。スライドガイド25により、押し出されたコイル絶縁紙1は、水平方向に設置されたテーパ折りフォーマー30、加圧折りフォーマー40、ワーク受け50と、連続的に順次押し出される。テーパ折り、加圧折りフォーマー30、40、において、順次所望の形状に成形される。
【0020】
・・・
【0024】
次に、テーパ折りフォーマー30について説明する。テーパ折りフォーマー30は、垂直方向の内側両側面が、プッシャ26の進行方向に対して、テーパ部34と直線部35の順に構成されている。さらに、テーパ折りフォーマー30は、スライドガイド25を、水平方向に移動させる、テーパ折りフォーマー30のスライド溝33が、内側両側面に設けられている。下部直線部35’の内側両側面距離は、テーパ部34の最終出口の側面間距離となっている。図7(c)のように、下部直線部35’は平行な直線部となっている。テーパ部34と直線部35との間には、両者を連続的に接続するような接続テーパ部34’が形成されている。接続テーパ部34’は、テーパ部34に含まれる。下部直線部35’は直線部35に含まれる。直線部35の内側両側面距離は、接続テーパ部34’の最終出口の側面間距離となっている。ここで、テーパ部とは、プッシャ26の進行方向軸に対して、傾斜角を有している側面であり、直線部とは、プッシャ26の進行方向軸に対して、平行な平面からなる側面をさしている。テーパ部は、複数の平面や曲面から構成されていてもよい。
【0025】
・・・
【0026】
保持ガイド22にV字形状となって挿入されたコイル絶縁紙1が、図7(a)の左側から、テーパ折りフォーマー30の入口に、プッシャ26により、押し込まれる。コイル絶縁紙1は、さらに、続いてプッシャ26により押し出されて、テーパ折りフォーマー30において、テーパ部34と直線部35の順に通過する。このとき、コイル絶縁紙1の下端部はテーパ部34から下部直線部35’を通過して、コイル絶縁紙1の折り曲げ部を、仕付けるように、所定角度に成形することができる。接続テーパ部34’は無くてもよく、テーパ部34と直線部35で、テーパ折りフォーマー30の内面を構成しても良い。」





・図3から、コイル絶縁紙1が、凹状に形成された保持ガイド22の中に押し込まれ、保持ガイド22の形状に沿ったV字形状に成形されることが看取できる。

・図7から、テーパ折りフォーマー30には、水平方向に貫通して、テーパ部34及び直線部35が順次設けられ、テーパ部は、コイル絶縁紙1押込み方向である水平方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されていること、及び、コイル絶縁紙1は、V字形状となったコイル絶縁紙1の折り曲げ部が、前記テーパ折りフォーマー30の直線部35の下流側端部の形状に沿った所定角度を有する所定の形状に成形されることが看取できる。


上記甲1の記載、特に、請求項1及び図3、図7並びに図7についての説明(【0026】)の記載によれば、甲1には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。なお、工程についての「第1」、「第2」は当審が便宜上付した。

「回転電機の巻線コイル12に挿入されるコイル絶縁紙1をコの字形に変形させて成形するコイル絶縁紙の成形方法であって、
前記コイル絶縁紙1を、垂直方向に凹状に形成された保持ガイド22の中に、押し込みガイド24により前記垂直方向に押し込み、前記保持ガイド22の形状に沿ったV字形状に成形する第1工程と、
前記保持ガイド22の中に押込まれた状態の前記V字形状のコイル絶縁紙1を、水平方向に貫通して順次設けられたテーパ部34及び直線部35を備えるテーパ折りフォーマー30中に、プッシヤ26により押し込み、前記V字形状のコイル絶縁紙1の折り曲げ部を、所定角度に成形する第2工程と、
を備え、
前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34は、前記コイル絶縁紙1の前記水平方向である押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されており、
前記第2工程では、前記コイル絶縁紙1は前記テーパ折りフォーマー30の前記直線部35の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形されるコイル絶縁紙の成形方法。」(以下「甲1方法発明」という。)

また、甲1には、次のとおりの発明も記載されていると認められる。

「回転電機の巻線コイル12に挿入されるコイル絶縁紙1を変形させてコの字形に成形するコイル絶縁紙の成形装置であって、
垂直方向に凹状に形成され、前記コイル絶縁紙1を凹部の形状に沿ったV字形状に成形する保持ガイド22と、
前記コイル絶縁紙1を、前記保持ガイド22の中に前記垂直方向に押し込み、前記V字形状に成形する押し込みガイド24と、
前記垂直方向とは異なる水平方向に貫通するテーパ部34及び直線部35を有し、前記V字形状のコイル絶縁紙1を前記直線部35の形状に沿った前記所定の形状に成形するテーパ折りフォーマー30と、
前記保持ガイド22の中に押込まれた状態の前記V字形状のコイル絶縁紙1を、前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34及び前記直線部35の中に前記水平方向に押し込み、前記所定の形状に成形するプッシャ26と、
を備え、
前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34は、前記コイル絶縁紙1の前記水平方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成されているコイル絶縁紙の成形装置。」(以下「甲1装置発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1方法発明とを対比する。
(ア)甲1方法発明の「回転電機の巻線コイル12に挿入されるコイル絶縁紙1」は、本件発明1の「シート状部材」に、同様に、「保持ガイド22」は「第1金型」に、「押し込みガイド24」は「第1押込み部材」に、「コの字形」は「所定の形状」に、「垂直方向」は「第1方向」に、「V字形状」は「第1形状」にそれぞれ相当するし、甲1方法発明の、「保持ガイド22」の「凹状に形成された」部分が、本件発明1の、「第1成形部」に相当することは、当業者に自明である。また、甲1方法発明の「テーパ折りフォーマー30」は本件発明1の「第2金型」に、「テーパ部34及び直線部3」は「第2成形部」に、「プッシャ26」は「第2押込み部材」に、「水平方向」は「第1方向とは異なる第2方向」に、それぞれ相当するし、甲1方法発明の、「所定角度に成形」された「(絶縁紙1の)折り曲げ部」の形状が、本件発明1の「第2成形部の形状に沿った前記所定の形状」に相当することは、当業者に自明である。

そうすると、本件発明1と甲1方法発明には、以下の対応関係がある。
(イ)甲1方法発明の「回転電機の巻線コイル12に挿入されるコイル絶縁紙1をコの字形に変形させて成形するコイル絶縁紙の成形方法」は、本件発明1の「シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法」に相当する。
(ウ)甲1方法発明の「前記コイル絶縁紙1を、垂直方向に凹状に形成された保持ガイド22の中に、押し込みガイド24により前記垂直方向に押し込み、前記保持ガイド22の形状に沿ったV字形状に成形する第1工程」は、本件発明1の「前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程」に相当する。
(エ)甲1方法発明の「前記保持ガイド22の中に押込まれた状態の前記V字形状のコイル絶縁紙1を、水平方向に貫通して順次設けられたテーパ部34及び直線部35を備えるテーパ折りフォーマー30中に、プッシヤ26により押し込み、前記V字形状のコイル絶縁紙1の折り曲げ部を、所定角度に成形する第2工程」は、本件発明1の「前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程」に相当する。
(オ)甲1方法発明の「前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34は、前記コイル絶縁紙1の前記水平方向である押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され」ることは、本件発明1の「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され」ることに相当する。
(カ)甲1方法発明の「前記第2工程では、前記コイル絶縁紙1は前記テーパ折りフォーマー30の前記直線部35の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形される」ことは、本件発明1の「前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形されること」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲1方法発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点1で相違する。

<一致点>
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、 前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部め形状に沿った前記所定の形状に成形される、
シート状部材の成形方法。

<相違点1>
第1形状のシート状部材を第2金型の第2成形部に押し込んで、第2成形部の形状に沿った所定の形状に成形する第2工程について、本件発明1では第2金型に設けられた「第2成形部」が「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部」(以下、「誘い込み部」という。)を有するものであり、第2工程で、シート部材は「前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状」に成形されることが特定されているのに対して、甲1方法発明では、テーパ折りフォーマー30(第2金型に相当する)の成形部は、誘い込み部は有しておらず、コイル絶縁紙1(シ-ト部材)は一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形されるものではない点。

新規性について
上述のとおり、本件発明1と甲1方法発明とは上記相違点1で相違しており、また、上記相違点1は実質的な相違点であるから、甲1方法発明と相違点1で異なる本件発明1について、甲1方法発明、つまり、甲1に記載された発明であるということはできない。

進歩性について
相違点1について検討する。
回転電機の巻線コイルに挿入されるコイル絶縁紙であって、絶縁紙を構成する絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形されたものは、本件特許の出願前から知られていた(甲3の【0022】、【0029】及び【0030】並びに【図4】及び【図6】)。
しかしながら、甲1の請求項1に「回転電機の巻線コイル(12)に挿入されるコイル絶縁紙(1)を、コの字形に成形する」と記載され、【0005】に「巻線コイル12の場合は、コイル直線部2が、外周側から内層側に向けて、直線状(縦状)に整列して、積層配列されている。このコイル直線部2に対し、コの字形に成形された絶縁紙1を、外周側から挿入する。」と記載されているとおり、甲1方法発明は、コイル絶縁紙1を回転電機の巻線コイルの外周側から挿入することを前提としており、そのために、コイル絶縁紙1を「コの字」に成形している。
ここで、コイル絶縁紙1の形状を、「一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状」とした場合、もはや、コイル絶縁紙1を回転電機の巻線コイルの外周側から挿入することはできなくなるのであるから、甲1方法発明において、テーパ折りフォーマー30(第2金型に相当する)の成形部を、誘い込み部を有するものとして、コイル絶縁紙1(シ-ト部材1)の一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形するように構成すること(すなわち、甲1方法発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすること)には、阻害要因があるというべきである。
そうすると、甲3を参酌しても、甲1方法発明を相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
申立人が提出した他の証拠(甲2及び甲4)を参酌しても同様である。
よって、本件発明1について、甲1に記載された発明及び甲1-4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用する請求項に係るものであって、本件発明2は、甲1方法発明と、少なくとも上記相違点1の点で相違している。
そして、相違点1についての判断は、上記(2)ウで記載したとおりであるから、甲1方法発明と少なくとも上記相違点1で相違する本件発明2についても、上記(2)ウで記載したと同様の理由によって、甲1に記載された発明及び甲1-4に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について
ア 対比
上記(2)アにおける本件発明1と甲1方法発明との対比を踏まえて、本件発明4と甲1装置発明とを対比する。
(ア)甲1装置発明の「回転電機の巻線コイル12に挿入されるコイル絶縁紙1を変形させてコの字形に成形するコイル絶縁紙の成形装置」は、本件発明4の「シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置」に相当する。
(イ)甲1装置発明の「垂直方向に凹状に形成され、前記コイル絶縁紙1を凹部の形状に沿ったV字形状に成形する保持ガイド22」は、本件発明4の「第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型」に相当する。
(ウ)甲1装置発明の「前記コイル絶縁紙1を、前記保持ガイド22の中に前記垂直方向に押し込み、前記V字形状に成形する押し込みガイド24」は、本件発明4の「前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材」に相当する。
(エ)甲1装置発明の「前記垂直方向とは異なる水平方向に貫通するテーパ部34及び直線部35を有し、前記V字形状のコイル絶縁紙1を前記直線部35の形状に沿った前記所定の形状に成形するテーパ折りフォーマー30」は、本件発明4の「前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型」に相当する。
(オ)甲1装置発明の「前記保持ガイド22の中に押込まれた状態の前記V字形状(第1形状)のコイル絶縁紙1を、前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34及び前記直線部35の中に前記水平方向に押し込み、前記所定の形状に成形するプッシャ26」は、本件発明4の「前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記水平方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材」に相当する。
(カ)甲1装置発明の「前記テーパ折りフォーマー30の前記テーパ部34は、前記コイル絶縁紙1の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成」されていることは、本件発明4の「前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成」されていることに相当する。

以上によれば、本件発明4と甲1装置発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点2で相違する。

<一致点>
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、
第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、
前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、
前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成される、
シート状部材の成形装置。

<相違点2>
第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型について、本件発明4では、第2金型に設けられた「第2成形部」が「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部」(つまり、「誘い込み部」)を有するものであるのに対して、甲1装置発明では、テーパ折りフォーマー30(第2金型に相当する)の成形部は、誘い込み部を有していない点。

新規性について
上述のとおり、本件発明4と甲1装置発明とは上記相違点2で相違しており、また、上記相違点2は実質的な相違点であるから、甲1装置発明と相違点2で異なる本件発明4について、甲1装置発明、つまり、甲1に記載された発明であるということはできない。

進歩性について
相違点2について検討する。
上記(2)ウで指摘した甲1の請求項1及び【0005】の記載によれば、甲1装置発明は、回転電機の巻線コイルの外周側から挿入するコイル絶縁紙1を製造するための装置を前提としており、コイル絶縁紙1を「コの字」に成形する装置である。
そして、甲1装置発明において、テーパ折りフォーマー30(第2金型に相当する)の成形部を、誘い込み部を有するものとして、コイル絶縁紙1(シ-ト部材)を、上記(2)ウで記載した甲3に示されるような、シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のものに成形する場合、成形されたコイル絶縁紙1は、回転電機の巻線コイルの外周側から挿入することはできないものとなる。
そうすると、甲1装置発明において、テーパ折りフォーマー30の成形部を、誘い込み部を有するものとして、絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のものに成形できるようにすること、すなわち、甲1装置発明を相違点2に係る本件発明4の構成を備えたものとすることには、阻害要因があるというべきである。
そうすると、甲1装置発明を相違点2に係る本件発明4の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
申立人が提出した他の証拠(甲2及び4)を参酌しても同様である。
よって、本件発明4について、甲1に記載された発明及び甲1-4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.申立理由2(2)(甲4を主引例とする進歩性)について

(1)甲4の記載事項及び甲4に記載された発明
甲4には、以下の記載がある。
「【請求項1】
回転電機のステータコアのスロット内に絶縁紙を挿入するための絶縁紙挿入装置を用い、前記絶縁紙を前記スロット内に挿入する回転電機のステータの製造方法であって、
前記絶縁紙挿入装置は、
前記スロットの軸線方向に沿って移動して前記絶縁紙を前記スロットに押し入れるプッシャと、
前記絶縁紙を略コ字状に成形するために所定奥行き長さを有する成形凹部が形成されており、この成形凹部の入口部、中間部、奥部のうちの前記奥部が前記スロットの軸線上に位置するように配設されたダイスと、
前記成形凹部を進退するポンチと、を備えており、
前記ステータコアの上下両面に、内周側にリブを有する部品カフサを組み付け、
前記絶縁紙の両端部の所定長さを挿入方向に平行な筋目で折り返して腕部を形成し、
前記ポンチを前記成形凹部に進入させて前記絶縁紙を略コ字状に成形し、
前記ポンチの胴部と前記成形凹部との間で前記腕部の折り曲げ状態を保持しながら、前記プッシャにて前記絶縁紙を前記スロットに押し入れる
ことを特徴とする回転電機のステータの製造方法。」

「【0017】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明は、回転電機の製造方法に関し、特に、回転電機のステータコアのスロットに絶縁紙を挿入する方法に関するものである。
具体的には、部品カフサが上下両面に組み付けられたステータコアに対し、そのスロット内に絶縁紙を挿入するための方法に関する。
図1は、第1実施形態の係る回転電機の製造方法を具体化するための絶縁紙挿入装置300を概略的に分かりやすく示した図である。
【0018】
説明においては、図1を基準にして上下左右を表現する。
図1において、部品カフサ200が上下両面に組み付けられたステータコア2が絶縁紙挿入装置300の下方にセットされている。
(逆にいうと、ステータコア2の上方に絶縁紙挿入装置300が配置されている。)
【0019】
絶縁紙挿入装置300の構成は次のようになっている。
絶縁紙挿入装置300は、ダイス310と、ガイド340と、ポンチ360と、プッシャ370と、を有している。
ガイド340とダイス310とは、絶縁紙7を間に挟める程度の隙間330を介して対向配置されている。ガイド340にはポンチ360を案内するガイドスリット341が形成されている。ダイス310には、ガイドスリット341にて案内されたポンチ360がそのまま進入できる位置において、所定の奥行き長さを持つ成形凹部320が設けられている。
【0020】
ここで、図7は、ガイド340、ダイス310およびポンチ360の上面図である。
図7においては、ガイド340とダイス310との間に絶縁紙7を挟み、ポンチ360がガイドスリット341を進行する途中の状態を示している。
ダイス310の成形凹部320を、入り口から突き当たりに向けて順に、入口部321、中間部322、奥部323とする。
入口部321から中間部322に移行する箇所に段差325があり、入口部321の幅に対して中間部322の幅の方がわずかに拡幅するようになっている。
奥部323には、成形凹部320の長さ方向に対して直交する方向に短く折れ曲がった分岐凹部324が設けられている。
分岐凹部324は両サイドに二つずつ設けられている。
【0021】
ポンチ360は、頭部361と胴部362とからなり、頭部361の幅に対して胴部362の幅がやや狭い。
ここで、図9は、ポンチ360の頭部361が成形凹部320の中間部322に位置しているときの状態を示している。ポンチ360の頭部361を成形凹部320の奥部323から中間部322に後退させたときに、頭部361と胴部362との付け根が段差部325から所定の距離をもつ必要がある。その理由は後述する。
【0022】
プッシャ370は、成形凹部320の奥部323に挿入できる形状を有している。
ここで、成形凹部320の奥部323は長さ方向に対して直交する方向に短く折れ曲がった分岐凹部324を有していたところ、プッシャ370も前記分岐凹部324に対応した突起部371を有し、突起部371の幅は分岐凹部324に遊挿できる程度である。突起部371も、分岐凹部324と同じように、プッシャ370の両サイドに二つずつ設けられている。」
【0023】
続いて、絶縁紙をステータコアのスロットに挿入する手順を順に説明する。
図2は、回転電機のステータの製造方法の手順を示すフローチャートである。
まず、ステータコア2を用意し、ステータコア2の上下両面に部品カフサ200を組み付ける(ST100)。
【0024】
次に、絶縁紙7を用意する(ST200)。絶縁紙7を用意する工程(ST200)を図3から図6を参照して説明する。
絶縁紙7は、樹脂で形成された紙のように薄いものである。
まず、図3に示すように、絶縁紙7の上端を折ってカフス部7aを形成する。(ここでは、絶縁紙7の上端側にのみカフス部7aを形成しているが、絶縁紙7の上下両端にカフス部を形成してもよい。)
【0025】
次に、図4に示すように、筋目をつける。図4において、筋目を点線で示し、後の切断線を一点鎖線で示している。
絶縁紙7の一単位には、4本の筋目をつける。中央部に二本の平行した筋目があり、左右の両端にもそれぞれ一本の筋目をつける。その後、図5に示すように絶縁紙7を切断して、絶縁紙7の一単位を切り出す。そして、左右の筋目で折り返す(図6)。説明の都合上、左右の筋目で折り返した部分を腕部7cと称する。
これで、絶縁紙7を用意する工程(ST200)は終了し、次に絶縁紙7を成形する工程(ST300)に移行する。
【0026】
図7、8を参照して、絶縁紙7を成形する工程(ST300)を説明する。
図7に示すように、絶縁紙7を絶縁紙挿入装置300にセットする。すなわち、ガイド340とダイス310の間に絶縁紙7をセットする。このとき、先程の折り返しで成形された腕部7cは、ガイド340側に来るようにする。また、中央部の二本の筋目がガイドスリット341と成形凹部320との間に来るようにする。
【0027】
さて、この状態でポンチ360をガイドスリット341から成形凹部320に向けて前進させる。すると、絶縁紙7が成形凹部320に押し込まれる。ポンチ360の頭部361が成形凹部320の最奥まで前進した状態が図8である。中央部の二本の筋目が90度に折られ、絶縁紙7は略コ字状になる。
【0028】
図7から図8に至る過程において、腕部7c、7cが開かず、折り返された状態を維持する。
・・・
【0029】
これで絶縁紙7の成形(ST300)は終了し、次に、絶縁紙7をスロット5に挿入する工程(ST400)に移行する。
【0030】
絶縁紙7をスロット5に挿入する工程(ST400)を図9、図10を参照して説明する。
図8のようにポンチ360を成形凹部320の最奥まで押し込んだ後、図9に示すように、ポンチ360の頭部361を成形凹部320の中間部322まで後退させる。(つまり、ポンチ360を成形凹部320から完全に抜いてしまわない、ということである。)
ポンチ360を後退させるときに摩擦で絶縁紙7も一緒に後退する可能性はあるが、その場合でも絶縁紙7は段差325で止まる。
ここで、図9の状態において、腕部7c、7cがポンチ360の胴部362で押さえられているので、腕部7c、7cが折られた状態が維持されている。
頭部361を中間部322まで後退させた状態のときに、頭部361と胴部362との付け根が段差325から所定の距離をもつ必要があるのは、胴部362で腕部7c、7cを押さえておくためである。
【0031】
ポンチ360の頭部361を成形凹部320の中間部322まで後退させた状態で、続いて、図10に示すように、プッシャ370を成形凹部320の奥部323に挿入する。すると、絶縁紙7はプッシャ370に押され、スロット5に挿入される(図11)。このとき、成形凹部320の奥部323に分岐凹部324があり、そして、プッシャ370の突起部371が分岐凹部324に嵌るように挿入されることで絶縁紙7がプッシャ370(の突起部371)にて押されるようになっている。図11のように、絶縁紙は、腕部が折られた状態を維持しながらスロット内に収まる。絶縁紙7がスロット5内に入ってしまうと、ポンチ360の胴部362による押さえが無くなるので腕部が開く(図12)。
このようにして、カフサスロット210よりも寸法が長い絶縁紙7をスロット5内にスムースに挿入することができた(ST400、終了)。
【0032】
一のスロット5に絶縁紙7を挿入した後、次のスロット5が絶縁紙挿入装置300の成形凹部320の直下に来るようにステータコア2を回転させる。(もちろん、絶縁紙挿入装置300の方を動かしてもよい。)
そうして、絶縁紙7をスロット5内に順々に挿入していく。」





・図1,7?10から、絶縁紙7は、ポンチ360により成形凹部320に水平方向に押し込まれることにより、成形凹部320の形状に沿った略コ字状の形状に成形され、ついで、プッシャ370を成形凹部320の奥部323に垂直方向下方に挿入することで、絶縁紙7はプッシャ370に押されることが看取できる。

上記甲4の記載、特に、請求項1、【0026】?【0027】及び図1、7?9によれば、甲4には、次のとおりの発明が記載されていると認められる。

「絶縁紙挿入装置300の下方にセットされているステータコアのスロットに絶縁紙7を成形・挿入する方法であって、
絶縁紙の上端にカフス部7aを形成し、筋目を付けて切断する絶縁紙7用意工程と、
前記絶縁紙7を、入口部、中間部、奥部のうちの前記奥部が前記スロットの軸線上に位置するように配設された成形凹部320を有するダイス310の前記成形凹部320の中に、ポンチ360により水平方向に押し込み、前記成形凹部320の形状に沿った略コ字状形状に成形する絶縁紙7成形工程と、
ポンチ360の頭部361を成形凹部320の中間部322まで後退させた状態で、プッシャ370を成形凹部320の奥部323に垂直方向下方に挿入して、絶縁紙7をプッシャ370により押して、ポンチ360の胴部と前記成形凹部320との間で前記腕部の折り曲げ状態を保持しながら、前記プッシャ370にて前記絶縁紙7を前記スロットに押し入れる絶縁紙7スロット挿入工程、
を備える方法」(以下、「甲4方法発明」という。)

また、甲4には以下の発明も記載されていると認められる。

「上端にカフス部7aが形成され、筋目が付けられている絶縁紙7を略コ字状形状に成形する機能を備えた絶縁紙挿入装置300であって、
水平方向に凹状に形成された成形凹部320を有し、前記絶縁紙7を前記成形凹部320の形状に沿った略コ字状形状に成形するダイス310と、
前記絶縁紙7を、前記成形凹部320の中に水平方向に押し込み、前記略コ字状形状に成形するポンチ360と、
を備える絶縁紙挿入装置300。」(以下、「甲4装置発明」という。)

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4方法発明とを対比する。
(ア)甲4方法発明の「絶縁紙7」は、本件発明1の「シート状部材」に、同様に、「ダイス310」は「第1金型」に、「ポンチ360」は「第1押込み部材」に、「成形凹部320」は「第1成形部」に、「水平方向」は「第1方向」に、「略コ字状形状」は「第1形状」に、それぞれ相当する。
(イ)甲4方法発明においては、「ダイス310」の「成形凹部320」に、絶縁紙7が「水平方向」に押し込まれることから、甲4方法発明の「成形凹部320」は、本件発明1の「第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部」との構成を満足する。
(ウ)甲4方法発明において、「絶縁紙7成形工程」では、絶縁紙7を変形して、略コ字状形の所定の形状に成形するから、この工程での成形方法は、本件発明1の「シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲4方法発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、
前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程を備えるシート状部材の成形方法。
<相違点3>
本件発明1は、第1工程に続き、「前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程」であって、「前記第2成形部」が「前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成」されるとともに、「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成」されるものであることで、「前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形される」ように成形される工程(以下、前者の成形工程を「下流側端部形状への成形工程」、後者の成形工程を「誘い込み部の形状への成形工程」という。)を備える第2工程を有しているのに対して、甲4方法発明では、このような第2工程を有していない点。

イ 相違点3についての判断
相違点3に関し、甲4方法発明と同様、スロットに挿入するための絶縁紙の成形に関する技術を開示する甲1には、第1工程に続き、上記第2工程の「下流側端部形状への成形工程」に相当する工程を備えた成形方法とすることについての開示はある(上記1.(1)の甲1の記載事項及び同(2)アの本件発明1と甲1方法発明との対比参照)が、上記第2工程の「誘い込み部の形状への成形工程」に相当する工程を設けることを示唆する記載はない。
また、「誘い込み部の形状への成形工程」に関し、上記1.(2)ウで指摘したとおり、甲3には、絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のコイル絶縁紙が開示されている。
しかしながら、甲3の以下の記載から明らかなとおり、甲3は、絶縁紙にカフス部を設けることによる問題点を解決するために、(絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状である)筒状とされた絶縁紙の断面形状を、断面の一方の幅が前記スロットの幅よりも大きく、他方の幅が前記スロットの幅よりも小さいテーパ状にすることで、カフス部を設けることなしに、スロットへの導線の挿入時における位置ずれのない絶縁紙が提供できたものである。

<甲3の記載>
「【0006】
・・・カフス部を設けると、回転電機の製造工数が余分に発生するため、該回転電機の製造コストが高くなる。また、カフス部を設けた箇所では、スロット絶縁紙の厚みが局所的に厚くなるため、スロット絶縁紙の内側に導線を挿入した場合、該導線の先端部がカフス部に引っ掛かってしまい、スロット内に導線を挿入することが困難になると共に、スロット絶縁紙が破けて導線とステータコアとを電気的に絶縁することができなくなる。
【0007】本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、スロットに導線を容易に挿入することが可能になると共に、カフス部を設けること無く、導線の挿入時におけるスロット絶縁紙の位置ずれを防止することにより、製造コストを下げることができる回転電機及びその製造方法を提供することを目的とする。」
「【0010】
・・・発明によれば、スロット挿入前のスロット絶縁紙の断面形状は、筒状断面の一方の幅が前記スロットの幅よりも大きく、他方の幅が前記スロットの幅よりも小さいテーパ状に形成されている。
【0011】
従って、前記スロット絶縁紙における前記他方の幅の箇所を前記スロットの壁面に擦り合わせながら挿入することにより、前記スロット絶縁紙を前記スロット内に容易に挿入することができる。また、前記スロットへの挿入後は、前記スロット絶縁紙における前記一方の幅の箇所が前記スロットの壁面を押圧するため、特許文献1のカフス部を設けなくても、前記スロット絶縁紙を前記スロット内に固定することが可能となる。
【0012】
また、カフス部が設けられていないため、前記スロット絶縁紙の厚みはステータコアの軸方向に沿って略同一となる。そのため、前記スロット絶縁紙が挿入された前記スロットに導線を挿入する場合、前記スロット絶縁紙に沿わせて前記導線を挿入すれば、前記スロット絶縁紙を破ること無く、前記スロット絶縁紙の内側に前記導線を容易に挿入することができる。また、前記導線は、前記スロット絶縁紙よりも硬いため、前記スロット絶縁紙の内側に前記導線を挿入すると、前記導線の側面から前記スロット絶縁紙に押圧力が作用する。これにより、前記スロット絶縁紙は、前記スロットの壁面に密着し、該スロット内に確実に固定される。
【0013】
このように、本発明によれば、前記スロット絶縁紙を上述した構成とすることにより、前記スロットに前記導線を容易に挿入することが可能になると共に、カフス部を設けること無く、前記スロットへの前記導線の挿入時における前記スロット絶縁紙の位置ずれを防止することができ、さらには、製造コストも下げることができる。」

一方、甲4方法発明は、スロットに絶縁紙が挿入されたステータコアに導線を挿入する際に、「絶縁紙7のカフス部7aがスロット5の縁に引っ掛かっているので、絶縁紙7が導線3に引きずられて抜け落ちたりしない」(甲4の【0033】)という作用を達成できるように、「絶縁紙の上端にカフス部7a」が形成された絶縁紙を成形することを前提とする発明である。
そうすると、カフス部が形成された形状の絶縁紙であることが前提の甲4方法発明に、カフス部を設けない形状の絶縁紙を提供する甲3の技術を組み合わせる動機があるとはいえない。
また、仮に、甲4方法発明において、絶縁紙のシートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形する場合、絶縁紙の上端のカフス部が邪魔になり、完全に重ねることは難しいし、重ねようとするとカフス部部分が押しつぶされてスロットの縁に引っかかりにくい構造となってしまい、甲4方法発明においてカフス部を形成した意義が損なわれることは明らかである。
よって、絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のものコイル絶縁紙が甲3に示されるとおり従来から知られていたとしても、当業者は、甲4方法発明における絶縁紙7を、絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のものとすることを動機付けられることはなく、また、そのような形状の絶縁紙を成形するために、甲4方法発明を、「誘い込み部の形状への成形工程」を有する第2工程を有するものとすることも動機付けられない。
さらに、甲2は、「繊維強化熱可塑性樹脂複合管の製造方法」(【発明の名称】)に関する技術についてのものであって、甲4方法発明とは技術分野が異なっているから、当業者が甲4方法発明の改良のために甲2を参酌することはないし、仮に参酌しても、甲2において、シート状部材の一方の端部と他方の端部とが重なる形状となるように成形するための部材は、賦形ロール5と内金型2であるところ、このような装置構造による成形手段を甲4方法発明における第2工程として付加した場合、甲4方法発明で成形された上端にカフス部7aが形成された絶縁紙を、その構造を維持したままシートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状となるように成形することはできないから、当業者は甲2に記載の上記成形手段を採用することはない。

以上のとおり、甲1-4の記載を参酌しても、甲4方法発明において、絶縁紙7の一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形する第2工程、つまり、「誘い込み部の形状への成形工程」を有する第2工程を備えた方法とすることを当業者が動機付けられるとはいえないから、甲4方法発明を相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明1について、甲4に記載された発明及び甲1-4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用する請求項に係るものであって、本件発明2は、甲4方法発明と、少なくとも上記相違点3の点で相違している。
そして、相違点3についての判断は、上記(2)イで記載したとおりであるから、甲4方法発明と少なくとも上記相違点3の点で相違する本件発明2についても、上記(2)イで記載したと同様の理由によって、甲4に記載された発明及び甲1-4に記載の技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について
ア 対比
上記(2)アにおける本件発明1と甲4方法発明との対比を踏まえて、本件発明4と甲4装置発明とを対比すると、両者には、以下の対応関係がある。
(ア)甲4装置発明の「上端にカフス部7aが形成され、筋目が付けられている絶縁紙7を略コ字状形状に成形する機能を備えた絶縁紙挿入装置300」は、本件発明4の「シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置」に相当する。
(イ)甲4装置発明の「水平方向に凹状に形成された成形凹部320を有し、前記絶縁紙7を前記成形凹部320の形状に沿った略コ字状形状に成形するダイス310」は、本件発明4の「第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型」に相当する。
(ウ)甲4装置発明の「前記コイル絶縁紙1を、前記保持ガイド22の中に前記垂直方向に押し込み、前記V字形状に成形する押し込みガイド24」は、本件発明4の「前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材」に相当する。

そうすると、本件発明4と甲4装置発明は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、
第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、
前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、
を備えるシート状部材の成形装置。
<相違点4>
シート状部材の成形装置が、本件発明4では、「前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型」と、「前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材」とを備えており、前記第2金型の「第2成形部」は、「前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜」して形成され、かつ、「前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有する」ように構成されている(以下、第2成形部の前者の形状部分を「幅狭化部分」、後者の形状部分を「誘い込み部分」という。)のに対して、甲4装置発明では、第2成形部材を備えていない点。

イ 相違点4についての判断
相違点4に関し、甲4装置発明と同様、回転電機のコイルを絶縁するための絶縁紙の成形についての技術に関する甲1には、上記1.(1)で摘記したとおりの記載があり、絶縁紙の形付けを狙い通りの形状に行える装置とするために、甲4装置発明において、成形ダイス310を、甲1に記載の成形装置のようなテーパ折りフォーマー部分(これは、上記「幅狭化部分」に相当する。)を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得ることと認められる。
しかしながら、甲4には、成形ダイス310を「誘い込み部分」を備えたものとすることを示唆する記載はない。
また、上記1.(2)イで説示したとおり、甲3には絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状のコイル絶縁紙が開示されているが、上記2.(2)イで説示したとおり、甲3は、カフス部を有する絶縁紙の問題点を解決するためにカフス部がない構造の絶縁紙とする技術に関するものであるから、甲3に記載の技術を、絶縁紙にカフス部を設けることを前提とする甲4装置発明に組み合わせる動機がない。
さらに、甲2は、上記2.(2)イで説示したとおり、甲4装置発明とは技術分野が異なっているから、甲4装置発明を改良する目的で当業者が甲2を参酌することはないし、仮に参酌しても、甲2に記載の成形手段を採用すると甲4装置発明の目的を害することになるから、当業者は甲2に記載の成形手段を甲4装置発明に採用することはない。
以上のとおり、甲1-4の記載を参酌しても、甲4装置発明において、装置を、(絶縁シートの一方の端部と他方の端部とが重なる形状に成形するための)「誘い込み部分」を備えたものとすることを当業者が動機付けられるとはいえない。
よって、甲4装置発明を相違点4に係る本件発明4の構成を備えたものとすることは当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件発明4について、甲4に記載された発明及び甲1-4に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により本件特許の請求項3及び5が削除された結果、請求項3及び5に係る特許についての本件特許異議の申立ては対象を欠くこととなったため、特許法120条の8第1項において準用する同法135条の規定により、請求項3及び5に係る特許についての本件特許異議の申立ては却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シート状部材の成形方法及び装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータにおいては、異相コイル間の絶縁を確保するために、各コイルの相間に絶縁紙が介設される。この種の絶縁紙は、一対の絶縁板部と、両絶縁板部を一体に連結する一対の連結脚部とを備えている。絶縁板部は比較的面積の広い板状に形成されている。また、両連結脚部は細長い帯状に形成され、各絶縁板部の側端部から互いに平行に延設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、一方の絶縁板部は、ステータコアの軸線方向の一方端から突出するコイルエンドの相間に介設されて各相を絶縁する。他方の絶縁板部は、ステータコアの軸線方向の他方端から突出するコイルエンドの相間に介設されて各相を絶縁する。そして、両絶縁板部を連結している連結脚部は、コイルを巻回支持するために設けられたステータコアのスロットに挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-121297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、連結脚部及び絶縁板部に折り目を形成し、この折り目に沿って変形させて絶縁紙を所定の形状に成形しているが、折り目を形成する工程の分、工程数が増加し、工程時間も増加する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、工程数を増加させることなくシート状部材を所定の形状に成形することができるシート状部材の成形方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート状部材の成形方法は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形されることを特徴とする。
【0008】
本発明のシート状部材の成形方法によれば、シート状部材を第1金型の第1成形部の中に押し込んで第1形状に成形し、第1成形部の中に押込まれた状態の第1形状のシート部材を、第2金型の第2成形部の中に押し込んで所定の形状に成形するので、絶縁紙に折り目を形成せずに、絶縁紙を所定の形状に成形することができる。これにより、折り目を形成する工程を有するものに比べて、工程数を削減することができる。
【0009】
また、前記第2工程の後に行われ、前記第2押し込み部材を、前記第2形成部の前記第2方向としての押込み方向の下流端まで押し込むことで、前記所定の形状に成形された前記シート状部材を、前記第2成形部から取り出して前記第2成形部の下方に配置されたステータコアのスロットに挿入する第3工程を備えることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第2成形部は、シート状部材の押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜しているので、シート状部材を第2成形部に形成された斜面に沿って押し込むことにより、シート状部材に大きな力を加えることなく、シート状部材を第1形状よりも幅が狭い所定の形状に成形することができる。
【0011】
さらに、前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、前記第2工程では、前記シート状部材は前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形される。
【0012】
この構成によれば、シート状部材を、一方の端部と他方の端部とが重なる所定の形状に容易に成形することができる。
【0013】
本発明のシート状部材の成形装置は、シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、を備え、前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有することを特徴とするシート状部材の成形装置。
【0014】
本発明のシート状部材の成形装置によれば、シート状部材を第1金型の第1成形部の中に押し込んで第1形状に成形し、第1成形部の中に押込まれた状態の第1形状のシート部材を、第2金型の第2成形部の中に押し込んで所定の形状に成形することにより、絶縁紙に折り目を形成せずに、絶縁紙を所定形状に成形することができる。これにより、折り目を形成する工程を有するものに比べて、工程数を削減することができる。さらに、第2成形部は、シート状部材の押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜しているので、シート状部材を第2成形部に形成された斜面に沿って押し込むことにより、シート状部材に大きな力を加えることなく、シート状部材を第1形状よりも幅が狭い所定の形状に成形することができる。
【0015】
また、前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有する。
【0016】
この構成によれば、第2成形部の誘い込み部により、シート状部材を、一方の端部と他方の端部とが重なる所定の形状に容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、工程数を増加させることなくシート状部材を所定の形状に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の成形装置により成形された絶縁紙が挿入されるステータを示す斜視図。
【図2】ステータコアとコイルセグメントと絶縁紙とを示す分解斜視図。
【図3】コイルセグメントを示す斜視図。
【図4】絶縁紙成形装置を示す斜視図。
【図5】第1金型と第2金型とを示す分解斜視図。
【図6】第2金型の前金型を示す斜視図。
【図7】第2金型の後金型を示す斜視図。
【図8】絶縁紙を第1金型に押し込んだ状態の絶縁紙成形装置を示す斜視図。
【図9】第1形状の絶縁紙と第2金型と第2押込みパンチとを示す斜視図。
【図10】第2形状の絶縁紙と第2金型とを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、電動機や発電機などの回転電機は、円筒状に形成されたステータ1と、ステータ1の内側に回転自在に配置されたロータ(図示せず)とを備える。
【0021】
ステータ1は、ステータコア2と、コイル3とを備える。ステータコア2は、円筒形状であり、回転軸方向に貫通する複数のスロット2aが周方向に間隔を存して複数設けられている。各スロット2aは、ステータコア2の径方向断面形状がステータコア2の中心側から径方向に向かって放射状に延びるように形成されており、ステータコア2に形成されたスリット2bを介してステータコア2の内周面に連通している。なお、スリット2bは設けなくてもよい。
【0022】
コイル3は、コイルセグメント4の脚部4aをスロット2aに一方から挿入し、スロット2aの他方から突出した突出部分を周方向に捩り曲げて溶接することにより構成される。
【0023】
図3に示すように、コイルセグメント4は、複数本、実施形態では4本の断面長方形状の導体(平角線の導線)を幅の広い方の面が対向するように1列に整列させて1つの束にしてU字状に形成したものであり、一対の脚部4a,4aと、両脚部4a,4aの一方端(図では上端)を連結する頭部4bとからなる。
【0024】
なお、コイルセグメント4は、複数の平角線を幅方向に整列させた束であればよく、例えば、複数の平角線を幅の狭い方の面が対向するように1列に整列させたものであってもよい。
【0025】
頭部4bの中央には、平角線の整列方向にS字状に湾曲するS字状部4cが形成されている。また、頭部4bは、その中央(S字状部4cの中央)から両脚部4a,4aに向かって下方に傾斜している。コイルセグメント4の脚部4aは、対応するスロット2aに一方から挿入されている。スロット2aの他方からは、コイルセグメント4の脚部4aが突出している。
【0026】
なお、本実施形態のコイル3は、U相、V相、W相からなる3相コイルであり、各スロット2aに挿入されるコイルセグメント4の脚部4aは、周方向に、U相、U相、V相、V相、W相、W相の順に並ぶ。
【0027】
図2に示すように、ステータコア2の各スロット2aには、絶縁を確保するための絶縁紙11(シート状部材)が挿入されている。この絶縁紙11は、硬質な紙製又は薄手の樹脂製のシート材から構成されており、スロット2aの形状に沿って挿入されている。
【0028】
次に、絶縁紙11をスロット2aの形状に沿った形状に成形し、挿入する絶縁紙成形装置20(図4参照)について説明を行う。
【0029】
図4に示すように、絶縁紙成形装置20は、第1金型21と、第2金型22と、第1押込みパンチ23(第1押込み部材)と、第2押込みパンチ24(第2押込み部材)とを備えている。絶縁紙成形装置20は、ステータコア2(図2参照)の上方に配置されて使用される。なお、図4においては、絶縁紙11を透明で図示している。
【0030】
第1金型21は、左右方向である第1方向D1に凹状で、且つ上下方向である第2方向D2に貫通して形成された第1成形部21aと、第2方向D2に貫通し、第2押込みパンチ24が挿入される押込み孔21bとを備えている。なお、第1成形部21aは、少なくとも下端が開口していればよく、第2方向D2に貫通していなくてもよい。第1成形部21aが第2方向D2に貫通していない場合には、第1成形部21aの上端と絶縁紙11の上端との間に隙間を設け、この隙間から押込みパンチを挿入する。
【0031】
第1成形部21aには、後述する第1形状に成形された絶縁紙11の前端部11a及び後端部11b(図9参照)に当接し、絶縁紙11が抜け出るのを防止するためのストッパ部21cが2個形成されている。なお、ストッパ部21cを、第1成形部21aの上下方向の全長に亘って形成せず、上端や下端等の1部分にのみ形成するようにしてもよい。
【0032】
図5に示すように、第2金型22は、前金型31と、後金型32とを備えている。前金型31と後金型32とは、例えばボルト(図示せず)により固定されている。なお、前金型31と後金型32とを1部品から構成するようにしてもよい。
【0033】
図6に示すように、前金型31は、第2方向D2に貫通して形成された前成形部31aと、第2方向D2に貫通し、第2押込みパンチ24が挿入される前押込み凹部31bとを備えている。
【0034】
前成形部31aは、上端が第1成形部21aの前側半分と同じ形状で形成され、下端に向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように傾斜して形成されている。前成形部31aには、下端に向かうにつれて前成形部31aの第1方向D1の幅を狭くし、絶縁紙11の前端部11a(図9参照)を折り曲げるための前誘い込み部31cが形成されている。また、前成形部31aの下端は、前誘い込み部31cとは逆側の端部から前誘い込み部31cに向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように形成されている。なお、同じ形状とは、若干異なる形状も含む。
【0035】
また、前成形部31aの前誘い込み部31cに近い部分には、絶縁紙11の前端部11aが後端部11b(図9参照)の内側となるように前端部11aを折り曲げるための折り曲げ凸部31dが形成されている。なお、前成形部31aの上端は、後述する第1形状の絶縁紙11を前成形部31aの内部に挿入しやすくするためにテーパ(図示せず)が形成されている。また、折り曲げ凸部31dの部分を、前金型31とは別部材により構成し、この別部材を前金型31に固定するようにしてもよい。
【0036】
図7に示すように、後金型32は、第2方向D2に貫通して形成された後成形部32aと、第2方向D2に貫通し、第2押込みパンチ24が挿入される後押込み凹部32bとを備えている。
【0037】
後成形部32aは、上端が第1成形部21aの後側半分と同じ形状で形成され、下端に向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように傾斜して形成されている。後成形部32aには、下端に向かうにつれて後成形部32aの第1方向D1の幅を狭くし、絶縁紙11の後端部11bを折り曲げるための後誘い込み部32cが形成されている。
【0038】
また、後成形部32aの下端は、後誘い込み部32cとは逆側の端部から後誘い込み部32cに向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように形成されている。なお、後成形部32aの上端は、後述する第1形状の絶縁紙11を後成形部32aの内部に挿入しやすくするためにテーパ(図示せず)が形成されている。
【0039】
第2金型22は、前金型31の前成形部31a及び後金型32の後成形部32aがステータコア2のスロット2aの真上に位置するように配置されている。
【0040】
次に、絶縁紙成形装置20を用いて絶縁紙11を所定の形状に成形してステータコア2のスロット2aに挿入する動作の流れについて説明する。
【0041】
先ず、図8に示すように、移動機構(図示せず)により第1押込みパンチ23を第1方向D1に移動させ、第1押込みパンチ23により、矩形状の絶縁紙11を第1成形部21aの内部に押し込む。この押込みにより、絶縁紙11は変形されて第1成形部21aの形状に沿った第1形状(図8及び図9参照)に成形される。その後、移動機構により第1押込みパンチ23を移動して、第1成形部21aから抜き取る。
【0042】
第1押込みパンチ23を第1成形部21aから抜き取った後も、第1形状に成形された絶縁紙11の前端部11a及び後端部11bがストッパ部21cに当接するので、絶縁紙1が第1成形部21aから抜け出るのを防止することができる。
【0043】
次に、図9に示すように、移動機構(図示せず)により第2押込みパンチ24を下方に移動させ、第2押込みパンチ24により、第1成形部21a内の第1形状の絶縁紙11を第2金型22の内部に押し込む。絶縁紙11は、第2金型22を構成する前金型31の前成形部31aと、第2金型22を構成する後金型32の後成形部32aとにより形成された空間に押し込まれる。なお、図9においては、第1金型21の図示を省略している。
【0044】
上記押込みにより、図10に示すように、絶縁紙11の後端部11bは、後金型32の後誘い込み部32cにより内側方向に折り曲げられ、絶縁紙11の前端部11aは、前金型31の折り曲げ凸部31dにより、内側方向に折り曲げられる。これにより、絶縁紙11の前端部11a及び後端部11bは、第1方向D1において重なる第2形状に成形される。この成形の際、絶縁紙11の前端部11aは、前金型31の折り曲げ凸部31dにより、後端部11bの内側となるように折り曲げられる。
【0045】
また、上記押込みにより、絶縁紙11は、前金型31の前成形部31a及び後金型32の後成形部32aに沿って変形される。前成形部31a及び後成形部32aは、前誘い込み部31c及び後誘い込み部32c側に向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように形成されているので、絶縁紙11は、前端部11a及び後端部11b側に向かうにつれて前後方向D3の幅が狭くなるように傾斜し、ステータコア2のスロット2aに挿入可能でスロット2aに沿った第2形状に形成される。なお、図10においては、第2形状の絶縁紙11が第2金型22から全て押し出された状態を描いている。
【0046】
絶縁紙成形装置20は、第2金型22の前成形部31a及び後成形部32aがステータコア2のスロット2aの真上に位置するように配置されており、第2押込みパンチ24をさらに押込むと、第2金型22の内部に挿入されて第2形状に成形された絶縁紙11は、スロット2aに挿入される(図2参照)。第2押込みパンチ24を、第2金型22の下端まで押しこむと、第2形状に成形された絶縁紙11は全てスロット2aに挿入される。
【0047】
次に、第2形状の絶縁紙11が挿入されたスロット2aの隣のスロット2aを第2金型22の前成形部31a及び後成形部32aの真下に位置させるように回転機構(図示せず)によりステータコア2を回転させた後、再び絶縁紙成形装置20を駆動して、スロット2aに第2形状の絶縁紙11を挿入する。この制御を、全てのスロット2aに対して行うことで、全てのスロット2aに第2形状の絶縁紙11が挿入される。
【0048】
そして、スロット2aに挿入された第2形状の絶縁紙11により形成された内部空間に、コイルセグメント4の脚部4aが挿入される(図1参照)。この状態では、脚部4aは、絶縁紙11により覆われているので、絶縁状態が確保される。
【0049】
このように、本実施形態の絶縁紙成形装置20によれば、絶縁紙11に折り目を形成せずに、絶縁紙11を第2形状(所定の形状)に成形することができる。これにより、折り目を形成する工程を有するものに比べて、工程数を削減することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、絶縁紙を第2形状(所定の形状)に成形する装置に本発明を適用しているが、所定の形状に成形するものは絶縁紙に限らず、包装紙等の様々な形態のシート状部材を所定の形状に成形する装置に本発明は適用可能である。
【0051】
上記実施形態では、第2金型により絶縁紙の前端部及び後端部が重なる第2形状に絶縁紙を成形しているが、第2金型により成形する絶縁紙の形状は、第1金型では成形できない形状であればよい。すなわち、第2金型は、絶縁紙を第1金型では成形できない形状に成形するものであり、上端から下端に向かうにつれて前後方向の幅が狭くなるような傾斜面、誘い込み部、折り曲げ凸部は、なくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…ステータ、2…ステータコア、2a…スロット、2b…スリット、3…コイル、4…コイルセグメント、4a…脚部、11…絶縁紙、11a…前端部、11b…後端部、20…絶縁紙成形装置、21…第1金型、21a…第1成形部、21b…押込み孔、21c…ストッパ部、22…第2金型、23…第1押込みパンチ、24…第2押込みパンチ、31…前金型、31a…前成形部、31b…前押込み凹部、31c…前誘い込み部、31d…折り曲げ凸部、32…後金型、32a…後成形部、32b…後押込み凹部、32c…後誘い込み部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形方法であって、
前記シート状部材を、第1金型の第1方向に凹状に形成された第1成形部の中に、第1押込み部材により前記第1方向に押し込み、前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1工程と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、第2金型の前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部の中に、第2押込み部材により前記第2方向に押し込み、前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2工程と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部には、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部が形成され、
前記第2工程では、前記シート状部材は前記第2成形部の下流側端部の形状に沿った前記所定の形状に成形され、かつ、前記誘い込み部の形状に沿って変形され、前記一方の端部と前記他方の端部とが重なる前記所定の形状に成形されることを特徴とするシート状部材の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシート状部材の成形方法において、
前記第2工程の後に行われ、前記第2押し込み部材を、前記第2形成部の前記第2方向としての押込み方向の下流端まで押し込むことで、前記所定の形状に成形された前記シート状部材を、前記第2成形部から取り出して前記第2成形部の下方に配置されたステータコアのスロットに挿入する第3工程を備えることを特徴とするシート状部材の成形方法。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
シート状部材を変形させて所定の形状に成形するシート状部材の成形装置であって、
第1方向に凹状に形成された第1成形部を有し、前記シート状部材を前記第1成形部の形状に沿った第1形状に成形する第1金型と、
前記シート状部材を、前記第1成形部の中に前記第1方向に押し込み、前記第1形状に成形する第1押込み部材と、
前記第1方向とは異なる第2方向に貫通する第2成形部を有し、前記第1形状のシート状部材を前記第2成形部の形状に沿った前記所定の形状に成形する第2金型と、
前記第1成形部の中に押込まれた状態の前記第1形状のシート状部材を、前記第2金型の中に前記第2方向に押し込み、前記所定の形状に成形する第2押込み部材と、
を備え、
前記第2成形部は、前記シート状部材の前記第2方向としての押込み方向の上流側から下流側に向かって幅が狭くなるように傾斜して形成され、
前記第2成形部は、前記シート状部材の一方の端部と他方の端部とが前記第1方向において重なるように、前記一方の端部を前記他方の端部の外側に誘導する誘い込み部を有することを特徴とするシート状部材の成形装置。
【請求項5】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-11-29 
出願番号 特願2016-155711(P2016-155711)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 113- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 辰己 雅夫  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 渕野 留香
植前 充司
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6411415号(P6411415)
権利者 本田技研工業株式会社
発明の名称 シート状部材の成形方法及び装置  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  

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