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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B60N
管理番号 1359534
異議申立番号 異議2019-700052  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-25 
確定日 2019-12-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6362994号発明「サイドエアバッグ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6362994号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]について訂正することを認める。 特許第6362994号の請求項1?5、7に係る特許を維持する。 特許第6362994号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6362994号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成26年10月22日に出願され、平成30年7月6日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月25日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1?7に係る特許について、平成31年1月25日に特許異議申立人ビブラコースティック フォーシェダ アクチェボラグ(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和1年5月14日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和1年7月5日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和1年11月6日に意見書を提出した。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和1年7月5日付け訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のア?オのとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置したことを特徴とする」と記載されているのを、「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されていることを特徴とする」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項2?3、5、7についても請求項1の記載を直接的又は間接的に引用することにより、上記と同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設けたことを特徴とする請求項1?3の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。」と記載されているのを、「シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、エアバッグと、このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレー夕と、を備え、前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものであることを特徴とするサイドエアバッグ装置。」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のサイドエアバッグ装置。」と記載されているのを、「前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けないことを特徴とする請求項1?6の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。」と記載されているのを、「前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けないことを特徴とする請求項1?3、5の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。」に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項1?7に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等

ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の構成に対して、「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、」及び「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」と限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)の訂正の目的のとおり、訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落0030には、「本発明のサイドエアバッグ装置1は、サイドフレーム4bに設置したエアバッグ2の展開時に、エアバッグ2の展開方向と反対側、すなわち、車両の後側を支持するバックプレート9を更に設けたものである。」との記載かあり、段落0037には、「バックプレート9を設置している場合は、エアバッグ2とバックプレート9の間に係止部材5を設置しても良い。」との記載かある。
したがって訂正事項1は、上記明細書中の説明や図2に開示された事項に基づいて導き出される、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(エ)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3のうち何れかを引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正事項を含むものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項1の構成に対して、「前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」と限定する訂正事項を含むものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)の訂正の目的のとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消するとともに、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)新規事項の有無
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落0033には、「バックプレート9は、前記作用を奏するものであれば、・・・図2(b)に示す様に、設置状態のエアバッグ2の全長方向に分割したものであってもよい。」との記載かある。
したがって訂正事項2は、上記明細書中の説明や図2(b)に開示された事項に基づいて導き出される、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(エ)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項4について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(オ)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和1年11月6日付け意見書において、「訂正事項2は、・・・訂正前の請求項間の引用関係を解消するとともに、『前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである』との限定を加えるものである。・・・
訂正発明4の『前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである』との定義からは、バックプレートが、エアバッグの全長方向に沿って分割されている状態、すなわち、エアバッグの全長方向(上下方向)に細長いおよび/または薄いバックプレート片が複数存在する状態が当然に導出される。・・・
訂正発明4の『前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである』との事項は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとともに、不明確であると言わざるを得ない。
よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に当たるとは言えず、同項第2号乃至第4号のいずれにも当たらない。また、同条第9項において準用する同法126条第6項に規定する実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更しないものとも言えない。この訂正事項2は訂正要件を満たしておらず、認容されるべきではない。」旨主張している。
しかし、訂正事項2は、特許異議申立人がいうように、訂正前の請求項間の引用関係を解消するとともに、「前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」との限定を加えるものであるので、特許請求の範囲の減縮するものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、上記(エ)に記載したように、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できるものではない。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正事項3は、請求項5において請求項の引用先を訂正前の請求項4から訂正後の請求項3に変更するものである。
訂正前の請求項5は、訂正前の請求項4の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設けたことを特徴とする請求項1?3の何れかに記載のサイドエアバッグ装置」を引用するものであったところ、請求項4の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け」との構成は、上記訂正事項1で、訂正後の請求項1の構成に加えられた。
そうすると、訂正事項3で、請求項5において請求項の引用先を訂正前の請求項4から訂正後の請求項3に変更することは、訂正前の「請求項1?3の何れか」の記載を引用する請求項4の記載を引用するものから、訂正前の「請求項3」の記載を引用する請求項4の記載を引用するものに変更するものであって、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項3は、請求項5を、訂正前の「請求項1?3の何れか」の記載を引用する請求項4の記載を引用するものから、訂正前の「請求項3」の記載を引用する請求項4の記載を引用するものに変更したものであって、実質的な内容の変更を件うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(ウ)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項5について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項6を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
請求項を削除する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(ウ)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項6について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項6に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項5は、請求項7において、「請求項1?6の何れかに記載」のものから、請求項4、請求項6を引用したものを削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項5は、請求項7において、請求項4、請求項6を引用したものを削除する訂正であって、実質的な内容の変更を件うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(ウ)独立特許要件
本件においては、訂正前の請求項7について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項7に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7]について訂正することを認める。

3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
なお、本件訂正請求により請求項6は削除された。
「【請求項1】
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレー夕と、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、
前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、シートのヘッドレスト側と着座部側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記サイドフレームの間にも設置されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレー夕と、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、
前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものであることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けないことを特徴とする請求項1?3、5の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。」

4.取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1?5、7に係る特許に対して、当審が令和1年5月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


・請求項1?5、7
1.米国特許出願公開第2005/0168046号明細書(特許異議申立人が提出した甲第1号証。以下「刊行物1」という。)
2.特開2010-70003号公報(以下「刊行物2」という。)
3.特開2013-212775号公報(以下「刊行物3」という。)

(2)刊行物の記載
ア.刊行物1の記載
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された刊行物1には、車両のシートアセンブリに生じる振動の減衰装置に関して、図面とともに、次の記載がある。(刊行物1は英文である為、特許異議申立人が甲第1号証抄訳文として提出した、抄訳文を仮訳として用いる。下線は、当審で付与。)
(a)「[ABSTRACT]A vibration dampening system for a seat in a vehicle includes a seat adapted to be coupled to the vehicle. A component is coupled to the seat and has a primary function related to use of the seat. The component is decoupled from the seat in at least one direction such that the component is able to move relative to the seat, thereby having a second function related to dampening vibration in the seat.」
(「[要約]車両に結合されるように適合されたシートを具える車両シート用振動減衰システムである。シートに結合された構成要素は、シートの使用に関連する主たる機能を有する。この構成要素は、少なくとも1つの方向でシートから切り離され、当該構成要素がシートに対して動き、それにより、シートの振動減衰に関連する第2の機能を有する。」)
(b)「[0023]・・・Mass dampers are used to reduce vibrations and sound pressure level within a vehicle. The result of such use is the effective elimination of unacceptable vibrations, ensuring optimum comfort to the driver and passengers. ・・・
[0025]・・・The resonant frequency of the damper is adapted to compensate for the vibrations that are generated and in turn, reduce unwanted vibrations in the structure.・・・
[0026]・・・Through proper selection of the values associated with the mass, force constant and damping constant for the mass damper 14, the vibrations in the structure 10 can be significantly reduced.
・・・
[0029]A linear mass damper is sometimes a good solution for the above mentioned vibration issue of the car seat 20. However, a growing environmental consciousness and therefore a desire for more fuel efficient vehicles have caused automobile manufacturers to strive to reduce the overall weight of the vehicles as a goal. Adding mass for vibration reduction is contradictional to the above mentioned goal and therefore should be avoided.」
(「[0023]・・・質量ダンパーが、車両内の振動や音圧レベルを低減するために使用される。この使用の結果、許容しがたい振動が効果的に打ち消され、ドライバーや乗員に最適な快適性が保証される。・・・
[0025]・・・ダンパーの共振周波数は、生成される振動を補償し。構造体における望ましくない振動を低減するように適合される。・・・
[0026]・・・質量ダンパー14の質量体。力定数、および減衰定数に関する値を適切に選択することにより、構造体IO内の振動を大幅に低減することができる。
・・・
[0029]リニア質量ダンパーは、時には、カーシート20の上記振動問題の良好な解決策となる。しかし、環境意識が高まり、より高燃費の車両が要望され、自動車製造業者は、車両の総重量を減らすことを目標に努力することとなった。振動低減のための質量体の追加は、上記の目標と矛盾することとなり、避けるべきである。」)
(c)「[0030]The present invention proposes a solution of the problem by using an existing mass as the damper mass. Current car seat designs are assemblies having several solid components like airbags, heating devices and electrical actuating motors. These components in a car/truck seat can be decoupled with an elastomeric element (rubber, MCU, combinations of these materials with fluid) and tuned to resonant frequencies to absorb annoying vibrations to an acceptable level. Of course, one has to make sure that the driver/passenger will never come in contact with one of these vibrating components.」
(「[0030]本発明は、既存の質量体をダンパーの質量体として用いることによって、この問題の解決を提案する。現在の車両シートの設計は、エアバッグ、ピーク装置および電動モータのようないくつかの固体要素を有すろアセンブリである。乗用車/トラックのシート内のこれらの構成要素は、弾性要素(ゴム、MCU、これらの材料と流体との組み合わせ)で切り離し、共振周波数に同調させて、迷惑な振動を許容レベルまで吸収することができる。もちろん、ドライバー/乗客がこれらの振動要素の1つに接触しないようにする必要かある。」)
(d)「[0031]Turning now to FIGS.4 and 4A, an airbag inflator 23 is integrated into the seat 20 as a mass damper according to a first embodiment of the present invention. The airbag inflator 23 is formed as part of an integrated seat airbag system 24. The seat airbag system 24 further includes an inflatable airbag 26 coupled to the inflator 23. The inflator 23 is ''decoupled'' from the seat 20 in that the inflator 23 is permitted to move relative to the seat 20 via connectors 26. This allows the inflator 23 to act as a mass dampener (m_(D)14 in FIG.1 ) within the seat 20 that dampens any vibrations transmitted thereto.」
(「[0031]図4、4Aに転ずると、本発明の第一実施例によると、シート20に、質量ダンパーとしてのエアバッグインフレータ23が組み込まれている。エアバッグインフレータ23は、一体型シート用エアバッグシステム24の一部として構成される。シート用エアバッグシステム24はさらに、インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26を具える。インフレータ23は、シート20から「分離」され、コネクタ26を介してシート20に対して動くことができる。これにより、インフレータ23がシート20内で質量ダンパー(図1m_(D)14)として作用し、シート20に伝達された振動を減衰させる。」)
(e)「[0032]The connectors 26 may take many forms that allow the inflator 23 to move relative to the seat 20. In the particular example provided, two connectors 26 are formed on each end of the inflator 23. Each connector 26 includes a rigid shaft 28 extending out from the inflator 23. A ball 30 is formed on an end of the shaft 28. The ball 30 in turn fits within a socket 32 made of an elastomeric material coupled to the seat 20. This elastomeric material is preferably rubber or microcellular polyurethane, although any other suitable material may be employed. The ball 30 and socket 32 cooperate to ''decouple'' the inflator 23 from the seat 20 such that the inflator 23 may move relative to the seat 20. The connectors 26 may be tuned to provide specific dampening abilities by modifying the ball 30 and socket 32 design, or by adjusting the properties of the electrometric material of the socket 32. Moreover, the arrangement of the ball 30 and socket 32 may be reversed in that the inflator 23 may include the socket 32 and the seat 20 may include the ball 30 without departing from the scope of the present invention.」
(「[0032]コネクタ26は、インフレータ23がシート20に対して動けるような多くの形態を取ることができる。提供された特定の例では、2つのコネクタ26がインフレータ23の各端部に形成される。各コネクタ26は、インフレータ23から延びる剛性シャフト28を含む。シャフト28の端部にボール30が形成される。このボール30は、シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まる。このエラストマー材料は、好ましくは、ゴムまたは微孔性ポリウレタンであるが、他の適切な材料を用いてもよい。ボール30とソケット32は協働して、インフレータ23がシート20に対して動けるように、インフレータ23をシート20から「切り離す」。コネクタ26は、ボール30とソケット32の設計を変更することによって、あるいはソケット32の電気材料の特性を調整することによって、特定の緩衝機能を提供するように調整することができる。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、ボール30とソケット32との配置を逆にして、インフレータ23がソケット32を含み、シート20がボール30を含むようにしてもよい。」(特許異議申立人抄訳文の「弾性材料」は「エラストマー材料」の誤訳と認める。)
(f)「[0033]The seat airbag system 24 further includes a cage 34 coupled to the seat 20 and extending around the inflator 23. By ''decoupling'' the inflator 23 of the integrated seat airbag 24, the movement of the inflator 23 relative to the seat 20 must be limited during the inflation the airbag 26. The cage 34 acts to trap the ''decoupled'' and movable inflator 23 such that during inflation of the airbag 24, impact forces generated on the inflator 23 as the airbag 24 deploys will be supported in turn by the cage 34 as the inflator 23 contacts the cage 34. The cage 34 includes an opening 36 therein to allow the deployment of the airbag 24. The cage 34 may be a wire mesh cage or a solid container.」
(「[0033]シートエアバッグシステム24は、シート20に結合され、インフレータ23の周りに延びるゲージ34をさらに含む。一体化されたシートエアバッグ24のインフレータ23を「切り離す」ことにより、空気バッグ26の膨張中にインフレータ23のシート20に対する動きは制限される。ゲージ34は、エアバッグ24の膨張中に、エアバッグ24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力がゲージ34によって支持されるように、「切り離された」可動のインフレータ23をトラップする。ゲージ34は、内部にエアバッグ24が展開可能な開口6を具える。ゲージ34は、金網ゲージまたは硬質の容器であってもよい。
(g)「13. A method for dampening vibrations in an assembly of components comprising:
selecting a component of an assembly of components, the component having a primary function; decoupling the selected component from the assembly of components such that the component may move relative to the assembly of components thereby providing a secondary function of dampening vibrations; and tuning the selected component to a predetermined resonant frequency and direction whereby vibrations in the assembly of components are reduced.」
(「請求項13:構成要素のアセンブリにおける振動を減衰させるための方法であって、
複数の構成要素のアセンブリのうちの.主たる機能を有する1つの構成要素を選択するステップと、
前記複数の構成要素のアセンブリに対して前記構成要素が移動し、それにより振動を減衰させる第2の機能を提供するように、選択された構成要素を前記複数の構成要素のアセンブリから切り離すステップと、
選択された構成要素を所定の共振周波数および方向に同調させることによって、前記複数の構成要素のアセンブリにおける振動が低減されるステップとを含むことを特徴とする方法。」)
(h)図3?4A


・図4、4Aには、シート20のシートバック部に設置された一体型シート用エアバッグシステム24が図示されている。
・図4、4Aの一体型シート用エアバッグシステム24は、[0031]の「エアバッグインフレータ23は、一体型シート用エアバッグシステム24の一部として構成される。シート用エアバッグシステム24はさらに、インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26を具える。」ものであるので、インフレータ23と、インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26とを備えたものといえる。
そして、「一体型シート用エアバッグシステム24の一部として構成される」エアバッグインフレータ23が、[0031]?[0032]の「インフレータ23は、シート20から『分離』され、コネクタ26を介してシート20に対して動くことができる。これにより、インフレータ23がシート20内で質量ダンパー(図1m_(D)14)として作用し、シート20に伝達された振動を減衰させる。」、「コネクタ26は、インフレータ23がシート20に対して動けるような多くの形態を取ることができる。提供された特定の例では、2つのコネクタ26がインフレータ23の各端部に形成される。各コネクタ26は、インフレータ23から延びる剛性シャフト28を含む。シャフト28の端部にボール30が形成される。このボール30は、シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まる。このエラストマー材料は、好ましくは、ゴムまたは微孔性ポリウレタンであるが、他の適切な材料を用いてもよい。ボール30とソケット32は協働して、インフレータ23がシート20に対して動けるように、インフレータ23をシート20から『切り離す』。コネクタ26は、ボール30とソケット32の設計を変更することによって、あるいはソケット32の電気材料の特性を調整することによって、特定の緩衝機能を提供するように調整することができる。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、ボール30とソケット32との配置を逆にして、インフレータ23がソケット32を含み、シート20がボール30を含むようにしてもよい。」ものであるので、一体型シート用エアバッグシステム24は、シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23を構成部品とするものといえる。
・図4、4Aのシート20に設置した一体型シート用エアバッグシステム24は、[0033]の「シートエアバッグシステム24は、シート20に結合され、インフレータ23の周りに延びるゲージ34をさらに含む。・・・ゲージ34は、エアバッグ24の膨張中に、エアバッグ24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力がゲージ34によって支持されるように、『切り離された』可動のインフレータ23をトラップする。ゲージ34は、内部にエアバッグ24が展開可能な開口36を具える。」ものであり、そのエアバッグ24は、[0031]の「一体型シート用エアバッグシステム24」あり、ゲージ34は、「エアバッグ24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力がゲージ34によって支持される」ものであるので、一体型シート用エアバッグシステム24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34といえる。

以上の記載及び図示内容によれば、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。(なお、当審で「a:」?「e:」に分説した。)
「a:シート20のシートバック部に設置された一体型シート用エアバッグシステム24であって、
b:インフレータ23と、
c:インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26と、
を備え、
d:シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23を構成部品とする一体型シート用エアバッグシステム24であって、
e:シート20に設置した一体型シート用エアバッグシステム24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34を更に設けた一体型シート用エアバッグシステム24。」

イ.刊行物2の記載
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された刊行物2には、エアバック装置に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0070】・・・図7に示すように、膨張状態となったエアバッグ41の後膨張部46の後方近傍に、硬質の受圧部71を設けてもよい。この場合、受圧部71には、前後方向に対し交差する方向、より好ましくは略直交する方向(座席12,13の略幅方向)に延びる受圧面71Aを設ける。この受圧部71は、サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよいし、サイドフレーム部18Aとは別の部材として設けられてもよい。・・・受圧部71がサイドフレーム部18Aとは別に設けられ、その後に溶接等の手段によって受圧部71がサイドフレーム部18Aに固定されてもよい。・・・
【0071】
このようにすると、膨張状態となった後膨張部46が受圧部71の受圧面71Aに接触することにより、同後膨張部46と受圧面71Aとの間に摩擦が生じ、エアバッグ41の固定箇所を支点とした回転がさらに生じにくくなる。」
(b)図7


以上の記載及び図示内容によれば、刊行物2には以下の発明(以下「刊行物2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「膨張状態となったエアバッグ41の後膨張部46の後方近傍に、硬質の受圧部71を設けてもよい、この場合、受圧部71には、前後方向に対し交差する方向、より好ましくは略直交する方向(座席12,13の略幅方向)に延びる受圧面71Aを設ける、この受圧部71は、サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよいし、サイドフレーム部18Aとは別の部材として設けられてもよい、膨張状態となった後膨張部46が受圧部71の受圧面71Aに接触する硬質の受圧部71」

ウ.刊行物3の記載
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された刊行物3には、車両用シートに関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0056】この実施形態では、車両用シート50の左右両側にサイドエアバッグ装置が設けられた例を示す。具体的には、車両用シート50を構成するシートバック14の車幅方向外側の側部には、ニアサイドエアバッグ装置52が設けられており、シートバック14の車幅方向内側の側部には、ファーサイドエアバッグ装置54が設けられている。」

(3)当審の判断
(3-1)本件発明1について
ア.対比
(a)引用発明1の「シート20のシートバック部」は、本件発明1の「シートのシートバック」に相当する。
そして、引用発明1の「シート20のシートバック部に設置された一体型シート用エアバッグシステム24」と、本件発明1の「シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置」とは、「シートのシートバックに設置するエアバッグ装置」である点で共通する。
(b)引用発明1の「インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26」は、本件発明1の「エアバッグ」に相当する。
また、引用発明1の「インフレータ23」と、本件発明1の「このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータ」とは、「インフレータ」である点で共通する。
(c)引用発明1の「シート20」と、本件発明1の「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側」とは、「シート部」である点で共通する。
引用発明1の「エラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26」は、「エラストマー」が「常温付近でゴム弾性を示す高分子物質の総称。」(広辞苑第六版)を意味し、「インフレータ23」を「コネクタ26を介してシート20に対して動くことができる」ようにしたものであるから、本件発明1の「弾性変形が可能な係止部材」に相当する。
引用発明1の「インフレータ23と、インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26と、を備え・・・た一体型シート用エアバッグシステム24」のものである「インフレータ23」と、本件発明1の「エアバッグと、・・・インフレータと、を備え・・・るサイドエアバッグ装置」のものである「エアバッグ」とは、「エアバッグ装置の構成要素」である点で共通するものである。
そして、引用発明1の「インフレータ23」が「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」であることは、シート20にインフレータ23を設置することを意味する。
そうすると、引用発明1の「インフレータ23」が「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」であることと、本件発明1の「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し」たこととは、「シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置し」た点で共通する。

一致点:したがって、本件発明1と引用発明1とは、
「A:シートのシートバックに設置するエアバッグ装置であって、
B:エアバッグと、
C:インフレータと、
を備え、
D:シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置したエアバッグ装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:シートのシートバックに設置するエアバッグ装置が、本件発明1はシートのシートバック「の側方」に設置する「サイド」エアバッグ装置であるのに対して、引用発明1は、そのように特定されたものでない点。

相違点2:インフレータが、本件発明1は「このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させる」インフレータであるのに対して、引用発明1は、そのように特定されたものでない点。

相違点3:シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置した構成が、本件発明1は「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側」に弾性変形が可能な係止部材を介して「前記エアバッグ」を設置した構成であるのに対して、引用発明1は「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」である点。

相違点4:本件発明1は「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」のに対して、引用発明1は「シート20に設置した一体型シート用エアバッグシステム24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34を更に設けた」点。

イ.判断
事案に鑑み上記相違点4から検討する。
(a)刊行物2に記載された技術的事項の「受圧部71」は、「サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよい・・・膨張状態となった後膨張部46が受圧部71の受圧面71Aに接触する硬質の受圧部71」であるので、本件発明1の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当する。
そして、引用発明1の「展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34」を、刊行物2に記載された技術的事項の「サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよいし、サイドフレーム部18Aとは別の部材として設けられてもよい」受圧部71(本件発明1の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当)とすることは当業者が容易になし得ることといえる。
(b)しかし、刊行物2に記載された技術的事項は、受圧部71(本件発明1の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当するもの)が、「膨張状態となったエアバッグ41の後膨張部46の後方近傍に」設けられたものであっても、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」に相当する構成を備えたものではない。
(c)また、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成は、刊行物3には記載も示唆もなされていない。さらに特許異議申立人が「甲第2号証」として提示した特開2006-312984号公報、同じく「甲第3号証」として提示した米国特許出願公開第2013/0241181号明細書、同じく「甲第4号証」として提示した特開2009-202859号公報、同じく「甲第5号証」として提示した欧州特許出願公開第1790536号明細書のいずれにも記載も示唆もされていない。
(d)特許異議申立人が「甲第6号証」として提示した特開2010-241410号公報には、
・「【0015】本発明による車両座席はエアバッグ19を有し、エアバッグ19は、気体収容要素20と、気体収容要素20用の膨張デバイス21とによって形成される。気体収容要素20は気体袋体または空気袋体と呼ばれることもあり、膨張デバイス21は気体発生器と呼ばれることもある。
【0016】本発明の文脈では、気体収容要素20は、一方の側で、本発明による車両座席の背もたれ10の背側部11内に延在するフレーム14の部分15によって画定または範囲設定され、他方の側で、範囲設定要素22によって画定または範囲設定され、範囲設定要素22は、フレーム14の一部分15に固定され、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができる。」
・「【0024】膨張デバイス21、21’は、直接的に、または減衰要素を間に挟んで間接的に、フレーム14の一部分15に係合し得る。そのような減衰要素(図1および図2には図示せず)は、例えば振動吸収材料から製造されることがある。」
と記載されており、甲第6号証の「気体収容要素20」は、本件発明1の「エアバッグ」に相当し、以下同様に、「膨張デバイス21」は「インフレー夕」に、「フレーム14」は「サイドフレーム」に相当する。
しかし、甲第6号証記載のものは、本件発明1の「エアバッグを保持する前記係止部材」(「前記係止部材」は「弾性変形が可能な係止部材」)、「サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当する構成を備えたものでなく、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成を備えるものではない。
(e)特許異議申立人は、特許異議申立書「オ.(d-3)」において、上記相違点4に係る構成を含む訂正前の請求項6に係る発明に関して、「車両用シートにバックプレートを使用することは、サイドエアバッグ装置の展開方向を制御する分野において周知技術である。・・・また、サイドエアバッグの展開方向を制御する概念は、甲第1号証でもクリアランスを有するゲージ34によって、また甲第6号証でもフレーム14の一部分15によって、公知となっている。したがって、本件特許発明4?6は、甲第1、6号証に鑑みて新規性または進歩性を欠くものである。係止部材5をサイドフレームに直接ではなく公知のバックプレートに取り付けることには進歩性はない。」旨主張する。
しかし甲第1号証は、上記「(2)ア.」の刊行物1であって、上記「ア.対比」で検討したように、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成を備えたものではない。
また、上記(d)に記載したように、甲第6号証にも、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第1、6号証記載の発明を組み合わせたとしても、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成にはならない。

そうすると、相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても引用発明、刊行物1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-2)本件発明2、3、5、7について
本件発明2、3、5、7は、本件発明1に対して、さらに「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、シートのヘッドレスト側と着座部側に設置されている」(本件発明2)、「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記サイドフレームの間にも設置されている」(本件発明3)、「前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられている」(本件発明5)、「前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けない」(本件発明7)という技術的事項を追加したものであって、少なくとも上記相違点4に係る構成を備えたものであるから、上記(3-1)に示した理由と同様の理由により、上記文献1に記載された発明及び文献2に記載された技術的事項又は文献3に記載された発明に基いて当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、本件発明2、3、5、7は、引用発明、刊行物1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3-3)本件発明4について
ア.対比
(a)引用発明1の「シート20のシートバック部」は、本件発明4の「シートのシートバック」に相当する。
そして、引用発明1の「シート20のシートバック部に設置された一体型シート用エアバッグシステム24」と、本件発明4の「シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置」とは、「シートのシートバックに設置するエアバッグ装置」である点で共通する。
(b)引用発明1の「インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26」は、本件発明4の「エアバッグ」に相当する。
また、引用発明1の「インフレータ23」と、本件発明4の「このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータ」とは、「インフレータ」である点で共通する。
(c)引用発明1の「シート20」と、本件発明4の「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側」とは、「シート部」である点で共通する。
引用発明1の「エラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26」は、「エラストマー」が「常温付近でゴム弾性を示す高分子物質の総称。」(広辞苑第六版)を意味し、「インフレータ23」を「コネクタ26を介してシート20に対して動くことができる」ようにしたものであるから、本件発明4の「弾性変形が可能な係止部材」に相当する。
引用発明1の「インフレータ23と、インフレータ23に連結された膨張可能なエアバッグ26と、を備え・・・た一体型シート用エアバッグシステム24」のものである「インフレータ23」と、本件発明4の「エアバッグと、・・・インフレータと、を備え・・・るサイドエアバッグ装置」のものである「エアバッグ」とは、「エアバッグ装置の構成要素」である点で共通するものである。
そして、引用発明1の「インフレータ23」が「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」であることは、シート20にインフレータ23を設置することを意味する。
そうすると、引用発明1の「インフレータ23」が「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」であることと、本件発明4の「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し」たこととは、「シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置し」た点で共通する。

一致点:したがって、本件発明4と引用発明1とは、
「A:シートのシートバックに設置するエアバッグ装置であって、
B:エアバッグと、
C:インフレータと、
を備え、
D:シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置したエアバッグ装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1’:シートのシートバックに設置するエアバッグ装置が、本件発明4はシートのシートバック「の側方」に設置する「サイド」エアバッグ装置であるのに対して、引用発明1は、そのように特定されたものでない点。

相違点2’:インフレータが、本件発明4は「このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させる」インフレータであるのに対して、引用発明1は、そのように特定されたものでない点。

相違点3’:シート部に、弾性変形が可能な係止部材を介してエアバッグ装置の構成要素を設置した構成が、本件発明4は「前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側」に弾性変形が可能な係止部材を介して「前記エアバッグ」を設置した構成であるのに対して、引用発明1は「シート20に結合されたエラストマー材料で作られたソケット32内に嵌まるボール30が端部に形成されるシャフト28を含むコネクタ26を介してシート20に対して動くことができるインフレータ23」である点。

相違点5:本件発明4は「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」のに対して、引用発明1は「シート20に設置した一体型シート用エアバッグシステム24の展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34を更に設けた」点。

イ.判断
事案に鑑み上記相違点5から検討する。
(a)刊行物2に記載された技術的事項の「受圧部71」は、「サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよい・・・膨張状態となった後膨張部46が受圧部71の受圧面71Aに接触する硬質の受圧部71」であるので、本件発明4の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当する。
そして引用発明1の「展開時にインフレータ23に生じる衝撃力を支持するインフレータ23の周りに延びるゲージ34」を、刊行物2に記載された技術的事項の「サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよいし、サイドフレーム部18Aとは別の部材として設けられてもよい」受圧部71(本件発明4の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当)とすることは当業者が容易になし得ることといえる。
(b)しかし、刊行物2に記載された技術的事項は、受圧部71(本件発明4の「前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当するもの)が、「膨張状態となったエアバッグ41の後膨張部46の後方近傍に」設けられたものであっても、本件発明4の「設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたもの」に相当する構成を備えたものではない。
(c)また、本件発明4の「前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」構成は、刊行物3には記載も示唆もなされていない。さらに特許異議申立人が「甲第2号証」として提示した特開2006-312984号公報、同じく「甲第3号証」として提示した米国特許出願公開第2013/0241181号明細書、同じく「甲第4号証」として提示した特開2009-202859号公報、同じく「甲第5号証」として提示した欧州特許出願公開第1790536号明細書のいずれにも記載も示唆もされていない。
(d)特許異議申立人が「甲第6号証」として提示した特開2010-241410号公報には、
・「【0015】本発明による車両座席はエアバッグ19を有し、エアバッグ19は、気体収容要素20と、気体収容要素20用の膨張デバイス21とによって形成される。気体収容要素20は気体袋体または空気袋体と呼ばれることもあり、膨張デバイス21は気体発生器と呼ばれることもある。
【0016】本発明の文脈では、気体収容要素20は、一方の側で、本発明による車両座席の背もたれ10の背側部11内に延在するフレーム14の部分15によって画定または範囲設定され、他方の側で、範囲設定要素22によって画定または範囲設定され、範囲設定要素22は、フレーム14の一部分15に固定され、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができる。」
・「【0024】膨張デバイス21、21’は、直接的に、または減衰要素を間に挟んで間接的に、フレーム14の一部分15に係合し得る。そのような減衰要素(図1および図2には図示せず)は、例えば振動吸収材料から製造されることがある。」
と記載されており、甲第6号証の「気体収容要素20」は、本件発明4の「エアバッグ」に相当し、以下同様に、「膨張デバイス21」は「インフレー夕」に、「フレーム14」は「サイドフレーム」に相当する。
しかし、甲第6号証記載のものは、本件発明4の「サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当する構成を備えたものでなく、本件発明4の「バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」構成を備えるものではない。
(e)特許異議申立人は、令和1年11月6日付け意見書「4.3 訂正発明4の進歩性に関して」において、「本件特許発明は、『シートバックの両サイドにサイドエアバッグ装置を設置する場合、ダンパーのシートバックへの設置可能領域が狭小になって、適切なダンパー性能を確保することが難しくなるという点』を課題とし(段落0006)、『乗員の安全性向上のため、背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側にエアバッグを配置した場合は、背もたれ部にダンパーを設置しなくても、適切なダンパー性能を確保』してシートバックの振動を抑制するものである(段落0012)。しかしながら、訂正された請求項1に係る発明とは異なり、訂正発明4は当該課題の解決に何ら寄与するものではない。特許権者は本件意見書において、訂正発明4ではバックプレートの重量を可及的に軽量化することができる旨を述べているが、この作用効果は特許明細書に記載されておらず、上記した特許発明の課題とは何らの関係性もなく、周知慣用技術から予測される範囲内のものであって格別顕著なものではない。」旨主張する。
しかし、上記(b)?(d)に記載したように、本件発明4の「前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」構成は、刊行物1?3、甲第1?6号証のいずれにも記載されておらず、特許異議申立人の提出した証拠全てを参照しても、周知慣用技術といえるものではないので請求人の主張は採用できない。

そうすると、相違点1?3について検討するまでもなく、本件発明4は、当業者であっても引用発明、刊行物1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1?7に係る発明について、
甲第1号証(米国特許出願公開第2005/0168046号)、
甲第2号証(特開2006-312984号公報)、
甲第3号証(米国特許出願公開第2013/0241181号)、
甲第4号証(特開2009-202859号公報)、
甲第5号証(欧州特許出願公開第1790536号)、
甲第6号証(特開2010-241410号公報)、
を提出して、
「ア 特許法第29条第1項第3号について(同法第113条第2号)
・請求項1について
本件特許発明1は、甲第1号証、甲第6号証に示す通り、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。
・請求項2について
本件特許発明2は、甲第1号証に示す通り、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。
・請求項3について
本件特許発明3は、甲第1号証に示す通り、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。
・請求項4について
本件特許発明4は、甲第1号証、甲第6号証に示す通り、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。
・請求項5について
本件特許発明5は、甲第1号証に示す通り、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載され、あるいは電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である。

イ 特許法第29条第2項について(同法第113条第2号)
・請求項1について
本件特許発明1は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項2について
本件特許発明2は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項3について
本件特許発明3は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項4について
本件特許発明4は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項5について
本件特許発明5は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項6について
本件特許発明6は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
・請求項7について
本件特許発明7は、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」
旨主張するので当該主張について検討する。

(2)甲第1?6号証の記載
ア.甲第1号証
甲第1号証は、上記「4.(2)ア.」の刊行物1であって、上記「4.(2)ア.」の記載がある。

イ.甲第2号証
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された甲第2号証には、ダイナミックダンパ及びダイナミックダンパの取付構造に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0043】防振基体4は、マス部材2に設けられた受面7とブラケット3に設けられた支持面10cとの間を連結するものである。ダイナミックダンパ1は、マス部材2と防振基体4とからなる振動系の共振周波数を、シートバックに発生する有害振動のピーク周波数に合わせてチューニングしておくことにより、シートバックに発生する有害振動を効果的に低減できるものである。」
(b)「【0046】よって、防振基体4のX方向のばね定数kxに対する、Y方向のばね定数kyの比が大となる。その結果、マス部材2と防振基体4とからなる振動系において、X方向の共振周波数を所定の周波数域にチューニングしつつ、そのX方向の共振周波数よりも大きな周波域にY方向の共振周波数をチューニングすることが可能となる。例えば、シートバックにおいてX方向に発生する有害振動のピーク周波数が19Hzであり、Y方向に発生する有害振動のピーク周波数が29Hzである場合、X方向に対するY方向のピーク周波数の比が約1.5倍なので、防振基体4のばね比(ky/kx)を約1.5とすることにより、マス部材2と防振基体4とからなる振動系の共振周波数を、X方向に19Hz、Y方向に29Hzとなるようにチューニングする。これにより、ダイナミックダンパ1は、X方向に発生する所定の周波数域の有害振動と、そのX方向の共振周波数よりも大きな周波数域のY方向に発生する有害振動とを同時に低減することができる。」

ウ.甲第3号証
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された甲第3号証には、車両ステアリングホイール用のエアバッグモジュールに関して、図面とともに、「In an airbag module (100) for a vehicle steering wheel comprising an inflator (110) and a device (130) for vibration damping on which the inflator (110) is mounted to be oscillating as vibration damper mass the device (130) for vibration damping is configured at least to damp a first device-specific frequency and a second device-specific frequency, wherein different excitation directions are associated with the first and second device-specific frequencies.」(「車両ステアリングホイール用のエアバッグモジュール100は、インフレータ110と、当該インフレータ110が震動ダンパーの質量体として震動するように取り付けられた震動減衰装置130とを具える。震動減衰装置130は、少なくとも第1の装置特有周波数と第2の装置特有周波数とを減衰するように構成され、異なる励起方向が第1および第2の装置特有周波数に関連付けられる。」)(甲第3号証は英文である為、特許異議申立人が甲第3号証抄訳文として提出した、抄訳文を仮訳として用いる。)の記載がある。

エ.甲第4号証
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された甲第4号証には、ステアリングホイールの振動低減構造に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【解決手段】 ステアリングホイール11のホルダ19にコイルスプリング25を介してスライダ24を軸方向に移動可能に支持するとともに、スライダ24にダンパースプリング26を介してエアバッグモジュール20を軸直角方向に移動可能に支持する。コイルスプリング25はエアバッグモジュール20の軸直角方向の振動に影響を及ぼさないので、コイルスプリング25のばね定数をホーンスイッチ37の作動に適した値に設定し、かつダンパースプリング26のばね定数をダイナミックダンパーの作動に適した値に設定することが可能となり、ホーンスイッチ37の操作性に影響を与えずに、ダイナミックダンパーでステアリングホイール11の軸直角方向の振動を効果的に低減することができる。」

オ.甲第5号証
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された甲第5号証には、エアバッグと振動減衰クラクションスイッチを有する車両用ステアリングホイールに関して、図面とともに、次の記載がある。(甲第5号証は独文である為、特許異議申立人が甲第5号証抄訳文として提出した、抄訳文を仮訳として用いる。)
(a)「Ein Fahrzeuglenkrad hat eine bewegliche Hupenbetaetigungseinheit (16;18) und einen daran angebrachten Stossdaempfer (32), der die Bewegung der Hupenbetaetigungseinheit (16;18) daempft.」(なお、「ss」はエスツェト、「ae」はaウムラウトを表す。)(「クラクション作動ユニット(16,18)と、可動のショックアブソーバー(32)とを有し、このクラクション作動ユニット(16,18)の震動を減衰する車両用ステアリングホイールである。」)

カ.甲第6号証
本件特許に係る出願(平成26年10月22日)前に頒布された甲第6号証には、車両座席に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0015】本発明による車両座席はエアバッグ19を有し、エアバッグ19は、気体収容要素20と、気体収容要素20用の膨張デバイス21とによって形成される。気体収容要素20は気体袋体または空気袋体と呼ばれることもあり、膨張デバイス21は気体発生器と呼ばれることもある。
【0016】本発明の文脈では、気体収容要素20は、一方の側で、本発明による車両座席の背もたれ10の背側部11内に延在するフレーム14の部分15によって画定または範囲設定され、他方の側で、範囲設定要素22によって画定または範囲設定され、範囲設定要素22は、フレーム14の一部分15に固定され、エアバッグ19が膨張するときに移動または変形させることができる。」
(b)「【0024】膨張デバイス21、21’は、直接的に、または減衰要素を間に挟んで間接的に、フレーム14の一部分15に係合し得る。そのような減衰要素(図1および図2には図示せず)は、例えば振動吸収材料から製造されることがある。」

(3)本件発明1ついて(訂正前の請求項1?7に係る主張について)の検討
甲第6号証は、前記「4.(3)(3-1)イ.(d)」に記載したように、本件発明1の「エアバッグを保持する前記係止部材」(「前記係止部材」は「弾性変形が可能な係止部材」)、「サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレート」に相当する構成を備えたものでなく、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成は記載も示唆もされていないので、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明とはいえない。
さらに、本件発明1の「前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されている」構成は、甲第1?6号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、特許異議申立人の提出した証拠全てを参照しても周知技術といえるものでもないので、本件発明1は、甲第1号証または甲第6号証に記載された発明とも、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)本件発明2、3、5、7ついて(訂正前の請求項1?7に係る主張について)の検討
本件発明2、3、5、7は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに技術的事項を追加したものである。よって、上記(3)と同様の理由により、本件発明2、3、5、7は、甲第1号証または甲第6号証に記載された発明とも、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(5)本件発明4ついて(訂正前の請求項4、6に係る主張について)の検討
本件発明4の「設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割された」構成は、甲第1?6号証のいずれにも記載も示唆もされておらず、特許異議申立人の提出した証拠全てを参照しても周知技術といえるものでもないので、本件発明4は、甲第1号証または甲第6号証に記載された発明とも、甲第1?6号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(6)本件発明6(訂正前の請求項6に係る主張について)の検討
本件発明6は、令和1年7月5日の訂正請求により削除され、申立ての対象が存在しないものとなった。

(7)さらに、特許異議申立人は、令和1年11月6日付け意見書「4.2 訂正事項2の適否に関して」において、本件発明4について、「訂正発明4の『前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである』との事項は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとともに、不明確であると言わざるを得ない。」旨主張するので当該主張についても検討する。

本件発明4の「前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものである」構成は、特許明細書【発明の詳細な説明】に「【0033】バックプレート9は・・・図2(b)に示す様に、設置状態のエアバッグ2の全長方向に分割したものであってもよい。」と記載されたものであって、当該構成を意図したものであることは明確である。
そして、【発明の詳細な説明】の【0033】に記載されたものであるので、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえない。

(8)したがって、特許異議申立人の主張は、採用することはできない。

7.むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5、7に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1?5、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項6に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータと、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、
前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記バックプレートの間にも設置されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、シートのヘッドレスト側と着座部側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグを保持する前記係止部材は、前記エアバッグと前記サイドフレームの間にも設置されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
シートのシートバックの側方に設置するサイドエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
このエアバッグ内に設けられ、側面衝突時にセンサーからの出力信号を受け、折り畳み状態の前記エアバッグにガスを供給して展開させるインフレータと、
を備え、
前記シートバックの背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの、少なくとも何れか一方の外側に、弾性変形が可能な係止部材を介して前記エアバッグを設置し、
前記サイドフレームに設置した前記エアバッグの展開時に、前記エアバッグの展開方向と反対側を支持するバックプレートを更に設け、
前記バックプレートは、設置状態の前記エアバッグの全長方向に分割されたものであることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記バックプレートは、前記エアバッグを前記シートバックに設置した時に、前記エアバッグとの間に隙間を有するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記エアバッグは、前記背もたれ部の両側に配置されたサイドフレームの両外側に設置され、前記背もたれ部にはダンパーを設けないことを特徴とする請求項1?3、5の何れかに記載のサイドエアバッグ装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-12 
出願番号 特願2014-215387(P2014-215387)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B60N)
P 1 651・ 113- YAA (B60N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國武 史帆森林 宏和  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 出口 昌哉
中川 真一
登録日 2018-07-06 
登録番号 特許第6362994号(P6362994)
権利者 オートリブ ディベロップメント エービー
発明の名称 サイドエアバッグ装置  
代理人 溝上 哲也  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
代理人 山本 進  
代理人 オートリブ株式会社  
代理人 溝上 哲也  
代理人 山本 進  
代理人 オートリブ株式会社  
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