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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 特174条1項  A63F
管理番号 1359549
異議申立番号 異議2019-700224  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-22 
確定日 2020-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6395781号発明「遊技機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6395781号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6395781号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6395781号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年11月14日に出願された特願2011-248936号の一部が平成28年9月7日に特願2016-174185号として新たに特許出願されたものであって、
平成29年2月1日提出の手続補正書によって特許請求の範囲及び明細書の補正がされ、
平成29年7月6日提出の手続補正書によって特許請求の範囲及び明細書の補正がされ、
平成30年3月16日提出の手続補正書によって特許請求の範囲及び明細書の補正がされ、
平成30年8月16日付けで特許査定がされるとともに平成30年9月7日に特許権の設定登録がされ、
平成31年3月22日にその特許に対し、特許異議申立人である日本電動式遊技機特許株式会社より特許異議の申立てがされ、
平成31年4月23日付けで特許異議申立人より特許異議申立書を補正する手続補正書が提出され、
令和1年6月25日付けで取消理由が通知され、特許権者である株式会社三共より同年8月22日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、これに対して、特許異議申立人より同年10月11日付けで意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年8月22日付け訂正請求書における訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次の訂正事項のとおりである。

(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1に
「複数種類の報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない報知演出に対して、当該報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
とあるのを、
「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
に訂正する(下線部は訂正箇所を意味する。なお、明細書及び図面の訂正はない。)。

2 訂正の適否の判断
(1) 訂正の目的について
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1には、「特定報知演出」について、
「複数種類の報知演出のうちの特定報知演出が実行される場合に」と記載され、「特定報知演出」が「報知演出のうち」のものであることが規定されているといえる。
そうすると、訂正事項は、
「複数種類の報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない報知演出に対して、当該報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
とする「報知演出」について、「報知演出」のうちに含まれている「特定報知演出」に特定して、
「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
とすることで特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2) 新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更について
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という)の【0023】には、
「(5) (1)?(4)のいずれかの遊技機において、前記複数種類の報知演出は、前記低可能性示唆演出が実行されずとも、前記報知演出実行手段により選択されて実行された場合において前記特典が付与される旨を報知する可能性が異なる報知演出(第1実施の形態における図15のキャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出、第2実施の形態におけるノーマルとスーパーCなど)を含む。」
と記載され、同【0306】、【0310】?【0312】には、
「【0306】
前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。・・・
【0310】
前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目では、図14のS07の抽選結果に基づき、非選択示唆演出が実行される。図18(e)および(f)では、可能性示唆演出Bが実行されたキャラクタAに対して非選択示唆演出が実行されている例を示している。
【0311】
図18(e)では、「キャラAとは戦わないぞ!」といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示されている。また、図18(f)では、「キャラAに勝つ確率:20%」といったメッセージに重畳させて「×」印が表示されている。これにより、可能性示唆演出Bが実行されたことにより、遊技者としてはバトル演出の対戦キャラクタとして選択されてほしくないキャラクタAが選択されない旨が報知されるため、遊技者に安心感を抱かせることができる。
【0312】
前兆期間の9ゲーム目では、味方キャラクタの画像が表示され、前兆期間の10ゲーム目では、図18(g)に示すように、敵方キャラクタの画像、「対戦相手 キャラB」といったメッセージ、および「バトル開始!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBとのバトル演出が開始される旨を報知することができる。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出」に対しては、本件特許明細書における「複数種類の前記特定報知演出」である「キャラクタA」又は「キャラクタB」との「バトル演出」のうち、「キャラクタBとのバトル演出」(【0312】)ではない「キャラクタA」との「バトル演出」が対応し、
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の「当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出」に対しては、発明の詳細な説明における「「キャラAとは戦わないぞ!」といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示され」、「「キャラAに勝つ確率:20%」といったメッセージに重畳させて「×」印が表示され」る「キャラクタAに対して」の「非選択示唆演出」(【0311】)が対応し、
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の「当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であ」ることに対しては、願書に添付した明細書の「前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目で」「非選択示唆演出が実行される」(【0310】)前の「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目において」「キャラクタAに対して可能性示唆演出B」(第1示唆演出。上記オ参照)「が実行され」ること(【0306】)、
が対応する。そうすると、本件特許明細書の記載から、上記訂正事項を含む
「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
との事項が導き出せる。

したがって、上記訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項又は記載した事項から自明な事項であり、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。このことから、上記訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

また、上記訂正事項は、
「複数種類の報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない報知演出に対して、当該報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
とする「報知演出」について、「報知演出」のうちに含まれている「特定報知演出」に特定して、
「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
とする、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更をするものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正事項に関する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正請求に係る訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1に係る発明
本件訂正後の本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(A?Iは、特許権者及び特許異議申立人の主張を考慮して、当審で付与した。)。

(本件訂正発明)
「【請求項1】
A 遊技を行う遊技機であって、
B 遊技者にとって有利な特典を付与する特典付与手段と、
C 特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出のうちからいずれかを実行する報知演出実行手段と、
D 複数種類の報知演出のうちの特定報知演出が実行される場合に特典が付与される可能性を示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段とを備え、
E 前記示唆演出は、前記特定報知演出が実行される場合に特典が所定割合で付与される旨を示唆する第1示唆演出と、前記特定報知演出が実行される場合に特典が当該所定割合よりも高い割合で付与される旨を示唆する第2示唆演出とを含み、
F 前記示唆演出実行手段は、前記特定報知演出が実行されるにあたり、前記第1示唆演出を実行した後に前記第2示唆演出を実行可能であり、
G′複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、
H 前記非選択示唆演出は、前記第1示唆演出が実行された後の方が、前記第1示唆演出が実行されていないときよりも高い割合で実行され、
I 前記第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される、
遊技機。」

2 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、特許異議申立書及び特許異議申立書を補正する平成31年4月23日付け手続補正書において、証拠方法として甲第1?6号証を提出し、本件訂正前の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書には記載されておらず、平成29年2月1日に提出された手続補正書の請求項1の補正により初めて導入されたものであるから、その補正は新規事項の追加に該当し、本件特許は特許法第17条の2第3項に違反してなされたものであるから、特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特許第6395781号公報
甲第2号証:特開2016-198637号公報
甲第3号証:平成29年2月1日付け上申書
甲第4号証:平成29年7月6日付け意見書
甲第5号証:平成30年3月16日付け意見書
甲第6号証:平成29年2月1日付け手続補正書

3 令和1年6月25日付け取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に対して令和1年6月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1 本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

理由2 本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。

4 令和1年8月22日付け意見書(特許権者提出)の概要
特許権者は、理由1に関して、本件訂正発明の各構成が本件特許の発明の詳細な説明に記載されていることを説明するとともに、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである旨を主張している。
また、理由2に関して、本件特許の、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前にされた補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである旨を主張している。

5 令和1年10月11日付け意見書(特許異議申立人提出)の概要
特許異議申立人は、令和1年10月11日付け意見書において、
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の少なくとも構成F、Iについては、依然として新規事項を含んでおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、
また、本件訂正発明の少なくとも構成F、Iについては、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は取り消されるべきである旨を主張している。


第4 本件訂正発明と発明の詳細な説明の記載についての当審の判断

1 発明の詳細な説明の記載について
本件特許明細書及び本件特許の願書に添付した図面には、以下のとおり記載されている(下線は当審で付した。以下同様)。

(1)「【0009】
特典は、遊技を行なうために用いる遊技用価値(賭けられたメダル枚数、打ち込まれた遊技球)に対し、遊技者に付与される遊技用価値の占める付与割合(メダルあるいは遊技球の払出率)に直接影響を与える価値(ATゲーム数、ボーナス、大当り状態、確変状態など)であってもよく、このようなものに限らず、遊技の進行上において遊技者にとって有益となる価値(確定演出、プレミア演出、潜伏示唆演出など)であってもよい(変形例における[特典について]欄参照)。」

(2)「【0023】
(5) (1)?(4)のいずれかの遊技機において、前記複数種類の報知演出は、前記低可能性示唆演出が実行されずとも、前記報知演出実行手段により選択されて実行された場合において前記特典が付与される旨を報知する可能性が異なる報知演出(第1実施の形態における図15のキャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出、第2実施の形態におけるノーマルとスーパーCなど)を含む。
・・・
【0026】
第1実施の形態
この実施の形態では、1ゲームに対してメダルやクレジットを用いて賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、表示状態を変化させることが可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンに、本発明を適用して具現化させた場合の一例について説明する。」

(3)「【0052】
スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御され、電源基板101によってスロットマシン1を構成する電気部品の駆動電源が生成され、各部に供給される。
・・・
【0057】
遊技制御基板40には、メインCPU41a、ROM41b、RAM41c、I/Oポート41dを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行なうメイン制御部41、・・・、その他各種デバイス、回路が搭載されている。
・・・
【0068】
演出制御基板90には、スロットマシン1の前面扉1bに配置された液晶表示器51(図1参照)、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等の電気部品が接続されており、これら電気部品は、演出制御基板90に搭載された後述のサブ制御部91による制御に基づいて駆動されるようになっている。・・・
・・・
【0071】
演出制御基板90には、メイン制御部41と同様にサブCPU91a、ROM91b、RAM91c、I/Oポート91dを備えたマイクロコンピュータにて構成され、演出の制御を行なうサブ制御部91、演出制御基板90に接続された液晶表示器51の表示制御を行なう表示制御回路92、演出効果LED52、リールLED55の駆動制御を行なうLED駆動回路93、スピーカ53、54からの音声出力制御を行なう音声出力回路94、電源投入時またはサブCPU91aからの初期化命令が一定時間入力されないときにサブCPU91aにリセット信号を与えるリセット回路95、演出制御基板90に接続された演出用スイッチ56から入力された検出信号を検出するスイッチ検出回路96、日付情報及び時刻情報を含む時間情報を出力する時計装置97、スロットマシン1に供給される電源電圧を監視し、電圧低下を検出したときに、その旨を示す電圧低下信号をサブCPU91aに対して出力する電断検出回路98、その他の回路等、が搭載されており、サブCPU91aは、遊技制御基板40から送信されるコマンドを受けて、演出を行なうための各種の制御を行なうとともに、演出制御基板90に搭載された制御回路の各部を直接的または間接的に制御する。」

(4)「【0099】
本実施の形態におけるスロットマシンは、図6に示すように、メイン制御部41により、通常遊技状態、再遊技役の当選確率が通常遊技状態よりも向上されるRT1、RT2、内部中RT、および所定枚数払出されるまで小役の当選確率が向上されるビッグボーナスやレギュラーボーナスのうち、いずれかに制御される。また、本実施の形態におけるスロットマシンは、サブ制御部91により、内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている。」

(5)「【0264】
サブ制御部91は、AT抽選においてATゲーム数を付与する決定が行なわれたときに、ATである旨およびATゲーム数を示すATフラグをRAM91cの所定領域に格納する。また、ATである旨を示すATフラグがすでにセットされている状態においてATゲーム数を付与する決定が行なわれたときには、決定されたATゲーム数を上乗せ加算する。サブ制御部91は、RAM91cのATフラグに基づき、ATに制御するか否かを特定するとともに、残りのATゲーム数を特定する。ATである旨を示すATフラグがセットされている状態であるときに、ATゲーム数を1消費してATに制御可能となる。
【0265】
[AT管理処理]
サブ制御部91は、通常遊技状態、RT2、あるいは内部中RTであるときに、AT制御処理に含まれるAT管理処理を行なうことにより、ATフラグに基づき、ATへの制御を管理する。
【0266】
具体的に、サブ制御部91は、通常遊技状態、RT2においてAT当選を示すATフラグがセットされたときに、ATに制御する。また、サブ制御部91は、通常遊技状態への制御が開始されるときにおいてAT当選を示すATフラグがセットされているときには、ATに制御する。AT中における通常遊技状態において昇格リプ入賞によりRT2に制御され、当該RT2においてATゲーム数を1消費(減算)することにより、当該ATゲーム数を消化する間、RT2かつATである状態(以下では、ARTともいう)に制御する。なお、通常遊技状態においては、ATゲーム数を消費(減算)することなく、ATに制御されて、ナビ演出が実行可能となる。」

(6)「【0273】
[バトル関連演出抽選処理]
サブ制御部91は、遊技演出実行処理に含まれるバトル関連演出抽選処理を実行する。バトル関連演出抽選処理では、バトル演出を実行する場合に、バトル演出において味方キャラクタと対戦する敵方キャラクタ(以下、対戦キャラクタともいう)が決定されるとともに、バトル演出が開始されるまでの所定の前兆期間(10ゲーム消化する間)において実行される演出内容が決定される。
【0274】
バトル演出とは、ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る演出をいい、複数ゲーム(たとえば、5ゲーム)に亘って、液晶表示器51において、味方キャラクタと対戦キャラクタとにより所定のバトルを展開する演出を行なった後に、バトルの結末として、味方キャラクタが敗北するとATゲーム数を獲得できないことを報知し、味方キャラクタが勝利するとATゲーム数を獲得することを報知する演出をいう。バトル演出では、味方キャラクタおよび対戦キャラクタ各々の体力ポイントが、バトル演出内容に応じて変動する。このため、バトル演出中における味方キャラクタおよび対戦キャラクタ各々の体力ポイントおよびバトル演出内容は、ATゲーム数を獲得することに対する期待度の大きさを間接的に報知する演出といえる。
【0275】
また、前兆期間とは、バトル演出が実行されるまでの複数ゲーム(たとえば、10ゲーム)に亘る期間をいう。前兆期間においては、液晶表示器51において、敵方キャラクタに関わる情報を報知するための示唆演出が行なわれる。
【0276】
示唆演出は、バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、当該敵方キャラクタと対戦した場合において味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、当該敵方キャラクタを選択せず対戦しない旨を示唆するための非選択示唆演出を含む。
・・・
【0278】
また、非選択示唆演出は、たとえば、敵方キャラクタに対して「×」印を表示して、当該敵方キャラクタが選択されず対戦しない旨を示唆することにより行なわれる。
・・・
【0280】
図14は、バトル関連演出抽選処理を説明するためのフローチャートである。バトル関連演出抽選処理は、ボーナス以外でかつ内部中RT以外の遊技状態における1ゲーム終了後で、かつAT抽選処理実行後に行なわれる。S01においては、図11で示したAT抽選条件が成立したか否かが判定される。AT抽選条件が成立していないと判定されたときには、そのままバトル関連演出抽選処理を終了する。一方、AT抽選条件が成立していると判定されたときには、S02において、AT抽選処理によりAT当選してATゲーム数を獲得したか否か、すなわちAT獲得したか否かが判定される。
【0281】
S02において、AT獲得したと判定されたときには、S05に移行される一方、AT獲得していないと判定されたときには、S03においてバトル演出を実行するか否かのバトル演出実行抽選を行なう。バトル演出実行抽選では、所定確率(たとえば、50%)でバトル演出を実行する旨の決定が行なわれる。
【0282】
S04においては、S03におけるバトル演出実行抽選により、バトル演出を実行する旨の決定が行なわれたか否かが判定される。S04において、バトル演出を実行する旨の決定が行なわれなかったと判定されたときには、そのままバトル関連演出抽選処理を終了する。一方、S04において、バトル演出を実行する旨の決定が行なわれたと判定されたときには、S05に移行する。すなわち、バトル関連演出抽選処理では、AT抽選条件が成立するとともに、AT獲得したかあるいはバトル演出実行抽選で当選したときに、S05に移行される。
【0283】
S05では、バトル演出において味方キャラクタと対戦させる敵方キャラクタである対戦キャラクタを抽選する。S06およびS07においては、バトル演出の前兆期間において示唆演出を実行するか否か、および実行する示唆演出の種類が決定される。より具体的には、S06において、可能性示唆演出を実行するか否か、および実行する場合にはどの種類の可能性示唆演出を実行するか否かを決定する。また、S07においては、非選択示唆演出を実行するか否かを決定する。S08においては、S05?S07で決定された演出を実行するための演出データをRAM91cに設定し、バトル関連演出抽選処理を終了する。
【0284】
図15は、図14のS05の抽選でルックアップされる対戦キャラクタ抽選テーブルを説明するための図である。対戦キャラクタ抽選テーブルは、AT獲得時と、ATを獲得できなかったATなし時とで振分率が異なるように、抽選用のデータが定められている。
【0285】
AT獲得時においては、40%でキャラクタAに決定され、60%でキャラクタBに決定される。一方、ATなし時においては、60%でキャラクタAに決定され、40%でキャラクタBに決定される。これにより、キャラクタAに決定されたときよりもキャラクタBに決定されたときの方が、AT獲得している可能性が高く、信頼度が高いといえる。」

【図14】




【図15】



(7)「【0286】
前兆期間開始時においては、キャラクタAおよびB各々に対して、味方キャラクタの勝つ確率が表示される。本実施の形態では、前述したようにキャラクタBの方がキャラクタAよりもAT獲得している信頼度が高いため、味方キャラクタが勝つ確率としては、信頼度が高いキャラクタBについて「60%」と表示され、信頼度が低いキャラクタAについて「40%」と表示される。
【0287】
図16は、図14のS06の抽選でルックアップされる可能性示唆演出抽選テーブルを説明するための図である。可能性示唆演出抽選テーブルは、AT獲得時であるか否か、対戦キャラクタがAであるかBであるか、および演出対象となる演出対象キャラクタがキャラクタAであるかBであるかに応じて振分率が異なるように、抽選用のデータが定められている。
【0288】
図16(a)は、AT獲得時でかつ対戦キャラクタがAであるときに参照されるAT獲得時対戦キャラクタA用の抽選テーブルである。演出対象キャラクタがキャラクタAであるとき、すなわちキャラクタAに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なし(実行しない)に決定される。一方、演出対象キャラクタがキャラクタBであるとき、すなわちキャラクタBに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される。
【0289】
図16(b)は、AT獲得時でかつ対戦キャラクタがBであるときに参照されるAT獲得時対戦キャラクタB用の抽選テーブルである。演出対象キャラクタがキャラクタAであるとき、すなわちキャラクタAに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される。一方、演出対象キャラクタがキャラクタBであるとき、すなわちキャラクタBに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される。
【0290】
図16(c)は、ATを獲得できなかったATなし時でかつ対戦キャラクタがAであるときに参照されるATなし時対戦キャラクタA用の抽選テーブルである。演出対象キャラクタがキャラクタAであるとき、すなわちキャラクタAに対しては、30%で可能性示唆演出Aに決定され、65%で可能性示唆演出Bに決定され、5%で可能性示唆演出なしに決定される。一方、演出対象キャラクタがキャラクタBであるときには、20%で可能性示唆演出Aに決定され、75%で可能性示唆演出Bに決定され、5%で可能性示唆演出なしに決定される。
・・・
【0292】
ここで、AT獲得時の図16(a)および(b)に示す抽選テーブルと、ATなし時の図16(c)および(d)に示す抽選テーブルとを比較する。まず、AT獲得時の図16(a)および(b)に示すテーブルでは、演出対象キャラクタが、対戦すると決定された対戦キャラクタであるときには、可能性示唆演出Bよりも可能性示唆演出Aが高い確率で選択される。これに対し、ATなし時の図16(c)および(d)に示すテーブルでは、演出対象キャラクタが対戦キャラクタであるか否かに関わらず、可能性示唆演出Aよりも可能性示唆演出Bが高い確率で選択される。このため、可能性示唆演出Aが実行されたときの方が、可能性示唆演出Bが実行されたときよりも、AT獲得している可能性が高いため、その後のバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が高いといえる。その結果、可能性示唆演出Bが実行された敵方キャラクタよりも、可能性示唆演出Aが実行された敵方キャラクタが対戦キャラクタとして選択されてバトル演出が実行されることに対する期待感を抱かせることができる。
【0293】
また、可能性示唆演出Bは、演出対象キャラクタが対戦キャラクタであるか否かに関わらず、AT獲得時よりもATなし時であるときの方が高い割合で選択される。一方、可能性示唆演出なしは、演出対象キャラクタが対戦キャラクタであるか否かに関わらず、ATなし時よりもAT獲得時であるときの方が高い割合で選択される。よって、可能性示唆演出が実行されなかったときよりも、可能性示唆演出Bが実行されたときの方が、AT獲得していない可能性が高くなる。その結果、可能性示唆演出Bが実行された敵方キャラクタが対戦キャラクタとして選択されてバトル演出が実行された場合に、可能性示唆演出が実行されなかったときよりも、バトル演出において味方キャラクタが勝利することに対する期待感を低下させてしまう。
【0294】
以上より、可能性示唆演出Aは、期待感を増大させる示唆演出であるといえ、可能性示唆演出Bは、当該可能性示唆演出Bが実行されないときよりも期待感を低減させてしまう示唆演出であるといえる。このため、前兆期間において、可能性示唆演出Aを実行する場合には、演出対象キャラクタに対して当該演出対象キャラクタが「不調」である旨を示唆するメッセージが表示されて味方キャラクタが勝利する可能性が増大している旨を報知し、可能性示唆演出Bを実行する場合には、演出対象キャラクタに対して当該演出対象キャラクタが「絶好調」である旨を示唆するメッセージが表示されて味方キャラクタが勝利する可能性が低減している旨を報知する。」

【図16】



(8)「【0295】
図17は、図14のS07の抽選でルックアップされる非選択示唆演出抽選テーブルを説明するための図である。非選択示唆演出抽選テーブルは、AT獲得時であるか否か、および対戦すると決定された敵方キャラクタ以外の敵方キャラクタ(以下では非対戦キャラクタともいう)を演出対象キャラクタとして可能性示唆演出Bが実行されることが決定されているか否かに応じて振分率が異なるように、抽選用のデータが定められている。
【0296】
図17(a)は、AT獲得時に参照される抽選テーブルである。非対戦キャラクタに対して可能性示唆演出Bが実行されるとき(選択時)には、90%で非選択示唆演出実行に決定され、10%で非選択示唆演出不実行に決定される。一方、非対戦キャラクタに対して可能性示唆演出Bが実行されないとき(非選択時)には、50%で非選択示唆演出実行に決定され、50%で非選択示唆演出不実行に決定される。
【0297】
図17(b)は、ATなし時に参照される抽選テーブルである。非対戦キャラクタに対して可能性示唆演出Bが実行されるとき(選択時)には、60%で非選択示唆演出実行に決定され、40%で非選択示唆演出不実行に決定される。一方、非対戦キャラクタに対して可能性示唆演出Bが実行されないとき(非選択時)には、40%で非選択示唆演出実行に決定され、60%で非選択示唆演出不実行に決定される。
【0298】
ここで、図17に示す抽選テーブルについて選択時と非選択時とを比較すると、AT獲得時であるか否かに関わらず、非選択時よりも選択時の方が高い割合で非選択示唆演出実行に決定される。このため、非対戦キャラクタに対して非選択示唆演出が実行される場合には、可能性示唆演出Bが実行されないときよりも、可能性示唆演出Bが実行されるときの方が高い割合で当該非選択示唆演出を実行させることができる。
【0299】
また、図17(a)に示すAT獲得時の抽選テーブルと、図17(b)に示すATなし時の抽選テーブルとを比較すると、非対戦キャラクタに対し可能性示唆演出Bが選択されているか否かに関わらず、ATなし時よりもAT獲得時の方が高い割合で非選択示唆演出実行に決定される。このため、非対戦キャラクタに対して可能性示唆演出Bが実行された後に非選択示唆演出が実行されたときには、ATゲームを獲得していることに対する期待感を抱かせることができる。
【0300】
前兆期間において、非対戦キャラクタに対して非選択示唆演出を実行する場合には、当該非対戦キャラクタに対して「×」印を表示して、当該キャラクタが選択されず対戦しない旨を報知する。また、非対戦キャラクタに対して非選択示唆演出が実行される場合には、可能性示唆演出Bが実行されないときよりも、可能性示唆演出Bが実行されるときの方が高い割合で当該非選択示唆演出を実行させる。さらに、可能性示唆演出Bは、前述したようにバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が低い旨を報知する演出である。このため、前兆期間において、演出対象キャラクタに対し、可能性示唆演出Bを実行することにより当該演出対象キャラクタが対戦キャラクタに選択されないことに期待を抱かせた後に、高い割合で非選択示唆演出を実行することにより安心感を抱かせることができる。」

(9)「【0303】
[バトル関連演出実行処理]
サブ制御部91は、遊技演出実行処理に含まれるバトル関連演出実行処理を実行することにより、バトル関連演出として設定された演出内容を所定のタイミングで実行する。ここで、図18を用いて、バトル関連演出の一例について説明する。図18は、バトル関連演出の一例を説明するための図である。バトル関連演出は、図18に示すように液晶表示器51において実行されるとともに、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等も用いて実行される。
【0304】
まず、前兆期間の1ゲーム目においては、前兆期間が開始された旨が報知される。図18(a)では、「バトル準備モード」、「キャラAorBを倒せばART確定だ!」といったメッセージが表示されている。これにより、前兆期間が開始された旨を遊技者に報知することができ、以降、10ゲームに亘り、敵方キャラクタに関する情報が報知される。
【0305】
前兆期間の2ゲーム目においては、対戦キャラクタとして選択され得るキャラクタが報知される。図18(b)では、図15のキャラクタAに対応して「キャラAに勝つ確率:40%」といったメッセージが表示され、図15のキャラクタBに対応して「キャラBに勝つ確率:60%」といったメッセージが表示されている。これにより、対戦キャラクタとしてキャラクタAよりもキャラクタBが選択された方が、バトル演出において味方キャラクタが勝利し、AT獲得している旨が報知される可能性が高いことを示唆することができる。
【0306】
前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。すなわち、キャラクタAの画像が表示されるとともに、「キャラAは絶好調だ!」といったメッセージが表示されている。また、図18(d)では、キャラクタAに対して期待度を低下させる可能性示唆演出Bが実行されたことに伴い、キャラクタAに対応するメッセージが「キャラAに勝つ確率:20%」に更新されている。
【0307】
これにより、キャラクタAが絶好調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタAが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が低い旨を報知することができる。
【0308】
なお、可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタAの画像が表示されるとともに、「キャラAは不調だ!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタAが不調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタAが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が高い旨を報知することができる。キャラクタAに対していずれの可能性示唆演出も実行されない場合には、キャラクタAにより予め定められた演出が実行される。
【0309】
前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBが不調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタBが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が高い旨を報知することができる。また、可能性示唆演出Bが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは絶好調だ!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBが絶好調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタBが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が低い旨を報知することができる。キャラクタBに対していずれの可能性示唆演出も実行されない場合には、キャラクタBにより予め定められた演出が実行される。
【0310】
前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目では、図14のS07の抽選結果に基づき、非選択示唆演出が実行される。図18(e)および(f)では、可能性示唆演出Bが実行されたキャラクタAに対して非選択示唆演出が実行されている例を示している。
【0311】
図18(e)では、「キャラAとは戦わないぞ!」といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示されている。また、図18(f)では、「キャラAに勝つ確率:20%」といったメッセージに重畳させて「×」印が表示されている。これにより、可能性示唆演出Bが実行されたことにより、遊技者としてはバトル演出の対戦キャラクタとして選択されてほしくないキャラクタAが選択されない旨が報知されるため、遊技者に安心感を抱かせることができる。
【0312】
前兆期間の9ゲーム目では、味方キャラクタの画像が表示され、前兆期間の10ゲーム目では、図18(g)に示すように、敵方キャラクタの画像、「対戦相手 キャラB」といったメッセージ、および「バトル開始!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBとのバトル演出が開始される旨を報知することができる。
【0313】
次のゲームからバトル演出が開始される。バトル演出においては、AT抽選の結果、AT獲得しているときに味方キャラクタが対戦キャラクタを倒す演出が実行された後、図18(h)に示すように「勝利!」といったメッセージが表示されて、AT獲得した旨が報知される。一方、AT抽選の結果、AT獲得していないときには、味方キャラクタが対戦キャラクタに負かされる演出が実行された後、図18(i)に示すように「敗北!」といったメッセージが表示されて、AT獲得できなかった旨が報知される。」

(10)図18(d)には「4ゲーム目」と記載されてた上で「キャラAに勝つ確率:20%」「キャラBに勝つ確率:60%」と表示される態様を看て取ることができる。

【図18】



(11)「【0422】
[特典について]
前述した第1実施の形態では、ATゲーム数を獲得したか否か、すなわちATに制御されることを特典の一例として説明したが、特典としては、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選などであってもよい。この場合、たとえば、内部抽選でボーナス当選したとき、あるいはボーナスと同時当選し得る小役当選したときから前兆期間に移行させた後、バトル演出の結果に応じて、ボーナス当選の有無を報知するようにしてもよい。」

2 本件訂正発明が、発明の詳細な説明に記載されたものであるか否かについて

本件訂正発明が、発明の詳細な説明に記載されたものであるか否かについて検討する。
令和1年6月25日付けで特許権者に通知した取消理由の理由1(特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない)では、
「本件特許発明が、発明の詳細な説明に記載されているというためには、本件特許発明の構成A?Iのすべてが、発明の詳細な説明の記載と矛盾なく対応づけられている必要があることはいうまでもない。」
とし(取消理由の理由1「2 当審の判断」参照)、「本件特許発明の「第1示唆演出」及び「第2示唆演出」は発明の詳細な説明のどの構成に対応するのか不明であり、これらの構成を含む本件特許発明の構成E?Iは、発明の詳細な説明に記載したものということができない」と説示した(同「2 当審の判断」(5)参照)。
一方、構成E?Iは、構成A?Dとも密接に関連するので、以下、本件訂正発明の構成A?Iが、発明の詳細な説明の記載と矛盾なく対応づけられているか、各構成ごとに検討する。

(1) 構成Aについて
本件訂正発明の構成Aは、
「A 遊技を行う遊技機であって、」
というものである。

本件特許明細書の【0026】には、
「この実施の形態では、1ゲームに対してメダルやクレジットを用いて賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、表示状態を変化させることが可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンに、本発明を適用して具現化させた場合の一例について説明する。」
と記載されている(下線は当審で付した。以下同様)。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「遊技を行う遊技機」に対しては、発明の詳細な説明における「スロットマシン」が対応するといえる。
したがって、本件訂正発明の構成Aは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(2) 構成Bについて
本件訂正発明の構成Bは、
「B 遊技者にとって有利な特典を付与する特典付与手段と、」
というものである。

本件特許明細書の【0009】には、
「特典は、遊技を行なうために用いる遊技用価値(賭けられたメダル枚数、打ち込まれた遊技球)に対し、遊技者に付与される遊技用価値の占める付与割合(メダルあるいは遊技球の払出率)に直接影響を与える価値(ATゲーム数、ボーナス、大当り状態、確変状態など)であってもよく、このようなものに限らず、遊技の進行上において遊技者にとって有益となる価値(確定演出、プレミア演出、潜伏示唆演出など)であってもよい(変形例における[特典について]欄参照)。」
と記載され、同【0099】には、
「本実施の形態におけるスロットマシンは、図6に示すように、メイン制御部41により、通常遊技状態、再遊技役の当選確率が通常遊技状態よりも向上されるRT1、RT2、内部中RT、および所定枚数払出されるまで小役の当選確率が向上されるビッグボーナスやレギュラーボーナスのうち、いずれかに制御される。また、本実施の形態におけるスロットマシンは、サブ制御部91により、内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている。」
と記載され、同【0422】には、
「[特典について]
前述した第1実施の形態では、ATゲーム数を獲得したか否か、すなわちATに制御されることを特典の一例として説明したが、特典としては、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選などであってもよい。・・・」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「遊技者にとって有利な特典」に対しては、発明の詳細な説明における「ATに制御されること」及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」の両者が対応するといえる。

また、本件特許明細書の【0052】には、
「スロットマシン1には、・・・遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、・・・」
と記載され、同【0057】には、
「遊技制御基板40には、・・・、遊技の制御を行なうメイン制御部41、・・・が搭載されている。」
と記載され、同【0071】には、
「演出制御基板90には、メイン制御部41と同様にサブCPU91a、ROM91b、RAM91c、I/Oポート91dを備えたマイクロコンピュータにて構成され、演出の制御を行なうサブ制御部91、・・・、が搭載されており、・・・」
と記載されており、本件訂正発明の「特典付与手段」「を備え」ることに対しては、発明の詳細な説明における「AT」「に演出状態を制御」する「サブ制御部91」が「スロットマシン1に」「設けられ」た「演出制御基板90に」「搭載され」ること、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナス」「に制御」する「メイン制御部41」が「スロットマシン1に」「設けられ」た「遊技制御基板40に」「搭載され」ることの両者が対応する。

したがって、本件訂正発明の構成Bは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(3) 構成Cについて
本件訂正発明の構成Cは、
「C 特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出のうちからいずれかを実行する報知演出実行手段と、」
というものである。

本件特許明細書の【0023】には、
「(5) (1)?(4)のいずれかの遊技機において、前記複数種類の報知演出は、前記低可能性示唆演出が実行されずとも、前記報知演出実行手段により選択されて実行された場合において前記特典が付与される旨を報知する可能性が異なる報知演出(第1実施の形態における図15のキャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出、・・・を含む。」
と記載され、同【0274】には、
「【0274】
バトル演出とは、ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る演出をいい、複数ゲーム(たとえば、5ゲーム)に亘って、液晶表示器51において、味方キャラクタと対戦キャラクタとにより所定のバトルを展開する演出を行なった後に、バトルの結末として、味方キャラクタが敗北するとATゲーム数を獲得できないことを報知し、味方キャラクタが勝利するとATゲーム数を獲得することを報知する演出をいう。・・・」
と記載され、同【0422】には、
「[特典について]
前述した第1実施の形態では、ATゲーム数を獲得したか否か、すなわちATに制御されることを特典の一例として説明したが、特典としては、ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選などであってもよい。この場合、たとえば、内部抽選でボーナス当選したとき、あるいはボーナスと同時当選し得る小役当選したときから前兆期間に移行させた後、バトル演出の結果に応じて、ボーナス当選の有無を報知するようにしてもよい。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載からは、本件訂正発明の「特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出」については、発明の詳細な説明における
・「キャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出」
の両者を以て、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」に対応するか、
・「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」における「キャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出」の両者を以て、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」に対応するか、
・「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」における「キャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出」の両者を以て、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」に対応するか、または、
・「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」
の両者を以て、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」に対応するかの、いずれかの対応関係が考えられる。
そして、上記のうち、以下(4)に説示のとおり、発明の詳細な説明の
「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」の両者が、本件訂正発明の「特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出」に対応しているとみるべきである。

また、本件特許明細書の【0052】には、
「スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、・・・」
と記載され、同【0071】には、
「演出制御基板90には、・・・演出の制御を行なうサブ制御部91、・・・、が搭載されており、・・・」
と記載され、同【0068】には、
「演出制御基板90には、スロットマシン1の前面扉1bに配置された液晶表示器51(図1参照)、・・・等の電気部品が接続されており、これら電気部品は、演出制御基板90に搭載された後述のサブ制御部91による制御に基づいて駆動されるようになっている。」
と記載されている。そうすると、発明の詳細な説明において「バトル演出とは」、「液晶表示器51において」「展開する演出」(【0274】)であり、「液晶表示器51」は「サブ制御部91による制御に基づいて駆動される」(【0068】)のだから、本件訂正発明の「報知演出実行手段」「を備え」ることには、発明の詳細な説明における、「バトル演出」を「展開する」「液晶表示器51」の「駆動」を「制御」する「サブ制御部91」が「スロットマシン1に」「設けられ」た「演出制御基板90に」「搭載され」ることが対応する。

したがって、本件訂正発明の構成Cは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(4) 構成Dについて
本件訂正発明の構成Dは、
「D 複数種類の報知演出のうちの特定報知演出が実行される場合に特典が付与される可能性を示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段とを備え、」
というものである。

本件特許明細書の【0023】には、
「(5) (1)?(4)のいずれかの遊技機において、前記複数種類の報知演出は、前記低可能性示唆演出が実行されずとも、前記報知演出実行手段により選択されて実行された場合において前記特典が付与される旨を報知する可能性が異なる報知演出(第1実施の形態における図15のキャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出、・・・を含む。」
と記載され、同【0273】?【0276】には、
「【0273】
サブ制御部91は、遊技演出実行処理に含まれるバトル関連演出抽選処理を実行する。・・・
【0274】
バトル演出とは、ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る演出をいい、複数ゲーム(たとえば、5ゲーム)に亘って、液晶表示器51において、味方キャラクタと対戦キャラクタとにより所定のバトルを展開する演出を行なった後に、バトルの結末として、味方キャラクタが敗北するとATゲーム数を獲得できないことを報知し、味方キャラクタが勝利するとATゲーム数を獲得することを報知する演出をいう。
・・・
【0275】
また、前兆期間とは、バトル演出が実行されるまでの複数ゲーム(たとえば、10ゲーム)に亘る期間をいう。前兆期間においては、液晶表示器51において、敵方キャラクタに関わる情報を報知するための示唆演出が行なわれる。
【0276】
示唆演出は、バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、当該敵方キャラクタと対戦した場合において味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、当該敵方キャラクタを選択せず対戦しない旨を示唆するための非選択示唆演出を含む。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」に対しては、上記(3)に説示した発明の詳細な説明の記載のうち、
「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」の両者が対応するとした上で、
本件訂正発明の「複数種類の報知演出のうちの特定報知演出」に対しては、発明の詳細な説明における「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」(複数種類の報知演出)における「キャラクタA」又は「キャラクタB」「によるバトル演出」が対応し、
本件訂正発明の「特典が付与される可能性を示唆する示唆演出」に対しては、発明の詳細な説明における、
「バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、当該敵方キャラクタと対戦した場合において味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、当該敵方キャラクタを選択せず対戦しない旨を示唆するための非選択示唆演出を含む」「示唆演出」が対応すると解することで、本件訂正発明の構成Dは、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
また、本件特許明細書の【0303】には、
「[バトル関連演出実行処理]
サブ制御部91は、遊技演出実行処理に含まれるバトル関連演出実行処理を実行することにより、バトル関連演出として設定された演出内容を所定のタイミングで実行する。」
と記載され、同【0052】には、
「スロットマシン1には、・・・、演出制御基板90、・・・が設けられており、・・・」
と記載され、同【0071】には、
「演出制御基板90には、・・・演出の制御を行なうサブ制御部91、・・・、が搭載されており、・・・」
と記載されており、本件訂正発明の「示唆演出実行手段とを備え」ることには、発明の詳細な説明における「バトル関連演出として設定された演出内容を所定のタイミングで実行する」「サブ制御部91」が「スロットマシン1に」「設けられ」た「演出制御基板90に」「搭載され」ることが対応する。

したがって、本件訂正発明の構成Dは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(5) 構成Eについて
本件訂正発明の構成Eは、
「E 前記示唆演出は、前記特定報知演出が実行される場合に特典が所定割合で付与される旨を示唆する第1示唆演出と、前記特定報知演出が実行される場合に特典が当該所定割合よりも高い割合で付与される旨を示唆する第2示唆演出とを含み、」
というものである。

本件特許明細書の【0306】?【0307】には、
「【0306】
前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。すなわち、キャラクタAの画像が表示されるとともに、「キャラAは絶好調だ!」といったメッセージが表示されている。また、図18(d)では、キャラクタAに対して期待度を低下させる可能性示唆演出Bが実行されたことに伴い、キャラクタAに対応するメッセージが「キャラAに勝つ確率:20%」に更新されている。
【0307】
これにより、キャラクタAが絶好調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタAが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が低い旨を報知することができる。」
と記載されている。
上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「前記特定報知演出が実行される場合に特典が所定割合で付与される旨を示唆する第1示唆演出」「を含」むことには、発明の詳細な説明における「対戦キャラクタとしてキャラクタAが選択された場合におけるバトル演出において」(【0307】)、「「キャラAは絶好調だ!」といったメッセージが表示され」、「キャラクタAに対応するメッセージが「キャラAに勝つ確率:20%」に更新され」「味方キャラクタが勝利する可能性が低い旨を報知する」「可能性示唆演出Bが実行され」(【0306】)ることが対応する。

また、本件特許明細書の【0276】には、
「示唆演出は、バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、当該敵方キャラクタと対戦した場合において味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、・・・を含む。」
と記載され、同【0306】には、
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、・・・キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。」
と記載され、同【0309】には、
「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、・・・キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。」
と記載され、さらに、本件特許の願書に添付した図面の図18(c)には「3ゲーム目」と記載され、図18(d)には「4ゲーム目」と記載された上で「キャラAに勝つ確率:20%」「キャラBに勝つ確率:60%」と表示される態様を看て取ることができることから、発明の詳細な説明において、前兆期間の3ゲーム目および5ゲーム目と、前兆期間の4ゲーム目および6ゲーム目は対応したものであり、「6ゲーム目」には「4ゲーム目」と同様に、「キャラAに勝つ確率」「キャラBに勝つ確率」が表示されているといえる。
また、本件特許明細書の【0309】には
「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBが不調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタBが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が高い旨を報知することができる。」
と記載されている。
してみると、上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「前記特定報知演出が実行される場合に特典が当該所定割合よりも高い割合で付与される旨を示唆する第2示唆演出とを含」むことには、発明の詳細な説明における「対戦キャラクタとしてキャラクタBが選択された場合におけるバトル演出において」(【0309】)、「「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示され」、「キャラBに勝つ確率」が表示され「味方キャラクタが勝利する可能性が高い旨を報知する」「可能性示唆演出Aが実行される」(【0309】)ことが対応する。

したがって、本件訂正発明の構成Eは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(6) 構成Fについて
本件訂正発明の構成Fは、
「F 前記示唆演出実行手段は、前記特定報知演出が実行されるにあたり、前記第1示唆演出を実行した後に前記第2示唆演出を実行可能であり、」
というものである。

本件特許明細書の【0276】には、
「示唆演出は、バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、・・・味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、・・・を含む。」
と記載され、同【0287】?【0288】には、
「【0287】
図16は、図14のS06の抽選でルックアップされる可能性示唆演出抽選テーブルを説明するための図である。可能性示唆演出抽選テーブルは、AT獲得時であるか否か、対戦キャラクタがAであるかBであるか、および演出対象となる演出対象キャラクタがキャラクタAであるかBであるかに応じて振分率が異なるように、抽選用のデータが定められている。
【0288】
図16(a)は、AT獲得時でかつ対戦キャラクタがAであるときに参照されるAT獲得時対戦キャラクタA用の抽選テーブルである。演出対象キャラクタがキャラクタAであるとき、すなわちキャラクタAに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なし(実行しない)に決定される。一方、演出対象キャラクタがキャラクタBであるとき、すなわちキャラクタBに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される。」
と記載されている。
上述の本件特許明細書の記載によれば、「可能性示唆演出」は「敵方キャラクタ毎に」示唆するものであって、
「AT獲得時でかつ対戦キャラクタがAであるとき」に
「キャラクタAに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なし(実行しない)に決定され」、
「キャラクタBに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される」
ことが示されているのだから、図14のS06に示された抽選では、
「敵方キャラクタ」である「キャラクタA対して」と「キャラクタBに対して」毎に、
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目において」「キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行され」さらに、
「5ゲーム目および6ゲーム目において」「キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行され」ることが、抽選によって可能となっているといえる。

また、本件特許明細書の【0306】、【0309】、【0313】には、
「【0306】
前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。
・・・
【0309】
前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示される。
・・・
【0313】
次のゲームからバトル演出が開始される。バトル演出においては、AT抽選の結果、AT獲得しているときに味方キャラクタが対戦キャラクタを倒す演出が実行された後、図18(h)に示すように「勝利!」といったメッセージが表示されて、AT獲得した旨が報知される。・・・」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「前記特定報知演出が実行されるにあたり、前記第1示唆演出を実行した後に前記第2示唆演出を実行可能であ」ることに対しては、発明の詳細な説明における「バトル演出」(特定報知演出)「が開始される」(【0313】)前の「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目」で「可能性示唆演出B」(第1示唆演出)「が実行され」(【0306】)、その後の「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目」で「可能性示唆演出A」(第2示唆演出)「が実行され」ること(【0309】)が対応するといえる。
したがって、本件訂正発明の構成Fは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(7) 構成G′について
本件訂正発明の構成G′は、
「G′複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、」
というものである。

本件特許明細書の【0023】には、
「【0023】
(5) (1)?(4)のいずれかの遊技機において、前記複数種類の報知演出は、前記低可能性示唆演出が実行されずとも、前記報知演出実行手段により選択されて実行された場合において前記特典が付与される旨を報知する可能性が異なる報知演出(第1実施の形態における図15のキャラクタAによるバトル演出と、キャラクタBによるバトル演出、第2実施の形態におけるノーマルとスーパーCなど)を含む。」
と記載され、同【0306】、【0310】?【0312】には、
「【0306】
前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。・・・
【0310】
前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目では、図14のS07の抽選結果に基づき、非選択示唆演出が実行される。図18(e)および(f)では、可能性示唆演出Bが実行されたキャラクタAに対して非選択示唆演出が実行されている例を示している。
【0311】
図18(e)では、「キャラAとは戦わないぞ!」といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示されている。また、図18(f)では、「キャラAに勝つ確率:20%」といったメッセージに重畳させて「×」印が表示されている。これにより、可能性示唆演出Bが実行されたことにより、遊技者としてはバトル演出の対戦キャラクタとして選択されてほしくないキャラクタAが選択されない旨が報知されるため、遊技者に安心感を抱かせることができる。
【0312】
前兆期間の9ゲーム目では、味方キャラクタの画像が表示され、前兆期間の10ゲーム目では、図18(g)に示すように、敵方キャラクタの画像、「対戦相手 キャラB」といったメッセージ、および「バトル開始!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBとのバトル演出が開始される旨を報知することができる。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、
本件訂正発明の「複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出」に対しては、発明の詳細な説明における「複数種類の前記特定報知演出」である「キャラクタA」又は「キャラクタB」との「バトル演出」(【0023】)のうち、「開始される」「キャラクタBとのバトル演出」(【0312】)ではない、「キャラクタA」との「バトル演出」が対応し、
本件訂正発明の「当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出」に対しては、発明の詳細な説明における「「キャラAとは戦わないぞ!」といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示され」、「「キャラAに勝つ確率:20%」といったメッセージに重畳させて「×」印が表示され」る「キャラクタAに対して」の「非選択示唆演出」(【0310】、【0311】)が対応し、
本件訂正発明の「当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であ」ることに対しては、発明の詳細な説明における「前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目で」「非選択示唆演出が実行される」(【0310】)前の「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目において」「キャラクタAに対して可能性示唆演出B」(第1示唆演出。上記(5)参照)「が実行され」ること(【0306】)、
が対応するといえる。

したがって、本件訂正発明の構成G′は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(8) 構成Hについて
本件訂正発明の構成Hは、
「H 前記非選択示唆演出は、前記第1示唆演出が実行された後の方が、前記第1示唆演出が実行されていないときよりも高い割合で実行され、」
というものである。

本件特許明細書の【0298】には、
「【0298】
ここで、図17に示す抽選テーブルについて選択時と非選択時とを比較すると、AT獲得時であるか否かに関わらず、非選択時よりも選択時の方が高い割合で非選択示唆演出実行に決定される。このため、非対戦キャラクタに対して非選択示唆演出が実行される場合には、可能性示唆演出Bが実行されないときよりも、可能性示唆演出Bが実行されるときの方が高い割合で当該非選択示唆演出を実行させることができる。」
と記載され、同【0306】には、
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。」
と記載され、同【0310】には、
「前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目では、図14のS07の抽選結果に基づき、非選択示唆演出が実行される。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の
「前記非選択示唆演出は、前記第1示唆演出が実行された後の方が、前記第1示唆演出が実行されていないときよりも高い割合で実行され」ることに対しては、発明の詳細な説明における
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目において」(【0306】)「可能性示唆演出B」(第1示唆演出。上記(5)参照)「が実行されないときよりも」、「可能性示唆演出B」(第1示唆演出)「が実行されるときの方が高い割合で」(【0298】)「前兆期間の7ゲーム目および8ゲーム目で」(【0310】)「当該非選択示唆演出を実行させることができる」(【0298】)
ことが、対応するといえる。
したがって、本件訂正発明の構成Hは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

(9) 構成Iについて
本件訂正発明の構成Iは、
「I 前記第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される、」
というものである。
ア ここでまず、上記(3)、(4)に説示のとおり、本件訂正発明の「複数種類の報知演出」には、発明の詳細な説明の
「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」の両者が対応している。

イ また、上記(5)に説示のとおり、本件訂正発明の「第2示唆演出」に対しては、発明の詳細な説明における「可能性示唆演出A」(【0294】)が対応している。

ウ さらに、本件特許明細書の【0264】?【0266】には、
「【0264】
サブ制御部91は、AT抽選においてATゲーム数を付与する決定が行なわれたときに、ATである旨およびATゲーム数を示すATフラグをRAM91cの所定領域に格納する。また、ATである旨を示すATフラグがすでにセットされている状態においてATゲーム数を付与する決定が行なわれたときには、決定されたATゲーム数を上乗せ加算する。サブ制御部91は、RAM91cのATフラグに基づき、ATに制御するか否かを特定するとともに、残りのATゲーム数を特定する。ATである旨を示すATフラグがセットされている状態であるときに、ATゲーム数を1消費してATに制御可能となる。
【0265】
[AT管理処理]
サブ制御部91は、通常遊技状態、RT2、あるいは内部中RTであるときに、AT制御処理に含まれるAT管理処理を行なうことにより、ATフラグに基づき、ATへの制御を管理する。
【0266】
具体的に、サブ制御部91は、通常遊技状態、RT2においてAT当選を示すATフラグがセットされたときに、ATに制御する。また、サブ制御部91は、通常遊技状態への制御が開始されるときにおいてAT当選を示すATフラグがセットされているときには、ATに制御する。AT中における通常遊技状態において昇格リプ入賞によりRT2に制御され、当該RT2においてATゲーム数を1消費(減算)することにより、当該ATゲーム数を消化する間、RT2かつATである状態(以下では、ARTともいう)に制御する。なお、通常遊技状態においては、ATゲーム数を消費(減算)することなく、ATに制御されて、ナビ演出が実行可能となる。」
と記載され、同【0304】には、
「まず、前兆期間の1ゲーム目においては、前兆期間が開始された旨が報知される。図18(a)では、「バトル準備モード」、「キャラAorBを倒せばART確定だ!」といったメッセージが表示されている。これにより、前兆期間が開始された旨を遊技者に報知することができ、以降、10ゲームに亘り、敵方キャラクタに関する情報が報知される。」
と記載され、同【0309】には、
「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示される。これにより、キャラクタBが不調であるため、対戦キャラクタとしてキャラクタBが選択された場合におけるバトル演出において味方キャラクタが勝利する可能性が高い旨を報知することができる。」
と記載されている。

上述した本件特許明細書の記載によれば、本件訂正発明の「前記第2示唆演出が実行される前において」に対しては、発明の詳細な説明における「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目において」「可能性示唆演出Aが実行され」(【0309】)の前の「前兆期間の1ゲーム目において」(【0304】)が対応する。
また、発明の詳細な説明において、「AT抽選においてATゲーム数を付与する決定が行なわれたとき」の「ATである旨およびATゲーム数を示すATフラグ」(【0264】)について、「RT2においてAT当選を示すATフラグがセットされたときに、ATに制御」し、「RT2かつATである状態」が「ART」(【0266】)であることから、発明の詳細な説明において「「キャラAorBを倒せばART確定だ!」といったメッセージが表示され」ること(【0304】)は、「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」、及び「ビッグボーナスやレギュラーボーナスの当選」「の有無を報知する」「バトル演出」の両者(特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出)のうち、前者である「ATゲーム数を獲得(付与あるいは上乗せ)するか否かを煽る」「バトル演出」であることを遊技者が特定可能であるといえる。
そうすると、本件訂正発明の「実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出」に対しては、発明の詳細な説明において「「キャラAorBを倒せばART確定だ!」といったメッセージが表示され」ること(【0304】)が対応する。
したがって、本件訂正発明の構成Iは、発明の詳細な説明に記載されたものである。

そして、上記(1)?(9)にて示した本件訂正発明と発明の詳細な説明の対応関係は、いずれも矛盾するものではなく、本件訂正発明の構成A?Iは全体として発明の詳細な説明に記載されたものである。

したがって、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件訂正発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。


第5 新規事項の有無についての当審の判断

取消理由通知では、本件訂正前の請求項1の構成E?Iは、全体として本件特許の出願に係る当初明細書等に記載した事項でもなく、また当初明細書等に記載した事項から自明のものでもなく、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨の説示をした。

しかし、上記「第4 本件訂正発明と発明の詳細な説明の記載についての当審の判断」にて説示のとおり、本件訂正発明の各構成は、本件特許明細書および本件特許の願書に添付した図面に記載されているものである。
そして、本件特許明細書における【0006】?【0008】以外の各段落及び本件特許の願書に添付した図面の記載内容は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0006】?【0008】以外の各段落および願書に最初に添付した図面の記載内容と同じである。
そうすると、本件訂正発明は、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面においても記載されたものといえる。

したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。


第6 特許異議申立人の意見について

特許異議申立人は令和1年10月11日付け意見書にて、本件訂正によってもなお取消理由は解消されておらず、本件特許は依然として新規事項を含んでおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は取り消されるべきであるとの旨の主張をしているので検討する。

1 特許異議申立人の、構成Fについての主張の概要
特許権者が第1示唆演出および第2示唆演出の根拠として挙げている可能性示唆演出Bおよび可能性示唆演出Aは、図14のステップS06の可能性示唆演出抽選において決定されることになる。
しかしながら、この可能性示唆演出抽選では、図16に示す可能性示唆演出抽選テーブルを参照して、可能性示唆演出Aおよび可能性示唆演出Bの何れか一方が選択される、または、どちらも選択されないこと(可能性示唆演出なし)が決定される。そして、この決定に基づいてバトル演出開始前の前兆期間において、可能性示唆演出抽選の決定通りに、演出が実行される。
さらに、段落0306-0309を参照しても、前兆期間において、可能性示唆演出Aおよび可能性示唆演出Bの双方が出現することは把握できない。
段落0306-0309の一連の記載によれば、可能性示唆演出抽選の抽選結果(図14のステップS06抽選結果)に基づいて、前兆期間の3、4ゲーム目でキャラクタAに対する可能性示唆演出A、可能性示唆演出B、可能性示唆演出なしの何れかが実行されること、および前兆期間の5、6ゲーム目でキャラクタBに対する可能性示唆演出A、可能性示唆演出B、可能性示唆演出なしの何れかが実行されることが記載されているのみである。そして、段落0306に記載されている一部分と、段落0309に記載されている一部分とを組み合わせて演出することは記載されていないし、示唆されてもいない。
したがって、本件特許の構成F、すなわち、第1示唆演出の後に第2示唆演出が実行されるという構成は、本件特許の当初明細書等に記載のないものである。

2 上記主張について検討する。
まず、特許異議申立人の主張に関連する、本件特許の願書に最初に添付した明細書の記載は、上記「第4 本件訂正発明と発明の詳細な説明の記載についての当審の判断」「1 発明の詳細な説明の記載について」にて示した本件特許明細書の記載と同じである。

そして、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0276】に、
「示唆演出は、バトル演出において味方キャラクタと対戦する可能性がある敵方キャラクタ毎に、・・・味方キャラクタが勝利する可能性を示唆するための可能性示唆演出や、・・・を含む。」
と記載され、「可能性示唆演出」が「敵方キャラクタ毎に」示唆するものであることが示され、同【0287】?【0288】には、
「【0287】
図16は、図14のS06の抽選でルックアップされる可能性示唆演出抽選テーブルを説明するための図である。可能性示唆演出抽選テーブルは、AT獲得時であるか否か、対戦キャラクタがAであるかBであるか、および演出対象となる演出対象キャラクタがキャラクタAであるかBであるかに応じて振分率が異なるように、抽選用のデータが定められている。
【0288】
図16(a)は、AT獲得時でかつ対戦キャラクタがAであるときに参照されるAT獲得時対戦キャラクタA用の抽選テーブルである。演出対象キャラクタがキャラクタAであるとき、すなわちキャラクタAに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なし(実行しない)に決定される。一方、演出対象キャラクタがキャラクタBであるとき、すなわちキャラクタBに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される。」
と記載され、同【0306】には、
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタAに対し可能性示唆演出が実行される。図18(c)では、キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行されている例を示している。」
と記載され、同【0309】には、
「前兆期間の5ゲーム目および6ゲーム目においては、図14のS06の抽選結果に基づき、キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行される。可能性示唆演出Aが実行される場合には、キャラクタBの画像が表示されるとともに、「キャラBは不調だ!」といったメッセージが表示される。」
と記載されている。
上述の【0276】、【0287】?【0288】の記載によれば、「可能性示唆演出」は「敵方キャラクタ毎に」示唆するものであって、
「AT獲得時でかつ対戦キャラクタがAであるとき」に
「キャラクタAに対しては、70%で可能性示唆演出Aに決定され、20%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なし(実行しない)に決定され」、
「キャラクタBに対しては、20%で可能性示唆演出Aに決定され、70%で可能性示唆演出Bに決定され、10%で可能性示唆演出なしに決定される」
ことが示されているのだから、図14のS06に示された抽選では、
「敵方キャラクタ」である「キャラクタA対して」と「キャラクタBに対して」毎に、
「前兆期間の3ゲーム目および4ゲーム目において」「キャラクタAに対して可能性示唆演出Bが実行され」さらに、
「5ゲーム目および6ゲーム目において」「キャラクタBに対し可能性示唆演出が実行され」ることが、抽選によって可能となっているといえる。

してみると、願書に最初に添付した図面の図14のステップS06の抽選結果に基づくと、3、4ゲーム目でキャラクタAに対する可能性示唆演出A、可能性示唆演出B、可能性示唆演出なしの何れかが実行されること、および前兆期間の5、6ゲーム目でキャラクタBに対する可能性示唆演出A、可能性示唆演出B、可能性示唆演出なしの何れかが実行されることが記載されているのみであるとし、本件特許の構成Fの、「前記第1示唆演出を実行した後に前記第2示唆演出を実行」されるとの構成が、本件特許の願書に最初に添付した明細書等に記載のないものとする特許異議申立人の主張は、採用できない。

3 特許異議申立人の、構成Iについての主張の概要
本件訂正発明の構成Iについて、特許権者は平成29年7月6日付けの意見書において、特定可能な特定演出は、図18(e)、(f)の記載を補正の根拠としていると主張している。したがって、特許権者の令和1年8月22日付けの意見書において主張する特定演出は図18(a)であるということを理解できるわけがなく、特定演出は、前述したように、図18(e)、(f)に記載されているものであるとするのが妥当である。
そうすると、構成Iに記載されていることは、「第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される」これを言い換えると「特定演出が実行された後に実行される第2示唆演出」であるが、特定演出である図18(e)、(f)の後に実行される第2示唆演出は存在しない、あるいは第2示唆演出が何であるかが不明となる。
それにしても、特許権者の令和1年8月22日付けの意見書と、平成29年7月6日付けの意見書とにおける特定可能な特定演出の根拠に大きな相違があることや、第2示唆演出について、特許権者の令和1年8月22日付けの意見書、出願から特許に至るまでの上申書、意見書等には不整合な部分が非常に多い。これらのことは、新規事項を追加した為に、その根拠となる部分等が明確に説明できずに、迷走している所以である。当然にこれらは単なるミスや誤記等では済まされるはずがない。
したがって、本件特許の構成Iの「第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される」言い換えれば、「特定可能な特定演出の後に実行される第2示唆演出」というものは、本件特許の出願時明細書に記載のないものである。

4 上記主張について検討する。
本件特許に関する特許をすべき旨の査定の謄本送達前に、特許権者が提出した平成29年7月6日付けの意見書の「(2) 補正の適法性」(b)には、確かに、
「(b) 「前記特定報知演出は複数種類設けられ、前記第2示唆演出が実行される前において、実行される前記特定報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される」ことを限定しました。
この補正は、段落[0301]の「バトル演出の演出内容を特定するための演出データとしては、対戦キャラクタの種類を特定するためのデータ」との記載、段落[0311]の「図18(e)では、『キャラAとは戦わないぞ!』といった、対戦キャラクタとして選択されない旨を示唆するメッセージが表示されている。また、図18(f)では、『キャラAに勝つ確率:20%』といったメッセージに重畳させて『×』印が表示されている。これにより、可能性示唆演出Bが実行されたことにより、遊技者としてはバトル演出の対戦キャラクタとして選択されてほしくないキャラクタAが選択されない旨が報知されるため、遊技者に安心感を抱かせることができる。」との記載、および、図18(e),(f)の記載を根拠にしています。」
と記載されている。

しかし、本件特許の、特許査定の前に提出された平成29年7月6日付けの意見書における特許権者の主張に仮に誤りがあったとしても、本件訂正発明と本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面との関係についてみれば、本件訂正発明は、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面において記載されているものであって、本件特許が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではないことは、上記「第5 新規事項の有無についての当審の判断」にて説示のとおりであり、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

なお、平成29年7月6日付けの意見書における特許権者の上記主張は、同日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1の「前記第2示唆演出が実行される前において、実行される前記特定報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される、」
との構成についてされたものであるが、当該構成は、さらに平成30年3月16日提出の手続補正書による補正によって、特許請求の範囲の請求項1の上記構成は、本件訂正発明の構成Iと同じ
「I 前記第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される、」
との構成に補正がされ、その後、平成30年8月16日付けで特許査定がされている。してみると、平成29年7月6日付けの意見書における特許権者の主張は、構成Iについてされたものではない。

第7 むすび
以上のことから、上記取消理由、並びに、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正後の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技を行う遊技機であって、
遊技者にとって有利な特典を付与する特典付与手段と、
特典が付与されるか否かを報知する複数種類の報知演出のうちからいずれかを実行する報知演出実行手段と、
複数種類の報知演出のうちの特定報知演出が実行される場合に特典が付与される可能性を示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段とを備え、
前記示唆演出は、前記特定報知演出が実行される場合に特典が所定割合で付与される旨を示唆する第1示唆演出と、前記特定報知演出が実行される場合に特典が当該所定割合よりも高い割合で付与される旨を示唆する第2示唆演出とを含み、
前記示唆演出実行手段は、前記特定報知演出が実行されるにあたり、前記第1示唆演出を実行した後に前記第2示唆演出を実行可能であり、
複数種類の前記特定報知演出のうち前記報知演出実行手段により実行されない前記特定報知演出に対して、当該特定報知演出が実行されない旨を示唆する非選択示唆演出が実行される前に、前記第1示唆演出を実行可能であり、
前記非選択示唆演出は、前記第1示唆演出が実行された後の方が、前記第1示唆演出が実行されていないときよりも高い割合で実行され、
前記第2示唆演出が実行される前において、実行される報知演出の種類を遊技者が特定可能な特定演出が実行される、遊技機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-19 
出願番号 特願2016-174185(P2016-174185)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (A63F)
P 1 651・ 537- YAA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安藤 達哉  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
石井 哲
登録日 2018-09-07 
登録番号 特許第6395781号(P6395781)
権利者 株式会社三共
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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