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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09D |
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管理番号 | 1359581 |
異議申立番号 | 異議2019-700550 |
総通号数 | 243 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-03-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-12 |
確定日 | 2020-01-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6453638号発明「2液型下塗り塗料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6453638号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。 特許第6453638号の請求項3?4に係る特許を維持する。 特許第6453638号の請求項1?2に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6453638号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年12月19日に出願され、平成30年12月21日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月16日にその特許掲載公報が発行された。 その後、当該発行日から6月以内にあたる、令和元年7月12日に本件特許の請求項1?4に係る発明に対してエスケー化研株式会社(以下、「異議申立人」という)により特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続きの経緯は次のとおりである。 令和元年 9月19日付け 取消理由通知 同年11月21日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年12月 6日付け 訂正請求があった旨の通知 同年12月18日 意見書(異議申立人) 第2 訂正の適否 1 訂正請求の趣旨及び内容 令和元年11月21日の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という)の「請求の趣旨」は、「特許第6453638号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、一群の請求項を構成する請求項1?4について、訂正後の請求項1?4のとおりに訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?6のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に 「エポキシ樹脂が、フェノールノボラック変性エポキシ樹脂であり、アミン化合物が、マンニッヒ変性アミンであること特徴とする請求項1に記載の有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。」と記載されているのを、 「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装する2液型下塗り塗料組成物であり、その2液型下塗り塗料組成物はフェノールノボラック変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、マンニッヒ変性アミンを含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項3に記載の有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物を、有機質塗膜に塗装することを特徴とする塗装方法。」と記載されているのを、 「請求項3に記載の刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物を、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装することを特徴とする塗装方法。」に訂正する。 (3)訂正事項3、4 特許請求の範囲の請求項1、2をそれぞれ削除する。 (4)訂正事項5 明細書の段落【0005】に 「上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物は、有機質塗膜に塗装するエポキシ樹脂を含有する主剤と、アミン化合物を含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、 前記主剤が、主剤配合用エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、前記硬化剤が、硬化剤配合用アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする。 請求項2に記載の発明の塗装方法は、請求項1に記載の2液型下塗り塗料組成物を、有機質塗膜に塗装することを特徴とする。 請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物は、エポキシ樹脂が、フェノールノボラック変性エポキシ樹脂であり、アミン化合物が、マンニッヒ変性アミンであること特徴とする。 請求項4に記載の発明の塗装方法は、請求項3に記載の2液型下塗り塗料組成物を、有機質塗膜に塗装することを特徴とする。」と記載されているのを、 「上記の目的を達成するために、請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物は、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装するフェノールノボラック変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、マンニッヒ変性アミン化合物を含有する硬化剤と、 を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、前記主剤が、主剤配合用エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、前記硬化剤が、硬化剤配合用アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする。 請求項4に記載の発明の塗装方法は、請求項3に記載の2液型下塗り塗料組成物を、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装することを特徴とする。」に訂正する。 (5)訂正事項6 明細書の段落【0006】に 「本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。 請求項1に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物によれば、被塗装物である有機質塗膜に塗装した際に、耐ブリーディング性に優れ、安定性に優れるという効果を奏する。 請求項2に記載の発明の塗装方法によれば、被塗布物である有機質塗膜に含まれる低汚染化剤などの成分が塗装した2液型下塗り塗装組成物へ染み出すことを防ぐ。 請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物によれば、硬化性に優れ、被塗装物である有機質塗膜に塗装した際に、より耐ブリーディング性に優れるという効果を奏する。 請求項4に記載の発明の塗装方法によれば、被塗布物である有機質塗膜に含まれる低汚染化剤などの成分が塗装した2液型下塗り塗装組成物へ染み出すことを防ぐ。」と記載されているのを、 「本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。 請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物によれば、硬化性に優れ、被塗装物である刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装した際に、より耐ブリーディング性に優れ、安定性に優れるという効果を奏する。 請求項4に記載の発明の塗装方法によれば、被塗布物である刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に含まれる低汚染化剤などの成分が塗装した2液型下塗り塗装組成物へ染み出すことを防ぐ。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、明細書の段落【0008】における「塗装とは、本明細書において、被塗装物の表面に塗料混合物を塗ったり吹き付けたりすることをいう。塗装するのに用いる道具として、刷毛、ローラー、…、スプレーガン…などがある」との記載に基づいて、訂正前の請求項3(訂正前の請求項1を引用している)に記載されていた有機質塗膜を「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装されたもの」に限定し、かつ、独立形式にするものである。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものであるとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び同項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。 また、訂正事項1は、上記のとおり、訂正前の請求項3に記載されていた有機質塗膜を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2?6 訂正事項2は、訂正前の請求項4に記載されていた「有機質塗膜」を、訂正事項1と同様に「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装されたもの」に限定するものであり、訂正事項3、4は、請求項1、2をそれぞれ削除するものであり、訂正事項5、6は、明細書の記載を、訂正事項1?4により削除または訂正された請求項にあわせて明瞭化したものということができるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、これらの訂正事項が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を変更し又は拡張するものではないことは明らかであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。さらに、訂正事項5、6による明細書の訂正は、一群の請求項である請求項1?4のすべてに対応するものであるから、当該訂正事項5、6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合するものである。 3 小括 上記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?4について訂正を求めるものであり、その訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明3」などといい、まとめて「本件特許発明」ともいう)。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装する2液型下塗り塗料組成物であり、その2液型下塗り塗料組成物はフェノールノボラック変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、マンニッヒ変性アミンを含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。 【請求項4】 請求項3に記載の刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物を、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装することを特徴とする塗装方法。」 第4 令和元年9月19日付けで通知した取消理由についての判断 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項3、4に係る発明の特許に対して当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由2.(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用例1:特開2000-136321号公報(異議申立人が提出した甲第1号証) 引用例2:特開2000-063703号公報 引用例3:特開平11-092711号公報(異議申立人が提出した甲第2号証) 引用例4:特開2000-063490号公報 引用例5:特開昭59-045382号公報(異議申立人が提出した甲第7号証;周知技術を示す文献) 本件特許発明3、4は、引用例1、4、引用例1、3、4、引用例2、4、又は引用例2?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 当審の判断 (1)引用文献およびその記載事項 引用例1:特開2000-136321号公報(異議申立人が提出した甲第1号証) 引用例2:特開2000-063703号公報 引用例3:特開平11-092711号公報(異議申立人が提出した甲第2号証) 引用例4:特開2000-063490号公報 引用例5:特開昭59-045382号公報(異議申立人が提出した甲第7号証;周知技術を示す文献) 上記引用例1?5には、それぞれ、次の記載がある。 ア 引用例1 摘記1a:請求項1、2 「【請求項1】 樹脂成分に、表面コーティングアルミニウム粉を樹脂固形分100重量部に対して1?50重量部含有せしめることを特徴とするシーラント用プライマー。 【請求項2】 樹脂成分として、エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂用硬化剤を含有する請求項1記載のシーラント用プライマー。」 摘記1b:段落0001 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、シーラント用プライマーに関し、詳しくはシーリング材面との付着性に優れ、さらに塗り付け作業性、ブリード汚れ防止性、耐衝撃性、貯蔵安定性等に優れた塗膜が形成できるシーラント用プライマーに関する。」 摘記1c:段落0007?0008、0014 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明において樹脂成分は、従来プライマー用として公知の樹脂が特に制限なく使用でき、例えば湿気硬化型ウレタン樹脂、アミン架橋のエポキシ樹脂組成物、イソシアネート架橋のアクリル樹脂組成物、末端アルコキシシリル基含有シリコーン樹脂、及びこれら樹脂に塩素化ポリオレフィン樹脂を一部混合してなるものなどが挙げられるが、特に該樹脂成分としては、エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂とを反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂に、エポキシ樹脂用硬化剤を組合わせてなるものが望ましく、特に後者において重合性不飽和モノマーがカルボキシル基含有モノマーを含むもので、グラフト重合又は共重合後にカルボキシル基とエポキシ基とを反応させてなる変性エポキシ樹脂に、エポキシ樹脂用硬化剤を組合わせてなるものが好適である。これらの変性エポキシ樹脂は、ミネラルスピリット等の高引火点石油系溶剤に可溶である利点を有する。 【0008】上記変性エポキシ樹脂に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内、好ましくは約150?約500の範囲内のエポキシ樹脂である。該エポキシ樹脂のエポキシ当量が約1,000を越えると得られる変性エポキシ樹脂のミネラルスピリットに対する溶解性が低下し、かつ硬化性が低下するので好ましくない。該エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂を二塩基酸等で変性したエポキシエステル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等を挙げることができ、具体的にはDER-331J(ダウケミカル社製)、EPON#828、834、806H(油化シェル社製)、GY#260(旭チバ社製)、エポミックR#140P(三井石油化学工業社製)、エポトートYD128(東都化成社製)、ERL-4221、4229(ユニオンカーバイド社製)、デナコールEX-830(長瀬化成工業社製)等の市販品を使用することができる。尚、該エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内のものがよいとしたが、例えばエポキシ当量約1,500前後のエポキシ樹脂を併用しても、全体として平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内のエポキシ樹脂の混合物であれば使用可能である。 ・・・(中略)・・・ 【0014】上記エポキシ樹脂用硬化剤としては、活性水素当量が40?300の範囲内である硬化剤である従来公知のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。具体的には、例えば、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン等の脂肪族ポリアミン類;該脂肪族ポリアミンのエポキシ樹脂アダクト物、ケチミン化物、ポリアミドアミン類、ポリアミド樹脂等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。この中でも、本発明においては、ケチミン化率80%以上、好ましくは90%以上のケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好適である。該変性ポリアミド樹脂のケチミン化率が80%未満では塗膜の付着性や伸び率が不十分となる場合があるので好ましくない。該ケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、「7A122N90」(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)などが挙げられる。また1液型とする場合には、ケチミン化率80%以上、好ましくは90%以上のケチミン化ポリアミンが好適である。好ましい具体例としては、例えば脂肪族系ポリアミンのケチミン化物である「バーサミンK13」(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)や、ジェファーミン系ポリアミンのケチミン化物である「アデカハードナーEH-235R」(旭電化工業(株)社製、商品名)などが挙げられる。」 摘記1d:段落0017?0019 「【0017】本発明組成物は、上記樹脂成分及び表面コーティングアルミニウム粉を含有するものであり、必要に応じてシランカップリング剤、有機錫化合物などを含有することができる。 【0018】該シランカップリング剤としては、例えばγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。またアミノ基を有するポリシロキサン等も使用可能である。さらに1液型とする場合には、3(又は2)-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンのケチミン化物等を使用してもよい。 【0019】これらのうちアミノ基含有シランカップリング剤は、通常、硬化剤側に配合され、架橋密度を高め、付着性の向上に寄与するものであり、グリシジル基含有シランカップリング剤は、ベースとなる主剤側に配合され、架橋密度を高め、付着性の向上に寄与するものである。またメルカプト基含有シランカップリング剤は、通常、主剤側に配合され、架橋密度、付着性の向上だけでなく、硬化剤と混合後の可使時間の制御に寄与するものである。」 摘記1e:段落0025、0031?0041 「【0025】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、各例における「部」及び「%」は、いずれも重量基準である。 ・・・(中略)・・・ 【0031】シーラント用プライマーの作成 実施例1?10及び比較例1?4 表1に示す配合組成で主剤及び硬化剤を調整し、硬化剤の活性水素当量/主剤のエポキシ当量の比率が0.8となるように、主剤及び硬化剤を混合して各シーリラント用プライマーを得た。尚、表1中の(注1)?(注12)は下記の通りである。 【0032】 ・・・(中略)・・・ (注2)「TSL8350」:東芝シリコ-ン社製、商品名、γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン (注3)「TSL8380」:東芝シリコ-ン社製、商品名、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン ・・・(中略)・・・ (注9)「Aソルベント」:日本石油社製、商品名、石油系溶剤 (注10)「7A122N90」:ヘンケルジャパン社製、商品名、ケチミン化ポリアミド型硬化剤、活性水素当量=210、ケチミン化率95%、不揮発分90% (注11)「TSL8331」:東芝シリコ-ン社製、商品名、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン (注12)「StannBL」:三共有機合成社製、ジブチル錫ジラウレート 【0033】 【表1】 【0034】塗装試験 試験体下地板として15mm×10mm角の目地溝を有するフレキシブル板(100mm×300mm×16mm)を作成し、下記(注13)に示す各種組成のシ-リング材を目地溝に盛り付けてから、室温で3日間乾燥させた後、その部分へ実施例及び比較例で得たシーラント用プライマーを表2の通り選択して塗布量120g/m^(2)で刷毛にて塗装した。これらを2日間乾燥させた後、試験体の全面に「アレスレタン白」(関西ペイント社製、商品名、アクリルウレタン樹脂塗料)をウーローラーにて(塗布量:150g/m^(2)×2回)塗装して各供試体とした。2週間室温にて乾燥させた後に得られる各供試体を下記性能試験によって評価した。結果を表2に示す。 【0035】(注13)A:「ハマタイトUH30」、横浜ゴム社製、商品名、2液型ウレタンシーリング材 B:「ハマタイトSC500」、横浜ゴム社製、商品名、2液型ポリサルファイドシーリング材 C:「ハマタイトスーパーII」、横浜ゴム社製、商品名、2液型変成シリコーンシーリング材 D:「ハマタイトシリコン70」、横浜ゴム社製、商品名、2液型シリコーンシーリング材 性能試験方法 (*1)塗り作業性:刷毛にて塗り付けたときの塗り易さ(塗液の伸び、ねばさ、刷毛切れ、なじみ易さ、刷毛跡の均し易さ、下地へのとまり易さ等)を下記基準で評価した。 【0036】 ◎:塗りやすく作業性が良好 ○:塗装作業に支障はない △:塗装作業がスムーズにできない ×:刷毛塗り塗装適性がない (*2)付着性:JIS K-5400の「クロスカットテープ法」の試験方法に準じて下記基準により評価した。 【0037】 ◎:全く剥がれが認められない ○:カッター傷の塗膜の一部分に剥がれが認められる △:25%以内の塗膜面積に剥がれが認められる ×:25%を越えて塗膜の剥がれが認められる (*3)屋外暴露による耐汚染性:供試体を南面30度傾斜で6か月間屋外暴露し、暴露後の汚れ具合を目視にて下記基準により評価した。 【0038】 ◎:全く汚れが認められない ○:僅かに汚れが認められる △:シ-リング材部分に汚れが認められる ×:シ-リング材部分だけでなく、その周辺部にまで著しい汚れが認められる (*4)温冷繰り返し試験:JIS A-6909の「温冷繰り返し作用による抵抗性」の試験方法に準じて10サイクル後の塗面状態を目視にて下記基準により評価した。 【0039】 ◎:全く異常なし ○:僅かにフクレ、ワレが認められるが、実用上の支障はない △:フクレ、ワレが認められる ×:著しいフクレ、ワレ及び剥がれが認められる 【0040】 【発明の効果】本発明によれば、各種シーリング材面との付着性に優れ、さらに塗り付け作業性、ブリード汚れ防止性、耐衝撃性、貯蔵安定性等に優れたプライマ-塗膜が形成できる。 【0041】 【表2】 」 イ 引用例2 摘記2a:請求項1、2、7?9 「【請求項1】 (A)アルコキシシリル基含有アクリル変性エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、及び(C)有機錫化合物を含有することを特徴とするシーラント用プライマー。 【請求項2】 アクリル変性エポキシ樹脂(A)が、エポキシ樹脂と、カルボキシル基及びアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂とを反応させてなる樹脂である請求項1記載のシーラント用プライマー。 ・・・(中略)・・・ 【請求項7】 シランカップリング剤(D)を含有する請求項1記載のシーラント用プライマー。 【請求項8】 シランカップリング剤(D)として、アミノ基を含有するシランカップリング剤を硬化剤(B)の固形分100重量部に対して0.1?10重量部配合してなる請求項7記載のシーラント用プライマー。 【請求項9】 シランカップリング剤(D)として、グリシジル基を含有するシランカップリング剤及び/又はメルカプト基を含有するシランカップリング剤を、夫々樹脂固形分100重量部に対して0.1?10重量部配合してなる請求項7記載のシーラント用プライマー。」 摘記2b:段落0001 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、シーラント用プライマーに関し、詳しくはシ-リング材面との付着性に優れ、さらにブリード汚れ防止性、耐衝撃性等に優れた塗膜が形成できるシーラント用プライマーに関する。」 摘記2c:段落0007?0008、0018 「【0007】 【発明の実施の形態】本発明においてアルコキシシリル基含有アクリル変性エポキシ樹脂(A)は、(A-1)エポキシ樹脂とカルボキシル基及びアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂とを反応させてなる変性エポキシ樹脂、(A-2)エポキシ樹脂にアルコキシシリル基含有モノマ-を含む重合性不飽和モノマ-をグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂、のいずれかから選ばれる少なくとも1種の変性エポキシ樹脂である。これらはミネラルスピリット等の高引火点石油系溶剤に可溶である利点を有する。 【0008】上記変性エポキシ樹脂(A-1)に使用されるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、かつ平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内、好ましくは約150?約500の範囲内のエポキシ樹脂である。該エポキシ樹脂のエポキシ当量が約1,000を越えると得られる変性エポキシ樹脂のミネラルスピリットに対する溶解性が低下し、かつ硬化性が低下するので好ましくない。該エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂を二塩基酸等で変性したエポキシエステル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等を挙げることができ、具体的にはDER-331J(ダウケミカル社製)、EPON#828、834、806H(油化シェル社製)、GY#260(旭チバ社製)、エポミックR#140P(三井石油化学工業社製)、エポトートYD128(東都化成社製)、ERL-4221、4229(ユニオンカーバイド社製)、デナコールEX-830(長瀬化成工業社製)等の市販品を使用することができる。尚、該エポキシ樹脂は、平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内のものがよいとしたが、例えばエポキシ当量約1,500前後のエポキシ樹脂を併用しても、全体として平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内のエポキシ樹脂の混合物であれば使用可能である。 ・・・(中略)・・・ 【0018】本発明においてエポキシ樹脂用硬化剤(B)としては、活性水素当量が40?300の範囲内である硬化剤である従来公知のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。具体的には、例えば、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン等の脂肪族ポリアミン類;該脂肪族ポリアミンのエポキシ樹脂アダクト物、ケチミン化物、ポリアミドアミン類、ポリアミド樹脂等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。この中でも、本発明においては、ケチミン化率80%以上、好ましくは90%以上のケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好適である。該変性ポリアミド樹脂のケチミン化率が80%未満では塗膜の付着性や伸び率が不十分となる場合があるので好ましくない。該ケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、「7A122N90」(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)などが挙げられる。また1液型とする場合には、ケチミン化率80%以上、好ましくは90%以上のケチミン化ポリアミンが好適である。好ましい具体例としては、例えば脂肪族系ポリアミンのケチミン化物である「バーサミンK13」(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)や、ジェファーミン系ポリアミンのケチミン化物である「アデカハードナーEH-235R」(旭電化工業(株)社製、商品名)などが挙げられる。」 摘記2d:段落0021?0022 「【0021】本発明の塗料組成物は、上記(A)、(B)及び(C)を必須とするものであり、さらに必要に応じて、シランカップリング剤(D)を含有することができる。該シランカップリング剤(D)としては、例えばγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。またアミノ基を有するポリシロキサン等も使用可能である。さらに1液型とする場合には、3(又は2)-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンのケチミン化物等を使用してもよい。 【0022】これらのうちアミノ基含有シランカップリング剤は、通常、硬化剤側に配合され、架橋密度を高め、付着性の向上に寄与するものであり、グリシジル基含有シランカップリング剤は、ベースとなる主剤側に配合され、架橋密度を高め、付着性の向上に寄与するものである。またメルカプト基含有シランカップリング剤は、通常、主剤側に配合され、架橋密度、付着性の向上だけでなく、硬化剤と混合後の可使時間の制御に寄与するものである。」 摘記2e:段落0026、0035?0046。 「【0026】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、各例における「部」及び「%」は、いずれも重量基準である。 ・・・(中略)・・・ 【0035】 ・・・(中略)・・・ シーラント用プライマーの製造 実施例1?13及び比較例1?4 表3に示す配合組成で主剤及び硬化剤を調製し、(硬化剤の活性水素当量)/(主剤のエポキシ当量)の比が0.8となるように主剤及び硬化剤を混合して各シーラント用プライマーを得た。尚、比較例2ではアクリル変性エポキシ樹脂としてアクリル樹脂溶液(h)を用いた。表3における(注1)?(注11)は次の通りである。 【0036】(注1)「TSL8350」:東芝シリコーン(株)社製、商品名、γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン (注2)「TSL8380」:東芝シリコ-ン(株)社製、商品名、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン (注3)「ミクロンエースL-1」:日本タルク(株)社製、商品名、タルク (注4)「Aソルベント」:日本石油(株)社製、商品名、石油系溶剤 (注5)「7A122N90」:ヘンケルジャパン(株)社製、ケチミン化ポリアミド型硬化剤、活性水素当量230、ケチミン化率95%、不揮発分90% ・・・(中略)・・・ (注9)「TSL8331」:東芝シリコ-ン(株)社製、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン ・・・(中略)・・・ (注11)「StannBL」:三共有機合成(株)社製、ジブチル錫ジラウレ-ト 【0037】 【表3】 【0038】塗装試験 下地板として10mm×8mm角の目地溝を有するフレキシブル板を作成し、下記(注12)に示す各種組成のシーリング材を表4の通り選択し目地溝に盛りつけてから、室温で3日間乾燥させた後、その部分へ上記実施例及び比較例で得たシーラント用プライマーを表4の通り選択し120g/m^(2)の塗布量で刷毛にて塗装した。これらを2日間乾燥させた後に試験体全面に「アレスレタン白」(関西ペイント(株)社製、商品名、アクリルウレタン樹脂塗料)をローラー塗り(塗布量:150g/m^(2)×2回)して各供試体とした。得られた各供試体を性能試験に供し評価した。結果を表4に示す。表4における性能試験の評価方法は以下の通りである。 【0039】(注12)A:「ハマタイトUH30」(横浜ゴム(株)社製、商品名、2液型ウレタンシーリング材) B:「ハマタイトSC500」(横浜ゴム(株)社製、商品名、2液型ポリサルファイドシーリング材) C:「ハマタイトスーパーII」(横浜ゴム(株)社製、商品名、2液型変性シリコンシーリング材) D:「ハマタイトシリコン70」(横浜ゴム(株)社製、商品名、2液型シリコーンシーリング材) (性能試験) 初期乾燥性:JIS K-5400の「乾燥時間・硬化時間」の試験方法に準じて24時間後の指触乾燥性を下記の基準により評価した。 【0040】 ◎:全くタック感が認められない ○:僅かにタック感が認められる △:明らかに粘着性が認められる ×:粘着性が著しい 上塗り仕上がり性:JIS K-5400の「上塗り適合性」の試験方法に準じて下記の基準により目視にて評価した。 【0041】 ◎:良好 ○:僅かにヘアーライン状のチヂミが認められるが実用上の支障はない △:一部に亀甲状のチヂミが認められる ×:著しく浮き上がっている 付着性:JIS K-5400の「クロスカットテープ法」の試験方法に準じて下記の基準により評価した。 【0042】 ◎:全く剥れが認められない ○:カッターの傷の塗膜の一部に剥れが認められる △:25%以下の塗膜に剥れが認められる ×:25%を越えた塗膜に剥れが認められる 屋外暴露による耐汚染性:試験体を南面30度傾斜で6ケ月間暴露し、暴露後の汚れ具合を下記の基準により目視にて評価した。 【0043】 ◎:全く汚れが認められない ○:僅かに汚れが認められる △:シーリング材部分にのみ汚れが認められる ×:シーリング材部分だけでなく、その周辺部まで著しく汚れが認められる 温冷繰り返し試験:JIS A-6909の「温冷繰り返し作用による抵抗性の試験方法に準じて10サイクル後の塗面状態を下記の基準により目視にて評価した。 【0044】 ◎:全く異常なし ○:僅かにフクレ、ワレが認められるが、実用上の支障はない △:フクレ、ワレが認められる ×:著しくフクレ、ワレ、さらにハガレが認められる 【0045】 【発明の効果】本発明によれば、アクリル変性エポキシ樹脂が、高引火点、高沸点、低公害性であるミネラルスピリットのような石油系溶剤に可溶であるため、該溶剤により塗料化が出来、それ故塗装環境、塗装作業性がよく、これを用いたプライマーとすることにより、各種シーリング材面に塗布して密着性、ブリード汚れ防止性、耐衝撃性等に優れた塗膜が形成できるものである。 【0046】 【表4】 」 ウ 引用例3 摘記3a:請求項1 「【請求項1】(A)エポキシ樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂とを反応させてなる変性エポキシ樹脂(a-1)、エポキシ樹脂と酸無水基含有アクリル樹脂とを反応させてなる変性エポキシ樹脂(a-2)及びエポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂(a-3)から選ばれる少なくとも1種の変性エポキシ樹脂、 (B)該変性エポキシ樹脂用硬化剤、及び (C)石油系溶剤 を必須成分として含有することを特徴とする塗料組成物。」 摘記3b:段落0001、0042 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は新規にして有用な塗料組成物に関し、詳細にはミネラルスピリット等の高引火点石油系溶剤に可溶で、かつシーリング材面に塗布した場合の密着性やブリード汚れ防止性、耐衝撃性等に優れた塗膜が得られる塗料組成物に関する。 ・・・(中略)・・・ 【0042】 【発明の効果】本発明の塗料組成物は、高引火点、高沸点、低公害性であるミネラルスピリットのような石油系溶剤に可溶な変性エポキシ樹脂を使用しているため、該溶剤により塗料化が出来、それ故塗装環境、塗装作業性がよく、更に旧塗膜の補修用として塗り重ねても旧塗膜を溶解もしくは膨潤させず、またシーリング材面に塗布した場合にも密着性、耐食性、耐衝撃性等に優れた塗膜が得られるなど、従来のエポキシ樹脂塗料では達成出来なかったような各種優れた塗膜性能を発揮することができる。」 エ 引用例4 摘記4a:請求項1 「【請求項1】 (a)ポリアミン化合物、(b)ホルムアルデヒド類および(c)炭素原子数10以上の長鎖脂肪族または脂環式炭化水素基を有するフェノール化合物を反応させて得られるマンニッヒ化合物(A)およびエポキシ化合物(B)を含有することを特徴とする硬化性エポキシ樹脂組成物。」 摘記4b:段落0001、0005?0007 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、硬化性エポキシ樹脂組成物、詳しくは、ポリアミン化合物、ホルムアルデヒド類および長鎖脂肪族または脂環式炭化水素基置換フェノール化合物を反応させて得られるマンニッヒ化合物を硬化剤として使用することを特徴とし、ターペン、ミネラルスピリットなどの安全性の高い高沸点・低刺激性溶媒に可溶で、優れた耐候性、防食性、硬化性および各種基材への密着性の良好な塗膜を提供することができる硬化性エポキシ樹脂組成物に関するものである。 ・・・(中略)・・・ 【0005】これまでに、弱溶剤へ溶解性を示すエポキシ樹脂は多く提案されており、例えば、特開平3-115318号公報には、エポキシ当量250以下のエポキシ樹脂を脂肪族モノマー酸で変性したものをジイソシアネート化合物で架橋してなるエポキシ樹脂がミネラルスピリット可溶な塗料を提供することが提案され、特開平8-134175号公報には、エポキシ樹脂にテルペン構造骨格含有フェノール化合物を付加して得られるエポキシ樹脂組成物が提案されており、特開平9-12678号公報には、長鎖アルキル置換フェノールノボラックエポキシ樹脂が提案されており、特開平9-227825公報には、長鎖フェノールノボラックに2官能エポキシ樹脂を反応して得られるエポキシ樹脂が提案されている。 【0006】これに対して、硬化剤の方は、従来硬化剤として知られている脂肪族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類、ポリアミド類、環状脂環族ポリアミン類、アミノ置換された脂肪族アルコールおよびフェノール、低分子量エポキシとの付加物などでは、ターペン、ミネラルスピリットへの溶解性に劣るものであり、これらにかわる高沸点かつ低刺激性の弱溶剤に可溶である硬化剤は提案されていなかった。 【0007】従って、本発明の目的は、ターペン、ミネラルスピリットなどの弱溶剤への溶解性に優れ、硬化性、耐溶剤性、可撓性および高防食性を示すエポキシ樹脂組成物を提供することにある。」 摘記4c:段落0019 「【0019】上記エポキシ化合物の中でも、弱溶剤へ溶解性を示すエポキシ化合物が好ましく、すなわち、炭素原子数4以上の脂肪族または脂環族炭化水素基を有するエポキシ化合物が好ましい。このようなエポキシ化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物により架橋されてもよい炭素原子数4以上の脂肪族または脂環族炭化水素基により置換されてなるフェノールノボラックエポキシ樹脂;例えば、特開平3-115318号公報、特開平8-134175号公報、特開平9-12678号公報、特開平9-227825公報に提案されているようなエポキシ樹脂;アデカレジンEP-9100(旭電化工業(株))、ハリポールEP-450(ハリマ化成(株))、などの市販の弱溶剤型エポキシ樹脂などが好ましい。」 摘記4d:段落0022 「【0022】さらに、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には、通常公知のエポキシ硬化剤を併用することができ、これら公知硬化剤としては、例えば、上記(a)成分として例示したポリアミン化合物およびこれらのエポキシド付加変性物、アミド化変性物、マンニッヒ化変性物などがあげれる。ここで、エポキシド付加変性物は、ポリアミン化合物とフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類またはカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ化合物とを常法によって反応させることによって製造され、アミド化変性物は、ポリアミン化合物と、ダイマー酸などのカルボン酸類を常法によって反応させることによって製造され、マンニッヒ化変性物は、ポリアミン化合物とホルムアルデヒド等のアルデヒド類およびフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも一個のアルデヒド反応点を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造される。」 摘記4e:段落0037?0038、0043?0050 「【0037】製造例7(エポキシ化合物の製造) 温度計、攪拌装置および冷却管を備えた水分離装置をつけた2l反応器に、ヒタノール#1133(日立化成工業(株)製;p-第三ブチルフェノ-ルノボラック樹脂、水酸基当量158、平均核体数4)250gおよびヒタノール#1501(日立化成工業(株)製;オクチルフェノールノボラック樹脂、水酸基当量214、平均核体数4)250g、更にエピクロルヒドリン1440gを仕込み、攪拌して均一溶液にした後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液268gを60?110℃で2時間かけて滴下した。この間系内で生成した水分は、エピクロルヒドリンで共沸させて水分離装置で系外へ除去しながらエピクロルヒドリンを系内で還流させた。滴下終了後、100?120℃で2時間熟成し、理論水量が流出した時点で反応を終了させた。得られたエポキシ化合物のエピクロルヒドリン溶液にキシレン150gを加え、大量の水で洗浄し、生成した食塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した後、3重量%リン酸水溶液で中和した。次いでエピクロルヒドリンおよびキシレンを留去し、エポキシ当量340のエポキシ樹脂を得た。これにさらにスワゾール#310(コスモ松山(株)製;高沸点パラフィン系溶剤)460gを加え、褐色液状のエポキシ樹脂1150gを得た。この樹脂の可けん化塩素量は0.3%、エポキシ当量450、固形分60重量%であった。この樹脂に、更にアデカポリエーテルP-700(旭電化工業(株)製;ポリプロピレングリコール、水酸基価155)/コロネートT-80(日本ポリウレタン(株)製;トリレンジイソシアネート)=1/2のモル数で合成したプレポリマー127g(樹脂固形分15%)を30分かけて滴下し、90℃で2時間熟成し、更に100℃まで昇温させて1時間反応させた。最後にスワゾール#310を90g追加して固形分60重量%、エポキシ当量750の黄色液状エポキシ樹脂組成物(α)を得た。 【0038】製造例8(エポキシ化合物の製造) 温度計、攪拌装置および冷却管を備えた水分離装置をつけた2l反応器に、ヒタノール#1133 250gおよびヒタノール#1501250g、更にエピクロルヒドリン1440gを仕込み、攪拌して均一溶液にした後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液268gを60?110℃で2時間かけて滴下した。この間系内で生成した水分は、エピクロルヒドリンで共沸させて水分離装置で系外へ除去しながらエピクロルヒドリンを系内で還流させた。滴下終了後、100?120℃で2時間熟成し、理論水量が流出した時点で反応を終了させた。得られたエポキシ化合物のエピクロルヒドリン溶液にキシレン150gを加え、大量の水で洗浄し、生成した食塩および過剰の水酸化ナトリウムを除去した後、3重量%リン酸水溶液で中和した。次いでエピクロルヒドリンおよびキシレンを留去し、エポキシ当量340のエポキシ樹脂を得た。これにさらにスワゾール#310460gを加え、褐色液状のエポキシ樹脂1150gを得た。この樹脂の可けん化塩素量は0.3%、エポキシ当量450、固形分60重量%であった。この樹脂に、更にアデカグリシロールED-50545.4g(樹脂固形分5%)を30分かけて滴下し、90℃で2時間熟成し、更に100℃まで昇温させて1時間反応させた。最後にスワゾール#310を145.2g追加して固形分60重量%、エポキシ当量550の黄色液状エポキシ樹脂組成物(β)を得た。 ・・・(中略)・・・ 【0043】実施例1?9 上記製造例により得られたマンニッヒ化合物〔硬化剤〕、ならびに上記製造例により得られたエポキシ化合物(エポキシ樹脂組成物)あるいは市販のエポキシ化合物(エポキシ樹脂組成物)〔主剤〕とをそれぞれ活性水素当量およびエポキシ当量で1:1で配合してクリアワニスを製造した。次いで、得られたクリアワニスをアプリケーターを用いて軟鋼板(SPCC-B)上に膜厚70μになるように塗布して下記特性を評価した。尚、1)、2)、4)および5)は7日間放置して乾燥硬化した塗膜鋼板を用いた。それらの結果を下記〔表2〕に示す。 【0044】1)エリクセン;JIS K 5400に準じ、エリクセン試験器を用い、φ20mm、8mmの条件で行った。 【0045】2)耐衝撃性;JIS K 5400に準じ、デュポン衝撃試験器を用い、500g×50cm、φ8mmの条件で塗膜の割れ状態を評価した。 ○:割れ、ひびは全く見られない。 △:割れ、ひびは一部見られる。 ×:割れ、ひびは多く見られる。 【0046】3)耐溶剤性;塗膜塗布後、室温で150時間放置して乾燥硬化させた後、トルエン1滴を塗膜上に滴下し、脱脂綿によるラビングテストを行い、下地が現れるまでの回数を確認した。 【0047】4)アミンブラッシュ性;塗膜塗布後、硬化させた後の表面外観を観察した。 ○:異常なし △;一部に発生、光沢あり ×;全面に発生、光沢あり ××;全面に発生、光沢なし 【0048】5)耐食性;JIS K 5400に準じ、塗膜試験片を500時間SSTにかけて行った。 平面部 ○:さび、膨れなし △:さび、膨れ一部に発生 ×;さび、膨れ全面に発生 割れ、ひびは全く見られない。 【0049】6)低温硬化性;塗膜塗布後、5℃/16時間で放置した時のタッキングの有無を指触で評価した。 ○;完全乾燥し、タックなし △;ややタックあり ×;ベトツキ、全く硬化していない 【0050】 【表2】 」 オ 引用例5 摘記5a:第3頁右下欄第17行?第4頁右上欄第4行 「又本発明のポリウレタンシーラントの使用方法としては、例えば目的とする材料の間隙、接合部に上記シーラントを液状のまま注入して硬化させる注入法、材料の継目に原液をスプレーして硬化させるスプレー法、材料に原液を刷毛塗して硬化させる刷毛塗法或は予め硬化させたシーラントをそのまま又は加工したものを取付けて間隙を充填する取付法等がある。 次に実例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。「%」、「部」は特にことわりのない限り重量基準である。 実例1 次の組成のポリウレタンシーラントを調製した。 ポリプロピレングリコール系ウレタンプレポリマー 70部 (NCO含量2.5%) ジオクチルフタレート(可塑剤) 56部 EVA(酢酸ビニル含量 55%) 10部 酸化チタン 24部 炭酸カルシウム 56部 メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(触媒) 部 ポリプロピレングリコール(架橋剤) 16部 トルエン 20部 該シーラントについてブリードテストを行った。 (テスト-I) ロ紙を5枚重ね、その最上部に巾2cm、厚さ1cm、長さ10cmのシーラント塗膜を形成させ、1週間後ロ紙の何枚目まで可塑剤がブリードしているか観察した。」 (2)引用例1、2に記載された発明 ア 引用例1に記載された発明 引用例1には、摘記1aのとおり、「樹脂成分と、樹脂固形分100重量部に対して1?50重量部の表面コ-ティングアルミニウム粉とを含有するシーラント用プライマー」が記載され、前記樹脂成分として、「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂用硬化剤」を用いることも記載されている(請求項1、2)。また、摘記1dのとおり、架橋密度を高め、付着性を向上させるために、アミノ基含有シランカップリング剤を硬化剤側に、グリシジル基含有シランカップリング剤をベ-スとなる主剤側に配合することが記載されている(段落0019)。そして、実施例として、摘記1eのとおり、「アクリル変性エポキシ樹脂溶液、TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)、TSL8380(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、表面コーティングアルミペースト、及びAソルベント(石油系溶剤)からなる主剤と、7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)、TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、StannBL(ジブチル錫ラウレート)、及びAソルベントからなる硬化剤と、を混合して得られるシーラント用プライマー」が記載されている(実施例1?7、9、10)。 そうすると、引用例1には、「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂溶液、TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)、TSL8380(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、表面コーティングアルミペースト、及びAソルベント(石油系溶剤)からなる主剤と、7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)、TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、StannBL(ジブチル錫ラウレート)、及びAソルベントからなる硬化剤と、を混合して得られるシーラント用プライマーであって、アクリル変性エポキシ樹脂溶液と7A122N90の固形分合計量100重量部に対して表面コーティングアルミペーストの固形分が1?50重量部であるシーラント用プライマー」(以下、この発明を「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。 イ 引用例2に記載された発明 引用例2には、摘記2aのとおり、「(A)アルコキシシリル基含有アクリル変性エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、及び(C)有機錫化合物を含有することを特徴とするシーラント用プライマー」が記載され、前記アクリル変性エポキシ樹脂(A)として、「エポキシ樹脂と、カルボキシル基及びアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂とを反応させてなる樹脂」を用いることも記載されている(請求項1、2)。また、摘記2dのとおり、架橋密度を高め、付着性を向上させるために、アミノ基含有シランカップリング剤を硬化剤側に、グリシジル基含有シランカップリング剤をベ-スとなる主剤側に配合することが記載されている(段落0022)。そして、実施例として、摘記2eのとおり、「アクリル変性エポキシ樹脂溶液、TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)、TSL8380(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、ミクロンエースL-1(タルク)、及びAソルベント(石油系溶剤)からなる主剤と、7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)、TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、StannBL(ジブチル錫ラウレート)、及びAソルベントからなる硬化剤と、を混合して得られるシーラント用プライマー」が記載されている(実施例1?9)。 そうすると、引用例2には、「エポキシ樹脂とカルボキシル基及びアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂とを反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂溶液、TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)、TSL8380(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、ミクロンエースL-1(タルク)、及びAソルベント(石油系溶剤)からなる主剤と、7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)、TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)、StannBL(ジブチル錫ラウレート)、及びAソルベントからなる硬化剤と、を混合して得られるシーラント用プライマー」(以下、この発明を「引用例2発明」という)が記載されていると認められる。 (3)本件特許発明3 ア 引用例1発明を主引例とした場合 (ア)対比 引用例1発明の「シーラント用プライマー」は、主剤と硬化剤とを混合して得られるものであるから「2液型」である。また、「プライマー」とは、その上に膜を形成するための下塗り塗料組成物である。よって、引用例1発明の「シーラント用プライマー」は、本件特許発明3の「2液型下塗り塗料組成物であり、…主剤と、…硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物」に相当する。 引用例1発明の「主剤」は、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を含有しているから、本件特許発明3の「…エポキシ樹脂を含有する主剤」に相当する。 引用例1発明の「主剤」は、「TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)」を含有し、「硬化剤」は、「TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)」を含有するから、本件特許発明3の「主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有する」を充足する。 してみると、本件特許発明3と引用例1発明とは、 「2液型下塗り塗料組成物であり、その2液型下塗り塗料組成物はエポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。」 である点において一致し、以下の点において相違が認められる。 (相違点1) 本件特許発明3の2液型下塗り塗料組成物は「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装する」、「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用」であるのに対し、引用例1発明のプライマーは「シーラント用」、すなわちシーラントに塗装するためのものである点。 (相違点2) 本件特許発明3は「主剤」が「フェノールノボラック変性エポキシ樹脂」を含有するのに対し、引用例1発明の「主剤」は「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂」を含有する点。 (相違点3) 本件特許発明3は「硬化剤」が「マンニッヒ変性アミン」を含有するのに対し、引用例1発明は「硬化剤」として「7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)」を含有する点。 (イ) 判断 まず、相違点2について検討する。 引用例1には、段落0008(摘記1c)に、変性する「エポキシ樹脂」について、エポキシ当量が「約150?約1000の範囲内」と規定されている一方で、エポキシ樹脂の種類について規定はない。また、「エポキシ樹脂」としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂は周知慣用のものである(例えば、引用例4の段落0005、摘記4b参照)。 しかし、引用例1にはエポキシ樹脂の候補について「エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂を二塩基酸等で変性したエポキシエステル樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等を挙げることができ、具体的にはDER-331J(ダウケミカル社製)、EPON#828、834、806H(油化シェル社製)、GY#260(旭チバ社製)、エポミックR#140P(三井石油化学工業社製)、エポトートYD128(東都化成社製)、ERL-4221、4229(ユニオンカーバイド社製)、デナコールEX-830(長瀬化成工業社製)等の市販品を使用することができる」と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は挙げられておらず、また、2液型下塗り塗料組成物の主剤として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂が周知である等の事情も認められない。そうすると、引用例1発明において、変性する「エポキシ樹脂」をフェノールノボラック型エポキシ樹脂とすることは、当業者が容易になし得るものではない。 また、引用例1発明の「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂」は、ミネラルスピリット等の高引火点石油系溶剤に可溶である利点を有する樹脂として用いられているところ(引用例1の段落0007、摘記1c参照)、ミネラルスピリット等の弱溶剤に溶解性を示すエポキシ樹脂として、炭素原子数4以上の脂肪族または脂環族炭化水素基により置換されてなるフェノールノボラック樹脂は公知である(引用例4の段落0019、摘記4c参照)。 しかし、引用例1には、主剤として、炭素原子数4以上の脂肪族または脂環族炭化水素基により置換されてなるフェノールノボラック樹脂を用い得ることは記載されていない。また、引用例1に記載された発明は、シーリング材面との付着性に優れるシーラント用プライマーであるところ(段落0001、摘記1b参照)、引用例1の実施例の記載からは、「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂」以外の樹脂を用いると、シーリング材面との付着性が悪くなる可能性があることが読み取れる(実施例8のプライマーを用いた試験例12、摘記1e参照)。そうすると、引用例1発明において、シーリング材面との付着性に優れる「エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂」にかえて、シーリング材面との付着性が不明である、炭素原子数4以上の脂肪族または脂環族炭化水素基により置換されてなるフェノールノボラック樹脂を用いることは、当業者が容易になし得るものではない。 そして、本件特許の明細書段落0010には「被塗装物への密着性に優れるなどの点から、…フェノールノボラック型エポキシ樹脂…が好ましい。さらに、硬化性を向上させ、実用強度を有する塗膜を速やかに得ることができるなどの点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。」と記載され、実施例の実験例1、2等において、主剤にフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いた塗料組成物が、密着性、硬化性等に優れることが確認されており、本件特許発明3は、密着性、硬化性等に優れるという効果を奏するものといえる。 したがって、本件特許発明3の上記相違点2に係る構成は、引用例1、4又は引用例1、3?4の記載に照らしても、当業者が容易に想到し得るものと認められない。 (ウ) 異議申立人の主張 異議申立人は令和元年12月18日提出の意見書において、上記相違点2に関して、「取消理由通知書では、以下の判断がなされています。…引用例1発明または引用例2発明において、エポキシ樹脂に重合性不飽和モノマーをグラフト重合又は共重合させてなるアクリル変性エポキシ樹脂に代えて、引用例4記載の当該フェノールノボラック樹脂を用いることは、当業者ならば容易になし得ること。…しかしながら、特許権者は、このような点については、全く言及していません。本件訂正発明3?4について、理由2(特許法第29条第2項の理由:進歩性欠如)は解消していないものと思料します。」と主張する。 しかし、上記(イ)に記載したように、引用例1発明において、主剤をフェノールノボラック樹脂に変更することは、容易想到の事項とはいえない。 よって、異議申立人の同意見書における主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件特許発明3の上記相違点2に係る構成を容易想到の事項ということはできないから、上記相違点1、3について検討するまでもなく、本件特許発明3は、引用例1、4又は引用例1、3?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 イ 引用例2発明を主引例とした場合 (ア)対比 引用例2発明の「シーラント用プライマー」は、上記ア(ア)と同様に、本件特許発明3の「2液型下塗り塗料組成物であり、…主剤と、…硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物」に相当するし、引用例2発明の「主剤」は、アクリル変性エポキシ樹脂溶液を含有しているから、本件特許発明3の「…エポキシ樹脂を含有する主剤」に相当する。 引用例2発明の「主剤」は、「TSL8350(γ-グリシドキシイソプロピルトリメトキシシラン)」を含有し、「硬化剤」は、「TSL8331(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)」を含有するから、本件特許発明3の「主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有する」を充足する。 してみると、本件特許発明3と引用例2発明とは、 「2液型下塗り塗料組成物であり、その2液型下塗り塗料組成物はエポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。」 である点において一致し、以下の点において相違が認められる。 (相違点4) 本件特許発明3の2液型下塗り塗料組成物は「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装する」、「刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用」であるのに対し、引用例2発明のプライマーは「シーラント用」、すなわちシーラントに塗装するためのものである点。 (相違点5) 本件特許発明3は「主剤」が「フェノールノボラック変性エポキシ樹脂」を含有するのに対し、引用例2発明の「主剤」は「エポキシ樹脂とカルボキシル基及びアルコキシシリル基を含有するアクリル樹脂とを反応させてなるアクリル変性エポキシ樹脂」を含有する点。 (相違点6) 本件特許発明3は「硬化剤」が「マンニッヒ変性アミン」を含有するのに対し、引用例2発明は「硬化剤」として「7A122N90(ケチミン化ポリアミド型硬化剤)」を含有する点。 (イ) 判断 まず、相違点5について検討する。 上記相違点5は上記ア(ア)の相違点2と同様であるし、引用例2の記載は引用例1の記載と同様(例えば、変性するエポキシ樹脂に関する段落0008(摘記2c参照)の記載は、引用例1の段落0008(摘記1c参照)の記載と同様)であるから、上記ア(イ)の判断と同様に、本件特許発明3の上記相違点5に係る構成は、引用例2、4又は引用例2?4の記載に照らしても、当業者が容易に想到し得るものと認められない。 (ウ) 異議申立人の主張 令和元年12月18日提出の意見書における、上記相違点5に関する異議申立人の主張は、上記ア(ウ)に記載した、相違点2に関する主張と同様である。そして、上記(イ)のとおり、引用例2発明において、主剤をフェノールノボラック樹脂に変更することは、容易想到の事項とはいえない。 よって、異議申立人の同意見書における主張は採用できない。 (エ) 小括 以上のとおり、本件特許発明3の上記相違点5に係る構成を容易想到の事項ということはできないから、上記相違点4、6について検討するまでもなく、本件特許発明3は、引用例2、4、又は引用例2?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 (4)本件特許発明4 本件特許発明4は、本件特許発明3の塗料組成物を塗装することを特徴とする塗装方法であるから、本件特許発明3と同様に、引用例1、4、引用例1、3?4、引用例2、4、又は引用例2?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3 まとめ 以上のとおり、本件特許発明3、4は、引用例1、4、引用例1、3?4、引用例2、4、又は引用例2?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、本件特許発明は、同法第113条第2号に該当するものではない。 したがって、令和元年9月19日付けで通知した取消理由は、理由がない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 異議申立人が提出した甲1号証を主引用例とした、請求項3、4に対する進歩性についての特許異議申立理由は、上記第4において検討した進歩性についての取消理由と、おおむね同旨である。したがって、当該特許異議申立理由によっては、本件特許発明3、4に係る特許を取り消すことはできない。 そのほかに、異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、以下の点を主張する。 1 請求項1に記載の「有機質塗膜」に「アクリルシリコン樹脂」の塗膜が含まれるのか否か不明であるから、特許を受けようとする発明が不明確である。 2 請求項1に記載の「硬化剤」に「アミン化合物」と「アミノ基含有シランカップリング剤」が記載されているが、これらが同一の成分であるか異なる成分であるか不明であるから、特許を受けようとする発明が不明確である。 3 請求項1には「硬化剤」に含まれる化合物として「アミン化合物」と「アミノ基含有シランカップリング剤」が記載されており、「アミン化合物」として「アミノ基含有シランカップリング剤」のみを含む態様が包含される。しかし、本件特許の発明の詳細な説明中には、「硬化剤」が、「アミノ基含有シランカップリング剤」以外の「アミン化合物」と、「アミノ基含有シランカップリング剤」とを含むことが記載されているのみであるから、「硬化剤」が「アミン化合物」として「アミノ基含有シランカップリング剤」のみを含む態様にまで、特許請求の範囲を拡張ないし一般化できるとはいえない。 しかし、上記1について、「アクリルシリコン樹脂」の塗膜が有機質塗膜であることは当業者に自明な事項である。また、上記2、3について、本件特許発明3には「フェノールノボラック樹脂」の「硬化剤」としての「マンニッヒ変性アミン」が含まれることが記載されており、これが「アミノ基含有シランカップリング剤」と異なる物質であることは当業者に明らかである。 よって、本件特許発明は明確であり、また発明な詳細な説明に記載されたものであるから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の要件を満たす。 したがって、異議申立人のかかる主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件特許発明3、4に係る特許を取り消すことはできない。 また、この他に本件特許発明3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1、2は、上記のとおり訂正により削除されたため、本件特許の請求項1、2に対して、異議申立人がした特許異議申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 2液型下塗り塗料組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、エポキシ樹脂を含有する主剤と、アミン化合物を含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 一般に、2液型下塗り塗料組成物は、コンクリート、木材、サイディング板若しくは押出成型板又はこれらに塗料組成物等が塗装されているもの等の被塗装物に対して、密着させるために用いられる。 例えば、特許文献1及び特許文献2には、エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物が記載されている。 特許文献3には、被塗装物への密着性を向上させるために、エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、硬化剤にシランカップリング剤を含有する2液型下塗り塗料組成物が記載されている。 更には、特許文献4には、被塗装物への密着性を向上させるために、エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤にシランカップリング剤を含有する2液型下塗り塗料組成物が記載されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】 特開平10-219185号公報 【特許文献2】 特開2001-240646号公報 【特許文献3】 特開2013-14668号公報 【特許文献4】 特開2014-37454号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤又は硬化剤にシランカップリング剤を含有する2液型下塗り塗料組成物は、被塗装物への密着性を向上させることができる。しかし、被塗装物が建築物や構造物等であり、これらに塗料組成物等が塗装されているなど、被塗装物が塗膜などの有機質である場合には、これらに2液型下塗り塗料組成物を塗装した際に、被塗装物に含まれる親水性の低汚染化剤などの成分が、塗装した2液型下塗り塗料組成物へ染み出す(bleeding)恐れがある。 前記成分が塗装した2液型下塗り塗料組成物へ染み出した際には、2液型下塗り塗料組成物からなる塗膜に塗装する上塗り材などの塗料が、2液型下塗り塗料組成物からなる塗膜に対して密着不良となるおそれがあるという問題がある。 そこで、本発明の目的とするところは、エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であっても、被塗装物である塗膜などの有機質に塗装した際に、前記成分に対する2液型下塗り塗料組成物への染み出し抵抗性(以下、耐ブリーディング性という。)を有する塗料組成物を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記の目的を達成するために、請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物は、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装するフェノールノボラック変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、マンニッヒ変性アミン化合物を含有する硬化剤と、 を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、前記主剤が、主剤配合用エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、前記硬化剤が、硬化剤配合用アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする。 請求項4に記載の発明の塗装方法は、請求項3に記載の2液型下塗り塗料組成物を、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装することを特徴とする。 【発明の効果】 【0006】 本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。 請求項3に記載の発明の2液型下塗り塗料組成物によれば、硬化性に優れ、被塗装物である刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装した際に、より耐ブリーディング性に優れ、安定性に優れるという効果を奏する。 請求項4に記載の発明の塗装方法によれば、被塗布物である刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に含まれる低汚染化剤などの成分が塗装した2液型下塗り塗装組成物へ染み出すことを防ぐ。 【発明を実施するための形態】 【0007】 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。 本発明は、エポキシ樹脂を含有する主剤と、アミン化合物を含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、主剤配合用シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、硬化剤配合用シランカップリング剤を含有していることを特徴とするものである。 【0008】 塗料組成物とは、本明細書において、被塗装物の表面に塗装して被膜を形成し、被塗装物を保護等する流動性を有する物質を組成するものをいい、被膜を形成するために、主として合成樹脂を含有する。一般に、塗料組成物に流動性を付与するために、塗料組成物は溶媒を含有し、溶媒の種類により、塗料組成物は、水性塗料組成物と有機溶剤塗料組成物とに大別することができるものである。また、塗料組成物は、硬化剤の有無により2液型と1液型とにも大別することができる。1液型のものである場合には、塗料組成物は、塗膜を形成する主として合成樹脂を含有する主剤から構成される。一方、2液型のものである場合には、塗料組成物は、前記の主剤と、前記主剤に混合して硬化を促進させる物質を含有する硬化剤と、から構成されるものである。 塗料混合物とは、本明細書において、被塗装物に塗装する直前のものをいい、1液型の塗料組成物にあっては塗料組成物及び希釈材であるシンナー又は水との混合物であり、2液型の塗料組成物にあっては塗料組成物、硬化剤及び希釈材であるシンナー又は水との混合物をいう。 塗装とは、本明細書において、被塗装物の表面に塗料混合物を塗ったり吹き付けたりすることをいう。塗装するのに用いる道具として、刷毛、ローラー、左官鏝、スプレーガン又はモルタルガンなどがある。 塗膜とは、本明細書において、被塗装物に塗装された塗料混合物が、希釈材などの揮発成分を揮発して、形成する被膜のことをいう。 不揮発分とは、原材料、主剤、硬化剤又は塗料混合物について、希釈材などの揮発成分が揮発した後に、残った不揮発成分(Non Volatile)のことをいう。本明細書において、不揮発分をNVと表記することや、原材料等中の不揮発分質量百分率について、例えば、不揮発分20%をNV20%と表記することがある。 エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂(主剤)の質量(g/eq)のことをいう。なお、活性水素当量もこれと同様である。 【0009】 (エポキシ樹脂を含有する主剤) 本発明の主剤は、エポキシ樹脂を含有するものである。エポキシ樹脂とは、当該エポキシ含有物質を構成する芳香族炭化水素基や脂肪族炭化水素基に直接結合した酸素に、エーテル結合を含む炭化水素基(用語「エーテル結合を含む炭化水素基」におけるエーテル結合を構成する酸素原子としては、芳香族炭化水素基の芳香環に直接結合する酸素を含まない。)が結合している化合物をいう。なお、当該化合物において、エーテル結合を含む炭化水素基は、エーテル結合を1つ有していても良いし、複数有していても良い。 【0010】 前記エポキシ樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されるものではない。例えば、ビスフェノール変性エポキシ樹脂、グリシジルエステル変性エポキシ樹脂、グリシジルアミン変性エポキシ樹脂、ノボラック変性エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族変性エポキシ樹脂及び芳香族変性エポキシ樹脂などが挙げられる。 これらの中でも、被塗装物への密着性に優れるなどの点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック変性エポキシ樹脂が好ましい。 さらに、硬化性を向上させ、実用強度を有する塗膜を速やかに得ることができるなどの点から、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。 【0011】 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、DIC株式会社製のエピクロンN-660、エピクロンN-665、エピクロンN-670、エピクロンN-673、エピクロンN-680、エピクロンN-690、エピクロンN-695、エピクロンN-665-EXP、エピクロンN-672-EXP、エピクロンN-655-EXP-S、エピクロンN-662-EXP-S、エピクロンN-665-EXP-S、エピクロンN-670-EXP-S、エピクロンN-685-EXP-S、エピクロンN-673-80M、エピクロンN-680-75M、エピクロンN-690-75Mなどを使用することができる。 【0012】 フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、DIC株式会社製のエピクロンN-730A、エピクロンN-740、エピクロンN-770、エピクロンN-775、エピクロンN-740-80M、エピクロンN-770-70M、エピクロンN-865、エピクロンN-865-80M、三菱化学株式会社製のjER-152、jER-154などを使用することができる。 【0013】 本発明において、エポキシ樹脂を含有する主剤は、主剤配合用シランカップリング剤を含有するものである。 シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する、加水分解性珪素化合物である。なお、(メタ)アクリル基とは、メタクリル基とアクリル基との総称である。 エポキシ樹脂を含有する主剤は、主剤配合用シランカップリング剤を含有することにより、有機物と反応性を有する官能基と無機物と反応性を有する珪素化合物とを有し、塗料混合物は、有機、無機にかかわらず、被塗装物への密着性に優れるものとなる。 【0014】 ビニル重合性基含有シランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。 エポキシ基含有シランカップリング剤として、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3- グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。 アミノ基含有シランカップリング剤として、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。 (メタ)アクリル基含有シランカップリング剤として、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。 メルカプト基含有シランカップリング剤として、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。 イソシアネート基含有シランカップリング剤として、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。 【0015】 主剤配合用シランカップリング剤としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されるものではないが、エポキシ樹脂を含有する主剤の安定性に優れることから、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましく、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランがより好ましい。 【0016】 エポキシ樹脂を含有する主剤中におけるシランカップリング剤の含有量は、エポキシ樹脂不揮発分100質量部に対して、好ましくは0.25?12.0質量部である。0.25を下回ると主剤中の官能基と珪素化合物の量が少なくなり被塗装物への密着性の向上の効果が不十分となるおそれがある。一方、12.0質量部を上回ると主剤の粘度が上昇して塗料安定性が劣る恐れがある。より好ましくは0.5?8.0質量部であり、最も好ましくは1.0?5.0質量部である。 【0017】 エポキシ樹脂を含有する主剤は、必要に応じて、希釈剤、消泡剤、防腐剤などを含有しても良い。 【0018】 希釈剤とは、塗装の際の作業性を調整するために、主剤の粘度や樹脂分を低下させるために転嫁する液体のことで、シンナー(thinner)ともいう。希釈剤として、有機溶媒や水が使用されるが、本発明においては有機溶媒が使用される。 希釈剤に用いる有機溶媒として、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、工業用ガソリン(JIS K 2201-1991)4号に規定されるミネラルスピリットなどを使用することができる。 【0019】 (アミン化合物を含有する硬化剤) 本発明の硬化剤は、アミン化合物を含有する硬化剤である。アミン化合物としては、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系、これらアミンとカルボニル化合物等との合成物であるマンニッヒ系アミン化合物等を使用することができる。 【0020】 脂肪族系アミン化合物として、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、その他の脂肪族系ポリアミン類などが挙げられ、より具体的には、例えば、ジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジ アミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミンやこれらの化合物等が挙げられる。 【0021】 脂環族系アミン化合物として、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミンやこれらの化合物等が挙げられる。 【0022】 芳香族系のアミン化合物として、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物、その他の芳香族系ポリアミン類やこれらの化合物等が挙げられる。より具体的には、例えば、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン(MXDA)、p-キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4、4’-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレンやこれらの化合物等が挙げられる。 【0023】 複素環系のアミン化合物として、例えば、N-メチルピペラジン、モルホリン、1,4-ビス-(8-アミノプロピル)-ピペラジン、ピペラジン-1,4-ジアザシクロヘプタン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2”-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、ジアザシクロエイコサン、ジアザシクロオクタコサンやこれらの化合物等が挙げられる。 【0024】 マンニッヒ系アミン化合物として、例えば、フェノール類と、ホルムアルデヒドと、m-キシレンジアミン(MXDA)などとを反応させて得られるものがある。具体的には、例えば、エアー・プロダクツ社製のアンカミン2432、アンカミン2089M、コグニスジャパン社製のバーサミンF20、バーサミンI-368、バーサミンM-1、シェル社製のエピキュアー3549、エピキュアー3378、Witco社製のTL0712、株式会社ADEKA製のアデカハードナーEH342M、アデカハードナーEH3427A、アデカハードナーEH350、アデカハードナーEH351、三和化学工業社製のサンマイドW-3000、サンマイドW-1000、サンマイドW-500、サンマイドCX-102、大都産業社製のダイトクラールSK-900FB、ダイトクラールX-985、ダイトクラールX-9422、ダイトクラールX-9581、DIC株式会社製のラッカマイドV6-221、ラッカマイドWN-170などが挙げられる。 【0025】 アミン化合物としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されるものではないが、高密度架橋を形成することにより耐ブリーディング性に優れる、マンニッヒ系アミン化合物が好ましい。 【0026】 本発明において、アミン化合物を含有する硬化剤は、硬化剤配合用シランカップリング剤を含有するものである。 アミン化合物を含有する硬化剤は、硬化剤配合用シランカップリング剤を含有することにより、有機物と反応性を有する官能基と無機物と反応性を有する珪素化合物とを有し、塗料混合物は、有機、無機にかかわらず、被塗装物への密着性に優れるものとなる。 また、エポキシ樹脂を含有する主剤が主剤配合用シランカップリング剤を含有し、アミン化合物を含有する硬化剤が硬化剤配合用シランカップリング剤を含有していることにより、前記主剤と前記硬化剤とを混合してなる2液型下塗り塗料組成物は、被塗装物である塗膜などの有機質に塗装した際に、有機質である被塗装物の成分に対する耐ブリーディング性を有するものとなる。 【0027】 硬化剤配合用シランカップリング剤としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されるものではないが、アミン化合物を含有する硬化剤の安定性に優れることから、アミノ基含有シランカップリング剤が好ましく、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。 【0028】 アミン化合物を含有する硬化剤中におけるシランカップリング剤の含有量は、アミン化合物不揮発分100質量部に対して、好ましくは0.1?8.0質量部である。0.1を下回ると硬化剤中の官能基と珪素化合物の量が少なくなり被塗装物への密着性の向上の効果が不十分となるおそれがある。一方、8.0質量部を上回ると硬化剤の粘度が上昇して塗料安定性が劣る恐れがある。より好ましくは0.2?6.0質量部であり、最も好ましくは0.4?3.0質量部である。 【0029】 アミン化合物を含有する硬化剤は、必要に応じて、硬化促進剤、希釈剤、消泡剤、防腐剤などを含有しても良い。 【0030】 硬化促進剤としては、塗料に用いられる従来公知の硬化促進剤であればよいが、硬化速度、低温(摂氏5℃以下)硬化性に優れるなどの点から、3級アミンやアクリル酸エステルなどが好ましい。 前記3級アミンとしては、特に制限されないが、例えば、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン[1,4-ジアザシクロ(2,2,2)オクタン]、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。これらの中でも2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールが硬化性により優れるため好ましい。 前記アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、多官能アクリル酸エステルが好ましく、例えば、サートマー社製のM-Cure400などが挙げられる。 【0031】 (主剤と硬化剤の作成方法等) 前記エポキシ樹脂を含有する主剤およびアミン化合物を含有する硬化剤は、それぞれに配合する成分を撹拌・混合等することにより得ることができる。本発明の2液型下塗り塗料組成物は、それぞれ別体で得られた前記エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とを、塗装する直前に撹拌・混合等することにより得ることができる。 撹拌・混合の際には、ペイントシェーカー、ハイスピードディスパー、サンドグラインドミル、バスケットミル、ボールミル、三本ロールミル、ロスミキサー、プラネタリーミキサー等の、従来公知の混合・撹拌装置を用いればよい。 【0032】 次に、上記のように構成された2液型下塗り塗料組成物の作用について説明する。 エポキシ樹脂を含有する主剤が主剤配合用シランカップリング剤を含有し、アミン化合物を含有する硬化剤が硬化剤配合用シランカップリング剤を含有していることにより、前記主剤と前記硬化剤とを混合してなる2液型下塗り塗料組成物は、被塗装物が塗膜などの 有機質に塗装した際に、耐ブリーディング性に優れたものとなる。 【実施例】 【0033】 以下に、実験例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されない。なお、実験例1?13、15?20及び22?27は実施例であり、実験例14及び21は比較例である。 【0034】 (主剤及び硬化剤の調製等) エポキシ樹脂を含有する主剤は、表1から表3に記載の配合量で主剤1から16として作成した。また、アミン化合物を含有する硬化剤は、表4から表6に記載の配合量で硬化剤1から16として作成した。各々の撹拌・混合には、ハイスピードディスパーを用いた。前記主剤1から16と硬化剤1から16とを組み合わせて種々の塗料混合物を作成及び評価をし実験例とした。 【0035】 【表1】 【0036】 【表2】 【0037】 【表3】 【0038】 【表4】 【0039】 【表5】 【0040】 【表6】 【0041】 エポキシ樹脂は以下のものを用い、表中では記号を用いた。以下にエポキシ樹脂の記号:原材料名(製造会社)種類を記載する。EP-A:エピクロン5920-70M(DIC株式会社)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(不揮発分:70%、エポキシ当量644g/eq(不揮発分換算))、EP-B:ハリポールEP-450(ハリマ化成株式 会社)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(不揮発分:60%、エポキシ当量1198g/eq(不揮発分換算))、EP-C:エピクロンN-680-75M(DIC株式会社)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(不揮発分:75%、エポキシ当量220g/eq(不揮発分換算))、EP-D:エピクロン840-S(DIC株式会社)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(不揮発分:100%、エポキシ当量185g/eq(不揮発分換算))。 【0042】 主剤配合用シランカップリング剤は以下のものを用い、表中では記号を用いた。以下にシランカップリング剤の記号:組成を記載する。SC-F:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-G:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-H:3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-I:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(不揮発分:98%)。 【0043】 アミン化合物は以下のものを用い、表中では記号を用いた。以下にアミン化合物の記号:原材料名(製造会社)種類または組成を記載する。NH-K:ラッカマイドWN-170(DIC株式会社)マンニッヒ系アミン化合物(不揮発分:100%、活性水素当量93g/eq(不揮発分換算))、NH-L:アデカハードナーEH-3427A(株式会社ADEKA)マンニッヒ系アミン化合物(不揮発分:100%、活性水素当量155g/eq(不揮発分換算))、NH-M:m-キシレンジアミン(不揮発分:100%、活性水素当量34.1g/eq(不揮発分換算))、NH-N:ジエチレントリアミン(不揮発分:100%、活性水素当量20.7g/eq(不揮発分換算))。 【0044】 硬化剤配合用シランカップリング剤は以下のものを用い、表中では記号を用いた。以下にシランカップリング剤の記号:組成を記載する。SC-P:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-Q:アミノプロピルトリメトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-R:3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(不揮発分:98%)、SC-S:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(不揮発分:98%)。 【0045】 硬化促進剤は、硬化促進剤A:2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(不揮発分:100%)を用いた。 【0046】 (塗装方法等) エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とは、エポキシ当量と活性水素当量とから反応基数がおよそ同じになる比率の質量の配合量で、塗料用ミキサーを用いて混合し、塗料混合物とした。塗料混合物は、試験体や被塗装物にスプレー等で塗装、乾燥することによって、塗膜である塗装物を得た。エポキシ樹脂を含有する主剤及びアミン化合物を含有する硬化剤並びにこれらから得られた塗料混合物及び塗膜の性能について、主剤安定性及び硬化剤安定性、密着性、耐ブリーディング性並びに硬化性を下記の方法に従って測定した。 【0047】 (評価) 主剤安定性及び硬化剤安定性:JIS K 5600-2-7(1999)、7.加温安定性で評価した。試料としての主剤又は硬化剤を容器に入れて密封し、温度35℃で3か月間保存した後、室温に戻し容器の中の状態を確認した。そして、粘度測定値が試験開始前と比較して±20%以内であり、樹脂の沈降がない場合を◎、粘度測定値が試験開始前と比較して±20%を超えるが樹脂の沈降がない場合を○、樹脂の沈降があり撹拌することにより一様になる場合を△、樹脂の沈降があり撹拌しても一様にならない場合を×として評価した。 【0048】 密着性:建築物や構造物の改修を想定した、ファインコートウレタン(菊水化学工業株式会社)ポリウレタン樹脂塗料が乾燥膜厚でおよそ80μm塗装された繊維強化セメント板に、本発明の塗料混合物を乾燥膜厚でおよそ40μm塗装して、試験体とした。そして、JIS K 5600-5-6(1999)塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)を用いて評価した。試験結果は、JIS K 5600-5-6(1999)付着性(クロスカット法)の分類にて、分類0を◎、分類1を○、分類2から5を×として評価した。 【0049】 耐ブリーディング性:建築物や構造物の改修を想定した、水系ファインコートシリコン(菊水化学工業株式会社)水系アクリルシリコン樹脂塗料が塗装された繊維強化セメント板に、本発明の塗料混合物を塗装し、下地成分の染み出し性を確認した後、上塗り材としてビュートップシリコン(菊水化学工業株式会社)水系アクリルシリコン樹脂塗料を塗装して、試験体とした。そして、そして、JIS K 5600-5-6(1999)塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)を用いて評価した。試験結果は、下地成分の染み出しの有無と、JIS K 5600-5-6(1999)付着性(クロスカット法)の分類にて、下地成分の染み出しがなく、分類0又は1を◎、下地成分の染み出しがあり、分類0又は1を○、下地成分の染み出しがあり、分類2又は3を△、下地成分の染み出しがあり、分類4又は5を×として評価した。 【0050】 硬化性:JIS K 5600-5-4(1999)塗料一般試験方法-第5部:塗料の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に従い、硬度による硬化性を評価した。試験体は、ファインコートウレタン(菊水化学工業株式会社)ポリウレタン樹脂塗料が乾燥膜厚でおよそ80μm塗装された繊維強化セメント板に、本発明の塗料混合物を乾燥膜厚でおよそ40μm塗装したものを試験体とした。そして、引っかき硬度がが、Hより硬いものを◎、HBより硬いものを○、2Bより硬いものを△、2Bより軟らかいものを×として評価した。 【0051】 (実験例1?7) 実験例1?7は、表7に示すように、塗料混合物は主剤1から7について硬化剤1を用いたものである。主剤にビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた実験例4では硬化性がやや劣る結果になった。また、主剤のシランカップリング剤にN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いた実験例7は主剤安定性がやや劣る結果になった。 なお、実験例1が最良の実験例である。 【0052】 【表7】 【0053】 (実験例8?13) 実験例8?13は、表8に示すように、塗料混合物は主剤1について硬化剤2から7を用いたものである。硬化剤にジエチレントリアミンを用いた実験例10では耐ブリーディ ング性がやや劣る結果になった。また、硬化剤のシランカップリング剤に3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いた実験例13は硬化剤安定性がやや劣る結果になった。 【0054】 【表8】 【0055】 (実験例14?20) 実験例14?20は、表9に示すように、塗料混合物は主剤10から16について硬化剤1を用いたものである。主剤にシランカップリング剤を含有していない実験例14では耐ブリーディング性が劣る結果になった。また、主剤にシランカップリング剤を多く含有している実験例20は主剤安定性がやや劣る結果になった。 【0056】 【表9】 【0057】 (実験例21?27) 実験例21?27は、表10に示すように、塗料混合物は主剤1について硬化剤10から16を用いたものである。硬化剤にシランカップリング剤を含有していない実験例21では耐ブリーディング性が劣る結果になった。また、硬化剤にシランカップリング剤を多く含有している実験例27は硬化剤安定性がやや劣る結果になった。 【0058】 【表10】 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装する2液型下塗り塗料組成物であり、その2液型下塗り塗料組成物はフェノールノボラック変性エポキシ樹脂を含有する主剤と、マンニッヒ変性アミンを含有する硬化剤と、を混合してなる2液型下塗り塗料組成物であって、主剤が、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有し、硬化剤が、アミノ基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物。 【請求項4】 請求項3に記載の刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜塗装用2液型下塗り塗料組成物を、刷毛、ローラー、スプレーガンで塗装された有機質塗膜に塗装することを特徴とする塗装方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-01-06 |
出願番号 | 特願2014-256796(P2014-256796) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C09D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田澤 俊樹 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
蔵野 雅昭 牟田 博一 |
登録日 | 2018-12-21 |
登録番号 | 特許第6453638号(P6453638) |
権利者 | 菊水化学工業株式会社 |
発明の名称 | 2液型下塗り塗料組成物 |