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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 特39条先願  C09K
管理番号 1359582
異議申立番号 異議2019-700133  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-19 
確定日 2020-01-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6384563号発明「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物及びその応用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6384563号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正するとを認める。 特許第6384563号の請求項1、4、7-9、11-17に係る特許を維持する。 特許第6384563号の請求項2、3、5、6、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6384563号の請求項1?17に係る特許(以下、各請求項に係る特許を項番号に合わせて「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、平成29年3月31日(優先権主張 平成28年3月31日)に出願されたものであって、平成30年8月17日にその特許権の設定登録がされ、同年9月5日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許1?17に対して、平成31年2月19日に特許異議申立人であるザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニーにより特許異議の申立てがなされた。
本件特許異議申立事件における、その後の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和元年 6月20日付け:(当審)取消理由通知
同年 8月26日 :(特許権者)意見書及び訂正請求書の提出
同年10月11日 :(特許異議申立人)意見書の提出

第2 本件訂正の適否についての判断

1 本件訂正の内容(訂正事項)
令和元年8月26日になされた訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?17を訂正単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-3 18.8重量%>x≧16.8重量%であり、
(2)-3 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B(0.1305x^(2)-5.942x+81.197/0.4948x^(2)-23.267x+294.53/100-R32-R125-1234yf)、
点C(0.0785x^(2)-4.1072x+71.965/0.1365x^(2)-7.218x+95.433/100-R32-R125-1234yf)、
点F(0.0105x^(2)-1.6128x+43.512/0.0724x^(2)-4.8312x+65.229/100-R32-R125-1234yf)、及び、
点E(0.1139x^(2)-5.0532x+64.849/0.3892x^(2)-18.658x+233.4/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物3、
(1)-4 22.5重量%>x≧18.8重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B(0.0396x^(2)-2.5301x+49.164/0.1783x^(2)-11.669x+188.29/100-R32-R125-1234yf)、
点C(0.0199x^(2)-1.9819x+52.725/0.0592x^(2)-4.6129x+73.8/100-R32-R125-1234yf)、
点Dは、20.0重量%>x≧18.8重量%のときは、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-1.3187x+89.053)
22.5重量%>x≧20.0重量%のときは、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-0.0092x^(2)-0.956x+85.484)
点Fは、
19.7重量%>x≧18.8重量%のときは、
点F(-2x+54.5/0/100-R32-R125-1234yf)
22.5重量%>x≧19.7重量%のときは、
点F(-1.9698x+53.892/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E (0.0399x^(2)-2.4292x+41.652/0.1589x^(2)-10.485x+161.15/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形又は五角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 24.2重量%>x≧22.5重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B(0.0251x^(2)-1.8786x+41.842/0.1176x^(2)-9.1887x+163.2/100-R32-R125-1234yf)、
点C(0.011x^(2)-2.409x+66.822/0/100-R32-R125-1234yf)、
点F(-1.9412x+53.276/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E(-0.5882x+20.435/-3.3529x+81.141/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物5、並びに
(1)-6 27.3重量%≧x≧24.2重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B(0.0251x^(2)-1.8786x+41.842/0.1176x^(2)-9.1887x+163.2/100-R32-R125-1234yf)、
点C(0.011x^(2)-2.409x+66.822/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点I’は、
25.4重量%>x≧24.2重量%のときは、
点I’(0.9662x-19.12/0/100-R32-1234yf-R134a)
27.3重量%≧x≧25.4重量%のときは、
点I’(x-20.0/0/100-R32-1234yf-R134a)
を頂点とする三角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される少なくとも一種を含有する組成物。」
とあるのを、
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 21.6重量%>x>19.7重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.8421x+29.889/-4.2105x+107.75/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.1053x+41.774/-2.1053x+45.474/100-R32-R125-1234yf)、
点Dは、
20.0重量%>x>19.7重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-1.3187x+89.053)
21.6重量%>x≧20.0重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-0.0092x^(2)-0.956x+85.484)
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする五角形の範囲(但し、点D、点F’及び線分DF’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 25.0重量%>x≧21.6重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(0.0313x^(2)-2.1315x+43.111/0.1014x^(2)-8.2924x+148.62/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-0.0217x^(2)-0.9308x+48.116/0/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234fy)
を頂点とする四角形の範囲(但し、点C’、点F’及び線分C’F’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物5、並びに
(1)-6 26.5重量%≧x≧25.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.6x+24.4/-3.1333x+83.033/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.8667x+57.967/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点I’は、
25.4重量%>x≧25.0重量%では、
点I’(0.9662x-19.12/0/100-R32-1234yf-R134a)、
26.5重量%>x≧25.4重量%では、
点I’(x-20.0/0/100-R32-1234yf-R134a)
を頂点とする三角形の範囲(但し、点C’、点I’及び線分C’ I’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される少なくとも一種を含有する組成物(但し、フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 18.1重量%>x≧16.1重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-2.6456x+62.484/0.7929x+29.984/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.4515x+46.075/-2.5842x+62.058/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.3447x+41.226/0.0959x^(2)-5.7176x+82.165/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.1044x^(2)-4.7203x+63.337/0.3836x^(2)-18.386x+233.37/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 20.0重量%>x≧18.1重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-1.0442x+33.87/0.2539x^(2)-14.531x+212.38/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.3145x+45.588/-2.4717x+59.031/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.258x+39.651/0.0607x^(2)-4.7348x+75.905/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.8869x+26.126/0.1994x^(2)-11.991x+177.97/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物5、
(1)-6 22.6重量%>x≧20.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.7733x+28.448/0.0598x^(2)-6.503x+129.46/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.157x+40.426/-2.1919x+53.439/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.1163x+26.822/0.0721x^(2)-5.1875x+80.404/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.7733x+25.848/0.1578x^(2)-10.613x+167.02/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される一種を含有する組成物との重複部分は除く。)。」
に訂正する(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項4、7?9、11?17の記載についても同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素化炭化水素、R32、R125、R134a及び1234yfを含有する、請求項1?3のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素化炭化水素、R32、R125、R134a及び1234yfを含有する、請求項1に記載の組成物。」
に訂正する(請求項4の記載を直接または間接的に引用する請求項8、9、11?17の記載についても同様に訂正する。)。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、R32、R125、R134a、1234yf及び水を含む、請求項1?3のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、R32、R125、R134a、1234yf及び水を含む、請求項1に記載の組成物。」
に訂正する(請求項7の記載を直接または間接的に引用する請求項8、9、11?17の記載についても同様に訂正する。)。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「冷凍機油を含有する、請求項1?7のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「冷凍機油を含有する、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。」
に訂正する(請求項8の記載を直接または間接的に引用する請求項9、11?17の記載についても同様に訂正する。)。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「HCFC冷媒であるR22の代替冷媒である、請求項1及び4?9のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「HCFC冷媒であるR22の代替冷媒である、請求項1、4及び7?9のいずれかに記載の組成物。」
に訂正する(請求項11の記載を直接または間接的に引用する請求項12?17の記載についても同様に訂正する。)。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に
「トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1?11のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1、4、7?9及び11のいずれかに記載の組成物。」
に訂正する(請求項12の記載を直接または間接的に引用する請求項13?17の記載についても同様に訂正する。)。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に
「前記組成物が、前記フッ素化炭化水素の混合物のみからなる、請求項1?12のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「前記組成物が、前記フッ素化炭化水素の混合物のみからなる、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。」
に訂正する(請求項13の記載を直接または間接的に引用する請求項14?17の記載についても同様に訂正する。)。
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に
「請求項1?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、冷凍方法。」
とあるのを、
「請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、冷凍方法。」
に訂正する。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15に
「請求項1?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する、冷凍機の運転方法。」
とあるのを、
「請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する、冷凍機の運転方法。」
に訂正する。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項1?13のいずれかに記載の組成物を含む冷凍機。」
とあるのを、
「請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を含む冷凍機。」
に訂正する。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項17に
「冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、チラー(チリングユニット)、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群から選択される少なくとも1種に使用する、請求項1?13のいずれかに記載の組成物。」
とあるのを、
「冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、チラー(チリングユニット)、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群から選択される少なくとも1種に使用する、請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1は、大別すると、次の4つの訂正事項(訂正事項1-1?1-4)からなるものということができる。
(i)訂正事項1-1
本件訂正前(設定登録時)の請求項1には、フッ素化炭化水素の混合物は、R32、R125、1234yf及びR134a(以下、これら4成分をまとめて「基本4成分」という。)を特定組成で含有することが記載され、当該基本4成分とは異なる他の成分についての明示的な記載はなく、また、当該他の成分の含有量については何ら記載されていなかったところ、当該混合物は、「R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下」であることを規定する。
(ii)訂正事項1-2
本件訂正前の請求項1に記載されていた混合物3?6を、新たな混合物4?6とする。
(iii)訂正事項1-3
本件訂正前の請求項1には、混合物3?6からなる群から選択される「少なくとも一種を含有する」組成物と記載されていたところ、これを「一種を含有する」とする。
(iv)訂正事項1-4
本件訂正前の請求項1の組成物から、特定の範囲を除くこととする。
イ 訂正事項1-1は、明細書の【0138】?【0144】の記載に基づいて、組成物が上記基本4成分とは異なる他の成分を含有し得ることを明示した上で、その含有量の上限を規定することによって、組成物を限定するものである。
したがって、当該訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
ウ 訂正事項1-2は、フッ素化炭化水素の混合物の選択肢として記載されていた混合物の一部を削除するとともに、明細書の【0030】に記載された「形態1-3」、すなわち、本件訂正前の請求項1に記載されていた形態を、当該「形態1-3」の下位概念として明細書の【0031】に記載された「形態1-3-A」とするものであり、併せて、当該「形態1-3-A」に記載された混合物6の点I’におけるR134aの濃度の誤記「100-R32-1234yf-R134a」を正して「100-R32-R125-1234yf」とするものである。
また、上記イのとおり、請求項1に係る混合物を、基本4成分を必須のものとしたことに伴い、例えば、上記「形態1-3-A」の混合物4を示す五角形の範囲中の点D、点F’及び線分DF’上など、1234yfの含有量が0重量%となる領域を除く必要が生じたため、訂正事項1-2は、このような領域を除くものであり、また、当該「形態1-3-A」の混合物には、これが示す図形と、図面上の図形とが整合していないところなどがあったため、訂正事項1-2は、このような明らかな不整合箇所の明瞭化を図ったものである。
したがって、当該訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、同ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正及び同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項(ただし、誤記の訂正については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項)の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
エ 訂正事項1-3は、本件訂正前の請求項1に記載されていた、混合物3?6からなる群から選択される「少なくとも一種」(二種以上の混合物が選択されることは技術的にあり得ない。)という明瞭でない記載を、選択肢を限定することにより技術的に正して明確化するものである。
したがって、当該訂正事項1-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
(2) 訂正事項2、3、5、6、9について
訂正事項2、3、5、6、9は、訂正前の請求項2、3、5、6、10を削除するものであるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
(3) 訂正事項4、7、8、10?16について
訂正事項4、7、8、10?16は、訂正事項2、3、5、6、9に係る請求項2、3、5、6、10の削除に伴い、請求項4、7?9、11?17における引用請求項の明瞭化を図るもの、あるいは、当該引用請求項の一部を削除するものと捉えることができるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮又は同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。

3 小括
上記前記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?17を訂正単位として訂正することを求めるものであり、その訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。

第3 本件特許請求の範囲の記載

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、請求項1、4、7?9、11?17に係る発明を、請求項の項番号に合わせて「本件特許発明1」などといい、まとめて「本件特許発明」という。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 21.6重量%>x>19.7重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.8421x+29.889/-4.2105x+107.75/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.1053x+41.774/-2.1053x+45.474/100-R32-R125-1234yf)、
点Dは、
20.0重量%>x>19.7重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-1.3187x+89.053)
21.6重量%>x≧20.0重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-0.0092x^(2)-0.956x+85.484)
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする五角形の範囲(但し、点D、点F’及び線分DF’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 25.0重量%>x≧21.6重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(0.0313x^(2)-2.1315x+43.111/0.1014x^(2)-8.2924x+148.62/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-0.0217x^(2)-0.9308x+48.116/0/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234fy)
を頂点とする四角形の範囲(但し、点C’、点F’及び線分C’F’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物5、並びに
(1)-6 26.5重量%≧x≧25.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.6x+24.4/-3.1333x+83.033/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.8667x+57.967/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点I’は、
25.4重量%>x≧25.0重量%では、
点I’(0.9662x-19.12/0/100-R32-1234yf-R134a)、
26.5重量%>x≧25.4重量%では、
点I’(x-20.0/0/100-R32-1234yf-R134a)
を頂点とする三角形の範囲(但し、点C’、点I’及び線分C’ I’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される少なくとも一種を含有する組成物(但し、フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 18.1重量%>x≧16.1重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-2.6456x+62.484/0.7929x+29.984/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.4515x+46.075/-2.5842x+62.058/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.3447x+41.226/0.0959x^(2)-5.7176x+82.165/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.1044x^(2)-4.7203x+63.337/0.3836x^(2)-18.386x+233.37/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 20.0重量%>x≧18.1重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-1.0442x+33.87/0.2539x^(2)-14.531x+212.38/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.3145x+45.588/-2.4717x+59.031/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.258x+39.651/0.0607x^(2)-4.7348x+75.905/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.8869x+26.126/0.1994x^(2)-11.991x+177.97/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物5、
(1)-6 22.6重量%>x≧20.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.7733x+28.448/0.0598x^(2)-6.503x+129.46/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.157x+40.426/-2.1919x+53.439/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.1163x+26.822/0.0721x^(2)-5.1875x+80.404/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.7733x+25.848/0.1578x^(2)-10.613x+167.02/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される一種を含有する組成物との重複部分は除く。)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素化炭化水素、R32、R125、R134a及び1234yfを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、R32、R125、R134a、1234yf及び水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
冷凍機油を含有する、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記冷凍機油が、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
HCFC冷媒であるR22の代替冷媒である、請求項1、4及び7?9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1、4、7?9及び11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記フッ素化炭化水素の混合物のみからなる、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、冷凍方法。
【請求項15】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する、冷凍機の運転方法。
【請求項16】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を含む冷凍機。
【請求項17】
冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、チラー(チリングユニット)、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群から選択される少なくとも1種に使用する、請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物。


第4 取消理由の概要

令和元年6月20日付けの取消理由において、当審が指摘した取消理由は、下記のとおりである。
なお、下記取消理由における本件特許発明及び本件特許の番号は、本件訂正前(設定登録時)の請求項の番号に対応するものである。

1 サポート要件:特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
本件特許発明1?12、14?17は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許1?12、14?17は、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

2 実施可能要件:特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)
発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件特許発明10?17を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、本件出願は、発明の詳細な説明の説明が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許10?17は、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

3 明確性要件:特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
本件特許発明1?17は明確ではないから、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件特許1?17は、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

4 新規性:特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)
本件特許発明1?6、8?17は、下記甲1?5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本件特許1?6、8?17は、同法第113条第2号に該当するため、取り消すべきものである。

5 進歩性:特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
本件特許発明1?17は、下記甲1?5に記載された発明及び甲1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許1?17は、同法第113条第2号に該当するため、取り消すべきものである。

<証拠一覧>
以下では、特許異議申立人が提出した甲第1?9号証を「甲1」などとした。
(主引例)
甲1:特表2013-529703号公報
甲2:特表2015-511262号公報
甲3:特表2012-509390号公報
甲4:特表2012-526182号公報
甲5:特表2014-514423号公報
(周知文献)
甲6:国際公開第2015/141676号公報
甲7:特表2008-531836号公報
甲8:特表2007-535611号公報
甲9:特表2013-530265号公報

6 先願:特許法第39条第1項(同法第113条第2号)
本件特許発明1?17は、先願にあたる下記の出願に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許1?17は、同法第113条第2号に該当するため、取り消すべきものである。
<先願>
特願2016-222802号(特許第6241534号公報参照)


第5 各取消理由について

上記の取消理由が、本件訂正後の本件特許発明及び本件特許に対しても当てはまるものであるか否かについて検討したところ、当審は、いずれの取消理由も本件訂正後のものに対しては妥当しないと判断する。
以下、その理由について詳述する。

1 取消理由1(サポート要件)について
(1) 前提
特許請求の範囲の記載が、いわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
そこで、以下、本件特許発明が、「発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲」のものであるか否かについて検討する。
(2) 本件特許発明の課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0009】によれば、本件特許発明は、少なくとも、「GWPが小さく、かつASHRAE不燃の性能を兼ね備える冷媒組成物を提供すること」を課題とするものと認められる。
また、同【0012】には、本件特許発明の効果として、「フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)、2,3,3,3テトラフルオロプロペン(1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)を特定濃度で含むことにより、1500以下のGWP及びASHRAE不燃の性能を兼ね備える」ことが記載され、同【0017】、【0018】には、「本発明の組成物は、GWPが1500以下であり、かつASHRAE不燃の性能を兼ね備える。GWPは1500以下とすることによって、地球温暖化の観点から他の汎用冷媒と比べて顕著に環境負荷を抑えることができる。また、ASHRAE不燃であることにより、可燃性冷媒に比して安全性が高く使用可能範囲が広い」ことが記載されており、さらに、図面には、GWPが1500以下である領域が図示されていることが分かる(【0013】)。
そうすると、これらの記載に接した当業者は、上記課題の「GWPが小さく」とは、GWPが1500以下であることを意味すると考えるのが合理的である。
(3) 発明の詳細な説明の記載と「発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲」について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記課題に係る1500以下のGWPの領域及びASHRAE不燃となる領域を、実験や「REFPROP9.0」(【0061】参照)なる計算ソフトを用いるなどして画定し、図面を作成した旨記載されているところ、当該画定に供されたフッ素化炭化水素の混合物の成分系は、R32、R125、1234yf及びR134aの4成分系(以下、「基本4成分」という。)のみである。
そうすると、当該混合物が、当該基本4成分とは異なる他の成分を含有する場合、例えば当該基本4成分とは異なる他の成分が、混合物の大半を占めるような場合については何ら検証されていないといわざるを得ず、このような場合についてまで、上記課題に係る1500以下のGWPの領域及びASHRAE不燃となる領域に属するか否か、すなわち、当該課題を解決することができるか否かは、当業者といえども、発明の詳細な説明の記載から理解することはできないというべきである。むしろ、当該基本4成分とは異なる他の成分の中には、GWPが極めて高い化合物や、可燃性の高い化合物が存在することから、これらの化合物が組成物の大半を占める場合に、上記課題が解決できるとは到底いえない。また、当該基本4成分とは異なる他の成分を多分に含有する場合においても上記課題を解決することができることを、ただちに認識するに足りる技術常識は見当たらない。
したがって、フッ素化炭化水素の混合物に関する「発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲」は、実質的に上記基本4成分である場合に限られるというべきである。
(4) サポート要件についての当審の判断
本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明4、7?9、11?17は、上記第3のとおり、その混合物中の、上記基本4成分とは異なる他の成分の含有量を、0.5重量%以下と規定していることから、当該混合物は、実質的に上記基本4成分から構成されるものということができる。
したがって、当該発明は、上記(3)において検討した「発明の詳細な説明の記載及び技術常識により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲」内のものと認められるから、これらの発明について特定した請求項1、4、7?9、11?17の記載は、サポート要件に適合するものである。
よって、本件特許請求の範囲の記載に特許法第36条第6項第1号所定のサポート要件違反は認められないから、同法第113条第4号に該当することを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

2 取消理由2(実施可能要件)について
本件特許発明11は、本件特許発明1に係る特定の混合物を含有する組成物が、R22の代替冷媒であることを特定するものである。
そして、そのような代替冷媒となるには、GWP1500以下やASHRAE不燃といった要件のほかに、CAP、COP、吐出温度などの諸特性が既存冷媒と同等又はそれ以上であるという要件を満足する必要があるところ、当該混合物が、上記基本4成分からなる場合については、本件特許明細書の【表5-11】?【表5-15】の実験データなどからみて、それらの要件を満足するものと解することができる。
例えば、本件特許発明1の混合物5についていうと、本件特許明細書【0199】の【表5-12】には、当該混合物5に属する、x=21.6の場合の四角形B’C’F’E’に関する実験データが記載されているところ、同表の実施例2-99、2-104?2-106に記載された各頂点の性能(成績係数(対R22%)、冷凍能力(対R22%)、吐出温度(℃)、吐出圧力(対R22%))の数値から、当該四角形B’C’F’E’の各頂点の組成比を有する混合物は、上記の要件を満足していることが見て取れる。また、基本4成分の組成比と当該性能の数値との関係(基本4成分の組成比が変化した場合の、当該性能の数値の増減傾向)もおおよそ看取できるから(上記表中の各点の性能の数値に加え、特許権者が令和元年8月26日に提出した意見書の第11頁に記載された参考図も参酌した。)、当該四角形B’C’F’E’の範囲に含まれる組成比を有するものであれば、上記の要件を満足していることが理解できる。
さらに、本件訂正により、当該混合物は、上記基本4成分とは異なる他の成分の含有量が0.5重量%以下と規定され、実質的に上記基本4成分から構成されるものとなったため、そのような混合物全般にわたって、上記代替冷媒となり得るものということができる。
そうすると、当業者であれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明1に係る特定の混合物を含有する組成物を、R22の代替冷媒として使用することができるものと認められ、当該発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明11及びこれを引用する本件特許発明12?19を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができるから、実施可能要件に適合するものである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に特許法第36条第4項第1号所定の実施可能要件違反は認められないから、同法第113条第4号に該当することを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

3 取消理由3(明確性要件)について
先の取消理由通知において明確性要件違反を指摘した事項は以下の7点である。なお、対象請求項及び本件特許発明は、本件訂正前のものである。
『(1) 請求項1?3には、「点・・・を頂点とする四角形又は五角形」、「点・・・を頂点とする点又は三角形」などの記載があるが、当該記載では、どの頂点を選択した点、又は、多角形であるのかが判然としない。
したがって、本件特許発明1?3及びこれらを引用する本件特許発明4?17は明確とはいえない。
(2) 本件特許発明1?3は、R32の濃度xを基準として重複なく分類される複数の混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する組成物であり、ここでいう「少なくとも1種」とは「2種以上」を包含するものであるから、本件特許発明1?3は、2種以上の混合物を含有する組成物を包含するところ、技術的にみて、本件特許発明1?3の組成物が2種以上の混合物を含有することはあり得ない。
したがって、本件特許発明1?3及びこれらを引用する本件特許発明4?17は明確とはいえない。
(3) 本件特許発明1に記載される混合物6において、点I’の134aの濃度は、「100-R32-1234yf-R134a」の式のとおり、R125の濃度を用いることなく、134aの濃度そのものを用いて再帰的に定義されているため、相図における点I’の座標を特定できない。
本件特許発明2に記載される混合物4及び混合物5の点H’、本件特許発明3に記載される混合物4?6の点H’についても同様である。
したがって、本件特許発明1?3及びこれらを引用する本件特許発明4?17は明確とはいえない。
(4) 本件特許発明2に記載の混合物3において、点G’のR125の濃度は、「100-R32-1234yf-R134a1」の式によって特定されているが、当該「R134a1」が不明であるため、相図における点G’の座標を特定できない。
また、本件特許発明2に記載の混合物5において、定義域((1)-5)として記載されている「23.2重量%≧x≧20.8重量%及び25.6重量%>x≧25.4重量%」の条件を同時に満たす実数xは存在しない。同様に、点Q及びRの場合分けのための定義域として記載されている「23.2重量%≧x≧21.8重量%及び25.6重量%>x≧25.4重量%」の条件を同時に満たす実数xは存在しない。したがって、R32の濃度xがどのような値をとった場合に、混合物5に該当するのかが明瞭ではない。
したがって、本件特許発明2及びこれを引用する本件特許発明4?17は明確とはいえない。
(5) 本件特許発明3に記載の混合物6において、点S、点α、及び点Qの座標は、スラッシュ(/)で区切られた3つの数値で規定されるべきところ、当該座標は、1つの数値のみで規定されている。よって、点S、点α、及び点Qの座標を特定できない。
したがって、本件特許発明3及びこれを引用する本件特許発明4?17は明確とはいえない。
(6) 本件特許発明5、6に記載された有機化合物の意味するところが明確でない(本件特許明細書の【0142】、【0143】に記載された具体例との対応関係も不明である。)。
(7) 本件特許発明13は、本件特許発明1?12において、前記フッ素化炭化水素の混合物のみからなることを特徴とする発明である。
一方、本件特許発明8は、本件特許発明1?7において、フッ素化炭化水素の混合物に加えて、冷凍機油を含有することを特徴とする発明である。よって、本件特許発明8の要件と、本件特許発明13の要件とは整合しないから、本件特許発明8を引用する本件特許発明13は不明瞭である。
また、本件特許発明9は、本件特許発明8において、冷凍機油が少なくとも1種のポリマーを含むことを規定した発明である。よって、同様の理由により、本件特許発明9を引用する本件特許発明13は不明瞭である。
さらに、本件特許発明12は、本件特許発明1?11において、フッ素化炭化水素の混合物に加えて、トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含むことを特徴とする発明である。よって、本件特許発明12の要件と、本件特許発明13の要件とは整合しないから、本件特許発明12を引用する本件特許発明13は不明瞭である。
したがって、本件特許発明13及びこれを引用する本件特許発明14?17は明確とはいえない。』
そして、上記の指摘事項に係る記載不備は、上記第2において検討した本件訂正による明確化(上記(1)、(2)、(7)の記載不備の解消)や、対象混合物及び対象請求項の削除(上記(3)?(6)の記載不備の解消)によって治癒したものと認められる。
したがって、本件特許請求の範囲の記載に特許法第36条第6項第2号所定の明確性要件違反は認められないから、同法第113条第4号に該当することを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

4 取消理由4及び5(新規性進歩性)について
(1) 主引例である甲1?5の記載事項
ア 甲1の記載事項
・「【請求項1】
ジフルオロメタンと、ペンタフルオロエタンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、熱伝達組成物。
【請求項2】
重量ベースで1%?97%のジフルオロメタンと、1%?97%のペンタフルオロエタンと、1%?97%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、1%?97%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、請求項1に記載の熱伝達組成物。
【請求項3】
重量ベースで約10%?35%のジフルオロメタンと、約10%?35%のペンタフルオロエタンと、約10%?60%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、約10%?60%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、請求項1に記載の熱伝達組成物。
【請求項4】
重量ベースで約15%?30%のジフルオロメタンと、約15%?30%のペンタフルオロエタンと、約15%?40%の1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、約15%?40%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、請求項1に記載の熱伝達組成物。」
・「【請求項23】
潤滑剤をさらに含む、請求項1に記載の熱伝達組成物。
【請求項24】
前記潤滑剤がポリオールエステル油、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン及びその混合物から選択される、請求項23に記載の熱伝達組成物。」
・「【背景技術】
【0002】
規制上の継続的な圧力に伴って、オゾン層破壊ポテンシャル及び地球温暖化ポテンシャルがより低い冷媒、熱伝達流体、発泡剤、溶媒及びエアロゾルのための環境的により持続可能な代替品を特定する必要性が高まってきている。これらの利用分野のために広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)とヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊性物質であり、モントリオール議定書のガイドラインにしたがって廃止されつつある。ヒドロフルオロカーボン(HFC)は、多くの利用分野におけるCFC及びHCFCの主要な代替品である。これはオゾン層に「優しい」ものとみなされているが、それでも一般に高い地球温暖化ポテンシャルを有する。
【0003】
例えば、オゾン層破壊ポテンシャル(ODP)を有するHCFC冷媒であるR-22を代替するためにいくつかのHFC系冷媒が開発されてきた。これらには、R-404A、R-407C、R-407A、R-417A、R-422D、R-427A、R-438A他が含まれる。しかしながら、HFC系のR-22代替品の大部分は、R-22よりも高い地球温暖化ポテンシャルを有し、しかも同時に性能特性も低下させる。例えばR-404A及びR-407Aは、一部の条件下でR-22よりわずかに高い冷凍能力(CAP)を有するものの、性能(COP)はより低いものである可能性がある;R-407Cは、わずかに低いGWPを有するが、同様に冷凍の利用分野におけるCAP及びCOPも低い;他の多くのR-22代替品は、GWPがより高いものであるばかりでなく、CAP及びCOPも低い。図3はR22及びいくつかのR-22代替品のGWPの比較を示している。
【0004】
別の制約条件は、大部分のHFCに適切な性能を提供するのに必要な鉱油などの従来の潤滑剤との混和性が欠如しているという点にある。その結果、鉱油の代りにポリオールエステル(POE)油、ポリアルキレングリコール(PAG)油、及びポリビニルエーテル(PVE)油などの酸素処理された潤滑剤が導入されることになった。これらの新しい潤滑剤は、従来の鉱油潤滑剤に比べてはるかに高価であり得る上に、吸湿性が極めて高い可能性がある。
【0005】
鉱油との混和性を改善し、かくして油の戻りを改善する目的で、ブタン、プロパン又はペンタンなどの低沸点炭化水素を少量取込んだR-422D及びR-438Aなどの複数の冷媒組成物が開発されてきた。しかしながら、米国特許第6,655,160号明細書及び米国特許第5,688,432号明細書に教示されているように、安全上の理由から冷媒組成物の可燃性を低下させるために、冷媒組成物中の炭化水素の量を最小限に抑えるべきであるということが認識されてきた。
【0006】
R-22の代替品として用いるように設計されたHFC製品の中でも、R-407Cは特に、空調の利用分野においてR-22に代替するために開発されてきた。この製品は、R32、R-125及びR-134aを23/25/52重量%の割合で組合せた混合物である。R-32は、ジフルオロメタンを表わし、R-125はペンタフルオロエタンを表わし、R-134aは1,1,1,2-テトラフルオロエタンを表わす。R-407Cは、R-22の熱力学特性と非常に類似した熱力学特性を有する。この理由から、R-407Cは、R-22を用いて作動するように設計された旧システムにおいて使用可能であり、したがって、これらの旧システムを転換させるための手順の中で成層圏オゾン層に関してより安全であるHFC流体をHCFCに代って使用することが可能になる。関係する熱力学特性は、当業者にとって周知であり、詳細には、冷凍能力、性能係数(つまりCOP)及び凝縮圧力である。
【0007】
冷凍能力は、所与の圧縮機に対して冷媒が提供する冷凍力を表わす。R-22の代替品となるためには、R-22のものに近い高い冷凍能力を有する流体を入手することが不可欠である。
【0008】
COPは、蒸気状態の冷媒を圧縮するために圧縮機に適用されるエネルギーに対する送出された冷凍エネルギーの比を表わしている。R-22の代替品に関しては、プラントの電力消費量の増加が許容される場合、R-22のものより低い冷媒COP値が好適である。
【0009】
最後に、凝縮圧力は、冷凍回路の対応する機械的部分に対して冷媒が及ぼす応力を表わす。R-22用に設計された冷凍システム内でR-22の代替品となり得る冷媒は、R-22のものよりも有意に大きい凝縮圧力を示してはならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、低いGWPのみならず能力と性能の間の予想外に優れた平衡を有する熱伝達組成物が発見された。好ましくは、本発明の熱伝達組成物は低い可燃性を有し、より好ましくは本発明の熱伝達組成物は不燃性であり、さらに一層好ましくは、本発明の熱伝達組成物は不燃性でかつさまざまな漏洩シナリオの後でも不燃性であり続け、さらに一層好ましくは、ASHRAE SSPC34にしたがった不燃性を有する。本発明の別の実施形態は、R-422Dなどの少量の炭化水素を取込んだものを含め、熱伝達装置内においてHFC冷媒に比べ改善された油の戻り特性を有する冷媒組成物である。いかなる形であれ本発明の範囲を限定することは意図されていないものの、本発明の熱伝達組成物は、新規の冷凍、空調、ヒートポンプ又は他の熱伝達装置において有用である。別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-407A、R-417A、R-422D他を含む(ただしこれらに限定されない)既存の装置内の冷媒のためのレトロフィットとして有用である。」
・「【0019】
本発明の熱伝達組成物は、既存の冷媒、特により高いオゾン層破壊ポテンシャル(ODP)又はより高い地球温暖化ポテンシャル(GWP)を有する冷媒の代替品として使用することができる。・・・一実施形態において、本発明の熱伝達組成物はR-22又はR-404Aの代替品として使用でき、好ましくはここで本発明の熱伝達組成物は、約10wt%?50wt%のR-32、より好ましくは約10wt%?30wt%のR-32を含む。
【0020】
本発明の一実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、5wt%?40wt%のR-32、5wt%?40wt%のR-125、5wt%?60wt%のR-134a、及び5wt%?75wt%のR-1234yfを含み、好ましくはここでR1234yfとR-134aの組合せ合計は30wt%?80wt%である。本発明の別の実施形態において、これらの熱伝達組成物は、R-22の代替品として特に有用である。」
・「【0026】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22及びR-404Aの代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表1に示されている。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22の代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の実施例が表2に示されている。
【0029】
【表2ー1】

【0030】
【表2ー2】

【0031】
【表2ー3】


・「【0041】
本発明の一実施形態は、低いGWP値を伴う熱伝達組成物であり、好ましくはここで、GWPは2000未満、より好ましくは1500未満、より好ましくは1400未満そしてさらに一層好ましくは1000未満である。」
・「【0043】
本発明の熱伝達組成物は、潤滑油と組合せて使用されてよい。例示的潤滑油には、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン及びその混合物が含まれる。本発明の潤滑油は、極低粘度のものから高粘度のものまであり、好ましくは100°Fで15?800cSt、そしてより好ましくは20?100cStの粘度を有する。本発明において使用される典型的な冷凍用潤滑油は、100°Fで15、32、68及び100cStの粘度を有していた。」
・「【0064】
本発明の熱伝達組成物は、染料、安定剤、酸スカベンジャー、酸化防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、腐食防止剤、ナノ粒子、界面活性剤、相溶化剤、可溶化剤、分散剤、難燃剤、火炎抑制剤、製剤、滅菌剤、ポリオール、ポリオールプレミックス構成成分、化粧品、洗浄剤、フラッシング剤、消泡剤、油、着臭剤、トレーサー化合物及びその混合物と組合せた形で使用されてよい。」
・「【0067】
本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、本発明の熱伝達組成物は、新規の冷凍、空調、ヒートポンプ又は他の熱伝達装置において有用である。別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-407A、R-417A、R-422D他を含めた(ただしこれらに限定されない)既存の装置内の冷媒に対するレトロフィットとして有用である。本発明の熱伝達組成物を既存の装置内の他の冷媒に対するレトロフィットとして使用する場合、圧力、吐出温度、質量流量などの作動特性が、代替される冷媒の作動特性と類似したものであることが好ましい。さらに一層好ましい実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、熱膨張弁(TXV)の交換など、装置に追加の変更を加える必要性を回避するため代替される冷媒に充分近い作動特性を有している。」
・「【0072】
本発明の熱伝達組成物は、可動又は固定システム内で有用である。固定型空調及びヒートポンプとしては、冷却装置、高温ヒートポンプ、住宅用及び軽商業及び商業用空調システムが含まれるが、これらに限定されない。固定型冷凍利用分野としては、家庭用冷蔵庫、製氷機、ウォークイン及びリーチインクーラー及び冷凍庫等の設備及びスーパーマーケットシステムが含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される可動冷凍システム又は可動空調システムは、道路、鉄道、海上又は航空用輸送ユニット内に内蔵されるあらゆる冷凍又は空調器具を意味する。本発明は、自動車の空調器具又は冷凍式道路輸送設備などの、道路輸送用冷凍又は空調器具のために特に有用である。」
・「【実施例】
【0096】
実施例1
高圧シリンダに、21wt%のR-32(ジフルオロメタン)、25wt%のR-125(ペンタフルオロエタン)、22wt%のR-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)及び32wt%のR-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)を含む組成物を添加した。その後、シリンダの内容物の液体及び蒸気画分をガスクロマトグラフィによって分析して、組成を決定した。組成物は表6に示され、組成物の各々は、不燃性であるか又は非常に低い可燃性特性を有する。
【0097】
【表6】

【0098】
実施例:冷凍装置の試験
空調及び冷凍装置の試験向けに設計された並列断熱チャンバで構成される環境的に制御された施設内で、装置の試験を実施した。各チャンバは、広範囲の環境条件下でフルスケールHVACRシステムの性能を特徴づけする目的で、温度、湿度及び空気流を調節するために独立した制御システムを使用している。中乃至低温のウォークインクーラータイプR-22冷凍システムに制御システムを設置した。このシステムは、整合したBohn蒸発器とSporlan恒温膨張弁を伴う1-1/2HPの半密封Copeland圧縮機で駆動される。システム内の主要箇所における冷媒状態を判定するため全体にわたって圧力トランスジューサ及び抵抗温度検出器を設置する。冷媒流量を測定するためにはCoriolis計を使用し、一方システム及びその構成要素の電力消費量を測定するためには、電力計を使用する。最後に、圧縮機点検窓内のオイルのレベルを遠隔監視するためには、ビデオカメラを使用する。
【0099】
システム性能を、さまざまなシステム条件において評価することができた。冷媒の熱力学特性とシステム条件の測定値を用いて、運転の後に、能力(CAP)と性能(COP)の値を計算した。圧縮機点検窓内の液面を監視することによって、油の戻りを評価し、OEMのガイドライン内にとどまる安定した運転時液面を生じさせた冷媒/油の組合せを合格とみなした。
【0100】
非混和性又は部分混和性の潤滑剤を用いるシステム内の油ロギング(oil logging)も同様に、非混和性又は部分混和性の潤滑剤を使用した場合の冷媒の性能及び作動条件(例えば温度、圧力、流速)と、混和性潤滑剤を使用した場合の性能及び作動条件とを比較することによって、推測することができた。
・・・
【0106】
実施例7
冷媒が約21重量%のR-32、25重量%のR-125、22重量%のR-1234yf及び32重量%のR-134aの配合物(実施例7)であったという点を除いて、比較例3の場合と同様に冷凍システムを作動させた。全ての条件において、充分な油の戻りがあった。各々のボックス温度について、R-22に比べた能力及びCOPが表7に示されている。
【0107】
図1は、R-407CのCAPとの関係におけるR-422D、R-427A、R-438A及び、実施例7のCAPの比較を示す。実施例7の能力は、試験対象の全ての条件において、特により低いボックス温度において、他のR-22代替品の能力よりも大きかった。
【0108】
図2は、R-407CのCOPとの関係におけるR-422D、R-427A、R-438A及び実施例7のCOPの比較を示す。実施例7のCOPは、25°F及び50°Fのボックス温度でR-422Dのものよりも有意に高く、R-407C、R-438A及びR-427AのCOPに近いものであった。0°Fのボックス温度で、実施例7はR-407C、R-427A、R-438A又はR-422Dよりも大きいCOPを有していた。
【0109】
図3は、R-22、実施例7及び、比較例3、4、5及び6のものを含めた数多くのR-22レトロフィットについての計算上のGWPを示す。実施例7のGWPは、R-407C又はR-22のものよりも17%?18%低く、R-422Dのものよりも約45%低いものである。
【0110】
【表7】


・「【0114】
実施例10:性能データ
冷凍及び空調条件下での本発明の熱伝達組成物の性能データは、表8、9及び10に示されている。表8中、結果は、R-22、R-404A及びR-407Cに比較したものである。表9では、結果はR-134aに比較されている。表10は、結果はR-410Aに比較されている。各組成物についての構成成分(R-1234yf、R-32、R-134a、R-125)の値は、重量百分率として示されている。
【0115】
結果は以下の条件に基づくものである。
【0116】
【表8】

【0117】
圧縮機等エントロピー効率は、作動条件における圧縮比の計算された関数であり、S.K.Wang、「Handbook of air conditioning and refrigeration」、2nd ed.McGraw Hill(2000);及び2004 ASHRAE Handbook:HVAC Systems and Equipment中のデータにしたがって決定された。システムは内部熱交換器を有し、蒸発器及び凝縮器は、逆流モードにある。
【0118】
Tevap-outは、蒸発器の出口温度である。Tcomp-outは、圧縮器の出口温度である。Pevapは、蒸発器圧力である。Pcondは、凝縮器圧力である。CAPは能力であり、表8ではR-22、表9ではR-134aそして表10ではR-410Aの能力との関係において表わされている。%-COP/COP-Lは、ローレンツ成績係数との関係における成績係数である。
【0119】
【表9ー1】

【0120】
【表9ー2】

【0121】
【表9ー3】


イ 甲2の記載事項
・「【請求項1】
a.20質量パーセント?25.5質量パーセントのHFO-1234yfと、
b.20質量パーセント?24.5質量パーセントのHFC-32と、
c.24.5質量パーセント?30質量パーセントのHFC-125と、
d.25.5質量パーセント?30質量パーセントのHFC-134aと、
e.約0.0001質量パーセント?約10質量パーセントのトランス-HFO-1234zeと
から本質的になる非引火性冷媒混合物。
・・・
【請求項4】
(i)非引火性冷媒成分と、任意選択で
(ii)非冷媒成分と
からなる組成物であって、前記冷媒成分が請求項1に記載の非引火性冷媒混合物である組成物。
【請求項5】
前記冷媒成分が、
a.23質量パーセント?25.5質量パーセントのHFO-1234yfと、
b.22質量パーセント?24.5質量パーセントのHFC-32と、
c.24.5質量パーセント?27質量パーセントのHFC-125と、
d.25.5質量パーセント?28質量パーセントのHFC-134aと、
e.約0.0001質量パーセント?約5質量パーセントのトランス-HFO-1234zeと
から本質的になる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記非冷媒成分が存在し、潤滑剤、色素(UV色素を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡調節剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記非冷媒成分が、鉱油、アルキル置換芳香族化合物、アルキルベンゼン、合成パラフィンおよびナフテン、ポリ(アルファオレフィン)、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、二塩基酸エステル、ポリエステル、ポリオールエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル、ペルフルオロポリエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、ポリカーボネートおよびこれらの混合物からなる群から選択される潤滑剤である、請求項6に記載の組成物。
・・・
【請求項18】
R-404AおよびR-507からなる群から選択される冷媒を置換するための方法であって、請求項1に記載の冷媒混合物または請求項4に記載の組成物を冷凍装置に充填することを含む方法。」
・「【背景技術】
【0002】
冷凍産業では、過去数十年の間、モントリオール議定書(Montreal Protocol)の結果として段階的に廃止されつつある、オゾン層を破壊するクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替冷媒を見出す努力がなされてきた。ほとんどの冷媒製造業者にとっての解決法は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒の商業化であった。現時点で最も広く使用されている新しいHFC冷媒のHFC-134aはオゾン層破壊係数がゼロであり、従って、モントリオール議定書の結果としての現規制の段階的廃止による影響を受けない。
【0003】
さらなる環境規制により、最終的には、特定のHFC冷媒の世界的な段階的廃止へと至り得る。現在、産業界は、移動空調で使用される冷媒についての地球温暖化係数(GWP)に関する規制に直面している。将来的に規制がより広く適用されれば、例えば固定空調および冷凍システムでは、冷凍および空調産業の全ての分野で使用することができる冷媒に対してさらにより大きい必要性が感じられるであろう。GWPに関連する最終的な規制要件についての不確実性によって、産業界は、複数の候補化合物および混合物を考慮することを強いられている。
【0004】
これまで提案されたHFC冷媒および冷媒ブレンドの代替冷媒としては、HFC-152a、純粋な炭化水素(例えば、ブタンまたはプロパンなど)、または「天然」冷媒(例えば、CO2など)が挙げられる。これらの提案された代替品のそれぞれは毒性、引火性、低エネルギー効率を含む問題を有するか、あるいは大きな装置設計の変更を必要とする。また、とりわけHCFC-22、R-134a、R-404A、R-507、R-407CおよびR-410Aに対して、新しい代替品も提案されている。GWPに関連して最終的にどんな規制要件が採用されるかについての不確実性によって、産業界は、低GWP、非引火性に対する必要性と現存のシステム性能パラメータとのバランスをとる複数の候補化合物および混合物を考慮することを強いられている。
【0005】
テトラフルオロプロペン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタンおよびテトラフルオロエタンを含む特定の組成物は、現在使用されているGWPのより高い冷媒、特にR-404AおよびR507の代替品としてのその使用を可能にする適切な特性を有することが見出された。」
・「【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中の任意選択の非冷媒成分(本明細書では添加剤とも呼ばれる)は、潤滑剤、色素(UV色素を含む)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡調節剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含むことができる。実際には、これらの任意選択の非冷媒成分の多くはこれらのカテゴリーの1つまたは複数に当てはまり、1つまたは複数の性能特性を達成するために役立つ性質を有し得る。
・・・
【0056】
いくつかの実施形態は、1つまたは複数の合成潤滑剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、合成潤滑剤は、アルキル置換芳香族化合物(線状アルキル基、分枝状アルキル基、または線状および分枝状アルキル基の混合物によって置換されたベンゼンまたはナフタレンなどであり、一般的にアルキルベンゼンと称されることが多い)、合成パラフィンおよびナフテン、ポリ(αオレフィン)、ポリグリコール(ポリアルキレングリコールを含む)、二塩基酸エステル、ポリエステル、ポリオールエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル(PVE)、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステル、ポリカーボネートならびにこれらの混合物(この段落で開示される潤滑剤のいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。」
・「【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される冷媒混合物は、特に、中温または低温の冷凍を含む冷凍用途において有用であり得る。中温冷凍システムは、飲料、乳製品、生鮮食品輸送および冷凍を必要とする他の品目のためのスーパーマーケットおよびコンビニエンスストアの冷凍ケースを含む。低温冷凍システムは、スーパーマーケットおよびコンビニエンスストアの冷凍キャビネットおよびディスプレイ、製氷機、ならびに冷凍食品輸送を含む。他の特定の使用は、商業用、工業用または住宅用の冷蔵庫および冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラーおよび冷凍庫、スーパーマーケットのラックおよび分配システム、ウォークインおよびリーチインクーラーおよび冷凍庫、ならびに組み合わせシステムにおけるものであり得る。特に注目すべきは、本発明の組成物を含有する低温冷凍システムである。」
・「【0097】
本明細書に開示される組成物は、R404A(44質量パーセントのR125、52質量パーセントのR143a(1,1,1-トリフルオロエタン)、および4.0質量パーセントのR134aのブレンドに対するASHRAE名称)およびR507(50質量パーセントのR125および50質量パーセントのR143aのブレンドに対するASHRAE名称)を含む現在使用されている冷媒に対する低GWP(地球温暖化係数)代替品として有用であり得る。
【0098】
多くの場合、代替冷媒は、異なる冷媒のために設計された元の冷凍装置において使用可能であれば最も有用である。さらに、本明細書に開示される組成物は、R404AまたはR507のために設計されたいくらかのシステム修正を有する装置において、R404AまたはR507に対する代替品として有用であり得る。さらに、HFO-1234yf、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、および任意選択でHFO-1234zeを含む本明細書に開示される組成物は、HFO-1234yf、HFC-32、HFC-125、HFC-134a、および任意選択でHFO-1234zeを含むこれらの新しい組成物のために特別に修正されるか、あるいは完全にこれらの新しい組成物のために製造された装置において、R404AまたはR507を置換するために有用であり得る。」
・「【0120】
実施例1
蒸気漏出の影響
表示された温度で初期組成物を容器の90%まで充填し、組成物の初期蒸気圧を測定する。初期組成物の50質量パーセントが除去されるまで、温度を一定に保持しながら組成物を容器から漏出させ、その時点で、容器内に残存する組成物の蒸気圧を測定する。蒸気圧の変化は表1に記載される。
【0121】
【表1】

【0122】
本発明によって定義される組成物は、組成物の50%が漏出した後に蒸気圧の変化が10%未満であるため、共沸混合物様であることが分かる。
【0123】
実施例2
引火性
引火性混合物は、ASTM(米国材料試験協会)E681-04に基づき、電子点火源を用いて試験することによって同定され得る。このような引火性試験を冷媒混合物において50パーセント相対湿度で行った。
【0124】
引火限界(flammability boundary)を決定するために、90%の液体が充填された容器について、-36℃(ASHRAE Standard 34において指定されるように泡立ち点よりも10度高い)において液相および蒸気相の両方で、2つの冷媒混合物の引火性を決定した。組成物は、HFO-1234yf/HFC-32/HFC-125/HFC-134aを表2に示される濃度で含有した。
【0125】
【表2】

【0126】
明らかに、約24.5質量パーセントよりも多いHFC-32および約24.5質量パーセントよりも少ないHFC-125を有する組成物は、引火性冷媒に分類されるであろう。
【0127】
実施例3
冷凍性能
表3は、R-404Aと比較して、いくつかの例示的な組成物の性能を示す。表3において、Evap Tempは蒸発器温度であり、Evap Presは蒸発器圧力であり、Cond Presは凝縮器圧力であり、Compr Exit Tempは圧縮器出口温度(圧縮器排出温度と呼ばれることもある)であり、COPは性能係数(エネルギー効率と類似)であり、CAPは冷却容積である。データは以下の条件に基づく。
凝縮器温度 40℃
過冷却量 10K
圧縮器効率は75%である。
【0128】
【表3】

【0129】
結果は、本発明の組成物がR-404Aに匹敵する冷却容量を提示することを示し、このことは、これらの組成物が現存のR-404Aシステムを改造するのに適切であり得るか、あるいは新しい冷凍システムにおいて有用であり得ることも実証する。組成物は、R-404Aよりも高いエネルギー効率も示す。
【0130】
実施例4
冷凍性能
表4は、R404Aおよび比較例(A)および(B)と比較して、いくつかの例示的な組成物の性能を示す。表4において、Evap Presは蒸発器圧力であり、Cond Presは凝縮器圧力であり、Compr Exit Tempは圧縮器出口温度(圧縮器排出温度と呼ばれることもある)であり、COPは性能係数(エネルギー効率と類似)であり、CAPは冷却容積である。データは以下の条件に基づく。
蒸発器温度 -10℃
戻りガス温度 10℃
凝縮器温度 40℃
過冷却量 10K
圧縮器効率は75%である。
【0131】
【表4】

【0132】
結果は、本発明の組成物が、R-404Aに対して改善されたエネルギー効率を提供することを示す。さらに、本発明の組成物は、R-404Aのわずか数パーセント以内の冷却容量を提供する。比較例(B)は他の組成物の冷却容量には程遠いことに注目されたい。また、比較例(A)は同様の冷却性能を提供するが、より高い圧縮器出口温度を示すことにも注目されたい。圧縮器温度がより高いと、圧縮器寿命の低減が予想され、従って、システムの運転コストが増大する。」
ウ 甲3の記載事項(下線は当審が付したもの)
・「【請求項1】
HFO-1234yf、HFC-152a、およびHFC-134a;
HFO-1234yf、HFC-125、およびHFC-152a;
HFO-1234yf、HFC-125、およびHFC-134a;
HFO-1234yf、HFC-32、およびHFC-134a;
HFO-1234yf、HFC-32、HFC-125、およびHFC-134a;
HFO-1234zeおよびHFC-32;
HFO-1234zeおよびHFC-125;
HFO-1234ze、HFC-125、およびHFC-152a;
HFO-1234ze、HFC-125、およびHFC-134a;
HFO-1234ze、HFC-32、およびHFC-134a;ならびに
HFO-1234ze、HFC-32、HFC-125、およびHFC-134a;
を含む組成物からなる群から選択される組成物。
・・・
【請求項3】
約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-152a、および約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-134a;
約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-152a、および約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-125;
約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-125、および約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-134a;
約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約4質量パーセントのHFC-32、および約1質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-134a;
約1質量パーセント?約55重量パーセントのHFO-1234yf、約45質量パーセント?約98質量パーセントのHFC-32、および約1質量パーセント?約55質量パーセントのHFC-134a;
約1質量パーセント?約97質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約97質量パーセントのHFC-134a、約1質量パーセント?約97質量パーセントのHFC-125、および約1質量パーセント?約5質量パーセントのHFC-32;
約1質量パーセント?約35質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約40質量パーセントのHFC-134a、約30?78質量パーセント?約97質量パーセントのHFC-125、および約6質量パーセント?約39質量パーセントのHFC-32;または
約1質量パーセント?約50質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約40質量パーセントのHFC-134a、約1質量パーセント?約50質量パーセントのHFC-125、および約40質量パーセント?約97質量パーセントのHFC-32;
を含む近共沸組成物を含む、請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項8】
鉱油、アルキルベンゼン、合成パラフィン、合成ナフテン、ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、二塩基酸エステル、ポリエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの滑剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
・・・
【請求項11】
R12、R134a、R22、R404A、R407A、R407C、R408A、R410A、R413A、R417A、R419A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R428A、R430A、R434A、R437A、R438A、R502、R507A、R507B、およびR508を使用するシステム、これらを使用したシステム、またはこれらを使用するように設計されたシステムにおいて、R12、R134a、R22、R404A、R407A、R407C、R408A、R410A、R413A、R417A、R419A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R428A、R430A、R434A、R437A、R438A、R502、R507A、R507B、およびR508を置換するための方法であって、請求項1に記載の組成物を該システムに提供することを含む、上記方法。」
・「【0049】
【表1】


・「【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物中の任意的な他の成分(本明細書では、添加剤とも呼ばれる)は、潤滑剤、色素、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサー、ペルフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食および酸化防止剤、金属表面エネルギー低下剤、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、発泡調節剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調整剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の成分を含むことができる。実際には、これらの任意的な他の成分の多くはこれらのカテゴリーの1つまたは複数に当てはまり、1つまたは複数の性能特性を達成するために役立つ性質を有し得る。」
・「【0059】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、鉱油(鉱物起源の油)、合成潤滑剤、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの潤滑剤を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、さらに、鉱油、アルキルベンゼン、合成パラフィン、合成ナフテン、ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、二塩基酸エステル、ポリエステル、ネオペンチルエステル、ポリビニルエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、フッ素化化合物、リン酸エステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの潤滑剤を含む。」
・「【0114】
本明細書に開示される組成物は、R134a(またはHFC-134a、1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、R22(またはHCFC-22、クロロジフルオロメタン)、R404A(44重量パーセントのR125、52重量パーセントのR143a(1,1,1-トリフルオロエタン)、および4.0重量パーセントのR134aのブレンドに対するASHRAE名称)、・・・を含むがこれらに限定されない、現在使用されている冷媒に対する低GWP(地球温暖化係数)代替品として有用であり得る。」
エ 甲4の記載事項
・「【請求項1】
(a)約10重量%?約35重量%のHFC-32;(b)約10重量%?約35重量%のHFC-125;(c)約20重量%?約50重量%のHFO-1234ze、HFO-1234yf、およびこれらの組み合わせ物;ならびに(d)約15重量%?約35重量%のHFC-134a;を含み、ここで該重量%が組成物中の成分(a)?(c)の総重量を基準としている、熱伝達組成物。」
・「【0020】
上記のとおり、本発明の組成物は、達成困難な特性の組み合わせ(特に低GWPを含む)を達成することができる、ということを出願者らは見出した。非限定的な例として、下記の表Aは、HFC-404AのGWP(3922というGWPを有する)と比べて、本発明の特定の組成物によって示されるGWPが実質的に改善されたことを示す。
【0021】
【表1】


・「【0022】
本発明の組成物は、組成物の特定の機能を高めるために、あるいは組成物に特定の機能を付与するために、あるいは場合によっては、組成物のコストを低減させるために、他の成分を含んでよい。例えば、本発明による冷媒組成物(特に、蒸気圧縮システムにおいて使用される冷媒組成物)は、潤滑剤(lubricant)を、一般的には組成物の約30重量%?約50重量%の量、場合によっては約50重量%を超える量で、そして別の場合には約5重量%という少量で含む。本発明の組成物はさらに、潤滑剤の相溶性及び/又は溶解性を高めるために、プロパン等の相溶化剤を含んでよい。プロパン、ブタン、およびペンタンを含めたこのような相溶化剤は、組成物の約0.5重量%?約5重量%の量で存在することが好ましい。米国特許第6,516,837号明細書(該特許文献の開示内容を参照より本明細書に含める)に開示されているように、界面活性剤と可溶化剤との組み合わせ物を本発明の組成物に加えて、油溶性を高めることもできる。一般的に使用されている冷却潤滑剤[例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒と共に冷却機械装置において使用されるポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、PAG油、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼ(AB)、およびポリ(α-オレフィン)(PAO)等]を本発明の冷媒組成物と共に使用することができる。商業的に入手可能な鉱油としては、Witco社から商業的に入手可能であるWitoco LP250(登録商標)、Shrieve Chemical社から市販のZerol 300(登録商標)、Witco社から市販のSunisco 3GS、およびCalumet社から市販のCalumet R015などがある。商業的に入手可能なエステルとしては、ネオペンチルグリコールジペラルゴネート[Emery2917(登録商標)として入手可能〕やHatcol2370(登録商標)などがある。他の有用なエステルとしては、リン酸エステル、二塩基酸エステル、およびフルオロエステルなどがある。幾つかのケースでは、炭化水素油は、ヨードカーボンで構成される冷媒に対して十分な溶解性を有し、ヨードカーボンと炭化水素油との組み合わせ物は、他のタイプの潤滑油より安定であると思われる。したがって、このような組み合わせ物が有利である場合がある。好ましい潤滑油としては、ポリアルキレングリコールとエステルがある。ポリアルキレングリコールは、可動性の空調等の特定の用途に現在使用されているので、特定の実施態様において特に好ましい。当然ながら、異なるタイプの潤滑剤の種々の混合物を使用することができる。
【0023】
本明細書に記載の開示内容を考慮して、当業者によっては、本発明の新規で基本的な特徴を逸脱せずに、本明細書に記載されていない他の添加剤も含めることができる。
熱伝達方法と熱伝達システム
したがって、本発明の方法、システム、および組成物は、さまざまの一般的な熱伝達システムおよび特定の冷却システム[例えば、空調システム(固定空調システムとモバイル空調システムを含む)、冷却システム、およびヒートポンプシステム等]と接続して使用するように調整することができる。特定の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、HFC冷媒(例えばR-404)と共に使用するよう最初に設計された冷却システムにおいて使用される。本発明の好ましい組成物は、R-404Aの望ましい特性の多くを示す傾向があるが、R-404AのGWPより実質的に低いGWPを有すると共に、R-404Aと実質的に同等であるか、あるいはR-404Aに匹敵する容量及び/又は効率、そして好ましくはR-404Aより高い容量及び/又は効率を有する。特に、本発明の組成物の特定の好ましい実施態様は、比較的低い地球温暖化係数(GWP)を示す傾向があり、好ましくは約2500未満であり、さらに好ましくは約2400未満であり、さらに好ましくは約2300以下である、ということを出願者らは認めた。特定の実施態様では、本発明の組成物は、約1500以下のGWPを有し、約1000未満のGWPを有するのがさらに好ましい。
【0024】
他の特定の実施態様では、本発明の組成物は、R-404Aが組み込まれている冷却システム、及び/又は、最初からR-404Aと共に使用するように設計されている冷却システムにおいて使用される。本発明の好ましい冷却組成物は、従来R-404Aと共に使用されている潤滑剤(例えば、鉱油、ポリアルキルベンゼン油、およびポリアルキレングリコール油等)を含む冷却システムにおいて使用することもできるし、あるいは、従来HFC冷媒と共に使用されている他の潤滑剤と共に使用することもできる。本明細書で使用されている「冷却システム」という用語は、一般的には、冷却を実現するために冷媒を使用する任意のシステムもしくは装置、またはこのようなシステムもしくは装置の任意の部位もくしは部分を表わす。このような冷却システムとしては、例えば、空調装置、電気冷蔵庫、および冷却装置(遠心圧縮機を使用する冷却装置を含む)などがある。」
オ 甲5の記載事項
・「【請求項1】
(a)約20重量%?約30重量%のHFC-32;(b)約20重量%?約30重量%のHFC-125;(c)約0重量%?約15重量%のHFO-1234yf、及び約10重量%?約30重量%のHFO-1234ze;(d)約15重量%?約30重量%のHFC-134a;を含み、重量%は組成物中の成分(a)?(d)の合計を基準とするものである熱伝達組成物。」
・「【0019】
熱伝達組成物:
本発明の組成物は、概して、熱伝達用途において用いるように適合させることができ、即ち加熱及び/又は冷却媒体として適合させることができるが、上記において言及したように、中温及び低温冷却システム、及び好ましくはこれまでHFC-404Aを用いていた低温システム、及び/又はこれまでR-22を用いていたシステムにおいて用いるのに特によく適している。」
・「【0023】
上記で言及したように、本出願人らは、本発明の組成物によって、特に低いGWPなどの達成するのが困難な複数の特性の組合せを達成することができることを見出した。非限定的な例の目的で、下表Aに、3922のGWPを有するHFC-404AのGWPと比較した、本発明の幾つかの組成物によって示されるGWPの実質的な向上を示す。
【0024】
【表1ー1】


・「【0025】
本発明の組成物には、組成物の幾つかの機能性を向上させるか又は組成物に幾つかの機能性を与えるか、或いは幾つかの場合においては組成物のコストを減少させる目的のために他の成分を含ませることができる。例えば、本発明による冷媒組成物、特に蒸気圧縮システムにおいて用いるものは、一般に組成物の約30?約50重量%の量、及び幾つかの場合においては、場合によって約50%より多い量、並びに他の場合においては約5%程度の低い量の潤滑剤を含む。更に、本組成物にはまた、潤滑剤の相溶性及び/又は可溶性を促進する目的のために、プロパンのような相溶化剤を含ませることもできる。プロパン、ブタン類、及びペンタン類などのかかる相溶化剤は、好ましくは組成物の約0.5?約5重量%の量で存在させる。米国特許6,516,837(その開示事項を参照として本明細書中に包含する)によって開示されているように、界面活性剤と可溶化剤との組み合わせを本組成物に加えて油溶性を促進させることもできる。ヒドロフルオロカーボン(HFC)冷媒を用いる冷却機械において用いられるポリオールエステル(POE)及びポリアルキレングリコール(PAG)、PAGオイル、シリコーンオイル、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、及びポリ(α-オレフィン)(PAO)のような通常用いられる冷却潤滑剤を、本発明の冷媒組成物と共に用いることができる。商業的に入手できる鉱油としては、WitcoからのWitco LP 250(登録商標)、Shrieve ChemicalからのZerol 300(登録商標)、WitcoからのSunisco 3GS、及びCalumetからのCalumet R015が挙げられる。商業的に入手できるアルキルベンゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。商業的に入手できるエステルとしては、Emery 2917(登録商標)及びHatcol 2370(登録商標)として入手できるネオペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。他の有用なエステルとしては、ホスフェートエステル、二塩基酸エステル、及びフルオロエステルが挙げられる。幾つかの場合においては、炭化水素ベースのオイルはヨードカーボンを含む冷媒と十分な可溶性を有しており、ヨードカーボンと炭化水素オイルとの組み合わせは他のタイプの潤滑剤よりもより安定である可能性がある。したがってかかる組み合わせは有利である可能性がある。好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコール及びエステルが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、自動車空調のような特定の用途において現在用いられているので、幾つかの態様においては非常に好ましい。勿論、異なるタイプの潤滑剤の異なる混合物を用いることができる。」
(2) 甲1?5に記載された発明
ア 甲1発明
甲1の請求項1?4には、熱伝達組成物が記載されている。そして、これらの熱伝達組成物は、甲1の【0019】、【0020】、【0026】?【0031】、【0119】?【0121】の記載からみて、R-22又はR-404Aの代替品として使用することを予定したものであるということができる。
そうすると、甲1には、次の熱伝達組成物(以下、まとめて「甲1発明」という。)が記載されている。
なお、請求項1?4に記載されたジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、それぞれ冷媒番号で表示すると、R32、R125、R134a及びR1234yfとなるから、括弧内に当該冷媒番号を示した。
・「ジフルオロメタン(R32)と、ペンタフルオロエタン(R125)と、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)とを含む、R-22又はR-404Aの代替品として使用するための熱伝達組成物。」
・「重量ベースで1%?97%のジフルオロメタン(R32)と、1%?97%のペンタフルオロエタン(R125)と、1%?97%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と、1%?97%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)とを含む、R-22又はR-404Aの代替品として使用するための熱伝達組成物。」
・「重量ベースで約10%?35%のジフルオロメタン(R32)と、約10%?35%のペンタフルオロエタン(R125)と、約10%?60%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と、約10%?60%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)とを含む、R-22又はR-404Aの代替品として使用するための熱伝達組成物。」
・「重量ベースで約15%?30%のジフルオロメタン(R32)と、約15%?30%のペンタフルオロエタン(R125)と、約15%?40%の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)と、約15%?40%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)とを含む、R-22又はR-404Aの代替品として使用するための熱伝達組成物。」
イ 甲2発明
甲2の請求項1には、次の冷媒混合物(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
・「a.20質量パーセント?25.5質量パーセントのHFO-1234yfと、
b.20質量パーセント?24.5質量パーセントのHFC-32と、
c.24.5質量パーセント?30質量パーセントのHFC-125と、
d.25.5質量パーセント?30質量パーセントのHFC-134aと、
e.約0.0001質量パーセント?約10質量パーセントのトランス-HFO-1234zeと
から本質的になる非引火性冷媒混合物。」
ウ 甲3発明
甲3の請求項3及び【0049】【表1】には、次の組成物(以下、「甲3発明」という。)が記載されている(なお、請求項3の記載には一部誤記がみられるが、【表1】の記載を参酌して正しく理解した。)。
「約1質量パーセント?約35質量パーセントのHFO-1234yf、約1質量パーセント?約40質量パーセントのHFC-134a、約30質量パーセント?約78質量パーセントのHFC-125、および約6質量パーセント?約39質量パーセントのHFC-32を含む組成物。」
エ 甲4発明
甲4の請求項1には、次の熱伝達組成物(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
・「(a)約10重量%?約35重量%のHFC-32;(b)約10重量%?約35重量%のHFC-125;(c)約20重量%?約50重量%のHFO-1234ze、HFO-1234yf、およびこれらの組み合わせ物;ならびに(d)約15重量%?約35重量%のHFC-134a;を含み、ここで該重量%が組成物中の成分(a)?(c)の総重量を基準としている、熱伝達組成物。」
オ 甲5発明
甲5の請求項1及び【表1-1】のA2には、次の熱伝達組成物(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
・「(a)約20重量%?約30重量%のHFC-32;(b)約20重量%?約30重量%のHFC-125;(c)約0重量%?約15重量%のHFO-1234yf、及び約10重量%?約30重量%のHFO-1234ze;(d)約15重量%?約30重量%のHFC-134a;を含み、重量%は組成物中の成分(a)?(d)の合計を基準とするものである熱伝達組成物。」
・「25重量%のHFC-32、25重量%のHFC-125、20重量%のHFC-134a、30重量%のHFO-1234yfからなる熱伝達組成物。」
(3) 甲1発明に基づく新規性進歩性
ア 本件特許発明1について
(ア) 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分から構成されるフッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物である点で一致し、他方、両者は、当該基本4成分から構成されるフッ素化炭化水素の混合物の組成比(R32、R125、R1234yf及びR134aの濃度により画定される領域)が異なる点(ただし、一部重複する部分が存在する。)で相違する。
(イ) 当該相違点について検討する。
甲1発明の実施例(具体例)を記載した甲1の【0027】【表1】などには、x(R32の濃度)=15重量%のときの具体的組成物(R32、R125、R1234yf、R134a=15、25、25、35重量%)などが記載され、これは、本件出願当初の請求項1の混合物2に属していたものであるが、その後の審査過程での補正により(本件件訂正後においても)、当該具体的組成物は、本件特許発明1に属するものではなくなった(本件特許発明1におけるxの範囲は19.7<x<26.5である。)。
また、x=25重量%のときの具体的組成物など、甲1発明の実施例のうち、本件特許発明1のxの範囲に属する他の実施例の組成比は、本件特許発明1が画定する領域からは外れている。
このように、甲1発明の実施例として甲1に記載された具体的組成物には、本件特許発明1が画定する領域に属するものは存在しない。
確かに、甲1発明の具体的組成物が、本件特許発明1(19.7<x<26.5)の混合物4?6に属していないとしても、甲1発明は、xを10≦x≦30などと規定するものであるから、本件特許発明1が規定するxが19.7<x<26.5である場合を排除しているわけではないし、具体的組成物が開示されていない領域が、ただちに甲1発明が内包しない領域となるわけではない。また、本件特許発明1は、GWP、不燃性、及びR22に対する圧縮器出口圧力(吐出圧力)に基づいて上記組成比を画定し、かつ、R32の濃度xを境界値として、各混合物を分類するものであるが、当該境界値及び混合物の分類自体に、特別な意味があるわけではない。さらにいうと、概して、代替冷媒には、低GWP、低ODP、不燃性、低毒性、潤滑剤との混和性といった冷媒一般に求められる要請事項のほかに、既存冷媒の代替(レトロフィット、ドロップイン置換)を可能にするために、代替冷媒の性能パラメーター(CAP、COPなど)や、レトロフィットパラメーター(圧縮器出口圧力(凝縮器圧力)、圧縮器出口温度など)が、既存冷媒と同等又はそれ以上となることが求められており(甲1の【0002】?【0010】、【0067】、【0110】、【0118】?【0121】、甲2の【0002】?【0005】、【0127】?【0132】など)、甲1発明においても、R22の代替冷媒とすることが予定され、GWP、不燃性、及びR22に対する圧縮器出口圧力などの諸要件が、考慮すべき事項として記載されている(甲1の【0002】?【0010】、【0019】、【0020】、【0026】?【0031】、【0041】、【0067】。R404Aの代替についても同様。)。
しかしながら、R22の代替冷媒となるための厳しい要件については知られていても、それらの要件を満たすために、上記基本4成分をどのような構成とするかについては、甲1及びその他の証拠には記載も示唆もされておらず、広範な成分組成の中から、当該要件に合致する代替冷媒を見いだすことは非常に困難であるといわざるを得ない。
そして、本件特許発明1は、GWP、不燃性、及びR22に対する圧縮器出口圧力(吐出圧力)に基づいて当該領域を画定し、かつ、このように画定された領域は、R22の代替冷媒となるために要求される、冷凍能力(CAP)、成績係数(COP)、圧縮器出口温度(吐出温度)などの諸特性に関する要件をも満たすものと認められ(本件特許明細書の【表5-11】?【表5-15】の実験データ、さらには、特許権者が令和元年8月26日に提出した意見書の第11頁に記載された参考図などを参酌した。)、さらに、当該要件を満たす混合冷媒を見いだすことは困難であることが当該技術分野における技術常識であることを斟酌すると、R22の代替冷媒となるための厳しい要件を満たすことができる本件特許発明1は、甲1発明に対して有利な効果を奏するものということができる。
したがって、本件特許発明3は、甲1発明に対して新規性及び進歩性がないとはいえない。
イ 本件特許発明4、7?9、11?17について
本件特許発明4、7?9、11?17は、上記アにおいて検討した本件特許発明1の発明特定事項をすべて具備するものであるから、これらの発明についても、本件特許発明1と同様の理由により、甲1発明に対して新規性及び進歩性がないとはいえない。
(4) 甲2?5発明に基づく新規性進歩性
本件特許発明1、4、7?9、11?17と甲2?5発明とを対比・検討した場合も、上記(3)における甲1発明との対比・検討と状況に変わりはなく、両者は、R32、R125、1234yf及びR134aの基本4成分のみから構成されるフッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物である点で一致し、当該混合物の組成比(R32、R125、R1234yf及びR134aの濃度により画定される領域)が異なる点で相違するところ、甲2?5を子細にみても、甲2?5発明に係る具体例として、本件特許発明1が画定する領域に属するものは存在せず、また、本件特許発明1は、R22の代替冷媒となるための厳しい要件を満たすことができるという、甲2?5発明に対する有利な効果を奏するものであることを斟酌すると、本件特許発明1及びその発明特定事項をすべて具備する本件訂正発明4、7?9、11?17についても、甲2?5発明に対して新規性及び進歩性がないとはいえない。
(5) 取消理由4及び5(新規性進歩性)についてのまとめ
以上検討のとおり、本件特許発明1、4、7?9、11?17は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、同法第113条第2号に該当することを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

5 取消理由6(先願)について
本件訂正により、本件特許発明1、4、7?9、11?17において、先願(特願2016-222802号)に係る発明(別件の異議2018-700428号事件において令和元年8月26になされた訂正後の特許請求の範囲に記載された発明)と重複する部分は存しないものとなった。
したがって、本件特許発明1、4、7?9、11?17は、上記先願に係る発明と同一であるとはいえず、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものではないから、同法第113条第2号に該当することを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

第6 特許異議申立理由について

特許異議申立人が主張する特許異議申立理由のうち、甲1?5を主引例とする特許法第29条第1項及び第2項所定の規定違反(新規性進歩性)並びに同法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件)を理由とするものは、上記取消理由と同旨であり、これらを理由に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことができないことは上述のとおりである。また、特許異議申立人は、請求項10、11の引用請求項に起因する特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件)についても主張するが、当該サポート要件違反は、本件訂正による請求項の削除などにより解消されたものといえる。
したがって、特許異議申立理由によって、本件訂正後の本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すことはできない。

第7 結び

以上のとおり、本件特許1、4、7?9、11?17は、特許法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、同法第29条又は第39条第1項の規定に違反してされたものであるともいえず、同法第113条第2号又は第4号に該当するとは認められないから、上記取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に、本件特許1、4、7?9、11?17を取り消すべき理由を発見しない。
そして、上記第2のとおり、本件訂正により、請求項2、3、5、6、10は削除されたため、これらの請求項に係る特許異議の申立ては、対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 21.6重量%>x>19.7重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.8421x+29.889/-4.2105x+107.75/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.1053x+41.774/-2.1053x+45.474/100-R32-R125-1234yf)、
点Dは、
20.0重量%>x>19.7重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-1.3187x+89.053)
21.6重量%>x≧20.0重量%では、
点D(100-R32-1234yf-R134a/0/-0.0092x^(2)-0.956x+85.484)
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする五角形の範囲(但し、点D、点F’及び線分DF’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 25.0重量%>x≧21.6重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(0.0313x^(2)-2.1315x+43.111/0.1014x^(2)-8.2924x+148.62/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-0.0217x^(2)-0.9308x+48.116/0/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(0.0049x^(2)-2.1762x+58.247/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.0232x^(2)-1.7329x+35.717/0.1309x^(2)-9.4562x+154.58/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲(但し、点C’、点F’及び線分C’F’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物5、並びに
(1)-6 26.5重量%>x≧25.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.6x+24.4/-3.1333x+83.033/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.8667x+57.967/0/100-R32-R125-1234yf)、及び
点I’は、
25.4重量%>x≧25.0重量%では、
点I’(0.9662x-19.12/0/100-R32-R125-1234yf)、
26.5重量%>x≧25.4重量%では、
点I’(x-20.0/0/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする三角形の範囲(但し、点C’、点I’及び線分C’I’上を除く。)に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される一種を含有する組成物(但し、フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、
前記混合物は、R32、R125、1234yf及びR134aのみからなる基本4成分に加えて前記基本4成分とは異なる他の成分を含んでいてもよく、前記混合物中の前記他の成分の含有量は0.5重量%以下であり、
前記混合物に含まれるフッ素化炭化水素の組成比が、R32、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和を100重量%、R32の濃度をx重量%とするとき、R125、1234yf及びR134aの濃度の総和が(100-x)重量%で示される3成分組成図において、
(1)-4 18.1重量%>x≧16.1重量%であり、
(2)-4 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-2.6456x+62.484/0.7929x+29.984/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.4515x+46.075/-2.5842x+61.058/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.3447x+41.226/0.0959x^(2)-5.7176x+82.165/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(0.1044x^(2)-4.7203x+63.337/0.3836x^(2)-18.386x+233.37/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物4、
(1)-5 20.0重量%>x≧18.1重量%であり、
(2)-5 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-1.0442x+33.87/0.2539x^(2)-14.531x+212.38/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.3145x+43.588/-2.4717x+59.031/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.258x+39.651/0.0607x^(2)-4.7348x+75.905/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.8869x+28.126/0.1994x^(2)-11.991x+177.97/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物5、
(1)-6 22.6重量%>x≧20.0重量%であり、
(2)-6 R125、1234yf及び134aの濃度(R125の濃度(重量%)/1234yfの濃度(重量%)/134aの濃度(重量%))が、
点B’(-0.7733x+28.448/0.0598x^(2)-6.503x+129.46/100-R32-R125-1234yf)、
点C’(-1.157x+40.426/-2.1919x+53.439/100-R32-R125-1234yf)、
点F’(-1.1163x+36.822/0.0721x^(2)-5.1875x+80.404/100-R32-R125-1234yf)、及び
点E’(-0.7733x+25.848/0.1578x^(2)-10.613x+167.02/100-R32-R125-1234yf)
を頂点とする四角形の範囲に含まれる組成比を有する混合物6、
からなる群から選択される一種を含有する組成物との重複部分は除く。)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素化炭化水素、R32、R125、R134a及び1234yfを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物であって、前記混合物が、R32、R125、R134a、1234yf及び水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
冷凍機油を含有する、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記冷凍機油が、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
HCFC冷媒であるR22の代替冷媒である、請求項1、4及び7?9のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
トレーサー、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定剤及び重合禁止剤からなる群より選択される少なくとも1種の物質を含む、請求項1、4、7?9及び11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記フッ素化炭化水素の混合物のみからなる、請求項1、4及び7のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、冷凍方法。
【請求項15】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する、冷凍機の運転方法。
【請求項16】
請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物を含む冷凍機。
【請求項17】
冷蔵庫、冷凍庫、冷水機、製氷機、冷蔵ショーケース、冷凍ショーケース、冷凍冷蔵ユニット、冷凍冷蔵倉庫用冷凍機、チラー(チリングユニット)、ターボ冷凍機及びスクリュー冷凍機からなる群から選択される少なくとも1種に使用する、請求項1、4、7?9及び11?13のいずれかに記載の組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-12-23 
出願番号 特願2017-72656(P2017-72656)
審決分類 P 1 651・ 4- YAA (C09K)
P 1 651・ 113- YAA (C09K)
P 1 651・ 537- YAA (C09K)
P 1 651・ 121- YAA (C09K)
P 1 651・ 536- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 木村 敏康
日比野 隆治
登録日 2018-08-17 
登録番号 特許第6384563号(P6384563)
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 フッ素化炭化水素の混合物を含有する組成物及びその応用  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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