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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1359588
異議申立番号 異議2019-700889  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-08 
確定日 2020-02-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6509144号発明「パーゴラ式オーニング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6509144号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6509144号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年3月4日に出願した特願2013-41501号の一部を平成28年2月23日に新たな特許出願として出願したものであって、平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年11月8日に特許異議申立人中川賢治(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明
本件特許の請求項1?5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである.


「【請求項1】
両端が支柱に支持された前後左右の桁フレームを備えるルーフフレームユニットと、両端がスライド手段によって前記左右の桁フレームに沿って移動可能に支持された複数の日除けフレーム及び当該日除けフレームの各間に張られたシート状部材を有する折り畳み式の日除けシートと、前記日除けシートを開閉させる開閉操作手段を備えるパーゴラ式オーニングにおいて、
前記支柱の四方の側面に、前記前後左右の桁フレームまたは連棟する際に追加用の桁フレームを連結可能な連結部が設けられ、
また、前記複数の日除けフレームのうちの前記前の桁フレーム側の日除けフレームが前方に引き出されることによって前記前の桁フレーム側の日除けフレームに続いて前記シート状部材によって連結されている他の日除けフレームのそれぞれが順次引き出され、前記日除けシートが前記ルーフフレームユニットに広げられた全開状態において前記複数のシート状部材のそれぞれが平らに張られ、且つ、前記スライド手段の長さが左右で異なることによって前記シート状部材の左右の高さが変わり傾斜していることを特徴とするパーゴラ式オーニング。
【請求項2】
前記スライド手段は、前記左右の桁フレームに長手方向に沿って設けられたガイドと、前記ガイドに案内されて移動し、前記日除けフレームの端部を支持するスライダを備えることを特徴とする請求項1記載のパーゴラ式オーニング。
【請求項3】
前記左右の桁フレームには、前記ガイドが長手方向に沿って当該桁フレームの左右両側に設けられていることを特徴とする請求項2記載のパーゴラ式オーニング。
【請求項4】
前記開閉操作手段は、前記日除けシートに接続されたロープと、前記ロープを引き回して前記支柱の近傍で垂下させる引き回し手段を備えることを特徴とする請求項1記載のパーゴラ式オーニング。
【請求項5】
前記日除けフレーム及び前記シート状部材は、前記日除けフレームの両端のそれぞれに取り付けられた吊り下げ具を介して前記左右の桁フレームから吊り下げられた状態で開閉することを特徴とする請求項1記載のパーゴラ式オーニング。」


第3 申立理由の概要
本件特許発明1?本件特許発明5は、甲第1号証?甲第4号証に記載の発明に基づいて、又、周知技術を適用することで容易に想到できたものであり、いずれも進歩性を有さず、特許法第29条第2項に違反している。よって、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである(特許異議申立書の第26ページ第20行?第23行。)。

[証拠方法]
1 甲第1号証 : 特開2002-54312号公報
2 甲第2号証 : 実願昭61-048360号(実開昭62-160001号)のマイクロフィルム
3 甲第3号証 : 特許第2512815号公報
4 甲第4号証 : 特開平7-91097号公報


第4 各甲号証の内容
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載(下線は決定で付した。以下同様。)

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パーゴラを備えたテラス、ベランダ、サービスヤード等の住宅の外部に設置する構造物において、パーゴラと開閉しうる日除けを組み合わせて使い勝手をよくした開閉式日除け付き屋外構造物に関する。」

イ 「【0012】図1乃至図3において、住宅の屋外に設置するパーゴラを備えたテラスを示す。図6は同じく別のパーゴラを備えたテラスを示す。図4と図6には日除けテントの場合、図1乃至図3、図5には日除けテントと葦簀(よしず)を一体的とした場合を示す。図において、1はテラス、2はデッキ、3は支柱、4は前面のフエンス、柵、5は上部の木製のパーゴラである。図1乃至図3に示すテラスでは、支柱3をデッキ2の四方に設けてその天井にパーゴラ5が設けられている。実施形態の木製のパーゴラ5は上部の前後の横木6に設けた溝孔6aに複数の縦桟7を所定間隔をおいて嵌合固定されて構成されている。パーゴラ5の構成は、実施形態のものに限定されるものではなく、例えば格子状等としてもよい。このパーゴラには藤などを這わせ日除けとできる。また、テラスの前面に柵を設けた場合を示したが、これに限られるものではなく、図6に示すようにテラスの正面等に格子状のフエンス等を設けることは自由にできる。また、図6に示すテラスでは、支柱3がデッキ2の前面側に設けられ、天井のパーゴラ5がその支柱3と家屋の壁面との間に設けられている。」

ウ 「【0015】前記パーゴラ5の下部に日除けテント11を水勾配、例えば1/10以上の勾配を付けて保持するために、テラスの両側の支柱に前方へ傾斜状にフレーム13が設けられ、両側のフレーム13間に複数のガイド手段16が並行に装架される。フレームの傾斜は水勾配、例えば1/10以上とする。フレーム13はブラケット14とスクリューボルト15で取付けられている。フレームの取付けはこの構造に限られるものではない。
【0016】日除けテント11のガイド手段16としては、ワイヤーロープを用い、両側のフレーム13に所定間隔でワイヤーフック等掛止め金具17が設けられ、掛止め金具17でワイヤーロープ16の両端が固持される。実施形態では、フレームを傾斜状としたが、これに限られるものではなく、フレームは水平として固持金具の取付け位置を後方より前方のものを順に低くして装架するガイド手段を前方ほど低くしてテントに水勾配を付けるようにすることもできる。また、前記ガイド手段16は両側のフレーム間に装架したが、これに限られるものではなく、パーゴラの下面に並行に装架することもできる。ワイヤーは掛止め金具で止めるようにしたが、これに限られるものではなく、ワイヤーを拘持する拘持金具、固定金具等とすることは自由にできる。
【0017】日除けテント11を保持するための懸吊手段18として、図4に示すように日除けテントの袋状部に縫い込んだ芯材12に複数の吊り金具が一定の間隔をおいて取付けられる。この吊り金具18として、例えば、図4、図5に示す丸カンが使用される。丸カン18は下部に芯材12を挟持するグリッププレート18aとワイヤーロープ16に吊設する吊環18bとからなり、グリッププレート18aで芯材が挟持されてネジで締付け固定される。日除けテント11は、芯材12を入れた袋とじ部11aの辺を複数の丸カン18のグリッププレート18aで拘持し、かつその吊環18bが前記ワイヤーロープ16に移動自由に吊設され、該日除けテント11は左端が側方のフレーム13又は上部のパーゴラにロープ等で止められ、右端は開閉自由な自由端とされ、この自由端の芯材に開閉手段20が関連して設けられる。従って、開閉用ワイヤー21により日除けテント11を随意に屏風形式に開閉することができる。
【0018】日除けテント11を開閉する開閉手段20として、開閉用ワイヤー21の中途を日除けテント11の自由端側の芯材12にクリップ等止め金具19により拘持し、開閉ワイヤー21は両側のフレーム13に取り付けた滑車22、支柱とパーゴラの隅角に備えた滑車23等を介して支柱3に沿わせてワイヤーの両端を支柱或いはデッキに備えたロープテンションセット(手動ロープ式)25の滑車24に掛けるように設け、該開閉ワイヤー21の操作により横方向に屏風式に開閉できるようにする。ロープテンションセット25は滑車24にバネ等の付勢手段で張力を掛ける装置で、支柱或いはデッキに設けられる。ワイヤーは任意の開閉位置でワイヤーを縛ったり、留め具等で止めることができるようにする。而して、開閉用ワイヤー21はロープテンションセットでワイヤー21を手動等により一方向へ引くことにより日除けテントは芯材を辺として屏風式に開き、かつ反対方向へ引くことにより日除けテントを閉じる。」

エ 図1

オ 図2

カ 図4

キ 上記ウに摘記した記載を踏まえると、図1及び2からは、フレーム13が、左右の横木6に直交して両側に設けられた点が看取される。

ク 上記ウに摘記した記載を踏まえると、図4からは、日除けテント11が、並行に複数設けられた芯材12の各間に張られた点が看取される。

(2)甲第1号証に記載された発明

上記(1)を踏まえると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「支柱をデッキの四方に設けてその天井にパーゴラが設けられ、
パーゴラは上部の前後の横木に設けた溝孔に複数の縦桟を所定間隔をおいて嵌合固定されて構成され、
パーゴラの下部に日除けテントを水勾配を付けて保持するために、両側の支柱に、左右の横木に直交して、前方へ傾斜状にフレームが設けられ、両側のフレーム間に並行に装架される複数のガイド手段としては、ワイヤーロープを用い、両側のフレームに所定間隔でワイヤーフック等掛止め金具が設けられ、掛止め金具でワイヤーロープの両端が固持され、日除けテントの袋状部に芯材を縫い込んで、日除けテントが、並行に複数設けられた芯材の各間に張られ、日除けテントを保持するための懸吊手段として、芯材に複数の吊り金具が一定の間隔をおいて取付けられ、この吊り金具として使用される丸カンは下部に芯材を挟持するグリッププレートとワイヤーロープに吊設する吊環とからなり、日除けテントは、芯材を入れた袋とじ部の辺を複数の丸カンのグリッププレートで拘持し、吊環が前記ワイヤーロープに移動自由に吊設され、日除けテントは左端が側方のフレーム又は上部のパーゴラにロープ等で止められ、右端は開閉自由な自由端とされ、
この自由端の芯材に開閉手段が関連して設けられ、開閉手段として、開閉用ワイヤーの中途を日除けテントの自由端側の芯材にクリップ等止め金具により拘持し、開閉ワイヤーは両側のフレームに取り付けた滑車、支柱とパーゴラの隅角に備えた滑車等を介して支柱に沿わせてワイヤーの両端を支柱或いはデッキに備えたロープテンションセットの滑車に掛けるように設け、開閉ワイヤーの操作により日除けテントを横方向に屏風式に開閉できるようにした、
パーゴラと開閉しうる日除けを組み合わせて使い勝手をよくした開閉式日除け付き屋外構造物。」

2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載

ア 「この考案は車庫、自転車置場、テラス、通路等に適する組立式雨避け構造物に関するものであり、特に支柱に対する桁及び梁の結合構造を改善して連棟タイプの構造物における組立作業の省力化を図ったものである。」(第1ページ下から4行?第2ページ第1行)

イ 第3図

ウ 第4図


3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載

ア 「「発明の効果」
本発明の建物構築方法(請求項記載の方法)によれば、自転車置場その他の雨除け用上屋を建築する場合に、敷地の狭い所では基本棟体1棟を構築して使用に供せられ、敷地の広さと平面形状に応じて基本棟体を単数又は複数追加連結して増築することが容易であり、又連棟体の連結方法も前後、左右に連設できるだけでなく各隅部で連結することにより斜め方向へも連設でき、敷地の広さに従って組合せの設計変更を行い適宜な形と広さの上屋を構築することができ、無制限に増築可能である。」(第6欄下から2行?第7欄第9行)

イ 第13図

ウ 第15図


4 甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載

ア 「【発明の名称】立体駐車場の屋根床版及びその排水システム」(第1ページ下から16行)

イ 図16

ウ 図22



第5 判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比

ア 甲1発明における、「支柱」、「日除けテント」、「芯材」、「前後」、「前後の横木」、「パーゴラと開閉しうる日除けを組み合わせて使い勝手をよくした開閉式日除け付き屋外構造物」は、それぞれ、本件発明1における、「支柱」、「シート状部材」、「日除けフレーム」、「左右」、「左右の桁フレーム」、「パーゴラ式オーニング」に相当する。

イ 甲1発明において、「パーゴラ」は、「上部の前後の横木に設けた溝孔に複数の縦桟を所定間隔をおいて嵌合固定されて構成され」たものであるところ、「前後の横木」、及び、「横木に設けた溝孔」に「所定間隔をおいて嵌合固定され」た「複数の縦桟」は、合わせて、本件発明1の「前後左右の桁フレーム」に相当し、甲1発明において、「前後の横木」及び「複数の縦桟」(前後左右の桁フレーム)により構成される前記「パーゴラ」が、「支柱」の「天井」に「設けられ」たことと、本件発明1の「前後左右の桁フレーム」の「両端が支柱に支持された」こととは、「前後左右の桁フレーム」が「支柱」に「支持され」た点で共通する。

ウ 甲1発明において、「支柱」と、当該「支柱」の「天井に設けられ」、「上部の前後の横木」(桁フレーム)に「設けた溝孔」に「複数の縦桟」(桁フレーム)を「所定間隔をおいて嵌合固定されて構成され」た「パーゴラ」とは、合わせて、本件発明1の「ルーフフレームユニット」に相当する。

エ 甲1発明における、「両側のフレーム間に並行に装架される複数のガイド手段」としての「ワイヤーロープ」と、「日除けテントを保持するための懸吊手段」としての「複数の吊り金具」とは、合わせて、本件発明1の「スライド手段」に相当する。

オ 甲1発明は、「左右の横木に直交し」て「両側」に「設けられ」た「フレーム」「間」に「並行に装架される」ように「複数」の「ガイド手段として」の「ワイヤーロープ」の両端を「固持」し、「下部に芯材を挟持するグリッププレートとワイヤーロープに吊設する吊環とからな」る「吊り金具」を、「芯材に」、「一定の間隔をおいて取付け」て、「日除けテントを横方向に屏風式に開閉できるようにした」ものであるところ、芯材(日除けフレーム)はワイヤーロープと直交し、前記ワイヤーロープはフレームと直交し、前記フレームは前後の横木(左右の桁フレーム)と直交することとなるから、吊り金具による芯材(日除けフレーム)の移動可能な方向は、「前後の横木」(左右の桁フレーム)に「沿っ」たものになる。また、吊り金具は、芯材(日除けフレーム)に一定の間隔をおいて取り付けられるから、吊り金具の取り付けは芯材(日除けフレーム)の複数箇所において行われ、当該複数箇所のうちの「両端」に位置する吊り金具が取り付けられる芯材の位置は、芯材の「両端」であるということができる。そして、甲1発明の「吊り金具として使用される丸カンは下部に芯材を挟持するグリッププレートとワイヤーロープに吊設する吊環とからなり、日除けテントは、芯材を入れた袋とじ部の辺を複数の丸カンのグリッププレートで拘持」するから、吊り金具は芯材を支持するといえる。そうすると、甲1発明は、本件発明1と同様に、「両端がスライド手段によって左右の桁フレームに沿って移動可能に支持された複数の日除けフレーム」の構成を備えたものであるといえる。

カ 甲1発明において、「日除けテント」(シート状部材)は、「並行に複数設けられ」た「芯材」(日除けフレーム)の「各間に張られ」たものであり、また、「日除けテント」(シート状部材)は「屏風式に開閉できる」ものであるから、当該「日除けテント」(シート状部材)と、「芯材」(日除けフレーム)とは、合わせて、本件発明1の「複数の日除けフレーム及び当該日除けフレームの各間に張られたシート状部材を有する折り畳み式の日除けシート」に相当する。

キ 甲1発明が、「開閉ワイヤーの操作により日除けテントを横方向に屏風式に開閉できるようにし」た「開閉手段」を設けたものであることは、本件発明1が、「日除けシートを開閉させる開閉手段を備える」ことに相当する。

ク 甲1発明の「開閉手段」は、「日除けテント」の「右端」の「開閉自由な自由端」の「芯材」に関連して設けられ、「開閉用ワイヤーの中途を日除けテントの自由端側の芯材にクリップ等止め金具により拘持し」て、「開閉ワイヤーの操作により日除けテントを横方向に屏風式に開閉できるようにした」ものであるから、甲1発明が、本件発明1と同様に、「複数の日除けフレームのうちの前の桁フレーム側の日除けフレームが前方に引き出されることによって前記前の桁フレーム側の日除けフレームに続いてシート状部材によって連結されている他の日除けフレームのそれぞれが順次引き出され」る構成を備えていることは明らかである。

ケ 甲1発明は、「前方へ傾斜状にフレームが設けられ、両側のフレーム間に並行に装架される複数のガイド手段としては、ワイヤーロープを用い、両側のフレームに所定間隔でワイヤーフック等掛止め金具が設けられ、掛止め金具でワイヤーロープの両端が固持され、・・・日除けテントが、並行に複数設けられた芯材の各間に張られ、日除けテントを保持するための懸吊手段として、芯材に複数の吊り金具が一定の間隔をおいて取付けられ、この吊り金具として使用される丸カンは下部に芯材を挟持するグリッププレートとワイヤーロープに吊設する吊環とからな」る構成を備えたものであり、また、甲1発明における「前後」が、本件発明1の「左右」に相当することは上記アで述べたとおりであるところ、甲1発明において、フレームを「前方」(本件発明1における左右方向に対応)に、「傾斜状に」設けることにより、日除けテント(シート状部材)が、本件発明1と同様に、「左右の高さが変わり傾斜」する構成となることは明らかである。

コ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点1ないし4で相違する。

(一致点)
「支柱に支持された前後左右の桁フレームを備えるルーフフレームユニットと、両端がスライド手段によって前記左右の桁フレームに沿って移動可能に支持された複数の日除けフレーム及び当該日除けフレームの各間に張られたシート状部材を有する折り畳み式の日除けシートと、前記日除けシートを開閉させる開閉操作手段を備えるパーゴラ式オーニングにおいて、
また、前記複数の日除けフレームのうちの前記前の桁フレーム側の日除けフレームが前方に引き出されることによって前記前の桁フレーム側の日除けフレームに続いて前記シート状部材によって連結されている他の日除けフレームのそれぞれが順次引き出され、前記シート状部材の左右の高さが変わり傾斜しているパーゴラ式オーニング。」

(相違点1)
支柱による、前後左右の桁フレームの支持が、本件発明1では、桁フレームの「両端」でなされているのに対し、甲1発明は、桁フレームの「両端」でなされていない点。

(相違点2)
本件発明1は、「支柱の四方の側面に、前後左右の桁フレームまたは連棟する際に追加用の桁フレームを連結可能な連結部が設けられ」た構成を備えているのに対し、甲1発明は、当該構成を備えていない点。

(相違点3)
本件発明1は、「日除けシートがルーフフレームユニットに広げられた全開状態において複数のシート状部材のそれぞれが平らに張られ」たものであるのに対し、甲1発明は、全開状態において「シート状部材のそれぞれが平らに張られ」るものであるのかどうかが明らかでない点。

(相違点4)
シート状部材の左右の高さが変わり傾斜させることを、本件発明1では、「スライド手段の長さが左右で異なること」により行っているのに対し、甲1発明では、ワイヤーロープの両端を固持したフレームを「傾斜状」に設けることにより行っている点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑みて、まず、相違点4について検討する。
甲1発明は、ワイヤーロープの両端を固持したフレームを、「傾斜状」に設けることにより、一定の間隔をおいてワイヤーロープに吊設した複数の吊り金具で保持する「日除けテント」(シート状部材)の左右の高さを変えて傾斜させているところ、甲第1号証には、「日除けテント」(シート状部材)を保持するための懸吊手段としての複数の吊り金具について、長さを「左右で異な」らせたり、長さが「左右で異な」る若しくは「左右で異な」らせることを可能とした吊り金具を用意して、ワイヤーロープの左右の並びを水平にすることが、記載も示唆もされていない。
そして、「日除けテント」(シート状部材)の左右の高さを変えて傾斜させるために、傾斜状に設けたフレームに固持することにより左右に傾斜状に配置されることとなったワイヤーロープに、それぞれが同じ長さである吊り金具を取り付けることに換えて、それぞれの長さが「異な」る若しくは「異な」らせることを可能とした吊り金具を予め用意して、当該吊り金具を、懸吊する日除けテント(シート状部材)が所望の傾斜となるように適した配置とすることは、当業者といえども、甲第1号証の記載に基づいて容易に想起しうるものではない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものではない。
また、甲第2号証ないし甲第4号証にも、相違点4に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立人の主張について
上記相違点2について、申立人は以下を主張する。
「エ 相違点○2について(当審注:○2は、丸数字の2を示す。以下同様。また、相違点○2は本決定における相違点2に相当する。)
相違点○2については、要するに、前記シート状部材の左右の高さを変えて傾斜させる具体的な方法について、本件特許発明1は、スライド手段の長さを変更しているのに対し、甲1発明は、スライド手段の位置を変更している点で異なる。
もっとも、左右の高さを変えるために、スライド手段の長さを変更するか、それとも位置を変更するかは、具体的技術の適用において当業者が適宜設計すべき事項であり、技術的意義のある相違とはいえず、当業者が容易に想到できる事項である。
具体的に説明すると、記載事項1-4には、以下の2通りの方法によって、日除けテント11(シート状部材)の左右の高さを変えて傾斜させていることが開示されている。
(実施形態)
ワイヤーフックを固定しているフレームを斜めにする方法
・・・(実施形態についての図を省略)・・・
(変形例)
フレームに対して、ワイヤーフックを斜めに取り付ける方法
・・・(変形例についての図を省略)・・・
そうであるならば、フレームに対してワイヤーフックを水平に取り付けつつ、かつ、フレームも水平にしながらも、懸吊手段の長さを調整して斜めに取り付ける方法も、具体的技術の適用において、当業者が容易に想到できるといえる。
・・・(図を省略)・・・
更に、本件明細書の段落【0063】には、『日除けシート4を左右に傾斜させる手段としてはこれには限られない』と記載されており、本件明細書自身も、左右に傾斜させることには技術的意義があるが、それを実現する手段には格別な技術的意義がないことを認めている。
また、本件特許発明1も甲1発明も、上記相違点○2による構成によって、水勾配を付けるようにしている点で、得られる効果も全く同一である(本件明細書の段落0063?0065、及び記載事項1-4参照)。
以上からすると、上記相違点○2は、甲1発明をもとに、設計事項として周知技術を適用することで当業者が容易に想到できる事項といえる。」(特許異議申立書の第21ページ下から2行?第23ページ下から7行)
しかしながら、「日除けテント」(シート状部材)の左右の高さを変えて傾斜させるために、傾斜状に設けたフレームに固持することにより左右に傾斜状に配置されることとなったワイヤーロープに、それぞれが同じ長さである吊り金具を取り付けることに換えて、それぞれの長さが「異な」る若しくは「異な」らせることを可能とした吊り金具を予め用意して、当該吊り金具を、懸吊する日除けテント(シート状部材)が所望の傾斜となるように適した配置とすることが、当業者といえども、甲第1号証の記載に基づいて容易に想起しうるものではないことは、上記(2)で述べたとおりである。
このことは、特許異議申立書において「変形例」として説明される、フレームに対してワイヤーフックを斜めに取り付けて、水平なフレームにワイヤーロープを左右に傾斜状に配置したものをもとにしたとしても同様である。
また、特許異議申立書において「実施形態」として説明される、ワイヤーフックを固定しているフレームを斜めにしたものにおいては、ワイヤーフックの左右の並びとフレームの上辺とが平行状態にあるものの、この「実施形態」に、フレームに対してワイヤーフックを斜めに取り付ける「変形例」の如くの、フレームを水平にした態様を適用するにあたって、ワイヤーフックの左右の並びとフレームの上辺との平行状態に変更を加えないままで、吊り金具のそれぞれの長さについてのみ、日除けテントが傾斜状になるべく変更を加えることも、甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に想起しうるものであるとはいえない。

そうすると、申立人の上記主張には理由がない。

2 本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし5は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反したものではない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-01-23 
出願番号 特願2016-31783(P2016-31783)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 津熊 哲朗金高 敏康  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 小林 俊久
秋田 将行
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6509144号(P6509144)
権利者 タカノ株式会社
発明の名称 パーゴラ式オーニング  
代理人 村瀬 一美  

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