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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1359589
異議申立番号 異議2019-700757  
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-20 
確定日 2020-01-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6505814号発明「血管腔内治療装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6505814号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6505814号(以下「本件特許」という。)の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成29年11月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年2月28日 米国 2008年7月8日 米国 2008年10月13日 米国 2009年2月27日 米国)を国際出願日とする特願2010-548940号の一部を平成29年11月16日に新たな特許出願としたものであって、平成31年4月5日にその特許権の設定登録がされ、平成31年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和元年9月20日に特許異議申立人 平田武信(以下「申立人」という。)より、特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
本件特許の請求項1?16の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
血管を収縮させる放射線を射出する放射線源に光学的に接続可能な一端部と、前記血管内に受容可能な他端部とを含む可撓性導波管と、
前記可撓性導波管の前記他端部に固定され、先端が丸まった形状の被覆物と、を備え、
前記可撓性導波管の前記他端部は、前記被覆物により気体とともに封止された、前記放射線を射出する放射線射出表面を備え、
前記放射線射出表面は、前記放射線を側方かつ環状に出射する実質的円錐体形状に形成されており、
前記放射線は前記可撓性導波管の開口数によって画定される円弧状に拡大する、
ことを特徴とする血管腔内治療装置。
【請求項2】
前記放射線源をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の血管腔内治療装置。
【請求項3】
前記放射線射出表面は、前記可撓性導波管の長軸に対して、鋭角に方向づけられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の血管腔内治療装置。
【請求項4】
前記放射線射出表面は、前記可撓性導波管の前記他端部を画定している、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項5】
前向きに向けられる前記放射線を前記可撓性導波管の側方に反射するため、前記放射線射出表面と間隔を空け対面している反射表面をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項6】
前記反射表面は側方かつ環状に前記放射線を反射する、
ことを特徴とする請求項5に記載の血管腔内治療装置。
【請求項7】
前記反射表面は、実質的凸形状である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の血管腔内治療装置。
【請求項8】
前記被覆物は、前記放射線射出表面からの前記放射線が透過するキャップである、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項9】
前記血管内の温度をモニタリングし、そこで示すシグナルを伝達するための、前記可撓性導波管の遠位の領域と熱的に連結されている温度センサと、
そこでの前記放射線源のパワー出力を調整するための、前記温度センサと電気的に連結されているコントロールモジュールとをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項10】
前記可撓性導波管に脱離可能に連結されており、前記血管を通って前記可撓性導波管を導くため、前記可撓性導波管の前記他端部を越えて遠位に延長している遠位部分を含むガイドワイヤをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項11】
前記可撓性導波管の末端部に堅固に固定され、そこから遠位に延長しているガイドワイヤをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項12】
前記ガイドワイヤは、前記被覆物に堅固に固定され、それよりも遠位に延長している、
ことを特徴とする請求項11に記載の血管腔内治療装置。
【請求項13】
前記可撓性導波管は、光ファイバーである、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項14】
前記放射線源は、10W以下のパワーにおいて、1470nmおよび1950nm±30nmの少なくとも一つのレーザー放射線を射出し、
前記可撓性導波管の前記一端部は、前記放射線源と光学的に連結されており、
前記可撓性導波管の前記放射線射出表面は、周囲の脈管壁上へ、環状に前記放射線を射出する、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。
【請求項15】
前記可撓性導波管に推進可能に連結され、平均で30J/cm未満の前記血管の血管壁へのエネルギー伝達率でレーザー放射線を伝達する間に、前記血管を通って前記可撓性導波管を引き戻せるよう構成されている、電気プルバック装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記可撓性導波管に前記放射線射出表面から長軸方向に間隔を空けて形成され、側方に前記放射線を射出する側方放射線射出部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の血管腔内治療装置。」

3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として米国特許第5537499号明細書(以下「甲1」という。)並びに従たる証拠として米国特許第5242438号明細書(以下「甲2」という。)、特表2006-507046号公報(以下「甲3」という。)、米国特許第5029588号明細書(以下「甲4」という。)及び特開昭62-170263号公報(以下「甲5」という。)を提出し、本件特許の請求項1?16に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、それらの特許は取り消されるべきものである旨主張する。

4 甲各号証の記載事項
(1)甲1には、「The invention relates to medical devices used for treating a human body with laser energy transmitted through an optical fiber.」(カラム1 第6-8行参照。)(和訳「本発明は、光ファイバーを介して伝送されるレーザエネルギーで人体を治療するために使用される医療機器に関する。」和訳については、申立人が特許異議申立書に添付した抄訳文を参照した(以下同様。)。)、「The probe incorporates fresnel light reflections from the optical fiber and air interface laterally into the fiber and capsule enclosing the end of the fiber without secondary light reflections and refractions.」(カラム1 第37-40行参照。)(和訳「プローブは、光ファイバからのフレネル光の反射、ファイバの横方向の空気界面、及び二次的な光の反射と屈折なしにファイバの端を囲むカプセルを組み込む。」)、「The probe is usable for therapeutic procedures, such as endoscopic surgery and diagnostic procedures.」(カラム1 第42-44行参照。)(和訳「このプローブは、内視鏡手術や診断処置などの治療処置に使用できる。」)、「The distal end of the optical fiber including the inclined surface or coating materials is located in a sealed air chamber provided by a tip or capsule surrounding the end of the optical fiber. A portion of the distal end of the optical fiber opposite the inclined surface is united with heat to the capsule. The heat melts adjacent portions of the fiber and capsule to fuse them together. This eliminates the fiber-air-capsule interfaces that result in undesirable reflected light.」(カラム1 第53-60行参照。)(当審訳「傾斜した表面又は被覆材料を含む光ファイバの遠位端は、光ファイバの端部を包囲する先端部またはカプセルにより提供される密閉された空気室内に配置されている。光ファイバの遠位端の傾斜面と反対側の部分がカプセルに熱結合されている。熱は、光ファイバとカプセルの隣接部分を溶融してそれらを互いに融合させる。これは、望ましくない反射をもたらす光ファイバやカプセルと空気との界面を除去する。」)、「Probe 413 has an elongated flexible optical fiber 417 terminating ina recessed inclined cone-shaped surface 418.」(カラム9 第7-9行参照。)(和訳「プローブ413は、端末に傾斜して凹んだ円錐形表面418を有する細長い柔軟な光ファイバ417を有する。」)、「Surface 418 has a generally recessed cone-shaped polished shape.」(カラム9 第11-12行参照。)(和訳「表面418は、ほぼ凹んだ円錐形の研磨された形状を有する。」)、「Surface 418 is inclined forwardly at an angle of 37 degrees relative to the longitudinal axis of fiber 417.」(カラム9 第19-21行参照。)(和訳「表面418は、ファイバ417の長さ方向の軸に対して37度の角度で前方に傾斜している。」)、「When the angle of surface 418 is 37 degrees, the reflected light will emerge at approximately 70 degrees in air with an associated divergence.」(カラム9 第21-24行参照。)(和訳「表面418の角度が37度である場合、反射光は、関連する発散を伴う空気中に約70度で射出する。」)、「A transparent capsule or tubular member 422 having a closed convex curved end 423 is located about the distal end of fiber 417 to enclose the distal end of fiber 417 within a gas chamber 424. The gas is air. The distal end of fiber 417 is surrounded by chamber 424 and spaced from the inside of end 423.」(カラム9 第28-33行参照。)(和訳「透明なカプセル又は封止された凸状の湾曲した端部423を有する管状部材422が、ファイバ417の遠位端の周りに配置されて、ガスチャンバ424内にファイバ417の遠位端を囲む。ガスは空気である。ファイバ417の遠位端は、チャンバ424によって囲まれ、端部423の内側からは間隔が空けられている。」)、「The distal end of fiber 417 is united at 425 to the inside annular wall of tubular member 422. The silica materials of fiber 417 and tubular member 422 are fused with localized heat. As shown in FIG. 28, the heat required to cause the fusion of the silica materials of fiber 417 and tubular member 422 is supplied by a laser 432 which generates a laser beam 427. Laser beam 427 is directed through an optical lens 428 which concentrates the laser beam 427 on the surface of tubular member 422 opposite surface 418. A second laser 435 generating a laser beam 433 is used to unite the silica material in area 436.」(カラム9 第36-46行参照。)(和訳「ファイバ417の遠位端は、425で管状部材422の内周壁に結合される。ファイバ417及び管状部材422のシリカ材料は、局所的な熱で融合される。図28に示されるように、ファイバ417と管状部材422のシリカ材料の融合を引き起こすのに必要な熱は、レーザ光427を生成するレーザ432によって供給される。レーザ光427は、レーザ光427を集光する光学レンズ428を通して、表面418とは反対側の管状部材422の表面上に照射される。レーザ光433を生成する第2のレーザ435は、領域436のシリカ材料を結合させるために使用される。」)、「Probe 433 is made by providing an elongated optical fiber adapted to be coupled to a laser used to direct a laser beam or light along the fiber.」(カラム9 第58-60行参照。)(和訳「プローブ433は、ファイバに沿ってレーザ光又は光を照射するのに使用されるレーザに結合されるように適合された細長い光ファイバが用いられて構成されている。」)、「A tubular member 422, having a closed end 423 and air chamber 424,is provided to accommodate and support the distal end of fiber 417. The distal end of fiber 417 is inserted through the open end of tubular member 422 into air chamber 424. Tubular member 422 is then secured to sleeve 421 with surface 418 spaced from the closed end 423 of member 422.」(カラム10 第5-11行参照。)(和訳「封止端423及びエアチャンバ424を有する管状部材422は、ファイバ417の遠位端を収容するとともに、支持するために設けられる。ファイバ417の遠位端は、管状部材422の開口端を通してエアチャンバ424に挿入される。そして、管状部材422は、部材422の封止端423から離間した表面418でスリーブ421に固定される。」)、及び「Referring to FIGS. 32 and 33, light or laser beam 430 generated by a laser axially propagates down fiber 417. When light 430 encounters a change in refractive index, it redirects the light energy laterally of the longitudinal axis of fiber 417 indicated by arrows 431. The angle of polished surface 418 being 37 degrees relative to the longitudinal axis of fiber 417 results in almost total internal reflection of light 430 as redirected light 431 at an angle of approximately 70 degrees relative to the longitudinal axis of fiber 417. Light 431 is efficiently redirected laterally through the distal end of fiber 417,the fused area 425 and member 422. Light 431, as seen in FIG. 33, is directed laterally 360 degrees around probe 413.」(カラム10 第33-45行参照。)(和訳「FIG.32及び33を参照すると、光又はレーザから照射されるレーザ光430は、ファイバ417を軸方向に伝搬する。光430が屈折率の変化に遭遇すると、矢印431で示されるファイバ417の長さ方向の軸の横方向に光エネルギーの方向を変える。ファイバ417の長さ方向の軸に対して37度である研磨面418の角度は、ファイバ417の長さ方向の軸に対して約70度の角度の方向転換光431として、光430のほぼ全反射をもたらす。光431は、ファイバ417の遠位端、融着領域425、及び部材422を通って横方向に効率的に方向転換される。光431は、FIG.33に見られるように、プローブの周りに360度横方向に射出される。」)と記載されている。
また、FIG.32及び33から、その円錐体形状の表面418で、光が側方かつ環状に反射することが看取できる。

また、FIG.1から、光ファイバ11はその一端部を介してレーザ15に結合されることが看取できる。

これらの記載等より、以下のa?dのことがいえる。
a 甲1に記載された技術的事項は、光ファイバを介して伝送されるレーザ光で人体を治療するために使用される医療機器に関するものであり、当該医療機器は、内視鏡手術などの治療処理に使用される。
b 該医療機器は、レーザ光を照射するのに使用されるレーザにその一端部を介して結合され、傾斜して凹んだ円錐形表面418を遠位端に有する光ファイバ417と、ファイバ417の円錐形表面418の周りに配置されて、ガスチャンバ424内にファイバ417の遠位端を囲む凸状の湾曲した端部423を有する管状部材422とを有する。
c 光ファイバの遠位端は、光ファイバの端部を包囲する先端部により提供される密閉された空気室内に配置され、光ファイバの遠位端の円錐形表面418と反対側の部分が融着領域425で管状部材422の内周壁に熱融着されることにより、望ましくない反射をもたらす光ファイバと空気との界面が除去されている。
d 円錐形表面418は、方向転換光431として、レーザから照射されるレーザ光430のほぼ全反射をもたらす反射表面であり、該光431は、ファイバ417の遠位端、融着領域425、及び管状部材422を通って横方向に方向転換され、360度横方向に射出される。

上記a?dを総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「光ファイバを介して伝送されるレーザ光で人体を治療するために内視鏡手術などの治療処理で使用される医療機器であって、
ファイバに沿ってレーザ光を照射するのに使用されるレーザにその一端部を介して結合されるように適合され、
傾斜して凹んだ円錐形表面418を遠位端に有する光ファイバ417を有し、
光ファイバの遠位端は、光ファイバの端部を包囲する、凸状の湾曲した端部423を有する管状部材422により提供される密閉された空気室内に配置され、
望ましくない反射をもたらす光ファイバと空気との界面を除去するために、光ファイバの遠位端の円錐形表面418と反対側の部分が融着領域425において管状部材422の内周壁に熱融着されており、
円錐形表面418は、方向転換光431として、レーザから照射されるレーザ光430のほぼ全反射をもたらす反射表面であり、
レーザ光431は、ファイバ417の遠位端、融着領域425、及び管状部材422を通って横方向に方向転換され、360度横方向に射出される
医療機器。」

(2)次に、甲2には、「The fiber terminates in an energy delivery surface for emitting laser radiation transmitted by the fiber. The radiation is intercepted at a location axially aligned with the energy delivery surface and is reflected in a beam radiating substantially transversely of, and substantially circumferentially around, the axis.」(アブストラクト 第6-11行参照。)(和訳「ファイバは、ファイバによって伝送されたレーザ放射を放出するためのエネルギー供給面を終端とする。放射は、エネルギー伝達表面と軸方向に位置合わせされた位置で遮断され、軸の実質的に横方向及び実質的に円周方向に放射されるビームで反射される。放射を反射するための反射部材又はブロックが提供され、軸に沿った選択された軸位置でカテーテルの開口端に取り付けられる。」)と記載されている。また、甲2のFIG.1及び4から、光ファイバ120のエネルギー射出面131に対向して反射部材164の円錐状反射表面178が配置され、光ファイバ120のエネルギー射出面131からの光が、反射部材164の円錐状反射表面178で反射し、その反射光166が側方かつ環状に射出することが看取できる。

これらの記載等を総合すると、甲2には、「光ファイバ120を備えた治療装置であって、前向きに向けられる光を光ファイバ120の側方に反射するため、光ファイバ120のエネルギー射出面131と間隔を空け対面している反射部材164の円錐状反射表面178を備え、前記円錐状反射表面178は側方かつ環状に光を反射し、前記円錐状反射表面178は、凸形状である、治療装置。」が記載されている。
(3)次に、甲3には、「熱電対または赤外熱検出器600の使用について、レーザ供給ファイバを含むその他の用途、および無線周波加熱デバイスを使用する静脈瘤202の治療に関して説明する。しかし、静脈瘤を治療するためのレーザ供給光ファイバデバイスの端部上に熱電対を取り付けることにより、熱エネルギーの供給を比較的正確に制御することができる。さらに、サファイアから製造された光ファイバデバイスを使用する場合、非接触温度センサをレーザコンソール内に配置して、一般にレーザコンソール内のビームスプリッタを介してファイバの対向端部において発光し、治療部位から反射する黒体赤外放射プロファイルを測定することにより、温度を測定する。小径のサファイアファイバを製造し、減菌して再利用することができる。非接触温度センサ機器600から得られたデータも、レーザエネルギーの供給をサーボ制御して、治療部位において一定の温度を維持するか、または制御システムを安全デバイスとして使用し、つまり一定温度を超えた場合にレーザエネルギーの供給を終了するために使用することができる。」(【0040】参照。)、「図10は、本発明の方法および装置の好ましい実施態様による波長の関数として、メラニン、ヘモグロビンおよび水の吸収係数に関する曲線を示す。図10では、約550nm?約1060nmの間の領域は、先行技術の技術で十分に公知であるように、高いヘモグロビン吸収および低い水分吸収を示すことが観察される。約1200nm?約1800nmの間の領域は、低いヘモグロビン吸収および比較的高い水分吸収を示し、これは、本発明の重要な点である。」(【0049】参照。)、「方法の概要:11人の患者における12の不全な大伏在静脈は、1320nmの「連続」Nd:YAGレーザを使って5ワットで治療し、自動引戻しシステムは毎秒1mmにした。」(【0051】参照。)及び「550umのクォーツファイバは、上記のように外面化法により静脈内に挿入し、大腿静脈移行部まで通す。静脈内のファイバの位置は、レーザの赤色照準ビームがカテーテルの先端から発光される時にこのビームを観察し、重複評価により指示する。カテーテルは、電動式引戻しデバイスに接続する。この手順は、約2mmまたは3mmの引戻しを開始し、次に、30Hzの反復率を仮定して約5ワットおよび167mジュールのほぼ連続モードでレーザの電源を入れることにより開始する。レーザファイバは、電動式引戻しシステムを使って毎秒1mmの速度で引き抜いた。」(【0055】参照。)と記載されている。また、甲3のFIG.9A-9Cから、光ファイバ306からの光が光ファイバ306の周りに360度射出されることが看取できる。

これらの記載等を総合すると、甲3には、「静脈瘤を治療する光ファイバ306を備えた治療装置であって、血管内の温度をモニタリングし、そこで示すシグナルを伝達するための、光ファイバ306の遠位の領域と熱的に連結されている熱電対と、そこでの放射線源のパワー出力を調整するための、前記熱電対と電気的に連結されている制御システムとを備え、放射線源は、5Wのパワーにおいて、約1200nm?約1800nmの間の波長領域のレーザ放射線を射出し、前記光ファイバ306の一端部は、前記放射線源と光学的に連結されており、前記光ファイバ306の放射線射出表面は、周囲の脈管壁上へ、環状に放射線を射出し、前記光ファイバ306に推進可能に連結され、167mジュールの血管壁へのエネルギー伝達率でレーザ放射線を伝達する間に、前記血管を通って前記光ファイバ306を引き戻せるよう構成された電動式引戻しシステムをさらに備える、治療装置。」が記載されている。
(4)次に、甲4には、「A flexible guidewire 50 may be attached to the forward distal end of housing 14, as illustrated in FIG. 1. The guidewire is useful for allowing the catheter 10 to be advanced through the vascular system to the region of stenosis. Alternatively, the catheter 10 could be adapted to accept a separate guidewire which is inserted prior to insertion of the catheter.」(カラム6 第65行-カラム7 第3行参照。)(和訳「可撓性ガイドワイヤ50は、図1に示されるように、ハウジング14の前方遠位端に取り付けられ得る。このガイドワイヤは、カテーテル10を血管系を通して狭窄領域まで前進させるのに有用である。或いは、カテーテル10は、カテーテルの挿入の前に挿入される別個のガイドワイヤを受け入れるように適合され得る。」)と記載されている。また、甲4のFIG.1から、光ファイバ22の他端部を越えて遠位に延長している遠位部分を含むガイドワイヤ50が看取できる。

これらの記載等を総合すると、甲4には、「光ファイバ22を備えた治療装置であって、血管を通って光ファイバ22を導くため、前記光ファイバ22の他端部を越えて遠位に延長している遠位部分を含むガイドワイヤ50を備え、ガイドワイヤ50が遠位に延長している、治療装置。」が記載されている。
(5)次に、甲5には、「第3図は、本発明による治療照射光挿入具の他の実施例を説明するための断面構成図で、この実施例は、第2図に示した実施例における光導体15の周辺に、例えば、本出願人が既に種々提案しているように切り溝を設けたり、或いは、該光導体の屈折率よりも大きい屈折率の物質を塗布する等して光放出部15bを設け、細長管10の軸方向全体にわたって略均一に光を放出するようにしたものであり、このようにすると、例えば、直腸内等に挿入して該直腸内壁全体に光を照射するような場合に使用して好適である。」(第3ページ左上欄第19行-右上欄第9行参照。)、「第4図(C)及び(D)は、光導体15の先端部を円錐状に形成して傾斜面15aを設け、光導体15内を伝搬されてきた光を該光導体15の先端部において円周方向全体に放射するようにしたものであり、」(第3ページ右上欄第20行-左下欄第4行参照。)と記載されている。
また、甲5の第3図から、光導体15(光ファイバ)の長軸方向に間隔を空けて、側方に可視光を射出することが看取できる。

また、甲5の第4図(D)から、光導体15に設けられた円錐状の射出表面15aが看取できる。

これらの記載等を総合すると、甲5には、「光導体15を備えた治療装置であって、光導体15に可視光射出表面から長軸方向に間隔を空けて形成され、側方に可視光を射出する側方可視光射出部を備えるとともに、光導体15の先端部を円錐状に形成して傾斜面15aを設け、光導体15内を伝搬されてきた光を該光導体15の先端部において円周方向全体に放射するようにした治療装置。」が記載されている。

5 当審の判断
(1)本件特許の請求項1に係る発明について
ア 対比
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「レーザ光」は、本件発明の「放射線」に相当する。そして、甲1発明の「レーザ光を照射するのに使用されるレーザ」は、本件発明の「放射線を射出する放射線源」に相当する。
甲1発明の「光ファイバ」は、本件発明の「可撓性導波管」に相当し、甲1発明の光ファイバの「一端部」及び「遠位端」は、本件発明の可撓性導波管の「一端部」及び「他端部」にそれぞれ相当する。そして、甲1発明の「レーザ光を照射するのに使用されるレーザにその一端部を介して結合されるように適合され、」「遠位端」を有する「光ファイバ417」は、本件発明の「放射線を射出する放射線源に光学的に接続可能な一端部と、」「他端部とを含む可撓性導波管」に相当する。
甲1発明の「凸状の湾曲した端部423を有する管状部材」は、本件発明の「先端が丸まった形状の被覆物」に相当する。また、甲1発明の「空気」は、本件発明の「気体」に相当する。そして、甲1発明の「光ファイバの遠位端は、光ファイバの端部を包囲する、凸状の湾曲した端部423を有する管状部材422により提供される密閉された空気室内に配置され」との構成は、本件発明の「可撓性導波管の前記他端部は、」「可撓性導波管の前記他端部に固定され、先端が丸まった形状の被覆物」「を備え、」「前記被覆物により気体とともに封止された」との構成に相当する。
また、甲1発明の「光ファイバ417」が「傾斜して凹んだ円錐形表面418を遠位端に有する」点は、本件発明の「可撓性導波管の前記他端部は、」「実質的円錐体形状に形成され」た「表面」を備える点に相当する。
そして、甲1発明の「光ファイバ417」は、「傾斜して凹んだ円錐形表面418を遠位端に有」し、「円錐形表面418は、方向転換光431として、レーザ光430のほぼ全反射をもたらす反射表面であり、」「レーザ光431は、」「横方向に方向転換され、360度横方向に射出される」点と、本件発明の「可撓性導波管の前記他端部は、」「前記放射線を射出する放射線射出表面を備え、前記放射線射出表面は、前記放射線を側方かつ環状に出射する実質的円錐体形状に形成されており、」「前記放射線は」「円弧状に拡大する」点とは、可撓性導波管の前記他端部は、前記放射線を照射する放射線照射表面を備え、前記放射線照射表面は、前記放射線を側方かつ環状に照射する実質的円錐体形状に形成されており、前記放射線は円弧状に拡大する点で共通する。
また、甲1発明の「レーザ光で人体を治療するために内視鏡手術などの治療処理で使用される医療機器」と本件発明の「血管を収縮させる放射線を射出」し「血管内に受容可能な」「血管腔内治療装置」は、放射線を射出する治療装置である点で共通する。

イ 一致点
そうすると、両者は、
「放射線を射出する放射線源に光学的に接続可能な一端部と、他端部とを含む可撓性導波管と、
前記可撓性導波管の前記他端部に固定され、先端が丸まった形状の被覆物と、を備え、
前記可撓性導波管の前記他端部は、前記被覆物により気体とともに封止された、前記放射線を照射する放射線照射表面を備え、
前記放射線照射表面は、前記放射線を側方かつ環状に照射する実質的円錐体形状に形成されており、
前記放射線は円弧状に拡大する、
治療装置。」の点で一致し、以下の各点で相違する。

ウ 相違点
・相違点1
可撓性導波管の前記他端部は、前記放射線を照射する放射線照射表面を備え、前記放射線照射表面は、前記放射線を側方かつ環状に照射する実質的円錐体形状に形成されており、前記放射線は円弧状に拡大する点について、本件発明では、上記表面は放射線を射出する放射線射出表面であるのに対し、甲1発明では、当該表面はレーザ光を反射する反射表面である点。

・相違点2
放射線を射出する治療装置について、本件発明は、「血管を収縮させる」ものであって「血管内に受容可能な」「血管腔内治療装置」であるのに対し、甲1発明では、内視鏡手術などの治療処理で使用される医療機器である点。

・相違点3
本件発明では、放射線の円弧は「可撓性導波管の開口数によって画定される」のに対して、甲1発明では、そのような構成を有しない点。

エ 判断
上記相違点1について判断する。
甲1発明の「円錐形表面418」は、レーザ光をほぼ全反射する反射表面であることから、当該表面418において、レーザ光の射出は生じていないものと解するのが相当である。甲1発明は、表面418において反射したレーザ光が光ファイバ417の側方に進み、管状部材422の外周面から環状に射出することを動作原理とする治療装置の発明である。すなわち、レーザ光が射出する面は、管状部材422の上記外周面であって、表面418ではない。そして、仮に、構造上、当該表面418からガスチャンバ424へ向けて射出するいくらかのレーザ光の成分が存在するとしても、当該表面418においてレーザ光をほぼ全反射させることを目的とする甲1発明の装置においては、その成分の量は無視できる程度にごくわずかであるといえ、また、当該成分に係るレーザ光が光ファイバの側方かつ環状に射出するものであると認める根拠も存在しない。したがって、甲1発明は、光ファイバ417の他端部が、レーザ光を側方かつ環状に射出する、実質的円錐体形状に形成された、レーザ光を射出するレーザ光射出表面を有しないというべきである。
なお、この点について、甲5には、治療装置において、光導体15の先端部を円錐状に形成して傾斜面15aを設け、光導体15内を伝搬されてきた光を該光導体15の先端部において円周方向全体に放射するようにしたものが記載されている。しかし、このような円錐状の傾斜面を甲1発明の光ファイバ417の他端部に設けることを試みたとしても、光ファイバ417の遠位端に設けた円錐状の傾斜面と管状部材422の内周壁とを熱融着により接続することとなり、そうすると、レーザ光の射出表面としての円錐形表面は失われてしまうことになる。そして、このような円錐形表面の消失を回避することを試み、例えば、光ファイバ417側の融着領域として、当該円錐形表面からみて近位側の光ファイバの円周部分を選択したとすると、光ファイバ417を通ったレーザ光430は、他端部の円錐形表面において空気中へ射出し、次いで管状部材422に対し入射することになるが、望ましくない反射をもたらす光ファイバと空気との界面を除去するとの甲1発明の技術思想に基づけば、そのような箇所での融着は行われないというべきである。すなわち、甲1発明に対して甲5の上記記載事項の適用を試みることは、当業者において動機付けが存在しない。
また、甲2?4には、本件発明の可撓性導波管に相当する部材の他端部の形状を円錐体形状に形成する点は開示されていない。
そして、相違点1における本件発明の発明特定事項により、本件発明は、相対的に低いパワー密度において、実質的に一様で本質的に均等な静脈壁への放射線の適用が可能であり、それにより静脈壁への穿孔の恐れが少なくなり、そのため従来の治療と比較して、処置の間および後での痛みが減少する、という格別の作用効果を奏するものである。
よって、本件発明は、相違点2、3について判断するまでもなく、甲1発明及び甲2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。

申立人は、甲1発明と本件発明との相違点について、静脈瘤を治療する光ファイバを備えた血管腔内治療装置は公知であるから甲1発明に対して適用することは当業者が容易に想到し得るものであり、また、甲1記載の光ファイバ417も固有の開口数を有しており、レーザ光は当該開口数によって画定される円弧状に拡大して射出するものであることから、本件発明は甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。しかし、甲1には、前述したとおり、光ファイバ417の他端部が、レーザ光を側方かつ環状に射出する、実質的円錐体形状に形成された、レーザ光を射出するレーザ光射出表面が開示されていないから、かかる主張は当を得たものではなく、採用できない。

(2)本件特許の請求項2ないし16に係る発明について
本件特許の請求項2ないし16に係る発明は、本件発明に対して、さらに発明特定事項を付加し、限定したものである。よって、本件特許の請求項2ないし16に係る発明は、上記(1)に示したのと同じ相違点が少なくとも存在するところ、上記(1)に示したとおりの理由により、甲1発明及び甲2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。
したがって、本件特許の請求項1?16に係る発明は、甲1発明及び甲2?5に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの特許は特許法第29条第2項に違反してされたものとすることはできない。

6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-01-21 
出願番号 特願2017-220727(P2017-220727)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 利充  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 栗山 卓也
和田 将彦
登録日 2019-04-05 
登録番号 特許第6505814号(P6505814)
権利者 バイオリテック ウンテルネーメンスベタイリグングス ツヴァイ アーゲー
発明の名称 血管腔内治療装置  
代理人 森川 泰司  
代理人 桜田 圭  
代理人 木村 満  
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