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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B65D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B65D 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1359928 |
審判番号 | 不服2019-11302 |
総通号数 | 244 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-28 |
確定日 | 2020-03-03 |
事件の表示 | 特願2015-151992「紙容器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月9日出願公開、特開2017-30783、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年7月31日の出願であって、平成31年1月22日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年3月22日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年5月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和元年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。 理由 特許法第29条第1項第3号及び、特許法第29条第2項 本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、折り罫線部6(山折線部)とU字状の切り込み2(第2ハーフカット)と切り込み4(第1ハーフカット)とを設けたゲーベルトップ型の紙容器が記載されている(明細書第5頁第17行-第7頁第10行,第1-2図を特に参照)。 そうすると、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。また、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.実願昭62-190126号(実開平01-94233号)のマイクロフィルム 第3 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、平成31年3月22日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下に示されるとおりの発明である。 「表裏面に熱可塑性樹脂を積層した紙素材によって有底の胴部の上に切妻屋根型頂部が存在するように形成され、前記切妻屋根型頂部の切妻屋根面に、裏面からストロー口となる第1ハーフカットが設けられ、表面から前記第1ハーフカットを囲むように第2ハーフカットが設けられ、表面から前記第2ハーフカットで囲まれた部分を層間剥離させることによりストロー口が開口する紙容器において、 前記切妻屋根型頂部の切妻屋根面は、横方向に向かう山折りされた状態の山折部により凸面状に形成されており、前記第2ハーフカットにあっては、剥離の糸口となる剥離糸口端部が前記山折部を横切り又は剥離糸口端部の先端が前記山折部と一致するように設けられていることを特徴とする紙容器。」 第4 引用文献、引用発明 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「本考案は、液体容器、特にストローなども入れることのできる注出孔を備えた液体紙容器に関するものである。」(明細書第2頁第1-3行) (2)「図中1はゲーベルトップ型の液体容器で、この液体容器1は、表層部と裏層部との間に紙層の中間層部を配した三層構成のシートからなるもので、前記表層部や裏層部としては例えばポリエステルフィルムを用いることができる。」(明細書第5頁第17行-第6頁第1行) (3)「上記液体容器1の上部に位置する一方の屋根傾斜面10には、略U字状の切り込み2が設けられている。この切り込み2は、中間層部に達するようにして表層部側から入れられており、この切り込み2により屋根傾斜面部10の上端部で表層部に連続した引き剥ぎ可能なタブ部3が設けられている。」(明細書第6頁第2行-第8行) (4)「またタブ部3に対応する裏層部には、上記切り込み2によって相対的に囲まれるような位置に、中間層部に達する円状の切り込み4を入れて注出孔部が設けられている。そして前記タブ部3を引き剥ぐことによって開放された注出孔が表され、ストローなどを挿入できるようになっている。」(明細書第6頁第9行-第14行) (5)「上記屋根傾斜面部10と胴面部11との間には山折り罫線部5が設けられ、この山折り罫線部5に上記タブ部3の捲り端30が近接している。また前記捲り端30の両端には、山折り罫線部5と平行な折り罫線部6が設けられており、折り罫線部6を結んだ位置から山折り罫線部5にわたる範囲に前記捲り端30が位置している。」(明細書第6頁第15行-第7頁第1行) (6)「そしてシートから容器本体を組み上げる際、或は内容物充填後のシールの際に、前記山折り罫線部5から屋根傾斜面10が折曲されると、山折り罫線部5まわりに曲げの応力が加わるとともに、折り罫線部6とこの折り罫線部6を結んだ位置がわずかに折れ曲がり、タブ部3の捲り端30が中間層部から剥離して捲り上がって指掛りとなり、タブ部3をきわめて容易に引き剥ぐことができるようになる。」(明細書第7頁第2-10行) (7)「なお、タブ部3の捲り端30が近接する山折り罫線部5の中央部分を側端部分に比べて浅く入れてやや折れ難くすれば、より捲り端30が剥離しやすくなる。」(明細書第7頁第11-第14行) (8)図1「 」 (9)図2「 」 (10)(2)の「ゲーベルトップ型の液体容器」という記載、(8)の図1及び(9)の図2から、引用文献1のものも「切妻屋根」であるといえる。 (11)(6)の摘記から、引用文献1に記載された「捲り端30」は、「切り込み2」における剥離が始まる位置であるから、「糸口」とは「物事の始まり。」(広辞苑第6版)の意味であることを踏まえると、剥離の糸口となる箇所であるといえる。 以上の摘記事項(1)?(7)、図1及び図2に図示された事項、並びに、認定事項(10)及び(11)を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「表層部及び裏層部にポリエステルフィルムを積層した紙層の中間層部から構成される三層構成のシートによって有底の胴面部11の上に切妻屋根型頂部が存在するように形成され、前記切妻屋根型頂部の屋根傾斜面部10に、裏層部からストローなども入れることのできる注出孔となる円状の切り込み4が設けられ、表層部から前記円状の切り込み4を囲むように切り込み2が設けられ、表層部から前記切り込み2で囲まれた部分を層間剥離させることによりストローなども入れることのできる注出孔が開口する液体紙容器において、前記切妻屋根型頂部の屋根傾斜面部10は、横方向に向かう山折りされた状態の折り罫線部6により凸面状に形成されており、前記切り込み2にあっては、剥離の糸口となる捲り端30が設けられている液体紙容器。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1における「紙層の中間層部」は、その材質から、本願発明1における「紙素材」に相当し、同様に「表層部」は「表面」に、「裏層部」は「裏面」に、「ポリエステルフィルム」は「熱可塑性樹脂」に、「胴面部11」は「胴部」に、「屋根傾斜面部10」は「切妻屋根面」に、「ストローなども入れることのできる注出孔」は「ストロー口」に、「円状の切り込み4」は「第1ハーフカット」に、「切り込み2」は「第2ハーフカット」に、「折り罫線部6」は「山折部」に、「液体紙容器」は「容器」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「捲り端30」は、本願発明1の「剥離の糸口端部」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の点で一致し、且つ、相違する。 [一致点] 「表裏面に熱可塑性樹脂を積層した紙素材によって有底の胴部の上に切妻屋根型頂部が存在するように形成され、前記切妻屋根型頂部の切妻屋根面に、裏面からストロー口となる第1ハーフカットが設けられ、表面から前記第1ハーフカットを囲むように第2ハーフカットが設けられ、表面から前記第2ハーフカットで囲まれた部分を層間剥離させることによりストロー口が開口する紙容器において、前記切妻屋根型頂部の切妻屋根面は、横方向に向かう山折りされた状態の山折部により凸面状に形成されており、前記第2ハーフカットにあっては、剥離の糸口となる剥離糸口端部が設けられている紙容器。」 [相違点] 本願発明1は、第2ハーフカットにあっては、剥離の糸口となる剥離糸口端部が山折部を横切り又は剥離糸口端部の先端が前記山折部と一致するように設けられているのに対し、引用発明1は「切り込み2」の剥離の糸口となる「捲り端30」の両側に「折り罫線部6」が設けたものであるものの、剥離の糸口となる「捲り端30」が「折り罫線部6」を横切り又は「捲り端30」の先端が前記「折り罫線部6」と一致するように設けられたものではない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 引用発明1は、シートから容器本体を組み上げる際、或は内容物充填後のシールの際に、「山折り罫線部5」から「屋根傾斜面10」が折曲されると、「山折り罫線部5」まわりに曲げの応力が加わるとともに、「折り罫線部6」とこの「折り罫線部6」を結んだ位置がわずかに折れ曲がり、「タブ部3」の「捲り端30」が中間層部から剥離して捲り上がるものである。 そして折り曲げにより「タブ部3」の「捲り端30」が持ち上がり、「捲り端30」が指掛りとなって「タブ部3」を容易に引き上げると共に、容器の外観を損なうことなく、プレス型も一つでよく、製造工程を複雑にすることがないという格別な効果を奏するものである。 ここで、引用発明1の「切り込み2」の剥離の糸口となる「捲り端30」において、両側の「折り罫線部6」を結んだ位置に「山折部」を設け「捲り端30」を折り曲げることは、「捲り端30」の「タブ部3」を容易に引き上げる指掛りとして機能を無くすと共に製造工程を増やすことにもなるので、当業者といえども、容易に行えるものとはいえず、むしろ、「山折部」を設け「捲り端30」を折り曲げることには阻害要因があるというべきである。 ゆえに、引用発明1の「切り込み2」の剥離の糸口となる「捲り端30」に「山折部」を設け、引用発明1の剥離の糸口となる「捲り端30」を両側の「折り罫線部6」を横切るようにすることは、当業者であっても、容易になし得たものとはいえない。 さらに、本願発明1は、第2ハーフカットの剥離糸口端部が切妻屋根面に形成された山折線部を横切り又は剥離糸口端部の先端と一致するように設けられているので、輸送中、隣の紙容器に第2ハーフカットの剥離糸口端部が接触せず、輸送等の取り扱い中に第2ハーフカットの剥離糸口端部が捲れてしまうおそれがないとともに、第2ハーフカットの剥離糸口端部が山折線部を横切るように設けられている場合には、剥離糸口端部にわずかな力を加えるだけで、紙素材の復元力により剥離糸口端部を容易に立ち上げることができ、また、第2ハーフカットの剥離糸口端部の先端が山折線部と一致するように設けられている場合には、剥離糸口端部の先端に爪が掛かり易く、容易に剥離糸口端部を立ち上げることができるという引用発明1にはない格別な効果を奏するものである。 なお、原査定では、引用文献1における「シートから容器本体を組み上げる際、・・・山折り罫線部5から屋根傾斜面部10が折曲されると・・・折り罫線部6とこの折り罫線部6を結んだ位置がわずかに折り曲がり」という記載から、「容器本体を組み上げたときに、引用文献1の第2図に開示されるように、折り罫線部6で折り曲がった状態となることが開示されている」としている。 しかしながら、本願発明1の「第2ハーフカットにあっては、剥離の糸口となる剥離糸口端部が山折部を横切」るとは、「剥離の糸口となる剥離糸口端部」が横方向に向かう山折りされた状態の山折部により一定の角度をもって折り曲げられたものであると解するところ、引用文献1に記載された「シートから容器本体を組み上げる際、或は内容物充填後のシールの際に、前記山折り罫線部5から屋根傾斜面10が折曲されると、山折り罫線部5まわりに曲げの応力が加わるとともに、折り罫線部6とこの折り罫線部6を結んだ位置がわずかに折れ曲がり、」とは、「タブ部3」の「捲り端30」が「折り罫線部6を結んだ位置」で、曲線で折り曲がった状態にすぎず、本願発明1のように一定の角度をもって折り曲がったものではないので、本願発明1と引用文献1に記載された発明とは相違するものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用発明1に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-02-13 |
出願番号 | 特願2015-151992(P2015-151992) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(B65D)
P 1 8・ 113- WY (B65D) P 1 8・ 121- WY (B65D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 新田 亮二 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
久保 克彦 杉山 悟史 |
発明の名称 | 紙容器 |
代理人 | 大塚 明博 |