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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1359943
審判番号 不服2018-11697  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-13 
確定日 2020-02-13 
事件の表示 特願2017-200604「情報処理装置および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日出願公開、特開2018- 26163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年12月28日(優先権主張 平成28年5月4日)に出願した特願2016-257995号の一部を,平成29年9月27日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月22日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月 8日 :意見書,補正書の提出
平成30年 5月 7日付け:拒絶査定
平成30年 8月15日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 元年 8月 5日付け:拒絶理由通知
令和 元年10月15日 :意見書,補正書の提出


第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は,令和元年10月15日付け手続補正書により補正された請求項1?2記載された事項により特定されるものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
アイデアの投稿の受け付けと,前記アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示する表示ステップと,
前記アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した前記金額データもしくは前記指標データを,前記アイデアの投稿料の支払いとして受け付ける受付ステップと,
前記投稿者による,前記入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,前記受付ステップで受け付けた前記アイデアを出力する出力ステップと
をコンピュータに実行させる
情報処理プログラム。」


第3 当審における拒絶の理由

当審においてした令和元年8月 5日付け拒絶理由通知の理由は,概略,次のとおりのものである。

1.(発明該当性)この出願の請求項1?4に記載されたものは,下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。


第4 当審の判断

1 発明の詳細な説明の記載内容
発明の詳細な説明には,次の内容が記載されている。
(1)発明が解決しようとする課題
「【0004】
しかし,玉石混合の多数のアイデアの中から,有望なものを見つけ出すことは容易ではない。集めたアイデアを,多数の評価者による投票数に応じてランキングするなどの手法が考えられる。しかし,そのような手法を用いた場合には,評価者の目利き力がランキングに反映されてしまい,ダイヤの原石のようなアイデアが正当に評価されずに埋もれてしまうおそれがある。また,多数のアイデアを評価するためには,非常に多くの手間と時間を要するので,このシステムを運用するための人手やコストを負担し続けることは, 非常に困難である。従って,有望なアイデアを容易に集めたり,集めた多数のアイデアの中から有望なアイデアを容易に見つけ出したりすることを可能にする情報処理装置および情報処理プログラムを提供することが望ましい。」

(2)課題を解決するための手段
「【0005】
本発明の一実施形態に係る情報処理プログラムは,以下の2つのステップをコンピュータに実行させる。
(A1)アイデアの投稿を受け付けるとともに,固定の金額データもしくはそれに対応する指標データを,アイデアの投稿料として受け付ける受付ステップ
(A2)第1受付ステップで受け付けたアイデアを出力する出力ステップ
【0006】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は,アイデアの投稿を受け付けるとともに,固定の金額データもしくはそれに対応する指標データを,アイデアの投稿料として受け付ける受付部と,受付部で受け付けたアイデアを記憶部に格納する処理部とを備えている。」

(3)発明の効果
「【0007】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置および情報処理プログラムによれば,有望なアイデアを容易に集めたり,集めた多数のアイデアの中から有望なアイデアを容易に見つけ出したりすることができる。」

(4)発明を実施するための形態
ア 「【0015】
受付部210は,アイデア3の投稿を受け付けるとともに,投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データもしくはそれに対応する指標データをアイデア3に対する投稿料4として受け付ける。受付部210は,例えば, アイデア3の投稿を受け付ける際に,アイデア3に対する投稿料4の提示(入力)を要求し,提示(入力)された金額データもしくはそれに対応する指標データをアイデア3に対する投稿料4として受け付ける。受付部210は,アイデア3に対する投稿料4の決定権を投稿者2に与え,投稿者2によって提示(入力)された任意の投稿料4を受け付ける。投稿料4は,投稿者2が情報処理システム1の運営者に対して,アイデア3を投稿する度に支払うものである。 そのため,投稿料4は,アイデア3の有用性を図る尺度のような性質を有している。従って,投稿料4は,情報処理システム1(アイデア投稿サービス)の月額利用料とは異なる。また,投稿料4は,情報処理システム1の運営者が投稿者2に対して支払う報酬のような性質のものとも異なる。
【0016】
「投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データ」とは,例えば,規定の上限(例えば1万円)を上回らない範囲(例えば1円?1万円)内で投稿者2自らが提示した金額データ(例えば,8千円)を指している。「金額データに対応する指標データ」は,例えば,金銭的な価値のあるポイント(例えば,1ポイントにつき1円に相当するポイント)や,金額データを段階的に表現したランク( 例えば,Aランク1万円,Bランク5千円,Cランク1千円)を含む概念である。従って,投稿料4がポイントである場合には,「投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データに対応する指標データ」とは,例えば,規定の上限(例えば1万ポイント)を上回らない範囲(例えば1ポイント?1万ポイント)内で投稿者2自らが提示したポイント( 例えば,8千ポイント)を指している。なお,投稿料4が金額データやポイントである場合に,受付部210によって,投稿者2によって選択される金額データやポイントの上限が規制されていてもよいし,規制されていなくてもよい。なお,上記の金額データの単位は,円以外の単位(例えば,ドルやユーロ)であってもよい。
【0017】
受付部210は,アイデア3の投稿を受け付ける際に,アイデア3の自己評価に関する1または複数のパラメータを提示し,提示した1または複数のパラメータにおける評価レベルの選択結果に応じた金額データもしくはそれに対応する指標データを受け付けてもよい。ここで,1または複数のパラメータとしては,例えば,芸術性,販売予測数,実用性,革新性,実現性,先進性,流行性,浸透性および緊急性のうちの少なくとも1つが挙げられる。」

イ 「【0022】
受付部310は,投稿されたアイデア3と,アイデア3に対する投稿料4としてアイデア3の投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データもしくはそれに対応する指標データとを受け付ける。受付部310は,例えば,投稿されたアイデア3を,アイデア3に対する投稿料4としてアイデア3の投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データもしくはそれに対応する指標データと関連付けて受け付ける。受付部310は,例えば,アイデア3,投稿料4および投稿者ID(5A)を含むファイルを,ネットワーク100を介して端末装置200から受け付ける。
【0023】
処理部320は,受付部310で受け付けたアイデア3を受付部310で受け付けた投稿料4と関連付けて記憶部330に格納する。処理部320は,例えば,受付部310で受け付けたアイデア3を受付部310で受け付けた投稿料4と関連付けて,記憶部330内のデータベース330Aに格納する。記憶部330は,データベース330Aを有している。データベース330Aには,投稿者2から投稿された多数のアイデア3が投稿料4と関連付けて格納される。記憶部330には,例えば,投稿者情報5が含まれている。」

ウ 「【0037】
入力インターフェース211は,例えば,アイデア3の入力を受け付ける投稿窓212と,投稿料4の入力を受け付ける選択ボタン213,214と,アイデア3を送信する送信ボタン215とを有している。投稿窓212は,例えば,概要文字データ3Aの入力を受け付ける投稿窓212Aと,詳細文字データ3Bの入力を受け付ける投稿窓212Bと,資料(例えば,設計データファイルや,プレゼンテーション資料など)の添付を受け付ける投稿窓212Cとを有している。投稿窓212は,さらに,例えば,投稿窓212Cへの入力を助けるアドレス参照用の参照ボタン212Dと,投稿窓212Cを削除する削除ボタン212Eと,投稿窓212Cを追加する追加ボタン212Fとを有していてもよい。なお,投稿窓212Cの代わりに,詳細文字データ3Bよりもより詳細なデータ(例えば,アイデア3の具体例など)の入力を受け付ける投稿窓が設けられていてもよい。選択ボタン213は,例えば,複数の選択肢の中から金額データを選択するためのボタンである。選択ボタン214は,例えば,複数の選択肢の中から,金額データに対応する指標データを選択するためのボタンである。」

エ 「【0039】
まず,投稿者2は,端末装置200の受付部210に対して,投稿者情報5を入力する。すると,受付部210は,投稿者情報5を受け付ける。このとき,受付部210は,例えば,受け付けた投稿者情報5と,サーバ装置300に登録されている情報(投稿者情報5)とを照合し,その結果,一致する情報がサーバ装置300に登録されていた場合には,アイデア3の投稿を許容する。つまり,受付部210が,入力インターフェース211を表示画面に表示する。
【0040】
次に,投稿者2は,受付部210に対して,アイデア3を投稿するとともに,複数の選択肢の中から金額データもしくはそれに対応する指標データを選択する。投稿者2は,例えば,投稿窓212を介して,アイデア3を投稿するとともに,選択ボタン213または選択ボタン214を介して,複数の選択肢の中から金額データもしくはそれに対応する指標データを選択する。すると,受付部210が,アイデア3の投稿を受け付けるとともに,投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データもしくはそれに対応する指標データを,アイデア3に対する投稿料4として受け付ける。
【0041】
次に,出力部220は,受付部210で受け付けたアイデア3を,受付部210で受け付けた投稿料4と関連付けてサーバ装置300へ出力する。すると,サーバ装置300の受付部310は,投稿されたアイデア3と,アイデア3に対する投稿料4としてアイデア3の投稿者2によって複数の選択肢の中から選択された金額データもしくはそれに対応する指標データとを受け付ける。次に,処理部320は,受付部310で受け付けたアイデア3を,受付部310で受け付けた投稿料4と関連付けて記憶部330内のデータベース330Aに格納する。
【0042】
多数の投稿者2によってアイデア3が投稿されると,上記と同様のステップを経て,投稿された各アイデア3が,対応する投稿料4と関連付けて記憶部330内のデータベース330Aに格納される。」

オ 「【0077】
(変形例E)
上記実施の形態およびその変形例に係る情報処理システム1において,投稿料4は,投稿者2がアイデア3に対する投稿料4として支払うことに躊躇し得る程度に高額な固定の金額データもしくはそれに対応する指標データであってもよい。投稿料4は,例えば,500円,5ドルもしくは5ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている。投稿料4は,1000円,10ドルもしくは10ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっていることが好ましい。 投稿料4は,5000円,50ドルもしくは50ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっていることがより好ましい。「500円,5ドルもしくは5ユーロ以上の固定の金額データに対応する指標データ」とは,上述したポイントやランクの他に,円,ドルおよびユーロとは異なる通貨の金額データを含む概念である。
【0078】
本変形例では,投稿料4は,情報処理システム1の運営者によって決められており,投稿者2は,自分で投稿料4の額を決定することができない。その点で,本変形例の投稿料4の性質は,上記実施の形態およびその変形例における投稿料4の性質とは異なる。しかし,投稿者2は,投稿する度に所定の金額を支払うことを求められるので, 投稿者2には,投稿に対して無駄な対価を支払いたくないという消極的な心理が働く。そのため,このような消極的な心理に打ち勝つだけの熱意をアイデア3に対して持っている投稿者2だけが,アイデア3の投稿をすることになるので,概ね有望なアイデア3だけが情報処理システム1に集まる。
【0079】
投稿料4が500円,5ドルもしくは5ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている場合には,投稿者2は,金銭的な支払いをするという心理的な負担を感じる。そのため,この場合には, 投稿料4が無料となっている場合よりも,より有望なアイデア3が集まり易い。
【0080】
投稿料4が1000円,10ドルもしくは10ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている場合には,投稿者2は,比較的高額な紙幣(千円札,10ドル札,10ユーロ札)による支払いをするという心理的な負担を感じる。そのため,この場合には,投稿料4が500円,5ドルもしくは5ユーロ程度の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている場合よりも,より有望なアイデア3が集まり易い。
【0081】
投稿料4が5000円,50ドルもしくは50ユーロ以上の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている場合には,投稿者2は,かなり高額な紙幣(五千円札,50ドル札,50ユーロ札)による支払いをするという心理的な負担を感じる。そのため,この場合には,投稿料4が1000円,10ドルもしくは10ユーロ程度の固定の金額データもしくはそれに対応する指標データとなっている場合よりも,より有望なアイデア3が集まり易い。
【0082】
このように,本変形例では, 概ね有望なアイデア3だけが情報処理システム1に集まる。従って,端末装置400を使用する企業の担当者は,有望か否かの選別にあまり手間をかけることなく,集めた多数のアイデア3の中から有望なアイデア3を容易に見つけ出すことができる。」

2 検討
(1)本願発明の特徴
上記1によれば,本願発明の「情報処理プログラム」は,社外のアイデアや発明を積極的に取り入れて,新しい商品やサービスの開発を行うオープンイノベーションに関する発明であって,玉石混交の多数のアイデアから有望なものを見つけ出すに必要な手間と時間の負担を減らすという課題を解決するために,投稿者のアイデアを受け付ける際に,固定の金額データもしくはそれに対応する指標データをアイデアの投稿料の支払いとして受け付ける構成を採用することで,投稿に対して無駄な対価を支払いたくないという心理が働き,消極的な心理に打ち勝つだけの熱意のあるアイデアだけが投稿されることになることから,企業の担当者は,有望か否かの選別に余り手間をかけることなく,有望なアイデアを容易に見つけ出すことができるという効果を奏するものである。

(2)自然法則の利用可能性について
特許法2条1項は,発明について,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定するところ,人は,自由に行動し,自己決定することができる存在である以上,人の特定の精神活動,意思決定,行動態様等に有益かつ有用な効果が認められる場合があったとしても,人の特定の精神活動,意思決定や行動態様等自体は,直ちには自然法則の利用とはいえない。
したがって,ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,いかに,具体的であり有益かつ有用なものであったとしても,その課題解決に当たって,専ら,人間の精神的活動を介在させた原理や法則,社会科学上の原理や法則,人為的な取決めや,数学上の公式等を利用したものであり,自然法則を利用した部分が全く含まれない場合には,そのような技術的思想の創作は,同項所定の「発明」には該当しない。
そうすると,特許出願に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは,その発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。
そこで,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かについて以下検討する。

(3)本願発明の構成について
本願発明の「アイデアの投稿の受け付けと,前記アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示する表示ステップ」,「前記アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した前記金額データもしくは前記指標データを,前記アイデアの投稿料の支払いとして受け付ける受付ステップ」,「前記投稿者による,前記入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,前記受付ステップで受け付けた前記アイデアを出力する出力ステップ」を含むという構成は,「情報処理プログラム」において,アイデアの投稿の受け付けと,アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示すること,アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した固定の金額データもしくはそれに対応する指標データを,アイデアの投稿料の支払いとして受け付けること,投稿者による,入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,受け付けたアイデアを出力すること,をコンピュータに実行させることに特徴を有するものである。
そして,本願発明のこれらの構成は,投稿者がアイデアを投稿する際に,投稿者に対して,固定の金額もしくはそれに対応する指標データを投稿料として支払うことを要求し,固定の金額もしくはそれに対応する指標データを投稿料として支払いを受け付けることで,投稿者のアイデアを受け付けるという,人為的な取決めを,コンピュータを入出力の道具として用いて実現したにすぎない。その奏する効果も,投稿に対して無駄な対価を支払いたくないという心理が働き,消極的な心理に打ち勝つだけの熱意のあるアイデアだけが投稿されることになることから,企業の担当者は,有望か否かの選別に余り手間をかけることなく,有望なアイデアを容易に見つけ出すというもので,この効果は,投稿者に,固定のアイデア投稿料を要求することで,投稿に対する心理的なハードルを設け,アイデアの投稿を慎重に判断させることで,企業の担当者が選別する対象となるアイデア数が少なくて済むという,専ら人間の精神活動を介在させた原理や法則に基づくものであって,自然法則を利用したものとはいえない。
そうすると,本願発明は全体として自然法則を利用したものとはいえず,「発明」に該当しない。

(4)本願発明の各構成要件について
念のため,本願発明の各構成要件について検討をする。
ア 本願発明は次の構成要件A?Gに分説される。

A アイデアの投稿の受け付けと,前記アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示する表示ステップと,
B 前記アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した前記金額データもしくは前記指標データを,前記アイデアの投稿料の支払いとして受け付ける受付ステップと,
C 前記投稿者による,前記入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,前記受付ステップで受け付けた前記アイデアを出力する出力ステップと
D をコンピュータに実行させる
E 情報処理プログラム。

イ 構成要件Aについて。
構成要件Aは「アイデアの投稿の受け付けと,前記アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示する表示ステップ」として,「表示ステップ」の機能を特定するものである。しかしながら,「表示ステップ」が「アイデアの投稿の受け付け」と「前記アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付」とを行うための「画面を表示する」ことを特定するにとどまる。

ウ 構成要件Bについて。
構成要件Bは「前記アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した前記金額データもしくは前記指標データを,前記アイデアの投稿料の支払いとして受け付ける受付ステップ」として「受付ステップ」の機能を特定するものである。しかしながら,「受付ステップ」は,「前記アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した前記金額データもしくは前記指標データ」を,「前記アイデアの投稿料の支払い」として「受け付ける」ことを特定するにとどまる。

エ 構成要件Cについて。
構成要件Cは「前記投稿者による,前記入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,前記受付ステップで受け付けた前記アイデアを出力する出力ステップ」として「出力ステップ」の機能を特定するものである。しかしながら,「出力ステップ」は,「前記投稿者による,前記入力装置を介した送信処理を受け付ける」ことにより,「前記受付ステップで受け付けた前記アイデア」を「出力する」ことを特定するにとどまる。

オ 構成要件Dについて。
構成要件Dは「をコンピュータに実行させる」として,構成要件A?Cの各ステップを「コンピュータに実行させる」ことを特定するにとどまる。

カ 構成要件Eについて。
構成要件Eは「情報処理プログラム」として,構成要件A?Cの各ステップをコンピュータに実行させる「情報処理プログラム」であることを特定するにとどまる。

キ そうすると,各構成要件について検討をしても,それぞれ,各ステップが,所定の画面を表示すること,固定の金額データ等を投稿料の支払として受け付けること,受け付けたアイデアを出力することという取決めを定めたものにすぎないため,人為的取決めにとどまり,自然法則を利用したとはいえず,「発明」に該当しない。

(5)「コンピュータソフトウエア関連発明」の観点について
ア 本願発明は,各ステップをコンピュータに実行させる情報処理プログラムであるから,「コンピュータソフトウエア関連発明」であることは明らかである。そこで,このコンピュータソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するかを検討する。

イ ソフトウエア関連発明のうちソフトウエアについては,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合は,当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することによって,使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。

ウ 本願発明は,情報処理プログラムの構成は記載されているものの,上記2(3)のとおり,「情報処理プログラム」において,アイデアの投稿の受け付けと,アイデアの投稿を受け付ける際に固定の金額データもしくはそれに対応する指標データの選択受付もしくは入力受付とを行うための画面を表示すること,アイデアの投稿者が入力装置を介して選択もしくは入力した固定の金額データもしくはそれに対応する指標データを,アイデアの投稿料の支払いとして受け付けること,投稿者による,入力装置を介した送信処理を受け付けることにより,受け付けたアイデアを出力すること,をコンピュータに実行させることに特徴を有するものである。
このように,本願発明は,具体的な情報処理内容を特定するものではなく,投稿者がアイデアを投稿する際に,固定の金額もしくはそれに対応する指標データを投稿料として支払うことを要求し,固定の金額もしくはそれに対応する指標データを投稿料として支払いを受け付けることで,投稿者のアイデアを受け付けるという,人為的な取決めを,コンピュータの入出力機能を用いて実現したにすぎない。
そうすると,全体として,人為的な取決めを,道具としてのコンピュータの単なる使用により実現しているにすぎない。

エ なお念のため,本願発明を上記(4)アのように分説したときの各構成要件について検討をしても,上記(4)のとおりであり,コンピュータによる情報処理は特定されていない。

オ そうすると,本願発明は全体を見ても,各構成要件を見ても,情報処理は特定されているとはいえないから,本願発明は,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又は動作方法が構築されているとはいえない。
よって,本願発明は,全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず,コンピュータソフトウエア関連発明の観点で検討をしても,「発明」に該当しない。


第5 むすび
上記のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないこと,及び,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2017-200604(P2017-200604)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 松田 直也
石川 正二
発明の名称 情報処理装置および情報処理プログラム  

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